JP3719451B2 - ガスタービンの圧縮機可変案内翼およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガスタービンの先端部または中間部に配置される圧縮機の可変案内翼およびその製造方法に関し、繊維強化プラスチック製としたもので、特にガスタービンの先端部に配置される圧縮機の入り口可変案内翼において鳥などの吸い込みよる衝撃力が加わる場合にも支障なく使用することができる耐衝撃性を確保しつつ、軽量化を図ることができるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
ガスタービン、特に航空用エンジンにおいては、軽量化やコスト低減のため従来の金属材料に代えて部品を繊維強化プラスチック(FRP)で作ることが有効とされ、ダクトなどの一部に実用化されている。
【0003】
航空用エンジン(ガスタービン)で軽量化が検討されている部品の一つに圧縮機入り口可変案内翼があり、エンジンの形式によってエンジンの中間部に配置される低圧圧縮機および高圧圧縮機のそれぞれの入り口に可変案内翼を設ける場合とエンジンの先端部に入り口案内翼を設ける場合がある。
【0004】
このような圧縮機入り口可変案内翼は、エンジンに対する圧縮機の配置にかかわらず、半径方向の長さが比較的長く、枚数も多いことからいずれの場合にもガスタービンの軽量化およびコスト低減のためにFRP化することが有効と考えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような圧縮機入り口可変案内翼のうちエンジンの中間部に配置される場合には、鳥などの異物の吸い込みによる衝撃力が加わる恐れは比較的少ないもののダクトなどに比べ、かなりの耐衝撃性などが要求され、例えば、図4に示すような航空機用のガスタービン1の圧縮機2の入り口可変案内翼3にあっては、ガスタービン1の先端のストラット4の後方で圧縮機2の動翼の前方に配置され、しかもスピンドル部5で支持されて図示しない可変機構で必要流入空気量に応じて動かされることから、鳥などの異物吸引による損傷が問題となり、一層大きな耐衝撃性が要求され、従来から使用されているチタン(Ti)やアルミニウム合金(Al合金)などの金属に代えて耐衝撃性に劣るFRP素材のみで作ることは困難であった。
【0006】
この発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、耐衝撃性を確保しつつ軽量化を図ることができるガスタービンの圧縮機可変案内翼およびその製造方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術が有する課題を解決するため、この発明の請求項1記載のガスタービンの圧縮機可変案内翼は、ガスタービンの圧縮機入り口部に設けられ半径方向両端部のスピンドル部を介して回動可能に取付けられる入り口可変案内翼であって、前記半径方向両端部のスピンドル部とこれらを連続する補強用芯部とを金属で一体に形成して支持補強材とするとともに、この支持補強材の補強用芯部を囲んで繊維強化プラスチックを積層した繊維強化プラスチック積層部を形成してなることを特徴とするものである。
【0008】
すなわち、ガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼の可変機構への取付部となる半径方向両端部のスピンドル部とこれらを連続する補強用芯部とを金属で一体に形成して支持補強材とするようにし、この金属製の支持補強材の外側を囲むように繊維強化プラスチック(FRP)を積層して複合化するようにしており、金属とFRPの複合構造とすることにより軽量化を図ると同時に、耐衝撃性を向上させてガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼への適用を可能としている。
【0009】
ここで、支持補強材を構成する金属としては、金属製の入り口可変案内翼の素材として使用されているチタン合金(Ti合金)やアルミニウム合金(Al合金)などを用いることができる。
【0010】
また、金属製の支持補強材とこの外側に積層されるFRPとの比率は、ガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼として必要とされる耐衝撃性によって定めれば良く、金属製の支持補強材の比率を高めることで耐衝撃性は向上するが、一方で重量が金属のみのものに近づくことになるが、僅かでも軽量化を図ることができ、試作・実験によれば重量を50%程度に軽量化しても耐衝撃性に問題のないものを得ることができた。
【0011】
さらに、積層して使用する繊維強化プラスチック(FRP)としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などいずれでも良い。
【0012】
また、この発明の請求項2記載のガスタービンの圧縮機可変案内翼は、請求項1記載の構成に加え、繊維強化プラスチック(FRP)として繊維強化熱可塑性プラスチックを用いるようにしている。
【0013】
これにより、熱硬化性樹脂に比べ、耐衝撃性が高く、一層耐衝撃性に優れたガスタービンの圧縮機可変案内翼を得ることができる。
【0014】
この繊維強化熱可塑性プラスチックとしては、例えばポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)や熱可塑性ポリイミド樹脂(PIX)等の熱可塑性樹脂をマトリックスとするFRPを使用することができる。
【0015】
そして、これらのガスタービンの圧縮機可変案内翼に用いられる強化繊維としても通常FRPに使用される強化用の繊維を用いることができるが、強度などを考慮して炭素繊維を用いることが好ましい。また、このFRPの積層数についても圧縮機入り口可変案内翼の大きさや強化繊維などの厚さなどによって適宜定められる。
【0016】
さらに、この発明の請求項3記載のガスタービンの圧縮機可変案内翼の製造方法は、ガスタービンの圧縮機入り口部に設けられ半径方向両端部のスピンドル部を介して回動可能に取付けられる入り口可変案内翼を成形するに際し、前記半径方向両端部のスピンドル部とこれらを連続する補強用芯部とでなる支持補強材を金属で一体に形成し、この支持補強材の補強用芯部を囲んで繊維強化熱可塑性プラスチックのプリプレグを積層した繊維強化プラスチック積層部を形成したのち、ホットプレス法で成形することを特徴とするものである。
【0017】
すなわち、ガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼を繊維強化熱可塑性プラスチックで製造しようとすると、従来のレジントランスファモールディグ法により成形することが樹脂の流動性の点で難しいが、予め強化繊維と熱可塑性樹脂とでプリプレグを作り、これを積層したのち、金型内に入れてホットプレスで成形することで、寸法精度の高い製品を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の内容について図面に基づき詳細に説明する。
図1はこの発明のガスタービンの圧縮機可変案内翼の一実施の形態にかかり、支持補強材のみの正面図、全体の正面図、全体の横断面図である。
【0019】
このガスタービンの圧縮機可変案内翼は、既に説明した図4の金属製のガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼3に代えて使用されるものであり、繊維強化プラスチック(以下、単にFRPとする。)と金属の複合構造で構成してある。
【0020】
このガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼10は、金属製の支持補強材11を備えており、図1(a)に示すように、圧縮機への取付部となる半径方向両端部に円柱状のスピンドル部12が形成されるとともに、これら2つの円柱状のスピンドル部12の間に補強用芯部13が配置されて一体の金属で作られている。
【0021】
この補強用芯部13は、その横断面形状がガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼10の翼形の横断面形状をほぼ相似的に縮小した形状とされ、この補強用芯部13の上下端面にスピンドル部12が一体とされ、スピンドル部12の直径が補強用芯部13の翼断面の厚さより厚いことから傾斜面で連続するようにしてある。 そして、このような支持補強材11は、その翼部分の長さを長くすれば、ガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼10に占める金属部分が多くなって重量低減効果が減少する一方で耐衝撃性が向上することから、製品として必要な耐衝撃性を考慮してスピンドル部12から横に突き出す翼部分の長さが決定され、例えば、チタンのみで作られた金属製のタービンの圧縮機入り口案内翼の代わりに用いる場合では、製品の案内翼の長さの1/3程度の支持補強材11で必要な耐衝撃性を得ることができた。
【0022】
この支持補強材11に使用される金属としては、従来の金属製のガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼の場合と同様にチタン合金やアルミニウム合金等を用いる。そして、支持補強材11の製作は、例えば機械加工によってスピンドル部12と補強用芯部13とを一体に削り出すことなどで行われ、次工程でのFRPの積層の際の接合性の向上のため、必要に応じて支持補強材11の補強用芯部13の表面にサンドブラスト処理などを施す。
【0023】
このような支持補強材11の補強用芯部13の外側には、FRPが積層されてFRP積層部14が一体に形成されて所定寸法のガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼10とされる。なお、支持補強材11の補強用芯部13の大きさによってはさらにコアを入れるようにしても良く、例えばUD材コアが使用される。
【0024】
このFRP積層部14としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のいずれでも使用することができ、熱硬化性樹脂を用いる場合には、たとえばその流動性を利用して強化用繊維のみを支持補強材11の外側に配置して製品形状に金型でプレス成形した後、金型内で熱硬化性樹脂を含浸させるレジン・トランスファモールディングで成形できる。
【0025】
一方、熱可塑性樹脂を用いる場合には、熱硬化性樹脂に比べて耐衝撃性が高いことからガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼10としての性能(耐衝撃性)確保の点で有利であるが、加熱状態でも熱可塑性樹脂の流動性が低いことから成形が難しい。
【0026】
そこで、この発明のガスタービンの圧縮機可変案内翼の製造方法の一形態を示す、例えば図2の製造工程のように、強化用繊維と熱可塑性樹脂とで予めシート状のプリプレグ15を作り、これを支持補強材11の補強用芯部13の外側を包むように積層したのち、金型に入れてプレス成形をおこなって所定寸法に仕上げることで金属製の支持補強材11を有するガスタービンの圧縮機案内翼10を作ることができる。
【0027】
このプリプレグ15の積層に当たっては、たとえば補強用芯部13の内側に配置されるものほど長さを短くし、外側に配置されるプリプレグ15で全体を包むことができるようにするため、予めプリプレグ15の切断を行った後、空気の流入方向前端縁が連続し、流入方向後端縁で両端部を合わせるように曲げ加工を行なって積層する。
【0028】
また、プリプレグ15の積層は長いものと短いものを交互にしたりすることもでき、種々の配置が選択できるとともに、耐衝撃性を考慮してインターリーフを挿入するようにしても良い。
【0029】
このように金属製の支持補強材11に可変機構への取付部となるスピンドル部12を形成するとともに、FRPに埋め込まれる補強用芯部13を一体に形成し、この支持補強材11の補強用芯部13を包むようにFRPを積層してガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼10とするようにしたので、従来のガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼全体を金属で作る場合に比べて重量の軽減を図ることができるとともに、従来のガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼全体をFRPで作る場合に比べて耐衝撃性を向上することができ、圧縮機のエンジンに対する配置が先端部の場合や中間部のいずれの場合にもガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼10として十分使用することが可能となった。
【0030】
【実施例】
支持補強材としてチタン合金(Ti−6Al−4V)を用い、FRP積層部として炭素繊維強化プラスチック材料(CFRP)である炭素繊維(UT500)とPEEK樹脂をマトリックスとして用いたプレプレグを使用した。
【0031】
そして、支持補強材は機械加工後、CFRPの接合面にサンドブラスト処理を行い、プリプレグは積層位置に応じた長さに切断した後、空気の流入側前端縁の曲率に合わせて曲げ加工を行った。
【0032】
次いで、支持補強材の補強用芯部の外側にプリプレグを積層した状態で金型にセットし、ホットプレス成形を行った。
【0033】
また、比較のため同一形状のガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼をチタン合金とアルミニウム合金を用いてそれぞれ製作した。
【0034】
こうして得られたこの発明の金属製の支持補強材を有するガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼は、その重量が同一形状の全チタン製の翼に比べて約50%であり、大幅な重量低減効果が得られることが確認できた。
【0035】
また、耐衝撃性を調べるため、各ガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼の半径方向両端部のスピンドル部を固定台の穴に差し込むとともに、回転をアームで拘束した状態とし、鳥の吸い込みに相当する衝撃エネルギをゼラチンの速度と重量で調整して打ち込んで試験を行い、その結果を図3に示した。なお、図中の縦軸は目視による観察結果であり、横軸は衝撃エネルギである。
【0036】
同図から明らかなように、小型の鳥の吸い込みに相当する1000J以下の衝撃エネルギでは、本発明のFRP製の翼も図示しない比較用のアルミニウム製の翼も外観上の損傷は見られない。
【0037】
しかし、これ以上の衝撃エネルギでは、比較用のチタン製やアルミニウム製の全金属製の翼では、いずれもスピンドル部分の破断が生じてしまうのに対し、本発明のFRP製の翼では、FRP部分の剥離が大きくなってついには分割されるがスピンドル分の破断は起こらず、金属製の支持補強材が可変機構に支持された状態で保持される。
【0038】
これにより、全金属製の翼では、破損した翼全体の吸い込みにより圧縮機の回転部分に大きな損傷が加わるが、本発明のFRP製の翼では、FRP部分のみが分割されて吸い込まれることになって圧縮機の回転部分の損傷が極力防止され、耐衝撃性においても全金属製の翼に何等劣るものでないことを確認した。
【0039】
【発明の効果】
以上、実施の形態とともに具体的に説明したようにこの発明の請求項1記載のガスタービンの圧縮機可変案内翼によれば、ガスタービンの圧縮機可変案内翼の可変機構への取付部となる半径方向両端部のスピンドル部とこれらを連続する補強用芯部とを金属で一体に形成して支持補強材とするようにし、この金属製の支持補強材の外側を囲むように繊維強化プラスチック(FRP)を積層して複合化するようにしたので、金属とFRPの複合化により軽量化を図ると同時に、耐衝撃性を向上させてガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼への適用が可能となった。
【0040】
また、この発明の請求項2記載のガスタービンの圧縮機可変案内翼によれば、請求項1記載の構成に加え、繊維強化プラスチック(FRP)として繊維強化熱可塑性プラスチックを用いるようにしたので、熱硬化性樹脂に比べ、一層耐衝撃性に優れたガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼を得ることができた。
【0041】
さらに、この発明の請求項3記載のガスタービンの圧縮機可変案内翼の製造方法によれば、繊維強化熱可塑性プラスチックで製造しようとすると、従来のレジントランスファモールディグ法により成形することが樹脂の流動性の点から難しいが、予め強化繊維と熱可塑性樹脂とでプリプレグを作り、これを積層したのち、金型内に入れてホットプレスで成形するようにしたので、寸法精度の高い製品を簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のガスタービンの圧縮機可変案内翼の一実施の形態にかかり、支持補強材のみの正面図、全体の正面図、全体の横断面図である。
【図2】この発明のガスタービンの圧縮機可変案内翼の製造方法の一実施の形態にかかる製造工程図である。
【図3】この発明のガスタービンの圧縮機可変案内翼と金属製案内翼の衝撃試験結果の説明図である。
【図4】この発明のガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼の概略構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 入り口可変案内翼
4 ストラット
5 スピンドル部
10 ガスタービンの圧縮機入り口可変案内翼
11 支持補強材
12 スピンドル部
13 補強用芯部
14 FRP積層部(繊維強化プラスチック積層部)
15 プリプレグ
Claims (3)
- ガスタービンの圧縮機入り口部に設けられ半径方向両端部のスピンドル部を介して回動可能に取付けられる入り口可変案内翼であって、前記半径方向両端部のスピンドル部とこれらを連続する補強用芯部とを金属で一体に形成して支持補強材とするとともに、この支持補強材の補強用芯部を囲んで繊維強化プラスチックを積層した繊維強化プラスチック積層部を形成してなることを特徴とするガスタービンの圧縮機可変案内翼。
- 前記繊維強化プラスチックを繊維強化熱可塑性プラスチックとしたことを特徴とする請求項1記載のガスタービンの圧縮機可変案内翼。
- ガスタービンの圧縮機入り口部に設けられ半径方向両端部のスピンドル部を介して回動可能に取付けられる入り口可変案内翼を成形するに際し、前記半径方向両端部のスピンドル部とこれらを連続する補強用芯部とでなる支持補強材を金属で一体に形成し、この支持補強材の補強用芯部を囲んで繊維強化熱可塑性プラスチックのプリプレグを積層した繊維強化プラスチック積層部を形成したのち、ホットプレス法で成形することを特徴とするガスタービンの圧縮機可変案内翼の製造方法。
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JP19581095A JP3719451B2 (ja) | 1995-07-07 | 1995-07-07 | ガスタービンの圧縮機可変案内翼およびその製造方法 |
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