JP3715496B2 - 低NOxバーナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、低NOxバーナに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、ボイラや冷温水発生装置等に使用されるガスバーナにおいては、燃焼の際に発生するNOxの低減を図ることが重要な課題である。
【0003】
このNOxの低減を図る技術には、(1)濃淡燃焼,(2)燃料または酸化剤の多段燃焼, (3)予混合希薄燃焼,(4)燃焼ガスの再循環(EGR),(5)蒸気または水噴霧等の技術があり、従来の多くの低NOxバーナにおいては、これらの技術を単独で利用したりまたは組み合わせて利用する機構を備えることによって、低NOx化が図られている。
【0004】
現在、最もNOx排出濃度の規制が厳しいのはボイラや冷温水発生装置等に使用される燃焼機器であり、例えば、東京都の低NOx認定基準は、NOxの排出濃度が60ppm(O2=0%換算値(以下同じ))以下になっている。
【0005】
このため、最近の低NOxバーナは、この東京都の低NOx認定基準である60ppm以下を目標として低NOx化を達成するように設計されており、そのほとんどが、40〜60ppm程度のNOxの排出濃度で燃焼を行う。
【0006】
ここで、従来のボイラのなかには、バーナの構造によって低NOx化を実現するのではなく、2次側である水管によって火炎を冷却することにより、NOxの排出濃度を35ppmに抑えているボイラがある。
【0007】
しかしながら、このような火炎を冷却することによって低NOx化を図る技術は、二次側に水管などの火炎を冷却するための構造を備える必要があるので、ボイラや冷温水発生装置以外のプロセスヒータには利用することはできない。
【0008】
これまで、バーナの構造のみによってNOxの排出濃度を35ppm以下に抑えることができるものはなく、従来から、低NOx化をさらに達成することが出来るとともに、ボイラや冷温水発生装置以外にも広く使用することが出来る低NOxバーナの開発が待たれていた。
【0009】
この発明は、上記のような低NOxバーナに対する従来からの要望に応えるために為されたものである。
すなわち、この発明は、バーナの構造のみによって従来よりもさらに低NOx化を図ることが出来る低NOxバーナを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明による低NOxバーナは、上記目的を達成するために、燃料と酸化剤が混合された予混合気を噴射するノズル部材と、このノズル部材から噴射される予混合気に対してその噴射方向と交差する方向に予混合気または酸化剤を噴射する保炎部材とを備えており、さらに、燃料を酸化剤とは別個に供給する燃料供給部材を備えていて、この燃料供給部材から供給される燃料を前記ノズル部材および保炎部材から噴射する直前に酸化剤と混合することを特徴としている。
【0011】
この第1の発明による低NOxバーナは、この低NOxバーナに供給される燃料と空気等の酸化剤との予混合気をノズル部材から高速で噴射し、炉内において燃焼ガスを誘引して自己排ガス再循環を行う。
【0012】
そして、このノズル部材から噴射される予混合気に対して、その噴射方向の下流側において、保炎部材から予混合気または酸化剤を、噴射方向が互いに交差する方向に吹き付ける。
【0013】
これによって、ノズル部材から噴射される予混合気と保炎部材から噴射される予混合気または酸化剤とがぶつかる部分の周辺部に渦流が発生され、この渦流が着火源になって保炎されることにより、バーナが継続的な燃焼を維持する。
【0014】
さらに、この低NOxバーナは、ノズル部材および保炎部材から噴射される予混合気の混合を、燃料が燃料供給部材から酸化剤とは別個に供給されることによって、ノズル部材および保炎部材からの噴射の直前に行う。
【0015】
従って、上記第1の発明によれば、保炎が炉壁から離れた位置において所謂リフト火炎気味に穏やかに行われることによって火炎温度が低下するので、これによってNOxの排出濃度を低下させることが出来るとともに、燃焼の際に、万一、逆火が発生した場合でも、予混合気の混合がノズル部材および保炎部材から噴射される直前に行われるので、火炎がバーナ内に深く進行するのが防止される。
【0016】
第2の発明による低NOxバーナは、前記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記燃料供給部材が、ノズル部材と保炎部材に連通された予混合気チャンバ内に配置され、この燃料供給部材によって供給される燃料と予混合気チャンバ内に供給される酸化剤とがこの予混合気チャンバ内において混合されることを特徴としている。
【0017】
この第2の発明による低NOxバーナによれば、ノズル部材および保炎部材から噴射される予混合気の混合が、このノズル部材および保炎部材に予混合気を供給する予混合気チャンバ内に燃料供給部材から燃料が直接供給されることによって、この予混合気チャンバ内で行われる。
【0018】
従って、万一、逆火が発生した場合でも、その燃焼が予混合気チャンバから先に進行するのが防止される。
【0019】
第3の発明による低NOxバーナは、前記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記燃料供給部材が、ノズル部材の噴射口と保炎部材の噴射口の付近にそれぞれ開口する燃料噴射口を備え、このノズル部材の噴射口と保炎部材の噴射口の付近において、それぞれ、燃料供給部材から供給される燃料がノズル部材と保炎部材に供給される酸化剤と混合されることを特徴としている。
【0020】
この第3の発明による低NOxバーナによれば、ノズル部材および保炎部材から噴射される予混合気の混合が、このノズル部材と保炎部材のそれぞれの噴射口の付近に燃料供給部材から燃料が直接供給されることによって、このノズル部材と保炎部材のそれぞれの噴射口の付近において行われる。
従って、万一、逆火が発生した場合でも、その燃焼がノズル部材と保炎部材のそれぞれの噴射口の付近から先に進行するのが防止される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の最も好適と思われる実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明を行う。
【0022】
ここで、この発明の実施形態について説明を行う前に、NOxの排出とバーナの火炎との関係を説明する。
先ず、NOxの低減を図るためには、火炎の温度を低く抑えることが重要である。
【0023】
しかしながら、NOxと保炎との関係を見てみると、保炎を良くすればするほど火炎内に局所的に高温域が発生して、NOxの排出濃度が高くなり、また逆に保炎を悪くすると、NOxは低くなるが、保炎を悪くすることによって一酸化炭素の発生や振動燃焼,失火等を招く虞があり、このため、保炎を悪くしてNOxを低減するには限界がある。
このように、ガスバーナにおける保炎は、バーナの低NOx化を図るための大きな要素である。
【0024】
図1および2は、上記のようなバーナの保炎とNOxの排出濃度との関係に着目して構成された新規な低NOxバーナの構造を示すものであって、この発明による低NOxバーナの基本的構造を為すものである。
【0025】
先ず、この図1および2の低NOxバーナについて説明を行うと、この低NOxバーナ10は、炉壁Hに取り付けられる円筒状の本体ケーシング11の前面中央部に、中空状の保炎パイプ12が、本体ケーシング11の前面から前方に突出しかつ本体ケーシング11と同軸になるように、一体的に取り付けられている。
【0026】
この本体ケーシング11の内部には、予混合気チャンバ11Aが形成されており、この予混合気チャンバ11Aには、本体ケーシング11の後部に形成された接続口11Bが連通されている。
【0027】
保炎パイプ12は、その先端面が閉じられていて、内部が本体ケーシング11の予混合気チャンバ11A内に連通されている。
そして、保炎パイプ12の先端部外周面に、保炎パイプ12の内外を連通し軸線が保炎パイプ12の径方向に延びる保炎用二次ノズル12Aが、等角度間隔位置に複数個形成されている。
【0028】
本体ケーシング11の前面の保炎パイプ12を囲む周縁部には、等角度間隔位置に、本体ケーシング11の軸線方向と平行に延びる複数のメインノズル13が、本体ケーシング11に対して一体的に取り付けられている。
【0029】
このメインノズル13には、本体ケーシング11の軸線方向と平行に延びる予混合気噴射孔13Aが形成されている。
なお、メインノズル13の長さは保炎パイプ12の長さよりも短く、その先端開口部が、保炎パイプ12の保炎用二次ノズル12Aが形成されている位置よりも本体ケーシング11側に位置されている。
【0030】
この低NOxバーナ10は、図3に示されるように、本体ケーシング11の接続口11Bに給気ブロワBがミキサMを介して接続されて、予混合気チャンバ11A内に、ミキサMにおいてガス等の燃料と空気等の酸化剤が混合された予混合気が供給される。
【0031】
そして、この予混合気チャンバ11Aに供給された燃料と酸化剤の予混合気は、メインノズル13から高速で本体ケーシング11の軸線方向と平行に噴射されて、炉内の燃焼ガスEGを誘引して巻き込みながら、保炎パイプ12の保炎用二次ノズル12Aと対向する位置に到達する。
【0032】
このとき、保炎パイプ12の保炎用二次ノズル12Aからは、予混合気チャンバ11A内の予混合気が保炎パイプ12の径方向、すなわち、メインノズル13の予混合気噴射孔13Aの軸線方向に対して直角向きに噴射されている。
【0033】
これによって、保炎用二次ノズル12Aと対向する位置において、燃焼ガスEGを巻き込んだ予混合気に対して、保炎用二次ノズル13から噴射された予混合気がほぼ直角向きに吹き付けられることにより、その周辺部に渦流wが発生される。
そして、この渦流wが着火源になって保炎されることにより、バーナの継続的な燃焼が維持される。
【0034】
このように、上記低NOxバーナ10によれば、メインノズル13から噴射される予混合気が炉内の燃焼ガスを巻き込んで混合した後に燃焼することによって予混合気中の酸素濃度が低下することに加えて、保炎が炉壁Hから離れた位置において所謂リフト火炎気味に穏やかに行われるので、火炎温度がさらに低下する。
【0035】
これによって、低NOxバーナ10は、空気中に排出される排ガス中のNOx濃度を、従来のガスバーナに比べてはるかに低下させることができ、バーナによる燃焼のみによって、排ガス中のNOx濃度を10ppm以下(O2=0%換算値)にすることが出来るようになる。
【0036】
また、メインノズル13から噴射される予混合気に対して保炎用二次ノズル12Aから予混合気または酸化剤を吹き付ける角度は、両者がぶつかる部分において渦流が形成されるような角度であれば任意に設定することが出来るが、この角度がほぼ直角に設定されることによって渦流の発生が促進され、これによって、排ガス中のNOx濃度をさらに低下させることが出来るようになる。
【0037】
以上のように、この新たに提案された低NOxバーナ10は、排ガス中のNOx濃度の低下を効率的に実現させることができ、さらに、予混合気を高速で噴出するとともに赤熱する部分がないために、逆火が発生する虞はほとんど無い。
しかしながら、使用状況によっては逆火が懸念される場合もあるので、この逆火を防止するための安全対策が必要である。
【0038】
図4は、この逆火を防止するための構造を備えたこの発明による低NOxバーナの実施形態における第1の例を示している。
この例における低NOxバーナ20の本体ケーシング21,保炎パイプ22,メインノズル23等の基本的構成は、図1の低NOxバーナ10とほぼ同様である。
【0039】
この低NOxバーナ20は、この基本的構成に加えて、さらに下記の構成を備えている。
すなわち、本体ケーシング21の予混合気チャンバ21A内に、外周面に多数のガス孔25Aが形成された中空円盤形状のガスチャンバ25が挿入されている。
そして、このガスチャンバ25に、本体ケーシング21の後方から予混合気チャンバ21A内に嵌入されたガス供給パイプ25Bが接続されている。
【0040】
この低NOxバーナ20においては、保炎パイプ22の保炎用二次ノズル22Aおよびメインノズル23から噴射される予混合気の混合が、予混合気チャンバ21A内において、本体ケーシング21の接続口21Bに接続された給気ブロワBから供給される空気と、ガス供給パイプ25Bからガスチャンバ25内に供給されてそのガス孔25Aから予混合気チャンバ21A内に噴出されるガスとによって行われる。
【0041】
以上のように、上記低NOxバーナ20においては、ガスと空気との混合が、保炎パイプ22およびメインノズル23に近い予混合気チャンバ21A内において行われるように設定されていることによって、万一、逆火が発生した場合でも、その燃焼が予混合気チャンバ21A内のガスチャンバ25の位置から先に進行するのが防止される。
【0042】
図5は、逆火を防止するための構造を備えたこの発明による低NOxバーナの実施形態における第2の例を示している。
この例における低NOxバーナ30の本体ケーシング31,保炎パイプ32,メインノズル33等の基本的構成は、第1の例の低NOxバーナ10とほぼ同様である。
【0043】
この低NOxバーナ30は、この基本的構成に加えて、さらに下記の構成を備えている。
すなわち、本体ケーシング31に、その後方から予混合気チャンバ31A内に挿入され、この予混合気チャンバ31A内を通過して、先端部が保炎パイプ32の先端部に位置されるガス供給パイプ35が取り付けられている。
【0044】
このガス供給パイプ35の先端部には、保炎パイプ32の先端部に形成された保炎用二次ノズル32Aとそれぞれ対向する位置に、複数のガス口35Aが形成されている。
【0045】
ガス供給パイプ35には、さらに、予混合気チャンバ31A内においてガス供給パイプ35から分岐する分岐管35’が接続されており、この分岐管35’の数は、メインノズル33と同数になるように構成されている。
【0046】
そして、この分岐管35’の先端部のガス口35A’は、それぞれ、各メインノズル33の基端部分の内側に開口されている。
【0047】
この低NOxバーナ30においては、保炎パイプ32の保炎用二次ノズル32Aおよびメインノズル33から噴射される予混合気の混合が、本体ケーシング31の接続口31Bに接続された給気ブロワBから供給される空気と、ガス供給パイプ35から供給されてそれぞれガス口35Aおよび35A’から噴出されるガスとによって、保炎用二次ノズル32Aおよびメインノズル33から噴射される直前に行われる。
【0048】
従って、万一、逆火が発生した場合でも、その燃焼が保炎用二次ノズル32Aやメインノズル33内において、ガス供給パイプ35のそれぞれガス口35A,35A’から先に進行するのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構造を示す側断面図である。
【図2】同基本構造の正面図である。
【図3】同基本構造の低NOxバーナにおける保炎状態を示す動作説明図である。
【図4】本発明の実施形態における第1の例を示す側断面図である。
【図5】本発明の実施形態における第2の例を示す側断面図である。
【符号の説明】
10,20,30 …低NOxバーナ
11,21,31 …本体ケーシング
11A,21A,31A …予混合気チャンバ
11B,21B,31B …接続口
12,22,32 …保炎パイプ(保炎部材)
12A,32A …保炎用二次ノズル(噴射口)
13,23,33 …メインノズル(ノズル部材)
13A,33A …予混合気噴射孔(噴射口)
25 …ガスチャンバ(燃料供給部材)
25A …ガス孔(燃料供給部材)
25B …ガス供給パイプ(燃料供給部材)
35 …ガス供給パイプ(燃料供給部材)
35A …ガス口(燃料噴射口)
35’ …分岐管(燃料供給部材)
35A’ …ガス口(燃料噴射口)
B …給気ブロワ
M …ミキサ
w …渦流
EG …排ガス
H …炉壁
Claims (3)
- 燃料と酸化剤が混合された予混合気を噴射するノズル部材と、このノズル部材から噴射される予混合気に対してその噴射方向と交差する方向に予混合気または酸化剤を噴射する保炎部材とを備えており、さらに、燃料を酸化剤とは別個に供給する燃料供給部材を備えていて、この燃料供給部材から供給される燃料を前記ノズル部材および保炎部材から噴射する直前に酸化剤と混合することを特徴とする低NOxバーナ。
- 前記燃料供給部材が、ノズル部材と保炎部材に連通された予混合気チャンバ内に配置され、この燃料供給部材によって供給される燃料と予混合気チャンバ内に供給される酸化剤とがこの予混合気チャンバ内において混合される請求項1に記載の低NOxバーナ。
- 前記燃料供給部材が、ノズル部材の噴射口と保炎部材の噴射口の付近にそれぞれ開口する燃料噴射口を備え、このノズル部材の噴射口と保炎部材の噴射口の付近において、それぞれ、燃料供給部材から供給される燃料がノズル部材と保炎部材に供給される酸化剤と混合される請求項1に記載の低NOxバーナ。
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