JP3719735B2 - 光ファイバー - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、従来の光学プラスチックでは実現が困難であった、耐熱性、難燃性、及び耐溶剤性に優れ、かつ高伝送帯域と低伝送損失を有し、折り曲げ時の増加損失の少ない光ファイバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より知られている光ファイバーとしては、ポリメチルメタクリレート系を代表とした光学樹脂が提案されている。光ファイバーとしてコアとクラッドとからなる屈折率段階型光ファイバーとしては、コアをポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂等の光学樹脂を使用し、クラッドを含フッ素ポリマーとする提案が多くなされている。また特開平2ー244007号公報にはコアとクラッドに含フッ素樹脂を用いた提案もされている。
【0003】
屈折率段階型光ファイバーとともに屈折率分布(GI)型光ファイバーが知られている。屈折率分布型光ファイバーの屈折率分布は、中心から半径方向に向かって屈折率が放物線に近い曲線で低下しているものをいい、例えば「化学と工業」第45巻第7号(1992)1261−1264、特開平5−173026号公報、WO94/04949、WO94/15005などに記載されている。
【0004】
しかしながら、プラスチック光ファイバーはフレキシブルではあるが、折れ曲げによる光伝送損失が発生するという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリメチルメタクリレート系、ポリスチレン系、ポリカーボネート系等の光伝送体では達し得なかった自動車乃至OA(オフィスオートメーション)、家電機器用途等で要求される耐熱性、耐湿性、耐薬品性、不燃性を有する光ファイバー製品を提供することを目的とするものであり、またアクリル系、ポリカーボネート系、ノルボルネン系樹脂等の光伝送体では達し得なかった可視光(500〜700nm)と近赤外光(700〜1600nm)を利用可能とし、さらに広範囲の伝送領域帯で低い光伝送損失をもち、折り曲げによる光伝送損失の増加を抑制する屈折率分布型プラスチック光ファイバー製品を新規に提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点の認識に基づいて鋭意検討を重ねた結果、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、不燃性を付与し、かつ近赤外光で光吸収が起こるC−H結合(すなわち、炭素−水素結合)をなくすためには、C−H結合をC−F結合(すなわち、炭素−フッ素結合)に変換した含フッ素重合体が最適であるとの知見を先に得た。
【0007】
また、屈折率段階型光ファイバーの場合、マルチモードの光はコアとクラッドの界面で反射されながら伝搬するためモード分散が起こり伝送帯域が低下する。しかし屈折率分布型光ファイバーではモード分散が起こりにくく伝送帯域は増加する。そこで、実質的にC−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体(a)を用いて屈折率分布型の光ファイバー素線とし、該含フッ素屈折率分布型光ファイバー素線の外側の層を内層よりさらに屈折率の低い含フッ素重合体とすることにより光の漏れを抑制して、前記の問題点を解決できることを見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)主鎖に環構造を有し、実質的にC−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体をマトリックスとする波長700〜1,600nmで100mの伝送損失が100dB以下である屈折率分布型光ファイバーにおいて、光ファイバーが外層と屈折率分布を有する内層との同心円状の少なくとも2層からなり、内層は、主鎖に環構造を有し、実質的にC−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体中に実質的にC−H結合を有しない他の物質が中心から周辺方向に沿って濃度勾配を有して分布しており、外層が内層の最外部に対して屈折率が0.001以上低いことを特徴とする光ファイバー。
(2)主鎖に環構造を有する含フッ素重合体が以下の(I)〜(IV)から選ばれる繰り返し単位を有する前記(1)記載の光ファイバー。
【0009】
【化2】
【0010】
[上記(I)〜(IV)式において、lは0〜5、mは0〜4、nは0〜1、l+m+nは1〜6、o,p,qはそれぞれ0〜5、o+p+qは1〜6、R3、R4はFまたはCF3、R5はFまたはCF3、R6はFまたはCF3、X1はFまたはCl、X2はFまたはClである。]
本発明における屈折率分布型光ファイバーは、マトリックスが非結晶性樹脂であるため光の散乱がなくしかも可視光から近赤外光まで広範囲の波長帯で透明性が高いため、多種多様な波長の光システムに有効利用が可能である。特に通信分野において幹線石英シングルモード光ファイバーに利用されている波長である1300nm、1550nmで低損失である光ファイバーコードを提供する。そのためこの光ファイバーコードは石英のシングルモードと光/電気信号変換、電気/光信号変換用のデバイスを必要とすることなく直接にファイバー同士の接続が可能である。さらに折れ曲げ時に光の漏れを防止して損失を抑えることが可能であるためOA(オフィスオートメーション)機器内、あるいはまた自動車、航空機内部の配線等の細かい部分の光伝送にも利用できる。
【0011】
また本発明の光ファイバーは、それら単独あるいはバンドルファイバーやケーブル等のそれらを構成要素として含む製品として使用され、自動車のエンジンルーム等での過酷な使用条件に耐える、耐熱性、耐薬品性、耐湿性、不燃性を備えるものである。
【0012】
本発明の光ファイバー素線は、含フッ素重合体(a)をマトリックスとし、その光ファイバーが外層と屈折率分布を有する内層との同心円状の少なくとも2層からなり、外層が内層の最外部に対して屈折率が0.001以上低いものである。
【0013】
内層は、たとえば、図1における屈折率が1.36から1.34への変化が示すように、中心から半径方向に向かって屈折率が放物線に近い曲線で低下している屈折率分布を示す層である。以下、この層を芯材ということがある。
【0014】
この内層に接する、上記外層は内層の最外部に対して屈折率が0.001以上低い層であり、この内外層間の屈折率の差により光の漏れを抑制できる。
【0015】
外層は、内層の最外部に対して屈折率が0.001以上低いかぎり、2層以上の多層から形成されていてもよく、また図1に示す様に屈折率が均一の層でもよく、屈折率分布を有するものでもよい。
【0016】
外層の屈折率は、内層の最外部に対して0.005以上低いことが好ましい。また、外層の最外層へ含フッ素重合体(a)以外の重合体からなる保護被覆層を形成し、光ファイバーコードとしてもよい。光ファイバーコードを複数本束ねて、バンドルファイバーとすることもできる。
【0017】
本発明の光ファイバーの製造方法としては、以下の(1)〜(3)の方法がある。しかし、これらに限られるものではない。特に好ましい方法は(1)および(2)である。以下の製造方法の説明において、含フッ素重合体(a)の内含フッ素重合体(a−1)は含フッ素重合体(a−2)より高屈折率な重合体であり、物質(b)はマトリックスに屈折率を与える物質であり、その内物質(b−1)は含フッ素重合体(a)より高屈折率な物質であり、物質(b−2)は含フッ素重合体(a)より低屈折率な物質であるとする。
【0018】
(1)含フッ素重合体(a−2)を溶融し、その溶融液の中心部に溶融した含フッ素重合体(a−1)をさらにその(a−1)の溶融液の中心部に、物質(b−1)、または物質(b−1)を含む溶融した含フッ素重合体(a−1)を注入し、物質(b−1)を中心から周辺方向に拡散させながら、光ファイバーを成形する方法。または、同じ方法でプリフォームを製造した後、延伸して光ファイバーに成形する方法。
【0019】
この場合、外層が含フッ素重合体(a−2)により形成されることになる。外層と内層の最外部との屈折率の差が0.001以上あるかぎり、外層の一部まで物質(b−1)が拡散されてもよい。
【0020】
(2)含フッ素重合体(a−1)に物質(b)を分布させて得られる内層からなる芯材をまず製造し、この芯材に含フッ素重合体(a−2)、物質(b−2)、含フッ素重合体(a−1)、物質(b−1)などの低屈折率材料をコートし、外層を形成する方法。芯材の製造方法は、後述の方法を採用できる。
【0021】
低屈折率材料の屈折率は、内層の最外部と外層との屈折率の差が0.001以上となる様に選択される。
【0022】
(3)含フッ素重合体(a)のマトリックスに物質(b−1)を分布させるとともに芯材外表面まで存在させて得られる内層からなる芯材に、含フッ素重合体(a)をコートし、マトリックス外層を形成する方法。この場合、芯材最外部の屈折率は、物質(b−1)の存在により含フッ素重合体(a)の屈折率よりも0.01以上高い必要がある。
【0023】
上記(2)〜(3)におけるコート方法としては、ディップコート方法が好ましい。
【0024】
本発明における含フッ素重合体(a)は、C−H結合を有しないで主鎖に環構造を有する含フッ素重合体である。主鎖に環構造を有する含フッ素重合体としては、含フッ素脂肪族環構造、含フッ素イミド環構造、含フッ素トリアジン環構造または含フッ素芳香族環構造を有する含フッ素重合体が好ましい。含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体では含フッ素脂肪族エーテル環構造を有するものがさらに好ましい。含フッ素重合体(a)としては、含フッ素ポリイミド環構造を有する含フッ素重合体と含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が好ましく、特に後者が好ましい。
【0025】
含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体は、含フッ素イミド環構造、含フッ素トリアジン環構造または含フッ素芳香族環構造を有する含フッ素重合体に比べ、後述の熱延伸または溶融紡糸によるファイバー化に際してもポリマー分子が配向しにくく、その結果光の散乱を起こすこともないなどの理由から、より好ましい重合体である。
【0026】
含フッ素重合体(a)の溶融状態における粘度は、溶融温度200℃〜300℃において103〜105ポイズが好ましい。溶融粘度が高すぎると溶融紡糸が困難なばかりでなく、屈折率分布の形成に必要な、物質(b)の拡散が起こりにくくなり、屈折率分布の形成が困難になる。また、溶融粘度が低過ぎると実用上問題が生じる。すなわち、電子機器や自動車等での光伝送体として用いられる場合に高温にさらされ軟化し、光の伝送性能が低下する。
【0027】
含フッ素重合体(a)の数平均分子量は、10,000〜5000,000が好ましく、より好ましくは50,000〜1000,000である。分子量が小さ過ぎると耐熱性を阻害することがあり、大き過ぎると屈折率分布を有する光伝送体の形成が困難になるため好ましくない。
【0028】
含フッ素脂肪族環構造を有する重合体としては、含フッ素環構造を有するモノマーを重合して得られるものや、少なくとも2つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が好適である。
【0029】
含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーを重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、特公昭63−18964号公報等により知られている。即ち、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)等の含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーを単独重合することにより、またこのモノマーをテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニールエーテル)などのラジカル重合性モノマーと共重合することにより主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られる。このような重合体の繰り返し単位の例を前述の(IV)に示す。
【0030】
また、少なくとも2つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、特開昭63−238111号公報や特開昭63−238115号公報等により知られている。即ち、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)、CF2=CF−CF2−CFCl−CF2−CF=CF2等のモノマーを環化重合することにより、またはこのようなモノマーをテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニールエーテル)などのラジカル重合性モノマーと共重合することにより主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られる。このような重合体の繰り返し単位の例を前述の(I)〜(III)に示す。
【0031】
また、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)等の含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーとパーフルオロ(アリルビニルエーテル)やパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等の少なくとも2つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーとを共重合することによっても主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られる。
【0032】
含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、主鎖に環構造を有する重合体が好適であるが、環構造を有する重合単位を20モル%以上、好ましくは40モル%以上含有するものが透明性、機械的特性等の面から好ましい。
【0033】
含フッ素ポリイミドの製造法は特に限定されないが、例えばパーフルオロピロメリット酸無水物などの全ての水素原子がフッ素原子で置換された芳香族テトラカルボン酸無水物とパーフルオロp,p’−ジアミノジフェニルエーテルなどの全ての水素原子がフッ素原子で置換された芳香族ジアミンの反応でポリアミド酸を生成し、これを更に加熱して含フッ素ポリイミドとする方法などによって生成される。
【0034】
含フッ素ポリイミドとしては、具体的には下記の(V)式から選ばれた繰り返し単位を有することを特徴とするものが例示される。なお、これらの含フッ素重合体(a)中のフッ素原子は、屈折率を高めるために一部塩素原子で置換されていてもよい。
【0035】
【化3】
【0036】
[上記(V)式において、R1は
【0037】
【化4】
【0038】
から選ばれ、R2は
【0039】
【化5】
【0040】
から選ばれる。ここで、Rfはフッ素原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、パーフルオロアルコキシ基、パーフルオロフェノキシ基から選ばれ、これらは各々同一であっても異なっていてもよい。Yは、
【0041】
【化6】
【0042】
から選ばれる。ここで、R’fはパーフルオロアルキレン基、パーフルオロアリーレン基から選ばれ、これらは各々同一であっても異なっていてもよい。rは1〜10である。又、Yと2つのRfが炭素をはさんで環を形成してもよく、その場合、環は飽和環でも不飽和環でもよい。]
含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、主鎖に環構造を有する重合体が好適であるが、環構造を有する重合単位を20モル%以上、好ましくは40モル%以上含有するものが透明性、機械的特性等の面から好ましい。
【0043】
物質(b)は、含フッ素重合体(a)との比較において屈折率の差が0.001以上である少なくとも1種類の物質であり、含フッ素重合体(a)よりも高屈折率であっても低屈折率であってもよい。通常は含フッ素重合体(a)よりも高屈折率の物質を用いる。
【0044】
この物質(b)としては、ベンゼン環等の芳香族環、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、エーテル結合等の結合基を含む、低分子化合物、オリゴマー、ポリマーが好ましい。又、物質(b)は、含フッ素重合体(a)と同様な理由から実質的にC−H結合を有しない物質である。含フッ素重合体(a)との屈折率の差は0.005以上であることが好ましい。
【0045】
オリゴマーやポリマーである物質(b)としては、前記したような含フッ素重合体(a)を形成するモノマーの重合体からなり、含フッ素重合体(a)との比較において屈折率の差が0.001以上であるオリゴマーやポリマーであってもよい。モノマーとしては、含フッ素重合体(a)との比較において屈折率の差が0.001以上である重合体を形成するものから選ばれる。たとえば、屈折率の異なる2種の含フッ素重合体(a)を用い、一方の重合体(a)を物質(b)として他の重合体(a)中に分布させることができる。
【0046】
これらの物質(b)は、上記マトリックスとの比較において、溶解性パラメータの差が7(cal/cm3)1/2以内であることが好ましい。ここで溶解性パラメータとは物質間の混合性の尺度となる特性値であり、溶解性パラメータをδ、物質の分子凝集エネルギーをE、分子容をVとして、式δ=(E/V)1/2で表される。
【0047】
低分子化合物としては、例えば炭素原子に結合した水素原子を含まないハロゲン化芳香族炭化水素がある。特に、ハロゲン原子としてフッ素原子のみを含むハロゲン化芳香族炭化水素やフッ素原子と他のハロゲン原子を含むハロゲン化芳香族炭化水素が、含フッ素重合体(a)との相溶性の面で好ましい。又、これらのハロゲン化芳香族炭化水素は、カルボニル基、シアノ基などの官能基を有していないことがより好ましい。
【0048】
このようなハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば式Фr−Zb[Фrは水素原子のすべてがフッ素原子に置換されたb価のフッ素化芳香環残基、Zはフッ素又はフッ素以外のハロゲン原子、−Rf、−CO−Rf、−O−Rf、あるいは−CN。ただし、Rfはパーフルオロアルキル基、ポリフルオロパーハロアルキル基、または1価のФr。bは0または1以上の整数。]で表される化合物がある。芳香環としてはベンゼン環やナフタレン環がある。Rfであるパーフルオロアルキル基やポリフルオロパーハロアルキル基の炭素数は5以下が好ましい。フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子や臭素原子が好ましい。
【0049】
具体的な化合物としては例えば、1,3−ジブロモテトラフルオロベンゼン、1,4−ジブロモテトラフルオロベンゼン、2−ブロモテトラフルオロベンゾトリフルオライド、クロロペンタフルオロベンゼン、ブロモペンタフルオロベンゼン、ヨードペンタフルオロベンゼン、デカフルオロベンゾフェノン、パーフルオロアセトフェノン、パーフルオロビフェニル、クロロヘプタフルオロナフタレン、ブロモヘプタフルオロナフタレンなどがある。
【0050】
ポリマーやオリゴマーである物質(b)としては、前記(I)〜(V)の繰り返し単位を有するものの内、組み合される含フッ素重合体(a)とは異なる屈折率を有する含フッ素重合体(例えば、ハロゲン原子としてフッ素原子のみを含む含フッ素重合体とフッ素原子と塩素原子を含む含フッ素重合体との組み合わせ、異なる種類や異なる割合の2以上のモノマーを重合して得られた2種の含フッ素重合体の組み合わせなど)が好ましい。
【0051】
また、上記のごとき主鎖に環構造を有する含フッ素重合体以外に、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどの水素原子を含まないモノマーからなるオリゴマー、それらモノマー2種以上の共重合オリゴマーなども物質(b)として使用できる。又、−CF2CF(CF3)O−や−(CF2)nO−(nは1〜3の整数)の構造単位を有するパーフルオロポリエーテルなども使用できる。これらオリゴマーの分子量は、非結晶性となる分子量範囲から選ばれ、数平均分子量300〜10,000が好ましい。拡散のしやすさを考慮すると、数平均分子量300〜5000がさらに好ましい。
【0052】
特に好ましい物質(b)は、主鎖に環構造を有する含フッ素重合体(a)との相溶性が良好であること等から、クロロトリフロオロエチレンオリゴマーである。相溶性が良好であることにより、主鎖に環構造を有する含フッ素重合体(a)、とクロロトリフルオロエチレンオリゴマーとを200〜300℃で加熱溶融により容易に混合させることができる。また、含フッ素溶媒に溶解させて混合した後、溶媒を除去することにより両者を均一に混合させることができる。クロロトリフルオロエチレンオリゴマーの好ましい分子量は、数平均分子量500〜1500である。
【0053】
本発明における屈折率分布型光ファイバーのマトリックス内層である芯材において、物質(b)は含フッ素重合体(a)中に中心から周辺方向に沿って濃度勾配を有して分布している。好ましくは、物質(b)が含フッ素重合体(a)よりも高屈折率の物質であり、この物質(b)が芯材の中心から周辺方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している。ある場合には物質(b)が含フッ素重合体(a)よりも低屈折率の物質であり、この物質が芯材の周辺から中心方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布しているものも有用である。前者の芯材は通常物質(b)を中心に配置し周辺方向に向かって拡散させることにより製造できる。後者の芯材は物質(b)を周辺から中心方向に拡散させることによって製造できる。
【0054】
本発明の光ファイバーの芯材の製造において、樹脂の成形と屈折率分布の形成は同時であっても別々であってもよい。たとえば、紡糸や押し出し成形等により屈折率分布を形成すると同時に屈折率分布を形成して製造できる。また、紡糸や押し出し成形で樹脂の成形を行った後、屈折率分布を形成することができる。さらに、屈折率分布を有するプリフォーム(母材)を製造し、このプリフォームを成形(たとえば紡糸)して芯材を製造できる。
【0055】
本発明における光ファイバーの芯材の製造方法としては、例えば以下の(1)〜(7)の方法がある。しかしこれらに限られるものではない、特に好ましい方法は(1)の方法である。
【0056】
(1)含フッ素重合体(a)を溶融し、含フッ素重合体(a)の溶融液の中心部に物質(b)またはその物質(b)を含む含フッ素重合体(a)を注入し、物質(b)を拡散させながら、または拡散させた後に成形する方法。
【0057】
この場合、物質(b)を注入するには、中心部に1層のみ物質(b)を注入する場合のみならず、中心部に物質(b)を多層に注入してもよい。成形には光ファイバーのプリフォーム等のごときロッド状母材を成形するために適する押出溶融成形、光ファイバーを成形するために適する溶融紡糸成形等がある。
【0058】
(2)溶融紡糸や延伸などによって得られた含フッ素重合体(a)からなる芯材に、物質(b)またはその物質(b)を含む含フッ素重合体(a)を繰り返しディップコートする方法。
【0059】
(3)回転ガラス管などを利用して中空状の含フッ素重合体(a)からなる管を形成し、この重合体管の内部に物質(b)またはその物質(b)を含む含フッ素重合体(a)を形成するモノマー相を密封し、低速で回転させながら重合させる方法。
【0060】
この界面ゲル共重合の場合、重合過程において、含フッ素重合体(a)からなる管がモノマー相に膨潤し、ゲル相が形成され、モノマー分子が選択的にゲル相内に拡散しながら重合される。
【0061】
(4)含フッ素重合体(a)を形成するモノマーと物質(b)を形成するモノマーであって、それらモノマーの反応性が異なる2種のモノマーを用いて、生成する含フッ素重合体(a)と物質(b)の組成比が周辺部から中心に向かって連続的に変化するように重合反応を進行させる方法。
【0062】
(5)含フッ素重合体(a)と物質(b)を均一に混合した混合物または溶媒中で均一に混合した後、溶媒のみを揮発除去させることにより得られる混合物を、熱延伸または溶融押出によりファイバー化し、次いで(またはファイバー化直後に)加熱状態で不活性ガスと接触させて物質(b)を表面から揮発させることにより屈折率分布を形成する方法。または、上記ファイバー化した後、含フッ素重合体(a)を溶解せずに物質(b)のみを溶解する溶媒中にファイバーを浸漬し、物質(b)をファイバー表面から溶出させることにより屈折率分布を形成する方法。
【0063】
(6)含フッ素重合体(a)からなるロッドまたはファイバーに、含フッ素重合体(a)よりも屈折率が小さい物質(b)のみを被覆するか、または含フッ素重合体(a)と物質(b)との混合物を被覆し、次いで加熱により物質(b)を拡散させて屈折率分布を形成する方法。
【0064】
(7)高屈折率重合体と低屈折率重合体とを加熱溶融または溶媒を含有する溶液状態で混合し、それぞれ混合割合の異なる状態で多層押出させながら(または押出したのちに)両者を互いに拡散させ、最終的に屈折率分布の形成されたファイバーを得る方法。この場合、高屈折率重合体が含フッ素重合体(a)で低屈折率重合体が物質(b)でもよく、高屈折率重合体が物質(b)で低屈折率重合体が物質(b)でもよい。
【0065】
本発明の光ファイバーには、保護被覆層を設けることができる。被覆層を構成する重合体は、前記マトリックスの含フッ素重合体(a)以外の重合体からなる。この被覆層を構成する重合体の種類は特に制限はなく、従来の無機又はプラスチック光ファイバー素線の被覆に用いられていたもの、または、下記に挙げる含フッ素重合体等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。例えば、非フッ素系重合体として、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(水)架橋型ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマーなどのポリオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系重合体、軟質塩化ビニル樹脂等のビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系重合体、ジメチルポリシロキサン重合体、ポリフルオロアルキルメチルポリシロキサン重合体などのシリコーン系重合体、ポリアミド、(発泡)ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリ4−メチルペンテンー1、ポリアミドイミド等が挙げられる。含フッ素重合体としては、含フッ素ゴム、トリフルオロエチレン重合体、クロロトリフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン−(パーフルオロアルキル)エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の下記(VI)〜(X)から選ばれる繰り返し単位を有する含フッ素重合体が挙げられる。
【0066】
【化7】
【0067】
また、上記重合体のコートとは別に、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などの硬化性樹脂を光ファイバーにコートし、硬化させて被覆層を形成することもできる。紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を用いた場合には、比較的低温で被覆が行えるため光ファイバー素線へのダメージが少ないという利点がある。紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、シリコンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、ポリフルオロアルキルアクリレート系等硬化型樹脂があげられる。これら硬化型樹脂を用いる場合には、適度な粘度を有する液状の樹脂を屈折率分布型光ファイバーの表面に塗布した後硬化する方法が適用される。一方、ポリアミドやポリイミド樹脂を用いた場合にはファイバーコードの引っ張り強度が増大し、機械的な耐久性が飛躍的に向上する。
【0068】
被覆材を構成する上記に例示されるような重合体には、所望により可塑剤、顔料、架橋剤、接着剤等を加えることができる。
【0069】
被覆層を有する光ファイバーコードの製造は特に制約は受けない。例えば、前述の方法で製造した本発明の光ファイバーの外側に、被覆材を押し出し被覆、あるいはソルベントコーティング法等により形成することにより目的の光ファイバーコードが得られる。又、本発明では各光ファイバーを被覆してコードとしたあと、複数本を束ねてバンドルファイバーとすることができる。バンドルファイバーには、コードを並列に並べて構成される多芯テープ心線が含まれる。光ファイバーを芳香族ポリアミド、ガラスまたは炭素繊維で補強したプラスチックまたは金属で被覆することによりケーブルとすることもできる。ケーブル内部の隙間を糸、紐、紙、プラスチック、各種の緩衝材または溝つきスペーサーなどで埋めてもよい。
【0070】
本発明の光ファイバーは、石英シングルモード光ファイバーと直接に接続できるだけでなく、あらゆる光ファイバーに接続された光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などの光ブランチングデバイス、光スイッチ、光減衰器、光アイソレータ、偏光子、光集積回路、光送信モジュール、光受信モジュール、等の光部品とも直接に接続可能であり、それらの低損失性、高帯域性を損ねることなく信号の伝送が可能である。
【0071】
本発明の光ファイバーは、加入者系の通信線、工場内LAN、病院内LAN、学校内LAN等の公共施設内でのLAN、フロアーケーブル、電力線監視通信線、自動車用途、電車の運転条件のモニタ画像伝送、外洋航路の大型船舶内の通信用、航空機内のデータ伝送、業務用ゲーム機を始めとするアミューズメント関係などの高速、高帯域を必要とする映像伝送、高画質の動画、立体画像の伝送、コンピューターないし自動交換機等の機器内配線、一般の屋内通信網、各種センサ分野、照明、イルミネーション分野、エネルギー伝送などの様々な分野での利用が可能である。
【0072】
【実施例】
次に、本発明の実施例について更に具体的に説明するが、この説明が本発明を限定するものでないことは勿論である。
【0073】
合成例1
パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)30g、イオン交換水120g、メタノール4.8g及び重合開始剤として((CH3)2CHOCOO)276mgを、内容積200mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。系内を3回窒素で置換した後、40℃で22時間懸濁重合を行った。得られた重合物を単離後300℃で熱処理し、水洗した。その結果、無色透明な重合体(以下、重合体Aという)を26g得た。この重合体Aの固有粘度[η]は、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中30℃で0.34であった。重合体のガラス転移点は108℃であり、屈折率は1.34であった。
【0074】
合成例2
パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)8g、パーフルオロ(2,2−ジメチルー1,3−ジオキソール)2g、パーフルオロ(2ーブチルテトラヒドロフラン)10g、重合開始材として((CH3)2CHOCOO)220mgを、内容積50mlの耐圧ガラス製アンプルに入れた。系内を3回窒素で置換した後、40℃で20時間重合を行った。その結果、無色透明な重合体(以下、重合体Bという)6.7gを得た。この重合体Bのガラス転移温度は157℃、屈折率は1.32であった。
【0075】
合成例3
パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)2g、パーフルオロ(2,2−ジメチルー1,3−ジオキソール)8g、パーフルオロ(2ーブチルテトラヒドロフラン)10g、重合開始材として((CH3)2CHOCOO)220mgを、内容積50mlの耐圧ガラス製アンプルに入れた。系内を3回窒素で置換した後、30℃で20時間重合を行った。その結果、透明な重合体(以下、重合体Cという)7gを得た。この重合体Cのガラス転移温度は210℃、屈折率は1.29であった。
【0076】
実施例1
上記合成例1で得られた重合体Aをパーフルオロ(2ーブチルテトラヒドロフラン)溶媒中で溶解しこれに屈折率1.42である、クロロトリフルオロエチレンオリゴマー(商品名 ダイフロイル#20;ダイキン社製)を15重量%量添加し混合溶液を得た。この溶液を脱溶媒し透明な混合重合体(以下、混合重合体Dという)を得た。重合体Bを溶融し、その内側に溶融した重合体Aを、さらに中心に溶融液の混合重合体Dを注入しながら300℃で3色押出しによる溶融紡糸することにより図1に示すごとく、中心部の屈折率が1.36であり、周辺部の1.34の屈折率までおおよそ放物線的に徐々に低下し、さらに最外層の屈折率が1.32である光ファイバーコードが得られた。得られた光ファイバーコードの光伝送損失は、780nmで300dB/km、1550nmで130dB/kmであり、近赤外光までの光を良好に伝送できる光ファイバーで有ることを確かめた。更にこの光ファイバーコードの曲げ半径と増加損失測定を行ったところ、図2に示すように1550nmにおいて曲げ半径5mmで増加損失0.8dBとなった。
【0077】
実施例2
重合体Bの替わりに合成例3で得られた重合体Cを用いたほかは実施例1と同様にして、中心部の屈折率が1.36であり、周辺部の1.34の屈折率まで一方向に徐々に低下し、さらに最外層の屈折率が1.29である光ファイバーコードが得られた。得られた光ファイバーコードの光伝送損失は、1550nmで130dB/kmであり、近赤外光までの光を良好に伝送できる光ファイバーで有ることを確かめた。更にこの光ファイバーコードの曲げ半径と増加損失測定を行ったところ、図2に示すように曲げ半径5mmで増加損失0.5dBとなった。
【0078】
比較例
重合体Aを溶融し、中心に溶融液の混合重合体Dを注入しながら300℃で2色押出しによる溶融紡糸することにより、中心部の屈折率が1.36であり、周辺部の1.34の屈折率まで徐々に低下する光ファイバーが得られた。得られた光ファイバーの光伝送損失は、1550nmで130dB/kmであり、近赤外光までの光を良好に伝送できる光ファイバーであることを確かめた。更にこの光ファイバーコードの曲げ半径と増加損失測定を行ったところ、図2に示すように曲げ半径5mmで増加損失3.5dBとなり、実施例2と比較して7倍の大きさとなった。
【0079】
【発明の効果】
本発明の光ファイバーにより、紫外光から近赤外までの光を極めて低損失に、かつ曲げ時の増加損失を少なく伝送することが可能になった。特にこの光ファイバーはファイバー径が大きいにも関わらずフレキシブルで分岐・接続が容易であるため短距離光通信用に最適であり、かつ折れ曲げにより光伝送損失が小さいのでOA機器等の配線に利用できる耐熱性、耐薬品性、耐湿性、不燃性を備える光ファイバーである。
【0080】
本発明の光ファイバーは、波長700〜1,600nmで100mの伝送損失が100dB以下とすることができる。特に主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体では同様な波長で、100mの伝送損失が50dB以下とすることができる。波長700〜1,600nmという比較的長波長において、このような低レベルの伝送損失であることは極めて有利である。すなわち、石英光ファイバーと同じ波長を使えることにより、石英光ファイバーとの接続が容易であり、また波長700〜1,600nmよりも短波長を使わざるをえない従来のプラスチック光ファイバーに比べ、安価な光源で済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバーの屈折率分布。
【図2】静置屈曲試験結果。
Claims (2)
- 主鎖に環構造を有し、実質的にC−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体をマトリックスとする波長700〜1,600nmで100mの伝送損失が100dB以下である屈折率分布型光ファイバーにおいて、光ファイバーが外層と屈折率分布を有する内層との同心円状の少なくとも2層からなり、内層は、主鎖に環構造を有し、実質的にC−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体中に実質的にC−H結合を有しない他の物質が中心から周辺方向に沿って濃度勾配を有して分布しており、外層が内層の最外部に対して屈折率が0.001以上低いことを特徴とする光ファイバー。
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