JP3699789B2 - 超電導磁石装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、核磁気共鳴イメージング(MRI)装置に好適な超電導マグネットに関し、特に、広い開口部を有して被検者に開放感を与え、また被検者への検査者によるアクセスを容易にするとともに洩れ磁場が小さく、高い磁場均一度を有し、かつ低コストな超電導磁石装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のMRI装置で多く使われてきた超電導磁石の典型例の断面図を図23に示す。基本的には分割ソレノイドコイルであり円筒形状のボビンに巻き回され、これを冷却する液体ヘリウムを保持する低温容器と共に中空円筒形状の真空容器内部に収納され、水平方向(Z軸方向)の磁場を発生する。コイルは超電導線材によって作られており、液体ヘリウムによって約4.2K に冷却され超電導電流を搬送する超電導コイルとして機能する。図23の例ではマグネットは均一な磁場を発生するための直径の小さなメインコイルと漏れ磁場を抑制するための直径の大きなシールドコイルから構成されている。
【0003】
この構成のマグネットを用いた従来のMRI装置では、被検者は狭くて開口部の小さい円筒形状の中空部に入らなければならず、被検者に強い閉所感を与えていた。このため、時には、装置内に入ることを拒否される場合もあった。また医師等の検査者が撮像中の被検者にアクセスすることは困難であり、いわゆるIVR(Interventional Radiology)は、ほぼ不可能であった。
【0004】
この問題を回避する技術として、米国特許第5,194,810 号『オープンアクセス磁気共鳴撮像装置』に記載の図24の構成の磁石が公知である。
【0005】
この磁石は、上下に配置した冷却容器(図では外側の真空容器を描いている)内に配置した超電導コイルにより磁場を発生させている。その超電導コイルの内側には、良好な磁場均一度を得るために強磁性体による磁場均一化手段を設けている。さらに、上下の超電導コイルが発生する磁束の帰路として、鉄板と鉄ヨークを設けている。また、鉄ヨークは、磁束路の役割とともに上下の構造を機械的に支持する働きをしている。これらの材料には、機械的な強度や原価の面から一般に鉄を用いている。
【0006】
この例の場合には、四方が開放されているので被検者は閉塞感を受けずに済み、検査者も容易に被検者にアクセスできる。また、鉄ヨークによって磁束の帰路があるために磁束が遠くにまで広がらず、漏洩磁場を少なくできる。
【0007】
しかし、磁場均一化手段として一般的に用いられる鉄は磁場に対してヒステリシス特性を持つために、磁場均一化手段の近くに配置した傾斜磁場コイル(図示せず)が発生するパルス磁場が磁場均一化手段内の磁場分布に影響を与える。これが均一磁場発生領域内部の磁場分布にまで影響するために、高精度な信号計測の妨げになる可能性が存在した。これに対しては、磁場均一化手段に電気伝導度の低い材質を用いるなどの手段が講じられてきているが、パルス磁場の強度が強い場合には十分な効果が得られていなかった。
【0008】
また、鉄の磁化特性(B−H特性)は温度に対して依存性を持つため、鉄の温度が変化すると、MRI装置にとって重要なファクターである磁場均一度が変動する要因となる。図のような構造では、傾斜磁場コイルを磁場均一化手段の近くに設置することが一般的であり、傾斜磁場コイルを駆動することにより発生する熱により加熱されるために、温度が変動しやすい。
【0009】
上記の従来例の問題点を解消した構成例として図25,図26に示す構造が提案されている。この装置の外観を図25に、その縦断面図を図26示す。
【0010】
ここでは、超電導コイルとして、通常よく使用されているNbTi線材を想定して、液体ヘリウムを収納する冷媒容器を設けている。装置中央の均一磁場発生領域を挟んで上下対称に、円形の超電導コイルを設置している。それに応じて、冷媒容器も円筒状のものが上下対称に設置され、両者はその間にある支柱によって所定の距離を維持して保持される。
【0011】
この例では、上述の超電導コイルが装置外部に発生する漏洩磁場を装置の外周部に配置した外部強磁性体によって効果的に低減させる構造を提供する。このように周囲を強磁性体で囲むことで、装置外部に発生する磁束について磁路が形成されるので、漏洩磁場が遠方にまで広がることを抑制できる。
【0012】
一方、超電導コイルの配置と電流量を適切に選択することで、所定空間内の磁場を均一にしている。被検者の開放感を得るためには、超電導コイル間の距離を広くし、かつ、超電導コイルの直径を小さくする必要がある。しかし、この場合には、磁場均一度を得るために超電導コイルに要求される起磁力は膨大なものとなり、原価の上昇につながる。また、より高次の不整磁場が発生するため、これを消去して均一な磁場を得るために、超電導コイルの数を増やす必要がある。これも装置原価の上昇につながる要因となる。
【0013】
さらに、各超電導コイルに加わる電磁力もそれに応じて大きくなるので、構造的にも厳しい条件が要求される。
【0014】
また、漏洩磁場を抑制するための強磁性体は、被検者がはいる解放領域を作るために中心軸に関して非軸対称な構造になる。従って、均一磁場領域において強磁性体に由来する非軸対称で、かつ強度の大きい不整磁場が発生し、これを補正する手段が必要となる。従来の構成のように室温空間に補正用の鉄シムを設置する方法では、空間的な制約から広い開口を損なわずに大きな質量の鉄シムを用いることが困難であり、非軸対称な強磁性体に由来する強度の大きい非軸対称な不整磁場を補正することが困難であった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述してきたように、これまでは被検者に解放感を与える広い開口を備えた超電導磁石装置において、広い均一磁場発生領域を持ち、高い磁場強度と時間的に安定な静磁場を発生可能な装置を低廉な原価で製造することは難しかった。また、洩れ磁場を抑制する非軸対称な強磁性体に由来する非軸対称な不整磁場を、広い開口を損なわずに補正することが困難であった。
【0016】
従って、本発明では上記課題を解決し、広い開口を備え、漏洩磁場が少なくかつ、高い磁場強度において、時間的に安定、かつ、広い均一磁場発生領域を得ることができる超電導磁石装置を低廉な原価で提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
均一磁場空間内の非軸対称な不整磁場を補正することは、超電導コイルを収納する冷却容器の内部に、1乃至複数の強磁性体小群からなる強磁性体群を設置し、少なくとも1つの強磁性体小群に対して整数n(ただしnは1以上)が対応し、強磁性体小群が中心軸に関してn回の回転対称性を持つように配置することにより達成される。
【0018】
また、超電導コイルの起磁力を効果的に低減することは、均一磁場領域を挟んで対抗する静磁場発生源2組のうち少なくとも1組が、中心軸に関して軸対称な少なくとも2個の電流搬送手段から構成され、その電流搬送手段のうちの2個の電流搬送手段が、中心軸に関して概ね同一の軸方向位置にあり、互いに逆向きの電流を搬送し、超電導コイルを収納する冷却容器の内部に、1乃至複数の強磁性体小群からなる強磁性体群を設置する超電導マグネットにおいて、強磁性体小群の少なくとも一部を、中心軸に関して前記2個の電流搬送手段と概ね同一の軸方向位置に設置し、かつ中心軸からの平均距離をrm、前記2個の電流搬送手段の中心軸からの平均距離をr1及びr2(ただしr1<r2)としたとき、
r1<rm<r2
の関係が成り立つように配置することにより達成される。
【0019】
【発明の実施の形態】
磁化した磁性体が作る磁場を考察する。図27に示すように、極座標系(r,θ,φ)において、点Q(f,α,ψ)にz軸方向の磁化dm、または電流素片dsがあるとする。電流源に内接する球の内部領域では磁場はラプラス方程式に従い、その一般解は、
【0020】
【数1】
【0021】
と表せる。コイルは軸対称形状であるから、その作る磁場は上式において、m=0とおいて次式で表せる。
【0022】
【数2】
【0023】
ここに、Pn,Pn mはルジャンドル関数および陪ルジャンドル関数、Dn,An m,Bn mは展開係数であり、不整磁場の強度を表す。特にD0 は均一磁場の強度である。上の式は直交関数による展開式である。従って、各項の磁場はそれぞれ独立であり、互いに従属することはない。
【0024】
図21中のz軸方向の磁化dmが点Pに作る磁場のz成分は次のように表される。
【0025】
【数3】
【0026】
ここで、εmはノイマン係数である。この式と(数1)を比較すると、磁化
dmが作る磁場の展開係数は次式となる。
【0027】
【数4】
【0028】
【数5】
【0029】
この式から分かるように、An mまたはBn mは、cosmψまたはsinmψが±1になるとき絶対値が最大になる。いま、磁化dmによって最大の正の値のAn mを発生させたいとすると、cosmΨ=1より、次式を得る。
【0030】
【数6】
【0031】
従って、例えばm=4の不整磁場を消去したい場合は、
【0032】
【数7】
【0033】
の位置に磁化dmを配置すれば効果的に大ききな強度のAn mを発生できることが分かる。この配置は中心軸に関する4回の回転対称を持つ配置である。
【0034】
ここで、等しい大きさの4個の磁化dmを上式の位置に配置すると、これらが作る磁場の展開係数An mは次のようになる。
【0035】
【数8】
【0036】
ただし、
【0037】
【数9】
【0038】
従って、中心軸の回りに4回の回転対称を持つ配置の磁化は、m=4k(k=0,1,2,…)の非軸対称な磁場An 4kだけを作る。
【0039】
従って、均一磁場領域に(数1)における次数mの不整磁場があり、磁場均一度を悪化させている場合は、中心軸に関してm回の対称性を持つ磁化を配置すれば、他の次数の不整磁場を発生することなく、次数mの不整磁場を消去できる。
磁化としては、鉄片を配置して外部磁場によって磁化したものを用いる方法が一般的であるが、希土類磁石のような永久磁石を用いることもできる。
【0040】
磁化した鉄片または永久磁石を冷却容器内部に設置することにより以下のような効果がある。一般に、強磁性材料の磁化特性(B−H特性)は温度に依存する。また、着磁した永久磁石の磁化強度も温度へ依存性が強い。従って、ppm オーダーの磁場均一度が要求されるMRI装置用マグネットでは、磁場均一度を達成もしくは補正する手段として強磁性材料または永久磁石を使う場合は、強磁性材料または永久磁石の温度を一定に保つ必要がある。冷却容器に液体ヘリウムを溜めて超電導コイルを冷却する場合は、冷却容器内部の温度は4.2K に保たれる。また、液体ヘリウムを用いずに、冷凍機によって直接に冷却容器を冷却する場合も、冷却容器内部の温度は例えば10Kなどに一定に保たれる。従って冷却容器内部に強磁性材料または永久磁石を設置する場合は、室温の変化,MRI装置運転時の発熱等の影響を全く受けることなく、強磁性材料または永久磁石の温度を一定に保つことができる。従って、時間的に安定した均一磁場を得ることができる。更に、強磁性材料の透磁率および磁化した永久磁石の磁化強度は、室温よりも4.2K 等の低温状態の方が高い。従って、同じ質量の強磁性材料または永久磁石を用いる場合、強度の強い磁化を利用することができるから高い効率で不整磁場を補正することができる。
【0041】
次に、同心円状の極性の異なるコイルが隣接している場合に、両コイルの間に強磁性材料を配置する場合の効果を以下に記述する。同心状の正極性コイルと負極性コイルが、中心軸に関して概ね同じ軸方向位置にある場合の両コイル近傍の磁束線の様子を図21に示す。正極性コイルと負極性コイルの間に磁束線が集中し、磁束密度が大きくなる。従って、この位置に強磁性体を配置することにより、強磁性体を強い強度に磁化することができる。またこの位置でのコイルによる磁場の方向は概ねz軸方向を向いているから、強磁性体を概ねz軸方向に磁化することができ、磁化の方向を中心磁場強度を高める方向にすることができる。従って同一の中心磁場強度を達成する場合、コイルが作る中心磁場強度を小さくすることができる。図21に示すような正極性コイルと負極性コイルの隣接配置は、主に均一な磁場を発生するために用いられるが、中心磁場強度の発生効率が悪く、全コイルの起磁力の絶対値和が大きくなる欠点がある。前述したように、正極性コイルと負極性コイルの間に強磁性体を配置すると、コイルが作る中心磁場強度を小さくできるので、特に隣接した正極性コイルと負極性コイルの間の効率が上がり、全コイルの起磁力の絶対値和を小さくすることができる。また、図21に示すマグネットの上側をx−y平面に投影した図を図22に示す。ここでは強磁性体は円環状形状をしているとする。z軸方向に磁化した円環状強磁性体は、等価的に図22に示すような表面電流に置き換えることができる。この表面電流の方向は、隣接するコイルの電流の方向と同じであるから、正極性コイルと負極性コイルの起磁力を負担する効果があり、コイルの起磁力を低減することができる。
【0042】
図1は、本発明の実施例による開放型MRI装置用超電導マグネットの断面図。図2は、図1のマグネットの構成要素のうち超電導コイルと強磁性体要素のみをx−y平面に投影した図。
【0043】
この超電導マグネットは、洩れ磁場を抑制するために、外周部を強磁性体で包囲している。この構造は、新規に提案されている構造として説明した図25および図26と基本的に同一である。具体的には、上下の真空容器4,4′の周囲を円盤状外部強磁性体1,1′及び円筒状外部強磁性体2,2′で包囲し、上下を支柱状外部強磁性体3,3′によって磁気的に連結している。ここで用いる外部強磁性体及び以下に記述する冷却容器内部に設置する強磁性体としては、磁気的に強磁性を示すものであればよく、種々の材料が使用できるが、磁気的特性,コスト,機械強度からすれば、一般には鉄が望ましい。また、強磁性体の重量を軽減したい場合には、透磁率の高い材料を使うこともできる。このように周囲を外部強磁性体で囲むことで、装置外部に発生する磁束について磁路が形成されるので、漏洩磁場が遠方にまで広がることを抑制できる。この構造のMRI装置用マグネットは、被検者のアクセス空間を作るために外周部を包囲する外部強磁性体が図23に示すように非軸対称な形状になる。従って、外部強磁性体に起因する(数1)におけるm=2の不整磁場が発生し、均一磁場領域7における磁場均一度を悪化させる。
【0044】
超電導コイル8,8′,9,9′,10,10′はマグネット中央の均一磁場領域を挟んで上下にほぼ対称に設置されていて、垂直方向すなわち図1のz軸方向の均一な磁場を、均一磁場領域7に発生する。上下の超電導コイルはそれぞれの冷却容器5,5′内部に設置され、上下の冷却容器はそれぞれ真空容器4,4′に内包されている。さらに、図1では簡単のため省略したが、超電導コイルを支持する構造があり、また真空容器と冷却容器の間には輻射熱の侵入を防ぐ熱シールドがある。冷却容器内部には液体ヘリウムが溜められ、超電導コイルを極低温の4.2K に冷却する。
【0045】
上下の真空容器はその間にある支柱6によって所定の距離を維持して保持される。この支柱6は機械的に上下の真空容器4,4′を支える働きをしているが、上下の冷却容器を熱的に接続する働きを持たせても良い。そうすることで、冷凍機を上下に1台ずつ設ける必要がなくなり、システムに1台の冷凍機で間に合わせることが可能になる。また、支柱6及び支柱状強磁性体3の本数も図示の2本に限定する必要はなく、3本,4本と増やすこともできるし、開放感を得るためには、片持ちの1本の支柱としてもよい。
【0046】
本発明では、超電導コイル8,8′,9,9′,10,10′の位置と起磁力を調節することにより均一磁場領域7に発生させている。しかし上述したように外部強磁性体に起因する(数1)におけるm=2の非軸対称な不整磁場が発生し磁場均一度を悪化させている。
【0047】
本発明では、更に冷却容器内5,5′に中心軸に関して2回の回転対称性を持つ強磁性体要素11,11′,12,12′を配置している。これらの強磁性体要素は、(数1)におけるm=2の磁場を発生し、外部強磁性体が発生しているm=2の不整磁場を打ち消して、均一磁場領域7内の磁場分布を均一にしている。図2の実施例では、強磁性体要素11,11′,12,12′はx軸上にあるが、不整磁場の位相に対応して、中心軸に関して回転させても良い。
【0048】
図3は、本発明の他の実施例による開放型MRI装置用超電導マグネットの断面図。図4は、図3のマグネットの構成要素のうち冷却容器と強磁性体要素のみをx−y平面に投影した図。本実施例では、(数1)におけるm=2の不整磁場を補正するための強磁性体要素の他の配置方法を示している。強磁性体要素13,13′,14,14′,15,15′,16,16′,17,17′は強磁性体群を形成し、強磁性体群が中心軸に関して2回の回転対称性を持つように配置されていて、(数1)におけるm=2の磁場を発生し、外部強磁性体が作るm=2の不整磁場を打ち消している。本実施例のように複数の強磁性体要素からなる強磁性体群がk回の回転対称性を持つ場合も、(数1)におけるm=kの磁場を選択的に発生するから、(数1)におけるm=kの不整磁場を効果的に打ち消すことができる。
【0049】
図5,図6,図7及び図8は、本発明の他の実施例による開放型MRI装置用超電導マグネットの構成要素のうち冷却容器と強磁性体要素のみをx−y平面に投影した図。
【0050】
図5では強磁性体要素からなる強磁性体要素群18が中心軸であるz軸に関して1回の回転対称性を持つように配置され、(数1)におけるm=1の磁場を発生し補正する。
【0051】
図6では強磁性体要素からなる3個の強磁性体要素群18が強磁性体群を形成し、この強磁性体群が中心軸であるz軸に関して3回の回転対称性を持つように配置され、(数1)におけるm=3の磁場を発生し補正する。
【0052】
図7では強磁性体要素からなる4個の強磁性体要素群18が強磁性体群を形成し、この強磁性体群が中心軸であるz軸に関して4回の回転対称性を持つように配置され、(数1)におけるm=4の磁場を発生し補正する。
【0053】
図8では強磁性体要素からなる2個の強磁性体要素群18が第1の強磁性体小群を形成し、第1の強磁性体小群が中心軸であるz軸に関して2回の回転対称性を持つように配置され、(数1)におけるm=2の磁場を発生し補正する。同時に、強磁性体要素からなる4個の強磁性体要素群19が第2の強磁性体小群を形成し、第2の強磁性体小群が中心軸であるz軸に関して4回の回転対称性を持つように配置され、(数1)におけるm=4の磁場を発生し補正する。従って、第1の強磁性体小群および第2の強磁性体小群からなる強磁性体群は、(数1)におけるm=2,4の磁場を同時に発生しm=2,4の不整磁場を補正している。
本実施例のように、強磁性体群を異なる対称性を持つ強磁性体小群から構成し、次数の異なる不整磁場を同時に補正することができる。
【0054】
図9は、本発明の他の実施例による開放型MRI装置用超電導マグネットの断面図。図10は、図9のマグネットの構成要素のうち強磁性体要素のみの斜視図。円盤状強磁性体23は中心から外周部までの距離を変化させることにより、中心軸であるz軸に関して2回の回転対称性を持つように配置されている。従って、(数1)におけるm=2の磁場を発生し、均一磁場領域7内の磁場を均一になるように補正している。更に、円盤状強磁性体23は中心磁場強度を高める作用が強いので、超電導コイル20,20′,21,21′,22,22′の起磁力を低減することができ、マグネットのコストを下げることができる。本実施例では、円盤状強磁性体23は2回の回転対称性を持っているが、不整磁場の次数に対応して1回,3回,4回,5回・・・の回転対称性を持つような形状としてもよい。
【0055】
図11は、本発明の他の実施例による開放型MRI装置用超電導マグネットの断面図。図12は、図11のマグネットの構成要素のうち強磁性体要素のみの斜視図。円盤状強磁性体24は各部の厚さを変化させることにより、中心軸であるz軸に関して2回の回転対称性を持つように配置されている。従って、(数1)におけるm=2の磁場を発生し、均一磁場領域7内の磁場を均一になるように補正している。更に、円盤状強磁性体24は中心磁場強度を高める作用が強いので、超電導コイル20,20′,21,21′,22,22′の起磁力を低減することができ、マグネットのコストを下げることができる。本実施例では、円盤状強磁性体23は2回の回転対称性を持っているが、不整磁場の次数に対応して1回,3回,4回,5回・・・の回転対称性を持つような形状としてもよい。
【0056】
図13は、本発明の他の実施例による開放型MRI装置用超電導マグネットの断面図。図14は、図13のマグネットの構成要素のうち強磁性体要素のみの斜視図。冷却容器5の内部には円盤状強磁性体25,強磁性体要素26,26′,27,27′,28,28′が配置されている。強磁性体要素26,26′は第1の強磁性体小群を形成し、中心軸であるz軸に関して2回の回転対称性を持つ。強磁性体要素27,27′,28,28′は第2の強磁性体小群を形成し、中心軸であるz軸に関して4回の回転対称性を持つ。すなわち本実施例では、2回および4回の回転対称性を持つ第1および第2の強磁性体小群と概ね円盤状形状を有する円盤状強磁性体が強磁性体群を形成している。円盤状強磁性体25は中心磁場強度を高める作用をし、一方第1および第2の強磁性体小群はそれぞれ(数1)におけるm=2およびm=4の磁場を発生し、均一磁場領域7内の磁場を均一になるように補正している。
【0057】
図15は、本発明の他の実施例による開放型MRI装置用超電導マグネットの断面図。図16は、図15のマグネットの構成要素のうち超電導コイルと強磁性体要素のみをx−y平面に投影した図。冷却容器内部には超電導コイル31,32,正極超電導コイル29および負極超電導コイル30がある。正極性超電導コイル29と負極超電導コイル30は電流の方向が逆向きである。正極性超電導コイル29と負極超電導コイル30の間には、円環状強磁性体33があり、中心磁場強度を高め、超電導コイルの起磁力の絶対値和を低減する作用をしている。
本実施例では、特に正極超電導コイル29と負極超電導コイル30の起磁力を低減しているので、各コイル間の電磁力も小さくなり電磁力支持構造も軽量化されている。従って、本実施例ではマグネットの製造コストが低減されている。
【0058】
図17は、本発明の他の実施例による開放型MRI装置用超電導マグネットの断面図。図18は、図17のマグネットの構成要素のうち強磁性体要素のみの斜視図。正極超電導コイル29と負極超電導コイル30の間に配置された円環状強磁性体34は、各部の高さを変えることにより中心軸であるz軸に関して2回の回転対称性を持つように配置されている。従って、(数1)におけるm=2の磁場を発生し、均一磁場領域7内の磁場を均一になるように補正している。また正極超電導コイル29と負極超電導コイル30の間に配置された円環状強磁性体34は、起磁力を低減する作用があるので、マグネット全体の起磁力の絶対値和を低減しており、製造コストが低減している。
【0059】
図19は、本発明の他の実施例による開放型MRI装置用超電導マグネットの断面図。図20は、図19のマグネットの構成要素のうち強磁性体要素のみの斜視図。正極超電導コイル35と負極超電導コイル36の間に、中心軸に関して2回の回転対称性を持つ円環状強磁性体40が配置され、更に円盤状強磁性体39が配置されている。両強磁性体の併用により、コイルの起磁力は大幅に低減しており、更に円環状強磁性体40が発生する(数1)におけるm=2の磁場により、外部強磁性体に起因する不整磁場を打ち消して、均一磁場領域7における磁場分布を均一にしている。
【0060】
【発明の効果】
以上に説明した如く本発明によれば、超電導磁石装置において、広い開口を備え、漏洩磁場が少なく、高い磁場強度において、時間的に安定で広い均一磁場発生領域を得られる超電導磁石を低廉な製造原価で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図2】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図3】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図4】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図5】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図6】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図7】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図8】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図9】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図10】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図11】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図12】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図13】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図14】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図15】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図16】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図17】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図18】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図19】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図20】本発明に関わる超電導磁石装置の模式図。
【図21】本発明の効果を示す特性図。
【図22】本発明の効果を示す特性図。
【図23】従来技術による超電導磁石装置の一実施例を示す説明図。
【図24】従来技術による超電導磁石装置の一実施例を示す説明図。
【図25】従来技術による超電導磁石装置の一実施例を示す説明図。
【図26】従来技術による超電導磁石装置の一実施例を示す説明図。
【図27】本発明に関わる電磁気現象の説明図。
【符号の説明】
1,1′,49…円盤状外部強磁性体、2、2′,50…円筒状外部強磁性体、3,3′,51…支柱状外部強磁性体、4,41,45,53…真空容器、5,5′,42,56…冷却容器、6,52…支柱、7,44,55…均一磁場領域、8,9,10,20,21,22,31,32,37,38,43,54,61,62…超電導コイル、11,12,13,14,15,16,17,26,27,28…強磁性体要素、18,19…強磁性体要素群、23,24,25,39…円盤状強磁性体、29,35…正極超電導コイル、30,36…負極超電導コイル、33,34,40,60…円環状強磁性体、46…ポールピース、47…鉄板、48…鉄ヨーク、57…磁束線、63…磁化に等価な電流。
Claims (8)
- 超電導特性を有する物質から構成され、有限の領域に第1の方向に向かう均一磁場を発生させるための電流を流す正極性コイルと負極性コイルとを同心円状に配置した静磁場発生源が、該静磁場発生源を超電導特性を示す温度まで冷却し、維持するための冷却容器に上下に1組ずつ収容され、前記均一磁場領域を間に挟んで対向して配置され、前記冷却容器内部に強磁性体からなる強磁性体群を配置する超電導磁石装置であって、前記強磁性体群が1乃至複数の強磁性体小群からなり、該強磁性体小群を前記第1の方向に平行で前記均一磁場領域の中心を通る中心軸に関して回転対称性を持つように配置すると共に前記正極性コイルと前記負極性コイルとの間に設置することにより、前記均一磁場領域内部の磁場分布を補正することを特徴とする超電導磁石装置。
- 請求項1記載の超電導磁石装置において、強磁性体群は外形が平坦な円盤状形状を有する円盤状強磁性体を含み、かつ前記静磁場発生源の構成要素の一部若しくは全部が前記円盤状強磁性体の面から等距離の位置に平行に配置されることを特徴とする超電導磁石装置。
- 請求項2記載の超電導磁石装置において、前記円盤状強磁性体は完全な円盤形状を有することを特徴とする超電導磁石装置。
- 請求項2記載の超電導磁石装置において、前記円盤状強磁性体はその厚さまたは幅が径方向または周方向の位置によって変化することを特徴とする超電導磁石装置。
- 請求項1記載の超電導磁石装置において、強磁性体群は円環状強磁性体を含み、かつ前記静磁場発生源の構成要素の一部若しくは全部が前記円環状強磁性体の面から等距離の位置に平行に配置されることを特徴とする超電導磁石装置。
- 請求項5記載の超電導磁石装置において、前記円環状強磁性体は完全な円環形状を有することを特徴とする超電導磁石装置。
- 請求項5記載の超電導磁石装置において、前記円環状強磁性体はその厚さまたは幅が径方向または周方向の位置によって変化することを特徴とする超電導磁石装置。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の超電導磁石装置を用いた磁気共鳴イメージング装置。
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