JP3705204B2 - 気相成長装置及び発光素子の製造装置 - Google Patents

気相成長装置及び発光素子の製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はキャリアガスとして窒素と水素とを切り替えて使用する気相成長装置及び発光素子の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のMOCVD装置を、図4に示す。図4に示すMOCVD装置101は、基板102を内部に配置して結晶成長を行う反応管103と、III族の原料となる反応ガスを反応管103に供給するランライン104と、ランライン104から反応管103に供給されている反応ガスにより形成されている気相成長膜の上に形成される気相成長膜を成膜するための反応ガスを予め準備しておくためのベントライン105と、V族の原料となる反応ガスを反応管103に供給するV族供給ライン106と、反応管103内の反応ガス及びベントライン105に供給される反応ガスを排気する真空ポンプ107と、ランライン104とベントライン105とのそれぞれのラインを流れる反応ガスの差圧を測定する差圧計108とを有して構成される。また、MOCVD装置101は、差圧計108の指示によりランライン104とベントライン105との差圧がゼロとなるようにピエゾバルブ112を制御するための自動圧力制御装置111を備えている。
【0003】
ランライン104には、キャリアガスとなる窒素が、ガス流量を調整するマスフローコントローラ(MFC)109a及びバルブ110aを介して供給される。また、ランライン104には、キャリアガスとなる水素が、MFC109b及びバルブ110bを介して供給される。
【0004】
また、ランライン104には、III族の原料となる反応ガスとして、例えば有機金属のMO1が、それぞれMFC109c、109d及びバルブ110cを介して供給され、また、MO2が、MFC109e、109f及びバルブ110dを介して供給される。
【0005】
ベントライン105には、MFC109a及びランライン104にキャリアガスを供給するラインとは異なるラインのバルブ110eを介して、キャリアガスとなる窒素が供給される。また、ベントライン105には、MFC109b及びランライン104にキャリアガスを供給するラインとは異なるラインのバルブ110fを介して、キャリアガスとなる水素が供給される。
【0006】
また、ベントライン105には、MFC109c、109d及びランライン104に反応ガスを供給するラインとは異なるラインのバルブ110gを介して、反応ガスとなるMO1が供給され、また、MO2が、MFC109e、109f及びランライン104に反応ガスを供給するラインとは異なるラインのバルブ110hを介して、反応ガスとなるMO2が供給される。
【0007】
さらに、ベントライン105には、最上流側から常にMFC109gを介して窒素が供給されている。
【0008】
ベントライン105に供給される反応ガスは、反応管103内の反応ガスを排気する真空ポンプ107により排気されており、常に流れている状態にある。これにより、ベントライン105を流れている反応ガスは、ランライン104を流れている反応ガスと同程度の減圧状態に保たれ、ランライン104に供給されている反応ガスによる成膜が終了した後、直ちにバルブを切り替えてランライン104に移され、反応管103に供給される状態に保持されている。
【0009】
バルブ110a及び110eは、キャリアガスとして窒素を、ランライン104又はベントライン105のいずれか一方に供給するための水素切替手段となる。また、バルブ110b及び110fは、キャリアガスとして水素をランライン104又はベントライン105のキャリアガスとして水素が供給されていない方へ供給するための窒素切替手段となる。これらバルブ110a、110b、110e、110fは、互いに連動して開閉動作することにより2つの状態をとるように制御され、窒素又は水素のいずれか一方を選択的にランライン104へ供給し、他方をベントライン105へ供給する。具体的には、ランライン104にキャリアガスとして水素を供給する際にはベントライン105に窒素を供給するように、バルブ110aがオフ、バルブ110bがオン、バルブ110eがオン、バルブ110fがオフとなる。逆に、ランライン104にキャリアガスとして窒素を供給する際にはベントライン105に水素を供給するように、バルブ110aがオン、バルブ110bがオフ、バルブ110eがオフ、バルブ110fがオンとなる。
【0010】
このMOCVD装置101では、ランライン104とベントライン105とのそれぞれのラインを流れる反応ガスの差圧が設定値からずれたことを検出してピエゾバルブ112を調整し配管内の圧力の変動を抑えるための差圧計108が、配管のほぼ中央、具体的にはキャリアガスとして水素をランライン104へ供給するためのバルブ110b及びベントライン105へ供給するためのバルブ110fよりも下流であり、且つMO1を供給するためのバルブよりも上流側となるように、ランライン104とベントライン105との間に接続される。
【0011】
以上のようなMOCVD装置101でIII−V族化合物半導体を用いたGaN系の発光ダイオードを作製する場合について説明する。
【0012】
先ず、反応管103の内部に結晶成長用の基板102を載置し、図示しないヒータによって例えば1000℃付近に基板102を加熱する。そして、V族供給ライン106からMFCで流量を制御されたNHとランライン104から反応ガスとを反応管103に供給することにより、基板102上で熱化学反応を生じさせて原料元素を基板102上に堆積させ、クラッド層として機能するGaN層を成長させる。この場合、対応するバルブの開閉を制御することにより、キャリアガスとして水素とIII族の原料としてトリメチルガリウム(TMG)との混合ガスを反応ガスとしてランライン104から反応管103に供給する。これと同時に、対応するバルブの開閉を制御することにより、GaN層の成膜後に行われるInGaN層の成膜の際の反応ガスをベントライン105に準備しておく。なお、GaN系発光ダイオードの製造中、MFC109gを介してベントライン105に窒素を常時供給する。
【0013】
次に、GaN層の成膜終了後、対応するバルブを切り替えることにより、ベントライン105で予め準備した反応ガスをランライン104へ移し、活性層として機能するInGaN層の成膜を開始する。そして、対応するバルブの開閉を制御することにより、キャリアガスとして窒素とIII族の原料としてトリメチルインジウム(TMI)及びTMGとの混合ガスを反応ガスとしてランライン104から反応管103に供給し、InGaN層をさらに成長させる。これと同時に、InGaN層の成膜後に行われるGaN層の成膜の際の反応ガスをベントライン105に準備しておく。
【0014】
次に、InGaN層の成膜終了後、対応するバルブを切り替えることにより、ベントライン105で予め準備した反応ガスをランライン104へ移し、クラッド層として機能するGaN層の成膜を開始する。そして、対応するバルブの開閉を制御することにより、キャリアガスとして窒素とIII族の原料としてTMGとの混合ガスを反応ガスとしてランライン104から反応管103に供給し、GaN層をさらに成長させる。
【0015】
このようにして積層された発光ダイオードの積層膜に対して金属材料薄膜を成膜するとともにパターニングしてp電極及びn電極を接続し、GaN系の発光ダイオードが完成する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、差圧計108の内部には被測定ガスを流通させるための複雑な配管が施されているので、差圧計108の内部及び差圧計108付近の配管は、ガスの流れが滞り、よどみやすい状態となっている。
【0017】
このため、上述したようなGaN層形成工程の間に、ランライン104においてはキャリアガスとして水素が差圧計108付近を通過することにより、この水素が差圧計108に入り込む等して差圧計108付近に停滞することになる。
【0018】
そして、GaN層の成膜終了後、InGaN層を成膜する際に、バルブ110aを介してキャリアガスとして窒素がランライン104へ供給されるのと同時に、差圧計108付近に停滞していた水素がランライン104に混入することによって、InGaN層成膜中の反応管103に供給されてしまう。InGaN層の成膜時にはキャリアガスとして極めて高純度の窒素が必要であるため、水素が混入して反応ガスを汚染することによってInGaNの結晶成長が妨げられて、GaN系発光ダイオードの不良率を低下させるおそれがある。
【0019】
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、差圧計付近のガスのよどみに起因する反応ガスの汚染を防止して高品質な成膜を達成する気相成長装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る気相成長装置は、気相成長により成膜を行う反応管と、基板上に膜を成膜するための反応ガスを、上記反応管に供給するランラインと、上記ランラインと並列して設けられ、次工程で用いる反応ガスを予め準備するとともに捨てておくためのベントラインと、キャリアガスとして水素を上記ランライン又は上記ベントラインのいずれか一方に供給する水素切替手段と、上記水素切替手段が上記ランライン又は上記ベントラインのいずれか一方に水素を供給するときに、キャリアガスとして窒素を他方に供給する窒素切替手段と、上記ランラインと上記ベントラインとの差圧を検出する差圧計とを備え、上記差圧計は、上記水素切替手段の上流側において上記ランラインと上記ベントラインとの間に接続されることを特徴とする。
【0021】
以上のように構成された気相成長装置では、例えば先ず、水素切替手段からランラインへキャリアガスとして水素を供給し、ランラインから反応ガスを反応管へ供給してキャリアガスとして水素を用いて成膜する。このとき、窒素切替手段からベントラインへランラインとの差圧がなくなるように窒素を供給し、捨てておく。キャリアガスとして水素を用いた成膜終了後、ベントラインで予め準備した反応ガスをランラインへ移し、反応管へ供給することによりキャリアガスとして窒素を用いて成膜する。
【0022】
この気相成長装置では、キャリアガスとして水素をランラインへ供給するための水素切替手段よりも上流側に差圧計が接続されているので、キャリアガスとして水素を用いて成膜する際に、水素切替手段を介してランラインに供給された水素が差圧計付近を通過・停滞することがなく、差圧計付近には常に窒素が停滞することになる。このため、次工程でキャリアガスとして窒素を用いて成膜する際に、差圧計付近から水素がランラインへ混入することがなく、高純度の反応ガスを反応管に供給できる。すなわち、本発明の気相成長装置は、キャリアガスとして窒素を用いる成膜時に、前工程で用いた水素を反応ガスに混入させたくない場合に極めて有効である。
【0023】
また、本発明に係る発光素子の製造装置は、GaN層とInGaN層とGaN層とがこの順に形成されてなる発光素子の製造装置であって、気相成長により成膜を行う反応管と、基板上に膜を成膜するための反応ガスを、上記反応管に供給するランラインと、上記ランラインと並列して設けられ、次工程で用いる反応ガスを予め準備するとともに捨てておくためのベントラインと、キャリアガスとして水素を上記ランライン又は上記ベントラインのいずれか一方に供給する水素切替手段と、上記水素切替手段が上記ランライン又は上記ベントラインのいずれか一方に水素を供給するときに、キャリアガスとして窒素を他方に供給する窒素切替手段と、上記ランラインと上記ベントラインとの差圧を検出する差圧計とを備え、上記差圧計は、上記水素切替手段の上流側において上記ランラインと上記ベントラインとの間に接続されることを特徴とする。
【0024】
以上のような発光素子の製造装置では、キャリアガスとして水素をランラインへ供給するための水素切替手段よりも上流側に差圧計が接続されているので、GaN層を成膜する際に、水素切替手段を介してランラインに供給された水素が差圧計付近を通過・停滞することがなく、差圧計付近には常に窒素が停滞することになる。このため、InGaN層を成膜する際に、差圧計付近から水素がランラインへ混入することがなく、高純度の反応ガスを反応管に供給できる。すなわち、本発明の気相成長装置は、InGaN層の成膜時のような反応ガスに水素を混入させたくない工程に極めて有効である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した気相成長装置について、III−V族化合物半導体を作製するための有機金属化学気相成長(以下、MOCVDと称する。)装置を例に挙げ、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1に示すMOCVD装置1は、基板2を内部に配置して気相成長により成膜を行う反応管3と、III族の原料となる反応ガスを反応管3に供給するランライン4と、ランライン4と平行して設けられ、次工程で用いる反応ガスを予め準備して捨てておくためのベントライン5と、V族の原料となる反応ガスを反応管3に供給するV族供給ライン6と、反応管3内の反応ガス及びベントライン5に供給される反応ガスを排気する真空ポンプ7と、ランライン4とベントライン5との差圧を測定する差圧計8とを有して構成される。また、MOCVD装置1は、差圧計8の指示によりランライン4とベントライン5との差圧がゼロとなるようにピエゾバルブ12を制御するための自動圧力制御装置11を備えている。
【0027】
ランライン4には、キャリアガスとして窒素が、ガス流量を調整するマスフローコントローラ(MFC)9a及びバルブ10aを介して供給される。また、ランライン4には、キャリアガスとして水素が、MFC9b及びバルブ10bを介して供給される。
【0028】
また、ランライン4には、III族の原料として、例えば有機金属のMO1が、それぞれMFC9c、9d及びバルブ10cを介して供給され、また、MO2が、MFC9e、9f及びバルブ10dを介して供給される。
【0029】
III族の原料としては、例えばトリメチルガリウム(TMG;(CHGa)、トリエチルガリウム(TEG;(CGa)、トリメチルアルミニウム((CHAl)、トリエチルホウ素((CB)、トリメチルインジウム((CHIn)等が用いられ、これらの原料にキャリアガスをバブリングすることによりその蒸気圧分の原料ガスがランライン4に供給される。
【0030】
ベントライン5には、MFC9a及びランライン4にキャリアガスを供給するラインとは異なるラインのバルブ10eを介して、キャリアガスとなる窒素が供給される。また、ベントライン5には、MFC9b及びランライン4にキャリアガスを供給するラインとは異なるラインのバルブ10fを介して、キャリアガスとなる水素が供給される。
【0031】
また、ベントライン5には、MFC9c、9d及びランライン4に原料を供給するラインとは異なるラインのバルブ10gを介して、原料となるMO1が供給され、また、MO2が、MFC9e、9f及びランライン4に原料を供給するラインとは異なるラインのバルブ10hを介して、原料となるMO2が供給される。
【0032】
さらに、ベントライン5には、最上流側から常にMFC9gを介して窒素が供給されている。
【0033】
ベントライン5は、反応管3内の反応ガスを排気する真空ポンプ7により排気されており、常に流れている状態にある。これにより、ベントライン5を流れている反応ガスは、ランライン4を流れている反応ガスと同程度の減圧状態に保たれ、ランライン4に供給されている反応ガスによる成膜が終了した後、直ちにバルブを切り替えてランライン4に移され、反応管3に供給される状態に保持されている。
【0034】
バルブ10a及び10eは、キャリアガスとして窒素をランライン4又はベントライン5のいずれか一方に供給するための窒素切替手段となる。また、バルブ10b及び10fは、キャリアガスとして水素をランライン4又はベントライン5のキャリアガスとして水素が供給されていない方へ供給するための水素切替手段となる。これらバルブ10a、10b、10e、10fは、互いに連動して開閉動作することにより2つの状態をとるように制御され、窒素又は水素のいずれか一方を選択的にランライン4へ供給し、他方をベントライン5へ供給する。具体的には、ランライン4にキャリアガスとして水素を供給する際にはベントライン5に窒素を供給するように、バルブ10aがオフ、バルブ10bがオン、バルブ10eがオン、バルブ10fがオフとなる。逆に、ランライン4にキャリアガスとして窒素を供給する際にはベントライン5に水素を供給するように、バルブ10aがオン、バルブ10bがオフ、バルブ10eがオフ、バルブ10fがオンとなる。
【0035】
本発明を適用したMOCVD装置1では、ランライン4とベントライン5との差圧が設定値からずれたことを検出して差圧を正常値に戻すための差圧計8が、キャリアガスとなる水素をランライン4又はベントライン5へ供給するためのバルブ10b、10fよりも上流側に位置するように、ランライン4とベントライン5との間に接続される。
【0036】
なお、ランライン4やベントライン5等の配管として1/8インチや1/4インチ等の極端に径の細い配管を使用すると、配管のコンダクタンスが増大することにより差圧計8の接続場所によって圧力の計測値が変化して差圧の測定が不正確となるため、MOCVD装置1を構成する配管としては、例えば3/8インチや1/2インチ等の径の比較的太いものを使用することが好ましい。
【0037】
以上のようなMOCVD装置1で、図2に示すようなIII−V族化合物半導体を用いたGaN系の発光ダイオード11を作製する場合について説明する。
【0038】
図2に示す発光ダイオード11は、GaN系半導体層からなる下地成長層12上に選択成長された六角錘形状のGaN層13が形成されている。なお、下地成長層12上には図示しない絶縁膜が存在し、六角錘形状のGaN層13はその絶縁膜を開口した部分に後述するMOCVD法等の気相成長によって形成される。このGaN層13は、成長時に使用されるサファイア基板の主面をC面とした場合にS面(1−101面)で覆われたピラミッド型の成長層であり、シリコンをドープさせた領域である。このGaN層13の傾斜したS面の部分はダブルへテロ構造のクラッドとして機能する。GaN層13の傾斜したS面を覆うように活性層であるInGaN層14が形成されており、その外側にマグネシウムドープのGaN層15が形成される。このマグネシウムドープのGaN層15もクラッドとして機能する。
【0039】
このような発光ダイオード11には、p電極16とn電極17とが形成されている。p電極16はマグネシウムドープのGaN層15上に形成されるNi/Pt/Au又はNi(Pd)/Pt/Au等の金属材料を蒸着して形成される。n電極17は前述の図示しない絶縁膜を開口した部分でTi/Al/Au等の金属材料を蒸着して形成される。なお、下地成長層12の裏面側からn電極取り出しを行う場合は、n電極17の形成は下地成長層12の表面側には不要となる。
【0040】
なお、GaN系の発光ダイオードとしては、平板状や帯状に活性層が形成される構造であってもよく、上端部にC面が形成された角錐構造のものであってもよい。また、他の窒化物系発光素子や化合物半導体素子であってもよい。
【0041】
このような発光ダイオード11を作製するためには、先ず、反応管3の内部に結晶成長用の基板2を載置し、図示しないヒータによって例えば1000℃付近に基板2を加熱する。そして、V族供給ライン6からMFCで流量を制御されたNHとランライン4から反応ガスとを反応管3に供給することにより、基板2上で熱化学反応を生じさせて原料元素を基板2上に堆積させ、クラッド層として機能するGaN層13を成長させる。この場合、対応するバルブの開閉を制御することにより、キャリアガスとして水素とIII族の原料としてTMGとの混合ガスを反応ガスとしてランライン4から反応管3に供給する。これと同時に、対応するバルブの開閉を制御することにより、GaN層13の成膜後に行われるInGaN層14の成膜の際の反応ガスをベントライン5に準備しておく。なお、GaN系発光ダイオードの製造中、MFC9gを介してベントライン5に窒素を常時供給する。
【0042】
次に、GaN層13の成膜終了後、対応するバルブを切り替えることにより、ベントライン5で予め準備した反応ガスをランライン4へ移し、活性層として機能するInGaN層14の成膜を開始する。そして、対応するバルブの開閉を制御することにより、キャリアガスとして窒素とIII族の原料としてTMI及びTMGとの混合ガスを反応ガスとしてランライン4から反応管5に供給し、InGaN層14をさらに成長させる。これと同時に、InGaN層14の成膜後に行われるGaN層15の成膜の際の反応ガスをベントライン5に準備しておく。
【0043】
次に、InGaN層14の成膜終了後、対応するバルブを切り替えることにより、ベントライン5で予め準備した反応ガスをランライン4へ移し、クラッド層として機能するGaN層15の成膜を開始する。そして、対応するバルブの開閉を制御することにより、キャリアガスとして窒素とIII族の原料としてTMGとの混合ガスを反応ガスとしてランライン4から反応管3に供給し、GaN層15をさらに成長させる。
【0044】
このようにして積層された発光ダイオードの積層膜に対して金属材料薄膜を成膜するとともにパターニングしてp電極16及びn電極17を接続し、GaN系の発光ダイオード11が完成する。
【0045】
上述したようなMOCVD装置1では、差圧計8の接続場所が、キャリアガスとしての水素をランライン4へ供給するためのバルブ10a及び水素をベントライン5へ供給するためのバルブ10e、すなわち水素切替手段よりも上流側とされているので、水素が差圧計8を通過することがない。つまり、GaN層成膜時にキャリアガスとして水素をランライン4に流した場合にも、差圧計8付近の配管には窒素が停滞しているために差圧計8付近に水素が溯ることが抑制される。このように、差圧計8の接続場所を工夫することで差圧計8付近に必ず窒素が停滞するようになされているので、GaN層13成膜後のInGaN層14成膜時に、キャリアガスとして窒素のみがランライン4及び反応管3に供給され、水素がランライン4に混入することがない。したがって、反応管3へ汚染のない高純度の反応ガスを供給できるので、InGaN層14の安定した成長を実現し、化合物半導体であるGaN系発光ダイオードを歩留まりよく、また、高品質にて形成することができる。
【0046】
言い換えると、従来のMOCVD装置のように、GaN層13成膜時に使用するキャリアガスとしての水素が差圧計に入り込み、次工程のInGaN層14成膜時にこの水素がランラインに放出されてInGaNの結晶成長を妨げるといった不都合を防止することができる。
【0047】
ところで、図1に示すMOCVD装置1は、キャリアガスとして水素をランライン4へ供給するためのバルブ10a及びベントライン5へ供給するためのバルブ10eよりも上流側に差圧計8を接続することで、GaN層成膜時における差圧計8付近への水素の侵入・停滞を防止しているが、例えばGaN層の成膜が長時間化する等により、ランライン4を溯るように水素が拡散して差圧計8付近に水素が高濃度で停滞するおそれがある。最悪の場合、差圧計8付近で停滞した水素がInGaN層成膜時にランライン4に放出され、反応ガスに混入してInGaN層の成長を妨げることがある。
【0048】
そこで、上記問題点を解決して本発明の効果をより確実に得るために、図1に示すMOCVD装置1をさらに改良したMOCVD装置の他の例を、図3に示す。なお、図3においては、図1に示すMOCVD装置1と同じ部材については同じ符号を付す。
【0049】
図3に示すMOCVD装置21は、図1に示すMOCVD装置1と同様に、基板2を内部に配置して気相成長により成膜を行う反応管3と、III族の原料となる反応ガスを反応管3に供給するランライン4と、ランライン4と平行して設けられ反応ガスを予め準備しておくためのベントライン5と、V族の原料となる反応ガスを反応管3に供給するV族供給ライン6と、反応管3内の反応ガス及びベントライン5に供給される反応ガスを排気する真空ポンプ7と、ランライン4とベントライン5との差圧を測定する差圧計8とを有して構成される。また、MOCVD装置1は、差圧計8の指示によりランライン4とベントライン5との差圧がゼロとなるようにピエゾバルブ12を制御するための自動圧力制御装置11を備えている。
【0050】
ランライン4には、キャリアガスとして窒素が、ガス流量を調整するマスフローコントローラ(MFC)9a及びバルブ10aを介して供給される。また、ランライン4には、キャリアガスとして水素が、MFC9b及びバルブ10bを介して供給される。
【0051】
また、ランライン4には、III族の原料として、例えば有機金属のMO1が、それぞれMFC9c、9d及びバルブ10cを介して供給され、また、MO2が、MFC9e、9f及びバルブ10dを介して供給される。
【0052】
III族の原料としては、例えばトリメチルガリウム(TMG;(CHGa)、トリエチルガリウム(TEG;(CGa)、トリメチルアルミニウム((CHAl)、トリエチルホウ素((CB)、トリメチルインジウム((CHIn)等が用いられ、これらの原料にキャリアガスをバブリングすることによりその蒸気圧分の原料ガスがランライン4に供給される。
【0053】
ベントライン5には、MFC9a及びランライン4にキャリアガスを供給するラインとは異なるラインのバルブ10eを介して、キャリアガスとなる窒素が供給される。また、ベントライン5には、MFC9b及びランライン4にキャリアガスを供給するラインとは異なるラインのバルブ10fを介して、キャリアガスとなる水素が供給される。
【0054】
また、ベントライン5には、MFC9c、9d及びランライン4に原料を供給するラインとは異なるラインのバルブ10gを介して、原料となるMO1が供給され、また、MO2が、MFC9e、9f及びランライン4に原料を供給するラインとは異なるラインのバルブ10hを介して、原料となるMO2が供給される。
【0055】
さらに、ベントライン5には、最上流側から常にMFC9gを介して窒素が供給されている。
【0056】
ベントライン5は、反応管3内の反応ガスを排気する真空ポンプ7により排気されており、常に流れている状態にある。これにより、ベントライン5を流れている反応ガスは、ランライン4を流れている反応ガスと同程度の減圧状態に保たれ、ランライン4に供給されている反応ガスによる成膜が終了した後、直ちにバルブを切り替えてランライン4に移され、反応管3に供給される状態に保持されている。
【0057】
バルブ10a及び10eは、キャリアガスとして窒素をランライン4又はベントライン5のいずれか一方に供給するための水素切替手段となる。また、バルブ10b及び10fは、キャリアガスとして水素をランライン4又はベントライン5のキャリアガスとして水素が供給されていない方へ供給するための窒素切替手段となる。これらバルブ10a、10b、10e、10fは、互いに連動して開閉動作することにより2つの状態をとるように制御され、窒素又は水素のいずれか一方を選択的にランライン4へ供給し、他方をベントライン5へ供給する。具体的には、ランライン4にキャリアガスとして水素を供給する際にはベントライン5に窒素を供給するように、バルブ10aがオフ、バルブ10bがオン、バルブ10eがオン、バルブ10fがオフとなる。逆に、ランライン4にキャリアガスとして窒素を供給する際にはベントライン5に水素を供給するように、バルブ10aがオン、バルブ10bがオフ、バルブ10eがオフ、バルブ10fがオンとなる。
【0058】
さらに、図3に示すMOCVD装置21では、ランライン4の最上流に、MFC9hを介してランライン4に常に窒素を供給するための窒素供給ライン22が追加されている。この窒素供給ライン22からは、少量の窒素が常にランライン4へ供給されるようになされている。
【0059】
本発明を適用したMOCVD装置21では、ランライン4とベントライン5との差圧が設定値からずれたことを検出して差圧を正常に戻すための差圧計8が、キャリアガスとなる水素をランライン4又はベントライン5へ供給するためのバルブ10b、10fよりも上流側であり、且つランライン4の上流側に追加された窒素供給ライン22とベントライン5との間に接続される。
【0060】
なお、ランライン4やベントライン5等の配管として1/8インチや1/4インチ等の極端に径の細い配管を使用すると、配管のコンダクタンスが増大することにより差圧計8の接続場所によって圧力の計測値が変化して差圧の測定が不正確となるため、MOCVD装置21を構成する配管としては、例えば3/8インチや1/2インチ等の径の比較的太いものを使用することが好ましい。
【0061】
以上のようなMOCVD装置21でIII−V族化合物半導体を用いたGaN系の発光ダイオードを作製する場合について説明する。なお、発光ダイオードは、上述した図2に示す発光ダイオード11と同様のものを例に挙げる。
【0062】
先ず、反応管3の内部に結晶成長用の基板2を載置し、図示しないヒータによって例えば1000℃付近に基板2を加熱する。そして、V族供給ライン6からMFCで流量を制御されたNHとランライン4から反応ガスとを反応管3に供給することにより、基板2上で熱化学反応を生じさせて原料元素を基板2上に堆積させ、クラッド層として機能するGaN層を成長させる。この場合、対応するバルブの開閉を制御することにより、キャリアガスとして水素とIII族の原料としてTMGとの混合ガスを反応ガスとしてランライン4から反応管3に供給する。これと同時に、対応するバルブの開閉を制御することにより、GaN層の成膜後に行われるInGaN層の成膜の際の反応ガスをベントライン5に準備しておく。
【0063】
なお、GaN系発光ダイオードの製造中、MFC9gを介してベントライン5に窒素を常時供給する。
【0064】
また、GaN系発光ダイオードの製造中、図2に示すMOCVD装置21においては、MFC9hを介して窒素供給ライン22、さらにランライン4に窒素を常時供給する。このとき、窒素供給ライン22及びランライン4に流す窒素の流量は、後述するようにバルブ10bからランライン4に供給されたキャリアガスとしての水素が、ランライン4を溯るように拡散しない程度のごく少量でよい。
【0065】
次に、GaN層の成膜終了後、対応するバルブを切り替えることにより、ベントライン5で予め準備した反応ガスをランライン4へ移し、活性層として機能するInGaN層の成膜を開始する。そして、対応するバルブの開閉を制御することにより、キャリアガスとして窒素とIII族の原料としてTMI及びTMGとの混合ガスを反応ガスとしてランライン4から反応管5に供給し、InGaN層をさらに成長させる。これと同時に、InGaN層の成膜後に行われるGaN層の成膜の際の反応ガスをベントライン5に準備しておく。
【0066】
次に、InGaN層の成膜終了後、対応するバルブを切り替えることにより、ベントライン5で予め準備した反応ガスをランライン4へ移し、クラッド層として機能するGaN層の成膜を開始する。そして、対応するバルブの開閉を制御することにより、キャリアガスとして窒素とIII族の原料としてTMGとの混合ガスを反応ガスとしてランライン4から反応管3に供給し、GaN層をさらに成長させる。
【0067】
このようにして積層された発光ダイオードの積層膜に対して金属材料薄膜を成膜するとともにパターニングしてp電極及びn電極を接続し、GaN系の発光ダイオードが完成する。
【0068】
上述したようなMOCVD装置21では、図1に示すMOCVD装置1で得られる効果と同様に、差圧計8の接続場所が、キャリアガスとしての水素をランライン4へ供給するためのバルブ10a及び水素をベントライン5へ供給するためのバルブ10e、すなわち水素切替手段よりも上流側とされているので、水素が差圧計8を通過することがない。つまり、GaN層成膜時にキャリアガスとして水素をランライン4に流した場合にも、差圧計8付近の配管には窒素が停滞しているために差圧計8付近に水素が溯ることが抑制される。このように、差圧計8の接続を工夫することで差圧計8付近に必ず窒素が停滞するようになされているので、GaN層成膜後のInGaN層成膜時に、キャリアガスとして窒素のみがランライン4及び反応管3に供給され、水素がランライン4に混入することがない。したがって、反応管3へ汚染のない高純度の反応ガスを供給できるので、InGaN層の安定した成長を実現し、化合物半導体であるGaN系発光ダイオードを歩留まりよく、また、高品質にて形成することができる。
【0069】
言い換えると、従来のMOCVD装置のように、GaN層成膜時に使用するキャリアガスとしての水素が差圧計に入り込み、次工程のInGaN層成膜時にこの水素がランラインに放出されてInGaNの結晶成長を妨げるといった不都合を防止することができる。
【0070】
これに加えて、さらに図2に示すMOCVD装置21は、ランライン4の最上流にランライン4に常に窒素を供給する窒素供給ライン22を追加するとともにこの窒素供給ライン22とベントライン5との間に差圧計8を接続するので、窒素供給ライン22からランライン4に常に供給される窒素が、GaN層成膜時にランライン4を溯るように水素が拡散することを防止し、差圧計8付近への水素の拡散を遮断する。したがって、図2に示すMOCVD装置21では、InGaN層成膜時にランライン4及び反応管3へキャリアガスとしての水素が混入するトラブルが確実に防止されており、化合物半導体の歩留まり向上効果及び高品質化をより確実に達成することができる。
【0071】
なお、本発明は上述の記載に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0072】
例えば、反応ガスを構成するMOソースとしてはMO1及びMO2の2つに限定されることなく、任意の数及び種類に設定することが可能である。また、MO1及びMO2には、反応管に流れるガス流量を一定に維持するための補償ラインが併設されていてもかまない。
【0073】
また、上述の説明では、発光素子としてIII−V族化合物半導体を用いたGaN系発光ダイオードを製造する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されることなく、いかなる材料を気相成長させる場合にも適用可能である。
【0074】
また、気相成長装置としてはMOCVD装置に限定されず、差圧計を用いるあらゆる気相成長装置に適用可能である。
【0075】
【発明の効果】
以上のように、本発明を適用した気相成長装置では、キャリアガスとして水素をランラインへ供給するための水素切替手段よりも上流側に差圧計が接続されているので、キャリアガスとして水素を用いて成膜する際に、水素切替手段を介してランラインに供給された水素が差圧計付近を通過・停滞することがなく、差圧計付近には常にキャリアガスとして窒素が停滞することになる。このため、次工程でキャリアガスとして窒素を用いて成膜する際に、差圧計付近から水素がランラインへ混入することがなく、高純度の反応ガスを反応管に供給できる。
【0076】
したがって、本発明によれば、高純度の反応ガスを用いて成膜を行うので、高品質な膜を成膜可能な気相成長装置を提供することができる。
【0077】
また、本発明を適用した発光素子の製造装置では、キャリアガスとして水素をランラインへ供給するための水素切替手段よりも上流側に差圧計が接続されているので、GaN層を成膜する際に、水素切替手段を介してランラインに供給された水素が差圧計付近を通過・停滞することがなく、差圧計付近には常に窒素が停滞することになる。このため、次工程でInGaN層を成膜する際に、差圧計付近から水素がランラインへ混入することがなく、高純度の反応ガスを反応管に供給できる。
【0078】
したがって、本発明によれば、高純度の反応ガスを用いて成膜を行うので、高品質な発光素子を製造可能な発光素子の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したMOCVD装置の一例を示す模式図である。
【図2】発光素子の一例を示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図3】本発明を適用したMOCVD装置の他の例を示す模式図である。
【図4】従来のMOCVD装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 MOCVD装置
2 基板
3 反応管
4 ランライン
5 ベントライン
6 V族供給ライン
7 真空ポンプ
8 差圧計
9 MFC
10 バルブ

Claims (11)

  1. 気相成長により成膜を行う反応管と、
    基板上に膜を成膜するための反応ガスを、上記反応管に供給するランラインと、
    上記ランラインと並列して設けられ、次工程で用いる反応ガスを予め準備するとともに捨てておくためのベントラインと、
    キャリアガスとして水素を上記ランライン又は上記ベントラインのいずれか一方に供給する水素切替手段と、
    上記水素切替手段が上記ランライン又は上記ベントラインのいずれか一方に水素を供給するときに、キャリアガスとして窒素を他方に供給する窒素切替手段と、
    上記ランラインと上記ベントラインとの差圧を検出する差圧計とを備え、
    上記差圧計は、上記水素切替手段の上流側において上記ランラインと上記ベントラインとの間に接続されることを特徴とする気相成長装置。
  2. 上記膜は、III−V族化合物半導体であることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。
  3. 上記III−V族化合物半導体は、窒化物半導体であることを特徴とする請求項2記載の気相成長装置。
  4. 上記III−V族化合物半導体は、GaN、InGaNから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の気相成長装置。
  5. 上記ランラインに常に窒素を流すための窒素供給ラインが上記ランラインの最上流に追加され、上記差圧計は上記窒素供給ラインと上記ベントラインとの間に接続されることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。
  6. 有機金属化学気相成長装置であることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。
  7. GaN層とInGaN層とGaN層とがこの順に形成されてなる発光素子の製造装置であって、
    気相成長により成膜を行う反応管と、
    基板上に膜を成膜するための反応ガスを、上記反応管に供給するランラインと、
    上記ランラインと並列して設けられ、次工程で用いる反応ガスを予め準備するとともに捨てておくためのベントラインと、
    キャリアガスとして水素を上記ランライン又は上記ベントラインのいずれか一方に供給する水素切替手段と、
    上記水素切替手段が上記ランライン又は上記ベントラインのいずれか一方に水素を供給するときに、キャリアガスとして窒素を他方に供給する窒素切替手段と、
    上記ランラインと上記ベントラインとの差圧を検出する差圧計とを備え、
    上記差圧計は、上記水素切替手段の上流側において上記ランラインと上記ベントラインとの間に接続されることを特徴とする発光素子の製造装置。
  8. 上記ランラインに常に窒素を流すための窒素供給ラインが上記ランラインの最上流に追加され、上記差圧計は上記窒素供給ラインと上記ベントラインとの間に接続されることを特徴とする請求項7記載の発光素子の製造装置。
  9. 有機金属化学気相成長装置であることを特徴とする請求項7記載の発光素子の製造装置。
  10. 上記発光素子は、円錐形状又は多角錘形状であることを特徴とする請求項7記載の発光素子の製造装置。
  11. 上記発光素子は、半導体LED素子であることを特徴とする請求項7記載の発光素子の製造装置。
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