JP3701285B2 - 心拍出量を評価するためのシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、患者の心拍出量(cardiac output)の評価値の、インビボにおける決定および表示に関する。
【0002】
【従来の技術】
(関連技術の説明)
患者の心臓の出力に関する情報は、外科チームあるいは、疾患を診断したり患者の状態をモニタしようとする医師らにとり、非常に価値があるものである。従って、心拍出量をモニタするための何らかの形の従来機器を備えていない病院は少ない。
【0003】
心臓流量体積(volumetric cardiac flow)の測定は、特別な問題を呈する。第1に、血管系中の血液流は一般に不均一である。第2に、測定精度の減少を防ぐためだけでなく心臓の通常動作への干渉を防ぐために、用いる測定機器は当然、必要以上に侵襲的であるべきではない。そうでなければ、測定プロセス自体が、測定システムが発見することを意図されているどんな状態よりも患者にとって危険なものになり得る。第3に、心臓血管流のための測定システムの精度は、流れが脈打つ性質を有することなどの(しばしば大きなものである)妨害ならびに、患者の呼吸によって起こる妨害などによって低下する。
【0004】
心拍出量はこのように重要な診断上のインジケータであるため、血管系中の血液流を測定するための多くの装置が存在する。多くのパッシブ測定システムにおいて、光学的透光性の変動や磁性的不規則性などの不規則インジケータを、血管中の2つのポイントで観察する。次に、血流を血液速度の関数として測定する。血液速度自体は、公知の自己相関技術および相互相関技術の生成値(product)として得られる。
【0005】
アクティブ測定システムにおいては、インジケータを血流中に注入または適用することにより、下流のインジケータを検知し、検知されたインジケータの時間波形を積分し、インジケータは保存されたままであるという前提を適用することによって血流量を決定する。このようなシステムにおいて用いられるインジケータは、色素および放射性粒子などの実際の物質、ならびに超音波および熱などの純粋エネルギーインジケータを含む。
【0006】
米国特許第4,236,527号(Newbowerら、1980年12月2日)および米国特許第4,507,974号(Yeldermanら、1985年4月2日)は、熱をインジケータとして用いた心拍出量測定システムを記載している。このような熱型システムにおいては、典型的にはバルーンカテーテルを右頸静脈に通し、右心房および右心室を介して肺動脈枝近くに到達(lodge)する。カテーテルは、心房および/または心室中に位置される抵抗加熱素子および、動脈中に位置されるサーミスタを含んでいる。
【0007】
Newbowerのシステムにおいては、周囲の血液に加えられた熱エネルギーが少なくとも2つの周波数成分(基本波および1つ以上の高調波)を有するように、または、やはり基本周波数と複数の高調波とに分解することができる矩形波信号(square−wave signal)として、加熱素子にエネルギーが加えられる。次いで、下流の血液の温度をサーミスタによって測定し、対応する電気信号を基本周波数および少なくとも1つの他の周波数についてフィルタリングする。次に、局所血管系の伝達関数をおおよそ再構築したものに基づいて、心拍出量を評価する。
【0008】
Yeldermanのシステムは、2値最大長シーケンスに基づいて導出された、矩形波の疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)に従って、ヒータにエネルギーを加える。次に、相関技術を用いて、加熱素子からサーミスタへの血液の流量体積の評価値をサーミスタ信号から抽出する。
【0009】
米国特許第5,146,414号(McKownら、1992年9月8日)は、Yeldermanシステムにおける改良を記載している。McKownのシステムにおいて、チャネル(熱が上流の血液に加えられる位置から、温度を感知する下流位置までの領域)の伝達関数をモデル化し、ノイズのおおよそのスペクトルを決定し、システムの出力をフィードバックループ中に用いてモデルのパラメータを適応的に更新することによって、血流の評価値を改善している。
【0010】
米国特許第5,357,967号(Dixonら、1994年10月25日)に、さらに別の熱型システムおよび方法が記載されている。ここでは、血液に加えられる熱信号は拡散スペクトル信号の形態、すなわち連続的に増加または減少する周波数を有する連続的な信号である。下流で感知される信号は分散フィルタ(dispersive filter)を通され、この出力信号から、インパルス応答が決定される。次に、感知されたインパルス応答から血流を計算する。
【0011】
心拍出量を評価するためのこのような方法の全てにおいて発生する問題は、得られる情報の精度および有用性のために、典型的には評価速度を犠牲にしなければならない(trade off)ことである。患者の鼓動速度(heart rate)および流量が一定で平坦なものであれば、モニタ機器からの評価値は正確かつ素早いものであろう(用いる評価ルーチンも同様であると仮定すれば)。勿論、そのような理想的な心臓パラメータを有するほとんどの患者ははじめからモニタされる必要がないであろう。モニタされる患者は、バイパス手術などの手続のために、あるいは心臓または肺系統に関わる問題のために、しばしば病院あるいは手術台の上にいるのである。
【0012】
心拍出量(CO)の正確な評価値を提供するため、数回の連続する心臓サイクルに基づいて評価値を生成するルーチンを用い得る。しかし問題は、そのようなシステムは患者の状態が急速に衰えていくことを警告するには遅すぎ得ることである。外科チームは、患者の心臓流量が大きく減少したことを素早く知らなければならない。なぜならこれは、心電図装置などの他の機器を用いてると検知がより難しいような狭窄(constriction)を示しているかもしれないからである。
【0013】
例えばMcKownに記載されたような再帰的技術は、心拍出量の一般的トレンド(trend)について正確な評価を提供し得るが、システムがトレンド値について安定するまでに時間がかかりすぎ、またトレンド値自体も何が起こっているかを直ちに正確に反映していないかもしれない。心拍出量を評価するための再帰的技術のさらに他の欠点は、初期化を必要とし、絶対的に安定ではないことである。すなわち、ある条件下においては有用な評価値にまったく収束しないことがある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従って、患者の心拍出量の一般的トレンドに関するだけではなく、より瞬間的あるいは現在の流量状態に関しての正確なデータを提供する装置が必要である。また好ましくは、出力評価値を生成するために用いられる任意の再帰的技術における潜在的な不安定性に対して何らかの補償を行う、あるいは少なくとも識別する方法が存在するべきである。
【0015】
1つの局面において、本発明は、患者の身体の流動部位を通して血液拍出量を評価するシステムであって、A)インジケータを、入力信号プロフィールを有するインジケータ入力信号として、該流動部位の上流位置に注入する注入手段と、B)該流動部位の下流位置における該インジケータの存在をインジケータ出力信号として感知するインジケータ感知手段と、C)局所血液拍出量値を、該入力信号プロフィールおよび該インジケータ出力信号の所定の関数として、局所評価時間にわたって評価するための局所評価器と、トレンド血液拍出量値をトレンド評価時間にわたって評価するためのトレンド評価器とを有し、該トレンド評価時間が、該局所評価時間よりも長く、それによって、血液拍出量における比較的速いおよび遅い変化の両方に対応する評価された血液拍出量値を提供する評価手段と、を包含するシステムを提供する。
【0016】
1つの実施形態において、本発明のシステムは、上記評価手段が、前記トレンド拍出量値を評価するための再帰的評価器を有する、システムである。
【0017】
他の実施形態において、本発明のシステムは、上記再帰的評価器が、カルマンフィルタである、システムである。
【0018】
別の実施形態において、本発明のシステムは、各期間に対する上記入力信号と前記出力信号との間の周波数領域伝達関数を測定する伝達関数測定手段をさらに有し、上記測定された周波数領域伝達関数が、局所およびトレンド評価器の両方に対する入力信号を形成する、システムである。
【0019】
さらに別の実施形態において、本発明のシステムは、各期間に対する上記入力信号と上記出力信号との間の周波数領域伝達関数の値を測定する伝達関数測定手段が設けられ、上記測定された周波数領域伝達関数が、局所およびトレンド拍出量評価の両方に対する入力信号を形成し、上記局所評価器が、最適局所状態パラメータを、上記伝達関数モデルの所定の最適化関数および上記測定された伝達関数値として決定し、上記局所血液拍出量値を、上記最適局所状態パラメータの少なくとも1つの所定の出力関数として評価するために設けられ、上記トレンド評価器が、上記測定された周波数領域伝達関数値をカルマンフィルタリングすることによって、最適トレンド状態パラメータを再帰的に評価し、上記トレンド血液拍出量値を、上記最適局所状態パラメータの少なくとも1つの上記所定の出力関数として評価するカルマンフィルタである、システムである。
【0020】
さらに別の実施形態において、本発明のシステムは、上記局所評価器が、前記トレンド評価器に接続され、上記最適局所状態パラメータが、前記カルマンフィルタに対する初期化状態パラメータを形成する、システムである。
【0021】
なおさらなる実施形態において、本発明のシステムは、A)上記入力信号プロフィールが、疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)であり、B)上記伝達関数測定手段がさらに、1)上記入力信号の自己相関値Cxxを決定し、上記自己相関値Cxxを上記周波数領域に変換し、2)上記入力信号と上記出力信号との間の相互相関値Cxyを決定し、上記相互相関値Cxyを上記周波数領域に変換し、3)上記測定された伝達関数値を、上記周波数変換相互相関値および上記周波数変換自己相関値との間の商の所定の関数として計算するために設けられている、システムである。
【0022】
なおさらなる実施形態において、本発明のシステムは、局所またはトレンド評価の前に、上記インジケータ出力信号からすべての低周波数ノイズトレンドを除去するプリフィルタリング手段をさらに有する、システムである。
【0023】
他の局面において、本発明のシステムは、患者の身体の流動部位を通して血液拍出量を評価するためのシステムであって、A)熱インジケータを、疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)入力信号プロフィールを有するインジケータ入力信号として、上記流動部位の上流位置に注入するインジケータ注入手段と、B)上記流動部位の下流位置における上記インジケータの存在をインジケータ出力信号として感知するサーミスタ手段と、C)上記インジケータ出力信号からすべての低周波数ノイズトレンドを除去するプリフィルタ手段と、D)1)上記入力信号の自己相関値Cxxを計算し、上記自己相関値Cxxを上記周波数領域に変換し、2)上記入力信号と上記出力信号との間の相互相関値Cxyを計算し、上記相互相関値Cxyを上記周波数領域に変換し、3)測定された伝達関数値を、上記周波数変換相互相関値および上記周波数変換自己相関値との間の商の所定の関数として計算する、伝達関数測定手段と、E)最適局所状態パラメータを、上記伝達関数モデルの所定の最適化関数および上記測定された伝達関数値として決定し、局所血液拍出量値を、上記最適局所状態パラメータの少なくとも1つの所定の出力関数として評価する局所評価手段と、F)上記測定された周波数領域伝達関数値をカルマンフィルタリングすることによって、最適トレンド状態パラメータを再帰的に評価し、トレンド血液拍出量値を、上記最適局所状態パラメータの少なくとも1つの上記所定の出力関数として評価するトレンド評価手段と、を有するシステムである。
【0024】
別の局面において、本発明のシステムは、患者の身体の流動部位を通して血液拍出量を評価するシステムであって、
A)インジケータを、入力信号プロフィールを有するインジケータ入力信号として、その流動部位の上流位置に注入する注入手段と、
B)その流動部位の下流位置におけるそのインジケータの存在をインジケータ出力信号として感知するインジケータ感知手段と、
C)局所血液拍出量値を、その入力信号プロフィールおよびそのインジケータ出力信号の所定の関数として、局所評価時間にわたって評価するための局所評価器と、トレンド血液拍出量値をトレンド評価時間にわたって評価するためのトレンド評価器とを有し、そのトレンド評価時間が、その局所評価時間よりも長く、それによって、血液拍出量における比較的速いおよび遅い変化の両方に対応する評価された血液拍出量値を提供する評価手段と、
を包含するシステムである。
【0025】
1つの実施形態形態において、本発明のシステムは、上記評価手段が、上記トレンド拍出量値を評価するための再帰的評価器を有する、システムである。
【0026】
他の実施形態において、本発明のシステムは、上記再帰的評価器が、カルマンフィルタである、システムである。
【0027】
別の実施形態において、本発明のシステムは、各期間に対する上記入力信号と上記出力信号との間の周波数領域伝達関数を測定する伝達関数測定手段をさらに有し、その測定された周波数領域伝達関数が、局所およびトレンド評価器の両方に対する入力信号を形成する、システムである。
【0028】
さらに別の実施形態において、本発明のシステムは、各期間に対する上記入力信号と上記出力信号との間の周波数領域伝達関数の値を測定する伝達関数測定手段が設けられ、その測定された周波数領域伝達関数が、局所およびトレンド拍出量評価の両方に対する入力信号を形成し、
上記局所評価器が、最適局所状態パラメータを、その伝達関数モデルの所定の最適化関数およびその測定された伝達関数値として決定し、上記局所血液拍出量値を、その最適局所状態パラメータの少なくとも1つの所定の出力関数として評価するために設けられ、
上記トレンド評価器が、その測定された周波数領域伝達関数値をカルマンフィルタリングすることによって、最適トレンド状態パラメータを再帰的に評価し、そのトレンド血液拍出量値を、その最適局所状態パラメータの少なくとも1つのその所定の出力関数として評価するカルマンフィルタである、システムである。
【0029】
さらに別の実施形態において、本発明のシステムは、上記局所評価器が、上記トレンド評価器に接続され、上記最適局所状態パラメータが、上記カルマンフィルタに対する初期化状態パラメータを形成する、システムである。
【0030】
さらに別の実施形態において、本発明のシステムは、
A)上記入力信号プロフィールが、疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)であり、
B)上記伝達関数測定手段がさらに、
1)上記入力関数の自己相関値Cxxを決定し、その自己相関値Cxxを上記周波数領域に変換し、
2)上記入力信号と上記出力信号との間の相互相関値Cxyを決定し、その相互相関値Cxyをその周波数領域に変換し、
3)上記測定された伝達関数値を、その周波数変換相互相関値およびその周波数変換自己相関値との間の商の所定の関数として計算するために設けられている、システムである。
【0031】
なおさらなる実施形態において、本発明のシステムは、局所またはトレンド評価の前に、上記インジケータ出力信号からすべての低周波数ノイズトレンドを除去するプリフィルタリング手段をさらに有する、システムである。
【0032】
なお別の局面において、本発明のシステムは、患者の身体の流動部位を通して血液拍出量を評価するためのシステムであって、
A)熱インジケータを、疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)入力信号プロフィールを有するインジケータ入力信号として、その流動部位の上流位置に注入するインジケータ注入手段と、
B)その流動部位の下流位置におけるそのインジケータの存在をインジケータ出力信号として感知するサーミスタ手段と、
C)そのインジケータ出力信号からすべての低周波数ノイズトレンドを除去するプリフィルタ手段と、
D)1)その入力信号の自己相関値Cxxを計算し、その自己相関値Cxxを上記周波数領域に変換し、
2)その入力信号とその出力信号との間の相互相関値Cxyを計算し、その相互相関値Cxyをその周波数領域に変換し、
3)測定された伝達関数値を、その周波数変換相互相関値およびその周波数変換自己相関値との間の商の所定の関数として計算する、伝達関数測定手段と、
E)最適局所状態パラメータを、その伝達関数モデルの所定の最適化関数およびその測定された伝達関数値として決定し、局所血液拍出量値を、その最適局所状態パラメータの少なくとも1つの所定の出力関数として評価する局所評価手段と、
F)その測定された周波数領域伝達関数値をカルマンフィルタリングすることによって、最適トレンド状態パラメータを再帰的に評価し、トレンド血液拍出量値を、その最適局所状態パラメータの少なくとも1つの所定の出力関数として評価するトレンド評価手段と、
を有するシステムである。
【0033】
【発明の実施の形態】
(発明の要旨)
本発明は、患者の身体の流動部位(flow region)を通る血液拍出量(blood output)を評価するための方法およびシステムを提供する。本発明によれば、好ましくは熱であるインジケータを入力信号プロフィールを有するインジケータ入力信号として、流動部位の上流位置に注入する。好適な信号プロフィールは、疑似ランダムバイナリシーケンスである。流動部位中の下流位置においてインジケータの存在が、インジケータ出力信号として感知される。これは、熱インジケータにおいては好ましくはサーミスタを用いて行う。次に、局所評価器とトレンド評価器との2つの別々の評価器において心拍出量(CO)を評価する。両評価器は、入力信号プロフィールおよびインジケータ出力信号の所定の関数として、COを評価する。トレンド評価器は、局所評価器よりも長い時間フレームにわたるデータに基づいてその評価値を形成する。本発明はこのようにして、血液拍出量の比較的速い変化および遅い変化の両方に対応して、評価血液拍出量値を提供する。
【0034】
トレンド評価器は好ましくは再帰的である。好適な実施態様において、トレンド評価器はカルマンフィルタである。
【0035】
好ましくは、周波数領域伝達関数を、各期間の入力信号および出力信号の間において測定する。このことにより、測定された周波数領域伝達関数は、局所出力評価およびトレンド出力評価の両方に対する入力信号を形成する。
【0036】
本システムにおいて、最適局所状態パラメータを、伝達関数モデルおよび測定された伝達関数値の所定の最適化関数(optimization function)として決定し、次に局所評価器は、最適局所状態パラメータの少なくとも1つの所定の出力関数として、局所血液拍出量値を評価することが有利である。トレンドは好ましくは、測定された周波数領域伝達関数値をカルマンフィルタリングするによって最適トレンド状態パラメータを評価し、最適局所状態パラメータのうち少なくとも1つの所定の出力関数としてトレンド血液拍出量値を評価する。
【0037】
局所およびトレンド評価器は、協力してCO評価精度および信頼性を改善する。例えば、最適局所状態パラメータを用いてカルマンフィルタを好ましくは初期化する。
【0038】
システムは好ましくは、入力信号の自己相関値(autocorrelation value)Cxx(かつ自己相関値Cxxを周波数領域に変換する)および、入力信号と出力信号との間の相互相関値(cross−correlation value)Cxy(かつ相互相関値Cxyを周波数領域に変換する)の両方を決定する。次に、測定伝達関数値を、周波数変換された相互相関値と自己相関値との間の商の所定の関数として計算する。
【0039】
本発明によるシステムはさらに、局所評価またはトレンド評価前にインジケータ出力信号から低周波数ノイズトレンドを除去する、プリフィルタを有する。
【0040】
(詳細な説明)
図1は、患者の心拍出量に関するデータを測定しかつ表示する本発明の一般的なブロック図である。信号注入装置は、患者の心臓系の上流位置に配置され、感知装置は下流位置に配置される。患者の心拍出量を正確に測定するために、信号を患者の右心房100内またはその近くの血液に注入し、かつ注入した信号を肺動脈102の枝脈内またはその近くで感知することは有利である。本発明の好適な実施形態を示すために、これらの注入および感知位置は以下のように仮定される。右心房から肺の枝脈への血液の流れは、図1に矢印103で示す。
【0041】
流体または質量インジケータの注入による複雑化を回避するために、連続心拍出量(CCO)測定の基礎として、純粋に熱性の熱信号を使用するのが好ましい。このような場合には、熱が、注入されたインジケータ入力信号であり、CCO評価値の基となる出力信号を与えるために下流温度が感知される。従って、電気加熱素子104は右心房100内に配置される。加熱素子104は、駆動回路106を介して素子に与えられる電流または電圧によってその散逸パワー(熱)が決定される電気抵抗素子であるのが好ましい。駆動回路106は、加熱素子104の散逸パワーがプロセッサ107によって生成される所定の信号プロフィールx(t)に従うように、電流または電圧を加熱素子104に与える。
【0042】
本発明で使用できる信号プロフィールの例としては、米国特許第4、380、237号(Newbower、1983年4月19日)に記載されているような単一または多周波数正弦波信号、米国特許第5、357、967号(Dixonら、1994年10月25日)に記載されているような拡散スペクトル信号、および米国特許第4、507、974号(Yelderman、1985年4月2日)に記載されているような矩形波信号シーケンスなどがある。Yeldermanのシステムでは、熱信号は疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)により生成され、血液の流速を抽出するために、相関技術が下流位置で使用される。本発明の好適な実施形態では、注入入力信号としてこのようなPRBS熱信号を使用している。
【0043】
注入信号が熱性であるこの好適な場合には、サーミスタまたは類似の温度感知素子108が肺動脈102内の下流位置に配置される。非熱性のインジケーション信号が注入される場合は、サーミスタは、下流のインジケータの存在を検出する適切な従来のセンサと置き換えられる。
【0044】
サーミスタは、信号調節回路110に電気接続され、この回路110は、その電気出力電圧または電流がサーミスタ108によって感知される血液温度の公知の関数である、いずれの公知の回路であってもよい。信号調節回路110は、感知された温度信号を増幅およびスケーリングする従来の回路機構と、連続温度信号y(t)を処理用にデジタル形式に変換する、公知のアナログ−デジタル(A/D)回路機構とを有する。
【0045】
加熱素子104とサーミスタ108とは、カテーテルの遠位端、または遠位端近くに間隔をあけて装着されるのが好ましい。カテーテルは、患者の静脈に送り込まれ、加熱素子とサーミスタとが動作位置に達するまで静脈内を通される。この技術は周知であるため、詳しくは説明しない。
【0046】
加熱素子104、血液、サーミスタ108、および加熱素子からサーミスタへの循環系によって規定される物理的なシステムは共同して、熱信号が伝播し変更される「チャネル」を構成する。なお、加熱素子およびサーミスタでさえ変化を引き起こす。加熱素子は、PRBSパルスに従うために出力パワーおよび温度を即座に変えることはできず、サーミスタは、傍を流れる血液の連続温度変化を完全に追跡することはできない。
【0047】
電力とタイミング信号とを、本発明の駆動回路106、プロセッサ107、およびその他の構成要素に供給するために、好ましくは、従来の電源およびクロック装置が含まれる。これらの装置は周知であるため、さらに図示または説明はしない。
【0048】
信号調節回路110はプリプロセッサ112に接続され、プリプロセッサは、感知された温度信号y(t)から変動を除去する(好適には移動平均フィルタを用いる)こと、メモリーバッファy mem(図示せず)に前のy(t)値を記憶することなどの機能を果たす。プリプロセッサ112は相関プロセッサ114に接続され、相関プロセッサ114は、入力信号のx(t)のそれ自体との、および感知された温度信号y(t)との、それぞれの相関プロフィールCxxおよびCxyを、出力信号として有する。相関プロセッサ114の出力は、入力として時間−周波数領域に、または好ましくはフーリエ変換を行う「フーリエ」プロセッサ116に接続される。プロセッサ116からの出力信号は測定された伝達関数Hxy、およびCxxおよびCxyの周波数域表現SxxおよびSxyを有する。
【0049】
様々なプロセッサ112、114および116の好適な構造および機能を、以下に詳しく記載する。これらプロセッサのいずれか、またはすべてが、たとえば従来の高速デジタル信号プロセッサ(DSP)を用いて専用のプロセッサとして実現され得るか、またはプロセッサ107を含む単一のプロセッサ、またはプロセシングシステムとして実現され得る。
【0050】
フーリエプロセッサ116からの出力信号、特にHxyは、入力信号として2つの別個ではあるが協働する評価器、すなわち局所評価器118とトレンド評価器120とに与えられる。これらの評価器も、専用のプロセッサを用いて、またはシステム内の他のプロセッサ内で実現することができ、主要出力信号として状態ベクトルXの評価値のX localとX trendとを有し、これから連続心拍出量が決定され得る。しかし図1に示すように、評価器はそれぞれの評価値を改善するために相互にデータを供給し合う。これについて以下に説明する。
【0051】
評価器118および120は、従って、共に心拍出量の評価値を生成する。通常局所評価器118は、流量のトレンドをより良く追跡するトレンド評価器120の評価値よりも、心臓流量の急速な変化をより綿密に追跡する、安定した評価値を生成する。従って本発明は、2つのモード、すなわち、1)ユーザに、連続心拍出量(CCO)の早期の評価値を与える「スタット」モード、2)ユーザにCCOの長期トレンドに関する情報を与える「トレンド」モードのどちらか一方、または好適には両方で操作され得る。スタットモードは、たとえば薬剤の滴定に伴う、急速心拍出量(CO)応答、または患者が心臓のバイパス処置を終えた後に生じる活発なCOをほとんどリアルタイムでモニタする場合に好適である。トレンドモードは、たとえば、流体欠損、静脈内への流体の添加、または薬剤滴定の影響による、COの漸次変化を検出する場合に好適である。たとえば臨床環境では、手術中の麻酔科医は、時間が決定的に重要な外科手術中の患者を好む。しかし回診中の医者は、回復中の患者の状態のより漸次的な変化をより良く示すとの理由で、トレンド情報を見ることを一般的に好む。2つの評価器の相対的な操作も以下に詳しく説明する。
【0052】
状態評価値X_localおよびX_trendは、他の信号(以下に説明)と共に、エラー検出回路機構に入力され、エラー検出回路機構は、カテーテルの断線、ボーラス注入、および電磁妨害などの妨害があるかどうかを決定するために信号を調べる。誤差検出回路がこのような問題を検出した場合は、不完全なデータの削除、システムのリセット、または他の回復手順の必要に伴い、プロセッサ107、検出器118および120、または他のプロセッサに信号を送る。これも以下に詳しく説明する。
【0053】
エラーが検出されない場合、状態評価値はCCOプロセッサ124に入力され、プロセッサ124は短期、または「スタット」CCO評価値、CCO_1、およびCCOトレンド評価値CCO_tの両方を計算する。CCOプロセッサに使用される公式は以下に説明する。
【0054】
最後に、CCO評価値は、入力信号として標準表示システム126に与えられ、表示システム126は、CCO値を任意の所望の形式で表示する。
【0055】
本発明の好適な実施形態においては、血液の熱希釈が流量を決定するのに使用される。すなわち上流位置で熱を与えて、下流での血液温度を測定し、血液がその間にどのように入力熱信号を変化させたかを調べる。上記の通り、さまざまな熱信号が首尾よく与えられ得るが、好適な熱信号はYelderman(米国特許第4、507、974号)に記載されているようにパルス化される。すなわち、疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)として与えられる。このPRBSの特性は周知である。Yelderman法の利点の1つは、入力信号のスペクトルが、ノイズの多い心臓環境内で「かき消され」ないように充分に「フラット」(所与の範囲にわたって振幅がほぼ同じである、多数の周波数成分)である点である。他の利点は、患者の体内の典型的なノイズ周波数によって、ノイズ周波数(呼吸数、およびその高調波での強力な成分など)をより良く回避できるように調節することが容易なことである。McKown(米国特許第5、146、414号)参照。さらに別の利点は、PRBS信号は相互相関を用いた検出に非常に適しており、かつ相互相関関数が流量の評価に役立つことである。
【0056】
x=x(t)を、(PRBSとしての)加熱素子に与えられる電力(PRBSとして)、y=y(t)を、肺動脈での測定血液温度、およびCxy=Cxy(t)を、xおよびyの相互相関とする。相互相関は、2つの異なる信号が、異なる相対的な時間のずれでいかに良く「適合する」かを示す周知の概念である。既知の入力電力信号x(t)と測定された温度出力信号y(t)とが与えられた場合に関数Cxy(t)を決定するために相互相関計算を実行するには、いずれの公知の方法でも使用され得る。
【0057】
図2(a)〜(c)はそれぞれ、このようなPRBS加熱素子電力信号(x)、所与のPRBS信号xに対する、測定された下流肺動脈血液温度信号(y)、およびこれら2つの信号の相互相関関数Cxyの、2サイクルの例を示す。
【0058】
図2(a)が示すように、PRBS信号は2つの状態、すなわち、最大の電力が与えられる(図中ではおよそ9.5W)ON、電力は与えられないOFF、を有する一連のパルスである。それぞれの状態は、最短パルス持続時間Tcの間持続し、PRBSサイクルは、状態の所定数Nの間持続して、その後繰り返される。(好適な最長シーケンスのいずれかを引き出す数字Nは、公知の式を用いて決定され得る。図示された例では、N=15。)図が示すように、PRBSは、時間Tc毎に状態間を単に前後に「切り換わる」だけではなく、むしろ状態の転移は選択された数Nに依存する規定されたパターンに従う。
【0059】
なお、血液温度y中のピークは、入力電力信号中の対応するピークの約8秒後に発生し、そのためCxyのピークは約8秒ずれて発生する。また、血液は大体において入力熱信号のローパスフィルタとして作用する。yはxとほぼ同じ一般的な形状を有するが、急激な上昇と下降は「平滑化」されている。これは予想し得るように、血液は加熱素子ほど急速に加熱され得ないため、かつ血液がサーミスタに向かって流れるときに、血液の領域間に熱運搬があるためである。
【0060】
心拍出量(CO)が相互相関曲線Cxyの下の領域に反比例することは、理論的に示され(たとえば、Yeldermanの特許参照)、かつ実験により確認され得る。従って、
【0061】
【数1】
Figure 0003701285
ここで、sは、切り捨て誤差が所定のしきい値より小さくなるほどに充分に大きいように選択される。Kは加熱素子の平均熱パワーに比例するパラメータである。
【0062】
Cxyは(たとえばプロセッサ114で)計算されて、評価器118および120のいずれかに入力される前に知られるため、最初は2つの評価器は無用だと思うかも知れない。計算および較正を経てパラメータKを決定した後は、CO値、従って求めていた「答え」を得ることができる。しかし1つの問題は、臨床環境では、温度データは典型的にはノイズが多すぎるため、統合して心拍出量の信頼できる評価値になるCxy値を与えることはできないということである。
【0063】
以下に説明するように、本発明は、PRBS相互相関データの周波数領域伝達関数表現を処理するために、2つの異なる評価器を使用する。本発明者らは、リニアシステム識別理論を適用することによって、および感知された温度データをさらに処理することによって、連続心拍出量(CCO)モニタリングに対して、より早い評価値を与え得る短期「スタットモード」評価値と共に、より正確なトレンド情報が得られることを発見した。
【0064】
本発明を含む、熱希釈に基づくすべてのCO評価技術に共通な仮定のひとつは、熱は血管内に保存されるということである。すなわち、加熱素子104が血液に与える熱は、少なくともサーミスタ108を通り過ぎるまでは血液から失われない。すなわち、熱は血管壁に流れ込まないし血管壁を通って出ていかないと仮定する。この仮定が、血液と周囲の心血管組織との間の生理的な流れおよび小さい温度勾配にとって有効であることは知られている。
【0065】
別の共通の仮定としては、少なくとも血液がサーミスタに達するまでには、血液は右の心房によって充分に混合される、ということがある。熱の保存の仮定と共に、この仮定により、別の任意の流入−流出構造の流れシステムにおいて、流出における関連温度信号を測定することによって、全体のシステムの流れを評価することが可能になる。
【0066】
心拍出量を評価するためのその他のシステムと異なり、本発明は1つの更なる仮定、すなわち、加熱素子の電力と肺動脈の血液温度との間の関係が、線形かつ時不変であるという仮定を有利に使用する。これらの2つの特性は、一般的に共に線形時不変システム(LTIS)を構成すると言われる。
【0067】
チャネルが線形システムであるという仮定は、増加する入力熱パルスが増加する出力温度波形に比例する関係にあるということを意味するので、特に、適用される温度範囲が限定される(血液を摂氏約50度を超えて加熱すると、ほとんどの場合組織の損傷が生じる)ので、妥当である。本発明の好適な実施形態における最大許容加熱器表面温度は摂氏45度であり、これは安全であると知られている。時不変性の仮定はまた、xおよびyが連続して測定される速度に対して血液循環における変化がゆっくりと起こる限り、妥当である。
【0068】
ここで付与される熱信号がPRBS波形であると仮定する。各PRBS周期にシステムに付与される全熱エネルギー(単位:カロリー)は以下のように書き得る。
【0069】
【数2】
Figure 0003701285
ここで、
Figure 0003701285
各PRBS周期にシステムから流れ出す全熱エネルギーは以下のように書き得る。
【0070】
【数3】
Figure 0003701285
ここで、
Figure 0003701285
定常状態における熱量保存の仮定は、Heat_in=Heat_out、または以下を意味する。
【0071】
【数4】
Figure 0003701285
ここで、K’=k/(k・d・c)は単位℃/ワット×リットル/分である変換定数である。血液については、上述の単位のとき、K’=0.0158である。公知の方法で、任意の周期的な電力信号(例えば、Newbowerの特許に記載される多正弦波入力信号およびDixonらの特許に記載される拡散スペクトル入力信号)について類似の関係が導き得るということに留意されたい。
【0072】
ここで、システムが線形かつ時不変である(LTIS)という仮定は、出力y(t)が入力x(t)およびチャネルのインパルス応答の畳み込みに等しいということを意味する。周知の通り、システムのインパルス応答関数は、システムの1単位のエネルギーの瞬間的付与に対するある期間にわたる応答の仕方を記述する。簡略化した例として、ベルをハンマーである単位のエネルギーで打つことを想像されたい。(打ったよりはるかに長く、理論的には無限に長く続く)ベルの響きが、ベルのインパルス応答に相当する。ベルが完全なLTISである場合、響きの周波数およびおよびその相対持続時間は、ベル自体の特徴を示す。
【0073】
本発明のコンテクストにおいては、
【0074】
【数5】
Figure 0003701285
ここで、h(s)はチャネルのインパルス応答関数であり、dcはLTISのゼロ周波数ゲインである。
【0075】
従って、(式6)
【0076】
【数6】
Figure 0003701285
である。
【0077】
1PRBS周期にわたって積分すると、始点に依存せず同じ数が得られ、その結果、(式7)
【0078】
【数7】
Figure 0003701285
である。
【0079】
このファクターは、式6の両辺に共通であり、従って、このファクターを消すことができ、以下を残す。
【0080】
【数8】
Figure 0003701285
しかし、h(s)の積分は定数(unity)であるので、
【0081】
【数9】
Figure 0003701285
であり、これによりリットル/分の体積流量F(CCO評価値)と℃/ワットのチャネルのLTIS直流ゲイン、dcとの間の所望の関係がもたらされる。
【0082】
LTISゲイン、dcは、チャネルの周波数応答伝達関数Hxy(ω)のゼロ周波数値であり、これは以下のように定義される。
【0083】
【数10】
Figure 0003701285
本発明のコンテクストにおいては、
【0084】
【数11】
Figure 0003701285
ここで、h(s)はチャネルのインパルス応答関数であり、dcはLTISのゼロ周波数ゲインである。
【0085】
従って、(式6)
【0086】
【数12】
Figure 0003701285
である。
【0087】
1PRBS周期にわたって積分すると、始点に依存せず同じ数が得られ、その結果、(式7)
【0088】
【数13】
Figure 0003701285
である。
【0089】
このファクターは、式6の両辺に共通であり、従って、このファクターを消すことができ、以下を残す。
【0090】
【数14】
Figure 0003701285
しかし、h(s)の積分は定数であるので、
【0091】
【数15】
Figure 0003701285
であり、これにより1分当たりのリットル単位の体積流量F(CCO評価値)と1ワット当たりの摂氏温度単位のチャネルのLTIS直流ゲイン、dcとの間の所望の関係がもたらされる。
【0092】
LTISゲイン、dcは、チャネルの周波数応答伝達関数Hxy(ω)のゼロ周波数値であり、これは以下のように定義される。
【0093】
【数16】
Figure 0003701285
ここで、Y(ω)およびX(ω)はそれぞれy(t)およびx(t)のフーリエ変換であり、すなわち、
【0094】
【数17】
Figure 0003701285
ここで、ω=1秒当たりのラジアン単位の周波数であり、
【0095】
【数17A】
Figure 0003701285
Y(ω)=dc・H(ω)・X(ω)であり、ここで
【0096】
【数18】
Figure 0003701285
である。
LTIS伝達関数Hxy(ω)を解くと、以下の式が得られる。
【0097】
【数19】
Figure 0003701285
ω=0(ゼロ周波数)と設定し、H(0)=1と認識すると、LTISゲインパラメータdcはシステム伝達関数のゼロ周波数値として、すなわちdc=Hxy(0)として確認される。
【0098】
これはまた、システム伝達関数Hxyを算出する1つの方法を提供する、すなわち、波形x(t)およびy(t)をサンプリングし、次いで任意の公知の方法を使用して、波形のそれぞれの離散フーリエ変換を計算することにより、それぞれX(ω)およびY(ω)を提供し、次いでこれらの関数の除算をポイント毎に行ってHxyを得る。
【0099】
本発明の好適な実施形態においては、Hxy(ω)は以下のように決定される。まず、x(t)およびy(t)が個別に理想のゼロ平均PRBSと相互相関され、これによりそれぞれの相互相関波形CxxおよびCxyが得られる。次いで、
【0100】
【数20】
Figure 0003701285
であることが示され得、ここで
【0101】
【数21】
Figure 0003701285
であり、
sは秒単位の相互相関遅延であり、そして
【0102】
【数21A】
Figure 0003701285
はフーリエ変換を示す。
【0103】
この方法においては、算出されたCxxおよびCxyベクトルにおける成分の数は、xおよびyデータ波形の1周期(PRBS周期)におけるサンプル数に等しい。この数、ラン当たりのサンプル数(SPR)は、
SPR=N*Tc*Fsであり、
ここで、
N =PRBSにおける状態の数
Tc=各状態の持続時間(単位:秒)、および
Fs=1秒当たりのサンプル数、すなわち、サンプリングレートである。
【0104】
N=15、Fs=10および2≦Tc≦4などの典型的な値のとき、SPRは300〜600の範囲である。McKownなどのシステムにおいては、Tcは0.1秒の刻み(increments)で調整され、これにより大きなノイズ成分を含む周波数を回避することによってシステムの性能を向上させる。
【0105】
図3(a)〜(d)は、1つの実際のテストにおける、SxxおよびSxyの標準的なボード線図を示す。Sxxは本質的にゼロ位相であることに留意されたい。図4(a)、(b)は、測定された伝達関数Hxyの対応するボード線図を示し、HxyはSxyとSxxの比として算出された。
【0106】
実際には、発明者らは、X(ω)が有意な電力を有する周波数で、すなわち、熱入力信号x(t)の最も優勢な周波数でのみHxyを測定すれば十分であると判断した。PRBS入力については、これらはn=1,2,...mのとき、ω=n/(N*Tc)に位置するより低い高調波周波数である。テストにおいて、発明者らは、m=10が十分であることを発見したが、10より多いまたは少ない周波数が含まれ得る。実際の数は、従来のシミュレーションおよび実験を用いて決定し得る。例示としてのみ、以下ではm=10と仮定する。
【0107】
これは、伝達関数Hxyがm個の複素数(周波数のそれぞれが複素数である)Hxy(ω)によってのみ適切に決定され得、これは電力信号xと温度信号yとの間の関係を類別することを意味する。これは、関数CxxおよびCxyのそれぞれを表すためだけに必要な300〜600の複素数と比較して、大きな計算上の節約となることを表す。
【0108】
相互相関曲線Cxyの下の領域(area)に基づいてよりも、伝達関数Hxyに基づいて入力−出力関係を特徴付けるということには、少なくとも以下の利点がある。
【0109】
1)表記の効率化。Cxyに対して300〜600(または一定の用途に対するあらゆるSPR)の代わりにわずか10の複素数しか必要でない。
【0110】
2)ノイズの白色化。ノイズは、Hxyの成分間でほぼ非相関であることが多いが、Cxyの成分間では相関度が高い。
【0111】
3)ベースライン減法。伝達関数の使用はCxyのベースラインを評価する問題(これは心臓環境において通常見出されるような低周波ノイズの存在下では困難である)を必然的に回避する。
【0112】
4)数理的モデル化および分析の効率化。伝達関数アプローチによるとインジケータ希釈のための好適なLTISモデルの単純なフーリエ変換表現が可能になる。これには、選択されたモデルのパラメータを評価するための著しく強力なルーチンの使用が可能になるという付加的利点がある。
【0113】
式9およびその展開が示すように、単位ゲイン(unity gain)伝達関数H(ω)またはインパルス応答h(t)がわかっているとき、10のそれぞれの複素数の各々1つが定常状態のゲイン、dcの評価値を、以下の如く提供するに足りる。
n=1,2,...,10に対し
【0114】
【数22】
Figure 0003701285
次いでdcの各評価値は、式8に従って、K’をdcで割ることによって関連する心拍出量の評価値を提供する。問題は、この点に達し得るまでに、LTIS仮定が与えられると、h(t)およびH(ω)の双方を決定するインジケータ希釈曲線の形状について何らかの見解を持っていなければならないということである。
【0115】
心拍出量の評価というコンテクストにおいては、 “Applicationof Lagged Normal Density Curve as aModel for Arterial Dilution Curves,”Circulation Research, vol. 18, 1966でBassingthwaighteらによって記載される「遅延正規モデル(lagged normal model)」が著しく正確かつ有用であることが証明され、従って、「遅延正規モデル」は本発明による心拍出量の好適なモデルである。この論考において、遅延正規モデルは、インパルス応答が単位領域(unity−area)ガウス(正規分布)関数と単位領域減衰(指数関数の畳み込みであるLTISとして規定される。ガウス関数は2つのパラメータ、すなわち、平均値μおよび標準偏差σを有する。指数関数は1つのパラメータ、すなわち、時間−減衰パラメータτを有する。従って、各周波数ωにおける単位ゲイン、遅延正規伝達関数H_lnは、以下の通りμ、σおよびτに依存する。
【0116】
【数23】
Figure 0003701285
これらのパラメータの物理的な意味は以下の通りである。
【0117】
μ:移動流を表す純粋な時間遅延
σ:ランダム分散の測定値
τ:分布容積(本実施例においては血管)における混合に関連する時定数
μ、σおよびτの単位は時間(秒)である。
【0118】
μ、σ、およびτが既知である場合は、10個の複素測定数Hxy(ω)のそれぞれが、以下による心拍出量(CO)の評価値を提供する。
【0119】
【数24】
Figure 0003701285
しかし、この関係を適用するためには、先ず、μ、σ、およびτの値が何であるべきかだけではなく、10個の心拍出量評価値をどのように組み合わせるべきかについても決定しなければならない。
【0120】
心拍出量は、h(t)、H(ω)、またはHxy(ω)の形状に依存するのではなく、LTISゼロ周波数ゲインdcのみに依存することに留意すべきである。しかし、実験伝達関数Hxyは、ゼロではない10個の周波数ωで測定されるため、測定されたHxy(ω)をゼロ周波数に外挿するために、単一(unity)ゲイン伝達関数H(ω)を評価することもまた必要である。遅延正規モデルを仮定すると、これは、ゲインパラメータdcを評価するためには「形状」パラメータμ、σ、およびτを評価しなければならないことを意味する。
【0121】
μ、σ、およびτを評価するときの第1のステップは、電力−温度周波数領域伝達関数Hxy(ω)を、その最初の10個の高調波で測定することである。第2のステップは、伝達関数データのための理論上の遅延正規モデルの支援によりこれらの測定を分析することである。
【0122】
X=[dc,μ,σ,τ]を評価されるパラメータのベクトルとすると、以下のようになる。
【0123】
Hxy_ln(ω|X)= dc* H_ln(ω|μ,σ,τ)
次のステップは、ある意味では、Hxy_ln(ω|X)が最適に10個のHxy(ω)測定のすべてを表すように、状態ベクトルXを評価することである。何が「最適」であるかの定義は設計の選択の問題であるが、本発明による好適な定義としては、二乗誤差の合計が最小限となることである。この選択により、以下に述べるように、特に有利な評価ルーチンを使用することが可能になる。
【0124】
図5(a)、(b)は、図4(a)、(b)の伝達関数データ(データポイントとして示される)が遅延正規モデルHxy_ln(ω|X)を用いて如何に良好に適合され得るかを示す。この実際の試験では、患者のカテーテルとして定義されるシステム、右心房、および肺動脈は、パラメータベクトルX=[dc,μ,σ,τ]=[0.0040℃, 2.4s,0.6s,4.0s]によって良好に特徴付けられた。これらの値に対して、患者の心拍出量の評価値は、0.0158/0.0040=3.9リットル/分である。パラメータを決定する方法について以下に述べる。
【0125】
遅延正規モデルのための単一ゲインインパルス応答の有用な分析形態は以下の通りである。
【0126】
【数25】
Figure 0003701285
ここで、erf()は既知のエラー関数であり、tは秒で表される時間である。
【0127】
h_lnのためのこの式により、遅延正規モデルを相互相関に基づいて、および周波数領域内で容易に評価することが可能となる。この場合も、システムがLTISであると仮定すると、モデルは以下によって示され得る。
【0128】
【数25A】
Figure 0003701285
ここで
【0129】
【数25B】
Figure 0003701285
は畳み込みを示す。発明者らによって行われた試験により、同じ患者のためのモデル化された相互相関関数Cxy_modelおよび測定されたCxyデータと、図5(a)、(b)におけるような遅延正常パラメータとの間には非常に密接な一致があることが示された。
【0130】
発明者らはまた、実験により、散逸パラメータσは観察されたCxyまたはHxyデータから決定することが不成功に終わることが多いことを見い出した。信号対ノイズ比(SNR)をσを決定するのに十分なほど高くした臨床試験で、発明者らは、σがτに線形に関連することを見い出した。他の患者に対しては、既知の方法を用いて、線形の関係σ=a・τ+bが確立され定量化され得る。100名の患者を用いた1つの試験において、発明者らは関係σ=0.26τ−0.5を観察した。この結果はまた、Bassingthwaighteらの発見と質的に一致した。
【0131】
τとσとの間に線形の関係を仮定すると、1つのパラメータを評価するだけで両方の評価を行うことができる。本発明のこの好適な実施形態では、プロセッサはτを評価する。何故なら、これが伝達関数のコーナー周波数に関連するからである。(τの方がより明瞭に識別可能な伝達関数の特徴であるが、σを評価して次にτを計算することも可能である。)従って、遅延正常パラメータベクトルXを1パラメータだけ減らし、X=[dc,μ,τ]とすることが可能である。
【0132】
これで残された問題は、このパラメータまたは「状態」ベクトルXを評価することである。本発明によれば、2つの相補の評価ルーチン、すなわち、局所評価器112でのSNR依存型局所信号平均化評価、および「生」のすなわち平均化されていない伝達関数の観察に基づくトレンド評価が用いられる。Xの正確な評価が、上述の(LTISなどの)仮定と共に、dcゲイン、従って心拍出量の評価値を生成するために必要とされるすべてであることに留意されたい。
【0133】
上述のように、パラメータベクトルX=[dc,μ,σ,τ]によって特徴付けられる遅延正規モデルは、心臓内の流れのための伝達関数を非常に良好に示すことが示された。しかし、熱が保存されることおよびチャネルがLTISであることを仮定すると、本発明は、パラメータベクトルXによって特徴付けられ得る心臓伝達関数の他のいかなる適切なモデルによっても用いられ得る。
【0134】
(局所評価)
Xを正確に評価する問題は、ある所定の意味で観察され測定された伝達関数に近似する遅延正常伝達関数モデルHxy_ln(ω| X)を見い出すという問題に等しい。モデル化された伝達関数と測定された伝達関数との間の相違は、コスト関数によって定量化され得る。これらの関数の値はXの選択に依存する。本発明のこの好適な実施態様では、局所評価器118は以下のコスト関数Hxy_cost(X)を評価し最小にする。
(等式13)
【0135】
【数26】
Figure 0003701285
ここで、
【0136】
【数27】
Figure 0003701285
は、状態ベクトルX=[dc,μ,τ](減少する場合)とすると、PRBS高調波周波数ωでの遅延正常伝達関数モデルHxy_ln(ω| X)に対する、平均測定伝達関数Hxy_avg(ω)の二乗絶対値誤差(SAE)である。各二乗絶対値誤差値は、好ましくは、重みW(ω)により重み付けされる。これは重み付けされた最小二乗近似を形成することと同じである。
【0137】
測定伝達関数値Hxy_avg(ω)は好ましくは平均化されることに留意されたい。平均化の好適な方法を以下に示す。
【0138】
重みW(ω)は通常のシミュレーションおよび実験を用いて選択され得るが、これらはこのましくは以下のように設定される。
【0139】
【数28】
Figure 0003701285
ここで、Sxx(ω)はωでの加熱素子の電力であり、R_Hxy(ω)はHxy(ω)の統計学的変動である。加熱素子の電力は、測定および分析の標準的な方法を用いて所定の周波数で予め決定され得る。
【0140】
R_Hxy(ω)を得るためには、先ず、これもまた観察ノイズ電力であることに留意すべきである。これについて以下に詳述する。この値は、トレンド評価器を用いて「生」のデータから得られ得る。(これは観察ノイズ共分散行列のn番目の対角成分である。これについては後述する。)上述の好適なコスト関数の利点および他の特性については、既知の文献、System Identification for the User、Lennart Ljung、173〜75頁、Prentice Hall、1987に記載されている。
【0141】
次に、10個の周波数ωで測定された複素伝達関数に対するコスト関数Hxy_cost(X)を最小にする3成分のベクトルXの値が、 dc、従ってCOを計算するために直接用いられ得る。10個の周波数に対してXにわたって等式13を最小にすることは、非線形最小二乗法による最小化を含み、この最適化を行うためにはいくつかの既知の方法がある。このような方法の例としては、Newton−Raphson型ルーチンを含む多くの勾配降下法がある。収斂が保証されているため、本発明で好適な方法はNelder−Meadシンプレックス(simplex)ルーチンである。これは、パラメータの関数を最小にするパラメータ空間を検索する良く確立された数値方法である。
【0142】
このシンプレックスルーチンは非再帰的である。これはXの先行する評価値がなくても遅延正規モデルを測定データに最も良く適合させるパラメータベクトルXを提供する。従って、心拍出量値を急速に生成することができる。一方、この急速値の精度は、測定データHxy_avgがどの程度非ノイズであるかに依存する。生のデータHxyは典型的には非常にノイズが多いため、測定された値は、好ましくは、CO値を生成するためにシンプレックスルーチンで使用される前に、ノイズの効果を少なくとも減らすために平均化されるべきである。
【0143】
本発明によれば、シンプレックスルーチンへの入力は、好ましくは、最も新しい伝達関数測定Hxyの所定数N_tの重み付け平均Hxy_avgである。伝達関数は位相および振幅情報を含むため、信号平均化は、好ましくは、ノイズ電力の平方根に反比例する重み付け関数を用いる。同様に、測定された相互相関値Cxy_avgの重み付け平均が計算される。従って、以下が得られる。
【0144】
【数29】
Figure 0003701285
ここで、νはm番目の測定された伝達関数である。ノイズ電力を計算する好適な方法について以下に述べる。
【0145】
局所評価器の1つの利点は、自己初期化を行うということである。すなわち、単一Hxy測定からCO値を決定することができる。別の明瞭な利点は、迅速に評価値を提供し、従って「スタットモード」で使用するの適しているということである。さらに別の利点は、局所評価器はいつでも安定していることである。すなわち、測定された伝達関数値Hxyのいかなる組み合わせも評価器を発散させ失敗させることはない。何故なら、極端にノイズが多いかまたは間違った値でさえも、平均で使用される測定された伝達関数値の数(値は1つの場合もあり得る)を入力するのに要する時間内ですべての計算から完全に「消滅」するからである。
【0146】
しかし、局所評価値の1つの欠点は、局所CO評価値はノイズ依存型であるということである。局所評価器は与えられる通りの値、ノイズおよびすべてをとり、局所評価器がノイズに対処するために行い得る最善のことは、その影響を減らすために重み付け平均化を適用することである。当然ながら、重み付けは助けにはなるが、何らかの有用な方法で平均を重み付けするためには、ノイズ電力の評価値が必要である。ノイズ電力評価値を計算する好適な方法については後述する。
【0147】
局所評価器の別の欠点は、自己確証しないということである。すなわち、これは、現在計算されたCO値が前の値に照らして「意味をなす」かどうかについて何の表示も示さない。何故なら、これはトレンドについて考慮しないからである。平均化が含まれない場合は、これは「メモリ」を含まない。平均化が含まれる場合でも、そのメモリは依然として短期である。
【0148】
(トレンド評価)
評価器の「メモリ」を増やす1つの方法は、平均化のための適切に選択された重みを伴って単に評価の中に多くのHxyの前の値を含めることである。つまり、既知の非再帰型ブロック平均化フィルタまたは十分な数のHxyの前の値を使用するFIR(有限インパルス応答)を用いて、トレンド評価器120を実現し得る。次に、予想されるノイズの影響を減らすようにフィルタ係数を選択するために、およびCOトレンドを示すものとして十分に有用であることが実験により示されるようなやり方で平均化されたCO値を提供するためにために、従来の実験および設計方法を適用しなければならない。トレンド評価器のためにこのようなFIRの実現が選択される場合は、局所評価器のための重み付け平均化で使用される場合の少なくとも2倍の数の前の値を、および、ノイズの影響をさらに減らすためには、好ましくは4倍の数の前の値を含むべきである。
【0149】
不安定になる恐れはあるが、トレンド評価器を実現するためには、無限インパルス応答(IIR)フィルタもまた使用され得る。その係数を選択するために、従来の方法が用いられ得る。このようなFIRおよびIIR構成に伴ういくつかの問題の1つは、これらもまたノイズについての表示を行わないことである。むしろ、これらは係数を選択するとき予想ノイズ周波数が考慮されているものと仮定する。
【0150】
本発明によれば、トレンド評価器120は好ましくは再帰型評価器である。この1つの例としては既知の再帰型LQ最小二乗法評価器がある。しかし、本発明のトレンド評価器の好適な具現例はカルマンフィルタである。
【0151】
カルマンフィルタの具現化には以下を含むいくつかの利点がある。すなわち、1)カルマンフィルタは予め入力された信号の平均化を必要としない。従ってカルマンフィルタは「生」のノイズの多いデータについて直接動作することができる。2)カルマンフィルタはノイズを評価し、ノイズが増大するとそのゲインを「自動的に」調整する。ノイズ電力の分布についての所定の一般的な仮定が満たされる限り、その影響を減らすためにユーザはどのノイズがそのチャネル内にあるかを「知る」必要はない。3)COトレンドの評価値の速度(応答性)と精度との間の調整可能な相殺を可能にするために、本発明による所定の改変を用いて、カルマンフィルタの指数関数的に減衰するメモリの長さをノイズに依存して調整することができる。4)SNRの高い患者に対してカルマンフィルタが発散するという可能性の影響を相殺するために、局所評価器を使用することができる。カルマンフィルタの全般的な構造、その使用および利点については後にさらに詳述する。従来のカルマンフィルタの理論および特性についてのもっと十分な記述については、Applied Optical Estimation, Arthur Gelb, TASC, M.I.T. Press、1989などの多くの既知の文献を参照し得る。
【0152】
入力電力信号x(t)および出力温度信号y(t)によって規定される、仮定のLTISに関する伝達関数測定値Hxyのシーケンスが与えられると、トレンド評価器は、再帰的にパラメータベクトルx=[dc,μ,τ]を評価する(このベクトルは、Hxyの遅延正規モデルの伝達関数Hxy_ln(ω|X)を規定する)。これによって、システムの直流ゲインdcと、従って心拍出量とを、本質的に交流電気測定値から評価することが可能となる。
【0153】
Xを決定する問題は、離散時間システムモデル式と、関連の測定モデル式との点から述べられ得る。時間は、時間t=(n+1)が、時間t=n後の1つの時間単位であるような単位で表される。以下の式における時間単位は、伝達関数Hxyの2つの連続的な測定値の生成間の時間である。
【0154】
X(n)=X(n−1)+X_rw(システムモデル)
Hxy=Hxy_ln(X(n))+H_on(測定モデル)
ただし:
X(n)は、状態(パラメータ)ベクトル[dc,μ,τ]の現在の値であり;
X(n−1)は、最も最近の前に決定された値であり;
X_rwは、Xのランダムウォークを規定する3成分ベクトルであり;
Hxyは、最も最近に観測された伝達関数であり;
Hxy_ln(X(n))は、Xの現在の値を用いた、遅延正規モデルの伝達関数であり;そして
H_onは、観測ノイズの現在の伝達関数である。
【0155】
m=10の場合、Hxy、Hxy_ln(X)、およびH_onは、最初の10のPRBS高調波の各々に対して1つの成分を有する10×1の複素数ベクトルである。
【0156】
本発明によるシステムモデルは、モデルにランダムウォークの項X_rwを導入する。この項は、システムが線形で、時不変(LTIS)であり、本発明には必要ではないとの仮定にそむくが、これは、本発明によるCCO評価ルーチンの応答性の制御に有用であり、従って、これを含むことが好ましい。LTIS仮定は、X_rwの成分の分散を、システムが最大限ゆっくりと変化する程小さく維持することが必要であると解釈され得る。
【0157】
本発明において使用されるシステムモデルは、周波数領域パラメータの時間領域評価に関わる。古典的なカルマンフィルタ理論は、システムおよび測定モデル式が状態ベクトルの全ての成分に線形に関係し、観測ノイズが定常で、観測ノイズが無相関ガウス統計に従うという条件での時間領域再帰的評価に対する好動機のアプローチを提供する。これらの条件が当てはまれば、カルマンフィルタは、最小の平均2乗誤差(MMSE)を与えるという意味において、状態ベクトルのパラメータの最適な評価を提供することが示され得る。これらの3つの条件のどれも、本発明の好適な実施形態には厳密にあてはまらないが、差異のために生じ得る問題が、トレンド評価器が、正確な評価を提供するために、カルマンフィルタリング技術を用いてなお実行され得るといったように、本発明によって扱われる。
【0158】
第1に、拡張されたカルマンフィルタが、パラメータの非線形性の問題に取り組むために、本発明において使用される。第2に、非定常観測ノイズの問題が、カルマンフィルタ制御パラメータを作成し、共分散適応性ノイズ(noise covariance−adaptive)の評価を行うことにより扱われる。第3に、「ガウスエディタ」が、ガウス振幅分布を有さない観測ノイズの調整を行うために本発明の好適な実施形態に含まれる。トレンド評価器のこれらの拡張および改変は、以下に検討される。
【0159】
遅延正規伝達関数測定モデルHxy_ln(ω|X)は、dcパラメータに対して線形であるが、μおよびτに対して非線形であることに気付かれたい。しかし、このモデルは、3つのパラメータ全てに対して連続な導関数を有する(このことは、拡張されたカルマンフィルタを使用するために、理論上必要とされる)。これは、上で参照されたApplied Optimal Estimationのような標準的なテキストに確立されている。
【0160】
以下のカルマンフィルタリング式は、上記のシステムおよび測定モデル式に関する本発明の一次拡張カルマンフィルタを規定する:
カルマンゲイン行列:
【0161】
【数30】
Figure 0003701285
状態ベクトル更新:
【0162】
【数31】
Figure 0003701285
[Hxy−Hxy_ln(X(n−1))]が、伝達関数の実際に観測された値と、予測値との間の誤差であることに注目されたい。Xの初期値、すなわちX(0)は、好適には、局所評価器によって計算されたXの最初の値に設定される。実際には、Xの最初の3つの値が、好適には、局所評価器によって決定された値に等しく設定される。その理由は、Hxyの少なくとも3つの値が、トレンド評価器が、分散評価値R_Hxyを計算する前に、利用可能であることが好ましいからである。
【0163】
共分散行列更新:
【0164】
【数32】
Figure 0003701285
SIGMAの始値を形成するためには、システムは、SIGMAのi番目の対角成分を、(σ_init・X(i))に設定する(対角から外れた成分は0に設定される)。ただし、σ_initは、実験的に決定された、予め設定された初期標準偏差因子(あるプロトタイプにおいては、σ_init=0.15)であり、Xは、自動開始する局所評価器によって計算されるx=[dc,μ,τ]の第1の評価値である。各反復において、共分散行列は、以下の好適な共分散行列外挿:
SIGMAは、f・SIGMA+Qに設定される、
に従って外挿される。
【0165】
これらの式において、
・は、ベクトル/行列乗算を示し;
’は、ベクトル/行列(共役)の転置を表し;
Re{・}は、偏角(argument)の実部を示し;
SIGMAは、Xの実の3×3エラー共分散行列であり;
Lは、複素数の3×10カルマンゲイン行列であり;
R_Hxyは、Hxyの、10×10の実対角のノイズ分散行列であり、これは、所定数のHxyの以前の値に基づく従来のルーチンを用いて計算され得;
dHdXは、Xに対するHxy_ln(ω|X)の複素数の10×3導関数(ヤコビアン)であり;
fは、実数減衰メモリスケーラ(f>1)であり;そして
Qは、実の3×3ランダムウォーク共分散行列である。
【0166】
残りの項は、上記に規定される。これらの項および評価ルーチンに対するそれらの影響は、当該分野で公知である。
【0167】
これらのフィルタ式は、処理システムで実行され、再帰的に、状態ベクトルXおよび状態ベクトル共分散SIGMAの両方を評価する。このコンテクストにおいて、「更新」という用語は、新しい観測に基づく再帰的評価サイクルの一部を意味し、「外挿」という用語は、観測と観測との間の部分を意味する。
【0168】
観測と観測との間では、Xの期待値が一定であると仮定される。このことは、ランダムウォークベクトルX_rwのあらゆる成分の期待値が0であるので、LTIS仮定およびランダムウォークモデリング構成の両方に一貫している。
【0169】
カルマンフィルタリングの方程式の周波数依存性は、暗示的である:実験的に観測された伝達関数Hxyと、遅延正規伝達関数モデルHxy_ln(x)は、共に、10の複素数(PRBS電力信号の最初の10の高調波の各々に対して1個づつ)から構成される。従って、各成分は、
成分{Hxy}=Hxy(ω)=ωでの観測された伝達関数;および
成分{Hxy_ln(X)}=Hxy_ln(ωn|X)=ω=2π・n・(Fs・SPR)(n=1〜10の場合)でのモデル伝達関数で、上記と同様に、Fsは、1秒ごとのサンプル数であり、SPRは、PRBSラン毎のサンプル数である。
【0170】
導関数行列dHdXは、Xの各成分に対するHxy_ln(ωn|X)の導関数によって規定される3つの列と、ωの10個の値における各導関数の値に関する10の行とから構成される。従って、dHdXのn番目の行は、
【0171】
【数33】
Figure 0003701285
によって得られる。
【0172】
状態ベクトル更新式が示すように、システムは、2つの因子、すなわち、カルマンゲイン行列Lおよびシステムが、伝達関数が(Hxy)であると測定したばかりのものと、遅延正規モデルHxy_ln(X)に従って「予測された」ものとの差とに基づいて、1つの観察から別の観察へとXがどれだけ変化したかを決定する。換言すれば、モデルが、「現実」から逸れれば逸れる程、システムは、評価されるXがさらに離れていると仮定し、より多くXが変化する。ゲイン行列は、各偏差が、どれだけの重みを与えられるかを決定する。ゲインが0、またはモデルが、観測に完全に一致すれば、システムは、Xの最新の評価値が最良であると仮定し続ける。
【0173】
エラー共分散行列更新は、カルマンフィルタのゲインを決定する2つのモデリング構成fおよびQを含む点で直観性が比較的少ない(カルマンフィルタは、心拍出量の変化に対するCCO評価の応答性を決定する)。
【0174】
スケーラの減衰メモリパラメータfは、f=exp(1/N_fade)として規定され、N_fadeは、PRBSランの数を表す正の整数である。N_fadeは、実験によって予め決定され、システム中に予め設定され得るが、局所評価器のブロックサイズおよび評価された信号対ノイズ比に基づいて調整可能であることが好ましく、これは以下に、より詳細に説明される。N_fadeの項を含むことにより、再帰的評価プロセスが、過去のデータを指数関数的に「忘れる」ことが強制される、すなわち、計算に影響を与える所与の観測の貢献が、どのくらい速く低減されるかを決定する。
【0175】
ランダムウォーク共分散行列Qは、実の3×3対角行列であり、この対角成分は、ランダムウォークベクトルX_rwの成分の分散を表す。そのようなランダム変数の分散は、公知の技術を用いて容易に計算される。システムは、以下に説明されるように、ランダムウォークベクトルそのものを生成する。
【0176】
カルマンゲイン式が示すように、高ノイズ(大きなR_Hxy)に関しては、ゲインLは、SIGMAが増加するに従って増加する。N_fadeが減少する、またはQの対角成分が増加するにつれて、カルマンは、再び増加し、システムは、観測された伝達関数Hxyにおける変化により反応するようになる。
【0177】
局所評価器とは異なり、トレンド評価器は、拡張されたカルマンフィルタを用いて実装されると、予め処理する信号平均を必要とせず、むしろ、カルマンフィルタは、ノイズのある「生」のHxy測定値を直接入力する。ノイズが高ければ、カルマンゲインは、局所的に測定された観測共分散行列R_Hxyの増加分だけ減少する。さらに、信号対ノイズ比(SNR)が低い時に、N_fadeを増加させることにより、トレンド評価器の指数メモリが増加する、すなわち、ノイズが低下すればする程、トレンドを決定する際に、過去の値の影響が、より大きくなりうる。従って、ノイズが増加するにつれて、ゲインが低下し、指数積分(exponential integration)が増加する。
【0178】
R_HxyおよびN_fadeは一緒に、低SNRの場合には、正確ではあるが低速応答のCCOトレンド評価を提供し、より高いSNRの場合には、より速いCCOの評価を提供する適応性カルマンフィルタを生成する。従って、N_fadeを変化させることによって、速度と正確さとのトレードオフを調整し得る。しかし、局所評価器は、局所平均データのみを考慮するように強制され得、これは、正確さを犠牲にして、許容可能な応答性を保証する。
【0179】
トレンド評価器は、周期的にHxyを入力し、心拍出量が実質的にLTISとして記載されるという仮定に基づいて処理する。新しい伝達関数測定は、時間データのPRBSラン毎に1度だけ利用可能である。従って、本発明によるデュアル(dual)評価方法は、従来の時間領域カルマンフィルタと比較して、非常に少なくサンプリングされる(highly undersampled)。
【0180】
少なくサンプリングされるために、高いSNRを有する患者の伝達関数Hxyの測定値間の心拍出量が大きく変化すると、トレンド評価器のモデルが、観測されたデータから完全にそれることもあり得る。低いSNRでは、フィルタのゲインは、より低く、積分時間は、より長く、そして、フィルタはデータをゆっくりとトラックする傾向がある。本発明の1つの利点は、トレンド評価器の発散が、その結果を局所評価器の結果と比較することによって検出され得ることである。一方、カルマントレンド評価器は、R_Hxy(ω)の値を生成することにより、局所評価器を「助ける」(局所評価器は、この値を用いて、コスト関数の重みを決定する(式13))。
【0181】
上記の3パラメータ局所評価器は、本来高いSNRのデータをトラックする。しかし、低いSNRでは、局所評価器が、正確にτを評価するためには、平均データにノイズがまだ多く存在しすぎるかもしれないので、τが、カルマントレンド評価器によって制御される2パラメータモデルを使用することが好ましい。Hxy_ln(x)モデルは、dcおよびτに対する評価誤差が、非常に相関しているようなモデルである。τが、過小評価されると、dcは、過大評価され、逆もまた同様である。τを、ノイズのあるデータに対しては自動的に積分時間を拡張するトレンド評価器によって制御させることにより、dc(および従ってCCO)を評価する局所評価器の能力が向上する。
【0182】
正確にCCOを評価するための、どちらか一方または両方の評価器の能力が、数個のノイズ源または特性のいずれによっても大幅に影響を受け得ることが、経験から示される。これらは、肺動脈の温度ノイズに一般的に関連する、非定常の、高度に相関されたノイズ; 呼吸器温度ノイズ; 薬剤ボーラスによって引き起こされるノイズ; 外科的処置によって引き起こされるノイズ; 不良の接続によって引き起こされる電子ノイズ; 最新の外科用機器からの電磁妨害(EMI); 患者の咳; および自発的(人口呼吸器によってではなく)かつ不規則に呼吸している患者を含む。
【0183】
従って、本発明は、2つの異なるタイプのノイズ拒絶:1)信号の調節; および2)PRBSラン校正を提供する。本発明による信号の調節プロシージャにより、低周波ノイズおよびサンプルの域外値の影響が最小限に抑えられる。低周波ノイズを取り除くためには、ランレングス移動平均フィルタが、好適には使用される。域外値を取り除くために、本発明は、統計的に有効な温度信号とはなり得ない測定を検出し、取り除くノイズエディタを備える。
【0184】
PRBSラン編集(run editing)において、プロセッサは、現在のPRSBブロックの温度データからは有用な情報が得られないことを決定する。次に、プロセッサは、このデータを「遮断」および廃棄し、局所およびトレンド評価値を壊さないないようにする。例えば、ケーブル接続が良好でない場合、これは、通常、Cxyデータにおける三角特徴(triangular feature)として現れる。この状態が検出されると、関連のHxyデータは処理されない。本発明によるラン編集のさらなる特徴として、状態ベクトルXの要素のいずれかが、ガウス形ノイズで予想されるものから突然大幅にそれる場合、プロセッサは、カルマントレンド評価器が状態ベクトルXを更新するのを防止する「ガウス編集(Gaussian edit)」条件を示す。
【0185】
(低周波数信号調節)
図6は、ベンチレータ上の典型的な患者に対する温度ノイズ電力スペクトルを示す。このノイズの2つの主な特徴は、1)低周波数におけるノイズ電力の大幅な増加、ならびに2)約f=0.15 Hzおよび約f=0.3 Hzにおけるベンチレータノイズの最初の2つの高調波である。
【0186】
約f=0.05 Hz未満の強力なノイズは、特に問題である。なぜなら、心拍出量評価値は、定数に分割されたゼロ周波数ゲインの評価値に基づいているからである。高調波による干渉を除去または少なくとも減少させるために、本発明は、好ましくは、米国特許第5,146,414号(McKown)に記載されているように、PRBS高調波がベンチレータの基本周波数(およびその高調波)のいずれかの側に入るようにPRBSパルス期間Tcを調整する。この手法は公知であるので、以下にはこれ以上説明しない。
【0187】
本発明による低周波数信号調節方法は、ノイズトレンドを除去するためにPRBS信号の周期性を利用する。心拍出量が実質的に一定であるとすると、温度データにおけるPRBS信号成分は、PRBSサイクル中ならばいつ合計され始めるかに関係なく、PRBSシーケンスの長さに等しい任意の時間間隔にわたって定数に合計される。従って、本発明は、トレンド除去フィルタを有し、トレンド除去フィルタは、好ましくはPRBSランの同一の長さを有する移動平均フィルタである。この長さを決定する要因については上述した。
【0188】
図7は、サーミスタからの温度データから低周波数ノイズを除去するために用いられるトレンドを除去する移動平均フィルタの好ましい構造を示すブロック図である。図7における用語は、以下の通りである。
【0189】
SPR = PRBSラン当たりのサンプルの数。
【0190】
−1 = 従来のバックワードタイムシフトオペレータであり、z−1[y_maf_in(n)] = [y_maf_in(n−1)](これは、単に、測定された血液温度の最も最近の値である)となる。
【0191】
y_maf_in = y_maf_in(t)は、サーミスタによって測定された肺動脈における「生の(raw)」温度データである。これは、移動平均フィルタへの入力データを示す。
【0192】
y_ma = y_ma(t)は、移動平均フィルタからの正規化された出力信号である。正規化は、1/SNRによる乗算である。
【0193】
y_maf_out = y_maf_out(t)は、ノイズ「変動」が除去されたゼロ中間温度データ、即ち、図7に示す移動平均フィルタからの出力である。
【0194】
図示するように、温度信号の現在および(SPR−1)の最も最近の値は、数学的に平均化される。(SPR値の合計は平均化される)。次に、SPR平均は、SPRによる除算((1/SPR)による乗算)によって正規化される。この正規化された平均y_maは、次に、SPR/2サンプル前に得られた温度値から減算され、結果はy_maf_outとなる。
【0195】
移動平均フィルタの利点を理解するために、図7に示すタイプの移動平均フィルタが、ゼロ周波数を中心とする式sinc(x)= sin(x)/xの型のフーリエ変換を有することに留意されたい。従って、好ましいフィルタは、周知の「ボックスカー」フィルタである。このボックスカーフィルタについては、Oppenheim and Schafer’s book Digital Signal Processing, Prentice Hall, 1975などのディジタル信号処理に関する多くの標準的なテキストに記載されている。フィルタの幅はSPRサンプルであるので、フィルタは、Fs/SPR Hzだけ間隔をおいたゼロを有する。ここで、Fsは、サンプル周波数である。Fs/SPR Hzはまた、PRBS信号の第1高調波の周波数であるので、フィルタは、PRBS信号の高調波のすべてにおいてゼロを有することに留意されたい。換言すると、PRBS信号の高調波(入力温度信号y_maf_inにおける唯一のac信号成分である、または少なくともac信号成分であるべき)は、フィルタ除去される。従って、ac成分は、y_maには残らず、y_maに残っているノイズは、フィルタのsinc(x)スペクトルによってフィルタされた入力温度ノイズである。
【0196】
SPR/2サンプルにより遅延した入力信号、即ち、z−(SPR/2)[y_maf_in(n)]は、3つの主要な重畳成分、即ち、PRBS ac信号(相互相関および伝達関数測定値Hxyを計算するために用いられる)、低周波数入力温度ノイズ、およびy_maf_inのすべての値に共通のdc成分を含む。しかし、y_maにおいて、PRBS ac信号はフィルタ除去され、低周波数ノイズおよびdc成分に対応する定数のみを残す。従って、y_maf_in(−SPR/2)からy_maを減算すると、PRBS ac信号が歪んでいない出力信号y_maf_outが残り、この信号はゼロ中間を有するが、変動を有さない。図8(a)は、本発明による移動平均フィルタを用いてフィルタする前の生の温度データy_maf_inの11個のPRBSランのプロットであり、図8(b)は、y_maf_out、即ち、生の温度データをフィルタした結果を示す。図示するように、y_maf_inの一般的な立ち上がりの傾向が評価され、y_maf_outはゼロ中間と「acカップリング」される。
【0197】
移動平均フィルタを設けることは周知であり、本発明によると、任意の公知の実施方法が用いられ得る。例えば、SPRメモリ位置またはシフトレジスタSPR要素長は、y_maf_inのSPRの前回の値を格納するのに用いられ得、次に、これらの値は、各サンプル周期毎に、(実際には、または効果的にはアドレスインデクシングによって)合計およびシフトされる。1つの代替として、公知のオーバーラップ保存高速フーリエ変換(FFT)畳み込み法も用いられ得る。
【0198】
y_maf_inのSPR値のみが、移動平均フィルタによって必要とされるが、以下にも説明するように、(nRUNS_y)SPR値は、例えば、電磁妨害の影響を減少させるために、メモリバッファy_memに格納され、信号編集手法において用いられるのが好ましい。nRUNS_yは、いくつのランのデータが格納されるかを示すパラメータである。nRUNS_yは、スプリアス値を識別するのに十分な温度値の標準偏差の概算を可能にするのに十分大きくなければならない。試験の結果、nRUNS_yは、少なくとも5であり、計算の効率を考慮すると7であることが示されている。
【0199】
(EMI信号調節)
本発明のような血流モニタは、しばしば、手術室における特定の電気焼灼機器などの電磁妨害(EMI)の強力なソース付近で用いられる。このEMIは、温度データを汚染し、CCO評価値の質を減少させ得る。
【0200】
本発明によると、EMI、または他の任意の強力な実質的に瞬間的なノイズソースによって壊されたデータは、2つのステップで除去される。まず、y_memが(nRUNS_y)×SPRアレイ、またはnRUNS_yベクトルの連鎖として見なされ得るが、それぞれは、要素1、...、SPRを有することについて考察してみよう。
【0201】
第1のステップにおいて、メモリバッファy_memにおけるすべての(nRUNS_y)SPR値の標準偏差σ_yは、任意の公知の様式で計算される。次に、第1の編集しきい値Tedit1=nedit1・σ_yが設定される。ここで、nedit1は、実験的または理論的に予め決定されたパラメータである。次に、Tedit1よりも絶対値が大きいy_memにおけるすべての値は、予め決定された域外デフォルト値(好ましくは、ゼロ)に設定される。なぜなら、この値は、壊れており、「交換」値を決定するのには不十分な情報を含むと想定されるからである。残りの値は、動作ベクトルy_editを形成し、このベクトルは、さらにSPRラン値のnRUNS_yセットに分割され得る。さらに、域外値と識別されるすべての値について、編集されたデータ識別ベクトルy_keepにおける対応の要素はゼロに設定され、y_keepの他の要素は1に設定される。
【0202】
「行」インデックスrがランの数、r = 1, ..., nRUNS_yであり、「列」インデックスsが、所定のランにおけるサンプルの数、s = 1, ..., SPRであるとする。y_mem = y_mem(r,s)およびy_edit = y_edit(r,s)であることに留意し、y_edit(r,s)の要素の少なくとも1つが強制的にゼロにされ得たことを喚起されたい。各列について、k(s)を、y_editのs番目の列におけるゼロでない要素の数、即ち、Tedit1未満(即ち、y_memのゼロ中間のTedit1内に入る)の温度値の数であるとする。
【0203】
本発明によると、列sにおけるすべてのゼロでない値の数学的平均が各要素y_mem(r,s)から減算される。残りの値は、アレイy_noiseを形成し、その要素は、各ランの関連SNRを決定するために用いられる残値である。アレイy_noiseは、さらに、統計的域外値が、PRBS参照信号と相互相関し、CxxおよびCxyを形成しないように、これらの域外値を識別および除去するために用いられる。従って、y−noiseは、以下のように計算される。
【0204】
【数34】
Figure 0003701285
y_noiseが計算された後、y_noiseにおけるnRUNS_yセットのデータのそれぞれの分散(σ)は公知の様式で計算される。ノイズ分散がノイズ電力と等しいことを喚起されたい。次に、ノイズ電力値は、それぞれを最大値で除算することによって正規化される。次に、これらの正規化されたノイズ電力値は、デシベルに変換され、信号SNR_run_dBを形成する。
【0205】
次に、第2の編集しきい値Tedit2は、nedit2・(σ_hi_SNR)として形成される。ここで、nedit2は、実験的または理論的に予め決定されたパラメータであり、σ_hi_SNRは、実験的または理論的に予め決定されたカットオフ値よりも大きい正規化された電力値の平均である。次に、第2の編集しきい値よりも大きいy_memに格納された2つの最も最近のPRBSランからの値は、ゼロに設定され、y_memに対応するy_edit_σとして出力されるが、統計的域外値は編集除去されている。従って、y_edit_σは、すべてのトレンドおよび統計的域外値が除去されたゼロ中間温度データである。このような関係においては、統計的域外値は、EMIなどの妨害のために発生が見込まれる値である。
【0206】
(SNR評価)
本発明によるウェイトW(ω)を調整するための局所評価器およびそのゲイン調整を決定するためのトレンド(好ましくは、カルマン)評価器は両方とも、温度データの信号対ノイズ比(SNR)の評価値を用いる。
【0207】
図9に示すように、本発明は、好ましくは、2つのPRBSサイクル長離散フーリエ変換(DFT’s)を実施することによってSNRを評価する。処理システムは、各PRBS高調波においては10要素の信号およびノイズ(signal−plus−noise)スペクトルGyy_Sを計算し、各PRBS半高調波においては11要素のノイズのみのスペクトルGyy_Nを計算する。
【0208】
【数35】
Figure 0003701285
ここで、YsおよびYnは、2つの最も最近のPRBSランの温度データのDFTであり、これは、ベクトルy_memに格納される(上記を参照のこと)。
【0209】
yを最近の温度データの2SPR長ベクトルとする。Ys(ω)=y・Wsであり、ここで、・は、ドット積、Wsの要素は、サンプルインデックスm=0, ..., 2・(SPR−1)に対してWs=exp(−j・m・ω/Fs)=e(−j・m・ω/Fs)、n=1, ..., 10に対してω=n・2π・Fs/SPRである。同様に、Yn(ω’)=y・Wnであり、Wnの要素は、Wn=exp(−j・m・ω’/Fs)、n=1, ..., 11に対してω’=(n−1/2)・2π・Fs/SPRである。
【0210】
DFTのボックスカーウィンドウサイズは2・SPRであるので、PRBS高調波の半周波数の倍数でゼロを有するフィルタを用いて温度データのスペクトルを評価する。これの利点は、Ysの高調波間にPRBS信号「漏れ」がないこと、およびYnにPRBS信号電力がないことである。従って、 Gyy_S の10要素は、最初の10個のPRBS高調波を中心とするDFTビンにおける信号およびノイズ電力を示し、 Gyy_N の11要素は、最初の11個のPRBS半高調波を中心とするDFTビンにおける純粋なノイズ電力を示す。
【0211】
Gyy_SおよびGyy_Nによって、本発明は、2つのPRBSランの温度データに対する一致したフィルタ帯域幅SNRを評価することが可能となる。これらは、考察されたそれぞれの伝達関数に関連する。
【0212】
【数35A】
Figure 0003701285
ここで、
【0213】
【数35B】
Figure 0003701285
は、それぞれ、Gyy_SおよびGyy_Nの要素の合計である。ベンチレータ周波数に対する感応を避けるために、合計は、好ましくは、Gyy_Sについては最初の3つのPRBS高調波要素およびGyy_Nについては最初の4つのPRBS高調波要素に限定される。
【0214】
SNRのこの評価値は、電力温度伝達関数Hxyの最も最近の測定値を提供する温度データの同一の2つのPRBSランから得られるものであるため、この評価値は、局所評価器重み付けおよびカルマンゲイン制御に対して用いるには良好な信号強度パラメータである。
【0215】
(ボーラスノイズラン編集)
治療にあたっている臨床医は、しばしば、薬物を静脈送達するために肺動脈の注入口を用いる。これらの注入口は、通常、室温で、1〜10cmの流体ボーラスの形態である。カテーテル管腔を洗い流すために塩水溶液を注入することが一般的である。いずれの場合においても、サーミスタは、測定された血液温度が大きく負なる瞬間にボーラスを検出する(室温は、正常な血液温度よりもはるかに低い)。このようなボーラスで誘導された信号を単にフィルタ除去することは困難である。なぜなら、これらの信号は、しばしば、CCO温度信号よりも10〜30dB大きいノイズ成分を有し、伝達関数形状(Transfer function shape)は実質的に同一であるからである。このようなデータが、評価器に到達することが可能であるならば、結果として得られるCCO評価値は低くなり、これは誤りである。
【0216】
本発明によると、システムのプロセッサは、y_memにおいて測定された温度データを調べる。最大温度値と、最小温度値との差(y_memに格納されるすべてのランにわたる)が、実験的に予め決定された範囲しきい値Trangeを越える場合、最も最近のランに対するデータはすべて除去されるか、または、ランはさらなる計算に用いられないように、無効であるとして標識付けされる。
【0217】
(伝達関数測定)
上述のように、本発明は、好ましくは、PRBS相関技術を用いて、周波数領域電力対温度伝達関数Hxyを測定する。この伝達関数Hxyの測定値は、理想的なPRBS波形を相互相関させ、その結果得られたCxxおよびCxyの相関データをフーリエ変換することによって得られる。
【0218】
図10を参照する。x_memを、2・SPRの最も最近に検知された入力電力値のベクトルとし、x_cor_0を、任意の既知の態様で生成され得るゼロ平均SPR長PRBS信号とする。まず、x_cor_0を、ゼロ平均の域外値で編集された温度データy_edit、即ちPRBS信号の最後の2つのランと相関される。その結果、正規化されていない相互相関値Cxy_unが得られる。
【0219】
PRBS相関データを適切に正規化するために、その後、x_cor_0がベクトルy_keepと相関される。このベクトルy_keepは、上述のように、域外値ではないと考えられる温度データ値に対応する成分にのみ「1」を含む。この相関の結果、SPR長ベクトルN_prodが得られ、このSPR長ベクトルN_prodは、相関ベクトルCxyの各ラグ(lag)に寄与するラグ積の数を含む。Cxy_unを成分ごとに割ることにより、ラグ0から(SPR−1)についての、正規化された温度相互相関ベクトルCxyが生成される。なお、域外値編集がなければ(y_keepの成分がすべて1に等しければ)、N_prodの成分はすべてSPRに等しい。
【0220】
同様に、x_cor_0は、編集されていない電力データx_memと相関され、SPRで割ることによって正規化される。その結果、ラグ0から(SPR−1)についてはPRBS相互相関ベクトルCxxが得られる。
【0221】
その後、値CxyおよびCxxは、PRBS高調波についてのフーリエ変換を用いて周波数領域に変換される。その結果、それぞれSxyおよびSxxが得られ、これらを、成分ごとに割ると、電力対温度の測定された伝達関数Hxyが得られる。
【0222】
(伝達関数ノイズ評価)
上述のように、好ましいトレンド評価器(カルマンフィルタ)は、R_Hxyを用いる。即ち、10成分の複素数ベクトルHxyにノイズ共分散を含む10×10の複素行列を用いる。肺動脈に熱ノイズが多いほど、R_Hxyの成分は大きくなる。R_Hxyの100個の成分をすべて計算することは可能であるが、本発明の発明者らは、R_Hxyの対角の成分(自己相関成分)だけを計算することにより、よりよい性能が得られることを発見した。本明細書では、カルマンフィルタのホワイトノイズの仮定と一致することだけを示しているのではなく、計算の複雑さも低減している。
【0223】
共分散行列R_Hxyは、統計学上の分散についての周知の式を用いて計算され得る。したがって、測定された伝達関数値Hxyの所定数nHxyが、メモリバッファHxy_memに格納される。この数nHxyは、実験により選択され得る。本発明のプロトタイプでは、nHxyの15個の値をHxy_memに蓄積した。その後、R_Hxyの10個の対角の成分のうちのk番目の成分は、以下のように計算される。
【0224】
【数36】
Figure 0003701285
PRBS高周波の場合、k=1, ... ,10である。
【0225】
その後、R_Hxyの値はさらに、既知の方法を用いて平滑化され得る。
【0226】
(応答性制御)
カルマントレンド評価器の応答性を、減衰メモリスカラーfおよびランダムウォーク共分散行列Qによって調整できることを上で指摘した。特に、共分散行列SIGMA(n)は、SIGMA(外挿)=f*SIGMA+Qという関係に従って外挿されるSIGMA(n−1)の関数である(上を参照)。
【0227】
本発明の好ましい実施形態では、fは指数関数的に減衰する。即ち、f=e(−N_fade)であり、ここで、N_fadeは、局所評価器のブロックサイズ(局所評価器が、各評価を計算するために含むPRBSランの数)よりも大きくなるように、あるいはブロックの平均(おそらく平滑化された)SNRとなるように選択される。従って、減衰メモリ定数はより大きくなり、以前のSIGMA値の影響は、ブロックが大きいほど、あるいはブロックのノイズが大きいほど、低下する。
【0228】
ランダムウォーク共分散行列Qは、3×3の対角行列であり、そのi番目の成分はQ(i,i)=(X_frac*X(i))であり、ここで、X_fracは、i番目の状態ベクトル成分X(i)の数分の1の項の(in termsof a fraction of)ランダムウォークの標準偏差を決定する。トレンド評価器が十分な連続ランデータを受け取って再帰的評価値を生成するまで、X_fracは、好ましくは、平均SNRのシグモイド関数に比例するように設定される。例えば、X_facは、
X_frac∝(1+1/SNR_dB)−1
となるように設定される。ここで、SNR_dBは、デシベルで表された平均SNRである。
【0229】
Hxyの値を、トレンド評価器が反復を開始するのに十分な数(通常は、3つ)だけ測定すると、X_fracは、好ましくは、実験的に決定された小さい定数に設定される(定常状態での大きすぎる偏位(excursion)を防ぐため)。本発明の1つの試験では、X_fracを0.02に設定した。
【0230】
(非ガウスノイズラン編集)
観測ノイズがガウス振幅分布を有し、観測値間で相関していない場合、即ち、観測ノイズがいわゆるホワイトガウスノイズ(WGN)である場合、カルマンフィルタが、最適な最小二乗評価器であることが知られている。観測ノイズがWGNであれば、カルマンフィルタの状態ベクトル評価におけるエラーもWGNであることも知られている。
【0231】
肺動脈の温度は、1つのPRBSランからその次のPRBSランに相関していることが多く、その振幅分布はガウス分布でないことが多い。従って、観測された伝達関数Hxy(温度信号y(t)と線形の関係にある)のシーケンスも相関し、ガウス分布ではない。これらの特性は、カルマンフィルタの根底にある統計的仮定に反するものであり、かなりの評価ノイズまたはバイアスを引き起こす可能性がある。
【0232】
本発明によれば、システムは、状態ベクトルXおよびパラメータ共分散行列の成分の統計値を調べ、これらの統計値がガウス振幅分布を満たしているかどうかを判断する。ガウス振幅分布を満たしていれば、カルマンフィルタトレンド評価器は通常通り続行する。満たしていなければ、トレンド評価器は、その次の評価サイクルまで状態ベクトルおよび共分散行列を更新せず、対応する観測された伝達関数は単に無視され、CCO評価値は更新されない。
【0233】
状態ベクトルX=[dc,μ,τ]の3つのパラメータのうち、本発明がμ、τについて調べた統計値はそのパラメータそのものである。しかし、dcパラメータについては、システムはその逆数(inverse)を評価する。なぜなら、対象としている量であるCCOが、dcと逆比例の関係にある(inversely related)からである。
【0234】
本発明によれば、統計ベクトルX_stat=[1/dc,μ,τ]のnMEM_Xの以前の値は、メモリに格納される。本発明の1つのプロトタイプは、nMEM_Xを15に設定した。これにより、不必要な遅延を加えることなく、有意義な(meaningful)統計値が得られた。しかし、nMEM_Xは、有意義な統計値を得るために十分に大きい値であれば、どんな値であってもよい。
【0235】
その後、nMEM_X個のベクトルの算術平均として、平均ベクトルX_meanが計算される。その後、1/dc、μ、およびτのnMEM_X個の値の標準偏差が、標準的な式を用いて個々に計算されるか、あるいは評価され、標準偏差ベクトルX_σが生成される。本発明のプロトタイプでは、X_σ=std_frac・X_meanに設定することにより計算時間を低減した。ここで、std_fracは、実験的に[0.12,0.16,0.16]であると決定した所定の定数のベクトルである。その後、好ましくは、X_σに、所定の偏差定数であって調節可能な偏差定数であるk_σを掛ける。この偏差定数k_σは、統計値が、編集前にどれくらいばらつき得るかを決定するものである。
【0236】
新しい評価されたXの各々について、システムはその後、現在の統計値[1/dc,μ,τ]およびk_σ・std_frac・X_meanの間の差の絶対値を計算する。結果として得られた比較の成分のうち、実験的にあるいは理論的に決定されたガウス編集閾値TG−editよりも大きい成分があれば、現在の評価が編集され、状態ベクトルは更新されない。例えばk_σ=2の場合、その統計的パラメータのうちで域外値であるパラメータがあれば、即ち、平均値から「2シグマ」を上回る分だけ離れているパラメータがあれば、カルマンフィルタは状態ベクトルを更新しない。例えばk_σ=2であれば、平均から「2シグマ」を上回る分だけ離れているパラメータ値は、域外値として識別される。
【0237】
(トレンド発散検出)
上述のように、連続する伝達関数測定値間で、高SNRの患者の心拍出量に大きな変化が起こると、好適なトレンド評価器として用いられる、アンダーサンプリングされた(undersampled)カルマンフィルタは発散し得る。しかし、局所評価器は、高SNRでも安定している。本発明によれば、2つの評価器から得られる評価が比較され、カルマンフィルタの評価が、起こりうる発散を示しているかどうかが判断される。
【0238】
各カルマン更新の後、システムは、相対トレンドエラーベクトルCxy_trend_errorを、(1)平均化された相互相関ベクトルCxy_avgとモデル化されたCxy_model(共に上述のように定義される)との間の二乗平均(RMS)差の、(2)信号Cxy_avg自体のRMSに対する比のパーセントで表されるスカラーエラーとして計算する。相対局所エラーベクトルCxy_local_errorも、Cxy_modelの計算において、最も最近の局所評価値から決定されたパラメータベクトルXの値を用いて同様に計算される。
【0239】
Hxy_modelを、遅延正規モデルのXの現在のパラメータを用いて得られる伝達関数値とする。この場合も、システムは、相対トレンドエラーベクトルHxy_error_trendを、(1)平均測定伝達関数値Hxy_avgと、モデル化された伝達関数値Hxy_avgとの間の重み付けされた差の合計の平方根と、(2)Hxy_avg自体の大きさとの比として計算する。相対局所エラーベクトルHxy_local_errorも、Hxy_modelの計算において、最も最近の局所評価値から決定されたパラメータベクトルXの値を用いて同様に計算される。
【0240】
その後、比(Cxy_trend_error)/(Cxy_local_error)および比(Hxy_trend_error)/(Hxy_local_error)が計算され、いずれかの比が所定の発散閾値Tdivを上回っていれば、システムは、トレンド評価の信頼性がないと仮定し、現在のトレンド評価を拒否する。システムはまた、システムが最初に起動されるときと同様に、トレンド評価器のパラメータと、Xなどのその他のベクトルとが、局所評価器からの対応する値と等しい値に設定されるように、トレンド評価器をリセットする。Tdivは、実験的または理論的に決定される任意の所定の関数であってもよく、あるいは、定数であってもよいが、好ましくは、測定されたSNRの関数である。
【0241】
(トレンド収束検出)
ユーザにとっては、カルマンフィルタがいつ発散したかだけではなく、表示されたCCOトレンド値がいつ信頼できる定常状態のCCO値を表しているかを知ることは有用である。例えば、システムを起動した場合、適切に正確なCCO値が利用可能となるまでに、数PRBSラン分の時間がかかり得る。本発明によれば、その時間までに、カルマン状態ベクトルXは、局所評価器からの状態ベクトルXに等しい値に設定される。幾つかの別の収束試験のうちのいずれかあるいはすべてを用いてもよい。
【0242】
1つの例として、システムが、等式8の現在のdc評価を用いて現在のCCO評価CCO(n)を計算した後、現在の値は、以前の値のうちで最も最近の値CCO(n−1)と比較され得る。変化(好ましくは、平均に対するパーセントで表される)が、実験的あるいは理論的に決定される所定の閾値TδCCOよりも小さければ、システムは、収束であると仮定する。即ち、
【0243】
【数37】
Figure 0003701285
であれば、評価は、定常状態の評価を表していると仮定される。
【0244】
別の例として、(定常状態の評価に達するのにかかる時間をトレンド評価器に与えるために)実験的に決定される所定数の有効なCCOトレンド評価が計算されると、エラーCxy_trend_errorおよびHxy_trend_errorは減少する。従って、システムは、これらの値のうちのいずれか(あるいはその両方)が、実験によって決定され得るエラー収束値TεCCO未満である場合は常に、収束を示す。
【0245】
(非PRBS入力電力信号)
本発明による好適な入力熱信号は、疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)として生成される。なぜなら、この疑似ランダムバイナリシーケンスは、効率的な相関を可能にするとともに、その電力が、対象としているスペクトル領域をカバーする高調波において別々に広がるからである。しかし、本発明に従って、他の入力信号パターンを用いてもよい。例えば、与えられた入力熱信号が所定数の正弦波成分の形態であれば(例えば、Newbower参照)、様々なフィルタおよび変換(例えばFFTなど)回路は、計算する必要のない既知の入力周波数に合わせられる。チャネルの伝達関数Hxyの大まかな測定値を与えるために、フーリエ変換の代わりに、アナログフィルタのバンクを用いてもよい。
【0246】
さらに他の例として、Dixonらの拡散スペクトル(spread spectrum)システムで用いられる分散フィルタの出力は、チャネルのインパルス応答である。このインパルス応答のフーリエ変換によっても、伝達関数測定値が得られる。この場合、本発明の相関ステップについては、残りの等式が適切に調整されていれば省略してもよい。そのような変更は、理論的に決定され得る。
【0247】
(非熱インジケータ)
さらに、本発明では、熱は、上流位置で血流に注入されるインジケータとして用いられる。温度は下流信号であり、この下流信号は、検知されて、CCO評価の根拠となる。熱インジケータは患者の体内で蓄積されず、比較的安全で、十分に理解されており、制御および検知が簡単であるため、このことは有利である。しかし、本発明に従って、他の従来のインジケータを用いてもよい。そのような場合でも、状態ベクトルにゲインパラメータを与えるために、好ましくは遅延正規モデルを用いて、チャネルの伝達関数をモデル化することができる。そうすれば、上述の技術をできるだけわずかな変更で適用することができ、心拍出量の局所評価およびトレンド評価において上述の利点と同じ利点が得られるようにすることができる。必要とされる変更は、既知の実験および理論上の計算によって容易に決定される。
【0248】
【発明の効果】
本発明によって、患者の心拍出量の一般的トレンドに関するだけではなく、より瞬間的あるいは現在の流量状態に関しての正確なデータを提供する装置が提供された。また、本発明によって、出力評価値を生成するために用いられる任意の再帰的技術における潜在的な不安定性に対して何らかの補償を行う、あるいは少なくとも識別する方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、患者の心拍出量の測定に使用される、本発明の好適な実施形態の構造的および機能的な主要構成要素を示すブロック図である。
【図2】図2(a)、(b)および(c)はそれぞれ、本発明の1つのテストでの加熱素子電力、サーミスタ温度、および相互相関(インジケータ希釈)曲線の信号プロフィールを示す。
【図3】図3(a)〜(d)は、本発明による相関データの周波数領域表現のボード線図を示す。
【図4】図4(a)および(b)は、高い信号対ノイズ(SNR)比を有する、伝達関数データのボード線図を示す。
【図5】図5(a)および(b)は、測定された伝達関数データを、本発明の好適な実施形態で使用される伝達関数のモデルと比較したボード線図を示す。
【図6】図6は、温度ノイズスペクトルを示す。
【図7】図7は、本発明の好適な実施形態で使用される、トレンド除去フィルタのブロック図である。
【図8】図8は、トレンド除去前後の温度データを示す。
【図9】図9は、SNRが本発明で使用されるトレンド評価器でどのように計算されるかを示すブロック図である。
【図10】図10は、本発明において、チャネル伝達関数を測定するために入力電力と感知された温度データとを使用する方法を示すブロック図である。

Claims (9)

  1. 患者の身体の流動部位を通して血液拍出量を評価するシステムであって、
    A)インジケータを、入力信号プロフィールを有するインジケータ入力信号として、該流動部位の上流位置に注入する注入手段と、
    B)該流動部位の下流位置における該インジケータの存在をインジケータ出力信号として感知するインジケータ感知手段と、
    C)局所血液拍出量値を、該入力信号プロフィールおよび該インジケータ出力信号の所定の関数として、局所評価時間にわたって評価するための局所評価器と、トレンド血液拍出量値をトレンド評価時間にわたって評価するためのトレンド評価器とを有し、該トレンド評価時間が、該局所評価時間よりも長く、それによって、血液拍出量における比較的速いおよび遅い変化の両方に対応する評価された血液拍出量値を提供する評価手段と、
    を包含するシステム。
  2. 前記評価手段が、前記トレンド拍出量値を評価するための再帰的評価器を有する、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記再帰的評価器が、カルマンフィルタである、請求項2に記載のシステム。
  4. 各期間に対する前記入力信号と前記出力信号との間の周波数領域伝達関数を測定する伝達関数測定手段をさらに有し、該測定された周波数領域伝達関数が、局所およびトレンド評価器の両方に対する入力信号を形成する、請求項1に記載のシステム。
  5. 各期間に対する前記入力信号と前記出力信号との間の周波数領域伝達関数の値を測定する伝達関数測定手段が設けられ、該測定された周波数領域伝達関数が、局所およびトレンド拍出量評価の両方に対する入力信号を形成し、
    前記局所評価器が、最適局所状態パラメータを、該伝達関数モデルの所定の最適化関数および該測定された伝達関数値として決定し、前記局所血液拍出量値を、該最適局所状態パラメータの少なくとも1つの所定の出力関数として評価するために設けられ、
    前記トレンド評価器が、該測定された周波数領域伝達関数値をカルマンフィルタリングすることによって、最適トレンド状態パラメータを再帰的に評価し、該トレンド血液拍出量値を、該最適局所状態パラメータの少なくとも1つの該所定の出力関数として評価するカルマンフィルタである、請求項2に記載のシステム。
  6. 前記局所評価器が、前記トレンド評価器に接続され、前記最適局所状態パラメータが、前記カルマンフィルタに対する初期化状態パラメータを形成する、請求項5に記載のシステム。
  7. A)前記入力信号プロフィールが、疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)であり、
    B)前記伝達関数測定手段がさらに、
    1)前記入力信号の自己相関値Cxxを決定し、該自己相関値Cxxを前記周波数領域に変換し、
    2)前記入力信号と前記出力信号との間の相互相関値Cxyを決定し、該相互相関値Cxyを該周波数領域に変換し、
    3)前記測定された伝達関数値を、該周波数変換相互相関値および該周波数変換自己相関値との間の商の所定の関数として計算するために設けられている、請求項5に記載のシステム。
  8. 局所またはトレンド評価の前に、前記インジケータ出力信号からすべての低周波数ノイズトレンドを除去するプリフィルタリング手段をさらに有する、請求項1に記載のシステム。
  9. 患者の身体の流動部位を通して血液拍出量を評価するためのシステムであって、
    A)熱インジケータを、疑似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)入力信号プロフィールを有するインジケータ入力信号として、該流動部位の上流位置に注入するインジケータ注入手段と、
    B)該流動部位の下流位置における該インジケータの存在をインジケータ出力信号として感知するサーミスタ手段と、
    C)該インジケータ出力信号からすべての低周波数ノイズトレンドを除去するプリフィルタ手段と、
    D)1)該入力信号の自己相関値Cxxを計算し、該自己相関値Cxxを前記周波数領域に変換し、
    2)該入力信号と該出力信号との間の相互相関値Cxyを計算し、該相互相関値Cxyを該周波数領域に変換し、
    3)測定された伝達関数値を、該周波数変換相互相関値および該周波数変換自己相関値との間の商の所定の関数として計算する、伝達関数測定手段と、
    E)最適局所状態パラメータを、該伝達関数モデルの所定の最適化関数および該測定された伝達関数値として決定し、局所血液拍出量値を、該最適局所状態パラメータの少なくとも1つの所定の出力関数として評価する局所評価手段と、
    F)該測定された周波数領域伝達関数値をカルマンフィルタリングすることによって、最適トレンド状態パラメータを再帰的に評価し、トレンド血液拍出量値を、該最適局所状態パラメータの少なくとも1つの該所定の出力関数として評価するトレンド評価手段と、
    を有するシステム。
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