JP3692185B2 - 直動変換装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械などに適用される直動変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は工作機械などに使用され、摩擦駆動によって回転運動と回転力とを直線運動と直線力とに変換する従来の直動変換装置の説明図である。図において、符号11aはモータ、12aはモータ軸で、モータ軸12aは遊星ローラ13a、弾性リング14、遊星ピン15などから成る遊星ローラ減速機31の入力軸となっている。16は遊星ローラ減速機31の出力軸で本直動変換装置の駆動ローラをなし、この駆動ローラ16両端を球軸受17を介して支持するケーシング23およびケーシング蓋24には直動部材18を駆動ローラ16と共に挟持するピンチローラ19が軸受20,21を介して支持され、軸受21の外周には外形が4角形の枠22が設けられている。そして、この枠22はケーシング蓋24と押さえ板30とによって形成されている溝に嵌入されて軸受21と軸受17との間隔を調節可能にしている。また、この枠22は圧縮ばね25によりピンチローラ19が直動部材18を押さえて挟持している方向に加圧されている。27はこの圧縮ばね25の圧縮力を調節するボルトで、ケーシング蓋24に取付けられている支持板29に設けられた雌ねじと螺合している。28はロックナット、26はばね押さえである。
【0003】
このように構成された直動変換装置において、圧縮ばね25と調節ボルト27とによりピンチローラ19に必要な挟み力が与えられ、モータ11aから遊星ローラ減速機31に伝えられるバックラッシュの無い減速された回転が駆動ローラ16から直動部材18に伝えられて直線運動に変換される。これら動力を伝える機構の構成する各部材には何れも表面仕上げが施されており、寸法精度が高いことが必要である。直動部材18も寸法精度の高いものが望ましいが、多少の寸法誤差や駆動中の変形などがあってもピンチローラ19の軸受21を押さえる圧縮ばね25により直動部材18の挟持力が充分にカバーされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の直動変換装置においては、直動部材18を駆動する力は遊星ローラ減速機31の出力軸と一体の駆動ローラ16と直動部材18との間の摩擦力によって得られ、この摩擦力はピンチローラ19を介して圧縮ばね25の押圧力によって与えられるが、直動部材18の実用的な推力を得るには可成大きな圧縮ばね25が必要で、特に大きな推力を必要とする場合には圧縮ばね25を収容する部分の形状が異常に大きくなって装置全体が非常に大きくなってしまう不具合がある。
【0005】
また、駆動ローラ16、ピンチローラ19と直動部材18との接触面が加工誤差などで均等当たりしない場合や斜めに当たる場合などには直動部材18の直進性が悪く、横滑りを発生して直動部材18が停止に至ることがある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る直動変換装置は上記課題の解決を目的にしており、直動部材を駆動ローラとピンチローラとにより挟持し上記駆動ローラを回転させることにより上記直動部材を進退させる直動変換装置における上記直動部材が上記駆動ローラおよび上記ピンチローラそれぞれに接する平行な2平面を有する柱状体で形成され、上記ピンチローラが内部を中空状に形成されて両端が軸受を介して偏芯円筒内に支承され、上記偏芯円筒の回転角度と、上記ピンチローラの中空の孔径で調整された同ピンチローラの曲げ剛性とにより上記直動部材に対する押圧力を調整可能に設けられ、上記ピンチローラまたは上記駆動ローラ何れかの外周央部または両端部に環状の突起部が設けられて上記直動部材の表面に長手方向に設けた溝または上記直動部材の両側柱面と遊嵌合している。このように、本直動変換装置は直動部材がピンチローラと駆動ローラとに挟まれて押圧力を与えられ駆動ローラの回転によって直線運動をするようになっているが、ピンチローラが中空状に形成されていることによって半径方向の弾力性を生ずる。この弾力性のばね定数は中空の孔径によって曲げ剛性を変化させることにより適宜の値に調整される。また、直動部材はピンチローラと駆動ローラとにより与圧されて挟持されているが、このピンチローラの両端を軸受を介して内部に支承する偏芯円筒を回転させてピンチローラの軸芯位置を変化させることによって直動部材に与える押圧力が適宜の大きさに調整される。これらにより、直動部材の大きな推力が得られるとともに直動部材の押圧機構が簡単な構造になってコンパクトに形成される。
【0007】
また、直動部材を駆動ローラおよびピンチローラそれぞれに接する平行な2平面を有する柱状体に、ピンチローラを中空状に形成し、駆動ローラおよびピンチローラと直動部材との接触を線接触に変えて接触圧力を軽減することによって直動部材における負荷能力が増大する。また、ピンチローラ、或いは駆動ローラの外周央部または両端部に環状の突起部を設け、この突起部を直動部材に設けた溝または両側の外周柱面と嵌合させることによって直動部材における横方向への滑り移動が拘束される。
そして、上記の直動変換装置において、上記直動部材が、上記平行な2平面を有する柱状体に代えて、上記駆動ローラに接する1平面と上記ピンチローラに当接し外側に凸にクラウニングした1面とを有する柱状体で形成されてなるようにした直動変換装置は、ピンチローラの押圧力はピンチローラの曲げ変形によって生ずるため、直動部材の当接面がピンチローラの変形した外周面に沿うようになり、さらに好ましい当接状態が得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態に係る直動変換装置の説明図である。図において、本実施の形態に係る直動変換装置は工作機械などに使用され、摩擦駆動によって回転運動と回転力とを直線運動と直線力とに変換するもので、図における符号73は遊星ローラ減速機の出力軸と一体に形成されている駆動ローラ、74は駆動ローラ73の両端を支承する1対の転がり軸受、76は直動部材、77はピンチローラ、77aは突起部、78はピンチローラ77の両端を支承する1対の転がり軸受、59はピンチローラ77を内部に支承する偏芯円筒、60は偏芯円筒59の両端を支承する1対のニードル軸受、59cは開口部、59dは長孔、59eはローレントである。遊星ローラ減速機および転がり軸受74はそれぞれハウジングに固定されている。
【0009】
図1(a)に示すように、駆動ローラ73は基部および先端を転がり軸受74により支承され、転がり軸受74は止め輪とキャップとによって軸方向に位置決めされている。偏芯円筒59はニードル軸受60を介して回転自在にハウジングに支承され、3本の止めねじ65によって固定されているが、止めねじ65を緩めることによりハウジングに対して例えば55°など一定の角度α内で任意の角度だけ回転させることができる。また、ピンチローラ77は偏芯円筒59の内側に転がり軸受78を介して回転自在に支承され、転がり軸受78は偏芯円筒59内周端の段付部と止めねじと偏芯円筒59に固定されたキャップとによって軸方向に位置決めされている。
【0010】
同図(b)に示すように、偏芯円筒59はニードル軸受60を受ける外周円59aの中心Oaと転がり軸受78を受ける内周円59bの中心Obとが水平方向に僅かの距離δだけ偏芯しており、偏芯円筒59が回転することにより転がり軸受78は上下方向に一定距離ε内で僅かに移動するようになっている。偏芯円筒59の胴部の下側には開口部59cが設けられている。なお、59dは偏芯円筒59の回転を許すための長孔、59eは人手により偏芯円筒59を回転させる場合の滑り止め用に大径部側面に施したローレットである。ピンチローラ77は曲げ剛性を小さくするために中空状をなし、両端を1対の転がり軸受78で支承され、外周の軸方向中央部に突起部77aを有し、偏芯円筒59下部の開口部59cの中で直動部材76上部の円柱面と接触して直動部材76を下側に押圧しており、突起部77aによって直動部材76の半径方向の運動を拘束し、偏芯円筒59を回転させることによりその押圧力が変化するようになっている。直動部材76は円の一部を直線で切った断面を有する円柱で、上部をピンチローラ77によって下部を駆動ローラ73によって挟圧され、駆動ローラ73が回転することによって軸方向に駆動されて直線運動を行い、軸方向にはハウジングの壁面に設けられている遊隙孔を通って貫通し、一端は図示しない被駆動体に結合されている。
【0011】
直動部材76を挟持する押圧力を調整する場合は、キャップを取り外して止めねじ65を緩め、偏芯円筒59を回転させることによりピンチローラ77の軸芯位置を変化させて直動部材76に与える押圧力を適宜に調整した後、止めねじ65を締めて固定し、キャップを被せて元に戻す。偏芯円筒59の回転はローレット59eが施された大円部を人手により握持して行うが、ハウジングとの接触部にはニードル軸受60が介在しているので摩擦抵抗が少なく、人手により容易に回転させることができる。なお、ハウジングと偏芯円筒59との間に直動部材76を挟持する押圧力の大きさの目安を示す偏芯円筒59回転角の目盛りを付しておくと便利である。ピンチローラ77は曲げ剛性を小さくするために中空状にしてあり、孔径の大きさによって駆動ローラ73に比して遙かに小さく、従来例における圧縮ばねよりは大きい適宜の値のばね定数になるように形成される。直動部材76は上側をピンチローラ77と線接触し、下側は駆動ローラ73と線接触して軸に垂直な押圧力Fを受けており、駆動ローラ73が回転すると両者間の摩擦係数をμとしてμF以内の接線方向の力が発生して直動部材76が軸方向に駆動される。なお、直動部材76の下部が直線状になっているのは、幅方向単位長さ当たりの押圧力を下げて摩耗を小さくするためである。
【0012】
図に示すように、直動部材76は上下を平行な2平面で切った形状の円柱で、上側の平面の中央部には直動部材76の長手方向に沿って角溝、或いはV字型溝が設けられている。また、ピンチローラ77の外周央部には環状の突起部77aが形成され、この突起部77aの左右の側面は平行平面か、或いは僅かに外周側が狭くなる錐面で形成されており、突起部77aが直動部材76に刻設された角溝、或いはV字型溝に遊嵌合していることにより直動部材76の横方向への運動が拘束されるようになっている。なお、円柱状をなす直動部材76の外周面はハウジングの外側に設けられている図示しないリニアガイドと嵌合している。ピンチローラ77は中空の円筒軸で、外周央部には環状の突起77aが形成され、両端は転がり軸受78を介して偏芯円筒59内に支承されている。ピンチローラ77の内径の大きさは曲げ剛性が適宜のばね定数を与えるように選定されている。直動部材76の平面部、駆動ローラ73、ピンチローラ77の周面部の寸法は高い精度で仕上げられているが、ピンチローラ77による押圧力はピンチローラ77の曲げ変形によって生ずるため、直動部材76の当接面はこのピンチローラ77の変形した外周曲線に沿うように外側に凸にクラウニングし、また転がり軸受78を調心型にするのが好ましい。
【0013】
このように、ピンチローラ77と直動部材76との接触が線接触となっていることにより、接触圧力(ヘルツ圧)を軽減して負荷能力を大きくすることができる。また、突起部77aにより直動部材76の横方向への滑り運動が拘束されることにより、ピンチローラ77の軸心と直動部材76の軸心とが直交する角度が多少ずれても直動部材76が横方向に移動して図示しないリニアガイドと干渉することがない。
【0014】
従来の直動変換装置においては、直動部材を駆動する力は遊星ローラ減速機の出力軸と一体の駆動ローラと直動部材との間の摩擦力によって得られ、この摩擦力はピンチローラを介して圧縮ばねの押圧力によって与えられるが、直動部材の実用的な推力を得るには可成大きな圧縮ばねが必要で、特に大きな推力を必要とする場合には圧縮ばねを収容する部分の形状が異常に大きくなって装置全体が非常に大きくなってしまう不具合がある。また、駆動ローラ、ピンチローラと直動部材との接触面が加工誤差などで均等当たりしない場合や斜めに当たる場合などには直動部材の直進性が悪く、横滑りを発生して直動部材が停止に至ることがあるが、本直動変換装置においては従来の直動変換装置におけるピンチローラを押して直動部材を押圧する力を発生させる圧縮ばねに代え、ピンチローラ77の曲げ変形による弾性を利用して弾力性を与え、このピンチローラ77を転がり軸受78を介して偏芯円筒59内側に装着し、偏芯円筒59を回転させることにより転がり軸受78の位置を変化させて直動部材76を挟持する適宜の大きさの押圧力が得られるようにしている。そして、ピンチローラ77のばね定数を適宜の値にするためにピンチローラ77を中空軸とし、また偏芯円筒59が容易に回転するように偏芯円筒59をニードル軸受60を介してハウジングで支承しており、直動部材76がピンチローラ77と駆動ローラ73とに挟まれて押圧力を与えられ、駆動ローラ73が回転することによって直線運動を行うのは従来の直動変換装置と同様であるが、ピンチローラ77の曲げ剛性によって軸方向の中央部で半径方向に生ずるばね定数が、ピンチローラ77軸芯部の孔径の大きさを選定することによって適宜の値になる。直動部材76はピンチローラ77と駆動ローラ73とにより押圧されて挟持されており、偏芯円筒59を回転させてピンチローラ77の軸芯位置を変化させることによって直動部材76に与えられる押圧力を適宜の大きさに調整することができる。偏芯円筒59の回転によるピンチローラ77の軸心の変位は僅かで、また偏芯円筒59はハウジングによりニードル軸受60を介して支承されていることにより小さな力で容易に回転させることができる。また、ピンチローラ77と直動部材76との接触が線接触となっていることにより、接触圧力を軽減して負荷能力を大きくすることができる。また、突起部77aにより直動部材76の横方向への滑り運動が拘束されることにより、ピンチローラ77の軸心と直動部材76の軸心とが直交する角度が多少ずれても直動部材76が横方向に移動して図示しないリニアガイドと干渉することがない。これらにより、大きな直動力を出力する直動変換装置においても装置全体がコンパクトな形状になるとともに、簡単な構造により製作が容易でコストが低減する。
【0015】
図2は本発明の実施の他の形態に係る直動変換装置の説明図である。図において、本実施の形態に係る直動変換装置は上記の実施の形態に係る直動変換装置と構造、作用などが略同一であるが、本直動変換装置においては筒状のピンチローラ77の両端に錐面を有する2つの突起部77aを設け、この2つの錐面で溝を持たない直動部材76の周面を挟んで横方向の運動を拘束するようになっている。なお、図示しないがピンチローラ77を単に円筒形とし、ピンチローラ77に代えて駆動ローラ73の外周央部、或いは駆動ローラ73の両端に突起部を設け、直動部材76の上面の角溝を下面に設けても直動部材76の横方向への滑り運動を拘束することができる。これらにより、上記の実施の形態に係る直動変換装置と略同様の作用および効果を得ることができる。
【0016】
【発明の効果】
本発明に係る直動変換装置は前記のように構成されており、直動部材の大きな推力が得られるとともに直動部材の押圧機構が簡単な構造になってコンパクトに形成されるので、装置全体が小型になるとともにコストが低減される。
【0017】
また、直動部材における負荷能力が増大するとともに直動部材における横方向への滑り移動が拘束されるので、直動部材の直進性が良くなって停止などしなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の実施の一形態に係る直動変換装置における直動部材の断面図、同図(b)は偏芯円筒の斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の他の形態に係る直動変換装置における直動部材の断面図である。
【図3】図3(a)は従来の直動変換装置の断面図、同図(b)は同図(a)におけるB−B矢視断面図である。
【符号の説明】
59 偏芯円筒
59a 外周円
59b 内周円
59c 開口部
59d 長孔
59e ローレット
60 ニードル軸受
65 止めねじ
73 駆動ローラ
74 転がり軸受
76 直動部材
77 ピンチローラ
77a 突起部
78 転がり軸受
Claims (2)
- 直動部材を駆動ローラとピンチローラとにより挟持し上記駆動ローラを回転させることにより上記直動部材を進退させる直動変換装置において、上記直動部材が上記駆動ローラおよび上記ピンチローラそれぞれに接する平行な2平面を有する柱状体で形成され、上記ピンチローラが内部を中空状に形成されて両端が軸受を介して偏芯円筒内に支承され、上記偏芯円筒の回転角度と、上記ピンチローラの中空の孔径で調整された同ピンチローラの曲げ剛性とにより上記直動部材に対する押圧力を調整可能に設けられ、上記ピンチローラまたは上記駆動ローラ何れかの外周央部または両端部に環状の突起部が設けられて上記直動部材の表面に長手方向に設けた溝または上記直動部材の両側柱面と遊嵌合することを特徴とする直動変換装置。
- 請求項1に記載の直動変換装置において、上記直動部材は、上記平行な2平面を有する柱状体に代えて、上記駆動ローラに接する1平面と上記ピンチローラに当接し外側に凸にクラウニングした1面とを有する柱状体で形成されてなることを特徴とする直動変換装置。
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JP23515396A JP3692185B2 (ja) | 1996-09-05 | 1996-09-05 | 直動変換装置 |
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1996
- 1996-09-05 JP JP23515396A patent/JP3692185B2/ja not_active Expired - Fee Related
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