JP3716021B2 - 金属部材の被覆方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長期防食などの目的で金属部材に適用される加熱溶融施工型の樹脂系材料による被覆の施工を、冷却工程に時間や手間を多く要することなく高能率に行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
配管用鋼管などの金属部材には、長期防食等の目的で樹脂系の被覆が施されることが多い。しかして、被覆施工能率,環境遮断性,防食性の諸点から、ポリエチレン,ポリ塩化ビニル(塩ビ),ポリアミド(ナイロン),飽和ポリエステルなどを基材とする熱可塑性の材料による加熱溶融施工型の被覆が近年多用されている。
【0003】
上記被覆は、被覆材料の溶融層を、対象とする金属部材の表面に形成し、これを冷却固化させることによって施工される。ここで、上記溶融層の形成は、たとえば、金属部材を被覆材料の融点以上の温度に加熱し、この表面に被覆材料の粉体を供給して溶融させることによって行うことができるので作業能率は高い。
【0004】
一方、上記溶融層の冷却固化には多大な時間と手間を要していた。これは冷却にかかる前の溶融層の温度は通常150℃以上であり、これに冷却水を直接々触させて水冷すると表面で沸騰が起り、表面で発生する気泡によって被覆に凹凸が生じて平滑性が損われるので、能率の高い水冷を、前記溶融層が固化した後でなければ適用できないためである。
【0005】
よって、少なくとも前記溶融層が固化する迄は、放冷,強制空冷あるいは被覆の裏面側から母材を水冷するなどの手段を適宜組合わせた冷却作業が行われていたので、時間ばかりでなく、作業スペ−スや段取りを多く要していた。即ち、加熱溶融施工型の被覆は、施工能率が優れているとはいえ、冷却については改善が望まれる状況にあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであって、加熱溶融施工型の樹脂系の被覆を、冷却固化工程を含めて高能率に施工することのできる被覆方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するためになした本発明の構成は、金属部材の表面に熱可塑性の樹脂系被覆材料の溶融層を形成し、これを冷却固化させて被覆を形成する金属部材の被覆方法であって、前記溶融層を冷却固化させる操作を、水溶性の低分子ポリオ−ルを5〜25%配合した冷却水を前記溶融層に直接々触させて行うことを特徴とするものである。即ち、上記構成によれば、被覆材料の溶融層の表面に冷却水を直接々触させて水冷しても、前記沸騰に際して発生する気泡が微小となり、延いては沸騰自体が極く穏やかとなって、被覆に凹凸が発生しなくなることが実験的に知得されたものであり、よって、この構成により平滑性を損うことなく簡単,迅速で多くのスペ−スを要しない冷却作業が行えるようになる。
【0008】
冷却水の沸騰現象を上記のように抑制する効果は、エチレングリコ−ル,プロピレングリコ−ル,グリセリンなどの水溶性の低分子ポリオ−ル類を冷却水に配合して得られるものであり、上記効果が得られる機作は明らかでないが、上記配合剤により被覆材料溶融層表面における冷却水の濡れ性が改善されて沸騰時の気泡が微小化され、あるいは、冷却水中の気体の溶解度が増して起泡性が変化する等の効果が複合的に寄与するものと推定される。
【0009】
上記ポリオ−ル類は1種を単独で配合してもよいが、2種以上を配合してもよい。又、合計の配合量が5%未満では上記効果が顕著に得られず、一方、25%を超えると、冷却固化後の被覆表面からの除去が困難になる。
【0010】
上記本発明方法における冷却固化操作は、前記溶融層を直接水冷するものであるため、溶融層の冷却固化の速度が極めて大であり、対象となる金属部材やこれに施す被覆の仕様あるいは水冷操作の形式によっては、溶融層に冷却水が接触して行く前線の痕跡である冷却線や被覆材料の急速な収縮に伴ういわゆるひけが生じて被覆の仕上りを損うことがある。このような場合には冷却速度を抑制するために、前記冷却水を加温して用いるのがよい。
【0011】
上記加温の効果は水温で50℃位から現われ始め、水温を高くするほど顕著になるが、水温が高すぎると前記溶融層表面での沸騰が激しくなってくるので、90℃以下に留めるのがよい。
【0012】
なお、本発明方法に用いる冷却水には、上記冷却固化操作後の被覆からの除去性を損わない範囲で、上記ポリオ−ル類以外に、必要に応じて少量の界面活性剤,防錆剤,防腐剤等を添加してもよい。又、上記ポリオ−ル類を配合する代りに、エチレングリコ−ル等を主剤とする市販の不凍液等を配合してもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明方法における、被覆材料の溶融層への冷却水の適用手段は任意であり、浸漬法,噴霧法のような通常手段によればよい。本発明方法に用いる冷却水は、廃液を生じさせないよう、濾過や補給を行いながら継続使用するのがよい。
【0014】
本発明方法を実施して冷却固化を終えた後は、被覆表面に残留している冷却水を流下,エア吹きあるいは布拭きにより除去するのがよい。更に、必要に応じて通常水による水洗を行うこともできる。
【0015】
【実施例】
SGP400A鋼管の90°エルボを、ブラスト加工の後約300℃に加熱し、被覆用ポリエチレン粉体の流動層内に浸漬して内外面に約1.5mm厚さのポリエチレンの溶融層を形成させた。次いで、10%のエチレングリコ−ルを配合し、約80℃に加温した冷却水中に上記仕掛品を10秒間浸漬して冷却し、溶融層を固化させ、表面の冷却水を流下させた後エア吹き除去して、乾燥した被覆を得た。
【0016】
上記冷却作業において、上記溶融層表面での冷却水の沸騰は、沸騰していないかと見えるほど穏やかに起こったが、10秒間で約80℃迄の冷却を行うことができた。上記沸騰に際しては、小さな気泡の緩やかな発生しか認められなかったが、上記冷却効果から溶融層表面での伝熱は良好と見なされることから、目視しにくい微小な気泡が多数発生していたものと推察される。
【0017】
従来の作業では、鋼管の加熱面へのポリエチレン溶融層の形成を上例と同様に行い、このあと、放冷して溶融層を固化させており、この2工程で約5分+15分=20分を要していた。これに対して上記本発明方法における上記2工程の所要時間は高々10分に短縮されており、作業能率の向上が顕著である。
【0018】
【発明の効果】
本発明は、上述したように、金属部材に加熱溶融施工型の樹脂系被覆を形成するに際して、金属部材の表面に形成された被覆材料の溶融層の冷却固化を、ポリオ−ル類を配合して沸騰現象を抑制し且つ必要に応じて加温した冷却水による直接水冷にて行う構成により、被覆の平滑性を損うことなく、冷却工程を高能率化できたものである。従来、被覆施工作業の中で、冷却工程の負荷比率が大であったので、上記冷却工程の改善が作業全体の高能率化に大きく寄与するところとなる。
Claims (2)
- 金属部材の表面に熱可塑性の樹脂系被覆材料の溶融層を形成し、これを冷却固化させて被覆を形成する金属部材の被覆方法であって、前記溶融層を冷却固化させる操作を、水溶性の低分子ポリオ−ルを5〜25%配合した冷却水を前記溶融層に直接々触させて行うことを特徴とする金属部材の被覆方法。
- 前記冷却水を加温して用いることにより、前記溶融層を冷却固化させる速度を抑制する請求項1に記載の金属部材の被覆方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP34434095A JP3716021B2 (ja) | 1995-12-06 | 1995-12-06 | 金属部材の被覆方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP34434095A JP3716021B2 (ja) | 1995-12-06 | 1995-12-06 | 金属部材の被覆方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH09155286A JPH09155286A (ja) | 1997-06-17 |
JP3716021B2 true JP3716021B2 (ja) | 2005-11-16 |
Family
ID=18368484
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP34434095A Expired - Fee Related JP3716021B2 (ja) | 1995-12-06 | 1995-12-06 | 金属部材の被覆方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3716021B2 (ja) |
-
1995
- 1995-12-06 JP JP34434095A patent/JP3716021B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH09155286A (ja) | 1997-06-17 |
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