JP3704393B2 - 緊急遮水装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、緊急遮水装置に関するもので、例えば、水道用の貯水槽(配水池)に設置するのに適したものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水道用の貯水槽に設置される緊急遮水装置としては、例えば、実公昭63−29009号公報に開示されるものがある。この種の緊急遮水装置は、地震発生時に遮水弁を自動的に閉じるようにしたもので、その装置構成は、貯水槽の底部の送水口に弁蓋を設け、この弁蓋を開閉可能に吊り上げるウインチを貯水槽の天井部に設けてなる。そして、所定の震度以上の地震が発生したときに、ボールを受け台から落下させ、ウインチのロックを解除してワイヤーを緩め、槽内の水圧により弁蓋を閉じるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来タイプの緊急遮水装置によると、以下のような問題がある。
(1)遠隔地で遮水弁の開閉状態を知ることができないため、地震発生の直後に遮水弁が閉じたか否かが不明になる場合があり、管理者の対応が遅れやすい。
(2)遮水弁を全閉から全開状態に復帰させる場合に、管理者が配水池へ行ってウインチ等の駆動装置を作動させるため、給水の回復に時間がかかる場合がある。例えば、配水池が丘陵地等に設けられる場合には、現場までの道路状況の悪化等の理由により給水の回復が困難になることも考えられる。
(3)また、従来タイプのものは、貯水槽の内部に弁蓋を設ける構成であるため、複数の貯水槽に緊急遮水装置を設ける場合に、個別に遮水弁を確保する必要があり、設置作業が面倒になるとともに、貯水槽ごとの遮水制御が複雑になる。
(4)さらに、貯水槽の天井部にウインチ等の駆動装置を設けるため、ステンレスタンク、PCタンクなどの比較的槽壁の薄い貯水槽の場合には、天井部に駆動装置を取り付けにくくなる。
【0004】
そこで、本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、地震等の緊急時に、遮水弁の開閉状況を迅速に管理者に知らせることが可能で、遠隔地からでも容易に遮水弁の開閉を制御することができ、しかも、種々のタイプの貯水槽に容易に設置可能で、かつ、複数の貯水槽の遮水管理を簡単に行えるようにした緊急遮水装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の緊急遮水装置は、上記の目的を達成するため次の手段を採った。すなわち、貯水槽の水を外部へ供給するための送水路に遮水弁を設け、該遮水弁を開閉するための駆動装置と、地震計から所定の震度以上の検知信号を入力したときに該駆動装置を作動させる制御装置とを備えた緊急遮水装置において、該遮水弁は、該送水路に設けた弁ハウジング内に設置され、外筒に送水窓を有する内筒を摺動可能に挿入した構成のものとし、該駆動装置は弁ハウジングの外部に設けて該遮水弁と連結部材で連結し、該制御装置は該駆動装置を作動させるほか、該遮水弁の開閉動作の完了後に、該遮水弁の弁状態を電話回線により所定の電話機で管理者に知らせる別途設けた通報装置へ通報命令を出すようにしたことを特徴としている。なお、通報装置は電話回線を通じて管理者から送られる駆動信号を受信可能とし、この駆動信号により駆動装置を作動させることができるようにする(請求項2)のが望ましい。
【0006】
また、遮水弁は、請求項3に記載のように、外筒に設けた上端フランジに、送水窓へ導入する水の流れを規制する整流窓が備えられた補助筒を固設するとよい。さらに、制御装置は、請求項4に記載のように、地震計からの検知信号のほか、流量計または水位計からの検知信号によっても駆動装置を作動させるようにするとよい。
【0007】
本発明の緊急遮水装置は、地震等の発生時、検知装置が緊急時の状況を検知し、制御装置に検知信号を出力する。この検知信号に基づいて制御装置が駆動装置の作動スイッチをオンにすると、駆動装置は、連結部材を介して遮水弁を全閉位置まで駆動する。遮水弁が全閉になると、所定の通報命令に応じて通報装置が電話回線を通じて管理者の電話機にコールし、音声等により遮水弁が全閉になったことを知らせる。
一方、全閉状態の遮水弁を再び全開に復帰させる場合は、管理者が電話機で電話回線を通じて制御装置に駆動信号を送ると、この駆動信号に基づいて制御装置が駆動装置の作動スイッチをオンにし、遮水弁を全開位置に復帰させる。そして、遮水弁の開弁動作が完了すると、通報装置は遮水弁の全開状態を電話回線を通じて管理者に知らせる。
【0008】
本発明の構成によると、貯水槽の外部の弁ハウジングに遮水弁を設けるため、複数の貯水槽の管理が容易になる。すなわち、複数の貯水槽の遮水を行う場合に各槽からの送水管を一本に集中し、この送水路に遮水弁を設けることで、単一の緊急遮水装置で複数の貯水槽をまとめて遮水することが可能となる。また、駆動装置は、貯水槽の天井部に設ける必要がなく、弁ハウジングの外部に設置すれば足りるため、槽壁が比較的薄い貯水槽であっても、緊急遮水装置の設置に制限を受けることがない。
【0009】
また、本発明において、遮水弁をシリンダ弁の構造としたのは、送水路の水圧変化を小さく抑えて、弁の開閉操作をよりスムーズに行うようにするためである。
送水路に大量に流れる水を遮断する場合等には、ウオーターハンマー現象等を防止するために送水量を徐々に変化させる必要がある。前記固定筒に移動筒が摺動自在なシリンダ弁の構成によれば、連結部材により弁の開閉を操作しやすく、かつ送水量を微量調節することが可能で、電話回線を利用した遮水弁の自動制御の信頼性が高くなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の第1実施例を図1〜図11に示す。図1に示すように、緊急遮水装置1は、貯水槽Tの底部に送水管3が設けられ、この送水管3の途中に弁ハウジング2が設けられる。弁ハウジング2の内部には、送水管3を流れる水を遮断する遮水弁としてのシリンダ弁4が収納される。弁ハウジング2の周囲には、鋼材等で組立てられた架台Hが設けられ、この架台Hに駆動装置5が固定されている。そして、駆動装置5の下方にはシリンダ弁4に連結される連結部材としての連結軸6が設けられている。
【0011】
緊急時の状況を検知するための検知装置としては、貯水槽Tに水位計13が設けられ、制御室S(図2参照)の所定位置に地震計11および流量計12が設けられる。制御室S内に設置された制御盤Gには、これらの検知装置からの検知信号を処理する制御装置7が設けられる。そして、この制御装置7には、電話局10を介して電話回線により管理者の電話機9に通信可能な通報装置8が接続されている。
【0012】
図2に示すように、ステンレス製の貯水槽Tは、中央仕切板Cにより第1タンクT1と第2タンクT2とに仕切られ、それぞれ数百トン程度の水を蓄えることが可能になっている。タンク外壁に形成される凸部Dは、槽壁面の強度を高めるものである。第1タンクT1と第2タンクT2の底部に設けられる送水管3a、3bは、制御室Sで送水路が合流するように配管される。送水管3aと3bとの間に枝管3cが連結され、両者を通過する水が送水管3dを通って緊急遮水装置1に導かれる。そして、弁ハウジング2内を通過した水は、送水管3eを通って配水池外部へ送られることになる。また、送水管3bと3eとの間に設けられるバイパス管3fは、緊急遮水装置1のメンテナンスを行うときなどに遮水弁を通ることなく、両タンクの水を送水管3eへ送る。各送水管には、バルブV1〜V5が設けられ、通常時またはメンテナンス時などの状況に応じて開閉が制御される。
【0013】
図3に示すように、弁ハウジング2の内部には、中心軸方向に沿ってシリンダ弁4が配置される。シリンダ弁4の下部開口端がエルボ管15の一端に接続され、エルボ管3の他端が送水管3の下流部開口端に接続される。貯水槽Tからの水の流れは、図3矢印に示すように、上流部の送水管3から弁ハウジング2に入り、シリンダ弁4およびエルボ管15を通過して下流部の送水管3へ至る。
【0014】
図4および図5に示すように、シリンダ弁4の構成は、外筒21、内筒22および補助筒23からなる。外筒21の内周面に内筒22が摺動可能に挿入される。外筒21の上端フランジ部21aには補助筒23がボルトにより同軸方向に固定されている。内筒22の周面の上端部にはOリング25が設けられる。Oリング25は、内筒22の周面に接触し、内筒22の開閉の際の摺動を支持する。
【0015】
内筒22の摺動面には、送水窓22aが設けられ、内筒22から外筒21に弁ハウジング2内の水を導入可能になっている。図5に示すように、内筒22が全開位置まで移動すると、外筒21の上方に送水窓22aが覗き、弁ハウジング2の水が外筒21に流入する。すなわち、内筒22の移動の高さ位置に応じて弁が開閉することになる。また、内筒22の中間部には、補助筒23の筒長さ範囲で内筒22の移動を規制するフランジ28が形成されている。外筒21の底面には、フランジ28に当接するパッキン29が設けられる。
【0016】
送水窓22aは、内筒22の外周面に軸方向に所定の長さで形成されもので、送水窓22aの数は、内筒22の外周面に60゜間隔で6個設けられている。送水窓22aの上部は、鋭角をなすように切断されるが、これは、弁の開き始めたときに流入量が急激に増大するのを防止し、水の流れをスムーズにするためである。
【0017】
また、補助筒23の筒面には周方向に60゜間隔で整流窓23aが設けられる。弁ハウジング2内の水は、整流窓23aを通過し、真っ直ぐに送水窓22aに入る。すなわち、送水窓22aに導入される前に整流窓23aで水の流れが規制されることになる。
【0018】
図1に示すように、エルボ管15のすぐ下流側には、空気弁16が設けられる。空気弁16は、弁ハウジング2および送水管3の送水路の空気を排出したり、送水路に空気を送り込んで管路の破損を防ぐ役割を果たす。
また、エルボ管15のすぐ下流側の位置に空気弁16を設けることにより、全閉から開方向にシリンダ弁4を動かす時に外筒21の内部が過度の負圧状態になるのが防止され、シリンダ弁4の開閉動作がスムーズになる。また、開閉時に外筒21、内筒22等にかかる負担が少なくなってシリンダ弁4および駆動装置5の耐久性が向上する。
【0019】
空気弁16の構成は、図6および図7に示すように、弁ケース17にボール形のフロート弁18と遊動弁体19とを収納してなる。送水路に最初に通水するときまたは送水路から水を抜くときには、図6に示すように、弁ケース17内でフロート弁18と遊動弁体19とが下方位置になり、遊動弁体19の外側の空気通路を通って大量の空気が外部へ排出され、または外部から吸入される。また、図7に示すように、弁ケース17に一定量の水が満たされると、フロート弁18が遊動弁体19を持ち上げて空気通路を塞ぐ。そして、弁ケース17の上部に溜まった空気の圧力が大きくなると、フロート弁18が空気圧により下方へ移動し、遊動弁体19の中央排気孔Kから空気が少量ずつ外部へ排出される。
【0020】
図8に示すように、駆動装置5は、油圧シリンダ31、電動ポンプ32、バルブユニット33、手動ポンプ34を備える。電動ポンプ32の圧力タンクから接続ホースおよびバルブユニット33を介して油圧シリンダ31へ作動油が循環するようになっている。作動油が油圧シリンダ31のポートAに流入すると、油圧シリンダ31の可動部31aが下降し、これにともなって連結軸6が下降する。また、作動油がポートBに流入すると、可動部31aが上昇し、連結軸6を持ち上げる。可動部31aには、連結軸6が移動する際のクッション機構を有するコイルスプリング31bが取り付けられている。
【0021】
バルブユニット33の内部は、作動油の通路を電動ポンプ32側と手動ポンプ34側に切り換可能な弁構造になっている。作業者が現場でバルブを操作して手動ポンプ34側に設定すると、バルブユニット33の作動油通路が手動ポンプ34側に切り替わる。例えば、電動ポンプ32の故障時などの際には、作業者が手動でシリンダ弁4を開閉することが可能である。
【0022】
また、油圧シリンダ31には、リミッタ35が取り付けられる。リミッタ35は、シリンダ弁4の開度に応じて連結軸6が所定距離だけ移動すると、油圧シリンダ31の作動を停止させる。
リミッタ35の構成は、図9に示すように、作動棒41の側方に所定間隔をあけて全開リミット42および全閉リミット44が設けられる。作動棒41には、全開リミット42および全閉リミット44に接触可能な開カム43および閉カム45が所定の高さ位置に固定されている。開カム43および閉カム45の間には、開度計46の針部46aが固定されており、図8に示す目盛り板46bによって作業者がシリンダ弁4の開度を視覚的に確認可能になっている。
また、開カム43および閉カム45の鉛直方向には、補助リミット47、48が設けられ、全開リミット42および全閉リミット44を超えて作動棒41が移動するのを二次的に防止している。
【0023】
さらに、図8に示すように、油圧シリンダ31の下方位置には、ストッパ装置36が設けられる。ストッパ装置36は、油圧シリンダ31の可動部31aの自重による下降を防止するもので、係止爪51、電磁ソレノイド52、戻しスプリング53およびリミットスイッチ54を有している。電磁ソレノイド52の駆動軸は水平方向に移動可能になっており、その先端部に係止爪51が固定される。
駆動軸の後端部52aは、リミットスイッチ54に接触可能になっている。
連結軸6の上端部には、ガイドバー55が軸方向に固定され、このガイドバー55の下端面が係止爪51に係止される。ガイドバー55の下端面の位置は、シリンダ弁4が全開位置にあるときに係止爪51の高さに一致するようにセットされる。
【0024】
駆動装置5の作動開始時、まず、油圧シリンダ31の可動部31aが僅かに上昇し、数秒間そのままの状態で保持される。次いで、電磁ソレノイド52に電圧が付加され、係止爪51が後方に引き込まれる。そして、駆動軸の後端部52aがリミットスイッチ54に接触すると、リミットスイッチ54から制御装置7に係止爪51の係止解除の信号が伝達される。この信号に基づいて制御装置7が油圧シリンダ31に駆動命令を送ると、可動部31aが全閉位置まで下降する。
可動部31aの作動中は、電磁ソレノイド52の通電が停止され、係止爪51の先端部は、ガイドバー55の側面に摺接する。
また、シリンダ弁4が全開位置に復帰するときには、可動部31aの上昇とともに、ガイドバー55が上昇し、その下端面が係止爪51を超えると、戻しスプリング53の付勢力により再び係止爪51に係止される。
【0025】
連結軸6は、ステンレス棒を所定の長さに切断してなるもので、シリンダ弁4と駆動装置5との間に鉛直方向に配置されている。連結軸6の下端が内筒22の上端軸部27(図4参照)に固定され、連結軸6の上端が可動部31aに固定されている。
連結軸6と弁ハウジング2とのシール構造は、図8に示すように、連結軸6を通すための天井筒2aに樹脂繊維からなるシール部材2bを挿入し、押え蓋2cでこのシール部材2aをネジ締め固定するものである。押え蓋2cの下端部でシール部材2bを軸方向に圧縮すると、シール部材2bが径方向に膨らんで、天井筒2aの隙間を気密に封鎖する。帯状のシール部材2bは、天井筒2aの筒内径に合わせて円形に曲げて使用されるもので、交換等のメンテナンスの際には、連結軸6を取り外すことなく、容易に脱着可能になっている。
また、シール部材2bは、駆動装置5に生じる水滴や潤滑油等の弁ハウジング2内への落下を防止するとともに、送水路に生じる塩素ガス等が駆動装置5に侵入するのを防止する役割をも果たす。
【0026】
次に、各検知装置11〜13、制御装置7および通報装置8の構成について説明する。
図10に示すように、地震計11は、制御装置7および通報装置8とともに制御盤Gの内部に設置されるか、または、制御室S内の強固な壁や床などに設置される。地震計11に一定以上の揺れが加わると、感知体に設定水平加速度以上の力が作用し、感知体が瞬時に落下してレバーを押し下げ、マイクロスイッチをONにする。地震計11の検知精度としては、例えば、250ガル以下の(震度0〜5)の範囲で設定することが可能である。
【0027】
流量計12は、貯水槽Tと弁ハウジング2との間の送水管3に設けられ、貯水槽12からの送水量を測定可能になっている。送水量が一定の流量以上になると、流量計12から制御装置7に検知信号が出力される。例えば、地下配管の破裂等のため貯水槽Tの水が地下に大量に漏れ出している場合などの緊急時に流量計12が制御装置7に検知信号を送ることになる。
【0028】
また、水位計13は、貯水槽Tの第1タンクT1および第2タンクT2に水位センサを設けてなるもので、許容水位の上限と下限とを検知可能になっている。例えば、貯水槽Tの水位が異常に低下している場合などの緊急時に制御装置7に検知信号を出力する。水位センサには、例えば、電極棒、フロート式のスイッチ等を用いることができる。
【0029】
制御装置7は、地震計11、流量計12、水位計13の各検知信号を入力し、駆動装置5に作動命令を送るようになっている。地震計11、流量計12および水位計13からの検知信号を受けると、所定のタイミングで駆動装置5の駆動スイッチをオンにする。なお、マイクロコンピュータを内蔵させてこれらの制御操作をプログラムすることもできる。
また、制御装置7は、遮水弁4の開閉動作の完了後に、全開または全閉信号に基づいて通報装置8に通報命令を送る。なお、全開または全閉信号は、全開リミット42または全閉リミット44の作動時にリミッタ35から制御装置7に送られるように設定される。
【0030】
通報装置8は、一般の電話回線(プッシュホン回線)により電話局を介して管理者の電話機9に接続される。電話機9は、管理者の人数、管理室の数等に応じて複数個設定されている。制御装置7からの通報命令がなされると、所定の優先順位にしたがって各電話機9にダイヤルし、シリンダ弁4の開閉状況を通報メッセージで管理者に伝達するようになっている。通報メッセージには、全開完了を知らせるものと、全閉完了を知らせるものの2種が設定されており、制御装置7からの通報命令に応じていずれか一方のメッセージが送られる。管理者が受話器を取ると、メッセージが音声等で流れる。
【0031】
また、通報装置8は、電話回線を通じて管理者側からの駆動信号を受信することも可能になっており、具体的には、管理者からのシリンダ弁4を全開または全閉にする命令を、予め設定された暗証番号から判別して制御装置7に送る。制御装置7は駆動命令を受けると、この命令にしたがって駆動装置5の作動スイッチをオンにする。なお、シリンダ弁4の開閉動作の完了後は、折り返し、弁の開閉状況を知らせるメッセージが管理者の電話機9に通報される。
さらに、通報装置8は、所定の暗証番号により管理者がシリンダ弁4の弁状態を確認する命令を受けることもでき、この場合、油圧シリンダ31の可動部31aの移動位置からシリンダ弁4の開閉状況を判断し、電話機9により音声等のメッセージを管理者に通報する。
【0032】
ここで、通報装置8の電話回線については、前述したように、一般のプッシュホン回線を使用している。すなわち、通報装置8と管理者の通信回線として特別の回線を設けるものではない。これは、電話回線以外の手段として、特別の専用回線で通報装置と受信機とを接続する場合は、管理者の受信機の場所が限定され、管理者の操作が比較的面倒なものになりやすく、また、専用回線を設置するのに設備費が膨大にかかり、複数の貯水槽に緊急遮水装置を取り付けることが困難になるためである。これに対し、前記通報装置8のように一般の電話回線を利用すると、管理者が一般の電話機9で通報を受け、また、電話機9でシリンダ弁4の開閉を遠隔操作することが可能になる。特に、最近では、携帯電話やパーソナルハンディホン(PHS)等が使用可能になっているため、管理者がこれらの電話機を使用することで、貯水槽の管理がさらに容易になる。
【0033】
駆動装置5、制御装置7および通報装置8の電源については、一般家庭用の交流電源が使用される。また、緊急時の停電に備えて交流電源から無停電電源装置(UPS)に充電することもでき、停電の際には、制御装置7からの命令により交流電源からインバータを介して無停電電源装置に切り替わる。したがって、地震等で貯水槽Tの設置される地域が停電になっても、電話回線が使用可能であれば、シリンダ弁5の開閉を遠隔操作したり、また、弁状態を確認することも可能になる。
また、補助バッテリとして太陽電池を設置してもよい。太陽電池によれば、日中に太陽光で繰り返し充電することができるため、長時間の停電を生じても、シリンダ弁4の開閉操作を繰り返し行うことができる。
【0034】
次に、前記緊急遮水装置1の作動について説明する。例えば地震計11が所定震度以上の揺れを検知すると、地震計11から制御装置7に検知信号が出力され、この検知信号に基づいて制御装置7が駆動装置5の作動スイッチをオンにし、油圧シリンダ31を駆動する。このとき、連結軸6が下降し、シリンダ弁4を全閉にする。シリンダ弁4が全閉になると、全閉リミット44から制御装置7へ全閉信号が出力され、この全閉信号に基づいて制御装置7が通報装置8に通報命令を送る。通報装置8は、通報命令に応じて電話回線により管理者の電話機9に所定回数のコールをし、管理者が電話機9を通話状態にすると、通報装置8から音声によりシリンダ弁4が全閉になったことを知らせるメッセージが受話器に流れる。
【0035】
流量計12または水位計13により異常を検知する場合にも、同様に、制御装置5が検知信号に基づいて駆動装置5を作動させ、シリンダ弁4を全閉にする。
そして、シリンダ弁4の閉弁完了後には、通報装置8から電話回線を通じて管理者にシリンダ弁4の全閉完了のメッセージが通報されることになる。
なお、駆動装置5の作動のタイミングについては、前述した実施例のほか、管理者が通報を受けた後に、シリンダ弁4を全閉にするように設定することもできる。
【0036】
全閉状態のシリンダ弁4を再び全開に復帰させる場合は、管理者が通報装置8に電話をかけ、所定の暗証番号を押して駆動信号を送る。すると、この駆動信号に基づいて制御装置7が駆動装置5の作動スイッチをオンにし、油圧シリンダ31が連結軸6を介してシリンダ弁4を全開にする。
そして、シリンダ弁4が全開になると、制御装置7が全開リミット42からの全開信号に基づいて通報装置8に通報命令を送る。通報装置8は、この通報命令に応じて全開完了のメッセージを電話回線を通じて管理者の電話機9に流す。
【0037】
次に、シリンダ弁4の開閉制御を図11に示すフローチャートに従って説明する。
まず、現場でシリンダ弁4を作動させる場合については、作業者が制御盤の所定のスイッチを操作して駆動装置5を作動させるか(ステップ71)、または、駆動装置5の油圧シリンダ31の駆動ポンプを電動ポンプ32から手動ポンプ34側に切り換えて手動操作でシリンダ弁4を作動させる(ステップ72)。
また、遠隔地からシリンダ弁4を作動させる場合については、電話回線を通じて通報装置8に駆動信号を送り、この駆動信号により制御装置7から駆動装置5に作動命令を送るようにする(ステップ73)。すなわち、管理者は、上記3つの操作の選択により、シリンダ弁4を開閉することができる。
なお、現場または遠隔操作のいずれの場合についても、シリンダ弁4が全閉または全開になると、通報装置8から電話回線を通じて管理者の電話機9にシリンダ弁4の開閉状況が通報される(ステップ74、75)。
【0038】
一方、緊急時には、地震計11、流量計12または水位計13がそれぞれ予め設定された震度、過大流量または異常低水位を検知すると(ステップ76、77、78)、シリンダ弁4が全開から全閉へ切り替わる(ステップ74)。この場合にも、シリンダ弁4の閉弁操作の完了後に、通報装置8から電話回線を通じて管理者の電話機9にシリンダ弁4の開閉状況が管理者に通報される。
【0039】
このように第1実施例の緊急遮水装置1によれば、地震等の緊急時に迅速かつ確実にシリンダ弁4を閉じて遮水を行うことができ、しかも、管理者が遠隔地にいてもシリンダ弁4の作動状況を迅速かつ正確に把握することができる。したがって、緊急時の対応を早急に行うことができ、二次災害を未然に防止するのに役立つものとなる。また、緊急遮水装置1では、一般の電話回線によりシリンダ弁4の開閉を遠隔操作することができるため、緊急時に現場へ行く必要がなく、現場までの道路状況の如何によらず、迅速な対応をとることができる。管理者にとっては携帯電話等で操作することもでき、例えば、休日に自宅から操作したり、出張先から操作することで、貯水槽の監視の負担を軽減することができる。さらに、緊急遮水装置1の構成は、貯水槽Tの外部の弁ハウジング2にシリンダ弁4を収納するものであるため、複数の貯水槽を単一の遮水弁で管理することができ、設備コスト等を大幅に削減することができる。
【0040】
次に、本発明の第2実施例を図12に示す。第2実施例による緊急遮水装置は、シリンダ弁4の内筒22に補助窓22bを設けたものである。補助窓22bは、内筒22のスライド面の上端部に周方向に一定間隔を保って形成されている。補助窓22bの位置は、各送水窓22aの周方向中間位置に配置され、穴形状については楕円形になっている。シリンダ弁4の作動時、内筒22が上昇を開始すると、貯水槽Tの水は、まず、補助窓22bから内筒22に流入し、さらに内筒22が上昇すると、補助窓22bおよび送水窓22aから内筒22に流入する。これにより、送水管3に送られる水の量がより緩やかに増大するため、水圧の変化によって弁の開閉動作が影響を受けにくく、シリンダ弁4の作動がさらにスムーズになる。
【0041】
本発明の第3実施例を図13および図14に示す。
第3実施例は、弁ハウジングを分割可能に構成したものである。
弁ハウジング80は、天井部81、筒部82、83および底部84が組み合わされてなる。天井部81は、ドーム形をしており、中央に連結軸6を通すための天井筒が設けられている。筒部82、83は、それぞれ半円筒形に形成され、天井部81の下方に固定される。底部84は、縦筒の上端が筒部82、83の下端に連結され、横筒の両端が送水管の上流端および下流端に連結される。
天井部81、筒部82、83および底部84のフランジ面Fの間には、それぞれ水漏れ防止用のパッキンが取り付けられ、ボルトで締め付けられる。
第3実施例によると、筒部82、83を取り外すことで、容易に遮水弁を脱着することができるため、メンテナンス作業等が容易になる。
【0042】
本発明の第4実施例を図15〜図18に示す。
第4実施例は、弁ハウジング90を箱形にしたものである。
弁ハウジング90は、フレーム91に天井板92、上部側板93a〜93dおよび下部側板94a〜94dを取り付けてなる。弁ハウジング90を組み立てる場合、まず、図17および図18に示すように、あらかじめフレーム91に天井板92、上部側板93a、93bおよび下部側板94a〜94dを溶接したものを配管途上にセットし、中央に遮水弁4を配置する。次いで、フレーム91の図17で正面と背面に側板93c、93dを取り付ける。
天井板92、上部側板93a〜93dおよび下部側板94a〜94dは、ステンレス製のもので、フレーム面に溶接により固定される。天井板92には、連結棒6を通すための天井筒95が形成され、さらにその近傍には、排気弁96が設けられる。また、下部側板94a、94bの中央には、送水管3に連通する通水口が形成されている。
上部側板93a、93bは、図16に示すように、フレーム面に溶接されるスペーサ97に、枠体97aを介してボルト98により締め付け固定される。スペーサ97は、ボルト98の先端がフレーム面に接しない程度に十分な肉厚をもって形成される。
上部側板93a、93bの中央には、透明なアクリルからなる窓99が取り付けられる。窓99により管理者がシリンダ弁4の作動状況を容易にチェックすることができる。
【0043】
第4実施例によると、ボルト98を緩めることで上部側板93cおよび93dを取り外すことができるため、遮水弁4のメンテナンス等の作業が容易になる。
また、天井板92および上部側板93a〜93dおよび下部側板94a〜94dが平板であるため、弁ハウジングを製造しやすく、シール性がきわめて良好になる。
【0044】
なお、前記第1実施例では、通報装置の通報時期について、全閉または全開時に弁の開閉状況を管理者に通報するようにしたが、その他、遮水弁の開度に応じた詳細な開閉状況を管理者に通報するようにしてもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の緊急遮水装置は、縦型の外筒に送水窓を有する内筒を摺動可能に挿入した遮水弁を貯水槽の送水路に設けた弁ハウジング内に設置し、その外部に遮水弁を開閉する駆動装置を設け、地震計から所定の震度以上の検知信号を入力したときに駆動装置を作動させる制御装置と、遮水弁の開閉動作の完了後に、遮水弁の弁状態を電話回線により所定の電話機で管理者に知らせる通報装置を設けたので、次のような優れた効果がある。
(a) 緊急時に貯水槽を的確に遮水をすることができ、しかも、遮水弁の状態を迅速かつ正確に管理者に知らせることができる。
(b) 遠隔地から電話回線により簡単に弁の開閉を制御することができ、緊急時に現場へ行かなくとも、遠隔地からいつでも遮水弁の開閉を制御することができる。とくに、遮水弁をシリンダ弁の構造としたので、送水路の水圧変化を小さく抑えて、弁の開閉操作を簡便確実に行うことができる。
(c) 貯水槽の下流側の送水路に設置することで、複数の貯水槽の集中管理を行うことができる。
(d) 貯水槽外部の送水路に遮水弁を設置するため、貯水槽の種類に影響されることなく、設置作業が比較的簡単に行える。
(e) 地震に限らず種々の緊急時の状況を検知して遮水弁を作動させることが可能で、より安全に快適に貯水槽を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による緊急遮水装置を示す概略構成図である 。
【図2】本発明の第1実施例による緊急遮水装置の貯水槽を示す部分平面図である。
【図3】本発明の第1実施例による緊急遮水装置の弁ハウジングの内部構造を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第1実施例による緊急遮水装置のシリンダ弁の全閉状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第1実施例による緊急遮水装置のシリンダ弁の全開状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第1実施例による緊急遮水装置の空気弁を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第1実施例による緊急遮水装置の空気弁を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第1実施例による緊急遮水装置の駆動装置を示す側面図である。
【図9】本発明の第1実施例による緊急遮水装置のリミッタを示す側面図である 。
【図10】本発明の第1実施例による緊急遮水装置の作動を説明するための概略構成図である。
【図11】本発明の第1実施例による緊急遮水装置のシリンダ弁の開閉制御を説明するためのフローチャートである 。
【図12】本発明の第2実施例による緊急遮水装置のシリンダ弁を示す縦断面図である。
【図13】本発明の第3実施例による緊急遮水装置の弁ハウジングを示す側面図である。
【図14】図13に示す弁ハウジングの筒部を示す斜視図である。
【図15】本発明の第4実施例による緊急遮水装置の弁ハウジングを示す側面図である。
【図16】本発明の第4実施例による緊急遮水装置の弁ハウジングを示す部分横断面図である。
【図17】図15に示す弁ハウジングの製造方法を説明するための側面図である。
【図18】図15に示す弁ハウジングの製造方法を説明するための平面図である。
【符号の説明】
1 緊急遮水装置
2 弁ハウジング
3 送水管
4 シリンダ弁(遮水弁)
5 駆動装置
6 連結軸(連結部材)
7 制御装置
8 通報装置
9 電話機
10 電話局
11 地震計(検知装置)
12 流量計(検知装置)
13 水位計(検知装置)
21 外筒
22a 送水窓
22b 補助窓
22 内筒
23 補助筒
23a 整流窓
25 Oリング(支持部)
31 油圧シリンダ
T 貯水槽
T1 第1タンク
T2 第2タンク
G 制御盤
Claims (4)
- 貯水槽の水を外部へ供給するための送水路に遮水弁を設け、該遮水弁を開閉するための駆動装置と、地震計から所定の震度以上の検知信号を入力したときに該駆動装置を作動させる制御装置とを備えた緊急遮水装置において、該遮水弁は、該送水路に設けた弁ハウジング内に設置され、外筒に送水窓を有する内筒を摺動可能に挿入した構成のものとし、該駆動装置は弁ハウジングの外部に設けて該遮水弁と連結部材で連結し、該制御装置は該駆動装置を作動させるほか、該遮水弁の開閉動作の完了後に、該遮水弁の弁状態を電話回線により所定の電話機で管理者に知らせる別途設けた通報装置へ通報命令を出すようにしたことを特徴とする緊急遮水装置。
- 前記通報装置は電話回線を通じて管理者から送られる駆動信号を受信可能とし、該駆動信号により前記駆動装置を作動させることを特徴とする請求項第1項記載の緊急遮水装置。
- 前記遮水弁は、前記外筒に設けた上端フランジに、前記送水窓へ導入する水の流れを規制する整流窓が備えられた補助筒を固設したことを特徴とする請求項1記載の緊急遮水装置。
- 前記制御装置は前記地震計からの検知信号のほか、流量計または水位計からの検知信号によっても前記駆動装置を作動させることを特徴とする請求項1記載の緊急遮水装置。
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