JP3693209B2 - 閉鎖小胞の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は脱水ミセル粒子又は脱水両親媒性ミセル二重層からなる閉鎖小胞を特定の条件で再水和する工程を含む閉鎖小胞の製造方法および該方法を用いて得られる閉鎖小胞に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
リポソームは脂質ミセル二重層からなる閉鎖小胞である。この脂質相に脂溶性物質を、内部水相に水溶性物質を封入でき、低分子化合物のみならず蛋白質などの高分子物質まで担持できること、さらに生体適合性が高いことから、薬物、タンパク質、核酸などのドラッグ・デリバリー・システム(DDS)用キャリアーとして数多くの研究がなされている。近年、薬剤の封入による毒性低減、血中滞留性の改変に加え、リポソーム表面修飾によるターゲティング機能等が付与されたリポソームの実用化研究も進展している。
【0003】
しかしながら、本来リポソームのミセル構造は熱力学的に安定性が高いとはいいがたく、実用化に際して長期保存法の確立が不可欠である。
長期安定性確保を目的としてエヴァンスらは特開昭53−142514号公報でリポソーム溶液から水を除去し安定な乾燥脂質状態とした後、必要に応じて水溶液を加える(再水和する)ことでリポソームを再生する「脱水法」を開示した。これにより乾燥粉末形態で長期保管の可能性が示されたが、さらに脱水に伴うリポソームの凝集融合、内封物の漏れを低減化すべくその後の改良検討がなされてきた。
【0004】
例えば、脱水時の保護剤の観点からは、特公昭61−21449号公報でデキストラン、アラビアゴム等、親水性化合物をリポソーム溶液に添加し凍結乾燥する方法、特表昭62−501631号公報にはトレハロース、シュークロース等の2糖類を含有するリポソーム溶液の凍結乾燥法が開示されている。さらに特開平7−145041号公報で抗腫瘍剤を内部に封入したリポソームについて凍結乾燥法以外の方法で脱水されたリポソームが、特開平7−145043号公報では前凍結なしに脱水し、かつ残存水分量を2〜5%にする方法が開示されている。
【0005】
また、再水和溶液については特開昭53−142514号公報では凍結乾燥リポソームを50℃〜70℃で加温分散した例が記載されている。
しかしながら、これらの方法では脂質組成、内封物によって数十%から10%程度の漏出(リーク)が認められ、リポソームの安定性は必ずしも十分でなかった。
【0006】
このような内封物のリークは、特に内封物のリークによる影響が大きいアッセイ用リポソーム、生理活性の高い抗腫瘍剤のごとき薬剤を封入したリポソームでは影響が大きい。抗腫瘍剤封入リポソームを臨床応用する場合、リポソーム化によりなされた副作用の低減化が妨げられること、ターゲティング等の効果の低下が考えられ、たとえ10〜30%程度の量であっても重要な問題であった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる従来の問題点を解決すべく検討した結果、従来検討されてきた方法に加え、むしろ再水和条件が重要であること、特に再水和時の分散液の温度が影響大であることを見いだした。驚くべきことに、従来示されていたリポソーム溶液をはじめとする閉鎖小胞の加温とは逆に再水和時に冷却することにより内封物のリークが極めて抑制されること、さらに一旦低温環境で再水和した閉鎖小胞は常温に戻したのちも安定性が大きく向上していることを見いだした。本発明はこの知見を基にして完成されたものである。
【0008】
すなわち本発明は、脱水ミセル粒子または脱水両親媒性ミセル二重層からなる閉鎖小胞を再水和溶液で再水和するにあたり、再水和を低温条件下で行うことを特徴とする閉鎖小胞の製造方法を提供するものである。
【0009】
その他、発明の要旨として以下が挙げられる。
(1)脱水ミセル粒子又は脱水両親媒性ミセル二重層からなる閉鎖小胞を再水和溶液で再水和するにあたり、再水和を10℃〜0℃の温度範囲内で行うことを特徴とする閉鎖小胞の製造方法。
(2)閉鎖小胞が医薬品又は診断用薬剤が導入された閉鎖小胞であることを特徴とする上記1記載の製造方法。
(3)医薬品が抗腫瘍剤であることを特徴とする上記2記載の製造方法。
(4)抗腫瘍剤がアドリアマイシン、ダウノマイシン、ビンブラスチン並びにそれらの薬学的に許容し得る塩及び誘導体から選ばれることを特徴とする上記3に記載の製造方法。
(5)薬学的に許容し得る塩が多価陰イオン性物質と形成される塩であることを特徴とする上記4記載の製造方法。
(6)多価陰イオン性物質がクエン酸、酒石酸及びグルタミン酸から選ばれることを特徴とする上記5記載の製造方法。
(7)閉鎖小胞がリポソームであることを特徴とする上記1から6のいずれかに記載の製造方法。
(8)リポソームが凍結乾燥又は噴霧乾燥して得られることを特徴とする上記7に記載の製造方法。
(9)リポソームが乾燥助剤を外水相に添加することを特徴とする上記8に記載の製造方法。
(10)5%から40%の濃度の乾燥助剤を外水相に添加することを特徴とする上記8又は9に記載の製造方法。
(11)5%から20%の濃度の乾燥助剤を外水相に添加することを特徴とする上記8又は9に記載の製造方法。
(12)乾燥助剤が糖類であることを特徴とする上記9から11のいずれかに記載の製造方法。
(13)リポソームに抗体及び/又はポリエチレングリコールが付与されていることを特徴とする上記7から12のいずれかに記載の製造方法。
(14)再水和溶液がpH6から8を有する溶液であることを特徴とする上記1から13のいずれかに記載の製造方法。
(15)再水和溶液が生理食塩水であることを特徴とする上記14に記載の製造方法。
【0010】
また、本発明の要旨の別の態様として以下が挙げられる。
(16)脱水閉鎖小胞を含有する乾燥製剤及び該閉鎖小胞を再水和するための再水和溶液からなることを特徴とする医薬品キットであって、再水和溶液が10℃〜0℃の温度範囲内であることを特徴とする医薬品キット。
(17)脱水閉鎖小胞が、医薬品が導入された脱水閉鎖小胞であることを特徴とする上記16記載の医薬品キット。
(18)脱水閉鎖小胞を含有する乾燥製剤及び該閉鎖小胞を再水和するための再水和溶液からなることを特徴とする診断薬キットであって、再水和溶液が10℃〜0℃の温度範囲内であることを特徴とする診断薬キット。
(19)脱水閉鎖小胞が、診断用薬剤が導入された脱水閉鎖小胞であることを特徴とする上記18記載の診断薬キット。
【0011】
【発明の実施の形態】
本明細書において、ミセル粒子又はミセルとは、分子中に親水部分及び疎水部分を含む両親媒性分子の凝集によって得られる水溶性粒子を意味する。このようなミセル粒子又はミセルは、小球、楕円体又は長い円筒形の形態をとり得、また、後述する両親媒性分子の二つの平行な層から成る二重層、すなわち両親媒性ミセル二重層でもあり得る。
【0012】
本明細書において、閉鎖小胞とは、上記ミセル粒子又はミセルより構成される閉鎖構造物を意味するものであり、例えば、細胞、ウィルス等の天然閉鎖小胞、リポソーム、Liposome Technology 2nd edition vol.1,p142(1993)に記載されているnovasome(商品名、Micro Vesicular Systems,Inc.)、同書p157に記載されている非イオン性界面活性ベシクル(nonionic surfactanc vesicles)、高分子マイクロスフェアー等の人工閉鎖小胞を包含するものである。これらの中で、本発明において好適に用いられる閉鎖小胞はリポソームである。
ミセル粒子又はミセルを構成する両親媒性分子としては、親水部分及び疎水部分を含み、それ自体既知の通常用いられる方法によりミセル粒子又はミセルを形成し得るものであれば如何なるものであってもよく、それらの中で、好適な両親媒性分子としては脂質を挙げることができる。
【0013】
本発明に係る閉鎖小胞を構成し得る脂質としては、例えば、天然レシチン(例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン等)やジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルフォスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルフォスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルフォスファチジン酸(DMPA)等のリン脂質、スフィンゴ糖脂質、グリセロ糖脂質等の糖脂質、脂肪酸、両親媒性ジアルキルジメチルアンモニウム(dialkyldimethylammonium amphiphiles)、ポリグリセロールアルキルエーテル(polyglycerol alkyl ethers)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(polyoxyethylene alkyl ethers)等(Liposome Technology 2nd edition vol.1 141(1993))、アルキルクリコシド(alkyl glycosides)、アルキルメチルグルカミド(alkyl methyl glucamide)、アルキルスクローエステル(alkyl sucrose esters)、ジアルキルポリオキシエチレンエーテル(dialkyl polyoxyethylene ethers)、ジアルキルポリグリセロールエーテル(dialkyl polyglycerol ethers)等(Liposome Technology2nd edition vol.1 157(1993))、ポリオキシエチレン−ポリ乳酸等の両親媒性ブロック共重合体等(特表平6−508831号公報)を挙げることができる。これらの脂質は単独又は二種以上、或いはこれらとコレステロール等の非極性物質と組合せて用いられる。
【0014】
さらに、閉鎖小胞がリポソームである場合には、ステアリルアミン、ジセチルフォスフェートなどの荷電性物質、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子部分を有するリン脂質誘導体やマレイミド基を有するリン脂質誘導体を含んでも良い。また、例えば特開平4−346918号公報にあるようにこれら脂質誘導体を介し、抗体や水溶性高分子を結合したものであってもよい。また、融合リポソームとして知られるリポソームとセンダイウィルスを融合したリポソームのごとき、ウィルスの一部または全部を組み込んだものであってもよい。
【0015】
閉鎖小胞は天然由来のものをそのまま用いても良く、いかなる方法で製造されたものでも良いが、例えば閉鎖小胞がリポソームである場合は上記した素材を用いてそれ自体既知の通常用いられる製造技術を用いて製造できる。例えば、ガラス壁に付着させた脂質薄膜に水溶液を加え機械的振盪を加え形成するマルチラメラリポソーム(MLV)や、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法により得られるスモールユニラメラリポソーム(SUV)、界面活性剤除去法、逆相蒸発法(リポソーム 砂本順三ら 南江堂 1988)、MLVを均一ポア径を有するメンブランを加圧して押し出すイクストゥルージョン法等から得られるラージユニラメラリポソーム(LUV)を用いることができる(Liposome Technology, Vol.1 2nd Edition)。
【0016】
閉鎖小胞に導入し得る医薬品としては、アドリアマイシン、ダウノマイシン、ビンブラスチン、シスプラチン、5−FU(フルオロウラシル)等の抗腫瘍剤、チモロール等のアドレナリン遮断剤、クロニジン等の高血圧剤、プロカイアミド等の制吐剤、クロロキニーネ等の抗マラリア剤、並びにそれらの薬学的に許容し得る塩及び誘導体;リシンAやジフテリアトキシン等の毒素蛋白およびそれをコードするDNA、TNF等サイトカインの遺伝子をコードするDNAがあげられる。
【0017】
上記抗腫瘍剤等の薬学的に許容し得る塩としては、薬学的に許容し得る多価陰イオン性物質との塩、例えばクエン酸塩、酒石酸塩、グルタミン酸塩、及びそれらの誘導体との塩が好ましい。これら閉鎖小胞に導入し得る医薬品の中で、抗腫瘍剤を用いるのが好ましい。
閉鎖小胞に導入し得る診断用薬剤としては、放射性元素、例えばインジウム、テクネシューム等のイメージング薬剤;ヨード、ガドリニウム等の造影剤;ホースラデイッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクロシダーゼ等の酵素;ユーロピウム誘導体等の蛍光体;N−メチルアクリジウム誘導体等の発光体等が挙げられる。
【0018】
これら医薬品及び診断用薬剤の閉鎖小胞への導入は、それ自体既知の通常用いられる方法で行うことができる。例えば、閉鎖小胞がリポソームである場合は、リポソーム形成時に水溶液として添加し封入しても良く、またリポソーム形成後ベシクル内外にpH勾配等の濃度勾配を形成させ、このポテンシャルを駆動力としてイオン化可能な薬剤を取り込ませる方法(Cancer Res.49 5922(1989),BBA 455,269(1976))を用いても良い。
【0019】
閉鎖小胞の脱水は、凍結乾燥または噴霧乾燥等の公知の方法を用いることができるが、好ましくは凍結乾燥である。さらに凍結乾燥助剤として糖類、例えばシュークロース、トレハロース等を添加することができる。糖類は、リポソーム脱水時少なくとも外水相に添加して用いることができる。外水相に添加し得る糖類の濃度は、通常5〜40%、好ましくは5〜20%が適当である。
【0020】
再水和溶液は、生理食塩水等の塩類を含んだ水溶液、リン酸緩衝液等の中性緩衝液、ブドウ糖等の糖溶液あるいはそれらの混合物を用いることができる。再水和溶液のpHは6から8程度の中性領域が好ましく、さらに好ましくはpH6.5からpH7.5程度である。pH緩衝剤は、再水和溶液に加えて用いることもできるが、リポソーム凍結乾燥時点でリポソーム側に含有するか、あるいは再水和溶液と凍結乾燥リポソームの両方に含有していても良く、再水和時に閉鎖小胞を含有する水溶液が中性領域のpHを呈していれば如何なる方法で加えても良い。pH緩衝剤の濃度は、通常1〜100mM、好ましくは5〜50mMが適当である。
【0021】
上記閉鎖小胞及び再水和溶液は、好ましくは、適当な水性媒体に懸濁された閉鎖小胞及び再水和溶液を、それぞれ滅菌濾過し次に適当なバイアル又はアンプル等の薬剤容器に無菌的に充填し、再水和溶液はそのまま、閉鎖小胞は凍結乾燥等により脱水して密封される。
【0022】
再水和は、低温条件下で、上記再水和溶液に脱水閉鎖小胞を分散させることにより行うことができる。ここで、低温条件とは室温よりも低い温度、通常約20℃程度以下、すなわち、約20℃程度から再水和溶液が凍結せずに溶液状態として存在し得る程度の温度範囲をいい、約10℃〜0℃程度の温度範囲が好ましい。
【0023】
再水和時の低温条件は、上記温度範囲であれば如何なる方法で惹起されたものであっても良い。例えば、脱水閉鎖小胞が入ったバイアル等の薬剤容器及び再水和溶液のいずれか一方又は両者を予め低温に冷却しておいても良いし、或いは再水和時に、適当な冷媒で低温条件に冷却しながら再水和溶液に脱水閉鎖小胞を分散させても良い。
【0024】
再水和時間は、閉鎖小胞が再水和溶液に均一に分散可能な時間であれば特に制限はなく、用いる容器の大きさ及び攪拌速度等によっても異なるが、通常は1分間程度以内である。この間上記低温条件に保てば、導入物のリークが少く、安定に脱水閉鎖小胞の再水和ができる。
【0025】
上記の如く再水和して得られた閉鎖小胞を含有する組成物、例えば医薬品が導入されたリポソームを含有する医薬組成物は、癌等の各種疾患に対して血管内投与法や膀胱内、腹腔内投与、局所投与法で用いることができる。投与量は封入薬剤により適宜調整できるが、アドリアマイシン封入体を例にとればアドリアマイシンとして、10mg/kg以下、好ましくは5mg/kg、より好ましくは1mg/kg以下で用いることができる。
【0026】
本発明においては、医薬品及び診断用薬剤が導入された脱水閉鎖小胞を含有する乾燥製剤および該閉鎖小胞を再水和するための再水和溶液からなる、2本セットの医薬品及び診断薬キットの他、医薬品及び診断用薬剤を含有する凍結乾燥製剤と脱水閉鎖小胞を含有する乾燥製剤が、別の薬剤容器に充填され、それらと、再水和溶液からなる、3本セットの医薬品及び診断薬キットも、その範囲に含まれる。3本セットのキットの場合は、脱水閉鎖小胞を含有する乾燥製剤を、上記で記載したような方法で(低温条件下に)再水和し、この再水和小胞溶液に、あらかじめ適当な溶媒で溶かした医薬品又は、診断用薬剤を添加すると、上記で記載したベシクル内外のポテンシャルにより、閉鎖小胞内に医薬品又は診断用薬剤を取り込ませることが可能である。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細な説明をするが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0028】
実施例1
ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、コレステロール(chol)、ε−マレイミドカプロイルジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比18/10/0.5でクロロホルムに溶解し、ロータリーエヴァポレーターで減圧乾燥した。さらに真空ポンプで減圧し残存溶媒を除去した。得られた脂質フィルム100mgに対し1mlの割合で0.3Mクエン酸緩衝液(pH4.0)を加え60℃で加温しボルテックスミキサーで振盪乳化することでMLVを作製した。このMLVをイクストゥルーダー法により整粒した。すなわち0.2μmヌクレオポアメンブランを装着したイクストゥルーダー(日油リポソーム社製)、さらに0.1μmのヌクレオポアメンブランに順次通すことでLUVリポソームを作製した。リポソーム外水相を1Nの水酸化ナトリウム溶液で中和し、60℃に加温しつつ20mg/mlのアドリアマイシン(ADM)水溶液を脂質100mgに対し10mgの割合で添加した。95%以上のADMはリポソーム内外のpH勾配によりリポソームに装填された。さらに、未封入ADMをゲル濾過で除き、リポソーム外液を10%シュクロースに調整したのち凍結乾燥により脱水リポソームとした。
【0029】
凍結乾燥リポソームに対して、氷冷した50mMリン酸緩衝液(pH7.5)を凍結乾燥前の容量になるよう添加しバイアルを振盪し再水和した(再水和時の温度0℃)。
【0030】
その一部をPBSで平衡化したNAP−10(ファルマシア製)カラムでゲル濾過することでリポソーム封入ADMおよびリークしたADMを分離した。
【0031】
リポソーム中のADMは0.3M塩酸/50%エタノールを加え60℃で抽出、500nmの吸光度により定量した。遊離ADMはそのまま500nmの吸光度から定量した。その結果、リーク量は3%以下であり単に凍結融解したリポソームと同程度であった。また、凝集等も認められなかった。
【0032】
比較例1
再水和液を室温(25℃)の蒸留水に代えること以外は実施例1と同様にリポソームを調製、再水和した。凝集等は認められなかったが、15%から25%程度のADMのリークが認められた。
【0033】
実施例2
特開平5−304987号公報に記載のGAH抗体(胃癌反応性モノクロナール抗体)にイミノチオランを反応させることでチオール基を有する抗体をBiochemistry,12,3206(1973)に記載の方法で調製した。また、2,4−ビス(ポリエチレングリコール)−6−クロロ−s−トリアジンにシスチンを反応後還元して、チオール基を有するポリエチレングリコール(PEG)を調製した。
【0034】
さらに、実施例1と同様に調製したリポソームと、チオール化抗体およびチオール化PEGを順次反応させることで、抗体とPEGを結合したリポソームを作製した。外水相を10%シュクロースとし凍結乾燥した。凍結乾燥したリポソームに0℃〜30℃の50mMリン酸緩衝液(pH7.5)を添加、分散後、同様にADMリーク量を測定した。その結果、図1に示す様に再水和溶液の温度に依存したリークの増加が認められた。
【0035】
実施例3
実施例2と同様に作製した凍結乾燥リポソームに0℃の50mMリン酸緩衝液(pH7.5)を添加、分散後、ゲル濾過カラム(NAP−10、ファルマシア社製)に添加し再水和過程で生じたADMを除去した。さらに37℃の水浴で1時間加温したのち、新たに生じたADMのリークを測定したところほぼ全量が保持されており、一旦低温で再水和された後は加温しても安定であった。
【0036】
比較例2
再水和溶液を室温(25℃)の生理食塩水にする以外は実施例3と同様にして再水和以降のリークを測定したところ、37℃、1時間の加温で約6%のADMのリークが新たに生じていた。
【0037】
実施例4
ヒト胃癌組織から樹立した胃癌細胞株B37(実施例2で用いたGAH抗体と反応性を有する)を用い実施例2の抗腫瘍抗体およびPEGを結合したADM封入リポソームのin vitroの抗腫瘍効果を確認した。
【0038】
培養用96穴プレートに細胞を播種、翌日細胞がプレートに付着したところで、脱水(凍結乾燥)後−20℃で5ヶ月間保管し、低温(0℃)の50mMリン酸緩衝液(pH7.5)で再水和したリポソームおよび10%シュクロースで5ヶ月間凍結保管後に融解したリポソームを添加した。37℃で1時間反応後、リポソームを除き10%血清培地を添加し培養した。5日後、生細胞率をMTT法(J.Immunol.Methods,65,55(1983))により測定し効果を比較した。
【0039】
その結果、図2に示すように、凍結乾燥/低温再水和リポソームは、凍結保存リポソームと同等の抗腫瘍活性を保持していた。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、脱水閉鎖小胞、例えば脱水リポソームから閉鎖小胞を再生する過程で生じる導入物のリーク量を極めて低減化することができ、また再水和後の安定性も高い閉鎖小胞を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アドリアマイシンのリークに及ぼす再水和溶液の温度の影響を示す図である。図中、横軸は再水和溶液の温度を示し、縦軸はアドリアマイシンのリーク量を示す。
【図2】アドリアマイシンが封入された、凍結乾燥低温再水和リポソームと凍結保存リポソームの抗腫瘍活性を示す図である。図中、横軸はリポソーム量をアドリアマイシン換算量として示し、縦軸は生細胞率を示す。
Claims (19)
- 脱水ミセル粒子又は脱水両親媒性ミセル二重層からなる閉鎖小胞を再水和溶液で再水和するにあたり、再水和を10℃〜0℃の温度範囲内で行うことを特徴とする閉鎖小胞の製造方法。
- 閉鎖小胞が医薬品又は診断用薬剤が導入された閉鎖小胞であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 医薬品が抗腫瘍剤であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 抗腫瘍剤がアドリアマイシン、ダウノマイシン、ビンブラスチン並びにそれらの薬学的に許容し得る塩及び誘導体から選ばれることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
- 薬学的に許容し得る塩が多価陰イオン性物質と形成される塩であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
- 多価陰イオン性物質がクエン酸、酒石酸及びグルタミン酸から選ばれることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
- 閉鎖小胞がリポソームであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
- リポソームが凍結乾燥又は噴霧乾燥して得られることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
- リポソームが乾燥助剤を外水相に添加することを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
- 5%から40%の濃度の乾燥助剤を外水相に添加することを特徴とする請求項8又は9に記載の製造方法。
- 5%から20%の濃度の乾燥助剤を外水相に添加することを特徴とする請求項8又は9に記載の製造方法。
- 乾燥助剤が糖類であることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の製造方法。
- リポソームに抗体及び/又はポリエチレングリコールが付与されていることを特徴とする請求項7から12のいずれかに記載の製造方法。
- 再水和溶液がpH6から8を有する溶液であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の製造方法。
- 再水和溶液が生理食塩水であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
- 脱水閉鎖小胞を含有する乾燥製剤及び該閉鎖小胞を再水和するための再水和溶液からなることを特徴とする医薬品キットであって、再水和溶液が10℃〜0℃の温度範囲内であることを特徴とする医薬品キット。
- 脱水閉鎖小胞が、医薬品が導入された脱水閉鎖小胞であることを特徴とする請求項16記載の医薬品キット。
- 脱水閉鎖小胞を含有する乾燥製剤及び該閉鎖小胞を再水和するための再水和溶液からなることを特徴とする診断薬キットであって、再水和溶液が10℃〜0℃の温度範囲内であることを特徴とする診断薬キット。
- 脱水閉鎖小胞が、診断用薬剤が導入された脱水閉鎖小胞であることを特徴とする請求項18記載の診断薬キット。
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