JP3709934B2 - 内燃機関用点火コイル - Google Patents

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Description

【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用点火コイルに関し、特にプラグホールに直接搭載するスティック状の内燃機関用点火コイルに関する。
【従来の技術】
【0002】
従来のスティック状の内燃機関用点火コイル(以下、「点火コイル」という)の高圧ターミナル側を図9に示す。二次コイル600は端部に鍔部603を有する二次スプールに巻回されており、二次スプールの高電圧側端部に二次コイル600に発生する高電圧を取り出す高圧ターミナルとしての二次ターミナル602が配設されている。二次スプールの内周にはコアが収容されている。通常、コアは二次コイル600の二次ターミナル側端部よりも突出しており、図9に示すように二次コイル600と二次ターミナル602との間に離隔部604が形成されている。また、コアの端部に磁石を配設するものではこの離隔部604がさらに長くなる。
二次コイル600の終端から離隔部604を通って取り出された単線601により二次コイル600の高電圧側と二次ターミナル602とは電気的に接続されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図9に示すようなスティック状の点火コイルは径が小さいため、低電圧側の一次コイル、コア、エンジンブロック等と高電圧が加わる単線601とが近接している。さらに、低電圧側と対向する単線601の対向面積が微小であるため単線601付近の電界の強さが大きくなる。ここで、二次コイル600に高電圧が発生すると単線601と低電圧側との間で絶縁破壊が生じる恐れがある。点火コイルの高電圧側と低電圧側との間で絶縁破壊が発生すると図示しない点火プラグに高電圧を供給できなくなるという問題がある。
【0004】
特に、絶縁材として樹脂を充填した点火コイルでは、放電により高電圧側の単線部分から絶縁劣化部であるトリー(tree)が発生し、このトリーが成長し低電圧側に到達することがある。トリーが高電圧側の単線と低電圧側とを連結すると絶縁材としての樹脂の効果がなくなるので、高電圧を点火プラグに供給できなくなるという問題を生じる。
本発明の目的は、高電圧側と低電圧側との間の絶縁破壊を防止し、信頼性の高い点火コイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1および2記載の点火コイルによると、二次コイルと高圧ターミナルとを電気的に接続する接続部としてダミーコイルまたは二次コイル側にカップ状に延びた高圧ターミナルを採用し、この接続部と低電圧側との間の絶縁破壊を防止する程度に低電圧側と対向する対向面積を有している。つまり、低電圧側と対向する対向面積が絶縁破壊を防止するのに十分な大きい面積となるように形成されている。これにより、接続部付近の電界の強さが弱まるので、接続部と低電圧側との間で放電が生じることを防止できる。したがって、点火コイルの信頼性を保証することができる。
【0006】
また本発明の請求項1記載の点火コイルによると、高圧ターミナル側に二次コイルを巻き延ばしたダミーコイルにより、低電圧側と対向する接続部の面積を増加している。したがって、二次コイルを巻回する工程において接続部の面積を増加できるので、別工程を設けることなく点火コイルの高電圧側と低電圧側との間の絶縁破壊を簡単に防止できる。
本発明の請求項2記載の点火コイルによると、低電圧側と対向する高圧ターミナルの対向面積を容易に増加することができる。
【0007】
本発明の請求項記載の点火コイルによると、二次コイルと高圧ターミナルとを電気的に接続する接続部の近傍または接続部を覆うように導電テープを配設し、低電圧側と対向する導電テープの対向面積が接続部と低電圧側との絶縁破壊を防止する程度に形成されていることにより、表面積の微小な接続部が直接低電圧側と対向していても接続部付近の電界の強さが弱まるので、接続部と低電圧側との間で放電が生じることを防止できる。したがって、点火コイルの信頼性を保証することができる。
【0008】
本発明の請求項記載の点火コイルによると、絶縁材として用いられる樹脂にトリーが発生することを防止し、高電圧側と低電圧側との間の絶縁破壊を防止することにより、点火コイル内の各導電部品間を良好に絶縁することができる。
本発明の請求項記載の点火コイルによると、二次コイルの高電圧側、接続部または高圧ターミナルから低電圧側に向けてトリーが成長してきても、トリーの進路が一次スプールにより遮られトリーが一次スプールに沿って迂回して成長する。したがって、トリーの発生を防止するとともに、トリーが発生したとしてもトリーが高電圧側から低電圧側に達するまでに要する時間が長くなるので、点火コイルの寿命が延びる。
【0009】
本発明の請求項記載の点火コイルによると、高圧ターミナルから低電圧側の補助コアに向けてトリーが成長してきても、トリーの進路が一次スプールにより遮られトリーが一次スプールに沿って迂回して成長する。したがって、トリーの発生を防止するとともに、トリーが発生したとしてもトリーが高電圧側から低電圧側に達するまでに要する時間が長くなるので、点火コイルの寿命が延びる。
【0010】
以下、本発明の実施の形態を示す複数の実施例について図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
本発明の第1実施例による点火コイルを図1および図2に示す。
図1に示す点火コイル2は、図示しないエンジンブロックの上部に気筒毎に形成されたプラグホール内に収容され、図示しない点火プラグと図1の下側で電気的に接続している。
【0011】
点火コイル2は、主に円筒状のトランス部5と、このトランス部5の図1の上方、つまり反点火プラグ側端部に位置しトランス部5の一次電流を遮断する制御回路部7と、トランス部5の図1の下方、つまり点火プラグ側端部に位置しトランス部5の二次電圧を図示しない点火プラグに供給するプラグ結合部6とから構成されている。
【0012】
点火コイル2は、樹脂材料からなる円筒状のケース100を備えており、このケース100の内側に形成されている収容室102に高電圧発生用のトランス部5および制御回路部7が収容されている。トランス部5および制御回路部7の周囲を満たすようにエポキシ樹脂29が収容室102に充填されている。
制御信号入力用コネクタ9はコネクタハウジング18とコネクタピン19とから構成され、収容室102の上端部に設けられている。コネクタハウジング18はケース100と一体成形されており、このコネクタハウジング18内に位置する三本のコネクタピン19がケース100を貫通し外部と接続可能にコネクタハウジング18にインサート成形されている。
【0013】
収容室102の下端部はカップ15により閉塞されている。導電部材としての金属製のカップ15はケース100の樹脂材料中にインサート成形されており、カップ15の外周壁はケース100の下端に位置する筒部105に覆われている。収容室102とプラグ結合部6とはカップ15により液密に区画されている。プラグ結合部6の開口端にはゴムからなるプラグキャップ13が装着されており、このプラグ結合部6に図示しない点火プラグが収容される。
【0014】
図1の下方側からカップ15の底部に係止されているスプリング17は圧縮コイルスプリングからなり、プラグ結合部6内に挿入される点火プラグの電極部がスプリング17の下端部に電気的に接触するようになっている。
トランス部5は、軸中心から径方向外側に向けて順に、コアとしての鉄心502、二次スプール510、二次コイル512、一次スプール514、一次コイル516で構成され、鉄心502のそれぞれ軸方向両端に磁石504、506が配設されている。鉄心502、磁石504、506は電気的に導電体と接続していない状態、所謂浮遊した状態にある。
【0015】
円柱状の鉄心502は、薄い珪素鋼板を断面がほぼ円形となるように重ねて組立てられている。この鉄心502の両端には、コイルにより励磁されて発生する磁束の方向とは逆方向の極性を有する磁石504、506がそれぞれ鉄心502の両端に装着されている。
樹脂成形される二次スプール510は、一方の端部に鍔部510a、他方の端部に鍔部510b、510cを有する有底円筒状に成形されており、鍔部510a、510b側の底部により下端部がほぼ閉塞されている。この二次スプール510の底部内部には、前記鉄心502と磁石506とが収容されている。二次スプール510の図1の上方に鍔部510a、下方に鍔部510b、510cがそれぞれ形成されており、二次スプール510の外周の鍔部510aと鍔部510bとの間に二次コイル512が巻回されている。
【0016】
高圧ターミナルとしてのターミナルプレート34は鍔部510b、510c側の底部外壁に固定されている。二次コイル512とターミナルプレート34とは後述するダミーコイル513により電気的に接続されている。ダミーコイル513とターミナルプレート34とはフュージングやはんだ付け等で電気的に接続されている。ターミナルプレート34の図2に示す爪34aにカップ15とターミナルプレート34とを電気的に接続する高圧ターミナルとしてのターミナル27が係止されている。二次コイル512に誘起された高電圧は、ダミーコイル513、ターミナルプレート34、ターミナル27、カップ15、スプリング17を経由して点火プラグの電極部に供給される。ターミナル27の一部およびターミナルプレート34はエポキシ樹脂29に露出している。
【0017】
図1では鉄心502と二次コイル512のターミナルプレート側端面はほぼ同一平面上にあるように示されているが、実際には鉄心502の端部がターミナルプレート側に突出している。さらに、鉄心502の図1の下方に磁石506が配設されているので、二次コイル512とターミナルプレート34との間は離隔している。この離隔部520に接続部としてのダミーコイル513が巻回されている。ダミーコイル513は二次コイル512の巻き終わりから引続いて鍔部510bと鍔部510cとの間に巻回され、二次コイル512とターミナルプレート34とを電気的に接続している。
【0018】
樹脂成形される一次スプール514は、両端部に鍔部を有する有底円筒状に成形されており、蓋部514aにより上端部がほぼ閉塞されている。この一次スプール514の外周に一次コイル516が巻回されている。
一次スプール514は二次スプール510に巻回された二次コイル512を覆うように設けられており、二次スプール510の高電圧側において一次スプール514の端部514aは二次スプール510の端部510eよりも軸方向に長く延びて形成されている。さらに、一次スプール514はターミナルプレート34がエポキシ樹脂29に露出している部分およびターミナル27の外周を覆っている。また、エポキシ樹脂29に露出している高圧ターミナルとしてのターミナル27およびターミナルプレート34の高電圧側外周端部、つまり点火コイル2の軸方向点火プラグ側のターミナル27およびターミナルプレート34の外周端部と補助コア508の内周端部との最短距離を結ぶ直線を越して一次スプール514の端部が位置している。一次スプール514の蓋部514aと二次スプール510の鍔部510c側底部との間に、両端に磁石504、506を備えた鉄心502が挟持されている。
【0019】
一次スプール514の蓋部514aには、一次コイル516の両端と二次コイル512の一端とが接続される複数のターミナルが保持されている。この複数のターミナルには、コネクタ9のコネクタピン19および制御回路部7が電気的に接続されている。蓋部514aの上に保持されている制御回路部7から複数のリードが引出され、これらのリードがコネクタピン19および前記複数のターミナルにはんだ付されている。
【0020】
一次スプール514のさらに外側には、補助コア508が装着されている。補助コア508は、薄い珪素鋼板を筒状に巻回し巻回開始端と巻回終了端とを接続しないことから軸方向に隙間を形成している。補助コア508は磁石504の外周位置から磁石506の外周位置にわたる軸方向長さを有する。
エポキシ樹脂29はトランス部5および制御回路部7が収容されている収容室102内に充填されている。エポキシ樹脂29は、一次スプール514の下側開口端、蓋部514aのほぼ中央部に開設された開口514b、二次スプール510の上側開口端および鍔部510bに形成された開口510dを通して侵入し、鉄心502、二次コイル512、一次コイル516、補助コア508等の間の電気絶縁を確実なものとしている。
【0021】
以上の構成を有する点火コイル2において、一次コイル側に一次電流を供給し、制御回路部7で一次電流を遮断すると二次コイル512に高電圧が発生する。第1実施例では、二次コイル512とターミナルプレート34とを接続するダミーコイル513の外周が図2に示すように全体として円筒状を呈している。したがって、近接する一次コイル516、補助コア508、エンジンブロック等の低電圧側と対向するダミーコイル513全体としての対向面積が大きくなるので、高電圧の加わるダミーコイル513付近の電界の強さが弱められる。したがって、ダミーコイル513に高電圧が加わってもダミーコイル513と低電圧側との間で放電が起こらず、エポキシ樹脂29に放電によるトリーが発生しない。したがって、ダミーコイル513と低電圧側との絶縁が良好に保持され、点火コイル2の信頼性を保持することができる。
【0022】
また、鉄心502、磁石504、506は電気的に浮遊した状態にあるので、二次コイル512に高電圧が発生すると、鉄心502、磁石504、506に誘導電位が発生する。したがって、鉄心502、磁石504、506と二次コイル512との電位差は二次コイル512と補助コア508との電位差よりも小さいので、トリーが発生しにくい。
また、二次コイル512を巻回する工程の延長で接続部としてのダミーコイル513を巻回できるので、工程数を増やすことなく低電圧側と対向する接続部の対向面積を容易に増加することができる。
【0023】
また、二次コイル512、ダミーコイル513、ターミナル27およびターミナルプレート34とエポキシ樹脂29とは熱膨張率が異なるので、点火コイル2の周囲温度が変化し各部材が膨張および収縮を繰り返すと二次コイル512、ダミーコイル513、ターミナル27およびターミナルプレート34と接するエポキシ樹脂29にクラック(crack) が発生することがある。ターミナル27またはターミナルプレート34に鋭角な角部があるとこの角部に接するエポキシ樹脂29にクラックが発生し易い。クラックが形成されるとクラックの形成箇所において放電が発生し易くなるので、トリーが成長する恐れがある。
【0024】
第1実施例では、二次コイル512の高電圧側、ダミーコイル513、ターミナル27およびターミナルプレート34等の高電圧側を一次スプール514が覆うとともに、エポキシ樹脂29に露出している高圧ターミナルとしてのターミナル27およびターミナルプレート34の高電圧側外周端部と補助コア508の内周端部との最短距離を結ぶ直線を越して一次スプール514の端部が位置していることにより、高電圧側から低電圧側の補助コア508に向けてエポキシ樹脂29中を成長してきたトリーが一次スプール514に達すると、誘電率の異なるエポキシ樹脂29と一次スプール514との境界面に沿ってトリーの進路が曲がる。一次スプール514に進路を遮られ一次スプール514とエポキシ樹脂29との境界面に沿ってトリーの進路が迂回するので、トリーが低電圧側の補助コア508に達するまでに要する時間、つまり絶縁破壊に要する時間が長くなる。これにより、点火コイル2の寿命が長くなる。
【0025】
以上説明した第1実施例では、二次コイルの外周に一次コイルを配設したが、一次コイルの外周に二次コイルを配設することも可能である。また、第1実施例ではケース100内に制御回路部7を収容した構成について説明したが、コイルケース内に制御回路部をもたない点火コイルとしてもい。
【0026】
(第2実施例)
本発明の第2実施例による点火コイルを図3および図4に示す。
二次コイル512と二次ターミナル530とは二次コイル512から取り出した接続部としての単線512aにより電気的に接続されている。二次ターミナル530の底部530aと接続する単線512aの先端は被覆が剥がされている。二次ターミナル530は、高圧ターミナルとしての円板状の底部530a、および底部530aの外周全体から二次コイル512に向けて鍔部521aまで延びる円筒部530bからなるカップ状に形成されている。離隔部520に位置する導電部材としての円筒部530bは単線512aを取り囲んでおり、単線512aと円筒部530bとの電位はほぼ等しい。
【0027】
第2実施例では、二次コイル512と高圧ターミナルとしての底部530aとを電気的に接続する単線512aが低電圧側と対向する対向面積は微小であるが、単線512aの周囲を導電部材としての円筒部530bが取り囲んでいるので、低電圧側と対向するのは円筒部530bになる。低電圧側との対向面積が単線512aに比べ遙に大きい円筒部530b付近の電界の強さは弱いので、円筒部530bと低電圧側との間で絶縁破壊が生じない。
また、二次ターミナル530は剛性を有する材質で形成されるので、離隔部520内部の形状に関わらず単線512aを含む離隔部520を容易に覆うことができる。
【0028】
(第3実施例)
本発明の第3実施例による点火コイルを図5に示す。
二次ターミナル535は、円板状の底部535aと底部535aの外周の一部から二次コイル512に向けて延びる一つの板状の爪部535bとからなり、高圧ターミナルとしての底部535aと二次コイル512とは二次コイルから取り出した図示しない単線により電気的に接続されている。導電部材としての爪部535bは所定幅の板状に形成されている。爪部535bは単線と低電圧側との間を覆うように配置することが望ましいが、単線の近傍であれば単線と周方向の位置がずれていてもよい。
【0029】
第3実施例では、高圧ターミナルとしての底部535aの外周の一部から延びる板状の爪部535bにより、単線を含む離隔部520に位置する点火コイルの高電圧側が低電圧側と対向する対向面積を大きくすることができる。したがって、単線と爪部535bとの周方向の位置がずれている場合でも、単線付近の電界の強さが弱められるので、点火コイルの高電圧側と低電圧側との間で絶縁破壊が生じることを防止できる。
また第3実施例では、板状に形成した二次ターミナルを折り曲げ加工により容易に形成できるので、第2実施例のカップ状の二次ターミナルに比較して製造コストを低減できる。
【0030】
(第4実施例)
本発明の第4実施例による点火コイルを図6に示す。
二次ターミナル545は、円板状の底部540aと底部540aの外周の一部から二次コイル512に向けて延びる複数の爪部540bとからなり、高圧ターミナルとしての底部540aと二次コイル512とは二次コイルから取り出した図示しない単線により電気的に接続されている。
【0031】
第4実施例では、導電部材としての爪部540bの数を第3実施例よりも増やしたので、単線を含む離隔部520に位置する点火コイルの高電圧側が低電圧側と対向する対向面積を大きくすることができる。したがって、単線と爪部540bとの周方向の位置がずれている場合でも、単線付近の電界の強さが弱められるので、点火コイルの高電圧側と低電圧側との間で絶縁破壊が生じることを防止できる。
【0032】
以上説明した第2、第3および第4実施例では、高圧ターミナルと二次コイル512とを二次コイル512から取り出した単線で電気的に接続し、この単線を覆うかまたは単線と周方向にずれた位置に高圧ターミナルの少なくとも一部を導電部材として延ばしたが、単線部分を殆ど用いず、高圧ターミナルを接続部として延長して二次コイル512と高圧ターミナルとを電気的に接続することも可能である。
(第5実施例)
【0033】
本発明の第5実施例による点火コイルを図7に示す。
高圧ターミナルとしてのターミナルプレート545は円板状に形成されており、ターミナルプレート545と二次コイル512とは二次コイルから取り出した図示しない単線により電気的に接続されている。
導電部材としての導電テープ550は、導電材質で形成された薄膜であり、離隔部520の外周を覆っている。導電テープ550は、二次コイル512およびターミナルプレート545と二次スプール521により絶縁されている。
【0034】
二次コイル512およびターミナルプレート545と絶縁された導電テープ550には単線よりも僅かに低い電位が発生する。二次コイル512と高圧ターミナルとしてのターミナルプレート545とを電気的に接続する単線が低電圧側と対向する対向面積は微小であるが、単線の周囲を導電部材としての導電テープ550が覆っているので、低電圧側と対向するのは単線ではなく導電テープ550になる。低電圧側との対向面積が単線に比べ遙に大きい導電テープ550付近の電界の強さは弱いので、導電テープ550と低電圧側との間で絶縁破壊は生じない。
第5実施例の導電テープ550は、ターミナルプレート545と接続するように離隔部520を覆ってもよい。
【0035】
(第6実施例)
本発明の第6実施例による点火コイルを図8に示す。第6実施例の点火コイル3は、点火コイル3内に制御回路部をもたない構成である。
一次スプール562は二次コイル512を覆うように設けられており、二次スプール560の高電圧側において一次スプール562の端部562aは二次スプール560の端部560aよりも軸方向に長く延びて形成されている。さらに、一次スプール562は高圧ターミナルとしてのターミナル570およびターミナルプレート571がエポキシ樹脂29に露出している部分を覆っている。
一次スプール562はエポキシ樹脂29と接着力の高い、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PS(ポリスチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂材で成形されている。
【0036】
クラック等の形成箇所からトリーが成長し、高電圧側から低電圧側の補助コア508に向けてエポキシ樹脂29中を成長してきたトリーが一次スプール562に達すると、誘電率の異なるエポキシ樹脂29と一次スプール562との境界面に沿ってトリーの進路が曲がる。もしも、エポキシ樹脂29と一次スプール562との接着力が弱く温度変化に伴う膨張、収縮によりエポキシ樹脂29と一次スプール562とが部分的に剥離していると、剥離の長さ分だけトリーの成長時間が短縮される。しかしながら第6実施例では、エポキシ樹脂29と接着力の高い材質で一次スプール562を成形しているので、エポキシ樹脂29と一次スプール562との間に剥離が生じることを抑制している。これにより、クラック等の形成箇所からトリーが成長して一次スプール562に達しても、エポキシ樹脂29と一次スプール562との間に剥離が生じないので、一次スプール562を迂回する分だけトリーが低電圧側に達するまでに要する時間が確実に長くなり、絶縁破壊に要する時間が長くなる。したがって、点火コイル3の寿命が延びる。
【0037】
また、鉄心502、磁石504、506の外周を絶縁材としてゴム材572で覆っているので、鉄心502、磁石504、506の外周に充填されたエポキシ樹脂29に温度変化に伴う膨張、収縮によりクラックが発生することを防止する。これにより、高電圧側から鉄心502にトリーが成長することも防止できる。
なお、第6実施例の点火コイル3はコイルケース内に制御回路部をもたない構成であるが、第1実施例のようにコイルケース内に制御回路部をもつ構成としてもよい。
以上説明した上記複数の実施例では、点火コイルに充填する絶縁材として樹脂を用いたが、絶縁材として絶縁油を用いてもよい。
【0038】
また、以上説明した上記複数の実施例以外に本発明の点火コイルとして、以下の(1)から(4)のいずれかの構成を採用することは可能である。
(1)棒状のコアと、
前記コアの外周に配設された二次コイルと、
前記二次コイルを巻回した二次スプールと、
前記二次コイルの外周側に配設された一次コイルと、
前記二次コイルの外周側に配設され、前記一次コイルを巻回した一次スプールと、
前記二次コイルに発生する高電圧を取り出す高圧ターミナルとを備えた点火コイルであって、
点火コイルのハウジング内に絶縁材として樹脂を充填し、前記二次コイルの高電圧側において、前記一次スプールの端部は前記二次コイルの端部よりも長く延び、かつ前記一次スプールは前記絶縁材に露出した前記高圧ターミナルの外周を覆っている。
【0039】
この構成の点火コイルによると、二次コイルの高電圧側または高圧ターミナルから低電圧側に向けてトリーが成長してきても、トリーの進路が一次スプールにより遮られトリーが一次スプールに沿って迂回して成長する。したがって、トリーが発生してもトリーが高電圧側から低電圧側に達するまでに要する時間が長くなるので、点火コイルの寿命が延びる。
【0040】
(2)棒状のコアと、
前記コアの外周側に配設された二次コイルと、
前記二次コイルを巻回した二次スプールと、
前記二次コイルの外周側に配設された一次コイルと、
前記二次コイルの外周側に配設され、前記一次コイルを巻回した一次スプールと、
前記一次コイルの外周側に配設された補助コアと、
前記二次コイルに発生する高電圧を取り出す高圧ターミナルとを備えた点火コイルであって、
点火コイルのハウジング内に絶縁材として樹脂を充填し、前記二次コイルの高電圧側において、前記一次スプールの端部は前記絶縁材に露出した前記高圧ターミナルの高電圧側外周端部と前記補助コアの内周端部との最短距離を結ぶ直線を越えて位置している。
【0041】
この構成の点火コイルによると、高圧ターミナルから低電圧側の補助コアに向けてトリーが成長してきても、トリーの進路が一次スプールにより遮られトリーが一次スプールに沿って迂回して成長する。したがって、トリーが発生してもトリーが高電圧側から低電圧側に達するまでに要する時間が長くなるので、点火コイルの寿命が延びる。
【0042】
(3)上記(1)または(2)の構成において、前記一次スプールは前記絶縁材との接着性に優れている。
トリーが一次スプールに沿って成長する場合、温度変化等により一次スプールと絶縁材との間に剥離が生じていると、剥離の長さ分だけトリーの成長時間が短縮される。(3)に記載した構成の点火コイルによると、一次スプールが絶縁材として用いられる樹脂との接着性に優れた材質で成形されているので、一次スプールと絶縁材との間に剥離が生じることを抑制できる。したがって、トリーが高電圧側から低電圧側に達するまでに要する時間が長くなるので、点火コイルの寿命が延びる。
【0043】
(4)上記(1)、(2)または(3)の構成において、前記コアの前記高圧ターミナル側端部に磁石を配設する。
この構成の点火コイルによると、コアの高圧ターミナル側に磁石を配設し、二次コイルと高圧ターミナルとの距離が広がりやすく低電圧側と対向する部分が多くなることにより絶縁破壊を起こしやすくなる点火コイルにおいて、特に有効に低電圧側と高電圧側との間の絶縁破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による点火コイルを示す断面図である。
【図2】第1実施例の二次コイルと二次ターミナルを示す斜視図である。
【図3】本発明の第2実施例による二次コイルと二次ターミナルを示す斜視図である。
【図4】図3に示す部分の断面図である。
【図5】本発明の第3実施例による二次コイルと二次ターミナルを示す斜視図である。
【図6】本発明の第4実施例による二次コイルと二次ターミナルを示す斜視図である。
【図7】本発明の第5実施例による二次コイルと二次ターミナルを示す斜視図である。
【図8】本発明の第6実施例による点火コイルを示す断面図である。
【図9】従来の二次コイルと二次ターミナルを示す斜視図である。
【符号の説明】
2 点火コイル
5 トランス部
6 プラグ結合部
27 ターミナル(高圧ターミナル)
29 エポキシ樹脂
34 ターミナルプレート(高圧ターミナル)
100 ケース(ハウジング)
502 鉄心(コア)
504、506 磁石
508 補助コア
510 二次スプール
512 二次コイル
512a 単線(接続部)
513 ダミーコイル(接続部)
514 一次スプール
516 一次コイル
520 離隔部
530 二次ターミナル
530a 底部(高圧ターミナル)
530b 円筒部(導電部材)
535、540 二次ターミナル
535a、540a 底部(高圧ターミナル)
535b、540b 爪部(導電部材)
550 導電テープ(導電部材)
560 二次スプール
562 一次スプール
570 ターミナル(高圧ターミナル)
571 ターミナルプレート(高圧ターミナル)

Claims (7)

  1. 棒状のコアと、
    前記コアの外周に巻回された一次コイルおよび二次コイルと、
    前記二次コイルと離隔して配設され前記二次コイルに発生する高電圧を取り出す高圧ターミナルと、
    前記二次コイルと前記高圧ターミナルとの間に互いに離隔して設置された鍔部と、
    前記高圧ターミナル側に前記二次コイルを巻き延ばして前記両鍔部の間に巻回され、前記二次コイルと前記高圧ターミナルとを電気的に接続するダミーコイルとを備え、
    前記ダミーコイルは、低電圧側と前記ダミーコイルとの間の絶縁破壊を防止する程度に低電圧側と対向する対向面積を有することを特徴とする内燃機関用点火コイル。
  2. 棒状のコアと、
    前記コアの外周に巻回された一次コイルおよび二次コイルと、
    前記二次コイルと離隔して配設され前記二次コイルに発生する高電圧を取り出す高圧ターミナルと、
    前記二次コイルと前記高圧ターミナルとを電気的に接続する接続部とを備え、
    前記高圧ターミナルは、前記接続部を覆うように前記二次コイル側にカップ状に延ばして形成されており、低電圧側と前記接続部との間の絶縁破壊を防止する程度に低電圧側と対向する対向面積を有することを特徴とする内燃機関用点火コイル。
  3. 棒状のコアと、
    前記コアの外周に巻回された一次コイルおよび二次コイルと、
    前記二次コイルと離隔して配設され前記二次コイルに発生する高電圧を取り出す高圧ターミナルと、
    前記二次コイルと前記高圧ターミナルとを電気的に接続する接続部とを備え、
    前記高圧ターミナルは、前記接続部を覆うように前記二次コイル側に爪状に延ばして形成されており、低電圧側と前記接続部との間の絶縁破壊を防止する程度に低電圧側と対向する対向面積を有することを特徴とする内燃機関用点火コイル。
  4. 棒状のコアと、
    前記コアの外周に巻回された一次コイルおよび二次コイルと、
    前記二次コイルと離隔して配設され前記二次コイルに発生する高電圧を取り出す高圧ターミナルと、
    前記二次コイルと前記高圧ターミナルとを電気的に接続する接続部と、
    前記二次コイルおよび前記高圧ターミナルと絶縁され、前記二次コイルと前記高圧ターミナルとの間に前記接続部を覆うように配設された導電テープとを備え、
    前記導電テープは、低電圧側と前記接続部との間の絶縁破壊を防止する程度に低電圧側と対向する対向面積を有することを特徴とする内燃機関用点火コイル。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項記載の内燃機関用点火コイルのハウジング内に絶縁材として樹脂を充填することを特徴とする内燃機関用点火コイル。
  6. 前記二次コイルを巻回した二次スプールと、前記二次コイルの外周側に配設され前記一次コイルを巻回した一次スプールとを備え、
    前記二次コイルの高電圧側において、前記一次スプールの端部は前記二次コイルの端部よりも長く延び、かつ前記一次スプールは前記絶縁材に露出した前記高圧ターミナルの外周を覆っていることを特徴とする請求項5記載の内燃機関用点火コイル。
  7. 前記二次コイルの外周側に配設され前記一次コイルを巻回した一次スプールと、前記一次コイルの外周側に配設された補助コアとを備え、
    前記二次コイルの高電圧側において、前記一次スプールの端部は前記絶縁材に露出した前記高圧ターミナルの高電圧側外周端部と前記補助コアの内周端部との最短距離を結ぶ直線を越えて位置していることを特徴とする請求項5記載の内燃機関用点火コイル。
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