JP3711530B2 - ディーゼル機関の停止制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気中の窒素酸化物濃度を低減すべく燃料油に所定量の水分を加える加水装置を有するディーゼル機関の停止制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、排気中のNOxを低減するディーゼル機関として、例えば本出願人による特公平6−58058号に記載のものが知られている。このディーゼル機関は、排気系に選択還元アンモニア脱硝装置を備えたディーゼル機関の排気中のNOx濃度を、季節による給気の乾湿に拘わらず一定の低レベルに更に低減すべく、給気に所定量の水蒸気や微水滴を加えて加湿するものである。
【0003】
しかし、本出願人の最近の研究によれば、燃料油に所定量の水を加えて乳化燃料油としてディーゼル機関に供給することによっても、排気中のNOx濃度を低減でき、しかも低減効果が給気を加湿する上記方法よりも2割ほど高いことが明らかになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この方法は、燃料油に水を添加した乳化燃料油をディーゼル機関に供給するものであるため、燃料油による通常運転の場合のように、乳化燃料油の供給遮断と同時に機関を停止させると、長い燃料送油配管内やシリンダ内で燃料油に混入していた水の微粒子が分離し,水塊となって溜まり、配管やシリンダの内面を錆びさせたり、機関の再起動を妨げるという問題がある。
機関停止後の配管やシリンダ内での水の分離,凝集を防止するには、燃料油への加水を停止して燃料油のみによる運転を所定時間続行した後、機関を停止すればよいが、水を添加した乳化燃料油による機関運転は、未だ実験段階にあって実用化されていないため、上記所定時間は、熟練運転者による経験と勘に頼らざるを得ないというのが実情である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、水を添加した乳化燃料油による運転では、同一機関出力を得るための燃料油のみによる運転に比して、添加水分量だけ燃料ラックが多く投入され、或いは水添加に伴う粘度増加分だけ燃料噴射圧力が上昇する事実に着目し、この事実に基づいて燃料油への水の無添加を自動確認した後に機関を停止できるように工夫することによって、添加水による燃料送油配管やシリンダ内の錆びおよび機関の起動不良を防止できるディーゼル機関の停止制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、排気中の窒素酸化物濃度を低減すべく燃料油に所定量の水分を加える加水装置を有するディーゼル機関の停止制御装置において、軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数の関数としての機関出力のデータを記憶する第1記憶手段と、無加水燃料油を用いた運転時の燃料ラック量または燃料噴射圧力の関数としての機関出力のデータを記憶する第2記憶手段と、停止指令信号を受けて上記加水装置を停止させるとともに、その後の運転状態で検出される軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数に基づき、上記第1記憶手段に記憶されたデータを参照して機関出力を算出する算出手段と、この算出手段で算出された機関出力と等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量または燃料噴射圧力を、上記第2記憶手段に記憶されたデータから求め、求めた燃料ラック量のデータ値と燃料ラック量の検出値,または求めた燃料噴射圧力のデータ値と燃料噴射圧力の検出値を比較して、検出値が減少してデータ値に達したとき、機関停止許可信号を出力する許可制御手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1のディーゼル機関において、停止指令信号を受けた算出手段は、燃料油に所定量の水分を加える加水装置を停止させるとともに、その後の燃料油のみの供給による運転で検出される軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数に基づき、上記第1記憶手段に記憶されたデータを参照して機関出力を算出する。加水装置の停止により、ディーゼル機関に供給される燃料油の含水率は、燃料油管が長いため直ちに零にならずに次第に減少し、その結果、機関出力が同じ場合の燃料油のみによる運転に比して、含水率の分だけ燃料ラックが多く投入され,或いは粘度増加のために燃料噴射圧力が上昇する。
【0008】
そこで、許可制御手段は、上記算出手段で算出された機関出力と等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量または燃料噴射圧力を、上記第2記憶手段に記憶されたデータから求め、求めた燃料ラック量のデータ値と燃料ラック量の検出値,または求めた燃料噴射圧力のデータ値と燃料噴射圧力の検出値を比較して、検出値が減少してデータ値に達したとき、機関停止許可信号を出力する。機関停止許可信号が出力された時点で、燃料ラック量または燃料噴射圧力の検出値が、同じ機関出力を無加水燃料油によって得るためのデータ値になる,つまりディーゼル機関に供給される燃料油の含水率は零になるので、この時点で燃料油の供給を停止して機関を停止させる。
これによって、機関停止後に燃料油管内やシリンダ内に燃料油中の水の微粒子が分離して水塊となって溜まることがなく、この水塊で配管やシリンダの内面が錆びたり、機関の再起動が妨げられたりすることもなくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明による停止制御装置の一例を備えたディーゼル機関を示す概略図であり、1は給気管2と排気管3と燃料供給系4を備えたエンジン本体、5は上記給気管2の入口に圧縮機5aを、排気管3の出口にこの圧縮機に連結するタービン5bを夫々配置してなる過給機、6はこの過給機5の下流側の給気管2に介設した空気冷却器、7は後述する第1,第2記憶手段と算出手段と許可制御手段を兼ねるコンピュータである。
上記燃料供給系4は、燃料送油配管9を介してエンジン本体1に接続される燃料タンク8と、上記燃料送油配管9を経て供給される燃料油に所定量の水分を加えて乳化燃料油とする加水装置とからなる。この加水装置は、燃料送油配管9に介設されて燃料油に水を混合する混合ミキサ10と、この混合ミキサ10に送水管11を介して接続される水タンク12と、上記送水管11に介設される可変容量ポンプ13と、上記混合ミキサ10よりも燃料タンク8側の燃料送油配管9に介設され,エンジン本体1に供給される燃料油の流量を検出して,検出信号を上記コンピュータ7に出力する燃料流量発信器14で構成される。
【0010】
上記ディーゼル機関は、機関出力を求めるパラメータとして、軸トルクT,燃料流量Q,給気圧力Pおよび機関回転数Rを選び、これらを検出すべく、機関出力軸1aにトルクセンサ15と回転数センサ17を,給気管2に給気圧力センサ16を,燃料送油配管9に上記燃料流量発信器14を夫々設けている。また、機関出力が同じでも燃料への添加水分量増加に応じて燃料ラック量Frが増え,水添加に伴う粘度増加に応じて燃料噴射圧力Fpが増える点に着目して、添加水分量を検出すべくラック目盛センサ18と燃料噴射圧力センサ19を設けている。そして、これらのセンサからの検出信号は、総べてコンピュータ7に入力される。
【0011】
上記コンピュータ7は、第1記憶手段として、このディーゼル機関について試験運転で予め得られた軸トルクT,燃料流量Q,給気圧力Pおよび機関回転数Rの関数としての機関出力L;L=f(T,Q,P,R)のデータを記憶し、第2記憶手段として、水を添加しない燃料油による試験運転で予め得られた燃料ラック量Frの関数としての機関出力L=f(Fr)(図3(A)参照)および燃料噴射圧力Fpの関数としての機関出力L=f(Fp)(図3(B)参照)のデータを記憶する。
また、コンピュータ7は、算出手段として、外部から入力される停止指令信号S1を受けて可変容量ポンプ13を停止させるとともに、その後の運転で各センサ15,14,16,17からの検出信号が表わす軸トルクTm,燃料流量Qm,給気圧力Pmおよび機関回転数Rmに基づき、記憶した上記L=f(T,Q,P,R)のデータを参照して機関出力Lcを算出する。
【0012】
さらに、コンピュータ7は、許可制御手段として、上記算出した機関出力Lcと等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量Fr0および燃料噴射圧力Fp0を図3(A),(B)に示すように求め、求めた燃料ラック量Fr0と加水停止後の燃料ラックの検出値Frmを比較し、また、求めた燃料噴射圧力Fp0と加水停止後の燃料噴射圧力の検出値Fpmを比較して、図3(A),(B)の矢印で示すように、どちらかの検出値Frm,Fpmが減少して求めた値Fr0,Fp0に達したとき、エンジン本体1に供給される燃料油の含水率は零になったとして、エンジンを停止しても問題ないことを知らせる機関停止許可制御信号S2を出力するようになっている。
【0013】
上記構成のディーゼル機関の停止制御装置の動作について、図2のフローチャートを参照しつつ次に述べる。
コンピュータ7は、ステップS1で、外部から停止指令信号S1を受けると、ステップS2に進んで、加水装置をオフに,つまり可変容量ポンプ13を停止させ、混合ミキサ10を介する水タンク12から燃料油への水の添加を終了させる。次いで、ステップS3で、各センサ14〜17からの検出信号が表わす軸トルクTm,燃料流量Qm,燃料噴射圧力Pmおよび機関回転数Rmをパラメータとして、第1記憶手段として予め記憶した関数である機関出力Lc=f(Tm,Qm,Pm,Rm)を算出する。ステップS2の加水装置オフにより、エンジン本体1のシリンダに供給される燃料油の含水率は、混合ミキサ10の下流側の燃料送油管9が長いため直ちに零にはならずに次第に減少し、その結果、燃料ラック量および燃料噴射圧力は、同じ機関出力を無加水燃料による運転で得る場合に比して含水率分だけ増加する。
【0014】
そこで、コンピュータ7は、ステップS4に進んで、上記算出した機関出力Lcと等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量Fr0を、第2記憶手段として予め記憶したデータから図3(A)に示すように求め、求めた燃料ラック量Fr0と加水停止後の燃料ラックの実測値Frmを比較する。また、ステップS4'に進んで、上記算出した機関出力Lcと等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料噴射圧力Fp0を、第2記憶手段として予め記憶したデータから図3(B)に示すように求め、求めた燃料噴射圧力Fp0と加水停止後の燃料噴射量の実測値Fpmを比較する。
次いで、ステップS5に進んで、図3(A)の矢印で示すように燃料ラック量の実測値Frmが減少して求めた値Fr0に達した否か、および図3(A)の矢印で示すように燃料噴射圧力Fpmが減少して求めた値Fp0に達したか否かを判断し、どちらかが肯と判断すると、ステップS6に進んで、機関停止許可信号S2を出力する。
【0015】
上記機関停止許可信号S2を確認して初めて機関運転者は、エンジンを停止させる。これにより、停止時にエンジンに供給される燃料油は無加水なので、停止後に配管やシリンダ内に残った燃料油から水が分離して水塊になることがなく、従ってこの水塊で配管やシリンダの内面が錆びたり、エンジンの再起動が妨げられたりすることもなくなる。つまり、熟練運転者でなくとも加水停止後のエンジンに供給される燃料油の無加水を確実に知ることができ、添加水によるエンジンの錆びや再起動不良を防止することができる。
【0016】
上記実施の形態では、コンピュータ7により、センサ14〜17が検出する軸トルク,燃料流量,給気圧力,機関回転数の4つのパラメータの関数としての機関出力データを記憶し、このデータにより機関出力を算出するようにしているので、より正確な機関出力,ひいてはより正確な燃料油の無加水判定を行なうことができるという利点がある。上記実施の形態では、機関回転数が変化する舶用のディーゼル機関等を前提に,機関出力Lが機関回転数Rの関数であるとしたが、一定回転数で運転される発電用ディーゼル機関等の場合は、機関出力を軸トルク,燃料流量,給気圧力のみの関数とすることもできる。
【0017】
また、機関出力を軸トルク,燃料流量,給気圧力のうちのいずれか1つまたは任意の2つの組合せの関数にすることも可能である。
さらに、上記実施の形態では、加水停止後の実測値と無加水時のデータ値の比較・判別を燃料ラック量および燃料噴射圧力の双方について行ない、機関停止許可信号を、いずれかの実測値がデータ値に達したときに出力するようにしたが、双方の実測値がデータ値に達したとき出力して,より正確に無加水を判定するようにもでき、また、実測値とデータ値の比較・判別をいずれか一方のみについて行なうことも可能である。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の燃料油の加水装置を有するディーゼル機関の停止制御装置は、第1記憶手段に、軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数の関数としての機関出力のデータを記憶させ、第2記憶手段に、無加水燃料油を用いた運転時の燃料ラック量または燃料噴射圧力の関数としての機関出力のデータを記憶させる一方、停止指令信号を受けた算出手段により、加水装置を停止させ、かつその後の燃料油のみの供給による運転で検出される軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数に基づき、上記第1記憶手段のデータを参照して機関出力を算出するとともに、許可制御手段により、上記算出手段で算出された機関出力と等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量または燃料噴射圧力を上記第2記憶手段のデータから求め、燃料ラック量または燃料噴射圧力の求められたデータ値と検出値を比較して、検出値が減少してデータ値に達したとき、機関停止許可信号を出力するようにしているので、加水停止後に機関に供給される燃料油の無加水状態を自動的かつ確実に検出でき、機関停止許可信号出力時に燃料油の供給を停止すれば、残存燃料油からの水の分離を無くし、分離水による配管やシリンダの錆びや機関の再起動不良を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による停止制御装置の一例を備えたディーゼル機関を示す概略図である。
【図2】 上記停止制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】 上記停止制御装置の第2記憶手段に記憶された燃料ラック量−機関出力の関係データと実測燃料ラック量、および燃料噴射圧力−機関出力の関係データと実測燃料噴射圧力を示す図である。
【符号の説明】
1…エンジン本体、2…給気管、3…排気管、4…燃料供給系、5…過給機、
7…コンピュータ、8…燃料タンク、9…燃料送油配管、10…混合ミキサ、
11…送水管、12…水タンク、13…可変容量ポンプ、14…燃料流量発信器、15…トルクセンサ、16…給気圧力センサ、17…回転数センサ、
18…ラック目盛センサ、19…燃料噴射圧力センサ、S1…停止指令信号、
S2…機関停止許可信号。
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気中の窒素酸化物濃度を低減すべく燃料油に所定量の水分を加える加水装置を有するディーゼル機関の停止制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、排気中のNOxを低減するディーゼル機関として、例えば本出願人による特公平6−58058号に記載のものが知られている。このディーゼル機関は、排気系に選択還元アンモニア脱硝装置を備えたディーゼル機関の排気中のNOx濃度を、季節による給気の乾湿に拘わらず一定の低レベルに更に低減すべく、給気に所定量の水蒸気や微水滴を加えて加湿するものである。
【0003】
しかし、本出願人の最近の研究によれば、燃料油に所定量の水を加えて乳化燃料油としてディーゼル機関に供給することによっても、排気中のNOx濃度を低減でき、しかも低減効果が給気を加湿する上記方法よりも2割ほど高いことが明らかになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この方法は、燃料油に水を添加した乳化燃料油をディーゼル機関に供給するものであるため、燃料油による通常運転の場合のように、乳化燃料油の供給遮断と同時に機関を停止させると、長い燃料送油配管内やシリンダ内で燃料油に混入していた水の微粒子が分離し,水塊となって溜まり、配管やシリンダの内面を錆びさせたり、機関の再起動を妨げるという問題がある。
機関停止後の配管やシリンダ内での水の分離,凝集を防止するには、燃料油への加水を停止して燃料油のみによる運転を所定時間続行した後、機関を停止すればよいが、水を添加した乳化燃料油による機関運転は、未だ実験段階にあって実用化されていないため、上記所定時間は、熟練運転者による経験と勘に頼らざるを得ないというのが実情である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、水を添加した乳化燃料油による運転では、同一機関出力を得るための燃料油のみによる運転に比して、添加水分量だけ燃料ラックが多く投入され、或いは水添加に伴う粘度増加分だけ燃料噴射圧力が上昇する事実に着目し、この事実に基づいて燃料油への水の無添加を自動確認した後に機関を停止できるように工夫することによって、添加水による燃料送油配管やシリンダ内の錆びおよび機関の起動不良を防止できるディーゼル機関の停止制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、排気中の窒素酸化物濃度を低減すべく燃料油に所定量の水分を加える加水装置を有するディーゼル機関の停止制御装置において、軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数の関数としての機関出力のデータを記憶する第1記憶手段と、無加水燃料油を用いた運転時の燃料ラック量または燃料噴射圧力の関数としての機関出力のデータを記憶する第2記憶手段と、停止指令信号を受けて上記加水装置を停止させるとともに、その後の運転状態で検出される軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数に基づき、上記第1記憶手段に記憶されたデータを参照して機関出力を算出する算出手段と、この算出手段で算出された機関出力と等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量または燃料噴射圧力を、上記第2記憶手段に記憶されたデータから求め、求めた燃料ラック量のデータ値と燃料ラック量の検出値,または求めた燃料噴射圧力のデータ値と燃料噴射圧力の検出値を比較して、検出値が減少してデータ値に達したとき、機関停止許可信号を出力する許可制御手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1のディーゼル機関において、停止指令信号を受けた算出手段は、燃料油に所定量の水分を加える加水装置を停止させるとともに、その後の燃料油のみの供給による運転で検出される軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数に基づき、上記第1記憶手段に記憶されたデータを参照して機関出力を算出する。加水装置の停止により、ディーゼル機関に供給される燃料油の含水率は、燃料油管が長いため直ちに零にならずに次第に減少し、その結果、機関出力が同じ場合の燃料油のみによる運転に比して、含水率の分だけ燃料ラックが多く投入され,或いは粘度増加のために燃料噴射圧力が上昇する。
【0008】
そこで、許可制御手段は、上記算出手段で算出された機関出力と等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量または燃料噴射圧力を、上記第2記憶手段に記憶されたデータから求め、求めた燃料ラック量のデータ値と燃料ラック量の検出値,または求めた燃料噴射圧力のデータ値と燃料噴射圧力の検出値を比較して、検出値が減少してデータ値に達したとき、機関停止許可信号を出力する。機関停止許可信号が出力された時点で、燃料ラック量または燃料噴射圧力の検出値が、同じ機関出力を無加水燃料油によって得るためのデータ値になる,つまりディーゼル機関に供給される燃料油の含水率は零になるので、この時点で燃料油の供給を停止して機関を停止させる。
これによって、機関停止後に燃料油管内やシリンダ内に燃料油中の水の微粒子が分離して水塊となって溜まることがなく、この水塊で配管やシリンダの内面が錆びたり、機関の再起動が妨げられたりすることもなくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明による停止制御装置の一例を備えたディーゼル機関を示す概略図であり、1は給気管2と排気管3と燃料供給系4を備えたエンジン本体、5は上記給気管2の入口に圧縮機5aを、排気管3の出口にこの圧縮機に連結するタービン5bを夫々配置してなる過給機、6はこの過給機5の下流側の給気管2に介設した空気冷却器、7は後述する第1,第2記憶手段と算出手段と許可制御手段を兼ねるコンピュータである。
上記燃料供給系4は、燃料送油配管9を介してエンジン本体1に接続される燃料タンク8と、上記燃料送油配管9を経て供給される燃料油に所定量の水分を加えて乳化燃料油とする加水装置とからなる。この加水装置は、燃料送油配管9に介設されて燃料油に水を混合する混合ミキサ10と、この混合ミキサ10に送水管11を介して接続される水タンク12と、上記送水管11に介設される可変容量ポンプ13と、上記混合ミキサ10よりも燃料タンク8側の燃料送油配管9に介設され,エンジン本体1に供給される燃料油の流量を検出して,検出信号を上記コンピュータ7に出力する燃料流量発信器14で構成される。
【0010】
上記ディーゼル機関は、機関出力を求めるパラメータとして、軸トルクT,燃料流量Q,給気圧力Pおよび機関回転数Rを選び、これらを検出すべく、機関出力軸1aにトルクセンサ15と回転数センサ17を,給気管2に給気圧力センサ16を,燃料送油配管9に上記燃料流量発信器14を夫々設けている。また、機関出力が同じでも燃料への添加水分量増加に応じて燃料ラック量Frが増え,水添加に伴う粘度増加に応じて燃料噴射圧力Fpが増える点に着目して、添加水分量を検出すべくラック目盛センサ18と燃料噴射圧力センサ19を設けている。そして、これらのセンサからの検出信号は、総べてコンピュータ7に入力される。
【0011】
上記コンピュータ7は、第1記憶手段として、このディーゼル機関について試験運転で予め得られた軸トルクT,燃料流量Q,給気圧力Pおよび機関回転数Rの関数としての機関出力L;L=f(T,Q,P,R)のデータを記憶し、第2記憶手段として、水を添加しない燃料油による試験運転で予め得られた燃料ラック量Frの関数としての機関出力L=f(Fr)(図3(A)参照)および燃料噴射圧力Fpの関数としての機関出力L=f(Fp)(図3(B)参照)のデータを記憶する。
また、コンピュータ7は、算出手段として、外部から入力される停止指令信号S1を受けて可変容量ポンプ13を停止させるとともに、その後の運転で各センサ15,14,16,17からの検出信号が表わす軸トルクTm,燃料流量Qm,給気圧力Pmおよび機関回転数Rmに基づき、記憶した上記L=f(T,Q,P,R)のデータを参照して機関出力Lcを算出する。
【0012】
さらに、コンピュータ7は、許可制御手段として、上記算出した機関出力Lcと等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量Fr0および燃料噴射圧力Fp0を図3(A),(B)に示すように求め、求めた燃料ラック量Fr0と加水停止後の燃料ラックの検出値Frmを比較し、また、求めた燃料噴射圧力Fp0と加水停止後の燃料噴射圧力の検出値Fpmを比較して、図3(A),(B)の矢印で示すように、どちらかの検出値Frm,Fpmが減少して求めた値Fr0,Fp0に達したとき、エンジン本体1に供給される燃料油の含水率は零になったとして、エンジンを停止しても問題ないことを知らせる機関停止許可制御信号S2を出力するようになっている。
【0013】
上記構成のディーゼル機関の停止制御装置の動作について、図2のフローチャートを参照しつつ次に述べる。
コンピュータ7は、ステップS1で、外部から停止指令信号S1を受けると、ステップS2に進んで、加水装置をオフに,つまり可変容量ポンプ13を停止させ、混合ミキサ10を介する水タンク12から燃料油への水の添加を終了させる。次いで、ステップS3で、各センサ14〜17からの検出信号が表わす軸トルクTm,燃料流量Qm,燃料噴射圧力Pmおよび機関回転数Rmをパラメータとして、第1記憶手段として予め記憶した関数である機関出力Lc=f(Tm,Qm,Pm,Rm)を算出する。ステップS2の加水装置オフにより、エンジン本体1のシリンダに供給される燃料油の含水率は、混合ミキサ10の下流側の燃料送油管9が長いため直ちに零にはならずに次第に減少し、その結果、燃料ラック量および燃料噴射圧力は、同じ機関出力を無加水燃料による運転で得る場合に比して含水率分だけ増加する。
【0014】
そこで、コンピュータ7は、ステップS4に進んで、上記算出した機関出力Lcと等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量Fr0を、第2記憶手段として予め記憶したデータから図3(A)に示すように求め、求めた燃料ラック量Fr0と加水停止後の燃料ラックの実測値Frmを比較する。また、ステップS4'に進んで、上記算出した機関出力Lcと等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料噴射圧力Fp0を、第2記憶手段として予め記憶したデータから図3(B)に示すように求め、求めた燃料噴射圧力Fp0と加水停止後の燃料噴射量の実測値Fpmを比較する。
次いで、ステップS5に進んで、図3(A)の矢印で示すように燃料ラック量の実測値Frmが減少して求めた値Fr0に達した否か、および図3(A)の矢印で示すように燃料噴射圧力Fpmが減少して求めた値Fp0に達したか否かを判断し、どちらかが肯と判断すると、ステップS6に進んで、機関停止許可信号S2を出力する。
【0015】
上記機関停止許可信号S2を確認して初めて機関運転者は、エンジンを停止させる。これにより、停止時にエンジンに供給される燃料油は無加水なので、停止後に配管やシリンダ内に残った燃料油から水が分離して水塊になることがなく、従ってこの水塊で配管やシリンダの内面が錆びたり、エンジンの再起動が妨げられたりすることもなくなる。つまり、熟練運転者でなくとも加水停止後のエンジンに供給される燃料油の無加水を確実に知ることができ、添加水によるエンジンの錆びや再起動不良を防止することができる。
【0016】
上記実施の形態では、コンピュータ7により、センサ14〜17が検出する軸トルク,燃料流量,給気圧力,機関回転数の4つのパラメータの関数としての機関出力データを記憶し、このデータにより機関出力を算出するようにしているので、より正確な機関出力,ひいてはより正確な燃料油の無加水判定を行なうことができるという利点がある。上記実施の形態では、機関回転数が変化する舶用のディーゼル機関等を前提に,機関出力Lが機関回転数Rの関数であるとしたが、一定回転数で運転される発電用ディーゼル機関等の場合は、機関出力を軸トルク,燃料流量,給気圧力のみの関数とすることもできる。
【0017】
また、機関出力を軸トルク,燃料流量,給気圧力のうちのいずれか1つまたは任意の2つの組合せの関数にすることも可能である。
さらに、上記実施の形態では、加水停止後の実測値と無加水時のデータ値の比較・判別を燃料ラック量および燃料噴射圧力の双方について行ない、機関停止許可信号を、いずれかの実測値がデータ値に達したときに出力するようにしたが、双方の実測値がデータ値に達したとき出力して,より正確に無加水を判定するようにもでき、また、実測値とデータ値の比較・判別をいずれか一方のみについて行なうことも可能である。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の燃料油の加水装置を有するディーゼル機関の停止制御装置は、第1記憶手段に、軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数の関数としての機関出力のデータを記憶させ、第2記憶手段に、無加水燃料油を用いた運転時の燃料ラック量または燃料噴射圧力の関数としての機関出力のデータを記憶させる一方、停止指令信号を受けた算出手段により、加水装置を停止させ、かつその後の燃料油のみの供給による運転で検出される軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数に基づき、上記第1記憶手段のデータを参照して機関出力を算出するとともに、許可制御手段により、上記算出手段で算出された機関出力と等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量または燃料噴射圧力を上記第2記憶手段のデータから求め、燃料ラック量または燃料噴射圧力の求められたデータ値と検出値を比較して、検出値が減少してデータ値に達したとき、機関停止許可信号を出力するようにしているので、加水停止後に機関に供給される燃料油の無加水状態を自動的かつ確実に検出でき、機関停止許可信号出力時に燃料油の供給を停止すれば、残存燃料油からの水の分離を無くし、分離水による配管やシリンダの錆びや機関の再起動不良を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による停止制御装置の一例を備えたディーゼル機関を示す概略図である。
【図2】 上記停止制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】 上記停止制御装置の第2記憶手段に記憶された燃料ラック量−機関出力の関係データと実測燃料ラック量、および燃料噴射圧力−機関出力の関係データと実測燃料噴射圧力を示す図である。
【符号の説明】
1…エンジン本体、2…給気管、3…排気管、4…燃料供給系、5…過給機、
7…コンピュータ、8…燃料タンク、9…燃料送油配管、10…混合ミキサ、
11…送水管、12…水タンク、13…可変容量ポンプ、14…燃料流量発信器、15…トルクセンサ、16…給気圧力センサ、17…回転数センサ、
18…ラック目盛センサ、19…燃料噴射圧力センサ、S1…停止指令信号、
S2…機関停止許可信号。
Claims (1)
- 排気中の窒素酸化物濃度を低減すべく燃料油に所定量の水分を加える加水装置を有するディーゼル機関の停止制御装置において、
軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数の関数としての機関出力のデータを記憶する第1記憶手段と、
無加水燃料油を用いた運転時の燃料ラック量または燃料噴射圧力の関数としての機関出力のデータを記憶する第2記憶手段と、
停止指令信号を受けて上記加水装置を停止させるとともに、その後の運転状態で検出される軸トルク,燃料流量,給気圧力の少なくとも1つおよび機関回転数に基づき、上記第1記憶手段に記憶されたデータを参照して機関出力を算出する算出手段と、
この算出手段で算出された機関出力と等しい無加水燃料油運転の機関出力に対応する燃料ラック量または燃料噴射圧力を、上記第2記憶手段に記憶されたデータから求め、求めた燃料ラック量のデータ値と燃料ラック量の検出値,または求めた燃料噴射圧力のデータ値と燃料噴射量の検出値を比較して、検出値が減少してデータ値に達したとき、機関停止許可信号を出力する許可制御手段を備えたことを特徴とするディーゼル機関の停止制御装置。
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