JP3712553B2 - スパッタリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウェハやガラス等の基板上に金属被膜等を付着させるスパッタリング装置に関し、特に円筒形スパッタリングターゲットを用いるスパッタリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代は微細な半導体素子を集積化した集積回路、所謂ICやLSI、またはガラス等の基板上に多数の半導体素子を配列させた液晶表示装置等を組み込んだ電子機器あるいは家庭電化製品が開発、製造され市場で大量に販売されている。今日においてはテレビ受像機は勿論のこと、VTRやパーソナルコンピュータ等も広く一般に普及している。そしてこれらの機器は年々高性能化しており、情報化社会の進展に伴い利用者に多くの情報を提供するツールとして現代社会において欠かすことのできないものとなっている。
【0003】
上述のICやLSIまたは液晶表示装置等を構成する多数の半導体素子を製造する際にはシリコンウェハやガラス等の基板上に半導体薄膜、金属薄膜または絶縁膜等を成膜する。これらの薄膜を成膜する装置としては例えばプラズマCVD装置、スパッタリング装置等がある。
【0004】
なかでも陰極の近傍にマグネットを配置し、プラズマを発生させることにより基板上に各種の薄膜を付着させることができるマグネトロンスパッタリング装置は、比較的低電圧で成膜速度を高めることができる特徴を有しており、ICやLSIまたは液晶表示装置等を製造する際の量産スパッタリング装置として、現在、広く利用されている。以下、このマグネトロンスパッタリング装置に関して説明する。
【0005】
スパッタリング装置では陰極であるターゲットの近傍に配置されたマグネットのN極からS極に向かって磁力線が発生する。ターゲットと陽極の間に印加された高電圧によりターゲットの表面からは電子が放出されるが、磁界の影響を受け陽極に到達できずに磁界の中心付近で周遊運動をする。その結果、磁界の中心付近でプラズマが発生し、装置内に導入されているアルゴン(以下、Arと呼ぶ)ガスをイオン化してAr+と電子に電離する。このAr+は陰極であるターゲットに引張られ、ターゲットに衝突する。ターゲットからはAr+が衝突した際のエネルギーによって微粒子が飛散し、ターゲットの前方に配置された基板上に付着される。
【0006】
従来、上述のターゲットは、ターゲット材を銅板等からなる保持板上に平板状に形成し、保持板の裏面側にマグネットを環状に配置している。このような平板状ターゲットでは保持板の裏面側に環状に配置されたマグネットに対応するようにターゲット材が消耗して行き、徐々にターゲット材の表面に環状の溝が形成される。このような平板状ターゲットを用いたスパッタリング装置ではターゲット材が消耗し、保持板が露出する前に交換するようにしていたが、ターゲット材の消耗が著しく不均一であり、マグネットの位置に対応する部分以外が殆ど消耗していなくても交換する必要があり、極めて不経済であった。
【0007】
近年ではこうした不都合を解消するために、ターゲットを円筒形状に形成し、内側にマグネットを配置するようにしたスパッタリング装置が提案されている。このような円筒形ターゲットスパッタリング装置は、例えば特開平5−65634号公報および特開平6−88229号公報に示されている。特開平5−65634号公報ではターゲットを円筒形状に形成し、ターゲットの内側にマグネットを軸方向に並べて配置している。また、マグネットとターゲットの間に冷却水を流すための経路を設けていることが示されている。このスパッタリング装置ではターゲットの消耗領域、所謂エロージョン領域が軸方向に線状となり、かつターゲット部分が独立して回転する機構を備えているため、エロージョン領域がターゲットの円周上を順次移動することになる。従ってターゲットの消耗が均一になり、最後まで有効に利用することができる。また、特開平6−88229号公報では2つの円筒形ターゲットを平行に配置したスパッタリング装置が示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような円筒形ターゲットスパッタリング装置では、ターゲット部分が、その内側に配置されたマグネットとは独立して回転する機構を備えており、そのことによりターゲットの消耗が均一になり、最後まで有効に利用することができると言う利点を有している。
【0009】
しかし、図8に示すように、上述の公報等に示された円筒形ターゲットスパッタリング装置では、円筒形ターゲットの内側に配置されたマグネットのN極とS極が比較的近接して配置されており、図示したように磁化の向きが基板に対して概ね垂直となっている。従ってプラズマが発生する領域がターゲット表面のごく一部の領域、即ちターゲットの軸方向に線状となるため、ターゲット表面における成膜に寄与する領域が小さくなる。換言すると成膜時にターゲット表面の大部分は成膜に寄与していないことになり、成膜時におけるターゲットの利用効率が著しく悪いのである。
【0010】
以上のように、従来の円筒形ターゲットスパッタリング装置では、飛躍的な成膜速度および均一性の向上、更には高いスループットによる高い生産性を期待することが極めて困難である。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、成膜速度、成膜速度の均一性およびコストの何れをも満足させることができる円筒形ターゲットスパッタリング装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために本発明の請求項1に記載のスパッタリング装置は、真空容器の内部に不活性ガスを導入し、ターゲットに対向して配置された電極上に基板を載置して成膜を行なうスパッタリング装置において、上記電極は、上記真空容器内において略平行に一対配置されており、上記ターゲットは、上記一対の電極に対してそれぞれ略平行となるように上記真空容器内において上記一対の電極間に配置された複数の円筒形ターゲットからなり、上記一対の電極と上記複数の円筒形ターゲットとの間にそれぞれ磁場が形成されることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載のスパッタリング装置は、請求項1に記載のスパッタリング装置において、上記円筒形ターゲットの内部にはマグネットが配置され、上記一対の電極上に載置されたそれぞれの基板の主表面直上における上記マグネットによる磁化の向きが、上記円筒形ターゲットの中心軸を上記一対の電極のそれぞれに対して垂直に投影した部分において上記電極に対して略平行であり、かつ上記円筒形ターゲットの中心軸に対して略垂直であることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載のスパッタリング装置は、請求項2に記載のスパッタリング装置において、上記マグネットが、隣接する上記円筒形ターゲット間において互いに同一の極性が向き合うように配置されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載のスパッタリング装置は、請求項1に記載のスパッタリング装置において、円筒形ターゲットの内面側およびマグネットの表面、あるいはその何れか一方に保護膜を設けることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項5に記載のスパッタリング装置は、請求項1乃至4に記載のスパッタリング装置において、円筒形ターゲットとマグネットの間に、筒を設けることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項6に記載のスパッタリング装置は、請求項5に記載のスパッタリング装置において、円筒形ターゲットと筒の間に気体の冷媒を導入し、筒とマグネットの間に液体の冷媒を導入することを特徴としている。
【0018】
また、本発明の請求項7に記載のスパッタリング装置は、請求項1乃至6に記載のスパッタリング装置において、円筒形ターゲットを回転させながらスパッタリングを行うことを特徴としている。
【0019】
本発明は上述した従来技術における問題点に鑑み、成膜速度および成膜速度の均一性の向上並びにターゲット材を有効に活用することができる円筒形ターゲットを備えたスパッタリング装置を提供するものである。
【0020】
本発明のスパッタリング装置によれば、真空容器内部に略平行に配置される一対の電極間に、複数の円筒形ターゲットを電極に対して略平行に配置するようにし、電極に対向する円筒形ターゲットの近傍に磁場が形成されるようにした。そのことにより円筒形ターゲットの両側で高密度プラズマを発生させ、一対の電極上に配置された大型の基板に同時に、かつ均一に成膜することが可能となり、スパッタリング装置としての高い生産性を実現することができる。
【0021】
また、円筒形ターゲットの近傍に形成されるプラズマ空間の全域が、電極上に配置された基板によって概ね覆われることになるため、ターゲット表面から飛散する微粒子の殆どが基板の表面に付着することになる。つまり、本発明のスパッタリング装置においては、成膜時に飛散する微粒子が真空容器の内壁面等に付着することが極めて少なく、内壁面等に付着した膜の膜剥れによるパーティクルの発生が抑制でき、良質な膜を成膜することができる。そのことにより、結果として製造工程における良品率の向上が図られる。
【0022】
また、本発明のスパッタリング装置によれば、円筒形ターゲットの内部にマグネットを配置し、一対の電極上に載置されたそれぞれの基板の主表面直上におけるマグネットによる磁化の向きを、円筒形ターゲットの中心軸を一対の電極のそれぞれに対して垂直に投影した部分において電極に対して略平行、円筒形ターゲットの中心軸に対して略垂直になるようにした。そのことにより電極上に保持される基板と面している広い領域に効率よく高密度プラズマを発生させることができ、成膜速度を大きく向上させることができる。
【0023】
また、本発明のスパッタリング装置によれば、隣接する円筒形ターゲット間において互いに同一の極性が向き合うようにマグネットを配置した。そのことにより電極上に保持される基板と面している領域の磁場を強めることができ、成膜速度を更に向上させることができる。
【0024】
また、本発明のスパッタリング装置によれば、円筒形ターゲットの内面側およびマグネットの表面、あるいはその何れか一方に保護膜を設けるようにした。そのことにより冷媒等によるターゲットまたはマグネットの腐食を防止する共に、ガス透過性を有するターゲット材を用いることが可能となり、ターゲットの材質等に制約を受けることなく安定してスパッタリング装置を稼動することができる。
【0025】
また、本発明のスパッタリング装置によれば、円筒形ターゲットとマグネットの間に筒を設けるようにした。そのことにより冷媒等によるターゲットまたはマグネットの腐食を防止する共に、ガス透過性を有するターゲット材を用いることが可能となり、ターゲットの材質等に制約を受けることなく安定してスパッタリング装置を稼動することができる。
【0026】
また、本発明のスパッタリング装置によれば、円筒形ターゲットと筒の間に気体の冷媒を導入し、筒とマグネットの間に液体の冷媒を導入するようにした。そのことによりターゲット及びマグネットの過熱を効率よく防止することが可能となり、安定してスパッタリング装置を稼動することができる。
【0027】
また、本発明のスパッタリング装置によれば、円筒形ターゲットを回転させながら成膜を行うようにした。そのことによりターゲットの利用効率を更に向上させることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は本発明に係る円筒形ターゲットスパッタリング装置を概念的に示した断面図、図2および図3は円筒形ターゲットの構成を示した断面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態における円筒形ターゲットスパッタリング装置では、真空容器であって、成膜が行われるプロセスチャンバ1と、その内部に一対の電極2が概ね平行に配置されている。電極2上にはこの円筒形ターゲットスパッタリング装置によって表面に成膜が施されることになる基板3が配置されている。そして電極2間には複数の円筒形ターゲット4がそれぞれ概ね平行、かつ等間隔に配置されている。
【0030】
本実施形態における円筒形ターゲットスパッタリング装置では、プロセスチャンバ1に隣接してロードロック室5が設けられ、ゲートバルブ6を介して接続されている。更にこれ以外にプロセスチャンバ1およびロードロック室5内の排気を行うためのロータリーポンプまたはクライオポンプ等からなるポンプ7、円筒形ターゲット4に接続される電源8、Arガス等を供給するためのマスフローコントローラ9およびガス制御器10が設けられている。これら周辺の設備に関しては何れも周知の構成であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0031】
次に本実施形態の円筒形ターゲットスパッタリング装置における円筒形ターゲットに関して説明する。図2に示すように、円筒形ターゲットはターゲット部11が円筒形状に形成されており、内側に円柱状のマグネット12が配置されている。尚、マグネット12は円柱状に限定されるものでなく、例えば角柱であっても差し支えない。
【0032】
ターゲット部11とマグネット12との間隙は冷却のための冷媒等を流通させるための冷却路13である。冷媒としては例えばフロロカーボン系液体であるフロリナートまたはガルデン等を用いることができるが、これ以外のものであっても差し支えない。
【0033】
ターゲット部11を構成するターゲット材としてはW、Ti、Ta、Mo、Al合金等の各種金属材料、シリコン、インジウム−スズ酸化物(以下、ITOと呼ぶ)等が用いられる。また、マグネット12にはサマリウム−コバルト系マグネットが用いられる。
【0034】
ターゲット部11がガス透過性を有しているか、または冷媒によって腐食される恐れがある場合には、ターゲット部11の内面にW、Ti、Mo、Ni等の膜をコーティングすることによってそれらを防止することができる。また、マグネット12が冷媒によって腐食される恐れがある場合にも、ターゲットの場合と同様の膜をコーティングすることによって防止することができる。
【0035】
次に他の円筒形ターゲットの例に関して説明する。図3に示すように、ターゲット部11が円筒形状に形成され、内側に円柱状のマグネット12が配置されている。ターゲット部11とマグネット12との間隙は冷却のための冷媒等を流通させるための冷却路13である。この例ではターゲット部11とマグネット12との間に金属筒14が設けられている。ターゲット部11と金属筒14の間隙(図示せず)には、ターゲット部11の熱を金属筒14に効率よく伝えるために、例えばヘリウム等のガスを充填する。
【0036】
図3に示された円筒形ターゲットの構造は、ターゲット部11がガス透過性を有しているか、または冷媒によって腐食される恐れがあるにもかかわらず、ターゲット部11の内面にW、Ti、Mo、Ni等の膜をコーティングすることが困難な場合に有効である。このようなターゲットの構造では、マグネット12と金属筒14の間にと液体の冷媒、例えばフロリナートまたはガルデン等を流通させることにより、ターゲット部11及びマグネット12を効果的に冷却することができる。この際、ターゲット部11とマグネット12の間に金属筒14を設けているため、ターゲット部11が冷媒によって影響を受けることがない。
【0037】
次に本実施形態における円筒形ターゲット4の配置に関して説明する。図4に示すように、円筒形ターゲット4は電極2に対して概ね平行に配置され、かつ複数の円筒形ターゲット4が概ね等間隔で配置される。
【0038】
円筒形ターゲット4内のマグネット12は図示するように、隣接する円筒形ターゲット間で互いに同一の極性が向き合うように構成されている。この際、磁力線15および磁化の向きは図示するように、電極上の基板に対して概ね平行となり、ターゲット中心軸に対して概ね垂直となる。
【0039】
円筒形ターゲット4、マグネット12および基板3を図4に示すように配置することにより、円筒形ターゲット4の基板に面する側に効率よく高密度プラズマを発生させることができ、成膜速度および均一性を向上させることができる。即ち、円筒形ターゲット4の基板に面する広い範囲で高密度プラズマが発生し、円筒形ターゲット表面の多くの領域が成膜に寄与することになるためである。
【0040】
また、高密度プラズマが発生する空間の概ね全域が、電極上に配置された基板によって概ね覆われることになるため、ターゲット表面から飛散する微粒子の殆どが基板の表面に付着することになる。従って成膜時に飛散する微粒子が真空容器の内壁面等に付着することが極めて少なく、内壁面等に付着した膜の膜剥れによるパーティクルの発生が抑制でき、良質な膜を成膜することができる。
【0041】
また、図示するように、マグネット12を隣接する円筒形ターゲット間で互いに同一の極性が向き合うように構成し、磁化の向きが隣接するターゲット間で逆方向となるようにすることで、円筒形ターゲット4の基板に面する側の磁場を強めることができ、更に効率よく高密度プラズマを発生させることができる。成膜時にターゲット表面の多くの領域が寄与すれば、成膜速度が向上すると共に、ターゲットの利用効率も向上に、ターゲットの消耗が均一になる。また、ターゲット部がマグネットに対して独立して回転するような機構を設け、ある周期で回転させればその効果は一層助長される。
【0042】
本発明の円筒形ターゲットスパッタリング装置におけるプラズマ励起手段としては、ターゲットに高周波電圧を印加して高周波放電プラズマを励起する方法(RFスパッタ)を用いることができる。この方法は効率面やターゲット材質に制限が少ない点等から、スパッタリング装置において広く採用されている。これ以外にもターゲットに高周波電流を流してターゲット周囲に高周波磁場を発生させ、プラズマ中に誘導電流を流すことにより誘導結合プラズマを励起する方法またはターゲットに直流磁場を印加して直流放電プラズマを励起する方法等を用いることができる。
【0043】
次に実際に本発明による円筒形ターゲットスパッタリング装置を用いて行ったITO薄膜の成膜実験に関して説明する。本実験は円筒形ターゲットスパッタリング装置の成膜速度および成膜速度の均一性を評価するために実施したものである。
【0044】
本実験に使用した基板はガラス基板であり、サイズは620mm×750mmである。円筒形ターゲットはガラス基板に対して概ね平行、かつガラス基板の長辺方向に対して概ね垂直方向に複数配置した。円筒形ターゲットの外形寸法は50mmであり、軸方向の長さはガラス基板の短辺方向の全域をカバーできる長さとした。また、内部には直径28mmの円柱状のサマリウム−コバルト系マグネットを搭載した。この際の円筒形ターゲットの表面における磁束密度の最大値は560Gaussであった。このような構成において、複数の円筒形ターゲットに、13.56MHz、計5kWの高周波を印加してガラス基板上にITO薄膜の成膜を行った。
【0045】
本実験では図5に示すように、ガラス基板から円筒形ターゲットまでの距離aおよび円筒形ターゲット間の距離bを変化させた時の成膜速度およびその均一性の変化を観察した。
【0046】
図6は本実験における成膜速度の変化を示したものである。それによるとガラス基板と円筒形ターゲットの距離aが小さい方が成膜速度が速く、また円筒形ターゲット間の距離bが小さい方が成膜速度が速いことが分る。
【0047】
図7は本実験における成膜速度の均一性の変化を示したものである。図中に点線で示したのは、均一性の許容値である2%ラインである。成膜速度の均一性を許容範囲内に収めるためにはガラス基板と円筒形ターゲットの距離aを大きくし、円筒形ターゲット間の距離bを小さくすればよいことが分る。しかし、円筒形ターゲット間の距離bを小さくすると円筒形ターゲットの本数を増やす必要があり、コストが増加することが見込まれる。従ってこれらの実験結果を考慮すると、ガラス基板と円筒形ターゲットの距離aは5cm〜10cm、円筒形ターゲット間の距離bは6cm程度が最適である。尚、本実験はターゲット材にITOを用いたものであったが、その他のターゲット材を用いた際にも同様の傾向が確認されている。
【0048】
このように本実験では、本発明の円筒形ターゲットスパッタリング装置を用いて、一対の電極上に設けられたガラス基板上に薄膜を形成できることが確認された。更に本実験では、速い成膜速度で安定して良質の薄膜を形成するための条件を見出すことができた。
【0049】
以上のように、本実施形態では円筒形ターゲットを用いたスパッタリング装置について具体的に説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱せず、当初の作用効果を損なわない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0050】
【発明の効果】
上述したように、本発明は成膜速度および成膜速度の均一性を向上させた円筒形ターゲットスパッタリング装置を提供するものであり、そのために必要となる円筒形ターゲットの構成等の課題を解決するものである。
【0051】
本発明によれば円筒形ターゲットを用いたスパッタリング装置において、一対の電極間に複数の円筒形ターゲットを電極に対して概ね平行、かつ等間隔に配置し、マグネットによる磁化の向きを基板に対して概ね平行にすることにより、基板に面した部分に効率よく高密度プラズマを発生させることができる。従って円筒形ターゲットの多くの領域が成膜時に利用されることになり、成膜速度および均一性が向上すると共に、ターゲットの両側に配置した基板に対して同時に成膜が可能となる。
【0052】
以上のように本発明の円筒形ターゲットスパッタリング装置は、速い成膜速度と高い均一性を有し、従来のスパッタリング装置に比べて飛躍的に高いスループットを実現することが可能である。本発明は今後の情報化社会に欠かすことのできない半導体回路基板、液晶表示装置等の製造効率の向上に大きな効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスパッタリング装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る円筒形ターゲットを示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る円筒形ターゲットの他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明に係る円筒形ターゲットの配置を示す図である。
【図5】本発明に係る円筒形ターゲットと基板との位置関係を示す図である。
【図6】本発明に係るスパッタリング装置における成膜速度を示す図である。
【図7】本発明に係るスパッタリング装置における成膜均一性を示す図である。
【図8】従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 チャンバ
2 電極
3 基板
4 円筒形ターゲット
5 ロードロック室
6 ゲートバルブ
7 ポンプ
8 電源
9 マスフローコントローラ
10 ガス制御器
11 ターゲット部
12 マグネット
13 冷却路
14 金属筒
15 磁力線
a 基板と円筒形ターゲットの距離
b 円筒形ターゲット間の距離

Claims (7)

  1. 真空容器の内部に不活性ガスを導入し、ターゲットに対向して配置された電極上に基板を載置して成膜を行なうスパッタリング装置であって、
    前記電極は、前記真空容器内において略平行に一対配置されており、
    前記ターゲットは、前記一対の電極に対してそれぞれ略平行となるように前記真空容器内において前記一対の電極間に配置された複数の円筒形ターゲットからなり、
    前記一対の電極と前記複数の円筒形ターゲットとの間にそれぞれ磁場が形成されるように構成されたスパッタリング装置。
  2. 前記円筒形ターゲットの内部にはマグネットが配置され、
    前記一対の電極上に載置されたそれぞれの基板の主表面直上における前記マグネットによる磁化の向きが、前記円筒形ターゲットの中心軸を前記一対の電極のそれぞれに対して垂直に投影した部分において前記電極に対して略平行であり、かつ前記円筒形ターゲットの中心軸に対して略垂直であることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
  3. 前記マグネットは、隣接する前記円筒形ターゲット間において互いに同一の極性が向き合うように配置されていることを特徴とする請求項2に記載のスパッタリング装置。
  4. 前記円筒形ターゲットの内面側および前記マグネットの表面、あるいはその何れか一方に保護膜を設けることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
  5. 前記円筒形ターゲットと前記マグネットの間に、筒を設けることを特徴とする請求項1乃至4に記載のスパッタリング装置。
  6. 前記円筒形ターゲットと前記筒の間に気体の冷媒を導入し、前記筒と前記マグネットの間に液体の冷媒を導入することを特徴とする請求項5に記載のスパッタリング装置。
  7. 前記円筒形ターゲットを回転させながらスパッタリングを行うことを特徴とする請求項1乃至6に記載のスパッタリング装置。
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