JP3713451B2 - 異方導電性コネクタの製造方法 - Google Patents
異方導電性コネクタの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3713451B2 JP3713451B2 JP2001262006A JP2001262006A JP3713451B2 JP 3713451 B2 JP3713451 B2 JP 3713451B2 JP 2001262006 A JP2001262006 A JP 2001262006A JP 2001262006 A JP2001262006 A JP 2001262006A JP 3713451 B2 JP3713451 B2 JP 3713451B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- film
- conductive
- insulating film
- anisotropic conductive
- conductive connector
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Manufacturing Of Electrical Connectors (AREA)
- Non-Insulated Conductors (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は異方導電性コネクタの製造方法に関し、詳しくは、導通路がフィルム基板の厚み方向に傾斜して貫通した構造の異方導電性コネクタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子(ICチップ)等の電子部品と回路基板間を電気的に接続するために異方導電性コネクタが広く使用されている。異方導電性コネクタは、従来、絶縁性フィルム中に導電性微粒子を分散させて形成したものが知られていたが、この異方導電性コネクタは、構造上、ファインピッチ化した接続対象物との接続が難しいという問題や、接続対象物の端子、例えば、半導体素子の電極等を凸状(バンプ状)にしなければならないという問題がある。そこで、かかる問題を解消できるもの、すなわち、ファインピッチかつバンプレス化に対応し得る異方導電性コネクタとして、本件出願人は、国際公開公報WO98/07216に絶縁性フィルム基板中に複数の導通路を互いに絶縁してフィルム基板の厚み方向に貫通させた異方導電性コネクタ(フィルム)を提案している。
【0003】
ところで、異方導電性コネクタは大きく分けて次の二つの用途で使用されている。一つは、異方導電性コネクタを半導体素子等の電子部品と回路基板間に介在させて両者に熱圧着して、電子部品と回路基板を電気的かつ機械的に接続する、所謂、実装用コネクタとしての用途である。もう一つは、半導体素子等の電子部品の機能検査において、異方導電性コネクタを電子部品と回路基板間に挿入して両者に圧接し、電子部品と回路基板を検査可能に導通させる、所謂、検査用コネクタとしての用途である。
【0004】
異方導電性コネクタを検査用コネクタとして使用するのは、電子部品の機能検査を、電子部品を回路基板に実装した後に行っていたのでは、電子部品が不良であった場合に、良品である回路基板も共に処分されることとなり、回路基板の歩留まりが低下し、金額的な損失も大きくなってしまうためである。
【0005】
半導体素子等の電子部品の検査においては、端子の損傷や端子の変形を防ぐために、異方導電性コネクタを、より低い圧力で、電子部品および回路基板に接触させる必要がある。そこで、本件出願人は、上記国際公開公報WO98/07216において、フィルム基板の厚み方向に貫通する複数の導通路をその軸心がフィルム基板の主面の垂線に対して角度を成すように配置させた構造の異方導電性コネクタを提案している。すなわち、フィルム基板の厚み方向に貫通する複数の導通路を一定方向に傾斜した状態にすることによって、回路基板上に異方導電性コネクタを介して電子部品を載せ、電子部品をその上方から押圧した場合に、導通路がしなり、電子部品および回路基板に加わる圧力が減少する。
【0006】
このような異方導電性コネクタは、従来、上記国際公開公報WO98/07216に記載の方法、すなわち、芯材に絶縁導線(絶縁性樹脂層で被覆した金属線)を多重に巻線し、互いに分離できないように被覆層同士を結合させた巻線ブロックを作製し、このブロックを各絶縁導線(金属線)に対して角度を成す面を切断面として、所望のフィルム厚みにスライス(切断)する方法で作製していた。しかし、かかる従来の製造方法は、絶縁導線を多重に巻線することから、巻線ブロック内での絶縁導線(金属線)の巻線方向が一定方向に揃いにくい。従って、巻線ブロックを切断して得られる異方導電性コネクタ内の複数の導通路の傾斜方向が一様とならず、異方導電性コネクタを押圧した時の導通路のしなる方向がばらついて、そのために異方導電性コネクタ内における接続対象物(回路基板、半導体素子)との接触圧のばらつきが大きくなり(均一性が低下し)、接続対象物との接続信頼性が低下する場合がある。また、巻線ブロックを切断する際、切断面の垂線に対して絶縁導線(金属線)が角度をなすように切断面を設定して(すなわち、ブロックの軸心を切断刃に対して斜めに傾けてセットして)切断を行うが、このようにしてブロックを切断すると、切り出されて得られる複数枚の異方導電性コネクタのフィルムサイズ(大きさ)がばらつき、フィルムサイズを統一するにはそのための後加工を行わなければならない。従って、所望のサイズの異方導電性コネクタを効率良く製造できないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明は、フィルム基板の厚み方向に貫通する複数の導通路の軸心がフィルム基板の主面の垂線に対して角度を成す構造の異方導電性コネクタであって、複数の導通路間の傾斜方向(導通路のしなる方向)のばらつきが小さく、接続対象物に対して高い接続信頼性が得られる異方導電性コネクタを、効率良く製造できる異方導電性コネクタの製造方法を提供することを目的とする。また、かかる複数の導通路間の傾斜方向(導通路のしなる方向)のばらつきが小さく、接続対象物に対して高い接続信頼性が得られる異方導電性コネクタを、所望のフィルムサイズに、効率良く製造できる、異方導電性コネクタの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有する。
(1)フィルム基板の厚み方向に貫通する複数の導通路の軸心がフィルム基板の主面の垂線に対して角度を成す構造の異方導電性コネクタを製造する方法であって、芯材の外周に絶縁性フィルムを巻き、次いで該絶縁性フィルムの外周に導電性線材を一定ピッチで螺旋状に巻くか、若しくは、芯材の外周に導電性線材を一定ピッチで螺旋状に巻き、次いで該導電性線材を覆うように絶縁性フィルムを巻いた後、加熱および加圧を施して、絶縁性フィルムと導電性線材とを芯材上で一体化させ、次に、当該絶縁性フィルムと導電性線材とが一体化して得られたロール状物を芯材から外し、これを切開して平板状物とした後、該平板状物から複数枚の導電性線材付きフィルムを、絶縁性フィルムの主面が直線状の一辺を有する形状で、かつ、複数の導電性線材の軸心が、該直線状の一辺に対して所定の傾斜角を成すように切り出し、次に、該複数枚の導電性線材付きフィルムを隣り合うフィルム間の導電性線材が互いに平行となり、かつ、隣り合うフィルム間の絶縁性フィルムの直線状の一辺が平行に重なるように積み重ね、得られた積重体に加熱および加圧を施して、複数枚の導電性線材付きフィルムが一体化したブロックを作成し、次に、当該ブロックを前記絶縁性フィルムの主面の直線状の一辺より由来する当該ブロックの直線状の端辺と直交する平面を断面として所定のフィルム厚さに切断して異方導電性コネクタを得ることを特徴とする異方導電性コネクタの製造方法。
(2)芯材に巻き付けた絶縁性フィルムと導電性線材を、芯材とともに減圧または真空状態を形成し得る空間内に配置し、当該空間内を減圧または真空状態にした後、加熱および加圧を施して、芯材上で絶縁性フィルムと導電性線材とを一体化することを特徴とする上記(1)記載の異方導電性コネクタの製造方法。
(3)前記減圧または真空状態を形成し得る空間が、可撓性フィルムからなる袋体の内部空間である上記(2)記載の異方導電性コネクタの製造方法。
(4)前記減圧または真空状態を形成し得る空間内に、圧縮気体を導入することによって、前記加圧を行うことを特徴とする上記(2)または(3)記載の異方導電性コネクタの製造方法。
(5)積重体を減圧または真空状態を形成し得る空間内に配置し、当該空間内を減圧または真空状態にした後、積重体に加熱および加圧を施すことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の異方導電性コネクタの製造方法。
(6)減圧または真空状態を形成しうる空間が、可撓性フィルムからなる袋体の内部空間である上記(5)記載の異方導電性コネクタの製造方法。
(7)積重体を、該積重体を収容した時にその内側面と該積重体の側面との間に若干の隙間が形成される程度の大きさの耐熱性の箱体内に収容し、当該耐熱性の箱体とともに積重体を可撓性フィルムからなる袋体の内部空間に配置し、当該空間内を減圧または真空状態にした後、積重体に加熱および加圧を施すことを特徴とする上記(5)記載の異方導電性コネクタの製造方法。
【0009】
本明細書中において、「フィルム基板の主面」とはフィルム基板の厚み方向両端の面を意味し、「絶縁性フィルムの主面」とは絶縁性フィルムの厚み方向両端の面を意味する。なお、特に断り無く「フィルム基板の面」や「絶縁性フィルムの面」という場合、それは「フィルム基板の主面」、「絶縁性フィルムの主面」を意味している。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照しながら詳しく説明する。
本発明で製造する異方導電性コネクタは、図11(a)および図11(b)に示す、フィルム基板50の厚み方向(図11(b)中の矢印A方向)に貫通する複数の導通路51を、その軸心L10がフィルム基板50の主面50a(50b)の垂線L20に対して角度(α)を成すように配置した構造の異方導電性コネクタ60である。ここで、図11(a)は平面図、図11(b)は図(a)中のXIb−XIb線の断面図である。また、図中、D1、D2は当該異方導電性コネクタ内における導通路51の直交する第1および第2の方向(フィルム基板50の主面50a内の矢印Xの方向と矢印Yの方向)のピッチである。
【0011】
複数の導通路51(の軸心L10)がフィルム基板50の主面50aの垂線L20と成す角度(α)は、一般に、導通路51がしなることによる、接続対象物(電子部品、回路基板等)への圧力の減少効果が十分に得られるように5度以上が好ましく、また、あまり角度が大きすぎると、電気的に接続させるべき2つの接続対象物(例えば、電子部品および回路基板)との間の位置調整(オフセット)が必要になるので、当該角度は45度以下が好ましい。
【0012】
本発明で製造する異方導電性コネクタは、特に検査用コネクタとして好ましいものであり、フィルム基板50の厚みは、一般に20〜1000μm程度であり、好ましくは50〜500μm程度である。また、導通路の断面形状は円形、多角形またはその他の形状でもよく、特に制限されないが、接続対象物(の端子)との接続信頼性の点から円形が好適である。また、その径(太さ)は接続対象物(の端子)との接続信頼性、導通路自体の導電性(電気抵抗)等の点から、一般に断面形状が円形の場合で直径が10〜80μm程度が好ましく、特に好ましくは12〜60μm程度であり、断面形状が多角形やその他の形状の場合は、その断面が上記範囲内の直径の円の面積に相当する面積となる径(太さ)とするのが適当である。また、導通路51のピッチ(図中、D1およびD2)は、それぞれ、接続対象物(の端子)との接続信頼性および異方導電性コネクタの変形性(柔軟性)の点から、一般に20〜200μmが好ましく、特に好ましくは20〜150μmである。
【0013】
本発明はこのような複数の導通路51(の軸心L10)をフィルム基板50の主面50aの垂線L20に対して角度を成すように配置した構造(すなわち、フィルム基板の厚み方向に複数の導通路を貫通させ、かつ、複数の導通路を所定方向に所定角度で傾斜させた構造)の異方導電性コネクタ60を製造する方法であり、基本的に、以下に説明する第1工程(複数枚の導電性線材付きフィルムを作成する工程)、第2工程(複数枚の導電性線材付きフィルムが一体化したブロックを作成する工程)および第3工程(ブロックを切断する工程)を含む。
【0014】
[第1工程(複数枚の導電性線材付きフィルムを作成する工程)]
図1(a)に示すように、芯材4の外周に絶縁性フィルム1を巻き、次いで該絶縁性フィルム1の外周に1本の導電性線材2を一定ピッチで螺旋状に巻き付けて(若しくは、これとは逆に、芯材4の外周に先に1本の導電性線材2を一定ピッチで螺旋状に巻き、次いで該導電性線材2を覆うように絶縁性フィルム1を巻き付けて)、巻重物5(図1(b))を作成する。ここで、巻線は、横型整列巻線機等の公知の巻線装置で行うことができる。次に、この巻重物5(図1(b))に加熱および加圧を施して、芯材4上で絶縁性フィルム1と導電性線材2とを一体化させ、次いで、芯材4から絶縁性フィルム1と導電性線材2とが一体化したロール状物を外して、該ロール状物の一部を切断して平板状物6(図2)に展開し、さらに該平板状物6を裁断して、複数枚の導電性線材付きフィルムを切り出す。
図3(a)および図3(b)はこの複数枚の導電性線材付きフィルムの具体例である。図3(a)の導電性線材付きフィルム10Aは、平板状物6(図2)から、絶縁性フィルム1の主面1aが矩形となり、導電性線材2(の軸心)の方向が絶縁性フィルム1の矩形の主面1aの所定の一辺(直線状の一辺)に対して傾斜するように切り出したものであり、図3(b)の導電性線材付きフィルム10Bは、平板状物6(図2)から、絶縁性フィルム1の主面1aが矩形となり、導電性線材2(の軸心)の方向が絶縁性フィルム1の矩形の主面1aの辺(四辺)に対して平行および直交するように切り出したものである。なお、図2中の2点鎖線は、図3(a)の導電性線材付きフィルム10Aを切り出す際の裁断線を示している。
【0015】
上記図3(a)の導電性線材付きフィルム10Aは、最終的に製造する異方導電性コネクタ60(図11)における導通路51(の軸心L10)のフィルム基板50の主面50aの垂線L20と成す角度(α)を、当該導電性線材付きフィルム10Aにおける導電性線材2(の軸心)の傾斜角度(絶縁性フィルム1の主面1aにおける所定の直線状の一辺に対する傾斜角度(α1))を規定することによって予め設定しておくことを意図したものであり、当該導電性線材付きフィルム10Aを用いることによって、後の第3工程(複数枚の導電性線材付きフィルムが一体化したブロックを切断する工程)において、ブロックの所定の直線状の端辺(絶縁性フィルム1の主面1aの直線状の一辺より由来する一辺)と直交する平面を断面として切断するだけで、角度(α)で複数の導通路51が傾斜した異方導電性コネクタ60(図11)を得ることができる。
一方、図3(b)の導電性線材付きフィルム10Bを用いる場合、後の第3工程において、ブロックを切断する際に、切断面の垂線に対して導電性線材2(の軸心)が前記の角度(α)をなすように切断面を設定することによって、角度(α)で複数の導通路51が傾斜した異方導電性コネクタ60(図11)を得ることができる。
【0016】
図4は上記導電性線材付きフィルム10Aの拡大図(図4(a)は斜視図、図4(b)は断面図、図4(c)は平面図である。)であり、当該導電性線材付きフィルム10Aにおいては、絶縁性フィルム1の矩形の主面1aに、一定ピッチ(d2)で互いに平行に並んだ複数の導電性線材2が固着し、複数の導電性線材2(の各軸心L1)が絶縁性フィルム1の主面1aの所定の直線状の一辺L2に対して所定の傾斜角(α1)を成し、かつ、主面1aと平行に位置している。ここで「所定の傾斜角(α1)を成す」とは、図4(c)に示すように、絶縁性フィルムの主面1aをその鉛直上方からみたときに、導電性線材の軸心L1と直線状の一辺L2とが所定の鋭角で交差していることを意味する(すなわち、直交や平行でない。)。該所定の傾斜角(α1)は、上記説明したように、製造すべき異方導電性コネクタ(図11)の導通路51(の軸心L10)がフィルム基板50の主面50a(50b)の垂線L20と成す角度(α)に充当する。
【0017】
絶縁性フィルム1は異方導電性コネクタ60(図11)のフィルム基板50を構成するものであり、従って、該絶縁性フィルム1の材料としては、従来から異方導電性コネクタのフィルム基板に用いられている公知の材料が使用される。すなわち、それ自体がそのままの状態で接着性を示すか、あるいはそのままの状態では接着性を示さないが、少なくとも加圧または加熱によって接着可能となる材料であり、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;等が挙げられる。これらの樹脂やエラストマーはいずれかを単独でもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの樹脂やエラストマーには、各種の充填剤、可塑剤等あるいはゴム材料を添加してもよい。充填剤としては、例えば、SiO2、Al2O3、可塑剤としては、例えばTCP(リン酸トリクレシル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、ゴム材料としては、例えばNBS(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBS(ポリスチレン−ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
【0018】
また、絶縁性フィルム1の厚みは、異方導電性コネクタの導通路のフィルム基板内における一方の方向のピッチ(図11中の第1方向のピッチ(D1))を決定する主要素であり、一般に20〜200μm程度、好ましくは20〜150μm程度である。
【0019】
導電性線材2は異方導電性コネクタ60(図11)の導通路51を構成するものであり、該導電性線材2には導電性材料からなる線状体、または、該導電性材料からなる線状体に絶縁被覆を施した、所謂、絶縁導線が使用される。導電性材料からなる線状体としては、電気伝導性の点から、金、銅、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等から選ばれる少なくとも1種の金属(合金を含む)からなる金属線が使用され、また、絶縁導線を使用する場合、被覆に使用する材料としては、上記絶縁性フィルム1の材料として例示したものと同じものが挙げられる。
【0020】
導電性材料からなる線状体の断面形状は、先述の導通路の断面形状であり、円形、多角形またはその他の形状でもよく、特に限定されないが、円形が好適である。また、該線状体の径(太さ)は、先述の導通路の径(太さ)であり、断面形状が円形の場合で直径が10〜80μm程度が好ましく、特に好ましくは12〜60μm程度であり、断面形状が多角形やその他の形状の場合は、その断面が上記範囲内の直径の円の面積に相当する面積となる径(太さ)である。絶縁導線を使用する場合の、絶縁被覆の厚みは、導体(線状体)間の絶縁性を確保する点や絶縁性フィルムとの密着性の点および絶縁導線の取り扱い作業性(後述の巻線作業の作業性)等の点から、一般に0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度である。
また、導電性線材付きフィルムにおける絶縁性フィルム1の主面1a上での導電性線材2の配置間隔(すなわち、図4(b)および図4(c)中のピッチ(d2))は、異方導電性コネクタ60(図11)の導通路のフィルム基板内における他方の方向(図11中の第2方向のピッチ(D2))に充当するものであり、先述のD2の範囲内で適宜設定される。
【0021】
当該第1工程における芯材4上で絶縁性フィルム1と導電性線材2とを一体化するための加熱および加圧における加熱温度および加圧力は、導電性線材2および絶縁性フィルム1を構成する材料によっても異なるが(なお、導電性線材2として絶縁導線を使用した場合、導電性線材2が絶縁性フィルム1に固着しやすくなる。)、加熱温度は、一般に、50〜250℃程度、好ましくは100〜200℃程度である。また、加圧力は一般に2〜30kgf/cm2程度、好ましくは3〜20kgf/cm2程度である。
【0022】
なお、芯材4に絶縁性フィルム1および導電性線材2を巻き付けて得られた巻重物5(図1(b))を、そのまま(すなわち、絶縁性フィルム1および導電性線材2を芯材4とともに)減圧または真空状態を形成し得る空間内に配置し、当該空間内を減圧または真空状態にし、しかる後に、当該加熱および加圧を行うのが好ましい。すなわち、加熱および加圧を行う前に、巻重物5(図1(b))を減圧または真空下に置くことによって、芯材4、絶縁性フィルム1および導電性線材2の相互間の空隙を効果的に減少させることができ、製造される異方導電性コネクタの耐久性(導通路の保持力)が向上する。ここで減圧とは常圧より小さい圧力であり、概ね、(常圧−0.6MPa)以下の圧力を意味し、真空とは減圧のうちでも、特に(常圧−0.9MPa)以下の圧力を意味する。なお、空隙を効率的に除去する観点から、真空下で加熱および加圧を施すのがより好ましい。また、減圧または真空状態を形成するための方法は特に限定されないが、作業性の点からポンプ(真空ポンプ)による吸引が好ましい。
【0023】
上記減圧または真空状態を形成し得る空間とは、例えば、剛性の箱体(すなわち、減圧または真空状態を形成した時に、それ自体が変形せず、その形状を保持し得る剛性を備えた箱体)の内部空間や、柔軟性のフィルムからなる袋体の内部空間等が挙げられる。剛性の箱体の材料としては、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス、炭素鋼、青銅等の金属、ポリエチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート等のプラスチック等が挙げられる。また、柔軟性のフィルムには、アルミニウム等の金属フィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム、ポリエチレンフィルム等にアルミニウムフィルム等をラミネートしたラミネートフィルム等を使用できる。
柔軟性のフィルムからなる袋体を使用すれば、その内部空間を真空状態にした場合、袋体が巻重物5に密着するので、空隙をより効果的に除去することができる。
【0024】
また、当該加熱および加圧を行う際の加圧においては、導電性線材の巻線状態(ピッチ、巻線方向等)が乱れないよう、芯材に対して均一な圧力が加わるのが好ましく、かかる観点から、上記の空間(減圧または真空状態を形成し得る空間)内に圧縮気体を導入する方法が好適である。この圧縮気体を導入する方法の場合、圧縮気体に窒素ガス等の不活性ガスを使用すれば、導電性線材の酸化を抑制でき、より好ましい。
【0025】
[第2工程(複数枚の導電性線材付きフィルムが一体化したブロックを作成する工程)]
該第2工程は、前記第1工程で作成した複数枚の導電性線材付きフィルムを隣り合うフィルムの導電性線材2間が互いに平行となるように積み重ね、得られた積重体に加熱および加圧を施して、複数枚の導電性線材付きフィルムが一体化したブロックを作成する工程である。かかる加熱および加圧は、隣り合う導電性線材付きフィルム間において、少なくとも、絶縁性フィルムを導電性線材に融着させる処理であり、好ましくは、絶縁性フィルムが導電性線材に融着し、かつ、絶縁性フィルム同士が融着するように加熱および加圧を行う。
上記の加熱および加圧処理において、加熱温度は一般に絶縁性フィルムを構成する樹脂(エラストマー)の軟化点〜300℃程度(具体的には50〜300℃)の範囲で選択される。なお、絶縁性フィルム1に熱硬化性樹脂を使用した場合には、硬化温度よりも低い温度で加熱するのが好ましい。また、加圧力は一般に5〜30kgf/cm2程度、好ましくは5〜20kgf/cm2程度である。
【0026】
図5〜図7は、前記の複数の導電性線材2(の軸心L1)を絶縁性フィルム1の主面1aの所定の直線状の一辺L2に対して角度(α1)で傾斜させた導電性線材付きフィルム10A(図3(a)、図4)を、隣り合う絶縁性フィルム1の直線状の一辺L2が平行に重なるように積み重ね(図5)、このようにして得られた積重体20(図6)に加熱および加圧を施して、ブロック30(図7)を作成した様子を示している。
【0027】
図7に示されるように、本発明においては、当該第2工程によって、複数枚の導電性線材付きフィルム10Aが一体化し、上下(積重方向)および水平方向に互いに平行に配置された複数の導電性線材2の間に絶縁性樹脂Rが介在した構造のブロック30が形成される。
【0028】
なお、ブロック内における、導電性線材付きフィルム10Aの積重方向(図6中の矢印B1方向)に対応する方向(図7中の矢印B2方向)における導電性線材2の間隔(図7中のd1)は、異方導電性コネクタ60(図11)の導通路51のフィルム基板内における一方の方向(図11中の第1方向のピッチ(D1))に充当する。すなわち、絶縁性フィルム1の厚み(導電性線材2に絶縁導線を使用する場合は、絶縁性フィルム1の厚みと絶縁導線の絶縁性樹脂による被覆層の厚み)、および、当該工程での加熱および加圧処理の条件(温度、圧力)によって、異方導電性コネクタ60(図11)の導通路51のフィルム基板内における一方の方向(第1方向)のピッチ(図11中のD1)が決定される。
【0029】
当該第2工程では、このように、複数枚の導電性線材付きフィルムの積重体に加熱および加圧を施して複数枚の導電性線材付きフィルムが一体化したブロックを作成するが、当該第2工程においても、加熱および加圧に先立って、複数枚の導電性線材付きフィルムの積重体を減圧または真空状態を形成し得る空間内に配置し、当該空間内を減圧または真空状態にし、しかる後に、当該加熱および加圧を行うのが好ましい。このようにすることで、上下に重なる導電性線材付きフィルムの間の空隙を除去でき、また、導電性線材付きフィルム内に空隙が残存している場合に、この空隙を除去することができ、好ましい。ここで減圧または真空とは、前記第1工程におけるそれと同義であり、また、減圧または真空状態を形成し得る空間も、前記の剛性の箱体の内部空間や柔軟性のフィルムからなる袋体の内部空間を用いることができる。また、減圧または真空状態を形成するための方法は特に限定されないが、前記のポンプによる吸引が作業性の点から好ましい。また、当該第2工程においても、前記第1工程と同様に、減圧または真空状態を形成するために、柔軟性のフィルムからなる袋体を使用するのが好ましい。柔軟性のフィルムからなる袋体を使用すれば、その内部空間を真空状態にした場合、袋体が積重体に密着し、積み重なった導電性線材付きフィルムの間の空隙をより効果的に除去することができる。
【0030】
また、当該第2工程での加熱および加圧処理を次のようにして行えばより好ましい結果が得られる。すなわち、図9、10に示すように、積重体20を、該積重体20を収容した時にその内面と該積重体20との間に若干の隙間が形成される程度の大きさの耐熱性の箱体であって、積重体20を出し入れするための開口41を有する箱体40内に収容し、この状態(図10の状態)のままで、積重体20を耐熱性の箱体40とともに前記した可撓性フィルムからなる袋体の内部空間に配置し、当該空間内を減圧または真空状態にした後、積重体20に加熱および加圧を施すようにすれば、加圧時の積重体20を構成する複数枚の導電性線材付きフィルム10A間の位置ずれを防止でき、製造される異方導電性コネクタにおける複数の導電性線材(導通路)の傾斜方向および傾斜角度の均一性が増す。なお、上記「若干の隙間」とは、積重体の側面と箱体の内側面との間に約0.5〜20mm程度の隙間が空くことである。また。耐熱性の箱体における「耐熱性」とは上記の加熱処理時に変形したり、軟化(溶融)することがないことを意味しており、上記耐熱性の箱体の具体例としては、アルミニウム(以下、アルミとも略称する)、鉄、ステンレス等からなる金属製の箱体、セラミックス製の箱体が挙げられる。
【0031】
[第3工程(ブロックを切断する工程)]
当該第3工程は、前記第2工程で作成したブロックを導電性線材と角度を成して交差する平面を断面として所定のフィルム厚さに切断して異方導電性コネクタを得る工程である。図8は前記の導電性線材2(の軸心L1)を絶縁性フィルム1の主面1aの直線状の一辺L2に対して角度(α1)で傾斜させた導電性線材付きフィルム10A(図3(a)、図4)を積重して得られたブロック30(図7)を切断している例である。
【0032】
図8では切断具3は刃物を示しているが、当該工程において、ブロックからフィルムを切り出すことができるものであれば、刃物に限定されず、各種の切断具(ワイヤーソー、スライサー、かんな、レーザー等)を使用することができる。
【0033】
図8の例では、ブロック30における導電性線材付きフィルムにおける絶縁性フィルム1の主面1aの所定の直線状の一辺L2(図4〜図6参照)より由来する所定の直線状の端辺L2’に対して直交する平面30bが切断面となるようにブロック30を切断している。すなわち、導電性線材付きフィルムとして、導電性線材2(の軸心L1)を絶縁性フィルム1の主面1aの所定の直線状の一辺L2に対して角度(α1)で傾斜させた導電性線材付きフィルム10A(図3(a)、図4)を使用することで、絶縁性フィルム1の主面1aの所定の直線状の一辺L2より由来するブロック30の端辺L2’を基準に、これに対して直交する平面30bが切断面となるようにブロック30を切断することで、導電性線材付きフィルム10Aにおいて設定した導電性線材2の傾斜角度(絶縁性フィルム1の主面1aの所定の直線状の一辺L2に対する導電性線材2の軸心L1の傾斜角度(α1))がそのまま、製造される異方導電性コネクタ60(図11)における導通路51(の軸心L10)のフィルム基板50の主面50aの垂線L20に対して成す角度(α)となる。従って、切断作業において、切断面の設定が容易であり、複数の導通路が目的の傾斜角度で傾斜し、かつ、複数の導通路間の傾斜方向が均一性が高い(複数の導通路が一定の方向に揃って傾斜する)異方導電性コネクタを確実に製造することができる。また、切断して得られるフィルムサイズ(製品サイズ)が統一するため、大きく歩留まりが低下する問題もない。
【0034】
一方、導電性線材付きフィルムに、導電性線材付きフィルム10B(図3(b))のような、絶縁性フィルムの主面の直線状の一辺に対して導電性線材(の軸心)を傾斜させていないものから作成したブロックから、異方導電性コネクタを切り出す場合、切断面の垂線に対して導電性線材(の軸心)の成す角度が、異方導電性コネクタ60(図11)における導通路51(の軸心L10)のフィルム基板50の主面50aの垂線L20に対して成す角度(α)と等しくなるように、導電性線材(の軸心)の方向を基準に切断面の設定を行う。
【0035】
本発明の製造方法では、上記のように、同一のピッチで平行に並ぶ複数の導電性線材(の一列)を有する複数枚の導電性線材付きフィルム(それぞれが大サイズの導電性線材付きフィルムから切り出された実質的に同一のもの)を積み重ねたブロックから異方導電性コネクタを切り出すようにしたことで、従来の絶縁導線を多重に巻線して得られる巻線ブロック内での絶縁導線(金属線)の巻線方向の不揃いにより、異方導電性コネクタにおける導通路の傾斜方向が不揃いになるという問題を防止でき、複数の導通路が所定の傾斜角度で傾斜し、かつ、複数の導通路間の傾斜方向のばらつきが小さい異方導電性コネクタを容易に製造できる。しかも、従来のような、ブロック内の線材(の軸心)の方向を考慮してブロックと切断刃の位置を調整しつつ切断したり、切断後に、切り出した異方導電性コネクタのフィルムサイズ(製品サイズ)を統一するための後加工を行う必要がないので、製造作業の煩雑さも解消することができる。従って、接続対象物(回路基板、半導体素子)への接続信頼性の高い、所望の大きさ(フィルムサイズ(製品サイズ))の異方導電性コネクタを高歩留まりに製造できる。
【0036】
なお、以上は絶縁性フィルムの外形(主面の外形)が矩形の導電性線材付きフィルムを例示して本発明方法を説明したが、本発明において、導電性線材付きフィルムにおける絶縁性フィルムの外形は矩形以外の形状でもよい。ただし、以上の説明から理解されるように、導電性線材付きフィルムにおける絶縁性フィルムの主面が、矩形のような、導電性線材の傾斜角度を規定できる直線状の一辺を有する形状(外形)が好ましいことは言うまでもない。
【0037】
また、異方導電性コネクタは、その一般的用途(実装用コネクタ、検査用コネクタ(特に検査用コネクタ))においては、全体の形状(フィルム基板の外形)を矩形にしたものが多く使用されるので、本発明においても、ブロックをスライス(切断)するだけで当該矩形の異方導電性コネクタが得られるように、導電性線材付きフィルムにおける絶縁性フィルムの外形を矩形にするのが好ましい。
【0038】
また、以上の記載では、本発明の製造方法を、図11に示す導通路51の配列状態が正方行列状の異方導電性コネクタ60を参照しながら説明したが、導通路51を最密状に配列した異方導電性コネクタを製造する場合には、導電性線材付きフィルムの積重体の作成において、奇数番目に積む導電性線材付きフィルムにおける各導電性線材が、偶数番目に積む導電性線材付きフィルムの導電性線材間の隙間に配置されるように、積重を行えばよい。
【0039】
また、本発明において、導通路の全部あるいは特定部分の導通路の端部がフィルム基板の主面から突出または窪んでいるタイプや、また、各導通路について、一方のみまたは両方がフィルム基板の主面から突出または窪んでいるタイプの異方導電性コネクタを製造する場合、前記第1〜第3工程後に、以下に記載の処理を行う。
【0040】
フィルム基板の主面から導通路の端部を突出させる場合、フィルム基板における端部を突出させるべき導通路の周囲部を選択的に除去する方法が挙げられる。具体的には、有機溶剤によるウエットエッチングやプラズマエッチング、アルゴンイオンレーザー、KrFエキシマレーザーなどによるドライエッチング等の手法を単独もしくは併用して採用される。また、上記有機溶剤はフィルム基板や絶縁導線の被覆層の材料により適宜選択されるが、例えば、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン等が挙げられる。
また、メッキや蒸着によって突出させるべき導通路の端部(端面)に金属を堆積させて、突出させることもできる。かかる金属の堆積を行う場合、金属は前記の導通路を構成する金属と同じでも、異なっていてもよい。好適な例としては、例えば、無電解メッキによるNi/Au層が挙げられる。無電解メッキによるNi/Au層を設けることで、接続対象物(電子部品、回路基板等)の端子との接触抵抗を低く抑えることができる利点がある。
【0041】
導通路をフィルム基板の面から窪ませる方法としては、フィルム基板の面に露出する導通路のみを選択的に除去する方法が採用され、具体的には、酸あるいはアルカリによるケミカルエッチングが採用される。
【0042】
導通路の突出量(フィルム基板の主面から導通路先端面までの高さ)は一般に5〜60μmの範囲から選択される。
【0043】
本発明で製造する異方導電性コネクタは、検査用コネクタとして特に好ましいものであり、この点から、構造全体としての弾性率が0〜50℃において5〜100MPaであるものが好ましく、5〜70MPaであるものが特に好ましい。当該構造全体としての弾性率は、動的粘弾性測定装置(DMS210、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて測定される。測定条件は、異方導電性コネクタのフィルム基板の面が拡張する方向のうちの一方向に対し、引張りモードで、一定の周波数(10Hz)で、温度を5℃/分で昇温させ−30℃〜250℃での測定とする。測定時に入力する試料の厚みは、異方導電性コネクタ60(図11)におけるフィルム基板の厚み(図11中の符号T)とする。
【0044】
異方導電性コネクタ60(図11)の構造全体の弾性率を決定する要素としては、導通路51の材料、太さ(径)、断面形状、傾斜角度およびピッチ等、並びに、フィルム基板の材料や厚み等である。従って、本発明の異方導電性コネクタの製造方法においては、これらの値を調整して、得られる異方導電性コネクタの構造全体としての弾性率を、上記の−30〜250℃の範囲内における0〜50℃において5〜70MPaとなるように設定するのが好ましい。
【0045】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を記載して、本発明をより詳しく説明する。
(実施例1)
直径320mm、長さ270mmのアルミ製円筒形コアを横型整列巻き線機HPW−02型(日特エンジニアリング(株)製)に取付け、離型フィルムとして50μm厚のフッ素樹脂フィルム、その上にゴム硬度75度、100μm厚の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(エスマーURS、日本マタイ(株)製、軟化点60℃)からなるフィルムを1層巻いた後、29μmφの耐熱ポリウレタン被覆線(25μmφの銅線に耐熱ポリウレタンを2μm厚みで被覆したもの)を巻線間隔(ピッチ)100μmで250mm巻いた。そして、さらに該巻線した線材を覆うように離型フィルムとして50μm厚のフッ素樹脂フィルムを巻き、さらにその外側に当て板として1mm厚のアルミ板をコアの円筒形状に沿って配置した。
【0046】
1000mm×1530mmのサイズで、厚みが80μmの耐熱性ナイロンフィルム(WL8400−003−60−1000−SHT9、エアテック社製、軟化点:220℃)とシールテープGS213(エアテック社製)とによって、真空空間を形成可能な袋体を作成し、この袋体の中に、上記のコア、フィルムおよび線材からなる巻状物と当て板とを一体にした状態で配置し、フィルム空間部を密閉状態にして、真空ホース(真空ポンプに接続)で吸引し、フィルム空間部を真空状態とした。そして、該真空状態を保ちながらかかる巻状物および当て板を収容した袋体を、加熱加圧処理可能なオートクレーブ装置(芦田製作所株式会社製)に投入した。該投入後、コアの温度が155℃(管内温度:200℃)となるように管内を加熱するとともに、管内の圧力が10kgf/cm2となるように窒素ガスにて加圧し、コアの温度および管内圧力が目標値に到達した後、約30分間保持して冷却し、温度が70℃に達した後、圧力を開放した。
【0047】
この後、オートクレーブから、コア、フィルムおよび線材からなる巻状物を収容した袋体を取出し、該袋体から該巻状物を取り出してコアを外し、熱可塑性ウレタンエラストマーフィルムと耐熱ウレタン被覆線とが一体化したロール状ブロックを得た。
【0048】
次に、前記ロール状ブロックの一辺を切断して平板状物とし、トムソン刃にて、該平板状物から、サイズが120mm×62mmの長方形の熱可塑性ウレタンエラストマーフィルムの主面に、ピッチ100μmで互いに平行に並ぶ複数の耐熱ウレタン被覆線が、図4(c)の状態、すなわち、熱可塑性ウレタンエラストマーフィルムの直線状の一辺L2に対して傾斜角(α1)15度で配列し、固着した状態の線材付きフィルムを22枚切り出した。次に、該22枚の線材付きフィルムを、図5に示すように、鉛直方向に積み上げ、この積重体を、図9、10に示すように、アルミニウム製の箱に入れた。
なお、上記アルミ製の箱には、積重体をそのまま内部へ入れることのできる開口を上面に有し、積重体を完全に収容できる深さを有し、その内側面と積重体の側面(熱可塑性ウレタンエラストマーフィルムの側面)との間に1.5mm隙間が形成される、全体が直方体の箱を用いた。
【0049】
次に、上記アルミ製の箱の上面の開口から10mm厚、120×62mmサイズのアルミ板を箱体内に入れ、前記積重体の最上面に載せた。そして、この状態で積重体を収容したアルミ製の箱を、前記で使用した真空空間が形成可能なナイロンフィルムからなる袋体の内部に入れ、フィルム空間部を真空状態とし、該真空状態を保ちながら、加熱加圧処理可能なオートクレーブ装置(芦田製作所株式会社製)に投入し、アルミ製の箱の温度が175℃(管内温度が200℃)となるように加熱し、また、管内の圧力が15kgf/cm2となるように窒素ガスにて加圧した。管内温度および圧力が目標値に到達した後、管内を冷却した。これによって、積重体が一体化したブロックが形成された。
【0050】
上記作成したブロックを、ワイヤーソー(F−600型、株式会社安永製)で、当該ブロックの所定の端辺(熱可塑性ウレタンエラストマーフィルムの直線状の一辺L2より由来する端辺)に対して切断面が直交する方向となるように、所定のフィルム厚さにスライスして、フィルム基板の厚みが100μm、サイズが120mm×60mmの異方導電性コネクタを200枚切り出した。
【0051】
上記得られた200枚の異方導電性コネクタから任意に5枚をサンプリングし、各々について、異方導電性コネクタの断面2方向から測長顕微鏡(オリンパス工業社製)で導通路の傾斜方向と傾斜角度のばらつきをそれぞれ調べた。すなわち、フィルム基板の主面と直交する方向に切った第1断面と、フィルム基板の主面と平行に切った第2断面を測長顕微鏡で観察した。その結果、第2断面の観察から断面に在る全ての導通路について傾斜方向のばらつき(傾斜方向の角度ばらつき)は0.15度であり、第1断面の観察から傾斜角度のばらつきは0.22度であることが分かった。
【0052】
(比較例1)
25μmφの銅線に上記実施例で使用した熱可塑性ポリウレタンエラストマーを2μm厚で被覆した絶縁導線を、巻線装置を用いて、全長(巻き幅)640mm、断面形状160mm×160mm正方形の角柱状プラスチック芯材に整列巻きを行い線材を最密充填して、1層当たりの平均巻き数3500ターン、巻き層数150層(=層の厚さ約12mm)の巻線コイルを形成した。得られたロール状の巻線コイルを、約150℃に加熱しながら、10kgf/cm2で加圧し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを融着させ、室温まで冷却して、巻き付けた線材が互いに一体化した巻線コイルブロックを得た。この巻線コイルブロックを、バンドソーで、巻き付けられた線材と傾斜角15度を成す面を断面としてブロック状にスライスし、サイズが120mm×180mm、厚さが10mmの異方導電性フィルムの前段階のブロックを得た。得られたブロックをワイヤーソーでスライスし、外径寸法を仕上げて、サイズが10mm×120mm、厚さが100μmの異方導電性コネクタを2800枚作製した。
【0053】
上記得られた2800枚の異方導電性コネクタから、任意に5枚をサンプリングし、各々について、上記実施例と同様にして、異方導電性コネクタの断面2方向から測長顕微鏡で導通路の傾斜方向と傾斜角度のばらつきをそれぞれ調べた。その結果、傾斜方向のばらつき(傾斜方向の角度ばらつき)は0.45度で、傾斜角度のばらつきは0.35度であった。
【0054】
上記実施例1および比較例1で作製した異方導電性コネクタを用いて以下に記載の電子部品と回路基板間の接続試験(導通試験)を行った。
【0055】
〔評価用電子部品の仕様〕
部品サイズ:9.6mm×7.0mm×1.65mm(厚み)
電極サイズ:1.0mm×0.8mm
電極数:12個
電極配置における中間ピッチ:1.8mm
【0056】
〔評価用回路基板の仕様〕
基材:ガラスエポキシ基材(FR−4)
回路パターンを含む全体厚み:1mm
回路パターンの回路幅と間隔部分の幅との比:(1.0mm:0.8mm)
【0057】
〔評価方法〕
上記評価用電子部品と評価用回路基板間に異方導電性コネクタを介在させ、電子部品側より接触荷重25Nを加えて、電子部品の全端子(電極)が回路基板との間で導通するか(すなわち、全点導通するか)をみる。そして、この試験を10回繰り返す。
【0058】
〔結果〕
比較例1の異方導電性コネクタを使用した場合、10回の試験で全点導通したのは8回であった。これに対し、実施例1の異方導電性コネクタを使用した場合、10回の試験で、10回とも全点導通した。
この結果から、本発明の製造方法により得られる異方導電性コネクタは、複数の導通路間の傾斜方向(導通路のしなる方向)のばらつきが小さく、接続対象物との接触性が良好で、接続信頼性の高い異方導電性コネクタであることが分かる。
【0059】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明によれば、複数の導通路間の傾斜方向(導通路のしなる方向)のばらつきが小さく、接続対象物との接触性が良好で、接続対象物との間で高い接続信頼性が得られる異方導電性コネクタを、効率良く製造することができる。さらに、かかる接続対象物との間で高い接続信頼性が得られる異方導電性コネクタを、所望のフィルムサイズに、高歩留まりに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1工程において、芯材に絶縁性フィルムを巻き付け、さらに導電性線材を巻き付ける作業の斜視図(図(a))と当該作業で得られた巻重物の斜視図(図(b))である。
【図2】絶縁性フィルムと導電性線材とが一体化してなるロール状物を展開して得られた平板状物の平面図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は平板状物を裁断して得られた複数枚の導電性線材付きフィルムの平面図である。
【図4】導電性線材付きフィルムの斜視図(図1(a))、断面図(図1(b))および平面図(図1(c))である。
【図5】導電性線材付きフィルム(図4)を積重する作業を示す斜視図である。
【図6】導電性線材付きフィルム(図4)を積重して得られた積重体の斜視図である。
【図7】積重体(図6)を加熱および加圧により一体化したブロックの斜視図である。
【図8】ブロック(図7)からフィルムを切り出す作業の斜視図である。
【図9】積重体(図6)を耐熱性の箱体に入れる様子を示す斜視図である。
【図10】積重体(図6)が耐熱性の箱体に収容された状態を示す斜視図である。
【図11】本発明で製造する異方導電性コネクタの平面図(図11(a))と断面図(図11(b))である。
【符号の説明】
1 絶縁性フィルム
1a 絶縁性フィルムの主面
2 導電性線材
L1 導電性線材の軸心
L2 直線状の一辺
α1 傾斜角
10A、10B 導電性線材付きフィルム
Claims (7)
- フィルム基板の厚み方向に貫通する複数の導通路の軸心がフィルム基板の主面の垂線に対して角度を成す構造の異方導電性コネクタを製造する方法であって、芯材の外周に絶縁性フィルムを巻き、次いで該絶縁性フィルムの外周に導電性線材を一定ピッチで螺旋状に巻くか、若しくは、芯材の外周に導電性線材を一定ピッチで螺旋状に巻き、次いで該導電性線材を覆うように絶縁性フィルムを巻いた後、加熱および加圧を施して、絶縁性フィルムと導電性線材とを芯材上で一体化させ、次に、当該絶縁性フィルムと導電性線材とが一体化して得られたロール状物を芯材から外し、これを切開して平板状物とした後、該平板状物から複数枚の導電性線材付きフィルムを、絶縁性フィルムの主面が直線状の一辺を有する形状で、かつ、複数の導電性線材の軸心が、該直線状の一辺に対して所定の傾斜角を成すように切り出し、次に、該複数枚の導電性線材付きフィルムを隣り合うフィルム間の導電性線材が互いに平行となり、かつ、隣り合うフィルム間の絶縁性フィルムの直線状の一辺が平行に重なるように積み重ね、得られた積重体に加熱および加圧を施して、複数枚の導電性線材付きフィルムが一体化したブロックを作成し、次に、当該ブロックを前記絶縁性フィルムの主面の直線状の一辺より由来する当該ブロックの直線状の端辺と直交する平面を断面として所定のフィルム厚さに切断して異方導電性コネクタを得ることを特徴とする異方導電性コネクタの製造方法。
- 芯材に巻き付けた絶縁性フィルムと導電性線材を、芯材とともに減圧または真空状態を形成し得る空間内に配置し、当該空間内を減圧または真空状態にした後、加熱および加圧を施して、芯材上で絶縁性フィルムと導電性線材とを一体化することを特徴とする請求項1記載の異方導電性コネクタの製造方法。
- 前記減圧または真空状態を形成し得る空間が、可撓性フィルムからなる袋体の内部空間である請求項2記載の異方導電性コネクタの製造方法。
- 前記減圧または真空状態を形成し得る空間内に、圧縮気体を導入することによって、前記加圧を行うことを特徴とする請求項2または3記載の異方導電性コネクタの製造方法。
- 積重体を減圧または真空状態を形成し得る空間内に配置し、当該空間内を減圧または真空状態にした後、積重体に加熱および加圧を施すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の異方導電性コネクタの製造方法。
- 減圧または真空状態を形成しうる空間が、可撓性フィルムからなる袋体の内部空間である請求項5記載の異方導電性コネクタの製造方法。
- 積重体を、該積重体を収容した時にその内側面と該積重体の側面との間に若干の隙間が形成される程度の大きさの耐熱性の箱体内に収容し、当該耐熱性の箱体とともに積重体を可撓性フィルムからなる袋体の内部空間に配置し、当該空間内を減圧または真空状態にした後、積重体に加熱および加圧を施すことを特徴とする請求項5記載の異方導電性コネクタの製造方法。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001262006A JP3713451B2 (ja) | 2001-08-30 | 2001-08-30 | 異方導電性コネクタの製造方法 |
TW91125168A TW569655B (en) | 2001-08-30 | 2002-10-25 | Method for manufacturing anisotropically conductive connector |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001262006A JP3713451B2 (ja) | 2001-08-30 | 2001-08-30 | 異方導電性コネクタの製造方法 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005162919A Division JP2005251770A (ja) | 2005-06-02 | 2005-06-02 | 異方導電性コネクタの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003077609A JP2003077609A (ja) | 2003-03-14 |
JP3713451B2 true JP3713451B2 (ja) | 2005-11-09 |
Family
ID=19088966
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001262006A Expired - Fee Related JP3713451B2 (ja) | 2001-08-30 | 2001-08-30 | 異方導電性コネクタの製造方法 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3713451B2 (ja) |
TW (1) | TW569655B (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104124175A (zh) * | 2014-06-27 | 2014-10-29 | 申宇慈 | 制造含有导电通孔的基板的方法及导线基材集成体 |
CN108281379B (zh) * | 2017-12-29 | 2021-02-12 | 申宇慈 | 一种用于制造包含导电通孔的基板的方法 |
-
2001
- 2001-08-30 JP JP2001262006A patent/JP3713451B2/ja not_active Expired - Fee Related
-
2002
- 2002-10-25 TW TW91125168A patent/TW569655B/zh not_active IP Right Cessation
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
TW569655B (en) | 2004-01-01 |
JP2003077609A (ja) | 2003-03-14 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7156669B2 (en) | Anisotropic conductive film | |
KR100478060B1 (ko) | 이방 도전성 필름 및 그 제조 방법 | |
US11637406B2 (en) | Electrical connector and method for producing same | |
JP6560156B2 (ja) | 異方導電性シートおよびその製造方法 | |
JP2009200113A (ja) | シールド配線回路基板 | |
JP2005085634A (ja) | 異方導電性フィルムおよびその製造方法 | |
KR20190133154A (ko) | 전기 커넥터 및 그 제조 방법 | |
JP2000221209A (ja) | 半導体素子の検査方法およびそのための異方導電性フィルム | |
JP2002042921A (ja) | 異方導電性フィルムの製造方法及び異方導電性フィルム | |
JP4361161B2 (ja) | 異方導電性コネクター | |
JP2002124319A (ja) | 異方導電性フィルムおよびそれを用いた半導体素子または電子部品の検査方法 | |
JP3713451B2 (ja) | 異方導電性コネクタの製造方法 | |
CN114731002A (zh) | 片状连接器、片组件、电气检查装置及电气检查方法 | |
JP4231335B2 (ja) | 電子部品の検査方法 | |
JP2005135772A (ja) | 異方導電性フィルムの製造方法 | |
JP2005251770A (ja) | 異方導電性コネクタの製造方法 | |
KR100917489B1 (ko) | 이방 전도성 커넥터의 제조 방법 | |
JP2006108039A (ja) | 異方導電性コネクタ | |
US20040079474A1 (en) | Production method of anisotropic conductive connector | |
JP2004356036A (ja) | 異方導電性ショートコネクタおよびそれを用いた検査方法 | |
JP2001006770A (ja) | 異方導電性フィルム | |
WO2024018535A1 (ja) | 異方導電性コネクタ、フレーム付き異方導電性コネクタ及び検査装置 | |
JP3046498B2 (ja) | プローブ | |
JP2021182520A (ja) | 異方性導電シート | |
JP2020091982A (ja) | 異方性導電シート |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050323 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050405 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050602 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050816 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050822 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080826 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110826 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140826 Year of fee payment: 9 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |