JP3698640B6 - 2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態、その製法、それを含む組成物およびそれらを用いた紫外線吸収剤 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なII型結晶変態をもつ2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、その製法、それを含む組成物およびそれらを用いた紫外線吸収剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種プラスチック、合成ゴム、ナイロン繊維、樹脂塗料などのポリマー製品の使用が多用化されることにともない難燃材、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤の需要も増加している。特にポリマー製品の差別化、高付加価値化が進められる中でポリマー製品の紫外線による亀裂、変色などの劣化現象を防止させるために紫外線吸収剤の使用は、重要な課題となっており、紫外線吸収剤の安定な供給が要求されている。
【0003】
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールは、一般にプラスチックス、塗料、油、繊維等の紫外線吸収剤などとして用いられ、Tinuvin328K(Ciba Specialty社商品名)、シーソーブ704(シプロ化成社商品名)、KEMISORB74(ケミプロ化成社商品名)として粉末状で市販されている。
【0004】
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールの当社市販品(既知の結晶変態I型であり,図2がそのX線回折図である)の性状は、微粉末で嵩比重が小さく、乾燥、梱包の工程や使用時の計量、仕込などの取り扱いに際して、粉体の飛散、部分凝集が生じるという作業性の問題がある。また輸送、保管時においては、その保管条件によっては、局部的な固結が起こり、粉体の流動性が悪くなる。このため、粉体取り扱い時の作業性に影響を与えない流動性の良い粉体の提供が望まれている。
【0005】
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールの製造方法は、特開平2−134370号公報ではo−ニトロアゾベンゼン類を白金触媒と有機アミン存在下に接触水素添加する方法、特開平7−228576号、特開平7−228577号及び特開平8−217762号公報では、o−ニトロアゾべンゼン類を硫黄化合物にて被毒された水素化触媒及び塩基性物質の存在下に水素で還元する方法、更に特開2000−154180号公報では、酸性物質の存在下、2−フェニルベンゾトリアゾール−N−オキシド類を水素化触媒及び水素で還元する方法などに開示されているが、生成物の結晶変態についての記載はない。
【0006】
通常、複数の結晶変態が存在する化合物は、その結晶変態毎に種々の性質に違いがあり、たとえ同一化合物であっても、その機能性、物性が異なることが知られている。例えば、特開平6−128195号、特開平6−72960号公報などには同一化合物における結晶変態毎の粉体の嵩比重、粒度分布および流動性の違いが開示されている。このように結晶変態の知見を得ることは、製品の付加価値、品質向上にとって重要なことである。また、X線回折法、融点測定は、結晶という観点から物質の分析を行う実用的な方法であって、結晶変態の区別、機能性新材料の開発など多くの分野で用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、使用時の作業性など取り扱いやすく、流動性の良い2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールのII型結晶変態、その製法、それを含む組成物およびそれらを用いた紫外線吸収剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、Cu−Kα線による粉末X線回折分析において、回折角(2θ±0.1°)5.6°、7.3°、9.4°、10.5°、13.0°、13.7°、16.0°、16.4°、18.3°、18.7°に回折ピークを示す下記式(1)で示される2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール結晶変態(この結晶変態を以下II型ということがある)に関する。
【化2】
Figure 0003698640
【0009】
本発明の第2は、請求項1記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態を含有し、パウダーテストによる圧縮度が35以下である2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール組成物に関する。なお、本明細書の記載における2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール組成物とは、化合物としては1種類であるが、いろいろの結晶変態を含んでいるという点で化合物の末尾に組成物を付加したものである
【0010】
本発明の第3は、請求項1記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態を20%以上含有する2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール組成物に関する。
【0011】
本発明の第4は、請求項1記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態を含有するか、または請求項2あるいは3記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール組成物を含有することを特徴とする紫外線吸収剤に関する。
【0012】
本発明の第5は、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールを無溶媒または難溶性溶媒の存在下、晶析またはフレーク化するに当り、結晶を溶解または融解させないように70〜79℃の範囲で加熱処理することを特徴とする請求項1記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態の製造方法に関する。
【0013】
本発明者らは、市販品の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールI型結晶変態の流動性を評価するために、先ず、パウダーテストによる圧縮度を測定した。その圧縮度は40〜43の範囲にあり、平均が42であった。通常、パウダーテストによる圧縮度は、粉体の流動性と最も関係が深い因子として知られており、その測定値が小さいほど流動性が良いとされており、圧縮度が40以上の粉体は、流動性が悪いとされている。このことから、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール市販品(I型結晶変態)の流動性が悪いことは明らかである。
【0014】
そこで、本発明者らは、この結果をもとに研究を重ね、流動性のよい粉体を得るため、種々検討した結果、晶析またはフレーク化する時、結晶を溶解または融解させないように適当な条件で熱処理して得られたフレーク状結晶または組成物(粉体)は、圧縮度が35以下、通常30付近を示す、市販品より明らかに圧縮度が小さく流動性が良い粉体が得られることを見出した。圧縮度の測定は〔0025〕〜〔0028〕に記載した。
【0015】
このような晶析条件の違いから、同一化合物であっても、物性が変わることは良く知られているが、全ての化合物に当てはまるわけではない。例えば、本発明の化合物と類似化合物である2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールについて本発明と同様の要領で行っても本発明のような結晶変態を得られない。すなわち、本発明における現象は、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールの特有の性質である。また、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールに関しては、今まで結晶の分析に関する知見が全くなく、本発明の結果は容易に見出せるものではない。
【0016】
さらに、本発明者らは、得られた粉体の特徴を更に明確にするため、Cu−Kα線による粉末X線回折分析を行った。その結果、既知の結晶変態である市販品は、回折角(2θ±0.1°)5.5°、10.4°、11.0°、14.3°、16.5°、17.8°、18.8°に強いピークを有するI型(図2参照)であるのに対し、本発明で得られた流動性のよい粉体は、回折角(2θ±0.1°)5.6°、7.3°、9.4°、10.5°、13.0°、13.7°、16.0°、16.4°、18.3°、18.7°に強いピークを有する(明らかなピークの保存が認められる)新規な結晶変態のII型であることを見出した。また、I型は、79〜82℃の融点を有するのに対し、II型は、86〜88℃の融点を有する知見も得た。
【0017】
さらに本発明者らは、本発明のII型の結晶変態と流動性について研究を重ねたところ、II型の結晶変態またはI型結晶変態とII型の結晶変態の混合物(II型が20重量%以上)は、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールを無溶媒または難溶解性溶媒の存在下で、晶析またはフレーク化するに当り溶融又は溶解させないように適当な条件すなわち70〜79℃、好ましくは76〜79℃で熱処理することにより簡便に得ることができることも分った。なお、加熱処理の条件によってはII型結晶変態の他に従来型のI型結晶変態を含有することがある。例えば、79℃で1時間程度加熱処理するとI型結晶変態とII型結晶変態の混合物を得ることができる。
【0018】
II型を得るために使用する難溶性溶媒としては、水およびメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、エチルイソアミルエーテル、エチルフェニルエーテルなどのエーテル類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、3−エチルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、クメン、o−シメン、p−シメン、m−シメン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、t−ブチルベンゼン、1−ブチル−4−メチルベンゼン、1−ブチル−2−メチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼンなどの炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどのカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどの有機ハロゲン化物、ホルムアミド、アセトアミド、キノリン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン、2−メチルピロリドンなどの含窒素化合物類を用いることができ、1種類あるいは混合溶媒で用いることができる。
【0019】
溶媒の使用量および混合割合は、結晶が溶解せずにスラリー状態であること以外は、特に制限されるものではないが、当然、収率は、溶解度に大きく影響される。
【0020】
また、得られた結晶は、市販品の結晶変態であるI型と比べ、圧縮度が小さく、流動性が良いこと、さらに、II型とI型の混合物を晶析および/または別々製造したII型とI型をブレンドして用いることができ、その混合割合は、II型が20%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上含有する組成物であれば、依然として流動性が良いことを見出し問題を解決するに至った。II型とI型の混合割合は、それぞれ単独の結晶変態でのDSC測定による融解熱量比より検量線を作成し決定した。
【0021】
すなわち、本発明によれば、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールを無溶媒または難溶性溶媒の存在下、70〜79℃、好ましくは、76℃〜79℃の範囲で加熱撹拌することで、Cu−Kα線による粉末X線回折分析において、回折角(2θ±0.1°)5.6°、7.3°、9.4°、10.5°、13.0°、13.7°、16.0°、16.4°、18.3°、18.7°に強いピークを有するII型およびII型とI型の混合物が粉体またはフレーク状結晶として得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0023】
DSC測定は、TAインスツルメント2920型DSCを用いて、試料量を1〜3mg、炉内雰囲気を窒素気流50ml/min昇温速度を2.0℃/minの条件で行った。
【0024】
Cu−Kα線による粉末X線回折分析は、マックサイエンス製TFD−18kwを用いて、対陰極Cu−Kα(1.5405Å)、40kV−50mA、走査速度2.000°/minの条件で行った。また、粉末X線回折分析による回折角(2θ)は同一結晶型のものであれば、±0.1°程度の誤差で一致するものであるので、結晶変態の違いを明確に示すものであり、回折線の相対強度は、測定試料の粒径により、強度比が変化することがある。
【0025】
パウダーテストは、ホソカワミクロンパウダーテスターTYPE−Eを使用し、見掛比重の測定に、直径5cmの100cc円柱容器を使用した。
【0026】
ゆるめ見掛比重の測定操作は、容器に粉体を山盛りになるまで静かに充填し、容器面より上にある余分な粉体をすり切って重量を測定した。ゆるめ見掛比重は、このときの粉体の重量(g)÷100で求めた。
【0027】
かため見掛比重は、ゆるめ見掛比重のときと同様に粉体を充填し、タッピングを180回行った後、容器面より上にある余分な粉体をすり切って重量を測定した。かため見掛比重は、このときの粉体の重量(g)÷100で求めた。
【0028】
また、圧縮度は、ゆるめ見掛比重をA、かため見掛比重をPとし、下記式より算出した。
【数1】
圧縮度=100(P−A)/P
【0029】
実施例1
1000ml四つロフラスコに2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール−N−オキシド330g(0.898mol)、5%パラジウムカーボン3.0g、トルエン:2−プロパノール:水(容量比10:2:1の割合に混合)600ml、及びシュウ酸2水和物10g(0.08mol)を入れ30〜40℃で攪拌しながら水素を吹き込んだ。吸収された水素量を補いながら、15時間反応を行った。反応終了後、水素添加触媒をろ別し〔ろ液の一部をHPLCにより定量した所、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールの生成率は99.0%であった。〕、溶媒層の残留酸性物質を水洗浄により除去した後、溶媒等を留去し、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールの粗製物を固形物として得た。晶析溶媒として、トルエン10ml、メタノール300ml、水450mlを加え、77〜79℃で2時間撹拌した。固形物は、完全に溶解することなく、スラリーの状態であった。室温に冷却後、ろ過し、305.0g(収率97.0%)の収量で白色結晶性粉末の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールを得た。得られた結晶のCu−Kα線による粉末X線回折分析の結果は、図1に示すとおり回折角(2θ±0.1°)5.6°、7.3°、9.4°、10.5°、13.0°、13.7°、16.0°、16.4°、18.3°、18.7°に強いピークを有するII型であった。また、DSC分析の結果は、87℃に1本の吸熱ピークを示した。さらに、得られた結晶について、パウダーテスターをもちいて、圧縮度を測定した結果を表1に示した。
【0030】
実施例2
500ml四つ口フラスコに2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール50.0gを仕込み、77〜79℃で24時間撹拌した。粉末は、淡黄色から白色に変化した。室温に冷却し、白色粉末を得た。得られた結晶のDSC分析の結果は、87℃に1本の吸熱ピークを示した。また、Cu−Kα線による粉末X線回折分析の結果は、図1に示す通り、回折角(2θ±0.1°)5.6°、7.3°、9.4°、10.5°、13.0°、13.7°、16.0°、16.4°、18.3°、18.7°に強いピークを有するII型であった。さらに、得られた結晶について、パウダーテスターをもちいて、圧縮度を測定した結果を表1に示した。
【0031】
実施例3
500ml四つ口フラスコに2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール50.0g、40%メタノール水溶液400mlを仕込み、79℃で10時間撹拌した。室温に冷却した後、ろ別、乾燥し、白色結晶49.9gを得た。得られた結晶のDSC分析の結果は、87℃に1本の吸熱ピークを示した。また、Cu−Kα線による粉末X線回折分析の結果は、図1に示す通り、回折角(2θ±0.1°)5.6°、7.3°、9.4°、10.5°、13.0°、13.7°、16.0°、16.4°、18.3°、18.7°に強いピークを有するII型であった。さらに、得られた結晶について、パウダーテスターをもちいて、圧縮度を測定した結果を表1に示した。
【0032】
実施例4
500ml四つ口フラスコに2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール50.0g、40%メタノール水溶液400mlを仕込み、70〜75℃で2時間撹拌した。室温に冷却した後、ろ別、乾燥し、白色結晶49.9gを得た。図3に示した通り、Cu−Kα線による粉末X線回折分析の結果から、得られた結晶は、明らかにI型とII型の混合物であることを示した。また、得られた結晶の混合割合をDSC測定により、求めた結果、I型(81℃)とII型(87℃)は、重量比で30(I型):70(II型)であった。そのDSC測定結果を図4に示した。
さらに、得られた結晶について、パウダーテスターをもちいて、圧縮度を測定した結果を表1に示した。
【0033】
実施例5
II 25gと後述の比較例1で得られたI型75gを混合した。得られた結晶について、パウダーテスターをもちいて、圧縮度を測定した結果を表1に示した。
【0034】
比較例1
実施例4と同様に反応を行い、(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールの粗製物を固形物として得た。晶析溶媒として、トルエン50ml、メタノール500mlを加え、70℃で溶解後、再結晶を行い、303.0g(収率96.0%)の微黄色結晶性粉末の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールを得た。Cu−Kα線による粉末X線回折分析の結果は、図2に示す通り、回折角(2θ±0.1°)5.5°、10.4°、11.0°、14.3°、16.5°、17.8°、18.8°に強いピークを有する市販品と同じI型であった。さらに、得られた結晶について、パウダーテスターをもちいて、圧縮度を測定した結果を表1に示した。
【0035】
【表1】
Figure 0003698640
【0036】
【発明の効果】
実施例とその表1に示したように、本発明によって、II型の結晶変態およびII型の結晶変態を20%以上含有する組成物は、見掛比重が大きく、圧縮度が小さい結晶として得ることができ、市販品より、流動性が良く、粉体の取り扱いに有利なことは、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1、2および3で得た本発明の新規な結晶変態であるII型のX線回折パターンである。
【図2】図2は、市販品の既知の結晶変態であるI型のX線回折パターンである。
【図3】図3は、実施例4で得たI型とII型の混合物のX線回折パターンである。
【図4】図4は、実施例4で得たI型とII型の混合物のDSCチャートである。

Claims (5)

  1. Cu−Kα線による粉末X線回折分析において、回折角(2θ±0.1°)5.6°、7.3°、9.4°、10.5°、13.0°、13.7°、16.0°、16.4°、18.3°、18.7°に回折ピークを示す下記式(1)で示される2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール結晶変態(この結晶変態を以下II型ということがある)。
    Figure 0003698640
  2. 請求項1記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態を含有し、パウダーテストによる圧縮度が35以下である2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール組成物。
  3. 請求項1記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態を20%以上含有する2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール組成物。
  4. 請求項1記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態を含有するか、または請求項2あるいは3記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール組成物を含有することを特徴とする紫外線吸収剤。
  5. 2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールを無溶媒または難溶性溶媒の存在下、晶析またはフレーク化するに当り、結晶を溶解または融解させないように70〜79℃の範囲で加熱処理することを特徴とする請求項1記載の2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態の製造方法。
JP2000393432A 2000-12-25 2000-12-25 2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールII型結晶変態、その製法、それを含む組成物およびそれらを用いた紫外線吸収剤 Expired - Fee Related JP3698640B6 (ja)

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