JP3697517B2 - 気体透過膜使用装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体透過膜を用いた装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、膜崩壊時にガスの大量放出を抑え、安全に機能する気体透過膜を用いた装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素透過膜をはじめとする各種の気体透過膜は、一般にガス種によってその透過速度が異なるため、混合ガスから特定のガスを分離するのに用いられている。吸着法などの他の方法に比べ分離に必要なエネルギーが小さいことから注目され、既にいくつかの分野において実施化され、さらに広い分野で実用化が進みつつある。
このことから、近年、気体分離膜の研究・開発が盛んに行われ、新しい膜の透過速度や強度など、種々の特性を評価する必要が生じている。その際、図5に示されるような装置において、気体透過膜2を用いて気体透過ユニット1内を供給室3と透過室4に隔離し、供給室3に試験ガスを配管6から導入し、透過室4から流れ出るガスをガスクロマトグラフ16と流量計17で組成と流量を測定することにより、膜の気体透過速度を評価できることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
「ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)」、(発行所Elsevier Science B.V.)、1998年、第139巻、p.29〜35、「N.Itoh外4名、『Permeability of hydrogen in amorphous Pd(1-x)Six alloys at elevated temperatures』」
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、気体は透過膜の供給側と透過側の分圧差を駆動力として透過するので、通常供給室は加圧状態となっている。ところで、気体透過膜の中でも金属からなる水素透過膜は水素雰囲気中で脆くなることが知られており、膜の寿命や外的ショックを含む様々な要因で膜が崩壊する可能性がある。この他、セラミックスや炭素などから構成されている気体透過膜も脆く、気体透過中に崩壊する可能性がある。供給側のガスは水素等の可燃性のガスである場合が多く、気体透過膜の使用中に膜が崩壊すると、大量に透過側に流入し、そのまま透過側出口から放出されると、不経済であるばかりか危険でさえある。
また、気体透過膜の研究・開発においては、機械的強度が不十分であったり未知である膜を扱わざるを得ないので、気体透過速度などの性能評価試験中に崩壊する可能性を充分認識しておく必要がある。しかしながら、そのような配慮がなされた、気体透過膜を使用した装置はこれまでなかった。
したがって本発明の目的は、上記のような問題点から気体透過膜を用いた装置において、通常運転時にはその運転の障害にならず、かつ、膜崩壊時にはガスの大量放出を抑えることができる装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み、通常運転時にはその運転の妨げにならず、かつ、膜崩壊時にはガスの放出量を最小限に抑える手段について鋭意検討を重ねた結果、減圧弁と抵抗体をある条件下で組み合わせた流量制御手段を透過室の出口から下流に配置するのが非常に有効であるということを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)気体透過膜で隔離された供給室と透過室とを有する気体透過膜使用装置であって、減圧弁とその下流にある抵抗体からなる流量制御手段を透過室出口下流に有し、かつ、減圧弁の2次側設定圧が通常運転時の1次圧より高く設定してあることを特徴とする気体透過膜使用装置、
(2)通常運転時の減圧弁の2次圧がその設定圧以下であることを特徴とする(1)に記載の気体透過膜使用装置、
(3)透過室出口下流でかつ流量制御手段の上流に背圧弁を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の気体透過膜使用装置、
(4)流量制御手段上流の圧力上昇により膜の崩壊を検出することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置、
(5)気体透過膜の崩壊を検出した際、供給室入口の流入量を制限する機構を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置、
(6)使用する気体透過膜が水素透過膜であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置、
(7)使用する気体透過膜がパラジウム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ニッケル、白金、ルテニウム、ニオブ、タンタル、マグネシウム、カルシウム、ランタンからなる群より選ばれる金属又は合金の1種又は2種以上であることを特徴とする(6)に記載の気体透過膜使用装置、
(8)使用する気体透過膜がセラミックスあるいは炭素から構成されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置、
(9)気体透過膜使用装置が気体透過膜性能評価装置であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置、
(10)気体透過膜使用装置が水素透過膜性能評価装置であることを特徴とする(9)に記載の気体透過膜使用装置、
(11)気体透過膜使用装置が水素分離装置、水素同位体分離装置又は膜反応器であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置、及び、
(12)気体透過膜使用装置が燃料電池システムの一部であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置、
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好ましい実施の態様について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図の説明において同一の要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
本発明の装置の一実施態様について、図1を参照して説明する。
本発明の気体透過膜を使用した装置は、気体透過膜ユニット1の内部は、気体透過膜2で供給室3と透過室4に隔離されている。供給室3入口には透過対象となるガスを導入する配管6、減圧弁7および供給室入口配管8からなるガス供給ラインが、供給室3出口には膜を透過しなかったガスを速やかに取り出すための供給室出口配管9、流量調節バルブ10および配管11からなる未透過ガス排出ラインが接続されている。一方、透過室4出口には透過室のガスを取り出す透過室出口配管15などからなるガス取り出しラインが接続されている。本発明においては、このガス取り出しラインに減圧弁21および抵抗体23からなる流量制御手段が接続されている。
【0008】
一般に減圧弁は、1次側から供給されるガスの圧力を減じて2次側をある設定圧P0に保持するものであり、圧力調整器、調圧弁、レギュレータ等とも呼ばれ、1次側の圧力(1次圧)PpをP0より高くして使用するものである。しかし、本発明では、ガス取り出しラインに設ける減圧弁の2次側設定圧P0を通常運転時の1次圧より若干高く設定しておく。この時、2次側のガスが外部へ流出可能なら、2次圧Prは1次圧を越えることはない、すなわち通常運転時の減圧弁21の2次圧が設定圧P0以下となる。
本発明では、この下流に抵抗体23が設けられる。抵抗体とは、ガスの流れを妨げ、その前後で圧力差を生じるものであり、具体的には、ニードルバルブ等の流量調節バルブあるいは抵抗管等があげられる。粒子除去のためのフィルターや単に細く長い配管であっても構わない。また、減圧弁下流に他の目的で設けられた装置が上記の抵抗体の機能を持つのであれば、これを本発明の抵抗体と見なすことができるので、改めて抵抗体を配置する必要はない。いずれでも、抵抗体の前後に生じる圧力差Pr−Pbは流量Qとともに増加する。なお、Pbは抵抗体下流の圧力であり、外界に開放されていれば、大気圧であり一定となる。
【0009】
そして、気体透過膜が崩壊した場合、加圧されていた供給室内およびそれに接続されている配管内のガスが透過室に一気に流入し、これが抵抗体を通って外部に流出する。その流量がある流量Q0まで増加すると抵抗体が生じる圧力差によって、減圧弁の2次圧PrがP0に達する。ところで、減圧弁によってこれ以上の圧力にはならないよう制限されるので、したがって、Q0以上のガスが抵抗体23の方へ流出することはない。
このような機能を実現するために、設定圧P0は通常運転時の減圧弁の1次圧より大きく、かつできるだけ低圧に設定するのが好ましい。なぜなら、抵抗体の一定の気体通過抵抗に対して、P0をあまり大きくとるとQ0、すなわち、膜崩壊時に放出される最大流量も大きくなって、本来の目的を達成できなくなるからである。
また、抵抗体は通常運転時に支障がなく、かつできるだけ大きな気体通過抵抗を有するものを選定すべきである。なぜなら、通過抵抗が大きいほどQに対する抵抗体の圧力差の変動が大きいので、設定圧P0と通常運転時の減圧弁の1次圧の差を大きくとることができ、P0の設定が容易となる。P0の設定の観点から、抵抗体は調節可能な流量調節バルブとするのが好ましい。
なお、このような機構により流量を制御するのであれば、減圧弁と抵抗体の前後あるいはその間に他の部品が入っていても構わないことは言うまでもない。
【0010】
ところで、気体透過膜使用装置によっては、透過室の圧力を制御しなければならない場合がある。この場合は、本発明では透過室出口下流でかつ流量制御手段の上流に背圧弁あるいは流量調節バルブ等の圧力制御器を設ければよい(図3の背圧弁25を参照)。
また、気体透過膜が壊れ大量のガスが透過室出口から流出しようとすると、そのガス流量に応じて減圧弁2次圧、ひいては減圧弁1次圧が上昇する。したがって、流量制御手段上流の圧力上昇から膜の崩壊を容易に検出することができる。
さらに、膜の崩壊を検出した際、供給室入口の流入量を制限する機構、例えば流量制御バルブ等を設けるのが好ましい。こうすることにより、膜崩壊後のガスの浪費をより一層低減させることができる。そのうえ、装置全体の停止動作など、その他に必要な措置もとるよう連動していればより好ましい。
【0011】
ところで、抵抗体のみを用いても、膜崩壊時のガスの流出をある程度抑えることができる。しかしながら、崩壊前後で透過側の圧力は大きく変化するので、それに合わせて抵抗体の流量も大きく変化する。本発明では、その前段に減圧弁を設けることにより、気体透過膜崩壊前後のこの流量差を小さく抑えることが初めて可能となる。
減圧弁と抵抗体からなる流量制御手段の代わりに電子制御による流量制御装置からなる流量制御手段を配置するのも一つのアイディアである。しかし、電子制御には必ず応答の遅れがあり、したがって、膜崩壊直後には相当量のガスが流量制御装置を通して流出してしまう恐れがある。しかも、本発明の流量制御手段に比べ電子制御の流量制御装置は高価であり、現時点では実用的とは言えない。
また、流量制御手段を供給室入口上流に配置し、ガスの流入量を制限することにより膜崩壊時のガスの放出流量を抑えることも可能である。しかしながら、気体透過セル内にあったガスは膜崩壊とともに透過室出口を通して一気に放出されるので、気体透過セルの容積が大きい場合は安全上の問題があり、当初の課題を解決する方法として適切とは言えない。
【0012】
本発明で用いられる気体透過膜としては、パラジウム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ニッケル、白金、ルテニウム、ニオブ、タンタル、マグネシウム、カルシウム、ランタンからなる群より選ばれる金属又は合金の1種又は2種以上からなる膜を挙げることができる。
具体的には、優れた水素選択性と透過速度を有するパラジウム系合金膜、パラジウム膜、アモルファスパラジウム−シリコン系合金膜、バナジウム系合金膜、バナジウム膜、アモルファスジルコニウム−ニッケル系合金膜、ジルコニウム膜、アモルファスハフニウム−ニッケル系合金膜、ニオブ系合金膜、ニオブ膜、タンタル膜、アモルファスチタン−鉄合金膜、チタン−ニッケル合金膜、チタン−銀合金膜、アモルファス希土類−ニッケル系合金膜、ジルコニウム−鉄−マグネシウム合金膜、ジルコニウム−鉄−カルシウム系合金膜等が好ましい。これらはそれぞれ単独で用いられることもできるが、バナジウム−ニッケル合金膜をはじめとするいくつかの合金膜は、表面にパラジウムや白金などといった他の金属を被覆した形で用いられてもよい。
さらに、セラミックス膜や炭素膜も他の気体をいくらか透過するが水素透過膜として使用することができる。
また、水素透過速度の向上を目指して、アルミナ等からなる多孔質体を支持体とし、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム等をその表面に被覆、あるいはその細孔内に充填または担持させたものも水素透過膜として用いられる。
【0013】
水素透過能を発現する金属または合金を利用した水素透過膜は、一般に水素雰囲気にさらすと膜の強度が低下することが知られており、使用中に崩壊する可能性がある。従って、上記の膜に限らず今後開発されるものも含め、気体透過膜が水素透過膜である気体透過膜を使用する装置において、本発明は特に有効に機能するものである。
具体的には、気体透過膜使用装置が水素透過膜性能評価装置である場合、本発明は特にその効果を発揮することができる。水素透過膜の研究・開発においては、機械的特性が未知の新規な膜の水素透過速度や機械的強度を調べる必要がある。その場合、性能評価試験中に膜が崩壊する可能性が極めて高く、本発明の安全機構が必要となる。
【0014】
他に水素透過膜を用いる装置として、水素分離装置、水素同位体分離装置あるいは膜反応器等があげられるが、本発明はこのいずれにも適用可能である。水素分離装置としては、メタン、メタノール、ガソリン等の水蒸気改質により得られた二酸化炭素等を含む混合ガスから水素を取り出す水素製造装置、化学プラントのオフガスに含まれる水素を回収するための水素分離装置、粗製水素に含まれる不純物を除去する水素精製装置等があげられる。
また、水素同位体分離装置は水素透過速度が水素同位体によって異なることを利用して、たとえば重水素と軽水素を分離するものである。
【0015】
この膜反応器は、触媒と透過膜を1つの反応器内に配置したものであるが、この気体透過膜として水素透過膜を用いることができる。この膜反応器を用いて化学反応を行うことにより、反応生成物のうちの水素のみを反応領域から除去したり、膜を通して水素を反応領域に供給したりすることによって、反応の促進や制御ができる。
また、一口に膜反応器と言っても様々なものがあり、たとえば、敢えて触媒を反応器内に充填するのではなく水素透過膜自体が持つ触媒活性を利用したものなどもあるが、本発明がこのような様々な膜反応器に対しても有効であり、応用できることは言うまでもない。
また、水素分離装置や膜反応器は燃料電池システムに組み込むことが広く検討されている。燃料電池システムは家庭や自動車での応用が期待されているが、この場合、可燃性ガスの大量放出は危険を伴うことから、本発明が最も効力を発揮する応用分野の一つである。
【0016】
以上、主に水素透過膜使用装置を例に説明したが、本発明は水素透過膜以外の他の気体透過膜を使用する装置についても、気体分離装置、同位体分離装置、又は膜反応器として同様に有効である。
本発明では、セラミックス膜、例えば、イットリア安定化ジルコニア(通称YSZ)膜を酸素分離膜として使用可能である。そして、この膜を用いて大気中から酸素を分離しつつ膜の裏側に原子状の酸素を供給し、その表面においてエタンの脱水素化を行う膜反応器として利用することができる。
水素透過膜に限らず、気体透過膜は一般に膜両側の分圧差を駆動力に気体を透過するものである。したがって、膜の供給室は通常加圧状態にあり、水素透過膜と同様、膜崩壊時のガスの大量流出の問題があった。とりわけ、気体分離膜として近年盛んに研究・開発が進められているアルミナ、シリカあるいはジルコニアを主成分としたセラミックス膜、ポリイミド等の高分子膜を焼成して得られる炭素膜、あるいはそういった膜を支持体としてゼオライト等他の素材を形成させた複合膜は、一般に脆いものである。したがって、それらを気体透過膜として使用した装置において、安全な本発明の装置が当然利用できる。また、上記の膜を含む様々な気体分離膜の研究・開発において、本発明を適用した気体透過膜性能評価装置が安全で使いやすいことも、水素透過膜性能評価装置の場合と同様であることは言うまでもない。
【0017】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1は、本発明の水素透過膜性能評価装置の具体的な構成を示すものである。
先ずこの装置の構成を図1にしたがって説明する。恒温槽5の中に配置された気体透過膜ユニット1の内部は、パラジウム合金からなる水素透過膜2で供給室3と透過室4に分断されている。供給室3入口には透過対象となるガスを導入する配管6、減圧弁7および供給室入口配管8からなるガス供給ラインが、供給室3出口には膜を透過しなかったガスを速やかに取り出すための供給室出口配管9、流量調節バルブ10および配管11からなる未透過ガス排出ラインが接続されている。一方、透過室4入口には一定流量でスイープガスを供給するための配管12、流量制御装置13および透過室入口配管14からなるスイープガス導入ラインが、透過室4出口には透過室のガスを取り出し、膜の透過速度を評価するための透過室出口配管15などからなるガス取り出しラインが接続されている。本発明の流量制御手段は減圧弁21および抵抗体として流量調節バルブ23から構成されており、透過室出口配管15に接続されている。水素透過膜の透過速度評価のために、ガスクロマトグラフ16および流量計17が流量制御手段の下流に配置されている。また、19は開閉バルブ、20は圧力検出器である。
【0018】
次にその使用方法について説明する。
配管6より導入した水素あるいは水素を含む混合ガスは減圧弁7を用いて所定の圧力に減圧した後、供給室入口配管8を通して供給室3に供給する。供給した水素の一部は水素透過膜2を透過して透過室へと移動する。透過しなかった残りのガスは供給室出口配管9を通して排出する。その流量は、流量調節バルブ10を用いて調節する。一方、透過室4には、流量制御装置13を用いて流量を一定に制御したArを透過室入口配管14を通して導入する。このArおよび水素透過膜2を透過してきた水素の混合ガスを透過室出口配管15を通して取り出し、ガスクロマトグラフ16で水素の組成C[%]を、流量計17で流量Q[mL/min]を測定する。これらの測定値から膜の水素透過速度としてQC/100 [mL/min]を得る。
【0019】
Pbは大気圧で、通常 (Pp−Pb) = 5 kPa 、Q=60mL/min 付近で使用することを想定し、設定圧P0はPb+22.9 kPa 、Q0は210 mL/minになるように設定した。
図2(a)に示すグラフは、実施例1における配管15から配管24までを取り出しQ [mL/min]、すなわち流量調節バルブ23を流れる流量と、減圧弁21の1次圧Ppと流量調節バルブ23下流の圧力Pbの差の関係を実験により得たものである。配管14、透過室4、透過室出口配管15にガスの流れを妨げるものがなければ、それらの中の圧力はいずれもPpとなる。同様に、配管24およびその下流にガスの流れを妨げるものが特になく、配管18が大気に開放されているなら、それらの中の圧力はいずれもPbで、大気圧となる。
図2(b)に示すグラフは、実施例1における減圧弁21の一次圧Ppと大気圧Pbの差(Pp− Pb)と配管22内の圧力Prと大気圧 との差(Pr− Pb)との関係を実験により得たものである。
【0020】
通常運転時の流量Qが60mL/minである場合、透過室の圧力PpはPbとほとんど変わらず、その差は5 kPaである。膜が崩壊すると、加圧されていた供給室3のガスが透過室4に一気に流入する。しかしながら、減圧弁21により配管22内の圧力Prは図2(b)に示されるように設定値P0(図では大気圧+22.9kPa)より常に小さく、この値に漸近しこの値で頭打ちとなり、その結果、図2(a)実線のようにQ0(図では210mL/min)以上のガスは流れない。もし減圧弁や抵抗体としての流量調節バルブがなければ、PrはP0に制限されないので、破線のように透過室の圧力に応じてガスが流れる。透過室の圧力によっては数百mL/min以上のガスが流出する。これは、通常運転時の流量60mL/minを前提としている装置において、数百mL/min以上の際の対策を改めて講じなければならないことを意味している。
【0021】
さらに、図1に示した水素透過膜性能評価装置において、配管24以下に十分な通過抵抗がある場合に抵抗体である流量調節バルブ23を省略した場合の透過側の圧力と透過側出口流量Qの関係を図2(c)に示した。Pbは大気圧で、通常 (Pp−Pb) = 15 kPa 、Q=60mL/min 付近で使用することを想定し、設定圧P0はPb+30kPa、Q0=120 mL/minに設定した。
図2(c)に示すとおり、Qは120 mL/minで頭打ちとなった。抵抗体に相当する機能を持つものがあれば、抵抗体を省略することができるのも明らかである。
【0022】
膜が崩壊して、流量調節バルブ23の流量Qが増えると流量制御バルブ23の作用によって配管22の圧力Prは上昇する。これにともなって減圧弁21の1次圧Ppも上昇する。減圧弁21の2次圧Prが設定圧P0に達した後さらに減圧弁21にガスが流入しようとすると、減圧弁21と流量調節バルブ23の作用でガスの流れがQ0に制限されるため、減圧弁の1次圧Ppは一層急激に増加する。したがって、Ppを圧力検出器20を用いてモニターし、これがある基準(例えば大気圧+20kPa)を越えたところで、膜が崩壊したと判定し、これと連動して開閉バルブ19を閉じて水素を含むガスの供給を停止することができる。その後、気体透過セルに残留する水素等のガスを除去したり、恒温槽の温度を下げるなどの測定終了操作を自動的に行う。
【0023】
また、本装置を用いて水素透過時の膜の強度を調べるには、供給室3の圧力を上げながらPpを圧力検出器20でモニターすればよい。Ppあるいはその変化量がある適当な基準を越えたところで膜の崩壊を検知できるから、その直前の供給圧を膜強度の指標として用いることができる。本発明を適用したことにより膜が崩壊しても大量の水素を放出するといった危険がないので、安心して供給室3の圧力を上げることができる。なお、供給室3の圧力上昇とともに透過室4出口の流量Qは増大するので、測定圧力域で支障がないようQ0を大きめに調整しておく。
このように本発明の気体透過膜使用装置を用いることにより、膜が崩壊した際にも大量の水素等の可燃性ガスを放出しないので、供給ガスの浪費を抑え、かつ安全な装置とすることができる。しかも、その崩壊を容易に検出して速やかに対応をとることができる。
【0024】
(実施例2)
図3は本発明の気体透過膜性能評価装置の構成を示すものである。
前記実施例1では透過側にスイープガスを流入して、透過してきた水素を追い出す構造であった。これは、パラジウム合金膜のように特定のガス(実施例1では水素)のみが透過し、透過量が少ない場合は必要である。しかし、高分子膜やセラミックス膜、炭素膜など多くの膜に対しては、ガスの透過量が大きいため、以下に説明する実施例2に示すように、スイープガスを用いない方法が望ましい。
実施例2の性能評価装置は実施例1のそれとほとんど同じ構造であり、異なるのは、透過室入口配管14より上流を削除したことと、透過室出口のガス取り出しラインに背圧弁25を設けたことである。これにともない圧力検出器20を背圧弁25と減圧弁21の間に移動したものである。
【0025】
次にその使用方法について説明する。
配管6より導入した試験ガスは減圧弁7を用いて所定の圧力に減圧した後、供給室入口配管8を通して供給室3に供給する。気体透過膜2を透過しなかった残りのガスは供給室出口配管9を通して排出する。その流量は、流量調節バルブ10を用いて調節する。透過室4の圧力は背圧弁25を用いて調節する。供給室3と透過室4の圧力差を駆動力として、供給した試験ガスの一部は透過室4に流れ、その流量Q [mL/min]を流量計17を用いて測定する。
試験ガスが混合ガスなら透過側のガスも一般に混合ガスとなる。その組成C [%]をガスクロマトグラフ16を用いて分析すれば、それぞれのガス種の透過速度としてQC/100 [mL/min]が得られる。
【0026】
実施例1と同様に、このように本発明を用いることにより、何らかの理由で気体透過膜が崩壊しても、先に詳述したように減圧弁21と抵抗体である流量調節バルブ23で決定されるQ0より多くのガスは配管18を通して排出しないので、供給ガスの浪費を抑え、かつ安全な装置とすることができる。しかも、その崩壊を容易に検出して速やかに対応をとることができる。膜の強度試験が安全に行える点も、実施例1と同様である。
なお、圧力検出器20は透過室4内の圧力をモニターしても良いが、本実施例のように背圧弁25と減圧弁21の間をモニターした方が、崩壊の基準とする圧力を透過室4内の圧力に拘わらず一定値にできるので便利で、確実である。
【0027】
(実施例3)
図4は本発明を適用した燃料電池の水素供給システムである。
実施例1の配管12および流量制御装置13を除き、ガスクロマトグラフ以下を燃料電池発電ユニットに置き換えた構成となっている。
次に使用方法について説明する。
配管6より水素を含む燃料ガスを供給すると、水素のみが水素透過膜2を透過し、得られた高純度水素は配管24を通して燃料電池発電ユニット27へ供給される。この水素は配管26から供給される空気中の酸素と反応し電力が得られる。未使用のガスや生成した水蒸気等のガスは配管28を通して排出される。
【0028】
実施例1と同様、このように本発明を用いることにより、何らかの理由で気体透過膜が崩壊しても、減圧弁と流量調節バルブで決定されるQ0より多くのガスは配管24を通して排出しないので、水素を含む燃料ガスの浪費を抑え、かつ安全な装置とすることができる。さらに、圧力検出器20を用いて透過室4内の圧力を検知し容易に膜崩壊を検出し、速やかにその対策を講じることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の気体透過膜を用いた装置によれば、通常の運転ではその運転の障害にならず良好に機能し、かつ、気体透過膜が崩壊した時には、ガスの大量放出を抑えることが、容易に、確実にできる。可燃性のガスを分離対象とする水素透過膜を用いた装置では、安全装置として特に有効に機能する。とりわけ、金属膜、セラミックス膜、炭素膜等、膜崩壊の可能性が高い膜の研究・開発において用いられる透過速度評価装置や高圧耐久性評価装置で威力を発揮する。しかも、本発明は安価で簡素であり、かつ、構造の自由度が大きいため汎用性も高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の水素透過膜性能評価装置の構成を示す説明図である。
【図2】実施例1の流量制御手段の流量と減圧弁の1次側圧力の関係および減圧弁の1次側と2次側の圧力の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例2の気体透過膜性能評価装置の構成を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例3 の燃料電池の水素供給システムの構成を示す説明図である。
【図5】従来例の水素透過膜性能評価装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1 気体透過膜ユニット
2 気体(水素)透過膜
3 供給室
4 透過室
5 恒温槽
6 配管
7 減圧弁
8 供給室入口配管
9 供給室出口配管
10 流量調節バルブ
11 配管
12 配管
13 流量制御装置
14 透過室入口配管
15 透過室出口配管
16 ガスクロマトグラフ
17 流量計
18 配管
19 開閉バルブ
20 圧力検出器
21 減圧弁
22 減圧弁2次側配管
23 抵抗体(流量調節バルブ)
24 配管
25 背圧弁
26 配管
27 燃料電池発電ユニット
28 配管
Claims (12)
- 気体透過膜で隔離された供給室と透過室とを有する気体透過膜使用装置であって、減圧弁とその下流にある抵抗体からなる流量制御手段を透過室出口下流に有し、かつ、減圧弁の2次側設定圧が通常運転時の1次圧より高く設定してあることを特徴とする気体透過膜使用装置。
- 通常運転時の減圧弁の2次圧がその設定圧以下であることを特徴とする請求項1に記載の気体透過膜使用装置。
- 透過室出口下流でかつ流量制御手段の上流に背圧弁を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の気体透過膜使用装置。
- 流量制御手段上流の圧力上昇により膜の崩壊を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置。
- 気体透過膜の崩壊を検出した際、供給室入口の流入量を制限する機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置。
- 使用する気体透過膜が水素透過膜であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置。
- 使用する気体透過膜がパラジウム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ニッケル、白金、ルテニウム、ニオブ、タンタル、マグネシウム、カルシウム、ランタンからなる群より選ばれる金属又は合金の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項6に記載の気体透過膜使用装置。
- 使用する気体透過膜がセラミックスあるいは炭素から構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置。
- 気体透過膜使用装置が気体透過膜性能評価装置であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置。
- 気体透過膜使用装置が水素透過膜性能評価装置であることを特徴とする請求項9に記載の気体透過膜使用装置。
- 気体透過膜使用装置が水素分離装置、水素同位体分離装置又は膜反応器であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置。
- 気体透過膜使用装置が燃料電池システムの一部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の気体透過膜使用装置。
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