JP3718844B2 - カムシャフトの再溶融処理方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、カム表面に硬度の高いチル化組織を形成するために高密度エネルギー熱源を利用してカム表面を再溶融させるカムシャフトの再溶融処理方法に関する。
【0002】
【本発明の背景】
カム表面を再溶融処理し、その後冷却することによってカム表面部分に所定の厚さで硬度の高いチル化層を形成し、カムの耐磨耗性を向上させることは従来から公知である。この方法では、カム表面を再溶融させるために、TIGトーチあるいはプラズマトーチ等を用い、トーチを一方の電極とし、カム側を他方の電極とするように構成する。そして、該トーチと処理するカム表面に高密度エネルギー熱源としてのアーク発生させて、このアークによりカム表面を照射し、カム表面を再溶融させる。
アークをカム表面に照射するに際して、カムシャフトを回転させて、アーク照射領域を順次回転方向に進めるようになっている。
【0003】
カムの摺動面の全体にわたって一様な深さの再溶融領域を形成することが望ましいが、トーチの照射範囲は、カム摺動面の幅より狭いため、再溶融処理工程においてはカムシャフトを回転させながらトーチを左右にオシレート、すなわち揺動させるようにして全幅にわたってアークが照射されるようにしている。
すなわち、カムシャフトが回転するとき、トーチはカムの幅方向に揺動して、カムの全幅にわたって表面を均一に溶融させる。
この場合、トーチの照射領域がカムの幅を越えて生じると、溶融したカム材料がカムの隆起部の側部から流れ落ちる現象、すなわち、肩だれの恐れが生じる。したがって、トーチの揺動範囲は適正に制御しなければならない。また、カムシャフトの回転が速すぎると、カム表面領域に未溶融部分が残ることになり、遅すぎると重複して照射されるカム表面部分が発生し、処理速度が低下する。
【0004】
処理速度を上げるためにアーク電流を増大させる等、トーチへの電力を増大させ、カムへの入熱量を増大させるようにすると、カムシャフトの回転速度を比較的増大しても未溶融領域を発生させないようにすることができる。しかし、トーチの揺動の折り返し部すなわちカムの両側部において肩だれが発生する恐れがある。
特開昭60−258425号には、この種のカムシャフトの再溶融処理方法の一例が開示されている。この公報に開示された再溶融処理方法は、回転するカム面に対して、トーチを左右に揺動させながらアークを放射するが、肩だれを防ぐためにカムの幅方向両端部では、カム表面にあたるアークを弱めるようにトーチを退却させるようになっている。
【0005】
また、特開昭58−213829号には、カム幅方向両端部でアーク電流を減少させる再溶融処理方法が開示されている。
【0006】
【解決しようとする課題】
しかし、従来の再溶融処理方法では、トーチからカムへの入力される高密度エネルギーをカム中央部よりもカム端部で減少させるように制御するものであり、トーチの折り返し部におけるエネルギー量を抑えることによって、照射領域全般にわたって溶融深さを比較的一様にすることができるものの、肩だれ防止あるいは、再溶融処理の処理速度の観点においては何ら有効でない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明はこのような事情に鑑みて構成されたもので、処理中のカム幅方向の両端部における肩だれを有効に防止することができるとともに、未再溶融処理領域を生じさせることなく再溶融処理方法処理速度を向上させることができる再溶融処理方法を提供することを目的とする。
本発明は、このような目的を達成するために以下の特徴を有する。
本発明は、カムの表面硬化処理工程におけるカム表面の再溶融処理方法において、
カムシャフトのカム表面から所定間隔を有するように再溶融処理用トーチを該表面に対して向き合うように配置し、
前記トーチと前記カム表面との間にアークを発生させてカム表面を照射しカム表面を再溶融し、
前記アークが発生するとき、カムシャフトを回転させるとともに、前記トーチを該カムシャフトの回転方向に対して直交する方向に前記トーチをオシレートさせ、
前記トーチがカムの幅方向の中央部を照射するときは、前記トーチと前記カム表面との間隔を比較的大きくし、
前記トーチがカムの幅方向の端部を照射するときは、前記間隔を小さくすることを特徴とする。
【0008】
この場合、好ましくは、カムの幅方向の中央部を照射するとき前記アークのカム表面における照射範囲を比較的大きくし、カムの幅方向の端部を照射するとき小さくするようになっている。
また、カムの幅方向の中央部を照射するとき、カムの幅方向の端部を照射するときにくらべて前記トーチへの供給電流を増大させるようにしてもよい。
別の態様として、カム表面からの間隔が異なる2つのトーチを配置し、カム表面との間隔の小さいトーチがカムの幅方向の端部を照射し、カム表面との間隔の大きいトーチがカムの幅方向中央部を照射することもできる。
本発明によれば、カムの幅方向端部においては、中央部よりもトーチとカム面との距離が近くなるように制御され、あるいはトーチへの供給電力を減少して、アーク径を減少するように制御される。
【0009】
これによって、カムの中央部分においては、比較的広い範囲にアークが照射され、両端部付近では狭い範囲でアークが照射される。
このようにすることにより、揺動動作におけるトーチの折り返し部すなわちカム両端部において溶融が過度に深まることを回避することができ、有効に肩だれを防止することができる。これとともに、カム中央部では、広い範囲でアークが照射されるため広い溶融領域を形成することができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
図1を参照すると本発明の1実施例にかかるカムシャフトの再溶融処理装置の概念図が示されている。
本例の再溶融処理装置は、高密度エネルギー熱源としてのアーク1を発生するTIGトーチ2を備えている。本例においては、TIGトーチ2が負電極、カムシャフト3が正電極となるように電気回路を構成し、TIGトーチ2とカムシャフト3のカム4のカム表面5との間にアルゴン等の不活性ガス雰囲気Cを形成してにおいてアーク放電を生じさせる。
そして、このアーク放電による高密度エネルギーを熱源として、カム表面を再溶融させる。その後、冷却して硬度の高いチル化組織を形成する。
【0011】
図1に示すように、本例において、カムシャフト3のカム面5に向き合うように対峙して、負電極すなわちTIGトーチ2は所定の間隔(ギャップ値)Dを有するように配置される。TIGトーチ2は、カム面5に直交する方向及び、TIGトーチ2に所定の電圧を印加したときカム面に対して所望の強さの安定したTIGアークが生じるようなギャップ値D(本例では、約0.5mmから1.5mm)に設定されている。
TIGトーチ2からカム面4に対して照射されるとき、カムシャフト3は回転させられ、これによって、カム4のカム面5へのアークの照射領域が順次送られるようになっている。また、TIGトーチ2のTIGアーク照射幅は、カム幅より小さいのでカム面4の全幅にわたって均一に溶融領域を形成するために、TIGトーチ2はカム面4の幅方向にオシレートすなわち揺動される。
【0012】
この結果、TIGトーチ2は、回転するカム面上において図の線Aに示すように蛇行したオシレート軌跡を描きながら溶融領域6を形成する。
この場合において、チル組織は、カム表面の摺動部分の全体にわたって形成することがカムの耐磨耗性能上好ましい。
このためには、オシレートの幅がカム4の幅とが極力接近するようにトーチ2を揺動させるのが望ましい。
しかし、トーチ2のオシレート幅Bをあまり大きくしすぎると、図2に示すようにカム両端部において、溶融した材料の肩ダレ7が生じる。
逆に、肩ダレ7を防止するために、オシレート幅Bを小さくしすぎると、図3に示すようにカム4の両端部に、大きな未溶融部分9が残ることとなる。この部分にはチル組織は形成されないので、結果として、耐磨耗性の低い領域がカム面5の両端部に比較的大きい領域として存在することとなり、カムの耐磨耗性能上好ましくない。
【0013】
別の観点では、再溶融処理工程を迅速化するために、カムシャフト3の回転速度を過度に増大させると、図4に示すように、トーチ2のオシレートによって、形成される溶融領域6のうねりの間隔が大きくなりすぎて、溶融領域6が蛇行した形状となるおそれが生じる。
本例では、カム表面5において摺動部の極力全面にわたり、効率的に再溶融領域を形成するできるようにしている。
すなわち、本例の再溶融処理においては、図5に示すように、カムの幅方向の中央部においては、カム面5とトーチ2の先端との間隔すなわちギャップ値を例えば、約1.5mm程度の比較的大きな値に設定し、カムの幅方向の両端部においては、ギャップ値を例えば、約0.5〜1.0mm程度の比較的小さい値に設定する。ギャップ値の変化を段階的にあるいは連続的に行うことができる。
【0014】
また、比較的大きいギャップ値で動作して、カム幅方向の中央部を照射するものと、比較的小さいギャップ値で動作してカム端部を照射する複数のトーチ2を設けるようにしてもよい。
図6に示すように、本例のTIGトーチ2は、アーク1を発生する電極部2aの周辺にアルゴン等の不活性ガスをトーチ2の先端部付近で発生するノズル8を付設している。そして、不活性ガスをノズル8からアーク1にむけて噴出させ、不活性ガス雰囲気Cを溶融領域6の周囲に形成する。
この場合、中央部においては、トーチ2とアーク1はカム面5において比較的大きく広がり、したがって、アークのエネルギー密度は、低下し、カム表面5の溶融領域(ビード)6は浅く広く形成される。すなわち、形成されるチル化領域は浅く広いものとなる。また、両端部においては、ビード6は広がりは小さいがエネルギー密度が増大するため深い断面のビード6すなわちチル化組織が形成される。
【0015】
図7を参照して、本発明の実施例の変形例について説明する。
本例においては、前例と同様に、カム幅の中央部と両端部におけるトーチ2とカム面との間隔を変化させると同時に、電流値もこれに応じて変化させるようにしている。
すなわち、図8に示すように、中央部においては比較的大きな電流値Ipをトーチに供給し、両端部では、比較的小さい電流値Ibを供給するようにしており両端部において不必要に溶融領域6が深くならないようにしている。
電流値Ipと電流値Ibの値及び幅を適宜設定することができる。たとえば、電流値Ipを約100アンペア、電流値Ibを50アンペア程度とすることができる。そして、電流値Ipと電流値Ibとのパルス幅の比率は、本例では、同じに設定してあるが、たとえば2:1に設定することもできる。
【0016】
また、連続的に変化するように制御することもできる。
カムの幅方向に関して、電流値を変えない場合には、図9(a) に示すように、カム両端部でビードが深くなるが、両端部で電流値を小さくするように制御すると、ビード6はほぼ全幅にわたって一様な深さとなる。
ところで、再溶融処理が行われるワークすなわち、カム表面5とアークを発生するTIGトーチ2の先端とのギャップ値は、上記のように約0.5〜1.5mmの範囲の範囲内で制御されるものであって、極めて精密な制御が要求されるものである。
そして、カム表面5は回転軸に関して、距離が変化するものであるとともに、製品ごとの製造誤差の存在によって、上記ギャップ値を一定に維持することは困難を伴う。
【0017】
そして、ギャップ値の変動は、その再溶融範囲及び深さに対して極めて敏感に影響を及ぼす。このことに鑑み、本発明の別の実施例では、トーチ2をカムの幅方向に揺動させるだけでなく、図10に示すように(1) ないし(4) で示すような軌跡を描くように、上下方向にも約0.5mmから1.5mmの範囲内で揺動するように制御する。
すなわち、トーチはまずギャップ値が約1.5mm程度の比較的大きい値に設定し、カム4の一端側から、他端側でギャップ値が約0.5mm程度の比較的小さい値となるようにとなるように他端側に向かってカム表面5上を移動する((1) 〜(2))。
つぎに、約0.5mm程度の比較的小さいギャップ値を維持しながら、トーチ2は一端側に向かってカム表面5上を移動する((2)〜(3))。
【0018】
つぎに、約0.5mm程度の比較的小さいギャップ値から約1.5mm程度の比較的大きいギャップ値となるように移動される((3) 〜(4))。そして、約1.5mm程度の比較的大きい値から、他端側でギャップ値が約0.5mm程度の比較的小さい値となるようにとなるように他端側に向かってカム表面5上を移動する((4) 〜(1))。
このような(1) 〜(4) に示すサイクルで、トーチ2の動作を制御する。この場合、幅方向の揺動ピッチは、図11に示すように前例の半分になるように制御するのが好ましい。
このように制御することにより、トーチが幅方向及び上下方向に揺動する間に必ずギャップ値の最適値(本例では、1.00mm)を通過することとなる。そして、ギャップ値の平均値も、再溶融領域全体として1.00mmに近づくこととなる。
【0019】
これによって、全体として、再溶融処理における品質を安定化することができる。すなわち一様な溶融領域を全般にわたって形成することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、再溶融処理中のカム幅方向の両端部における肩だれを有効に防止しつつ、カム表面全域にわたって均一な所望の厚さの再溶融領域を形成することができる。また、未再溶融処理領域を生じさせることなく再溶融処理方法処理速度を向上させることができる。すなわち、高効率でかつ高品質の再溶融処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例にかかる再溶融処理の状態を斜視図の形式で示した概念図、
【図2】再溶融処理における肩ダレの生じる状態を示す説明図、
【図3】カム表面の再溶融状態を示す説明図、
【図4】カム表面の再溶融状態を示す説明図、
【図5】トーチの動作を示す説明図、
【図6】トーチからのアークを示す説明図、
【図7】トーチの動作を示す説明図、
【図8】トーチへの供給電流のパターンを示すグラフ、
【図9】カム表面に形成される再溶融領域を断面の形式で示す説明図、
【図10】トーチの動作パターンを示す説明図、
【図11】トーチの動作パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
1 アーク
2 TIGトーチ
3 カムシャフト
4 カム
5 カム表面
6 溶融領域
7 肩ダレ
8 ノズル
9 未溶融部分。
【産業上の利用分野】
本発明は、カム表面に硬度の高いチル化組織を形成するために高密度エネルギー熱源を利用してカム表面を再溶融させるカムシャフトの再溶融処理方法に関する。
【0002】
【本発明の背景】
カム表面を再溶融処理し、その後冷却することによってカム表面部分に所定の厚さで硬度の高いチル化層を形成し、カムの耐磨耗性を向上させることは従来から公知である。この方法では、カム表面を再溶融させるために、TIGトーチあるいはプラズマトーチ等を用い、トーチを一方の電極とし、カム側を他方の電極とするように構成する。そして、該トーチと処理するカム表面に高密度エネルギー熱源としてのアーク発生させて、このアークによりカム表面を照射し、カム表面を再溶融させる。
アークをカム表面に照射するに際して、カムシャフトを回転させて、アーク照射領域を順次回転方向に進めるようになっている。
【0003】
カムの摺動面の全体にわたって一様な深さの再溶融領域を形成することが望ましいが、トーチの照射範囲は、カム摺動面の幅より狭いため、再溶融処理工程においてはカムシャフトを回転させながらトーチを左右にオシレート、すなわち揺動させるようにして全幅にわたってアークが照射されるようにしている。
すなわち、カムシャフトが回転するとき、トーチはカムの幅方向に揺動して、カムの全幅にわたって表面を均一に溶融させる。
この場合、トーチの照射領域がカムの幅を越えて生じると、溶融したカム材料がカムの隆起部の側部から流れ落ちる現象、すなわち、肩だれの恐れが生じる。したがって、トーチの揺動範囲は適正に制御しなければならない。また、カムシャフトの回転が速すぎると、カム表面領域に未溶融部分が残ることになり、遅すぎると重複して照射されるカム表面部分が発生し、処理速度が低下する。
【0004】
処理速度を上げるためにアーク電流を増大させる等、トーチへの電力を増大させ、カムへの入熱量を増大させるようにすると、カムシャフトの回転速度を比較的増大しても未溶融領域を発生させないようにすることができる。しかし、トーチの揺動の折り返し部すなわちカムの両側部において肩だれが発生する恐れがある。
特開昭60−258425号には、この種のカムシャフトの再溶融処理方法の一例が開示されている。この公報に開示された再溶融処理方法は、回転するカム面に対して、トーチを左右に揺動させながらアークを放射するが、肩だれを防ぐためにカムの幅方向両端部では、カム表面にあたるアークを弱めるようにトーチを退却させるようになっている。
【0005】
また、特開昭58−213829号には、カム幅方向両端部でアーク電流を減少させる再溶融処理方法が開示されている。
【0006】
【解決しようとする課題】
しかし、従来の再溶融処理方法では、トーチからカムへの入力される高密度エネルギーをカム中央部よりもカム端部で減少させるように制御するものであり、トーチの折り返し部におけるエネルギー量を抑えることによって、照射領域全般にわたって溶融深さを比較的一様にすることができるものの、肩だれ防止あるいは、再溶融処理の処理速度の観点においては何ら有効でない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明はこのような事情に鑑みて構成されたもので、処理中のカム幅方向の両端部における肩だれを有効に防止することができるとともに、未再溶融処理領域を生じさせることなく再溶融処理方法処理速度を向上させることができる再溶融処理方法を提供することを目的とする。
本発明は、このような目的を達成するために以下の特徴を有する。
本発明は、カムの表面硬化処理工程におけるカム表面の再溶融処理方法において、
カムシャフトのカム表面から所定間隔を有するように再溶融処理用トーチを該表面に対して向き合うように配置し、
前記トーチと前記カム表面との間にアークを発生させてカム表面を照射しカム表面を再溶融し、
前記アークが発生するとき、カムシャフトを回転させるとともに、前記トーチを該カムシャフトの回転方向に対して直交する方向に前記トーチをオシレートさせ、
前記トーチがカムの幅方向の中央部を照射するときは、前記トーチと前記カム表面との間隔を比較的大きくし、
前記トーチがカムの幅方向の端部を照射するときは、前記間隔を小さくすることを特徴とする。
【0008】
この場合、好ましくは、カムの幅方向の中央部を照射するとき前記アークのカム表面における照射範囲を比較的大きくし、カムの幅方向の端部を照射するとき小さくするようになっている。
また、カムの幅方向の中央部を照射するとき、カムの幅方向の端部を照射するときにくらべて前記トーチへの供給電流を増大させるようにしてもよい。
別の態様として、カム表面からの間隔が異なる2つのトーチを配置し、カム表面との間隔の小さいトーチがカムの幅方向の端部を照射し、カム表面との間隔の大きいトーチがカムの幅方向中央部を照射することもできる。
本発明によれば、カムの幅方向端部においては、中央部よりもトーチとカム面との距離が近くなるように制御され、あるいはトーチへの供給電力を減少して、アーク径を減少するように制御される。
【0009】
これによって、カムの中央部分においては、比較的広い範囲にアークが照射され、両端部付近では狭い範囲でアークが照射される。
このようにすることにより、揺動動作におけるトーチの折り返し部すなわちカム両端部において溶融が過度に深まることを回避することができ、有効に肩だれを防止することができる。これとともに、カム中央部では、広い範囲でアークが照射されるため広い溶融領域を形成することができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
図1を参照すると本発明の1実施例にかかるカムシャフトの再溶融処理装置の概念図が示されている。
本例の再溶融処理装置は、高密度エネルギー熱源としてのアーク1を発生するTIGトーチ2を備えている。本例においては、TIGトーチ2が負電極、カムシャフト3が正電極となるように電気回路を構成し、TIGトーチ2とカムシャフト3のカム4のカム表面5との間にアルゴン等の不活性ガス雰囲気Cを形成してにおいてアーク放電を生じさせる。
そして、このアーク放電による高密度エネルギーを熱源として、カム表面を再溶融させる。その後、冷却して硬度の高いチル化組織を形成する。
【0011】
図1に示すように、本例において、カムシャフト3のカム面5に向き合うように対峙して、負電極すなわちTIGトーチ2は所定の間隔(ギャップ値)Dを有するように配置される。TIGトーチ2は、カム面5に直交する方向及び、TIGトーチ2に所定の電圧を印加したときカム面に対して所望の強さの安定したTIGアークが生じるようなギャップ値D(本例では、約0.5mmから1.5mm)に設定されている。
TIGトーチ2からカム面4に対して照射されるとき、カムシャフト3は回転させられ、これによって、カム4のカム面5へのアークの照射領域が順次送られるようになっている。また、TIGトーチ2のTIGアーク照射幅は、カム幅より小さいのでカム面4の全幅にわたって均一に溶融領域を形成するために、TIGトーチ2はカム面4の幅方向にオシレートすなわち揺動される。
【0012】
この結果、TIGトーチ2は、回転するカム面上において図の線Aに示すように蛇行したオシレート軌跡を描きながら溶融領域6を形成する。
この場合において、チル組織は、カム表面の摺動部分の全体にわたって形成することがカムの耐磨耗性能上好ましい。
このためには、オシレートの幅がカム4の幅とが極力接近するようにトーチ2を揺動させるのが望ましい。
しかし、トーチ2のオシレート幅Bをあまり大きくしすぎると、図2に示すようにカム両端部において、溶融した材料の肩ダレ7が生じる。
逆に、肩ダレ7を防止するために、オシレート幅Bを小さくしすぎると、図3に示すようにカム4の両端部に、大きな未溶融部分9が残ることとなる。この部分にはチル組織は形成されないので、結果として、耐磨耗性の低い領域がカム面5の両端部に比較的大きい領域として存在することとなり、カムの耐磨耗性能上好ましくない。
【0013】
別の観点では、再溶融処理工程を迅速化するために、カムシャフト3の回転速度を過度に増大させると、図4に示すように、トーチ2のオシレートによって、形成される溶融領域6のうねりの間隔が大きくなりすぎて、溶融領域6が蛇行した形状となるおそれが生じる。
本例では、カム表面5において摺動部の極力全面にわたり、効率的に再溶融領域を形成するできるようにしている。
すなわち、本例の再溶融処理においては、図5に示すように、カムの幅方向の中央部においては、カム面5とトーチ2の先端との間隔すなわちギャップ値を例えば、約1.5mm程度の比較的大きな値に設定し、カムの幅方向の両端部においては、ギャップ値を例えば、約0.5〜1.0mm程度の比較的小さい値に設定する。ギャップ値の変化を段階的にあるいは連続的に行うことができる。
【0014】
また、比較的大きいギャップ値で動作して、カム幅方向の中央部を照射するものと、比較的小さいギャップ値で動作してカム端部を照射する複数のトーチ2を設けるようにしてもよい。
図6に示すように、本例のTIGトーチ2は、アーク1を発生する電極部2aの周辺にアルゴン等の不活性ガスをトーチ2の先端部付近で発生するノズル8を付設している。そして、不活性ガスをノズル8からアーク1にむけて噴出させ、不活性ガス雰囲気Cを溶融領域6の周囲に形成する。
この場合、中央部においては、トーチ2とアーク1はカム面5において比較的大きく広がり、したがって、アークのエネルギー密度は、低下し、カム表面5の溶融領域(ビード)6は浅く広く形成される。すなわち、形成されるチル化領域は浅く広いものとなる。また、両端部においては、ビード6は広がりは小さいがエネルギー密度が増大するため深い断面のビード6すなわちチル化組織が形成される。
【0015】
図7を参照して、本発明の実施例の変形例について説明する。
本例においては、前例と同様に、カム幅の中央部と両端部におけるトーチ2とカム面との間隔を変化させると同時に、電流値もこれに応じて変化させるようにしている。
すなわち、図8に示すように、中央部においては比較的大きな電流値Ipをトーチに供給し、両端部では、比較的小さい電流値Ibを供給するようにしており両端部において不必要に溶融領域6が深くならないようにしている。
電流値Ipと電流値Ibの値及び幅を適宜設定することができる。たとえば、電流値Ipを約100アンペア、電流値Ibを50アンペア程度とすることができる。そして、電流値Ipと電流値Ibとのパルス幅の比率は、本例では、同じに設定してあるが、たとえば2:1に設定することもできる。
【0016】
また、連続的に変化するように制御することもできる。
カムの幅方向に関して、電流値を変えない場合には、図9(a) に示すように、カム両端部でビードが深くなるが、両端部で電流値を小さくするように制御すると、ビード6はほぼ全幅にわたって一様な深さとなる。
ところで、再溶融処理が行われるワークすなわち、カム表面5とアークを発生するTIGトーチ2の先端とのギャップ値は、上記のように約0.5〜1.5mmの範囲の範囲内で制御されるものであって、極めて精密な制御が要求されるものである。
そして、カム表面5は回転軸に関して、距離が変化するものであるとともに、製品ごとの製造誤差の存在によって、上記ギャップ値を一定に維持することは困難を伴う。
【0017】
そして、ギャップ値の変動は、その再溶融範囲及び深さに対して極めて敏感に影響を及ぼす。このことに鑑み、本発明の別の実施例では、トーチ2をカムの幅方向に揺動させるだけでなく、図10に示すように(1) ないし(4) で示すような軌跡を描くように、上下方向にも約0.5mmから1.5mmの範囲内で揺動するように制御する。
すなわち、トーチはまずギャップ値が約1.5mm程度の比較的大きい値に設定し、カム4の一端側から、他端側でギャップ値が約0.5mm程度の比較的小さい値となるようにとなるように他端側に向かってカム表面5上を移動する((1) 〜(2))。
つぎに、約0.5mm程度の比較的小さいギャップ値を維持しながら、トーチ2は一端側に向かってカム表面5上を移動する((2)〜(3))。
【0018】
つぎに、約0.5mm程度の比較的小さいギャップ値から約1.5mm程度の比較的大きいギャップ値となるように移動される((3) 〜(4))。そして、約1.5mm程度の比較的大きい値から、他端側でギャップ値が約0.5mm程度の比較的小さい値となるようにとなるように他端側に向かってカム表面5上を移動する((4) 〜(1))。
このような(1) 〜(4) に示すサイクルで、トーチ2の動作を制御する。この場合、幅方向の揺動ピッチは、図11に示すように前例の半分になるように制御するのが好ましい。
このように制御することにより、トーチが幅方向及び上下方向に揺動する間に必ずギャップ値の最適値(本例では、1.00mm)を通過することとなる。そして、ギャップ値の平均値も、再溶融領域全体として1.00mmに近づくこととなる。
【0019】
これによって、全体として、再溶融処理における品質を安定化することができる。すなわち一様な溶融領域を全般にわたって形成することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、再溶融処理中のカム幅方向の両端部における肩だれを有効に防止しつつ、カム表面全域にわたって均一な所望の厚さの再溶融領域を形成することができる。また、未再溶融処理領域を生じさせることなく再溶融処理方法処理速度を向上させることができる。すなわち、高効率でかつ高品質の再溶融処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例にかかる再溶融処理の状態を斜視図の形式で示した概念図、
【図2】再溶融処理における肩ダレの生じる状態を示す説明図、
【図3】カム表面の再溶融状態を示す説明図、
【図4】カム表面の再溶融状態を示す説明図、
【図5】トーチの動作を示す説明図、
【図6】トーチからのアークを示す説明図、
【図7】トーチの動作を示す説明図、
【図8】トーチへの供給電流のパターンを示すグラフ、
【図9】カム表面に形成される再溶融領域を断面の形式で示す説明図、
【図10】トーチの動作パターンを示す説明図、
【図11】トーチの動作パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
1 アーク
2 TIGトーチ
3 カムシャフト
4 カム
5 カム表面
6 溶融領域
7 肩ダレ
8 ノズル
9 未溶融部分。
Claims (4)
- カムの表面硬化処理工程におけるカム表面の再溶融処理方法において、
カムシャフトのカム表面から所定間隔を有するように再溶融処理用トーチを該表面に対して向き合うように配置し、
前記トーチと前記カム表面との間にアークを発生させてカム表面を照射しカム表面を再溶融し、
前記アークが発生するとき、カムシャフトを回転させるとともに、前記トーチを該カムシャフトの回転方向に対して直交する方向に前記トーチをオシレートさせ、
前記トーチがカムの幅方向の中央部を照射するときは、前記トーチと前記カム表面との間隔を比較的大きくし、
前記トーチがカムの幅方向の端部を照射するときは、前記間隔を小さくすることを特徴とするカムシャフトの再溶融処理方法。 - 請求項1の方法において、カムの幅方向の中央部を照射するとき前記アークのカム表面における照射範囲を比較的大きくし、カムの幅方向の端部を照射するとき小さくすることを特徴とするカムシャフトの再溶融処理方法。
- 請求項1または2のいずれかの方法において、カムの幅方向の中央部を照射するとき、カムの幅方向の端部を照射するときにくらべて前記トーチへの供給電流を増大させることを特徴とするカムシャフトの再溶融処理方法。
- 請求項1の方法において、カム表面からの間隔が異なる2つのトーチを配置し、カム表面との間隔の小さいトーチがカムの幅方向の端部を照射し、カム表面との間隔の大きいトーチがカムの幅方向中央部を照射するようになっていることを特徴とするカムシャフトの再溶融処理方法。
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