JP3707510B2 - 光走査装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザービームプリンターなどに用いられる光走査装置に関するもので、特に回転多面鏡の反射面に光ビームが2度入射する光学系を用いた光走査装置の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザービームプリンターなど画像記録装置や、各種画像読込み、測定装置に用いられる光走査装置においては、光ビームを偏向走査する偏向器として回転多面鏡が多く用いられてきた。
【0003】
これらの装置においては光ビームを被走査面上において、直線あるいは曲線上を光走査装置によって繰り返し走査し、被走査面に位置する被走査媒体を前記の走査方向とはおおむね直交方向に相対移動させ2次元の走査を行う。なお、前者の光走査装置による走査方向を「主走査方向」とし、後者の被走査媒体の相対移動方向を「副走査方向」と定義する。
【0004】
近年、上記の装置においては解像度や処理速度の向上のため、より高速の光走査装置が求められるようになってきている。光ビームの偏向に回転多面鏡を用いた光走査装置では、走査速度(走査周波数)を上げるためには、
(1)回転多面鏡の回転数を上げる
(2)回転多面鏡の面数を増加させる
の2つの方法が考えられる。
【0005】
回転多面鏡の回転数を上げるためには、高速回転可能な軸受が必要になるが、現在最も多く用いられているボールベアリングでは毎分20000回転程度が上限となる。エアベアリングを用いれば毎分30000回転以上の回転数で使用可能であるが、軸受が高価なため使用できる装置が限られる。特に、一般消費者向けの安価なレーザービームプリンターなどには使えない。
【0006】
一方、回転多面鏡の面数を増加させると、1つの反射面当りの回転角度が小さくなってしまう。また、個々の反射面の大きさを一定以上確保しようとすると、回転多面鏡の直径が大きくなってしまう。
【0007】
光走査装置では被走査面上に光ビームを結像させて用いるが、レーザービームを走査する場合、小さなスポットに結像させるには、光ビームの拡がり角に応じて回転多面鏡の反射面は主走査方向にある一定の大きさが必要である。ところが、回転多面鏡の面数を増加させた場合、1つの反射面での回転角度が小さいため光ビームの走査角も小さくなる。光ビームの走査角が小さいと、所定の走査幅を得るためには走査光学系の焦点距離が長くなり、回転多面鏡から被走査面までの光路長も伸びる。このため、回転多面鏡の反射面上での光ビームの主走査方向の直径も大きくなり、面数が少ない場合に比べてより反射面が大きくなり、さらに一層回転多面鏡の大きさが増加する。
【0008】
すなわち回転多面鏡の面数が増加するに従って、必要な反射面の大きさは面数の少ない場合に比べてより大きくなるという矛盾した特性をもつため、回転多面鏡の大きさ(内接円筒の大きさ)が決まれば、面数の上限が決まる。例えば、レーザービームプリンターに用いる光走査装置において、所要走査幅350mm、波長780nm、回転多面鏡の内接円筒の半径を25mm、被走査面での主走査方向のスポット直径を50μm以下にする場合、面数はおおむね7面が上限となる。
【0009】
そこで、面数を多く取るために、回転多面鏡の直径を大きくすると、回転多面鏡の重量や慣性2次モーメントが増加し、回転に伴う空気抵抗(風損)も増加するので、回転数が低く制限される。
【0010】
このように回転多面鏡の面数、回転数とも上限があり、かつ各々が矛盾する特性を有するので、それを越える走査速度を得るために様々な走査装置が考案されてきた。
【0011】
例えば、特開昭51−100742号公報記載の技術では、光源に半導体レーザーアレーを用い、同時に複数のレーザービームで被走査面を走査することで、走査速度を向上させている。この方法によれば、回転多面鏡の回転数を上げることなく、素子に集積されたレーザーの個数だけ走査速度を早めることができる。
【0012】
一方、特開昭51−32340号公報では、光源から射出された光ビームを主走査方向に非常に直径の小さい状態で回転多面鏡に入射させ、偏向された光ビームを伝達光学系を介して再び回転多面鏡に入射させる方法が開示されている。2回目に回転多面鏡に入射した後に、光ビームは走査光学系によって被走査面上にスポットとして結像する。すなわち、回転多面鏡に光ビームを2度入射させている。
【0013】
この後者の方法においては、光ビームが最初に回転多面鏡に入射するときの主走査方向の光ビームの直径を2回目に入射する場合に比べて極めて小さくし、かつ2回目に回転多面鏡に入射する光ビームが回転する反射面の主走査方向の中心点を追従するように伝達光学系を構成している。
【0014】
このように構成することで、光ビームが最初に回転多面鏡に入射する際には、光ビームの直径を極端に小さくできるので、回転多面鏡の分割角度一杯まで走査可能となる。第1の反射面で偏向された光ビームが伝達光学系を経由して、2回目に回転多面鏡に入射する際には、光ビームの直径は被走査面上で所定のスポットを得るのに必要な大きさに拡大されるものの、反射面の回転に追従するため、回転多面鏡の回転角度とは無関係に光ビームの大きさを設定できる。従って、回転多面鏡の反射面の主走査方向の大きさを小さくすることが可能となり、小径で面数の多い回転多面鏡が使用可能となる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭51−32340号公報で開示されている光走査装置では、光源から回転多面鏡に至るビーム整形光学系、一旦回転多面鏡の反射面に入射してから次の反射面に光ビームを向かわせる伝達光学系、最後に偏向された光ビームを被走査面上に結像させる走査光学系の3つの光学系が、主走査面内に平面的に配置されており、各光学系を構成するレンズや反射ミラー相互、あるいはそれらと光学系内を通過する光ビームを干渉しないように位置させるためには、各レンズの位置に制約を生じ、満足な光学特性が得られないという課題があった。
【0016】
また、回転多面鏡の2箇所の反射面に対して、入射する光ビームは常に垂直とは異なる角度で入射しているので、入射する光ビームの回転多面鏡の反射面上では主走査方向には斜めに投影され、本来の光ビームの直径より余分な反射面の大きさが必要となる。回転多面鏡の第1の反射面に入射する光ビームが反射面に対して移動する軌跡も、同様に斜めに投影されるため最小限必要な反射面の大きさよりは余分な大きさを必要とする。
【0017】
このように、反射面の大きさが大きくなると必然的に回転多面鏡の大きさも大きくなり、回転に伴う空気力学的な損失(風損)が増加して回転数を上げることが困難になるという問題があった。
【0018】
上記の課題に鑑み本発明では、回転多面鏡に光ビームを2度入射させて光ビームの偏向・走査を行なう光走査装置において、回転多面鏡に入射する光ビームの主走査方向の断面直径に対して、回転多面鏡の反射面の大きさを最も有効に使用でき、それによって回転多面鏡の大きさも小さくできすることで、より高い回転数を実現することを目的とする。
【0019】
また、主走査面内において伝達光学系を構成する光学素子とビーム整形光学系あるいは走査光学系を構成する光学素子の位置的な干渉をなくすことで、各光学系に最適な大きさの光学素子を利用可能とし、光学特性を向上させることを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため本発明の光走査装置は、光源と、光源からの光ビームを所定の特性の整形光ビームに変換するビーム整形光学系と、整形光ビームを第1の反射面で偏向し、少なくとも第1の反射面と第2の反射面を有する回転多面鏡と、回転多面鏡の第1の反射面により偏向された光ビームを回転多面鏡の第2の反射面に入射させる伝達光学系と、回転多面鏡の第2の反射面で偏向された走査光ビームを所定の被走査面に結像させる走査光学系とを有し、走査光ビームで被走査面を走査する光走査装置において、前記光走査装置の光学部品を取り付ける部材を、光学ケースと、それに固定されるベース部材に分割し、前記伝達光学系を構成する光学部品と前記走査光学系を構成する光学部品の結像レンズ、および前記回転多面鏡を前記ベース部材に取り付けると共に、前記走査光学系を構成する結像レンズを除く光学部品を前記光学ケースに取り付け、走査光ビームが被走査面の有効走査領域を走査する期間の中のいずれかの時間に、整形光ビームが回転多面鏡の第1の反射面に対して主走査面内で垂直に入射し、かつ前記のいずれかの時間と同時にあるいは異なる時間に、伝達光学系より回転多面鏡の第2の反射面に入射する光ビームが第2の反射面に対して主走査面内で垂直に入射することを特徴とする。
【0021】
また、光源、及びビーム整形光学系、伝達光学系、走査光学系を構成する光学素子の少なくとも一部を支持しており、おおむね主走査面に平行に広がる底面を有する光学ベースを備え、副走査面内において、光学ベースの底面に近接した側に伝達光学系を配置し、伝達光学系より遠い側に、光源、ビーム整形光学系、走査光学系を配置したことを特徴とする。
【0022】
あるいは、伝達光学系の光路中には伝達光学系の光軸を折り返す反射鏡を少なくとも1つは備え、反射鏡のうち光軸上において最も第2の反射面に近い反射鏡より手前側に、伝達光学系を構成する全てのレンズ群が配置されていることを特徴とする。
【0023】
さらに、伝達光学系の光路中には伝達光学系の光軸を折り返す反射鏡を2つ備え、第1の反射面によって偏向された光ビームが伝達光学系の中を移動するときに、伝達光学系の光軸と主走査面内において1度交差することを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1、図2は本発明による光走査装置の実施例の概観を示す斜視図であって、図2は図1より補正レンズ62及び第3の折り返し鏡93を取り除いた状態を示す斜視図である。また、図3、図4は本発明による光走査装置の実施例の主走査断面での平面図を示す。図3、図4において回転多面鏡30の第1の反射面31以降の光ビームについては、ビーム検出位置、走査開始位置、走査光学系の光軸位置、走査終了位置の4ヵ所での光ビーム位置を示している。図3は走査光学系及び光ビーム検出光学系とその中を通過する光ビームを示し、図4は伝達光学系とビーム整形光学系とその中を通過する光ビームを示している。さらに、図5には本発明による光走査装置の実施例のビーム整形光学系を含んだ副走査面内の断面図を示し、図6には本発明による光走査装置の実施例の走査光学系を含んだ副走査面内の断面図を示す。
【0025】
光源には半導体レーザー11が用いられており、発散光として射出されたレーザービームはコリメータレンズ21で緩やかな集束角を持つ集束光ビームに整形される。コリメータレンズ21の射出面は、球面収差を減ずるために光軸に回転対称な非球面形状に形成されている。
【0026】
コリメータレンズ21を射出した光ビームは、入射側が平面で射出側が凹のシリンドリカル面である整形レンズ22に入射する。整形レンズ22は主走査方向にのみ負の屈折力を有しており、入射した集束光ビームは主走査方向には比較的小さな直径の平行な光ビームに変換される。一方、副走査方向においては、コリメータレンズ21によって変換された集束光ビームのままである。以上に述べたコリメータレンズ21と整形レンズ22とでビーム整形光学系を構成している。
【0027】
すなわち、図4に示すように回転多面鏡30の第1の反射面31に入射する光ビームは、主走査方向には通常の光走査装置に比べて小さい直径を有する平行光ビームで、副走査方向には第1の反射面31上に結像するような集束光ビームである。なお、回転多面鏡30については後ほど説明する。
【0028】
上記のように本発明の実施例においては、半導体レーザー11から射出した光ビームの直径がある程度広がった位置で、コリメータレンズ21で緩い集束光ビームに変換し、さらにこのコリメータレンズ21から距離をおいて凹のシリンドリカルレンズである整形レンズ22を配して、主走査方向にのみ平行光ビームに変換する。このため、コリメータレンズ21の焦点距離を比較的大きくでき、そのことによってコリメータレンズ21のレンズ面の曲率半径も大きくでき、レンズ面あるいはそれを成形する金型の加工が容易になる。また、レンズ面の大きさが大きくなることで、収差上レンズ面に要求される精度が緩和され製造が容易となると同時に、被走査面への結像性能も向上することが期待できる。
【0029】
また、本発明の実施例においては、図4に示すように、光源である半導体レーザー11から回転多面鏡30の第1の反射面31に入射するまでの光路を長く取れるので、主走査面内で見た場合の第1の反射面31から後で述べる伝達光学系の第1の反射鏡51までの距離より、第1の反射面31から光源部までの距離を長くなる。そのため、図5に示すように、光源部の上下方向の空間的な制約がなく、特に半導体レーザー11の駆動回路基板の大きさを任意に設定できる。そのため、半導体レーザー11の高度な制御、特に階調制御を行なうための電子回路を半導体レーザー11の直近に集積することができる。
【0030】
整形レンズ22を出た光ビームは、回転多面鏡30の第1の反射面31に入射する。第1の反射面31に入射する光ビームが通過するビーム整形光学系の光軸と、反射された光ビームが通過する伝達光学系の光軸は、図4に示すように主走査面内では重なっている。一方、図5に示すように、副走査面内において第1の反射面31の垂線とは角度γ1を有している、すなわち副走査面内で入射角γ1で入射している。従って、第1の反射面31で反射され偏向される光ビームと入射光ビームは副走査面内において角度2・γ1をなしており、互いに干渉することがない。本実施例ではγ1を6゜としている。
【0031】
第1の反射面31で反射かつ偏向された光ビームは、伝達光学系を構成する伝達レンズ第1群41に入射する。伝達レンズ第1群41は入射側から順に、平面と凸のシリンドリカル面からなる第1伝達レンズ、凸のシリンドリカル面と平面からなる第2伝達レンズ、凹のシリンドリカル面と平面からなる第3伝達レンズの3枚で構成され、いずれのレンズも主走査方向にのみ屈折力を有する。
【0032】
伝達レンズ第1群41を出た光ビームは、主走査方向に関しては集束光ビームとなり、伝達レンズ第1群41の後ろ側焦点に一旦結像する。一旦結像した光ビームは発散光ビームとなり、反射鏡51で反射されて伝達レンズ第2群42に向かう。伝達レンズ第2群42は、入射側が凸のシリンドリカル面で射出側が平面の第4伝達レンズ1枚で構成されている。伝達レンズ第2群42は副走査方向にのみ屈折力を有する。
【0033】
伝達レンズ第2群42を出た光ビームは、伝達レンズ第3群43に入射する。伝達レンズ第3群43は、入射側が平面で、射出側が凸のシリンドリカル面の第5伝達レンズ1枚で構成されている。伝達レンズ第3群43は主走査方向にのみ屈折力を有する。
【0034】
伝達レンズ第3群43を出た光ビームは、主走査方向に関してはほぼ平行な光ビームとなる。この平行光ビームは反射鏡52で光軸の向きを変えられて、回転多面鏡30の第2の反射面32に入射する。第2の反射面32に入射する光ビームは第1の反射面31での偏向にともない、第2の反射面32の中心に追従するよう光ビームの中心が移動する。これらの伝達レンズ第1群41から第3群43までの3群のレンズで伝達光学系を構成している。
【0035】
第2の反射面32に入射する平行光ビームの主走査方向の直径は、第1の反射面31に入射する平行光ビームの直径に比べて数倍大きくなるが、第2の反射面32の回転移動に追従して光ビームが移動するので、反射面の大きさをはみ出ることはない。
【0036】
また、第2の反射面32に入射する光ビームが通過する伝達光学系の光軸と、偏向された光ビームのが通過する走査光学系の光軸は、図4に示すように主走査面内では重なっている。一方、図6に示すように回転多面鏡30の回転軸を含む面内すなわち副走査面内では、第2の反射面32に対して垂直とは異なる斜め方向に配置されている。この実施例においては、副走査面内での第2の反射面32に入射する光ビームが反射面の垂線に対する角度、すなわち入射角γ2を6゜としている。
【0037】
伝達光学系に置かれている反射鏡51、反射鏡52には、フロートガラスの表面に反射膜を蒸着したミラーを用いている。連続的に生産されるフロートガラスは、製造工程の進行方向とその直交方向で平面度が異なる。本発明の実施例では、その平面度の良好な方向を主走査方向に一致させることで、安価な反射鏡が利用可能にしている。なお、ガラスの平面度を維持させるには所定の厚みが必要なことは、研磨ガラスでもフロートガラスでも同様であり、本実施例でも反射鏡51、52には厚み5mmのガラスを用いて十分な平面度を得ている。
【0038】
また、伝達光学系に限らずビーム整形光学系に反射鏡を介在させる場合も上記と全く同様に、主走査方向に平面度の良好な方向を一致させることで、安価なフロートガラスが使用可能となる。さらに、このようなビーム整形光学系に介在する反射鏡は、本発明の実施例のような回転多面鏡の反射面に光ビームが2度入射するような光学系のみならず、一般の走査光学系において、回転多面鏡に光源からの光ビームを導く光学系に広く適用できる。
【0039】
本発明の実施例の伝達光学系を副走査断面内で見ると、伝達レンズ第2群42のみが光学的に屈折力を有しており、第1の反射面31と第2の反射面32が光学的な共役関係になるように配置されている。このため、回転多面鏡30の第1の反射面31の各々が副走査方向に倒れ誤差をもっていても、反射された光ビームは第2の反射面32上では副走査方向に同じ位置に入射する。すなわち倒れ補正機能を有している。
【0040】
次に、第2の反射面32で偏向された光ビームは結像レンズ61、補正レンズ62に入射して集束光ビームに整形された後に被走査面71上に結像する。結像レンズ61と補正レンズ62とで、走査光学系を構成しており、一定速度で回転する回転多面鏡30の回転に伴って、等角速度で走査される光ビームを等線速で被走査面上71を走査させる。
【0041】
図6に示すように、結像レンズ61を出た光ビームは、第1の折り返し鏡91で、回転多面鏡30の上方に折り返される。この折り返された光ビームはさらに第2の折り返し鏡92で折り返され、補正レンズ62に入射する。補正レンズ62を出た光ビームは最後に第3の折り返し鏡93で折り返されて、被走査面70に向かう。これら3つの折り返し鏡は光走査装置の容器となる光学ケース82に取り付けられている。
【0042】
このように、走査光学系の光軸を含む副走査面内で見ると、後で述べるベース部材81あるいは光学ケース82の上に、(A)伝達光学系の第2の反射鏡52から回転多面鏡30の第2の反射面32に至る部分、(B)走査光学系の回転多面鏡30の第2の反射面32から、結像レンズ61を含み第1の折り返し鏡91に至る部分、(C)第1の折り返し鏡91から第2の折り返し鏡92に至る部分、(D)第2の折り返し鏡93から、補正レンズ62と経由して第3の折り返し鏡93に至る部分、の4段に光路が折り重なっている。
【0043】
本発明の実施例においては、このような構造をとることで、走査光学系全体の光路長にかかわらず、光走査装置の走査光学系の光軸方向の長さを短縮できる。
【0044】
また、走査光学系内においては、光ビームが回転偏向するので、回転多面鏡30の第2の反射面32から離れるに従って、走査される光ビームの振れ幅が増加し、必要な折り返し鏡の幅も増加していく。これに対して上記のような構造の場合、光学ケース82の底面から離れるに従って折り返し鏡の幅も増加するので、折り返し鏡の両側にその保持部分を設けた場合に、下方(光学ケース82の底面側)に位置するレンズや、走査される光ビームに干渉することが避けられる。
【0045】
また、光学ケースの表面側、すなわち回転多面鏡や走査光学系を構成するレンズ群が載置されている側に全ての折り返し鏡を配置しているので、組立・調整・検査作業が容易なため製造費用が低下するとともに、装置の信頼性も増す。
【0046】
特に本発明の実施例のように、光学ケース82の底面に近い側に、伝達光学系が位置する場合には、伝達光学系を構成する各伝達レンズや反射鏡を避けて、折り返し鏡の支持部を設けることが容易となる。
【0047】
被走査面上71に光ビームが結像して得られるスポットは、回転多面鏡30の回転に応じた方向に直線状に移動して走査線を形成する。本発明の実施例においては、既に述べたように副走査面内おいて、回転多面鏡30の回転軸に対して直角とは異なる方向で光ビームが入射し、得られる偏向光ビームも回転多面鏡30の回転軸に直角な方向とは異なる角度をもって偏向されるので、偏向光ビームが掃引してできる面は平面ではなく円錐面となる。従って、結像レンズ61や補正レンズ62に入射する光ビームの軌跡も湾曲しているが、被走査面上71で得られる走査線は直線となるように、走査光学系が構成されている。
【0048】
被走査面71には走査対象物が設置される。本発明の光走査装置は主走査方向一方向にしか光ビームを走査しないので、2次元走査を実現させるためには走査対象物を主走査方向とは直交する副走査方向に移動させる必要がある。この副走査方向の移動は、平板状の媒体を直線状に移動させてもよいし、走査線の方向に平行な回転軸を持つ円筒状の媒体を回転移動させてもよい。例えば本発明の光走査装置をレーザービームプリンターに用いる場合には、秘走査面71には感光体が置かれ、光ビームの走査によって静電潜像を形成する。
【0049】
ここで本発明の実施例の伝達光学系の光路の配置の特徴について説明する。ここまでで述べたように、本発明の実施例では、主走査面内で光走査装置の走査範囲の中央付近を走査する時点での回転多面鏡30の位置において、ビーム整形光学系の光軸と第1の反射面31、あるいは回転多面鏡30の第2の反射面32に入射する伝達光学系の光軸と回転多面鏡30の第2の反射面32との位置関係は、各光学系の光軸が各反射面に対してほぼ垂直になるように配置されている。
【0050】
別の言い方をすると、回転多面鏡の2箇所の反射面へ光ビームを導く各光学系の光軸が、回転多面鏡の回転軸に対して、空間的な「ねじれの位置」になく、ほぼ交差する状態である。光学系の光軸と反射面のこのような位置関係を以後「正面入射」状態と定義する。
【0051】
本発明においては、このように「正面入射」の配置をとることで、光ビームの断面直径に対して、回転多面鏡30の第2の反射面32の大きさを最も有効に使用している。また、回転多面鏡30の第1の反射面31に対して、ビーム整形光学系から入射する光ビームは相対的に移動するが、反射点は入射する光ビームの対してほぼ垂直な方向に移動するので、移動に対する反射面の大きさも最小限ですむ。
【0052】
このように各反射面の大きさを小さくできるので、回転多面鏡30の大きさを最小にできる。従って、回転多面鏡の慣性2次モーメント、重量、反射面に働く遠心力を小さくでき、より高い回転数まで回転させることが可能となった。
【0053】
また、本発明においては図6に示すように伝達光学系を構成する各レンズや反射鏡と、走査光学系を構成するレンズを副走査面内において分離して配置できるので、これらのレンズや反射鏡が主走査面内において互いに干渉することがないので、レンズの大きさに制約がなく、良好な光学特性を得ることができる。
【0054】
次に伝達光学系の2つの反射鏡と各レンズの位置関係について考察する。上記のように本発明の実施例では、図5、図6に示すように、伝達光学系の内で第2の反射鏡52以降の部分の光軸と、走査光学系の光軸は副走査面内で角度をもって配置されているので、主走査面内ではレンズの大きさに制約がない。
【0055】
さらに本発明においては、回転多面鏡の第1の反射面31と第1の反射鏡51の間に、伝達レンズ第1群41が位置しており、第2の反射鏡52と第2の反射面32の間には、伝達レンズ第2群42、及び伝達レンズ第3群43が位置している。すなわち、第2の反射鏡52以降の伝達光学系の光軸上にはレンズが存在しないので、伝達光学系のレンズと走査光学系のレンズが主走査面で見ても重なることがない。このため、走査光学系のレンズ、特に結像レンズ61の大きさや取り付け方法に制約がなくなり、光学的に最適な位置、大きさの結像レンズを用いることが可能となる。
【0056】
次に本発明の実施例の伝達光学系とビーム整形光学系あるいは走査光学系の位置関係について説明する。
【0057】
また図5あるいは図6でわかるように、伝達光学系とビーム整形光学系あるいは走査光学系が主走査面内で重なっている部分において、各レンズやミラーを支えるベース部材81に対する光軸の上下関係を見ると、伝達光学系の上あるいはベース部材81の底面から遠い側にビーム整形光学系あるいは走査光学系が重なる構造となっている。
【0058】
本発明においては、このような構造をとることで、ベース部材81から一体に成形されていて伝達光学系を構成するレンズや反射鏡を支持する部分のベース部材81からの突出高さを低く押さえることが可能となり、これらのレンズや反射鏡を精度よくベース部材81に取り付けることができる。
【0059】
これに対して、走査光学系を構成する結像レンズ61、あるいは補正レンズ62の取り付け精度は伝達光学系に比べればさほど高くなくてもよいので、ベース部材81から高い位置に支持しても問題とならない。一方、ビーム整形光学系のレンズや光源の位置精度は非常に厳しいが、あまりに要求精度が厳しいために調整せざるを得ない。このため、ビーム整形光学系のレンズなどを支持する部材自身の位置精度はさほど高くなくてもよく、むしろ調整の容易な構造が望まれる。この観点においても、ビーム整形光学系が伝達光学系の上に位置するほうが、調整作業が容易になり好ましい。
【0060】
さらに本発明の実施例においては、図8に示すように伝達光学系の各レンズと2枚の反射鏡及び回転多面鏡を一体の高精度の加工方向で製造されたベース部材81に取り付け、他の部分は一般的な製造方法で製作される光学ケース82に取り付けている。
【0061】
例えば、ベース部材81の製造には、金属をダイキャストで鋳造したものをレンズや反射鏡の取付面のように精度の必要な部分のみ機械加工を施す方法が好適である。また、プラスチックの射出成形方法を用いる場合でも、最近開発されている成形後の収縮の小さい特殊な成形方法等を用いれば所期の精度が得られる。
【0062】
これに対して、光学ケース82は一般的な加工方法で製作可能で、例えばガラス繊維入りのポリカーボネイド樹脂を射出成形することで安価に製造できる。また、形状の工夫によっては板金のプレス加工によっても製作できる。
【0063】
このように本発明の実施例においては、精度の必要なベース部材81を必要最小限の大きさにとどめ、それ以外の光学ケース82を比較的安価な製造方法で製作することで、装置全体の製造コストを削減できる。
【0064】
なお、この実施例においては平面的に見て伝達光学系の上方に位置する結像レンズ61及び整形レンズ22は、わざわざ光学ケース82に取り付けるより、ベース部材81に取り付ける方が構造が簡単で、そのことによりベース部材81の大きさが増加することもないので、ベース部材81に取り付けてある。
【0065】
次に、本発明の光走査装置の実施例の伝達光学系の回転多面鏡30の反射面に対する追従作用を詳しく説明する。図7は図4で説明した本発明の光走査装置の伝達光学系を反射鏡51、反射鏡52について折り返さずに引伸ばして主走査断面について示した図である。但し、伝達レンズ第2群42は、主走査方向には屈折力を持たないので省略してある。
【0066】
伝達光学系を主走査方向について見ると、伝達レンズ第1群41の後側焦点位置Pに、伝達レンズ第3群43の前側焦点が一致するように置かれており、これら2群のレンズ群でアフォーカル光学系を構成している。従って伝達レンズ第3群43を通過した光ビームは再び平行光ビームとなり、反射鏡52で光軸の向きを変えられて、回転多面鏡30の第2の反射面32に入射する。
【0067】
いま、第1の反射面31に入射する平行光ビームのこの反射面の位置での直径wiとする。伝達光学系はアフォーカル光学系を構成しているので、第2の反射面32の位置では直径woの平行な光ビームに変換される。ここで伝達レンズ第1群41の焦点距離をf1、伝達レンズ第3群43の焦点距離をf2とすると、woをwiで除した光ビームの直径の比の値は、f2をf1で除した値に等しい。
【0068】
ここで、回転多面鏡30がθ1だけ回転すると、第1の反射面31で光ビームは2・θ1だけ偏向される。偏向された光ビームは伝達レンズ第1群41、同第3群43を通過して、角度θ2で偏向される。この光ビームは点Qで光軸と交差する。交差した後に第2の反射面32に入射する位置において、偏向された光ビームと光軸との距離はδとなり、このδは回転多面鏡3がθ1回転したときの反射面の移動量に等しい。
【0069】
このとき、偏向された光ビームは第2の反射面32に対して角度θ2だけ入射角度が増大する側に偏向するので、第2の反射面で反射された光ビームの走査角θsは、θs=2・θ1+θ2とあらわされる。すなわち、通常の1度しか回転多面鏡に入射しない方式、あるいは第2の反射面32に対して光ビームが平行移動しながら追従する方式に比べて光ビームの偏向角をθ2だけ増大させることができる。
【0070】
ところで、上記のように回転多面鏡の第1の反射面31で偏向された光ビームの中心光線が伝達光学系の光軸と交差する場所が回数がQ点のみの1箇所である場合には、伝達光学系の途中にある光路折り返しのための反射鏡の数が偶数であると、第2の反射面32の回転移動方向と光ビームが移動する方向が一致する。
【0071】
より一般的に検討すると、偏向された光ビームが光軸と交差する回数が奇数回のときは、折り返しの反射鏡の数を偶数にすればいいことがわかる。伝達光学系の折り返しの反射鏡は、その平面度が被走査面への結像性能に影響を及ぼし、かつ反射率によって光学系のパワー効率が低下させるので、なるべく数が少ない方がよい。しかし、少なくとも1枚の反射鏡がないと、同一の回転多面鏡に光ビームを戻すことができないので、最小値は1となる。
【0072】
また、回転多面鏡の第1の反射面から第2の反射面までの距離を短くするためには、偏向された光ビームが光軸と交差する回数も少ないほうがよく、現実的にはまったく交差しないか、1回だけ交差するように設定するのが望ましい。
【0073】
これらの条件を考え合わせると、以下の4つの組み合わせが現実的な選択肢である。
(1)偏向された光ビームが光軸と交差する回数が0回で、折り返しの反射鏡の数が1枚。
(2)偏向された光ビームが光軸と交差する回数が0回で、折り返しの反射鏡の数が3枚。
(3)偏向された光ビームが光軸と交差する回数が1回で、折り返しの反射鏡の数が2枚。
(4)偏向された光ビームが光軸と交差する回数が1回で、折り返しの反射鏡の数が4枚。
【0074】
ところが(1)の場合では、反射鏡の数が1であって、本発明のように回転多面鏡の2つの異なる反射面に対して同時に「正面入射」状態を実現することができないので採用できない。
【0075】
また、(2)の場合は反射鏡の数が多いため、反射鏡の平面度の影響により結像性能が劣化する危険性が増す。また、1つの反射鏡あたりの反射率を85%とすると、反射鏡3面を経由した場合の光パワーの効率は61%になってしまう。さらに、各反射面の取り付け角度精度がそれぞれ光軸の方向に影響を与えるので、光ビームが通過する位置精度を確保する上でも好ましくない。同様に(4)の場合はもう1枚反射鏡の数が増加するので、上記(2)の課題はより厳しくなる。
【0076】
従って本発明においては、図4に示すように上記の(3)に相当する伝達光学系の光路の折り返しの反射鏡の数を2とし、伝達光学系の中を偏向されて移動する光ビームと伝達光学系の光軸との交差個所を1ヵ所にすることで、回転多面鏡30への光ビームの入射を正面入射とした上で、反射鏡の数を最小にして光パワーの減衰を小さくすると同時に、伝達光学系の光路長も短縮することが可能となった。
【0077】
次に回転多面鏡30の反射面数について説明する。本発明の実施例においては、回転多面鏡30の面数を4の倍数である12としている。回転多面鏡30の面数を4の倍数とすることで、回転多面鏡30の同時に使用する2つの反射面のなす角度を90度とすることが可能である。回転多面鏡30の回転軸に対する反射面の倒れ誤差や位置誤差の内、1回転の中で緩やかに(おおむね正弦波状に)変化する成分については、2つの反射面の位相が90度ずれているため、第1の反射面31、第2の反射面32の両方が同時に最悪の値となる場合がないので、反射面の倒れ誤差や位置誤差の影響を緩和できる。また、この効果は本発明の実施例のように正面入射する構成をとる光学系のみならず、同一の回転多面鏡に光ビームが2度入射する光走査装置に広くあてはまるものである。
【0078】
また、図4に示すように主走査面内において第1の反射面31に入射する光ビームと、伝達光学系を経由して第2の反射面32に入射する光ビームのなす角度ηを90度とすることが可能となった。このように配置することで、第1の反射面31から第2の反射面32に至る光軸上の距離を適切に確保でき、最適な構成の伝達光学系を得ることができる。
【0079】
さらに、光走査装置の機構的な設計を考えると、ビーム整形光学系の光軸と、走査光学系の光軸が直交している方が、各要素をレイアウトするのが容易であるというで利点もある。
【0080】
一方、回転多面鏡の加工方法を考察すると、反射面の加工機械における割り出し角度が整数に限定されることが多い。つまり隣接反射面の角度が360の約数となる。従って、回転多面鏡の形状を正多角形(正多面体)にするためには、10面、12面、15面、18面等の面数の多面鏡は加工できるが、11面、13面、14面、16面、17面は加工できない場合がある。この条件と上記に述べた4の倍数である条件とを考慮すると、本発明の実施例に示すごとく回転多面鏡30の面数Nは12面であるのが、装置の設計上も、多面鏡の加工上も好適である。
【0081】
もちろん、回転多面鏡の各反射面のなす角度を均等ではないようにすれば上記の制約はないが、各反射面の大きさが不同になり、小さい反射面にあわせて光学系を設計せねばならぬため多面鏡の大きさには無駄が生ずる。
【0082】
次に本発明の実施例の光ビーム検出方法について説明する。一般に光走査装置を画像記録装置や画像入力装置に応用する場合には、各走査の基点となる同期信号を発生させる手段が必要になる。本発明の光走査装置の実施例においては、被走査面上の有効走査領域を走査する手前の位置で、光ビームを光ビーム検出器63に導き、光ビームの到達を電気信号に変換することで同期信号を得ている。この光ビーム検出器63は必ずしも被走査面上71になくてもよい。しかし、光走査装置としては、この光ビーム検出器63の位置から有効走査領域の後端までが所要の走査範囲となる。
【0083】
より詳しく説明すると、回転多面鏡30で偏向された光ビームは、結像レンズ61で主走査方向に集束光ビームに変換された後に、第1の折り返し鏡91、第2の折り返し鏡92で折り返され、図9に示すように補正レンズの直前に設けられた分離鏡64で本来の被走査面71へ向かう光路とは分離された後に、再び第2の折り返し鏡92を経て、光ビーム検出レンズ65で副走査方向に集束する光ビームに変換された後に、光ビーム検出器63に入射する。図9では光ビーム検出器63に入射する光ビームをLsという記号で示している。
【0084】
このように、折り返し鏡を何枚も用いて走査光学系の光路を複雑に折り返したような光走査装置においても、検出用の光ビームを検出器に導く反射鏡を新たに設ける必要がないため、走査光学系の構成が非常にシンプルになる。
【0085】
回転多面鏡30の第2の反射面32を基準とすると、光ビーム検出器63は走査光学系の光軸上においては被走査面71と同じ距離にある。また、副走査面内でみると、光ビーム検出器63の位置は、被走査面71と同様に回転多面鏡30の第2の反射面32に対して光学的に共役となるように、光ビーム検出レンズ65が設けられている。
【0086】
光ビームの偏向の周期の中で、光ビームが分離鏡64を横切る間は被走査面71には光ビームは到達しない。光ビーム検出器63で、光ビームの到達を検出するためには、光ビームが光ビーム検出器63に達する直前に、光源を点灯させる必要がある。この点灯期間における光ビームが、補正レンズ62に入射しないように、分離鏡64の取付部の走査上流に位置する部分には、遮蔽板66が設けられている。
【0087】
また、本発明の実施例においては、図8に示すように、主走査面内において、光ビーム検出器63の表面は入射してくる光ビームに対して傾斜しており、光ビーム検出器63の素子を封入してあるパッケージの表面、あるいは素子自体の表面で反射される反射光Lgは、第2の折り返し鏡92で反射されて上記の遮蔽板66に向かうため、補正レンズ62を通過して被走査面71に達してしまうことを防止している。
【0088】
次に本発明の実施例の光走査装置のゴースト像の発生を防止する構造について説明する。本発明の実施例においては、図10に示すように反射面33と結像レンズ61の間に遮蔽板34を設けて、平面である伝達レンズ第1群の第1伝達レンズの入射面で反射された光ビームが、結像レンズ61に入射するのを防止している。また遮蔽板34は、回転多面鏡30の第2の反射面32で偏向される本来の走査光ビームを遮らない位置に置かれていることは言うまでもない。
【0089】
なお、光学系の構成によっては、ゴースト像を生じさせる光ビームは第1の反射面31に隣接する反射面33ではなくさらに隣の反射面である場合も有り得る。そのような場合でも問題となる反射面と結像レンズ31の間に遮蔽板34を置くことで全く同様な効果を有する。
【0090】
次に以上に述べた実施例の光学系の調整方法について図2、図4を用いて説明する。ビーム整形光学系から出た整形光ビームは回転多面鏡30の第1の反射面31に入射するが、その光軸の延長線上に、副走査方向に平行なエッジを持つナイフエッジ(M)83、主走査方向に平行なエッジを持つナイフエッジ(S)84が光学ケース82と一体に設けられている。またこれらのナイフエッジの先端がビーム整形光学系の光軸L1と一致している。なお、本実施例では光学ケース82の側壁の下部を切り欠いてナイフエッジ(S)84を設けている。
【0091】
この2つのナイフエッジの周辺には、図4に示すように前記のビーム整形光学系の光軸上において、ナイフヘッジ(M)83の手前に切り欠き部A、ナイフエッジ(M)83とナイフエッジ(S)84の間に切り欠き部Bが設けられており、ナイフエッジの通過前後の光パワーを検出するためのセンサが進入できるようになっている。
【0092】
実際の調整作業は、回転多面鏡30を取り外した状態で、ビーム整形光学系を通過した光ビームを上記の2つのナイフエッジに照射することで行なう。ビーム整形光学系を通過した光ビームは、主走査方向においては平行な光ビームである。一方、副走査方向においては回転多面鏡30の第1の反射面31に結像するような集束光ビームである。従って、ナイフエッジの位置においては、光ビームは副走査方向にはある程度広がっている。
【0093】
まず、上記の切り欠き部Aに光パワーを検出するセンサを挿入し、光ビームのパワーを測定する。次に切り欠き部Bにセンサを挿入し、ナイフエッジ(M)83を通過する光ビームの光パワーを測定する。このときナイフエッジ(M)83の先端はビーム整形光学系の光軸に一致しているので、切り欠き部Bでの光パワーを切り欠き部Aで計った光パワーのちょうど半分になるように半導体レーザー11あるいはコリメータレンズ21を主走査方向に調整すれば、ビーム整形光学系の主走査方向の調整が正しく行われたことになる。
【0094】
同様に切り欠き部Bの光パワーとナイフエッジ(S)84の後ろ側、すなわち光学ケース81の外側の光パワーを比較し、ちょうど半分の光パワーにるように半導体レーザー11あるいはコリメータレンズ21を副走査方向に調整すれば、ビーム整形光学系の副走査方向の調整が終わる。既に述べたようにナイフエッジの位置では副走査方向には光ビームが広がっているので、検出精度は低下するが実用上は十分な精度であり問題はない。
【0095】
このような調整方法を用いることで、光学ケース82に半導体レーザー11とビーム整形光学系を取り付けただけで他の光学素子を取り付けない状態で調整作業が可能となるので、回転多面鏡30の反射面31以降に位置する光学素子の誤差の影響を受けずに正確な調整が可能となる。
【0096】
また、光走査装置の組立工程の中間ステップでの光学特性の確認が可能であるので、段階的な品質保証が可能となり、製品の品質確保作業が容易になる。
【0097】
さらに、ナイフエッジを通過する光パワーを比較するだけで調整作業が行えるので、被走査面71上で結像性能を測定する場合に必要となるような大がかりな測定装置が不要となる。
【0098】
その上、2つのナイフエッジは光学ベース82に一体に成形されているので、別部材で構成された治具を使用する場合に比べて、光ビームの位置を正確に調整することが可能となる。
【0099】
このようなビーム整形光学系の光軸と直交方向への光ビームの位置の調整作業は、半導体レーザー11を移動させて行うか、あるいはコリメータレンズ21を移動させても行える。本実施例では半導体レーザー11をその駆動回路を実装した回路基板と一体で、光軸と直交方向の上下左右に移動させて調整しているが、コリメータレンズ21を移動させても同様の効果が発揮される。
【0100】
このように、調整されたビーム整形光学系を射出した光ビームも、伝達光学形に存在する反射鏡51、反射鏡52や、走査光学系の3つの折り返し鏡を通過することで、各ミラーの副走査方向の取付角度精度の影響を受け、補正レンズ62に副走査方向に入射する位置が変動する。
【0101】
本発明の実施例においては、伝達光学系の第1の反射鏡51あるいは第2の反射鏡52、さらに走査光学系内の第1の折り返し鏡91、第2の折り返し鏡92、第3の折り返し鏡93の5箇所の反射ミラーのうちのいずれかを副走査面内に回転させることで、補正レンズ62に入射する光ビームの位置を調整している。
【0102】
例えば第1の反射鏡51を副走査面内で回転させて調整することで、他の4つの反射ミラーの調整は不要になる。特に第1の反射鏡51は上記の5つの反射ミラーの中で最も光源に近いので、それより下流にある反射ミラーを調整する場合に比べて、光路の途中の誤差を小さくできる。
【0103】
このように補正レンズ62に対する光ビームの副走査方向の位置を基準に、上記の5箇所の反射ミラーの内の1つの副走査方向の角度を調整することで、他の4箇所の反射ミラーを調整する必要はなくなる。さらに、1箇所の反射ミラーを調整するだけで、補正レンズ62に対して光ビームを副走査方向において正確な位置に入射させることが可能になり、光ビームの被走査面上での良好な結像性能を得ることができる。
【0104】
また、補正レンズ62上において副走査方向に光ビームの入射位置が所定の範囲に入るように調整されるので、補正レンズ62の直後にある被走査面71上に結像するスポット、あるいはその軌跡として形成される走査線の副走査方向の位置もおおむね正規の位置におかれる。
【0105】
あるいは本発明の実施例においては、回転多面鏡の第1の反射面31以降にある5箇所の反射ミラーの調整は一切行わず、第1の補正レンズ62を副走査方向に変位させることで、補正レンズ61に入射する光ビームに対する副走査方向の相対位置を所定の範囲にしている。そして、このような調整を補正レンズ62の左右、すなわち走査の開始端、終了端で独立して行うことができるので、開始側、終了側それぞれ独立して最適な結像性能をうることができる。
【0106】
【発明の効果】
以上で述べたように本発明の光走査装置では、光走査装置の走査範囲の中央付近を走査する時点での回転多面鏡の位置において、ビーム整形光学系の光軸と第1の反射面、あるいは回転多面鏡の第2の反射面に入射する伝達光学系の光軸と回転多面鏡の第2の反射面との位置関係は、各光学系の光軸が各反射面に対してほぼ垂直になるように配置されているために、光ビームの主走査方向の断面直径に対して、回転多面鏡の反射面の大きさを最も有効に使用できる。
【0107】
また、回転多面鏡の第1の反射面においては、ビーム整形光学系から入射する光ビームは相対的に移動するが、第1の反射面に入射する光ビームの入射角が小さいため、移動に対する反射面の大きさも最小限ですむ。
【0108】
従って、第1、第2の反射面ともに主走査方向の大きさを小さくできるので、回転多面鏡の大きさも小さくでき、より高い回転数まで回転させることが可能となり、高速走査が実現できるという効果を有する。また、ベース部材から一体に成形されていて伝達光学系を構成するレンズや反射鏡を支持する部分のベース部材からの突出高さを低く押さえることが可能となり、これらのレンズや反射鏡を精度よくベース部材に取り付けることができる。さらに、精度の必要なベース部材を必要最小限の大きさにとどめ、それ以外の光学ケースを比較的安価な製造方法で製作することで、装置全体の製造コストを削減できる。なお、結像レンズをベース部材に取り付けても、ベース部材の大きさを増加させることなく、構造が簡単になる。
【0109】
さらに、このように副走査方向に伝達光学系の一部とビーム整形光学系あるいは、走査光学系を上下に重ねて配置できるので、主走査面内において伝達光学系とビーム整形光学系あるいは走査光学系が干渉することがないため、各光学系の大きさを最適に設定することが可能となり、光学特性が向上するという効果を有する。
【0110】
また、伝達光学系のレンズ群の全てを伝達光学系の2番目の折り返しの反射鏡より手前(光源)側に位置させることにより、主走査面内、副走査面内の両方においても走査光学系と伝達光学系のレンズ群が干渉することがなくなり、上記の効果がより増強される。
【0111】
あるいは、伝達光学系の中に折り返しの反射鏡を2箇所配置し、かつ回転多面鏡によって伝達光学系内を偏向されて移動する光ビームの中心光線が伝達光学系の光軸と1度交差するように構成することで、伝達光学系の光路長を適切な長さに設定することが可能となり、伝達光学系の光学特性が向上するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における光走査装置の全体の概観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例における光走査装置において長尺レンズ及び第3の折り返し鏡を除いて描いた全体の概観を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例における光走査装置の走査光学系を含む主走査面内での平面図である。
【図4】本発明の実施例における光走査装置の伝達光学系を含む主走査面内での平面図である。
【図5】本発明の実施例における光走査装置のビーム整形光学系を含む副走査面内での断面図である。
【図6】本発明の実施例における光走査装置の走査光学系を含む副走査面内での断面図である。
【図7】本発明の実施例における光走査装置の伝達光学系の主走査面内における展開図である。
【図8】本発明の実施例における光走査装置の光学ベースと光学ケースの関係を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例における光走査装置の光ビーム検出器に光ビームを導く光学系の斜視図である。
【図10】本発明の実施例における光走査装置の回転多面鏡の周囲と遮蔽板を示す平面図である。
【符号の説明】
11 ・・・・ 半導体レーザー
21 ・・・・ コリメータレンズ
22 ・・・・ 整形レンズ
30 ・・・・ 回転多面鏡
41、42、43・・・ 伝達レンズ
51、52 ・・・・ 反射鏡
61 ・・・・ 結像レンズ
62 ・・・・ 補正レンズ
63 ・・・・ 光ビーム検出器
71 ・・・・ 被走査面
81 ・・・・ 光学ベース
82 ・・・・ 光学ケース
91、92、93 ・・・・ 折り返し鏡

Claims (4)

  1. 光源と、前記光源からの光ビームを所定の特性の整形光ビームに変換するビーム整形光学系と、前記整形光ビームを第1の反射面で偏向し、少なくとも前記第1の反射面と第2の反射面を有する回転多面鏡と、前記回転多面鏡の前記第1の反射面により偏向された光ビームを前記回転多面鏡の前記第2の反射面に入射させる伝達光学系と、前記回転多面鏡の前記第2の反射面で偏向された走査光ビームを所定の被走査面に結像させる走査光学系とを有し、前記走査光ビームで前記被走査面を走査する光走査装置において、前記光走査装置の光学部品を取り付ける部材を、光学ケースと、それに固定されるベース部材に分割し、前記伝達光学系を構成する光学部品と前記走査光学系を構成する光学部品の結像レンズ、および前記回転多面鏡を前記ベース部材に取り付けると共に、前記走査光学系を構成する結像レンズを除く光学部品を前記光学ケースに取り付け、前記走査光ビームが前記被走査面の有効走査領域を走査する期間の中のいずれかの時間に、前記整形光ビームが前記回転多面鏡の前記第1の反射面に対して主走査面内で垂直に入射し、かつ前記のいずれかの時間と同時にあるいは異なる時間に、前記伝達光学系より前記回転多面鏡の前記第2の反射面に入射する光ビームが前記第2の反射面に対して主走査面内で垂直に入射することを特徴とする光走査装置。
  2. 前記光源、及び前記ビーム整形光学系、前記伝達光学系、前記走査光学系を構成する光学素子の少なくとも一部を支持しており、おおむね主走査面に平行に広がる底面を有する光学ベースを備え、副走査面内において、前記光学ベースの前記底面に近接した側に前記伝達光学系を配置し、前記伝達光学系より遠い側に、前記光源、前記ビーム整形光学系、前記走査光学系を配置したことを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
  3. 前記伝達光学系の光路中には前記伝達光学系の光軸を折り返す反射鏡を少なくとも1つは備え、前記反射鏡のうち光軸上において最も前記第2の反射面に近い反射鏡より手前側に、前記伝達光学系を構成する全てのレンズ群が配置されていることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
  4. 前記伝達光学系の光路中には前記伝達光学系の光軸を折り返す反射鏡を2つ備え、前期第1の反射面によって偏向された光ビームが前記伝達光学系の中を移動するときに、前期伝達光学系の光軸と主走査面内において1度交差することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
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