JP3710266B2 - 最終追い込み位置推定方法およびそれを用いる曲げ加工方法並びに曲げ加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動金型と固定金型とにより板状のワークを挟圧して曲げ加工を行う際の駆動金型の最終追い込み位置推定方法およびその最終追い込み位置推定方法を用いた曲げ加工方法並びに曲げ加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プレスブレーキなどの曲げ加工機を用いて板状のワークのV曲げ加工を行う際には、ワークの塑性変形に関わる挙動が材料の特性値によって変化し、このためにたとえ同一材料であってもロット間でその特性値のばらつきによって曲げ角度が大きく変化してしまうことが知られている。このことから、駆動金型の最終追い込み位置を精度良く制御することは極めて困難であり、実際の曲げ加工においては、熟練のオペレータの勘に頼ることが多いのが実情であった。
【0003】
そこで、このような問題点に対処するために、曲げ工程中にワークの曲げ角度を検出し、この検出される曲げ角度に基づき駆動金型の最終追い込み位置を推定するようにしたプレスブレーキがいろいろと提案され、実用化されてきている。
【0004】
例えば特開平6−328136号公報にて提案されているものでは、曲げ工程の途中で一旦上下の金型を離間移動させて除荷し、その除荷の前後においてワークの曲げ角度を計測することによりワークのスプリングバック角度を求め、この求められるスプリングバック角度と、金型を離間移動させる前のワークの曲げ角度とから最終的な追い込み位置を推定するようにされている。
【0005】
また、例えば特開平7−265957号公報にて提案されているものでは、曲げ加工途中で金型がワークを加圧している状態でワークの曲げ角度を計測し、この計測結果に基づき、予め記憶されているワークの曲げ角度に対する追い込み量の関係およびワークの目標曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係から駆動金型の最終追い込み位置を演算するようにされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記前者(特開平6−328136号公報)の方法では、スプリングバック角度を計測するのに、曲げ工程の途中で一旦上下の金型を相対的に離間移動させるようにしているために、ワークが非対称形状の場合に、除荷時にワークが倒れて金型とワークとの接触点がずれる可能性があることから、何らかの手段でワークの倒れを防ぐ必要があるという問題点がある。
【0007】
一方、前記後者(特開平7−265957号公報)の方法によれば、加圧状態でワークの曲げ角度を計測していることから、前述のワークの倒れの問題を解消することはできる。しかし、この方法では、予め記憶されている追い込み量と曲げ角度との関係を補正するだけであるので、最終追い込み位置の推定精度が劣る場合がある。すなわち、図5に示されるように、駆動金型の追い込み量と曲げ角度との関係は曲げ加工されるワーク素材の機械的性質の代用特性であり、このワーク素材の変更により曲げ精度が大きな影響を受けることになる。したがって、予め記憶されている材料の機械的性質に近い材料の曲げ加工を行う場合には、この方法でも精度良く曲げ加工を行うことができるが、機械的性質が大きく異なる材料の場合には追い込み量と曲げ角度との関係が大きく異なることとなって、曲げ角度精度が悪くなる恐れがある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、材料のロット間での材料特性値にばらつきがあっても駆動金型の最終追い込み位置を精度良く推定することのできる最終追い込み位置推定方法を提供し、この最終追い込み位置推定方法に基づき極めて高い角度精度を有する曲げ加工を実現することのできる曲げ加工方法および曲げ加工装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述された目的を達成するために、第1発明による最終追い込み位置推定方法は、
駆動金型と固定金型とにより板状のワークを挟圧して曲げ加工を行う際の駆動金型の最終追い込み位置推定方法であって、
ワークの曲げ加工中に前記駆動金型の少なくとも2箇所の仮追い込み位置でワークの実曲げ角度を検出し、これら各仮追い込み位置に係る追い込み量の変化分と実曲げ角度の変化分との関係に基づき、予め記憶されている当該曲げ加工の加工条件におけるスプリングバックの挙動に関するデータを用いて前記駆動金型の最終追い込み位置を推定することを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、ワークの曲げ加工に際して、まず最初の仮追い込み位置まで駆動金型が駆動されてその位置でワークの実曲げ角度が検出され、この後次の仮追い込み位置まで更に駆動金型が駆動されてその位置で再度ワークの実曲げ角度が検出される。このようにして少なくとも2箇所の仮追い込み位置でワークの実曲げ角度が検出されると、これら各仮追い込み位置に対応する各追い込み量の変化分と各実曲げ角度の変化分との関係に基づいて、予め記憶されている当該曲げ加工の加工条件におけるスプリングバックの挙動に関するデータを用いて駆動金型の最終追い込み位置が推定される。本発明によれば、少なくとも2箇所の仮追い込み位置における各追い込み量の変化分と各実曲げ角度の変化分との関係に基づき、言い換えれば材料の機械的性質の代用特性値である追い込み量と曲げ角度との関係を考慮して、目標となる曲げ角度が得られる最終追い込み位置を曲線近似もしくは直線近似により求めるようにされているので、例えば材料のロット間での材料特性値にばらつきがあっても駆動金型の最終追い込み位置を精度良く推定することが可能である。
【0011】
次に、第2発明による曲げ加工方法は、
駆動金型と固定金型とにより板状のワークを挟圧して曲げ加工を行う曲げ加工方法において、
ワークの曲げ加工中に前記駆動金型の少なくとも2箇所の仮追い込み位置でワークの実曲げ角度を検出し、これら各仮追い込み位置に係る追い込み量の変化分と実曲げ角度の変化分との関係に基づき、予め記憶されている当該曲げ加工の加工条件におけるスプリングバックの挙動に関するデータを用いて前記駆動金型の最終追い込み位置を推定し、この推定された最終追い込み位置まで前記駆動金型を駆動することを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、前記第1発明による最終追い込み位置推定方法に基づいて駆動金型の最終追い込み位置が推定され、この推定される最終追い込み位置まで駆動金型が駆動されて曲げ加工が行われるので、極めて高精度の曲げ加工を実現することができる。
【0013】
さらに、前記第2発明による曲げ加工方法を具体的に実現するための第3発明による曲げ加工装置は、
駆動金型と固定金型とにより板状のワークを挟圧して曲げ加工を行う曲げ加工装置において、
(a)ワークの加工条件毎にワークの目標曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係を記憶する記憶手段、
(b)ワークの曲げ加工中の曲げ角度を検出する角度検出手段、
(c)前記駆動金型の少なくとも2箇所の仮追い込み位置にて前記角度検出手段により検出されるワークの実曲げ角度の変化分およびそれら各仮追い込み位置に係る追い込み量の変化分と、前記記憶手段に記憶されているワークの目標曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係から前記駆動金型の最終追い込み位置を演算する演算手段および
(d)前記駆動金型を前記仮追い込み位置まで駆動した後に前記最終追い込み位置まで駆動する金型駆動手段
を備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、予め記憶手段に、ワークの目標曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係が記憶されている。ワークの曲げ加工に際しては、まず金型駆動手段により最初の仮追い込み位置まで駆動金型が駆動されてその位置で角度検出手段によりワークの実曲げ角度が検出され、この後次の仮追い込み位置まで更に駆動金型が駆動されてその位置で再度ワークの実曲げ角度が検出される。このようにして少なくとも2箇所の仮追い込み位置でワークの実曲げ角度が検出されると、各仮追い込み位置に対応する各追い込み量の変化分と各実曲げ角度の変化分との関係に基づいて、予め記憶されているワークの目標曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係から前記駆動金型の最終追い込み位置が演算される。そして、この演算された最終追い込み位置まで駆動金型が駆動されて曲げ加工が終了する。こうして、少なくとも2箇所の角度検出位置にて検出される実曲げ角度に基づいて駆動金型の最終追い込み位置が推定されるので、前記第1発明と同様、材料のロット間での材料特性値にばらつきがある場合でも、最終追い込み位置を精度良く推定することができ、この最終追い込み位置に基づいて曲げ加工が実行されるので、極めて高精度の曲げ加工を実現することが可能となる。
【0015】
本発明において、前記少なくとも2箇所の仮追い込み位置は、前記記憶手段に記憶されているワークの曲げ角度に対する駆動金型の追い込み量の関係およびワークの曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係から演算され得る。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による最終追い込み位置推定方法およびそれを用いる曲げ加工方法並びに曲げ加工装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1には、本発明の一実施例に係る曲げ加工装置のシステム構成図が示されている。
【0018】
本実施例の曲げ加工装置(プレスブレーキ)においては、固定テーブル1上にダイベース2が固着されるとともに、このダイベース2上に下型3が取付けられ、この下型3に対向してその下型3に対し近接離隔するように昇降駆動されるラム4の下部に上型5が取付けられている。曲げ加工されるべき板状のワークWは下型3と上型5との間に挿入され、このワークWの端部をバックストップ装置6に突き当てた状態でラム4を下降させてそのワークWを下型3と上型5とで挟圧することによって、ワークWの曲げ加工が行われるようにされている。
【0019】
前記固定テーブル1の前部には、ワークWの曲げ工程中にそのワークWの曲げ角度を検出する角度検出ユニット7が設けられている。この角度検出ユニット7は、ワークWの折り曲げ外面にスリット光を投光する光源8と、この光源8によりワークWの外面に形成された線状投光像を撮像するCCDカメラ9とを含み、このCCDカメラ9により取り込まれた画像を画像処理することによってワークWの曲げ角度を検出するものである。なお、この角度検出ユニット7は固定テーブル1の前部だけでなく後部にも設けることができ、こうすることによって角度検出精度の向上を図ることができる。
【0020】
前記CCDカメラ9によって取り込まれた画像は図示されないモニターテレビに映し出されるとともに、画像データとして曲げ角度演算部10にて処理される。そして、この曲げ角度演算部10における演算によってワークWの曲げ角度が算出され、その演算結果がNC装置11に入力される。このNC装置11は、ワークWの曲げ条件(加工条件)毎のワークの目標曲げ角度に対する複数のスプリングバック角度の関係等を記憶する記憶手段12を備えるとともに、この記憶手段12に記憶されているデータと、ワークWの曲げ条件(材質,板厚,曲げ形状,金型形状,機械情報等)とに基づき上型5の仮の追い込み位置および最終追い込み位置(下死点)を演算する演算手段13を備えている。
【0021】
このような構成において、駆動金型である上型5の駆動制御、言い換えれば金型追い込み量の制御は図2に示されるようなフローチャートにしたがって次のように行われる。
【0022】
S1:予め入力されて記憶手段12に記憶されているワークWの曲げ条件(材質,板厚,曲げ形状,金型形状,機械情報等)を読み込む。
S2:ワークWの曲げ角度θに対する金型追い込み量Dの関係およびワークWの目標曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係からデフォルト(NC装置が有している初期値)の関係式を選択して上下両金型を近接移動させたときの仮追い込み位置、言い換えれば角度検出位置をn箇所(n≧2)演算する。なお、これら仮追い込み位置は、ワークWを曲げ過ぎない範囲で、少なくとも1箇所は目標曲げ角度にできるだけ近い位置であるのが望ましい。
【0023】
S3〜S5:オペレータによりワークWをセットして曲げ加工を開始し、n箇所の仮追い込み位置のうちの最初の仮追い込み位置まで上型5を下型3に対して近接移動させる。そして、この仮追い込み位置に到達すると、角度検出ユニット7によってワークWの曲げ角度を検出する。
S6:角度検出回数Nがnに達していない場合(N<n)には、第2の仮追い込み位置まで再度上型5を移動させ、この第2の仮追い込み位置にて再度ワークWの曲げ角度を検出する。なお、この処理はN=nになるまで繰り返し行う。
【0024】
S7:上述のn箇所の角度検出結果から、追い込み量の変化分d1 −d2 と実曲げ角度の変化分θ1 −θ2 を算出する(図3参照)。そして、予め記憶されている目標曲げ角度θT に対するスプリングバック角度θS の関係を用いて、目標曲げ角度θT が得られる最終追い込み位置(下死点)dT を求める。ここで、この最終追い込み位置dT を算出する際、角度検出位置(仮追い込み位置)が2箇所(n=2)の場合には、曲げ角度θに対する金型追い込み量Dの関係を示すグラフ(図3参照)上において、2つの検出値に基づきそれら2点を通る直線を求めることにより前記最終追い込み位置dT を求めることができる。また、角度検出位置(仮追い込み位置)が3箇所以上(n≧3)の場合には、3つ以上の検出値に基づき最小自乗法等の手法を用いて最終追い込み位置dT を求めることができる。
【0025】
S8:推定された最終追い込み位置dT に基づいて上型5をその位置まで再度駆動する。
S9:加工を終了してフローを終了する。
【0026】
このフローで示される処理は、毎回の曲げ工程毎に行われても良いが、材料ロットが変更される時等といった任意の工程でオペレータが補正操作を指示することもできる。
【0027】
図4には、本実施例の曲げ加工装置と従来の曲げ加工装置(特開平7−265957号公報に記載のもの)との曲げ加工精度の比較結果が示されている。この図から明らかに、本実施例のものの方が高精度の曲げ加工が可能であることがわかる。これは、材料の機械的性質の代用特性値である追い込み量と曲げ角度との関係を考慮して最終追い込み位置を決定していることによるものである。
【0028】
本実施例においては、曲げ角度を検出する角度検出手段として、スリット光を投光する光源と、線状投光像を撮像するCCDカメラとよりなる角度検出装置を用いるものを説明したが、この角度検出手段としては、他に、静電容量式のも の、光電式のもの、接触式のものなどいろいろなタイプのものを採用することができる。
【0029】
本実施例では、下型(ダイ)を固定式のものとして上型(パンチ)を駆動させる所謂オーバードライブタイプのプレスブレーキに適用したものを説明したが、本発明は、上型を固定式にして下型を駆動させる所謂アンダードライブタイプのプレスブレーキに対して適用できるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る曲げ加工装置のシステム構成図である。
【図2】図2は、金型追い込み量の制御フローを示すフローチャートである。
【図3】図3は、曲げ角度に対する追い込み量の関係を示すグラフである。
【図4】図4は、本実施例の効果を説明する図である。
【図5】図5は、曲げ角度と追い込み量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 固定テーブル
2 ダイベース
3 下型
4 ラム
5 上型
6 バックストップ装置
7 角度検出ユニット
8 光源
9 CCDカメラ
10 曲げ角度演算部
11 NC装置
12 記憶手段
13 演算手段
W ワーク
Claims (4)
- 駆動金型と固定金型とにより板状のワークを挟圧して曲げ加工を行う際の駆動金型の最終追い込み位置推定方法であって、
ワークの曲げ加工中に前記駆動金型の少なくとも2箇所の仮追い込み位置でワークの実曲げ角度を検出し、これら各仮追い込み位置に係る追い込み量の変化分と実曲げ角度の変化分との関係に基づき、予め記憶されている当該曲げ加工の加工条件におけるスプリングバックの挙動に関するデータを用いて前記駆動金型の最終追い込み位置を推定することを特徴とする最終追い込み位置推定方法。 - 駆動金型と固定金型とにより板状のワークを挟圧して曲げ加工を行う曲げ加工方法において、
ワークの曲げ加工中に前記駆動金型の少なくとも2箇所の仮追い込み位置でワークの実曲げ角度を検出し、これら各仮追い込み位置に係る追い込み量の変化分と実曲げ角度の変化分との関係に基づき、予め記憶されている当該曲げ加工の加工条件におけるスプリングバックの挙動に関するデータを用いて前記駆動金型の最終追い込み位置を推定し、この推定された最終追い込み位置まで前記駆動金型を駆動することを特徴とする曲げ加工方法。 - 駆動金型と固定金型とにより板状のワークを挟圧して曲げ加工を行う曲げ加工装置において、
(a)ワークの加工条件毎にワークの目標曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係を記憶する記憶手段、
(b)ワークの曲げ加工中の曲げ角度を検出する角度検出手段、
(c)前記駆動金型の少なくとも2箇所の仮追い込み位置にて前記角度検出手段により検出されるワークの実曲げ角度の変化分およびそれら各仮追い込み位置に係る追い込み量の変化分と、前記記憶手段に記憶されているワークの目標曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係から前記駆動金型の最終追い込み位置を演算する演算手段および
(d)前記駆動金型を前記仮追い込み位置まで駆動した後に前記最終追い込み位置まで駆動する金型駆動手段
を備えることを特徴とする曲げ加工装置。 - 前記少なくとも2箇所の仮追い込み位置は、前記記憶手段に記憶されているワークの曲げ角度に対する駆動金型の追い込み量の関係およびワークの曲げ角度に対するスプリングバック角度の関係から演算されるものである請求項3に記載の曲げ加工装置。
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