JP3719273B2 - 圧縮機および冷凍サイクル - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、圧縮機に関するもので、二段膨張冷凍サイクル用圧縮機として用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来から、冷凍サイクルの効率の向上を図る手段として、周知の二段膨張冷凍サイクルが提案されている。
この二段膨張冷凍サイクルは、第1膨張弁通過後の冷房に直接寄与しない中間圧力を有する気体冷媒(中間圧冷媒)を、気液分離器によって取り出し、この中間圧冷媒を、再び圧縮することによって、圧縮機の仕事量を減らし、冷凍サイクルの効率の向上を図るものである。
【0003】
従来、この二段膨張冷凍サイクルを実施するためには、2台の圧縮機(2段圧縮式)を必要としていたので、圧縮機が1台の通常の冷凍サイクルに比べて、圧縮機が1台増えた分だけ、冷凍サイクルの製造原価が上昇し、冷凍サイクルの効率の向上に対して製造原価が高い(費用対効果が小さい)という問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
また、この問題を解決するため、特開昭50−145915号公報に記載のように、ベーン型の2段圧縮機が提案されているが、この圧縮機は、その吸入、吐出通路が複雑となり、十分な費用対効果が得られないという問題がある。
また、他の解決手段としては、特開平2−96165号公報に記載のように、1台の圧縮機で二段膨張冷凍サイクルを実施する発明が提案されている。しかし、この発明は、圧縮機の圧縮行程中の空間内に、中間圧冷媒をインジェクションするので、この中間圧冷媒の有する圧力(膨張しようとする力)と圧縮機の圧縮させようとする力とが対抗する。したがって、圧縮に必要な力が増加し、上述の2段圧縮式に比べて、冷凍サイクルの効率の向上効果が小さいという問題がある。さらに、中間圧冷媒を圧縮行程中の空間内に導くので、冷媒通路に逆止弁が必要となり、十分な費用対効果が得られないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、製造原価の低減を図ると共に、効率の高い冷凍サイクルを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、以下の技術的手段を用いる。請求項1に記載の発明では、低圧媒体を吸入する吸入ポート(17)と、前記吸入ポート(17)から吸入された前記低圧媒体を圧縮する圧縮機構(14、16)と、前記圧縮機構(14、16)で圧縮された高圧媒体を吐出する吐出ポート(19)とを有する圧縮機において、
前記低圧媒体と前記高圧媒体との中間圧力を有する中間圧媒体を、前記圧縮機構(14、16)の吸入行程中の空間(23)内に、インジェクションする中間圧吸入ポート(18)を有しており、
前記中間圧媒体がインジェクションされた前記吸入行程中の空間(23)内の圧力が前記低圧媒体の圧力と等しくなるまで前記中間圧媒体を膨張させ、
かつ、前記吸入行程中の空間(23)内の圧力が、前記低圧媒体と等しくなったとき、前記低圧媒体が前記吸入行程中の空間(23)内に吸入され始めるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、渦巻き状のスクロール(14a)およびそのスクロールと一体形成された端板部(14b)からなる可動スクロール(14)と、渦巻き状のスクロール(16a)を有する固定スクロール(16)と、低圧媒体を吸入する吸入ポート(17)と、前記可動スクロール(14)の公転によって圧縮された高圧媒体を吐出する吐出ポート(19)とを具備するスクロール型圧縮機において、
前記低圧媒体と前記高圧媒体との中間圧力を有する中間圧媒体を、前記可動スクロール(14)と固定スクロール(16)とによって形成される吸入行程中の空間(23)内にインジェクションする中間圧吸入ポート(18)を有しており、
前記中間圧媒体がインジェクションされた前記吸入行程中の空間(23)内の圧力が前記低圧媒体の圧力と等しくなるまで前記中間圧媒体を膨張させ、
かつ、前記吸入行程中の空間(23)内の圧力が、前記低圧媒体と等しくなったとき、前記低圧媒体が前記吸入行程中の空間(23)内に吸入され始めるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のスクロール型圧縮機において、前記固定スクロール(16)と結合して、閉じた空間を形成するハウジングと、
前記可動スクロール(14)のスクロール終端部(14c)の所定部位に設けられ、前記端板部(14b)を貫通するスクロールポート(18b)と、
前記ハウジング(10)の所定部位に設けられ、前記中間圧吸入ポート(18)と連通するハウジングポート(18a)とを具備し、
前記可動スクロール(14)は、前記固定スクロール(16)と前記ハウジング(10)とによって形成される閉じた空間内に公転可能に配置されており、
前記可動スクロール(14)の公転途中において、前記スクロールポート(18b)と前記ハウジングポート(18a)とが、互いにオーバラップするように構成されており、 前記両ポートが互いにオーバラップしたとき、前記吸入行程中の空間(23)内と、前記中間圧吸入ポート(18)とが連通するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の圧縮機と、
前記圧縮機の吐出ポート(19)から吐出した圧縮冷媒の放熱手段をなす凝縮器(2)と、
前記凝縮器(2)で凝縮した冷媒を減圧する第1減圧器(3)と、
前記第1減圧器(3)を通過した冷媒を、液体冷媒と気体冷媒とに分離する気液分離器(4)と、
前記気液分離器(4)を通過した液体冷媒を減圧する第2減圧器(5)と、
前記第2減圧器(5)で減圧された低温低圧冷媒によって冷却を行う蒸発器(6)と、
前記気液分離器(4)で分離された気体冷媒を、前記圧縮機の中間圧吸入ポート(18)に導く管と、
前記蒸発器(6)で気化した気体冷媒を、前記圧縮機の吸入ポート(17)に導く管とを具備する二段膨張冷凍サイクルを特徴とする。
【0010】
なお、上記各手段のカッコ内の符号は、後述する実施例記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0011】
【発明の作用効果】
請求項1〜4に記載の発明によれば、吸入行程中の空間に中間圧媒体をインジェクションすることによって1台の圧縮機で、2段膨張冷凍サイクルを実施することができるので、2台の圧縮機を用いて実施する2段膨張冷凍サイクルに比べて、安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。したがって、安価に冷凍サイクルの効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、低圧媒体と高圧媒体との中間圧力を有する中間圧媒体を、中間圧吸入ポートから圧縮機構の吸入行程中の空間内に、インジェクションすることができるので、中間圧力媒体が有する圧力(膨張しようとする力)は、吸入行程中の空間を膨張させる力の方向と重なる。しがって、中間圧力冷媒が有する圧力は、吸入行程中の空間を膨張させる力になる(内部エネルギーが機械的エネルギーに変換される)ので、圧縮行程中の空間に、中間圧媒体をインジェクションする2段膨張サイクル(圧縮に必要な力が増加する)に比べて、圧縮機の省動力化を図ることができる。延いては、冷凍サイクルの効率向上を図ることができる。
【0013】
しかも、請求項1〜4に記載の発明によれば、吸入行程中の空間内の圧力が低圧媒体の圧力と等しくなるまで中間圧媒体を膨張させ、中間圧媒体がインジェクションされた吸入行程中の空間内の圧力が、低圧媒体と等しくなったとき、低圧媒体が吸入行程中の空間内に吸入され始めるので、空間内の圧力が低圧媒体の圧力と等しくなるまで中間圧媒体を膨張させることができる。
したがって、中間圧力媒体が有する圧力(内部エネルギー)を、低圧媒体を逆流させるような不必要な力とならず、有効に吸入行程中の空間を膨張させる機械的エネルギーに変換することができる。延いては、圧縮機の省動力化をより図ることができる。
【0014】
また、低圧媒体が逆流しないので、逆止弁等の逆流防止機構を設けなくてもよい。したがって、より安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。
請求項3に記載の発明によれば、スクロール型圧縮機のハウジングに設けられて動かないハウジングポートと、可動スクロールに設けられて公転するスクロールポートとのオーバラップ状態を利用して、中間圧吸入ポートから吸入行程中の空間への連通状態を制御することができるので、新たに、制御弁等の制御手段を設けなくても、吸入行程中の空間内へのインジェクションを制御することができる。したがって、より一層安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を図に示す実施例について説明する。
図1は、本実施例に係る二段膨張冷凍サイクルの模式図である。以下に、図1に示す二段膨張冷凍サイクルについて述べた後に、この二段膨張冷凍サイクルにに用いる圧縮機について詳細に述べる。
【0016】
1は、冷媒を圧縮する圧縮機で、図示されていない駆動装置(本実施例では、車両用エンジン)によって駆動されており、圧縮機1で所定圧力(本実施例では、1.6MPa)まで圧縮された気体冷媒は、放熱手段をなす凝縮器2に流れ込む。この凝縮器2で凝縮熱を奪って凝縮(液化)した冷媒は、液体冷媒の減圧器をなす第1膨張弁(第1減圧器)3に流れ、中間圧(本実施例では、0.8MPa)まで減圧され、気液2相の湿り冷媒となる。その後、湿り冷媒は、液体冷媒と気体冷媒との分離器をなす気液分離器4で分離され、気体冷媒(中間圧)は、圧縮機1の吸入行程中の空間内に図示されていない管を通過してインジェクションされる。
【0017】
また、液体冷媒は、第2膨張弁(第2減圧器)5に流れ、さらに、減圧(本実施例では、0.3MPa)されて、低温低圧の霧状(液体)冷媒にされる。そして、この霧状冷媒は、冷却手段をなす蒸発器6に流れ、気化熱を奪って気化して冷却を行う。そして、この気体冷媒は、圧縮機1によって、前述の吸入行程中の空間内にインジェクションされた気体冷媒と共に圧縮されて、再び凝縮器2に流れ込み、1サイクルが終了する。
【0018】
次に、圧縮機1の構造について、図2、3を用いて述べる。
図2に示す圧縮機1は、渦巻き状の可動スクロールと固定スクロールとからなる周知のスクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機と呼ぶ。)である。
10は、圧縮機1のハウジングで、このハウジング10のほぼ中心部に、クランク軸11を回転可能に支持するため軸受12が配置されている。このクランク軸11の軸方向端部には、その軸中心から偏心した位置にクランク機構を形成するクランクピン13が形成されている。
【0019】
また、クランクピン13側のハウジング10端部には、渦巻き状のスクロール14aを有する可動スクロール14が配置されている。そして、可動スクロール14の中心部には、軸受15が圧入され、この軸受15を介して可動スクロール14はクランクピン13に圧入されている。16は、スクロール16aを有する固定スクロールで、固定スクロール16は、図示されていないボルトによって、ハウジング10に組付けられている。
【0020】
また、図3に示すように、ハウジング10の側面10aには、蒸発器6で気化した低圧冷媒が吸入される吸入ポート17が設けられ、この吸入ポート17は、可動スクロール14と固定スクロール16とで形成される空間24に、常に連通している。そして、側面10aの中心部には、気液分離器4で分離された中間圧の気体冷媒を、吸入行程中の空間内にインジェクションするための中間圧吸入ポート18が設けられている。また、固定スクロール16の中心部には、可動スクロール14の公転によって圧縮された冷媒を、吐出する開口部19が開口しており、この開口部19は、固定スクロール16に設けられた圧縮機1から冷媒を吐出する吐出ポート20に連通している。
【0021】
また、ハウジング10には、図2に示すように、スクロール14aの終端部14c(図3参照)に相当する部位から中間圧吸入ポート18まで連通するハウジングポート18aが設けられている。そして、スクロール14aの終端部14cの端板部14bには、端板部14bを貫通するスクロールポート18bが設けられている。なお、両ポートの配置位置については、以下の作動の説明の中で述べる。
【0022】
因みに、両ポートの断面形状は、図3に示すように、断面積を大きくして吸入抵抗を小さくするために、略長円状に形成されている。また、可動スクロール14が公転した際に、固定スクロール16との接触点を生じて中間圧冷媒がインジェクションされる空間が形成されるように、スクロール14aの終端部14cと、その近傍の固定スクロールとは、略円弧状に形成されている。
【0023】
次に、圧縮機1の作動について述べる。
圧縮機1の作動の特徴は、可動スクロール14と固定スクロール16とによって形成される空間(以下、単に空間と呼ぶ。)のうち、吸入行程初期の空間内に中間圧冷媒をインジェクションすることである。
そこで、以下に、可動スクロール14の終端部14cで形成された空間の時系列的変化を基に、図4〜9を用いて上述の特徴を説明する。
【0024】
1.空間形成開始(図4、9参照)
スクロール14aの終端部14cの一部と固定スクロール16の一部とが、図4に示すように接触し、第1接触点21を形成する。このとき、ハウジングポート18a(図9の実線の位置)とスクロールポート18b(図9の2点鎖線Aの状態)とは、まだ、オーバラップしていなく、また実質的に吸入行程中の空間が生じていない(容積ゼロ)ので、中間圧冷媒をインジェクションすることができない。
【0025】
2.中間圧冷媒のインジェクション開始(図5、9参照)
上述の空間形成開始から、可動スクロール14の公転が進み、図5に示すように、接触点21に加え、新たに接触点22が形成される。そして、接触点21、22と両スクロールとによって吸入行程中の空間23が形成される。また、このときハウジングポート18aとスクロールポート18b(図9の2点鎖線Bの状態)とのオーバラップが開始するように、両ポートが配置されているので、空間23内への中間圧冷媒のインジェクション開始する。
【0026】
3.中間圧冷媒のインジェクション終了(図6、9参照)
そして、可動スクロール14の公転が進み、接触点21は、固定スクロール16の壁面に沿いながら、その外方に移動し、接触点22は、固定スクロールに沿いながらその中心に向かって移動する。これにともなって、空間23の容積が膨張し、空間23内にインジェクションされた中間圧冷媒の圧力が低下してゆく。そして、さらに可動スクロール14の公転が進み、空間23が所定の容積と等しくなったとき、ハウジングポート18aとスクロールポート18b(図9の2点鎖線Cの状態)とのオーバラップが終了するように、両ポートが配置されているので、中間圧冷媒のインジェクションが終了する。
【0027】
4.中間圧冷媒の膨張(図10参照)
この後、可動スクロール14の公転がさらに進み、接触点21、22は、それぞれ移動する。そして、ハウジングポート18a、スクロールポート18bの連通状態が、すでに絶たれているので、空間23は、冷媒の出入のない状態で、その容積を増して行く。この過程で、すでに空間23内にインジェクションされた冷媒は、空間23内で膨張し、徐々にその圧力を下げて、低圧冷媒の圧力に近づいて行く。
【0028】
5.低圧冷媒の吸入開始(図7、9参照)
そして、可動スクロール14の公転がさらに進み、接触点21は、遂に固定スクロール16の壁面から離れ、空間23は、可動スクロール14の外側空間24と連通する。すでに、空間23内圧力は、低圧冷媒と等しい圧力まで低下しているので、外側空間24に満たされている低圧冷媒は、空間23内に吸入され始める。因みに、スクロールポート18bの状態は、図9の2点鎖線Dに示すように、オーバラップしていない状態である。
【0029】
6.低圧冷媒の吸入終了(図8、9参照)
そして、可動スクロール14の公転がさらに進み、空間23の膨張が終了し、これとともに低圧冷媒の吸入行程が終了する。因みに、スクロールポート18bの状態は、図9の2点鎖線Eに示すように、オーバラップしていない状態である。
【0030】
以後、空間23は、圧縮行程に移行する。なお、空間23の圧縮行程は、周知のスクロール型圧縮機と同様である。(図4〜8の空間23aは、圧縮行程に移行後の空間23を示している。)
次に、本実施例の特徴を述べる。
吸入行程中の空間23に中間圧冷媒をインジェクションすることによって1台の圧縮機1で、2段膨張冷凍サイクルを実施することができるので、2台の圧縮機を用いて実施する2段膨張冷凍サイクルに比べて、安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。したがって、安価に冷凍サイクルの効率の向上を図ることができる。
【0031】
また、低圧媒体と高圧冷媒との中間圧力を有する中間圧冷媒を、中間圧吸入ポート18から吸入行程中の空間内に、インジェクションするので、中間圧力冷媒が有する圧力(膨張しようとする力)は、吸入行程中の空間23を膨張させる力となる。しがって、中間圧力冷媒が有する圧力を、吸入行程中の空間23を膨張させる(内部エネルギーが機械的エネルギーに変換される)ので、圧縮行程中の空間に、中間圧冷媒をインジェクションする2段膨張サイクル(圧縮に必要な力が増加する)に比べて、圧縮機1の省動力化を図ることができる。延いては、冷凍サイクルの効率向上を図ることができる。
【0032】
また、中間圧冷媒がインジェクションされた吸入行程中の空間23内の圧力が、低圧冷媒と等しくなったとき、低圧冷媒が吸入行程中の空間23内に吸入され始めるので、空間23内の圧力が低圧冷媒の圧力と等しくなるまで中間圧冷媒を膨張させることができる。したがって、中間圧力冷媒が有する圧力(内部エネルギー)を、低圧冷媒を逆流させるような不必要な力とならず、有効に吸入行程中の空間23を膨張させる機械的エネルギーに変換することができる。延いては、より圧縮機1の省動力化を図ることができる。
【0033】
また、低圧冷媒が逆流しないので、逆止弁等の逆流防止機構を設けなくてもよい。したがって、より安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。
また、ハウジング10に設けられて動かないハウジングポート18aと、固定スクロール16に設けられて公転するスクロールポート18bとのオーバラップ状態を利用して、中間圧吸入ポート18から吸入行程中の空間23への連通状態を制御するこができるので、新たに、制御弁等の制御手段を設けなくても、中間圧冷媒のインジェクションを制御することができる。したがって、より一層安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。
【0034】
本発明に係る圧縮機は、スクロール型圧縮機に限られるものではなく、ベーン型、斜板型、ロータ型等の圧縮機にも適用可能である。
また、中間圧冷媒をインジェクションするタイミングは、吸入行程の初期行程に限られるものではなく、圧縮行程前であれば、どのタイミングでもよい。
また、中間冷媒の圧力は、高圧冷媒と低圧冷媒との中間(平均)である必要はなく、両圧力の間にあればよい。
【0035】
また、ハウジングポート18aおよびスクロールポート18bの断面形状は、略長円状に限られるものではなく、円形で、多角形状等のその他の形状でもよい。
さらに、圧縮機を駆動する駆動装置は、車両用エンジンに限られるものではなく、モータのような電動機を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る2段膨張冷凍サイクルを示す模式図である。
【図2】圧縮機1の断面図(図3のB−B)である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3において、空間23形成開始を示す断面図である。
【図5】図3において、中間圧冷媒インジェクション開始を示す断面図である。
【図6】図3において、中間圧冷媒インジェクション終了を示す断面図である。
【図7】図3において、低圧冷媒の吸入開始を示す断面図である。
【図8】図3において、低圧冷媒の吸入終了を示す断面図である。
【図9】ハウジングポート18aとスクロールポート18bとの相対位置を示す拡大図である。
【図10】図3において、中間圧冷媒インジェクション終了後、空間23内の冷媒の膨張過程を示す断面図である。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…凝縮器、3…第1膨張弁(第1減圧器)、
4…気液分離器、5…第2膨張弁(第2減圧器)、
10…ハウジング、11…クランク軸、12…軸受、
13…クランクピン、14…可動スクロール、14a…スクロール、
14b…端板部、15…軸受、16…固定スクロール、
16a…スクロール、17…低圧ポート、18…中間圧吸入ポート、
18a…ハウジングポート、18b…スクロールポート、19…吐出ポート。
【産業上の利用分野】
本発明は、圧縮機に関するもので、二段膨張冷凍サイクル用圧縮機として用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来から、冷凍サイクルの効率の向上を図る手段として、周知の二段膨張冷凍サイクルが提案されている。
この二段膨張冷凍サイクルは、第1膨張弁通過後の冷房に直接寄与しない中間圧力を有する気体冷媒(中間圧冷媒)を、気液分離器によって取り出し、この中間圧冷媒を、再び圧縮することによって、圧縮機の仕事量を減らし、冷凍サイクルの効率の向上を図るものである。
【0003】
従来、この二段膨張冷凍サイクルを実施するためには、2台の圧縮機(2段圧縮式)を必要としていたので、圧縮機が1台の通常の冷凍サイクルに比べて、圧縮機が1台増えた分だけ、冷凍サイクルの製造原価が上昇し、冷凍サイクルの効率の向上に対して製造原価が高い(費用対効果が小さい)という問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
また、この問題を解決するため、特開昭50−145915号公報に記載のように、ベーン型の2段圧縮機が提案されているが、この圧縮機は、その吸入、吐出通路が複雑となり、十分な費用対効果が得られないという問題がある。
また、他の解決手段としては、特開平2−96165号公報に記載のように、1台の圧縮機で二段膨張冷凍サイクルを実施する発明が提案されている。しかし、この発明は、圧縮機の圧縮行程中の空間内に、中間圧冷媒をインジェクションするので、この中間圧冷媒の有する圧力(膨張しようとする力)と圧縮機の圧縮させようとする力とが対抗する。したがって、圧縮に必要な力が増加し、上述の2段圧縮式に比べて、冷凍サイクルの効率の向上効果が小さいという問題がある。さらに、中間圧冷媒を圧縮行程中の空間内に導くので、冷媒通路に逆止弁が必要となり、十分な費用対効果が得られないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、製造原価の低減を図ると共に、効率の高い冷凍サイクルを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、以下の技術的手段を用いる。請求項1に記載の発明では、低圧媒体を吸入する吸入ポート(17)と、前記吸入ポート(17)から吸入された前記低圧媒体を圧縮する圧縮機構(14、16)と、前記圧縮機構(14、16)で圧縮された高圧媒体を吐出する吐出ポート(19)とを有する圧縮機において、
前記低圧媒体と前記高圧媒体との中間圧力を有する中間圧媒体を、前記圧縮機構(14、16)の吸入行程中の空間(23)内に、インジェクションする中間圧吸入ポート(18)を有しており、
前記中間圧媒体がインジェクションされた前記吸入行程中の空間(23)内の圧力が前記低圧媒体の圧力と等しくなるまで前記中間圧媒体を膨張させ、
かつ、前記吸入行程中の空間(23)内の圧力が、前記低圧媒体と等しくなったとき、前記低圧媒体が前記吸入行程中の空間(23)内に吸入され始めるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、渦巻き状のスクロール(14a)およびそのスクロールと一体形成された端板部(14b)からなる可動スクロール(14)と、渦巻き状のスクロール(16a)を有する固定スクロール(16)と、低圧媒体を吸入する吸入ポート(17)と、前記可動スクロール(14)の公転によって圧縮された高圧媒体を吐出する吐出ポート(19)とを具備するスクロール型圧縮機において、
前記低圧媒体と前記高圧媒体との中間圧力を有する中間圧媒体を、前記可動スクロール(14)と固定スクロール(16)とによって形成される吸入行程中の空間(23)内にインジェクションする中間圧吸入ポート(18)を有しており、
前記中間圧媒体がインジェクションされた前記吸入行程中の空間(23)内の圧力が前記低圧媒体の圧力と等しくなるまで前記中間圧媒体を膨張させ、
かつ、前記吸入行程中の空間(23)内の圧力が、前記低圧媒体と等しくなったとき、前記低圧媒体が前記吸入行程中の空間(23)内に吸入され始めるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のスクロール型圧縮機において、前記固定スクロール(16)と結合して、閉じた空間を形成するハウジングと、
前記可動スクロール(14)のスクロール終端部(14c)の所定部位に設けられ、前記端板部(14b)を貫通するスクロールポート(18b)と、
前記ハウジング(10)の所定部位に設けられ、前記中間圧吸入ポート(18)と連通するハウジングポート(18a)とを具備し、
前記可動スクロール(14)は、前記固定スクロール(16)と前記ハウジング(10)とによって形成される閉じた空間内に公転可能に配置されており、
前記可動スクロール(14)の公転途中において、前記スクロールポート(18b)と前記ハウジングポート(18a)とが、互いにオーバラップするように構成されており、 前記両ポートが互いにオーバラップしたとき、前記吸入行程中の空間(23)内と、前記中間圧吸入ポート(18)とが連通するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の圧縮機と、
前記圧縮機の吐出ポート(19)から吐出した圧縮冷媒の放熱手段をなす凝縮器(2)と、
前記凝縮器(2)で凝縮した冷媒を減圧する第1減圧器(3)と、
前記第1減圧器(3)を通過した冷媒を、液体冷媒と気体冷媒とに分離する気液分離器(4)と、
前記気液分離器(4)を通過した液体冷媒を減圧する第2減圧器(5)と、
前記第2減圧器(5)で減圧された低温低圧冷媒によって冷却を行う蒸発器(6)と、
前記気液分離器(4)で分離された気体冷媒を、前記圧縮機の中間圧吸入ポート(18)に導く管と、
前記蒸発器(6)で気化した気体冷媒を、前記圧縮機の吸入ポート(17)に導く管とを具備する二段膨張冷凍サイクルを特徴とする。
【0010】
なお、上記各手段のカッコ内の符号は、後述する実施例記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0011】
【発明の作用効果】
請求項1〜4に記載の発明によれば、吸入行程中の空間に中間圧媒体をインジェクションすることによって1台の圧縮機で、2段膨張冷凍サイクルを実施することができるので、2台の圧縮機を用いて実施する2段膨張冷凍サイクルに比べて、安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。したがって、安価に冷凍サイクルの効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、低圧媒体と高圧媒体との中間圧力を有する中間圧媒体を、中間圧吸入ポートから圧縮機構の吸入行程中の空間内に、インジェクションすることができるので、中間圧力媒体が有する圧力(膨張しようとする力)は、吸入行程中の空間を膨張させる力の方向と重なる。しがって、中間圧力冷媒が有する圧力は、吸入行程中の空間を膨張させる力になる(内部エネルギーが機械的エネルギーに変換される)ので、圧縮行程中の空間に、中間圧媒体をインジェクションする2段膨張サイクル(圧縮に必要な力が増加する)に比べて、圧縮機の省動力化を図ることができる。延いては、冷凍サイクルの効率向上を図ることができる。
【0013】
しかも、請求項1〜4に記載の発明によれば、吸入行程中の空間内の圧力が低圧媒体の圧力と等しくなるまで中間圧媒体を膨張させ、中間圧媒体がインジェクションされた吸入行程中の空間内の圧力が、低圧媒体と等しくなったとき、低圧媒体が吸入行程中の空間内に吸入され始めるので、空間内の圧力が低圧媒体の圧力と等しくなるまで中間圧媒体を膨張させることができる。
したがって、中間圧力媒体が有する圧力(内部エネルギー)を、低圧媒体を逆流させるような不必要な力とならず、有効に吸入行程中の空間を膨張させる機械的エネルギーに変換することができる。延いては、圧縮機の省動力化をより図ることができる。
【0014】
また、低圧媒体が逆流しないので、逆止弁等の逆流防止機構を設けなくてもよい。したがって、より安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。
請求項3に記載の発明によれば、スクロール型圧縮機のハウジングに設けられて動かないハウジングポートと、可動スクロールに設けられて公転するスクロールポートとのオーバラップ状態を利用して、中間圧吸入ポートから吸入行程中の空間への連通状態を制御することができるので、新たに、制御弁等の制御手段を設けなくても、吸入行程中の空間内へのインジェクションを制御することができる。したがって、より一層安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を図に示す実施例について説明する。
図1は、本実施例に係る二段膨張冷凍サイクルの模式図である。以下に、図1に示す二段膨張冷凍サイクルについて述べた後に、この二段膨張冷凍サイクルにに用いる圧縮機について詳細に述べる。
【0016】
1は、冷媒を圧縮する圧縮機で、図示されていない駆動装置(本実施例では、車両用エンジン)によって駆動されており、圧縮機1で所定圧力(本実施例では、1.6MPa)まで圧縮された気体冷媒は、放熱手段をなす凝縮器2に流れ込む。この凝縮器2で凝縮熱を奪って凝縮(液化)した冷媒は、液体冷媒の減圧器をなす第1膨張弁(第1減圧器)3に流れ、中間圧(本実施例では、0.8MPa)まで減圧され、気液2相の湿り冷媒となる。その後、湿り冷媒は、液体冷媒と気体冷媒との分離器をなす気液分離器4で分離され、気体冷媒(中間圧)は、圧縮機1の吸入行程中の空間内に図示されていない管を通過してインジェクションされる。
【0017】
また、液体冷媒は、第2膨張弁(第2減圧器)5に流れ、さらに、減圧(本実施例では、0.3MPa)されて、低温低圧の霧状(液体)冷媒にされる。そして、この霧状冷媒は、冷却手段をなす蒸発器6に流れ、気化熱を奪って気化して冷却を行う。そして、この気体冷媒は、圧縮機1によって、前述の吸入行程中の空間内にインジェクションされた気体冷媒と共に圧縮されて、再び凝縮器2に流れ込み、1サイクルが終了する。
【0018】
次に、圧縮機1の構造について、図2、3を用いて述べる。
図2に示す圧縮機1は、渦巻き状の可動スクロールと固定スクロールとからなる周知のスクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機と呼ぶ。)である。
10は、圧縮機1のハウジングで、このハウジング10のほぼ中心部に、クランク軸11を回転可能に支持するため軸受12が配置されている。このクランク軸11の軸方向端部には、その軸中心から偏心した位置にクランク機構を形成するクランクピン13が形成されている。
【0019】
また、クランクピン13側のハウジング10端部には、渦巻き状のスクロール14aを有する可動スクロール14が配置されている。そして、可動スクロール14の中心部には、軸受15が圧入され、この軸受15を介して可動スクロール14はクランクピン13に圧入されている。16は、スクロール16aを有する固定スクロールで、固定スクロール16は、図示されていないボルトによって、ハウジング10に組付けられている。
【0020】
また、図3に示すように、ハウジング10の側面10aには、蒸発器6で気化した低圧冷媒が吸入される吸入ポート17が設けられ、この吸入ポート17は、可動スクロール14と固定スクロール16とで形成される空間24に、常に連通している。そして、側面10aの中心部には、気液分離器4で分離された中間圧の気体冷媒を、吸入行程中の空間内にインジェクションするための中間圧吸入ポート18が設けられている。また、固定スクロール16の中心部には、可動スクロール14の公転によって圧縮された冷媒を、吐出する開口部19が開口しており、この開口部19は、固定スクロール16に設けられた圧縮機1から冷媒を吐出する吐出ポート20に連通している。
【0021】
また、ハウジング10には、図2に示すように、スクロール14aの終端部14c(図3参照)に相当する部位から中間圧吸入ポート18まで連通するハウジングポート18aが設けられている。そして、スクロール14aの終端部14cの端板部14bには、端板部14bを貫通するスクロールポート18bが設けられている。なお、両ポートの配置位置については、以下の作動の説明の中で述べる。
【0022】
因みに、両ポートの断面形状は、図3に示すように、断面積を大きくして吸入抵抗を小さくするために、略長円状に形成されている。また、可動スクロール14が公転した際に、固定スクロール16との接触点を生じて中間圧冷媒がインジェクションされる空間が形成されるように、スクロール14aの終端部14cと、その近傍の固定スクロールとは、略円弧状に形成されている。
【0023】
次に、圧縮機1の作動について述べる。
圧縮機1の作動の特徴は、可動スクロール14と固定スクロール16とによって形成される空間(以下、単に空間と呼ぶ。)のうち、吸入行程初期の空間内に中間圧冷媒をインジェクションすることである。
そこで、以下に、可動スクロール14の終端部14cで形成された空間の時系列的変化を基に、図4〜9を用いて上述の特徴を説明する。
【0024】
1.空間形成開始(図4、9参照)
スクロール14aの終端部14cの一部と固定スクロール16の一部とが、図4に示すように接触し、第1接触点21を形成する。このとき、ハウジングポート18a(図9の実線の位置)とスクロールポート18b(図9の2点鎖線Aの状態)とは、まだ、オーバラップしていなく、また実質的に吸入行程中の空間が生じていない(容積ゼロ)ので、中間圧冷媒をインジェクションすることができない。
【0025】
2.中間圧冷媒のインジェクション開始(図5、9参照)
上述の空間形成開始から、可動スクロール14の公転が進み、図5に示すように、接触点21に加え、新たに接触点22が形成される。そして、接触点21、22と両スクロールとによって吸入行程中の空間23が形成される。また、このときハウジングポート18aとスクロールポート18b(図9の2点鎖線Bの状態)とのオーバラップが開始するように、両ポートが配置されているので、空間23内への中間圧冷媒のインジェクション開始する。
【0026】
3.中間圧冷媒のインジェクション終了(図6、9参照)
そして、可動スクロール14の公転が進み、接触点21は、固定スクロール16の壁面に沿いながら、その外方に移動し、接触点22は、固定スクロールに沿いながらその中心に向かって移動する。これにともなって、空間23の容積が膨張し、空間23内にインジェクションされた中間圧冷媒の圧力が低下してゆく。そして、さらに可動スクロール14の公転が進み、空間23が所定の容積と等しくなったとき、ハウジングポート18aとスクロールポート18b(図9の2点鎖線Cの状態)とのオーバラップが終了するように、両ポートが配置されているので、中間圧冷媒のインジェクションが終了する。
【0027】
4.中間圧冷媒の膨張(図10参照)
この後、可動スクロール14の公転がさらに進み、接触点21、22は、それぞれ移動する。そして、ハウジングポート18a、スクロールポート18bの連通状態が、すでに絶たれているので、空間23は、冷媒の出入のない状態で、その容積を増して行く。この過程で、すでに空間23内にインジェクションされた冷媒は、空間23内で膨張し、徐々にその圧力を下げて、低圧冷媒の圧力に近づいて行く。
【0028】
5.低圧冷媒の吸入開始(図7、9参照)
そして、可動スクロール14の公転がさらに進み、接触点21は、遂に固定スクロール16の壁面から離れ、空間23は、可動スクロール14の外側空間24と連通する。すでに、空間23内圧力は、低圧冷媒と等しい圧力まで低下しているので、外側空間24に満たされている低圧冷媒は、空間23内に吸入され始める。因みに、スクロールポート18bの状態は、図9の2点鎖線Dに示すように、オーバラップしていない状態である。
【0029】
6.低圧冷媒の吸入終了(図8、9参照)
そして、可動スクロール14の公転がさらに進み、空間23の膨張が終了し、これとともに低圧冷媒の吸入行程が終了する。因みに、スクロールポート18bの状態は、図9の2点鎖線Eに示すように、オーバラップしていない状態である。
【0030】
以後、空間23は、圧縮行程に移行する。なお、空間23の圧縮行程は、周知のスクロール型圧縮機と同様である。(図4〜8の空間23aは、圧縮行程に移行後の空間23を示している。)
次に、本実施例の特徴を述べる。
吸入行程中の空間23に中間圧冷媒をインジェクションすることによって1台の圧縮機1で、2段膨張冷凍サイクルを実施することができるので、2台の圧縮機を用いて実施する2段膨張冷凍サイクルに比べて、安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。したがって、安価に冷凍サイクルの効率の向上を図ることができる。
【0031】
また、低圧媒体と高圧冷媒との中間圧力を有する中間圧冷媒を、中間圧吸入ポート18から吸入行程中の空間内に、インジェクションするので、中間圧力冷媒が有する圧力(膨張しようとする力)は、吸入行程中の空間23を膨張させる力となる。しがって、中間圧力冷媒が有する圧力を、吸入行程中の空間23を膨張させる(内部エネルギーが機械的エネルギーに変換される)ので、圧縮行程中の空間に、中間圧冷媒をインジェクションする2段膨張サイクル(圧縮に必要な力が増加する)に比べて、圧縮機1の省動力化を図ることができる。延いては、冷凍サイクルの効率向上を図ることができる。
【0032】
また、中間圧冷媒がインジェクションされた吸入行程中の空間23内の圧力が、低圧冷媒と等しくなったとき、低圧冷媒が吸入行程中の空間23内に吸入され始めるので、空間23内の圧力が低圧冷媒の圧力と等しくなるまで中間圧冷媒を膨張させることができる。したがって、中間圧力冷媒が有する圧力(内部エネルギー)を、低圧冷媒を逆流させるような不必要な力とならず、有効に吸入行程中の空間23を膨張させる機械的エネルギーに変換することができる。延いては、より圧縮機1の省動力化を図ることができる。
【0033】
また、低圧冷媒が逆流しないので、逆止弁等の逆流防止機構を設けなくてもよい。したがって、より安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。
また、ハウジング10に設けられて動かないハウジングポート18aと、固定スクロール16に設けられて公転するスクロールポート18bとのオーバラップ状態を利用して、中間圧吸入ポート18から吸入行程中の空間23への連通状態を制御するこができるので、新たに、制御弁等の制御手段を設けなくても、中間圧冷媒のインジェクションを制御することができる。したがって、より一層安価に2段膨張冷凍サイクルを実施することができる。
【0034】
本発明に係る圧縮機は、スクロール型圧縮機に限られるものではなく、ベーン型、斜板型、ロータ型等の圧縮機にも適用可能である。
また、中間圧冷媒をインジェクションするタイミングは、吸入行程の初期行程に限られるものではなく、圧縮行程前であれば、どのタイミングでもよい。
また、中間冷媒の圧力は、高圧冷媒と低圧冷媒との中間(平均)である必要はなく、両圧力の間にあればよい。
【0035】
また、ハウジングポート18aおよびスクロールポート18bの断面形状は、略長円状に限られるものではなく、円形で、多角形状等のその他の形状でもよい。
さらに、圧縮機を駆動する駆動装置は、車両用エンジンに限られるものではなく、モータのような電動機を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る2段膨張冷凍サイクルを示す模式図である。
【図2】圧縮機1の断面図(図3のB−B)である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3において、空間23形成開始を示す断面図である。
【図5】図3において、中間圧冷媒インジェクション開始を示す断面図である。
【図6】図3において、中間圧冷媒インジェクション終了を示す断面図である。
【図7】図3において、低圧冷媒の吸入開始を示す断面図である。
【図8】図3において、低圧冷媒の吸入終了を示す断面図である。
【図9】ハウジングポート18aとスクロールポート18bとの相対位置を示す拡大図である。
【図10】図3において、中間圧冷媒インジェクション終了後、空間23内の冷媒の膨張過程を示す断面図である。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…凝縮器、3…第1膨張弁(第1減圧器)、
4…気液分離器、5…第2膨張弁(第2減圧器)、
10…ハウジング、11…クランク軸、12…軸受、
13…クランクピン、14…可動スクロール、14a…スクロール、
14b…端板部、15…軸受、16…固定スクロール、
16a…スクロール、17…低圧ポート、18…中間圧吸入ポート、
18a…ハウジングポート、18b…スクロールポート、19…吐出ポート。
Claims (4)
- 低圧媒体を吸入する吸入ポートと、
前記吸入ポートから吸入された前記低圧媒体を圧縮する圧縮機構と、
前記圧縮機構で圧縮された高圧媒体を吐出する吐出ポートとを有する圧縮機において、
前記低圧媒体と前記高圧媒体との中間圧力を有する中間圧媒体を、前記圧縮機構の吸入行程中の空間内にインジェクションする中間圧吸入ポートを有しており、
前記中間圧媒体がインジェクションされた前記吸入行程中の空間内の圧力が前記低圧媒体の圧力と等しくなるまで前記中間圧媒体を膨張させ、
かつ、前記吸入行程中の空間内の圧力が、前記低圧媒体と等しくなったとき、前記低圧媒体が前記吸入行程中の空間内に吸入され始めるように構成されていることを特徴とする圧縮機。 - 渦巻き状のスクロールおよびそのスクロールと一体形成された端板部からなる可動スクロールと、
渦巻き状のスクロールを有する固定スクロールと、
低圧媒体を吸入する吸入ポートと、
前記可動スクロールの公転によって圧縮された高圧媒体を吐出する吐出ポートとを具備するスクロール型圧縮機において、
前記低圧媒体と前記高圧媒体との中間圧力を有する中間圧媒体を、前記可動スクロールと固定スクロールとによって形成される吸入行程中の空間内にインジェクションする中間圧吸入ポートを有しており、
前記中間圧媒体がインジェクションされた前記吸入行程中の空間内の圧力が前記低圧媒体の圧力と等しくなるまで前記中間圧媒体を膨張させ、
かつ、前記吸入行程中の空間内の圧力が、前記低圧媒体と等しくなったとき、前記低圧媒体が前記吸入行程中の空間内に吸入され始めるように構成されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。 - 請求項2に記載のスクロール型圧縮機において、
前記固定スクロールと結合して、閉じた空間を形成するハウジングと、
前記可動スクロールのスクロール終端部の所定部位に設けられ、前記端板部を貫通するスクロールポートと、
前記ハウジングの所定部位に設けられ、前記中間圧吸入ポートと連通するハウジングポートとを具備し、
前記可動スクロールは、前記固定スクロールと前記ハウジングとによって形成される閉じた空間内に公転可能に配置されており、
前記可動スクロールの公転途中において、前記スクロールポートと前記ハウジングポートとが、互いにオーバラップするように構成されており、
前記両ポートが互いにオーバラップしたとき、前記吸入行程中の空間内と、前記中間圧吸入ポートとが連通するように構成されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。 - 請求項1ないし3のいずれか1つに記載の圧縮機と、
前記圧縮機の吐出ポートから吐出した圧縮冷媒の放熱手段をなす凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した冷媒を減圧する第1減圧器と、
前記第1減圧器を通過した冷媒を、液体冷媒と気体冷媒とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器を通過した液体冷媒を減圧する第2減圧器と、
前記第2減圧器で減圧された低温低圧冷媒によって冷却を行う蒸発器と、
前記気液分離器で分離された気体冷媒を、前記圧縮機の中間圧吸入ポートに導く管と、
前記蒸発器で気化した気体冷媒を、前記圧縮機の吸入ポートに導く管とを具備することを特徴とする二段膨張冷凍サイクル。
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