JP3700552B2 - ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス繊維強化樹脂複合材料を下型と上型との型締めにより成形してガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を得るためのガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品の製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からシートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)等の不飽和ポリエステル樹脂にガラス繊維を混入したガラス繊維強化樹脂複合材料によりガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を製造している。このシートモールドコンパウンドやバルクモールドコンパウンドはその強化繊維の補強効果により高い機械的特性を有している。しかしながら、成形時の流動によって強化繊維が特定の方向に配向することにより、強度に異方性が生じ、特にこの異方性により弱化する部位がガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品の高い応力が発生する部位と一致すると、ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品の破壊等の問題が発生する。
【0003】
従来、ガラス繊維強化樹脂複合材料を下型に設けた上方に開口した凹型部内にセットし、この下型と下方に突出した凸型部を有する上型とを型締めして凹型部と凸型部との間に形成されるキャビティ内にガラス繊維強化樹脂複合材料を充填してガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を製造する場合、型締め速度が従来にあっては、最初から最後まで一定の速度であった。ところが、このように型締め速度が最初から最後まで一定の速度だと、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れるまではガラス繊維強化樹脂複合材料の流速が遅く、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れた後に凹型部の内面と凸型部の外面との間を流れる速度が数倍速くなり、このように凹型部の内面と凸型部の外面との間を流れる速度が数倍速くなることでガラス繊維が特定の方向に配向してしまうという問題がある。したがって浴槽などの容器形状のガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を製造する場合、容器形状の側壁部分においてガラス繊維が特定方向に配向する現象が生じる恐れがある。
【0004】
また、従来にあっては、成形に使用するガラス繊維強化樹脂複合材料は粘度が同じものを使用しており、このように粘度が一定のものは型締めによりガラス繊維が流動により特定方向に配向されやすいという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、型締め時における流動によりガラス繊維が特定方向に配向するのを抑え、強度に異方性が生じないガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品の製造方法を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係るガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品の製造方法は、ガラス繊維強化樹脂複合材料1を下型2に設けた上方に開口した凹型部3内にセットし、この下型2と下方に突出した凸型部4を有する上型5とを型締めして凹型部3と凸型部4との間に形成されるキャビティ内にガラス繊維強化樹脂複合材料1を充填してガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を製造するに当たり、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れるまでの型締め速度よりも、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れた後に凹型部3の内面と凸型部4の外面との間を流れる際の型締め速度を遅くするものであって、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れたことを検出するための検出手段を設けることを特徴とするものである。このような方法を採用することで、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れた後に凹型部3の内面と凸型部4の外面との間を流れる際にガラス繊維強化樹脂複合材料の流動速度が速くなろうとするが、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れたことを検出手段で検出し、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れた後の段階における型締め速度を遅くすることでガラス繊維強化樹脂複合材料1の流動速度を遅くできてガラス繊維の特定方向への配向を抑えることができるものであり、しかも、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れるまでの型締め速度は遅くしないので、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れるまでの時間が必要以上にかからず、成形時間が必要以上に長くならないものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0009】
図1、図2には本発明の一実施形態が示してある。ガラス繊維強化樹脂複合材料1によりガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を成形するための成形型は下型2と上型5とで構成してある。下型2は上方に開口した凹型部3を有しており、上型5は下方に突出した凸型部4を有している。
【0010】
ガラス繊維強化樹脂複合材料1としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂にガラス繊維を混入したバルクモールドコンパウンド(BMC)やシートモールドコンパウンド(SMC)が用いられる。ここで、バルクモールドコンパウンドの配合の具体例を一例として挙げると、例えば、不飽和ポリエステル樹脂30重量部、水酸化アルミニウム60重量部、ガラス繊維(繊維長1.5mmのものと6mmのものの2種類を混用)10重量部、硬化剤と増粘剤を少量混合したものである。もちろん、本実施形態に使用するガラス繊維強化樹脂複合材料1としてはこれにのみ限定されるものではない。
【0011】
本実施形態においては、上記のガラス繊維強化樹脂複合材料1を下型2の凹型部3の底部にセットし、上型5を移動させて上下型5,2を型締めして凹型部3と凸型部4との間に形成されるキャビティ内にガラス繊維強化樹脂複合材料1を充填してガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を製造するに当たり、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れるまでの型締め速度よりも、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れた後に凹型部3の内面と凸型部4の外面との間を流れる際の型締め速度を遅くして成形するのである。
【0012】
すなわち、図1はガラス繊維強化樹脂複合材料1を下型2の凹型部3の底部にセットした状態を示している。図1に示す実施形態においてはガラス繊維強化樹脂複合材料1としてバルクモールドコンパウンド(BMC)を用いた例である。
そして図2(a)の型締めを開始したステップ1の段階から、図2(b)のようにガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れるステップ2の段階までは型締め速度を10〜15mm/secで行う。このステップ1からステップ2までの間は流路厚みが50〜200mmであって10〜15mm/secという比較的速い型締め速度で型締めしてもガラス繊維強化樹脂複合材料1は比較的遅い流速で凹型部3の底面部のほぼ全面に広がっていき、このため、成形時の流動によりガラス繊維がある特定方向に配向しにくいものである。
【0013】
図2(b)のステップ2の段階の後、型締めを継続するとガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の内面と凸型部4の外面との間を流れて図2(c)に示すステップ3に至る。この場合、ステップ2からステップ3までの間の型締め速度を上記ステップ1からステップ2に至る型締め速度と同じ速度、つまり10〜15mm/secで行うと、凹型部3の内面と凸型部4の外面との間は流路厚みは成形品の厚みとほぼ同じ8〜12mmであるため、ガラス繊維強化樹脂複合材料1の流速はステップ1からステップ2までの流速の約6〜10倍になり、成形時の流動によりガラス繊維はある特定方向への配向を強めるものである。そこで、ステップ2になった段階で型締め速度を落とし(例えば1〜5mm/secに落とし)、成形時の流動によるガラス繊維の配向を抑制するものである。
【0014】
上記ステップ2の段階は、例えば、凹型部3の底部の端部に圧力センサのようなセンサを設けてガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底部の端部まで流れたことを検出するようにするが、もちろん、ステップ2の段階を検出するためにはこれにのみ限定されず、他の種々の検出手段が採用できるのはもちろんである。
【0015】
なお、成形の際の成形型温度は110〜150℃である。
【0016】
次に、図3、図4に基づいて本発明の他の実施形態につき説明する。本実施形態においては、下型2の凹型部3内にセットするガラス繊維強化樹脂複合材料1として粘度の異なる複数種類のガラス繊維強化樹脂複合材料1を重ねたものを使用する点に特徴がある。
【0017】
すなわち、図3に示すように、成形型は下型2と上型5とで構成してあり、下型2は上方に開口した凹型部3を有しており、上型5は下方に突出した凸型部4を有している。
【0018】
粘度の異なる複数種類のガラス繊維強化樹脂複合材料1としては、例えば粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1aとして、不飽和ポリエステル樹脂30重量部、充填剤(炭酸カルシウム)45重量部、ガラス繊維(繊維長さ1インチ)24重量部、増粘剤0.2重量部、硬化剤少量を混合した粘度20万ポイズ程度のものを例示することができ、また、粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1bとして、不飽和ポリエステル樹脂30重量部、充填剤(炭酸カルシウム)45重量部、ガラス繊維(繊維長さ1インチ)24重量部、増粘剤0.4重量部、硬化剤少量を混合した粘度60万ポイズ程度のものを例示することができ、このような粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1aと粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1bとを重ねて下型2の凹型部3内の底部にセットするものである。
もちろん粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1a、粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1bとしては上記の例に飲み限定されないものであり、要は粘度の異なる複数種類のガラス繊維強化樹脂複合材料1を重ねて下型2の凹型部3内の底部にセットすればよい。なお、図3、図4に示す実施形態においては粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1aの上に粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1bを重ねているが、粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1bの上に粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1aを重ねてもよい。
【0019】
しかして、図3のように粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1aと粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1bとを重ねて下型2の凹型部3内の底部にセットした後、上型5を移動して上下型5、2の型締めをしてガラス繊維強化樹脂複合材料1を押し広げることで上下型5、2の凸型部4と凹型部3との間に形成されるキャビティ内にガラス繊維強化樹脂複合材料1を充填してガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を製造するのである。
【0020】
ここで、図4に本実施形態における重ねてセットした粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1aと粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1bとの上下型5、2内における型締めによる圧縮力を受けた際の流れを説明する。すなわち、粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1aと粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1bを重ねた状態で図4(a)のように圧縮力(型締め力)が矢印P方向から作用すると、図4(b)のようにまず最初に粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1aが潰され、先に潰された粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1aの外周部が前後方向だけでなく厚み方向にも矢印イのように流動するというように3次元的に流動し、このように3次元的に流動することで粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1のガラス繊維の特定方向への配向が抑えられ、更に、先に潰された粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1aの外周部が上記のように3次元的に流動して粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1の外周を包み込み、この状態で図4(c)のように粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1bも徐々に潰されていって粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1aと粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1bとが混じり合いながら流動し、これにより粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料1aのガラス繊維の特定方向への配向と粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料1bの特定方向への配向を抑えることができるものである。
【0021】
そして、本実施形態においても、前述の実施形態と同様に粘度の異なる複数のガラス繊維強化樹脂複合材料1を下型2に設けた上方に開口した凹型部3内にセットし、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れるまでの型締め速度よりも、ガラス繊維強化樹脂複合材料1が凹型部3の底面部のほぼ全面に流れた後に凹型部3の内面と凸型部4の外面との間を流れる際の型締め速度を遅くするように型締め速度を制御するものであり、これによりいっそうガラス繊維の特定方向への配向を防止し、強度に異方性が生じないガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を製造することができるものである。
【0022】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1記載の発明にあっては、ガラス繊維強化樹脂複合材料を下型に設けた上方に開口した凹型部内にセットし、この下型と下方に突出した凸型部を有する上型とを型締めして凹型部と凸型部との間に形成されるキャビティ内にガラス繊維強化樹脂複合材料を充填してガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を製造するに当たり、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れるまでの型締め速度よりも、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れた後に凹型部の内面と凸型部の外面との間を流れる際の型締め速度を遅くするものであって、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れたことを検出するための検出手段を設けるので、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れたことを検出手段で検出し、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れた後の段階における型締め速度を遅くすることでガラス繊維強化樹脂複合材料の流動速度を遅くでき、これにより、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れるまでの間、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れた後に凹型部の内面と凸型部の外面との間を流れる間のいずれの場合も、ガラス繊維強化樹脂複合材料の流動速度を遅くできて、型締め時における流動によりガラス繊維の特定方向への配向を抑えることができ、また、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れるまでの型締め速度は遅くしないので、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れるまでの時間が必要以上にかからず、成形時間が必要以上に長くならないものであり、この結果、型締め時における流動圧によりガラス繊維が特定方向に配向するのを抑え、強度に異方性が生じないガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を短い成形時間で簡単に製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のガラス繊維強化樹脂複合材料を下型の凹型部内にセットした状態の説明図である。
【図2】同上の型締め順序を示す説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態のガラス繊維強化樹脂複合材料を下型の凹型部内にセットした状態の説明図である。
【図4】同上の重ねてセットした粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料と粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料との上下型内における型締めによる圧縮力を受けた際の流れの説明図である。
【符号の説明】
1 ガラス繊維強化樹脂複合材料
1a 粘度の低いガラス繊維強化樹脂複合材料
1b 粘度の高いガラス繊維強化樹脂複合材料
2 下型
3 凹型部
4 凸型部
5 上型

Claims (1)

  1. ガラス繊維強化樹脂複合材料を下型に設けた上方に開口した凹型部内にセットし、この下型と下方に突出した凸型部を有する上型とを型締めして凹型部と凸型部との間に形成されるキャビティ内にガラス繊維強化樹脂複合材料を充填してガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品を製造するに当たり、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れるまでの型締め速度よりも、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れた後に凹型部の内面と凸型部の外面との間を流れる際の型締め速度を遅くするものであって、ガラス繊維強化樹脂複合材料が凹型部の底面部のほぼ全面に流れたことを検出するための検出手段を設けることを特徴とするガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
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