JP3707440B2 - ドラム用響線およびドラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドラムセット、マーチングドラム、コンサートドラム等に使用される、主としてスネアドラムに用いられるドラム用響線およびドラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
スネアードラムは、ドラム用響線をドラムヘッドに対して選択的に接触離間させることにより、ドラムヘッドの振動をドラム用響線に伝えて楽器に特有なぱらぱらという軽快な音色をもたらす、いわゆるタブリング効果と称する特殊音響効果が得られるようにしている(実公昭58−50372号公報等)。
【0003】
ドラム用響線は、線材からなる複数本の響線を適宜な間隔をおいて複数本並べ、両端を保持部材によって保持したもので、響線の形状の違いや材質の違いにより非常に多くのバリエーションを有している。形状の違いという点では、線材をコイル状に巻いて響線としたものと、直線状の線材を響線として用いたものとの2種類が一般的である。材質としてはスチール、ステンレス、銅系金属等の非鉄金属、ナイロン、アラミド繊維等の合成樹脂など、非常に多くの種類が考えられる。
【0004】
響線用線材の断面形状は、合成樹脂繊維やワイヤ(撚りをかけたもの)のように厳密には断面形状が円形でないものもあるが、その他の金属製線材については基本的に直径が一定の断面円形状の線材を用いている。このため、ドラムヘッドとの接触の初期状態がコイル状の線材からなる響線と直線状の線材からなる響線とでは異なり、コイル状の響線の場合は点状に、直線状の響線の場合は線状に接触する。ドラムヘッドと響線の接触点は、響線の形状によって異なるが、いずれの響線の場合もどの接触点をとっても基本的に同じ接触状態となる。したがって、どの接触点をとっても音のダンピング効果は一定である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ドラムヘッドと響線の衝突音はドラムヘッドと響線の接触量に比例するため、衝突音の音量を増大させるためには、断面形状が円形の線材を響線として用いたドラム用響線においては、響線の本数を増やすか長さを長くして接触量を増大させる必要があった。
【0006】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、断面多角形の線材を響線として用いることにより響線自体の本数を増加したり長さを長くしたりすることなく、ドラムヘッドと響線の接触量を増大させてドラムヘッドと響線の衝突音の音量を増大させるようにするとともに、接触点毎に異なったダンピング効果を得ることができるようにしたドラム用響線およびドラムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために第1の発明に係るドラム用響線は、並設された複数本の細い響線からなりドラムヘッドに対して接離されるドラム用響線において、前記響線の少なくとも一部の本数を断面多角形の線材で形成したものである。
【0008】
第1の発明において、断面形状が多角形の線材は、点、線以外に面での接触状態が得られ、接触量を増大させる。
多角形としては、四角形、五角形、六角形、八角形等が考えられる。
【0009】
第2の発明に係るドラム用響線は、上記第1の発明において、線材をコイル状に形成したものである。
【0010】
第2の発明においては、ドラムヘッドと線材の接触の初期状態において、点、線および面で接触する。
【0011】
第3の発明に係るドラム用響線は、上記第1の発明において、線材を直線状に形成したものである。
【0012】
第3の発明においては、ドラムヘッドと線材の接触の初期状態において、線材が線または面で接触する。
【0013】
第4の発明に係るドラムは、上記第1、第2または第3の発明に係るドラム用響線を備えたものである。
【0014】
第4の発明においては、断面多角形の線材によって形成された響線を備えているので、ドラムヘッドと響線との接触の初期状態での接触量を増大させることができ、同じ本数、長さであっても従来より大きな衝突音が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るドラム用響線を備えたスネアードラムの外観斜視図、図2はコイル状の線材からなる響線を用いたドラム用響線の平面図、図3は直線状の線材からなる響線を用いたドラム用響線の平面図、図4は響線の断面図である。本実施の形態においては、裏面側ドラムヘッドにドラム用響線を装着し、これを裏面側ドラムヘッドに対して選択的に接触離間させるようにしたスネアードラムに適用した例を示す。
【0016】
全体を符号1で示すスネアードラムは、両端が開放する円筒状の胴本体2を備え、その両端開口部に図示しない表面側(打面側)ドラムヘッドと、裏面側(非打面側)ドラムヘッド3をそれぞれ張設している。これらのドラムヘッドは、動物の皮革からなる天然皮革またはポリエステル、ポリカーボネート等の合成樹脂製フィルムによって形成され、外周縁部が図示しない環状のヘッド枠によってそれぞれ保持されている。また、各ドラムヘッドのヘッド枠は前記胴本体2の各開口部の外周に嵌装され、さらにこれらのヘッド枠を環状の締枠4,5によって覆っている。これらの締枠4,5は、前記胴本体2の外周に取付けた複数個のラグ6に締めボルト7を介してそれぞれ連結されており、これらの締めボルト7を回転させて締枠4,5を接近または離間させることにより、各ドラムヘッドの張力が調節できるように構成されている。すなわち、締めボルト7を締め付けて締枠4,5を胴本体2の中央側に移動させると、締枠4,5が各ドラムヘッドのヘッド枠を押圧して胴本体2の中央側に移動させるため、各ドラムヘッドの張力は大きくなる。反対に締めボルト7を緩めると、締め枠4,5のヘッド枠に対する押圧力が低減するためドラムヘッドの張力は小さくなる。
【0017】
前記裏面側ドラムヘッド3の表面にはドラム用響線10が装着されている。ドラム用響線10は、図2に示すように同一平面上に一定の間隔(例えば、2.9mm)をおいて配列された細い複数本(10〜30本)の響線11と、これらの響線11の各端をそれぞれ保持する2つのバンド付き保持部材12A,12Bとで構成されている。
【0018】
前記響線11は、図2に示す実施の形態においてはコイル状の線材11Aによって形成されている例を示したが、これに限らず図3に示すように直線状の線材11Bによって形成されているものであってもよい。
【0019】
前記線材11A,11Bとしては、鋼製、ステンレス製、ナイロン、アラミド等の合成樹脂でもよい。線材の直径は、0.5〜1.2mm程度で、撚りをかけたワイヤであってもよい。
【0020】
また、前記線材11A,11Bは、いずれも断面形状が図4に示すように正六角形であるが、これに限らず四角形、五角形、八角形等の多角形であってもよい。すなわち、本発明に係るドラム用響線10は、断面形状が円形の線材によって形成された響線に替えて、多角形の線材11Aまたは11Bによって形成された響線11を用いてドラム用響線10を形成したものである。また、複数本の響線11のうち一部の本数を断面形状が多角形の線材11Aまたは11Bに置き換えるだけでもよい。すなわち、断面円形のもとの多角形の線材を混合して用いてもよい。
【0021】
このようなドラム用響線10は、前記各保持部材12A,12Bに取付けたバンド13,13を前記胴本体2の外周に取付けた2つのバッケン機構14にそれぞれ連結することにより、従来のドラム用響線と同様に裏面側ドラムヘッド3に対して装着されており、不使用時においては各響線11が裏面側ドラムヘッド3から離間されて非接触状態に保持され、使用時にレバー15の操作によって裏面側ドラムヘッド3に接触されるように構成されている。したがって、この接触状態でドラムヘッドを打撃すると、ドラムヘッドの振動が各響線1に伝達され楽器に特有なパラパラという軽快な音色の特殊音響効果が得られる。
【0022】
ここで、響線11を断面形状が多角形の線材11Aまたは11Bで形成すると、図5に示す断面形状が円形の線材16を響線として用いた従来のドラム用響線に比べてドラムヘッド3との接触量を増大させることができる。すなわち、コイル状の線材からなる響線について比較すると、従来の断面円形のコイル状線材16を響線として用いた場合は、ドラムヘッド3との接触の初期状態は全て図5(A)に示すように点状の接触となる。一方、断面形状が六角形のコイル状の線材11Aを響線として用いた場合は、図6(A)や図7(A)に示すように、6つの角部a1〜a6と、6つの面b1〜b6が存在するため、ドラムヘッド3との接触の初期状態で、角部と面が順次接触し、点、線および面での接触となり、接触量が増大する。したがって、線材11Aの本数を増やしたり長さを長くすることなく衝突音の音量を従来に比べて増大させることができる。
【0023】
図3に示した直線状の線材11Bを響線11として用いた場合は、ドラムヘッド3との接触の初期状態で線状または面状の接触となり、図6(A)に示すように角部が線状に接触する場合は、従来の断面円形からなる直線状の響線と接触量が殆ど変わらないが、図7(A)に示すように面で接触する場合は接触量を大幅に増大させることができる。
【0024】
つまり、直線状の響線11Bの場合は、裏面側ドラムヘッド3に対する初期状態での接触の状態を変えることにより、音量の選択が可能で、角部による接触の場合は、従来の断面形状が円形の線材16からなる響線と略同等の音量が得られ、面による接触の場合は、接触量が増大するため、コイル状の線材11Aを響線11として用いた場合と同様に同様に線材11Aの本数を増やしたり長さを長くすることなく音量を従来に比べて増大させることができる。
【0025】
また、コイル状の線材11Aからなる響線11の場合は、面以外に点と線の接触状態も含まれるので、接触点毎にダンピング効果が異なり、従来とは異なった音色の特殊音響効果を得ることができる。
【0026】
一方、直線状の細い線材11Bからなる響線11の場合は、細いことによる繊細さ(反応の良さ)と音量を同時に確保することができる。
【0027】
図5(B)、図6(B)、図7(B)は、ドラムヘッドの打撃時の接触状態を示す図である。
ドラムヘッド3が弾性体であるため、図5(A)、図6(A)、図7(A)に示すドラムヘッド3と線材11A,16との接触の初期状態において、ドラムヘッド3を打撃して振動させると、線材11A,16がドラムヘッド3に食い込むことによって接触状態が図5(B)、図6(B)、図7(B)のように変化する。すなわち、図6(B)の場合は図5(B)の場合より沈み込み量が少なく、図7(B)の場合は図5(B)の場合よりも沈み込み量が多くなる。
【0028】
つまり、断面形状が円形の線材16からなる響線の場合はどの接触をとっても一定である沈み込み量を、断面形状が多角形の線材11A,11Bからなる響線11の場合はいろいろに変化させることができる。沈み込み量は響線11のダンピング効果につながり、沈み込みが浅ければダンピング効果は小さく、沈み込みが深ければダンピング効果は大きくなる。また、断面形状が多角形の線材11A,11Bからなる響線11の場合は、上記した通り接触の初期状態が異なるため、ダンピング効果は一定ではなく、幅広いダンピング効果を得ることができる(より華やかな音色効果となる)。
【0029】
響線の沈み込み量については、線材11A,11Bを捩って取付けたり、取付け方を替えることにより、沈み込み量を多段に替えることができる。また、断面形状が多角形の線材からなる響線11をコイル状の線材11Aのような3次元形状としても、直線ワイヤ形状や波折り形状(ジグザグ形状)のような2次元形状等にしても、同様な効果が得られる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るドラム用響線およびドラムは、断面形状が多角形からなる線材を響線として用いるように構成したので、ドラムヘッドとの接触の初期状態においてコイル状響線の場合は点、線に加えて面で接触し、直線状響線の場合は線または面で接触させることができる。したがって、響線自体の本数や長さを長くしなくても接触量を断面形状が円形の線材からなる響線に比べて増大させることが可能であるから、大きな衝突音量を得ることができる。また、点、線、面で接触すると、接触の状態が一様でないため、ダンピング効果が異なり、音色の異なった特殊演奏効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るドラム用響線を備えたスネアードラムの外観斜視図である。
【図2】 コイル状の線材からなる響線を用いたドラム用響線の平面図である。
【図3】 直線状の線材からなる響線を用いたドラム用響線の平面図である。
【図4】 響線の断面図である。
【図5】 ドラムヘッドと断面形状が円形の線材からなる響線の接触点を示す図で、(A)はドラムヘッドと響線との接触の初期状態を示す図、(B)は響線が沈み込んだ状態を示す図である。
【図6】 ドラムヘッドと断面形状が六角形の線材からなる響線の接触点を示す図で、(A)はドラムヘッドと響線との接触の初期状態を示す図、(B)は響線が沈み込んだ状態を示す図である。
【図7】 ドラムヘッドと断面形状が六角形の線材からなる響線の接触点を示す図で、(A)はドラムヘッドと響線との接触の初期状態を示す図、(B)は響線が沈み込んだ状態を示す図である。
【符号の説明】
1…スネアドラム、2…胴本体、3…裏面側のドラムヘッド、10…ドラム用響線、11…響線、11A…コイル状の線材、11B…直線状の線材。
Claims (4)
- 並設された複数本の細い響線からなりドラムヘッドに対して接離されるドラム用響線において、
前記響線の少なくとも一部の本数を断面多角形の線材で形成したことを特徴とするドラム用響線。 - 請求項1記載のドラム用響線において、
線材をコイル状に形成したことを特徴とするドラム用響線。 - 請求項1記載のドラム用響線において、
線材を直線状に形成したことを特徴とするドラム用響線。 - 請求項1,2または3記載のドラム用響線を備えたことを特徴とするドラム。
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