JP3706993B2 - トンネル安定性の試験方法および試験設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネルを構築するにあたって、事前にトンネルの安定性を検討するための試験方法および試験設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トンネルを構築するにあたっては、トンネルを構築した際に発生する周辺岩盤の変形やロックボルトの軸力分布、吹き付けコンクリート、鋼製支保工、二次覆工等の応力、軸力、曲げ応力等を、事前に予想し、トンネルの安定性を検討する必要がある。
【0003】
このための試験方法としては、これまでに以下のような方法が用いられてきた。
▲1▼ 室内モデル試験
▲2▼ 現在施工中のトンネルにおける施工試験
▲3▼ 試験トンネルによる試験。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの試験方法は、それぞれ以下に示すような問題点を有している。
▲1▼ 室内モデル試験
・一般に相似則が成り立たないため、試験結果と実際のトンネルの挙動の値とには一対一の対応がない。
・岩盤の力学特性には、室内実験のような小さなモデルでは、本来のスケールでの強度や変形特性、あるいは破壊挙動などの力学的な挙動を十分表現できない場合がある。
・室内試験では、モデルのスケールが小さいため、支保工を定量的に表現することが難しい。
・同様に、小さなモデルでは、岩盤・地中内変位、ロックボルト軸力、トンネル周辺のゆるみ領域、内空変位などを実際のトンネルと同様に測定することが難しい。
・トンネルの実際の三次元的な施工過程を模擬した試験をすることが難しい。
・500m以上の大深度の(初期地圧の大きな)荷重条件下での複雑な実験をすることが難しい。
【0005】
▲2▼ 現在施工中のトンネルによる施工試験
・必要とされる条件に適合するトンネルが実際にはほとんどない。
・供用を前提としているため、トンネル周辺の岩盤を一時的にも不安定にすることは望ましくない。
・施工工期を遅らせるような試験はできない。
【0006】
▲3▼ 試験トンネルによる試験
・大深度のトンネルにおける試験となると、所定の深度までのアクセスの建設コストが高い。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、特に大深度トンネルにおけるトンネルおよび周辺地山の力学的挙動を検討する際に、コストが掛からず、なおかつ、本来のスケールで必要な条件を模擬することが可能なトンネル安定性の試験方法および試験設備を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載のトンネル安定性の試験方法は、トンネルの安定性を検討するための試験方法であって、
地中に試験トンネルを掘削するとともに、該試験トンネルを包囲するようにボーリング孔を掘削し、
前記ボーリング孔内に水圧を作用させることにより、前記試験トンネルに作用する地圧が所定の深度における地圧と同一となるような状態を実現し、
この状態において、前記試験トンネルおよびその周辺の地山の力学的挙動を測定することを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載のトンネル安定性の試験設備は、トンネルの安定性を検討するための試験設備であって、
地中に掘削された試験トンネルと、
該試験トンネルを包囲するように設けられたボーリング孔と
該ボーリング孔に接続されて、該ボーリング孔内に所定の水圧を作用させるための水圧発生装置と、
前記試験トンネルおよびその周辺の地山の力学的挙動を測定するための計測装置とを備えたことを特徴としている。
【0010】
このような構成とされるために、これらのトンネル安定性の試験方法および試験設備においては、浅い深度に構築した試験トンネルの周囲の地圧を、ボーリング孔内に作用させた水圧により制御することができる。
【0011】
請求項3記載のトンネル安定性の試験設備は、請求項2記載のトンネル安定性の試験設備であって、
前記試験トンネルよりも大きな断面寸法を有する試験準備坑道を有し、
前記試験トンネルおよび前記ボーリング孔は、互いに平行に設けられるとともに、ともに前記試験準備坑道から延出する構成とされていることを特徴としている。
【0012】
このような構成とされるために、このトンネル安定性の試験設備においては、試験トンネルおよびボーリング孔を容易に設置することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1から図3は、本発明の一実施の形態であるトンネル安定性の試験設備1を示す図であり、図1は、試験設備1の概略構成を示す斜視図、図2は、試験設備1における試験トンネル2の軸方向と平行な鉛直断面から試験設備1を見た場合の図、図3は、図2におけるI−I線矢視断面図である。
【0014】
これらの図中に示すように、試験設備1は、地盤G中に掘削された試験準備坑道3と、試験準備坑道3から延出する試験トンネル2およびボーリング孔4,4,…と、ボーリング孔4,4,…のそれぞれに図示しない配管を介して接続された水圧発生装置5と、試験トンネル2を構成する鋼製支保工および吹き付けコンクリート7やロックボルト8、インバートコンクリート10、あるいは試験トンネル2の周囲の地盤Gに設置された各種のセンサ(計測機器)Sと、これらセンサSに対して図示しない配線を介して接続された計測装置11とを備えた構成となっている。
【0015】
また、図3中に示すように、試験準備坑道3は、試験トンネル2の軸線と直交する断面から見た場合に、試験トンネル2より大きな断面寸法を有する構成とされている。また、ボーリング孔4,4,…は、試験トンネル2と平行に設けられるとともに、図3中に示すように、試験トンネル2の軸線と直交する断面から見た際に試験トンネル2を包囲するように配置されている。
【0016】
次に試験設備1の構築方法を説明する。
これには、地盤G中に試験準備坑道3を掘削し、試験準備坑道3から、試験トンネル2の設置対象位置を包囲するようにボーリング孔4,4,…を掘削し、さらに、ボーリング孔4,4,…に囲まれた位置に、試験トンネル2を掘削する。そして、試験トンネル2およびその周辺の地盤G内に、鋼製支保工および吹き付けコンクリート7、ロックボルト8、インバートコンクリート10等を設置するとともに、これらにセンサSを取り付け、さらに、センサSを計測装置11に対して接続する。また、ボーリング孔4,4,…については、試験準備坑道3側の基端部4a,4a,…を水圧発生装置5に配管接続するとともに、この状態で基端部4a,4a,…を図示しないプラグにより閉塞することにより、水圧発生装置5の水圧がボーリング坑4,4,…内に作用するようにする。これにより、図1から3に示したような構成が実現される。
【0017】
また、この試験設備1を利用してトンネルの安定性の検討を行う場合、以下の二つの手順を採用することができる。すなわち、▲1▼試験トンネル2を予め構築してから水圧をボーリング孔4,4,…に作用させて試験を行う第一の手順、および、▲2▼ボーリング孔4,4,…に予め水圧を与えておいて、その状態で、試験トンネル2を掘削し、鋼製支保工および吹き付けコンクリート7等を設置するといった一般的なトンネルの施工試験を行う第二の手順である。
【0018】
▲1▼、▲2▼のそれぞれの場合において、ボーリング孔4,4,…内に水圧を作用させると、既に建設された試験トンネル2あるいは試験トンネル2を構築、施工する領域に作用する地圧が増大することとなるから、水圧を調整することにより、試験トンネル2に作用する地盤Gの地圧を、所定の深度における地圧と同一とすることができる。そして、この状態において、センサS,S,…からの出力を計測装置11により測定することで、試験トンネル2およびその周辺地山の力学的挙動を測定し、その結果に基づき、トンネルの安定性を検討することができる。
【0019】
なお、実際に試験を行う場合には、まず、▲1▼の試験の試験を行って所定の計測評価を実施し、かつ、地山の安定性を確認した後、▲2▼の試験を行うようにする。そして、▲2▼の試験により、最終的に、実規模のトンネルの施工と同等の試験を行って、トンネル掘削に伴う地山の変形挙動の把握、支保設置後の切羽進行に伴う地山の変形、支保に生じる応力、断面力等を把握する。
【0020】
以上述べたトンネルの安定性の試験方法および試験設備1によれば、試験トンネル2を包囲するように掘削されたボーリング孔4,4,…内に水圧を作用させることにより、試験トンネル2に作用する地圧が所定の深度における地圧と同一となるような状態を実現し、この状態において、試験トンネル2およびその周辺の地山の力学的挙動を測定することができるため、試験トンネル2を浅い深度に構築したとしても、試験トンネル2の周囲の地圧を、大深度における地圧と同一に設定することができる。これにより、大深度トンネルの安定性の試験を行うにあたって、所定の深度までのアクセスの建設コストが必要とならず、アクセストンネルを短くして試験コストを非常に小さくすることができる。
【0021】
また、従来の室内モデルを用いたトンネルの安定性の試験と比較した場合、実際のスケールで試験を行うことができるため、室内試験の相似則が成り立たないことについての問題を回避することができ、岩盤の力学的特性を、本来のスケールでの強度や変形特性、破壊挙動などの力学的挙動として表現することができる。また、モデルのスケールが実スケールであるため、例えば、鋼製支保工および吹き付けコンクリート7について定量的な表現が可能であり、また、同様に、地盤Gの変位やロックボルト8の軸力、試験トンネル2周辺のゆるみ領域、内空変位などを容易に測定することが可能となる。さらに、トンネルの実際の三次元的な施工過程を模擬した試験をすることが可能であり、また、500m以上の大深度の(初期地圧の大きな)荷重条件下での複雑な実験を行うことができる。
【0022】
さらに、施工中のトンネルを利用して試験を行う必要がないため、トンネルの周辺地山を不安定にしたり、あるいは、施工工期を遅らせるような懸念がない。
【0023】
また、上述の試験設備1は、試験トンネル2よりも大きな断面寸法を有する試験準備坑道3から試験トンネル2およびボーリング孔4,4,…が、互いに平行に延出する構成となっているために、試験トンネル2およびボーリング孔4,4,…を容易に構築することができ、施工性に優れている。
【0024】
なお、上記実施の形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で他の構成を採用するようにしても良い。
例えば、地盤Gの透水性が高い場合には、ボーリング孔4,4,…に対してグラウト施工やゴムスリーブなどの止水対策を行うようにしても良い。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係るトンネル安定性の試験方法および請求項2に係るトンネル安定性の試験設備においては、試験トンネルを包囲するように掘削されたボーリング孔内に水圧を作用させることにより、試験トンネルに作用する地圧が所定の深度における地圧と同一となるような状態を実現し、この状態において、試験トンネルおよびその周辺の地山の力学的挙動を測定することができるため、試験トンネルを浅い深度に構築したとしても、試験トンネルの周囲の地圧を、大深度における地圧と同一に設定することができる。これにより、大深度トンネルの安定性の試験を行うにあたって、所定の深度までのアクセスの建設コストが必要とならず、アクセストンネルを短くして試験コストを非常に小さくすることができる。また、従来の室内モデルを用いたトンネルの安定性の試験と比較した場合、実際のスケールで試験を行うことができるため、室内試験の相似則が成り立たないことの問題を回避することができ、岩盤の力学的特性を、本来のスケールでの強度や変形特性、破壊挙動などの力学的挙動として表現することができる。また、モデルのスケールが実スケールであるため、例えば、支保工について定量的な表現が可能であり、また、同様に、地盤の変位やロックボルトの軸力、試験トンネル周辺のゆるみ領域、内空変位などを容易に測定することが可能となる。さらに、トンネルの実際の三次元的な施工過程を模擬した試験をすることが可能であり、また、500m以上の大深度の(初期地圧の大きな)荷重条件下での複雑な実験を行うことができる。さらに、施工中のトンネルを利用して試験を行う必要がないため、トンネルの周辺地山を不安定にしたり、あるいは、施工工期を遅らせるような懸念がない。
【0026】
請求項3に係るトンネル安定性の試験設備においては、試験トンネルよりも大きな断面寸法を有する試験準備坑道から試験トンネルおよびボーリング孔が、互いに平行に延出する構成となっているために、試験トンネルおよびボーリング孔を容易に構築することができ、施工性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1 】 本発明の一実施の形態を模式的に示すトンネルの安定性の試験設備の斜視図である。
【図2 】 図1に示した試験設備において試験トンネルの軸方向と平行な鉛直断面から試験設備を見た場合の立断面図である。
【図3 】 図2におけるI−I線矢視断面図である。
【符号の説明】
1 試験設備
2 試験トンネル
3 試験準備坑道
4 ボーリング孔
5 水圧発生装置
7 鋼製支保工および吹き付けコンクリート
8 ロックボルト
10 インバートコンクリート
11 計測装置
G 地盤
S センサ(計測機器)
Claims (3)
- トンネルの安定性を検討するための試験方法であって、
地中に試験トンネルを掘削するとともに、該試験トンネルを包囲するようにボーリング孔を掘削し、
前記ボーリング孔内に水圧を作用させることにより、前記試験トンネルに作用する地圧が所定の深度における地圧と同一となるような状態を実現し、
この状態において、前記試験トンネルおよびその周辺の地山の力学的挙動を測定することを特徴とするトンネル安定性の試験方法。 - トンネルの安定性を検討するための試験設備であって、
地中に掘削された試験トンネルと、
該試験トンネルを包囲するように設けられたボーリング孔と
該ボーリング孔に接続されて、該ボーリング孔内に所定の水圧を作用させるための水圧発生装置と、
前記試験トンネルおよびその周辺の地山の力学的挙動を測定するための計測装置とを備えたことを特徴とするトンネル安定性の試験設備。 - 請求項2記載のトンネル安定性の試験設備であって、
前記試験トンネルよりも大きな断面寸法を有する試験準備坑道を有し、
前記試験トンネルおよび前記ボーリング孔は、互いに平行に設けられるとともに、ともに前記試験準備坑道から延出する構成とされていることを特徴とするトンネル安定性の試験方法および試験設備。
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