JP3719271B2 - 金属汚染物の除去方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、樹脂から金属汚染物の除去方法に関し、さらに詳しくは、樹脂からの主として重合触媒や水素添加反応などの変性に用いられる触媒に由来する金属汚染物の除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂の合成に用いる重合触媒などの様々な金属化合物が樹脂中に金属汚染物として残留すると、樹脂が着色する、樹脂から溶出して生体に影響するなどの問題を生じやすい。
【0003】
樹脂からの金属汚染物の除去方法としては、一般に、凝集沈澱法、吸着法、洗浄法、および水相抽出法などが用いられる。凝集沈澱法は、樹脂溶液中に凝集剤を加え、金属汚染物を凝集させて濾過などによって除去する方法である。しかし、凝集剤自体が汚染物となり、樹脂に悪影響を与える場合があり、また、除去効率が不十分な場合がある。吸着法は、必要に応じて金属汚染物をキレート剤などで処理した後、吸着材などに吸着させて分離する方法である。この方法は吸着カラムなどの特別な分離設備が必要であり、吸着材は製造などが困難なため再利用が必要であるが、吸着後の再生が困難であるという問題があった。
【0004】
洗浄法は、樹脂の良溶媒溶液を多量の貧溶媒中に注ぎ込んで樹脂を析出させて回収する洗浄を繰り返す方法である。この方法は、多量の溶媒が必要であり、洗浄後の混合溶媒の処理、再利用が困難である。水相抽出法は、金属汚染物の金属元素を錯体やイオンなどの水に可溶な形態で水相中に抽出して重合体から分離する方法である。この方法では、一般に酸を用いて金属元素を水に可溶な形態にするため、設備を耐酸性のものにし、さらに処理後に中和する工程が必要になるなど、大規模な工業的生産には向かないという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、樹脂に悪影響を与えず、工業規模でも容易に処理できる樹脂からの金属汚染物の除去方法の開発を目的として、鋭意研究の結果、樹脂溶液を層状粘土鉱物で処理することにより、容易に金属化合物を除去できることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
【課題を解決する手段】
かくして、本発明によれば、金属汚染物を含有する樹脂溶液を層状粘土鉱物で処理する金属汚染物の除去方法が提供される。
【0007】
(樹脂)
本発明に用いる金属汚染物を含有する樹脂は、有機溶媒溶液を調整できるものであれば、特に限定されない。単に単量体を重合させたもののみでなく、重合後に水素添加などの変性を行ったものでもよい。例えば、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリルスチレン、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、ノルボルネン系付加型重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα−オレフィンとの付加型共重合体、ノルボルネン系開環重合体や、これらの水素添加物などが例示される。
【0008】
(金属汚染物)
樹脂中に含有される金属汚染物も特に限定されず、代表的なものとしては、重合触媒や水素添加などの変性に用いられる触媒の残渣、例えば、Li、Ti、W、Al、Sn、Pd、Ni、Pt、Mo、Rh、Zr、B、Vなどの酸化物、ハロゲン化物、配位体などが例示される。ノルボルネン系付加型重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα−オレフィンとの付加型共重合体や、ノルボルネン系開環重合体などのノルボルネン系樹脂、好ましくはノルボルネン系開環重合体中の重合触媒残渣やこれらの水素添加物中の重合触媒残渣、水素添加触媒残渣などが本発明の方法によって効率的に除去でき、特にタングステン、スズ、ニッケルなどの金属原子を含む触媒残渣が良好に除去できる。
【0009】
(樹脂溶液)
本発明で用いる樹脂溶液は、60℃で測定した粘度が1,000,000cps以下、好ましくは100,000cps以下、より好ましくは50,000cps以下に調整したものである。粘度が高すぎると攪拌などの処理が困難になり、金属汚染物の除去効率が低くなる。用いる溶媒によるが、例えば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の場合は通常、0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下に調整する。濃度が低すぎると金属汚染物を除去する樹脂量に対し多量の溶液を処理する必要があり、工程の効率が悪く、濃度が高すぎると樹脂溶液の粘度が高くなりすぎ、作業性が悪くなる。
【0010】
有機溶媒は、樹脂を変性させず、溶解できるものであれば、特に限定されない。一般的には、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒が用いられるが、重合後の重合反応液、水素添加などの変性後の変性反応溶液をそのまま樹脂溶液として、必要に応じて濃度を調整して用いてもよい。
【0011】
(層状粘土鉱物)
本発明で用いる層状粘土鉱物とは、マグネシウム、シリカ、アルミニウムなどの酸化物から成る積層構造を有する鉱物である。具体的には、タルク、マイカ、カオリナイトなどが例示され、タルクが好ましい。
【0012】
(金属汚染物の除去)
本発明においては、樹脂溶液に層状粘土鉱物を加えて金属汚染物を除去する。樹脂溶液への層状粘土鉱物の添加量は、樹脂100重量部に対して好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、特に好ましくは5重量部以上、30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。添加量が少なすぎると金属汚染物の除去が不十分となり、多すぎると無駄になる。
【0013】
層状粘土鉱物を添加した樹脂溶液は十分に攪拌する。攪拌は、容器の形状や大きさ、攪拌方法などによって効率が異なるので、それぞれの状況に応じて、十分に攪拌できる方法を選択する。
【0014】
十分に攪拌した後、主として層状粘土鉱物から成る沈澱物を除去する。沈澱物を除去する方法は特に限定されず、例えば、濾過、遠心分離などを用いて除去する。この際に、金属汚染物は沈澱物と共に除去される。
【0015】
金属汚染物を除去した後の樹脂溶液から樹脂を回収する方法も特に限定されず、樹脂の性質に応じて、溶媒を蒸発させたり、溶液に多量の貧溶媒を加えて析出させたり、スチームを吹き込んで析出させるいわゆるスチーム凝固を行ったりしてもよい。
【0016】
(処理した樹脂)
本発明の方法で処理により、金属汚染物が効率が除去され、得られる樹脂中の金属汚染物の含有量は非常に小さくなる。例えば、重合触媒を用いて開環重合した反応液に、水素添加触媒を加えて水素添加した後のノルボルネン系開環重合体水素添加反応液の場合、処理後の金属原子の残留量は、重合触媒由来の金属汚染物も水素添加触媒由来の金属汚染物も50ppm以下となる。特に、層状粘土鉱物の添加後に十分に攪拌することにより5ppm以下、さらに沈澱物を十分に除去することにより1ppm以下とすることが可能である。
【0017】
【発明の効果】
本発明の方法は、入手が容易な材料を用い、簡単な処理で効率よく、樹脂から金属汚染物を除去し、純度の高い樹脂を得ることができる。
【0018】
【実施例】
以下に、実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いたポリスチレン換算値として、水素添加率は1H−NMRの分析データから、金属汚染物量は樹脂を湿式灰化し誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定した。
【0019】
参考例1
窒素で置換した1リットルのフラスコに、6−メチル−1,4:4,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン50gとシクロヘキサン100gを加え、分子量調整剤として1−ヘキセンの25重量%シクロヘキサン溶液2.1gを添加した。この溶液に重合触媒としてテトラブチルスズの10重量%シクロヘキサン溶液1.3gとジブチルエーテルの30重量%シクロヘキサン溶液0.16gおよび六塩化タングステンの0.75重量%シクロヘキサン溶液10gを添加し、70℃で1時間攪拌して重合を行って重合反応液を得た。
【0020】
参考例2
容量1リットルの攪拌機付オートクレーブに参考例1で得た重合反応液100g仕込み、次いでシクロヘキサン200gを加えた。これに水素添加触媒として、ニッケルアセチルアセトナート0.23mmolとイソブチルアルミニウム0.93mmolを混合したものを加え、オートクレーブ内を水素置換した後、攪拌しながら80℃に昇温した。温度が安定したところで水素圧力を10kgf/cm2に昇圧し、反応過程で消費される水素を補充しながら2時間反応させて水素添加反応液を得た。
【0021】
実施例1
参考例2で得た水素添加反応液100重量部に対しタルク(PSタルク、日本タルク製)を2重量部を加え、300mlのビーカーに入れ、長さ4cm、幅1.5cm、厚さ1mmの平板状の攪拌翼を持つ攪拌器を300rpmで回転させ、10分間攪拌した。濾紙(No.2)と濾過助剤としてラジオライト#900を用いて濾過して沈澱物を除去した後、2リットルのイソプロピルアルコール中に注ぎ、水素添加物を析出させて回収した。
【0022】
この水素添加物の数平均分子量は21,200、重量平均分子量は57,300、水素添加率は99%以上であり、タングステン原子量は0.02ppm、スズ原子量は0.11ppm、ニッケル原子量は0.20ppmであった。
【0023】
参考例3
参考例1で得た重合反応液100重量部にアルミナ担持ニッケル触媒(触媒1重量部中、ニッケル0.5重量部、酸化ニッケル0.2重量部、細孔容積0.8cm3/g、比表面積300m2/g)1重量部を加え、オートクレーブ中210℃、水素圧力45kgf/cm2で4時間反応させて水素添加反応液を得た。
【0024】
実施例2
参考例2で得た水素添加反応液の代わりに参考例3で得た水素添加反応液を用い、タルクを5重量部用いる以外は実施例1と同様に処理し、水素添加物を析出させて回収した。
【0025】
この水素添加物の数平均分子量は21,000、重量平均分子量は57,100、水素添加率は99%以上であり、タングステン原子量は0.01ppm、スズ原子量は0.10ppm、ニッケル原子量は0.24ppmであった。
【0026】
比較例1
参考例2で得た水素添加反応液の代わりに参考例3で得た水素添加反応液を用い、タルクの代わりに活性アルミナから成る吸着材(ネオビード D ペレット、水澤化学製)5重量部を用いる以外は実施例1と同様に処理し、水素添加物を析出させて回収した。
【0027】
この水素添加物中のタングステン原子量は0.98ppm、スズ原子量は1.05ppm、ニッケル原子量は0.95ppmであった。

Claims (1)

  1. タングステン、スズ、及びニッケルからなる群から選ばれる金属原子を含む触媒残渣を含有する樹脂溶液にタルク加えて該触媒残渣を除去する方法。
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