JP3716053B2 - シールド掘進機のエレクタ駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールド掘進機内においてセグメントの組立てを行うエレクタの駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3に示すように、一般的なシールド掘進機においては、その円筒状シールドフレームa内にセグメントの組立てを行うためのエレクタbが装備されている。エレクタbは、円環状の回転フレームcとその一箇所に設けられた把持部dとから主に構成され、回転フレームcは複数の支持ローラeに支持されて、シールドフレームaの軸心回りを回転できるようになっている。そして把持部dは、セグメント(図示せず)を着脱自在に把持すると共に、回転フレームcの回転によって所定位置に位置決めされた後、その位置にセグメントを組み付けるようになっている。なお、円環状の回転フレームcには把持部dとの重量バランスを取るためバランサfも設けられる。
【0003】
ここで、回転フレームcを駆動する駆動装置は、回転フレームcに設けられたリングギヤgと、これに噛合されるピニオンギヤhと、ピニオンギヤhを回転させる油圧モータiとから主に構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エレクタを回転駆動して位置決めする場合、その慣性負荷が回転角度によって大きく異なること、油圧のON/OFF制御の精度が良くない等の理由により、エレクタを所望の位置に正確に止めるには熟練を要する寸動動作に頼らざるを得ないという問題がある。また、エレクタを自動化する場合、エレクタの回転位置決めは精密さを要求し、このような油圧モータによる駆動方式では要求を満たし得ない。
【0005】
そこでこれを解決するため、本出願人は特開昭60-261898 号公報において、油圧モータとは別の位置決め用油圧シリンダを備えた駆動装置を開示した。これによれば、エレクタの粗位置決めを油圧モータで行った後、油圧シリンダで精密位置決めを行うことができ、これによりエレクタの容易で自動的な精密位置決めを達成することができる。
【0006】
ところが、この装置では、モータとシリンダとの二系統の入力を切り換えるため差動歯車装置を用いている。そして通常のモータによる運転時にも差動歯車装置を介して駆動力が伝達されるため、差動歯車装置内部で摩擦抵抗等による損失が生じ、駆動効率が悪化する問題がある。また、差動歯車装置の分だけ装置の軸長が長くなり、装置の全長を長大化すると共に軸強度も必要となって不利である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シールド掘進機内にて回転自在に支持されたエレクタを駆動する装置において、上記エレクタに設けられたリングギヤと、リングギヤに噛合されるピニオンギヤと、ピニオンギヤを回転駆動する第1の駆動手段と、第1の駆動手段を上記リングギヤに沿って移動自在に支持するフレームと、第1の駆動手段を上記フレームに対し移動させる第2の駆動手段とを備えたものである。
【0008】
これにおいては、通常の粗位置決めの際には、第2の駆動手段をロックして第1の駆動手段でピニオンギヤを駆動し、リングギヤを回転させる。また、特に精密位置決めの際には、第1の駆動手段をロックして第2の駆動手段で第1の駆動手段を移動させ、リングギヤを回転させる。これにより、例えば第1の駆動手段を油圧モータで構成しても、これとは別の第2の駆動手段で精密位置決めを行うことができ、位置決めを正確且つ自動的に行えるようになる。そして差動歯車装置を用いないため、従来装置の問題点も一掃することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0010】
図1は、本発明に係るエレクタ駆動装置の概略正面図、図2は図1のA−A線詳細断面図である。なお、図1の紙面厚さ方向手前側、図2の左側がそれぞれシールド掘進機の掘進方向前方である。
【0011】
図示するように、1はエレクタの一部をなす円環状の回転フレームで、その前端部には同じく円環状のリングギヤ2が固設されている。回転フレーム1は、図示しない支持ローラを介してシールドフレーム(図示せず)に支持され、これにより従来同様、円筒状シールドフレームの軸心C回りを回転自在となっている。また回転フレーム1及びリングギヤ2は、軸心Cを中心とする円環状に形成される。
【0012】
リングギヤ2にはピニオンギヤ5が噛合され、ピニオンギヤ5は減速機付油圧モータ6の出力軸7に取り付けられて回転駆動されるようになっている。ここでピニオンギヤ5及びモータ6は二つが並列して設けられ、これによって高い駆動力を得るようにしている。またモータ6は、円弧状レール8から起立された取付板3に取り付けられ固定されている。モータ6は内部にブレーキ装置を有しており、その制動時には内部の機構をロックし、出力軸7をモータケーシング6aに一体にできるようになっている。なおモータ6は、取付板3側から順に減速機部13と油圧モータ部14とが直列配置される構造となっている。
【0013】
円弧状レール8は、軸心Cを中心とする円弧状に形成され、四つのローラ9に上下から挟持され且つ案内されて、自身に沿った円軌道上を往復移動できるようになっている。
【0014】
ローラ9は、そのローラ軸10が軸受部材11を介して固定側フレーム4に回転自在に支持される。なお固定側フレーム4はシールドフレームに一体的に連結されたものである。そしてローラ9は、前後の鍔部12で円弧状レール8を挟持し、円弧状レール8の軸心C方向の移動を規制している。円弧状レール8は断面矩形の中空構造とされる。
【0015】
ここで、円弧状レール8の一端には複動形油圧シリンダ20の一端が接続され、油圧シリンダ20の他端は固定側フレーム4に接続されている。そして油圧シリンダ20は、図示しない油圧装置からの油圧供給を受けて伸縮動作を実行する。
【0016】
このように、減速機付油圧モータ6は、ピニオンギヤ5を回転駆動する第1の駆動手段を構成する。また固定側フレーム4は、ローラ9、円弧状レール8及び取付板3を介して、第1の駆動手段をリングギヤ2に沿って移動自在に支持するフレームを形成する。
【0017】
また、取付板3、円弧状レール8及び油圧シリンダ20は、上記第1の駆動手段をフレームに対し移動させる第2の駆動手段を構成する。
【0018】
次に、かかる実施の形態の作用について説明する。
【0019】
エレクタの位置決めを行う場合、先ず減速機付油圧モータ6によって粗位置決めを行い、次に油圧シリンダ20によって精密位置決めを行う。具体的には、粗位置決めを行う場合、先ず油圧シリンダ20を中立位置でロックすると共にモータ6内部のブレーキを解除し、この状態で油圧モータ11を起動させる。こうすると回転フレーム1は比較的高速で回転し、比較的短時間で所定位置に位置決めされる。ただし、このときの位置決め精度は粗く、正確な位置へは位置決めされていない。
【0020】
こうして粗位置決めが終了したら、こんどはブレーキを作動させて出力軸7をモータケーシング6aにロックする。こうすると、結局、ピニオンギヤ5と円弧状レール8とは一体となるから、円弧状レール8を油圧シリンダ20の伸縮動作で移動させることにより、リングギヤ2を駆動し、回転フレーム1を回転させることが可能となる。
【0021】
ここで油圧シリンダ20には、ステッピングシリンダ、パルスシリンダ等の高精度のものが使用される。また、円弧状レール8がモータ6のさらに径方向外側にあることから、油圧シリンダ20のストロークに対するモータ6の移動角を少なくし、回転フレーム1の回転速度をより低速とすることができる。こういった理由から、粗位置決めの位置から正確な位置まで微調整が可能となり、油圧モータ11による位置決めよりも、さらに高精度な位置決めを達成することが可能となる。
【0022】
また、図示しないが、ピニオンギヤ5の回転角はエンコーダ等の回転角検出手段で検知され、油圧シリンダ20のストローク位置もポテンショメータ等のストローク位置検出手段で検知されている。これらの検出信号に基づき、電子制御装置が油圧装置からの油圧供給を制御することにより、油圧モータ6や油圧シリンダ20の自動制御を達成し、従来のような熟練操作によらない容易な自動位置決めを達成できるようになる。
【0023】
そして特に、かかる駆動装置によれば、従来必要であった差動歯車装置を省略できるため、駆動損失を可能な限りなくし、駆動効率を向上させることができる。また、装置の軸長ないし全長の短縮化も図れ、コンパクトでシンプルな装置とすることが可能となり、軸強度の点でも有利となる。
【0024】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されず他の様々な実施の形態を採ることが可能である。例えば、モータ6に付加された減速機は必須ではなく十分な駆動力が得られればなくても構わないし、モータ6の数も上記に限定されない。また、油圧シリンダ20の代わりに油圧又は電動モータ等を使用することも可能である。円弧状レール8と油圧シリンダ20との組合せの他、ラック・ピニオン機構やボールネジ機構等も採用できる。そしてモータ6の取付部材を直線的に案内すると共に、モータ6を取付部材に対し昇降自在とし、ピニオンギヤ5をリングギヤ2に常時押し付けておくようにすることも可能である。
【0025】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0026】
(1) 従来の差動歯車装置を省略でき、駆動効率を向上できる。
【0027】
(2) 装置のコンパクト化、シンプル化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエレクタ駆動装置を示す概略正面図である。
【図2】図1のA−A線詳細断面図である。
【図3】エレクタを掘進方向後方から見たときの正面図である。
【符号の説明】
2 リングギヤ
3 取付板
4 固定側フレーム
5 ピニオンギヤ
6 減速機付油圧モータ
8 円弧状レール
20 油圧シリンダ
b エレクタ

Claims (1)

  1. シールド掘進機内にて回転自在に支持されたエレクタを駆動する装置において、上記エレクタに設けられたリングギヤと、該リングギヤに噛合されるピニオンギヤと、該ピニオンギヤを回転駆動する第1の駆動手段と、該第1の駆動手段を上記リングギヤに沿って移動自在に支持するフレームと、該第1の駆動手段を上記フレームに対し移動させる第2の駆動手段とを備えたことを特徴とするシールド掘進機のエレクタ駆動装置。
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