JP3690458B2 - 地盤改良工法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物の安定性の向上等の目的で、地盤の性状を改善するために用いられる地盤改良工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の地盤改良工法および地盤改良施設としては、例えば、図8に示すようなものが知られている。
図8に示す地盤改良施設1は、既存の地下構造物2の浮き上がりを防止する目的で設置されたものであり、地下構造物2を囲むように設けられた複数のボーリング孔4,4,…を備えた構成とされている。
地下構造物2は、地盤G中に設置されるとともに、その底面2aが地盤G中の表層6の下方の帯水層7内に位置する構成とされている。このような地下構造物2においては、帯水層7における地下水の水位が上昇した場合、底面2aに作用する浮力が増大することにより、浮き上がりが生じる恐れがある。そこで、地盤改良施設1におけるボーリング孔4,4,…から地盤Gに向けて、水ガラス、ベントナイト、あるいは超微粒子セメント等の薬剤を高圧で注入し、これにより地盤G中の間隙を充填することによって、地盤G中の透水性を低下させて、帯水層7における地下水位の上昇を防ぐようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような地盤改良工法においては、ボーリング孔4から薬剤等を注入することによって地盤改良を行う構成としたために、図8,9に示すように、ボーリング孔4,4,…の周囲の限られた領域Rにおいてしか、地盤改良を行い得なかった。一方、地下構造物2においては、その底面2a全体に浮力が作用することとなるために、上述のように一部分しか地盤改良を行い得ないのでは、十分な浮き上がり防止効果を得ることは困難であった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、構造物の下方等、従来地盤改良が困難であった箇所において広範囲な改良を行うことができ、これにより、構造物の安定性を良好に確保することが可能であるような地盤改良工法を提供することをその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の地盤改良工法は、地盤中に、注水井戸と揚水井戸とを互いに離間させて設置し、
水を曝気して溶存酸素水として前記注水井戸に供給するとともに、前記揚水井戸から水を汲み上げることによって、前記注水井戸および前記揚水井戸間に動水勾配を生じさせて地下水流を発生させ、
溶存酸素水により、前記地盤中の地下水中の溶存物質を析出させて微細物質を形成するとともに、地下水流により、前記注水井戸と前記揚水井戸との間に位置する地盤中に微細物質を充填させることを特徴とする。
【0006】
上記のような構成とされるために、この地盤改良工法においては、注水井戸と揚水井戸との間の広い範囲の地盤を、微細物質を充填することによって改良することができる。
また、この地盤改良工法においては、地盤中に間隙に対する充填物として地下水中の物質を利用することができる。
【0007】
請求項2記載の地盤改良工法は、請求項1記載の地盤改良工法であって、
前記注水井戸に溶存酸素水を供給するにあたっては、該溶存酸素水とともに前記微細物質を前記注水井戸内に供給することを特徴とする。
【0008】
上記のような構成とされるために、この地盤改良工法においては、微細物質の量を適量に調整することができる。
【0011】
請求項3記載の地盤改良工法は、請求項1または2記載の地盤改良工法であって、
前記揚水井戸から汲み上げた水を曝気して溶存酸素水とし、再び前記注水井戸に供給することを特徴とする。
【0012】
上記のような構成とされるために、この地盤改良工法においては、外部から水を補給する必要がない。
【0015】
請求項4記載の地盤改良工法は、請求項1から3のいずれかに記載の地盤改良工法であって、
前記注水井戸と前記揚水井戸とを既存構造物を挟んで互いに対向する位置にそれぞれ設置しておき、
前記既存構造物の下方に位置する地盤中に前記地下水流を発生させることを特徴とする。
【0016】
上記のような構成とされるために、この地盤改良工法においては、既存の構造物の下方の地盤をも改良することが可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するための参考例を、図1から4を参照して説明する。
なお、この参考例において、図8および図9に示した従来の技術と共通する構成については、同符号を付し、その説明を省略することとする。
【0020】
図1に示す地盤改良施設11は、既存の地下構造物2の浮き上がりを防止する目的で設置されたものであり、注水井戸13と、揚水井戸14と、水循環手段15とから概略構成されている。
注水井戸13と揚水井戸14とは、地盤G内において、地下構造物2を隔てて互いに対向する位置に設置されている。また一方、水循環手段15は、注水井戸13内に水を供給するための注水パイプ(水供給手段)17と、揚水井戸14から水を汲み上げるための揚水パイプ(揚水手段)18と、注水パイプ17と揚水パイプ18とを接続する接続パイプ19とを備えた構成とされている。接続パイプ19と揚水パイプ18との間には、ポンプPが設けられ、また、接続パイプ19の中間には、接続パイプ19から分岐する分岐パイプ(物質供給手段)20が設けられている。
ポンプPは、揚水パイプ18を通じて揚水井戸14内部に滞留する地下水を揚水するとともに、汲み上げた地下水を接続パイプ19および注水パイプ17を通じて注水井戸13に供給することが可能な構成とされている。
また、注水井戸13および揚水井戸14は、その少なくとも下端部13aおよび14aが、地下構造物2の底面2aよりも下方に位置するように形成されており、これら下端部13aおよび14aには、地盤Gとこれら注水井戸13および揚水井戸14内との間の水の透過を可能とするスクリーン22,22がそれぞれ設けられている。
【0021】
以上が地盤改良施設11における主要な構成であるが、次に、地盤改良施設11を用いた地盤Gの改良方法について説明する。
まず、図1に示したように、地下構造物2に隣接させて注水井戸13および揚水井戸14を設置するとともに、これら注水井戸13および揚水井戸14に対して、水循環手段15を設けておく。
【0022】
そして、次にポンプPの運転を開始するとともに、分岐パイプ20側から接続パイプ19側に対して、例えば、酸化鉄などの微細物質を投入する。
【0023】
ポンプPの運転が開始されることにより、帯水層7中の地下水は、揚水井戸14から揚水パイプ18、接続パイプ19、および注水パイプ17を通じて注水井戸13内に供給されることとなる。これにより、注水井戸13においては、水位の上昇が、揚水井戸14内においては水位の低下が発生し、地盤G内の地下水のポテンシャルUは、例えば、図2中に示したようになる。
【0024】
このように、注水井戸13と揚水井戸14との間において地下水のポテンシャルレベルの不均衡が生じることにより、地下構造物2の下方の注水井戸13と揚水井戸14との間に位置する地盤Gaにおいては、動水勾配が生じ、これにより、図2中に矢印で示したように、地下水流が発生する。
【0025】
一方、注水パイプ17から注水井戸13内に供給される水には、微細物質が投入されているために、この微細物質が水により輸送されて注水井戸13を通じて地盤Gaに到達することとなり、これにより地盤Ga中の間隙が微細物質により充填されて、地盤Gaが改良されることとなる。
【0026】
また、ポンプPの運転および分岐パイプ20からの微細物質の投入を継続することにより、地盤Gaの改良範囲Rは、時間の経過とともに、図2中に示したような範囲から図3に示すように注水井戸13と揚水井戸14との間の全ての範囲に渡って広がっていくこととなる。
【0027】
そして、図3に示したように地盤Gaが改良されたら、ポンプPの運転および微細物質の投入を停止し、さらに、水循環手段15を撤去することによって、図4に示すように地下構造物2の下方の地盤Gaの改良が完了することとなる。
【0028】
上述の地盤改良工法においては、注水井戸13と揚水井戸14との間に地下水流を発生させるとともに、この地下水流により微細物質を地盤Ga中に輸送して地盤Ga中を充填するようにすることによって、従来に比較して広い範囲にわたって容易に地盤改良を行うことが可能であり、これにより、広範囲の地盤改良を行う際のコストを従来に比較して低減化することが可能である。
【0029】
また、上述の地盤改良工法においては、微細物質を分岐パイプ20から投入して揚水井戸14から汲み上げた地下水とともに注水井戸13に対して供給する構成としたために、分岐パイプ20から投入する微細物質の量を適量に調整して、地盤Gaの改良が良好に行われるようにすることができる。
【0030】
さらに、上述の地盤改良工法においては、揚水井戸14から汲み上げた水を再び注水井戸13から地盤G内に供給する構成としたために、新たに水を供給する必要がなく、容易かつ経済的に地盤Ga内に地下水流を発生させることが可能である。
【0031】
また、上述の地盤改良工法においては、注水井戸13と揚水井戸14とを既存の地下構造物2を挟んで互いに対向する位置に配置するとともに、地下構造物2の下方の地盤Gaにおいて地下水流を発生させる構成としたために、従来の方法では困難であった地下構造物2の下方の地盤を改良することができる。
【0032】
さらに、上述の地盤改良施設11においては、揚水井戸14に揚水パイプ18が、注水井戸13に注水パイプ17が設けられるとともに、注水パイプ17と連通する分岐パイプ20から微細物質を供給することが可能な構成とされ、さらに、揚水井戸14と注水井戸13との双方に水の透過が可能なスクリーン22,22が設けられた構成とされている。このような簡易な構成とされるために、地盤改良施設11は、従来の地盤改良施設1と異なり、多数のボーリング孔や薬液注入のための機械等が必要でなく、従来の施設に比較して、建設や運用等に係るコストを低減化することができる。
【0033】
以上において本発明の実施の形態を説明するための参考例を説明したが、本発明の実施の形態としては、図5に示すように、接続パイプ19に貯水タンクTと曝気手段Aとを介装することによって、揚水井戸14から汲み上げた水を曝気して溶存酸素水として注水井戸13に供給する構成からなる地盤改良工法である。これにより、溶存酸素水によって地盤中の地下水中の溶存物質が析出されて微細物質が形成され、この微細物質を地盤中に間隙に対する充填物として利用し、注水井戸と揚水井戸との間の広い範囲の地盤を、微細物質を充填することによって改良することができる。
また、揚水井戸14から汲み上げた水を曝気して溶存酸素水として利用するため、溶存酸素水を別途用意することが必要とならず、安定的かつ経済的に注水井戸13に対して溶存酸素水を供給することが可能となる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、必要に応じて他の構成を採用することも可能である。
【0034】
例えば、上記の地盤改良工法において、分岐パイプ20から微細物質を投入する代わりに、溶存酸素水を投入するようにしてもよい。このようにすることによって、地下水中の溶存物質(溶存鉄分等)が析出され、微細物質として地盤Ga内に供給されることとなる。これにより、地下水中の溶存物質を利用して経済的に地盤の改良を行うことができる。
【0036】
また、溶存物質を多く含んだ水を外部から供給することができる場合には、図6に示すように、注水パイプ17に対して貯水タンクTおよび曝気手段Aを介して外部から水を供給するとともに、揚水パイプ18から汲み上げた水を外部へ排出するようにしてもよい。
【0037】
また、これらとは別に、図7に示すように、注水井戸13と揚水井戸14とに沿って、これら注水井戸13と揚水井戸14に対して地下構造物2と反対側に位置するように止水壁24,24を設けるようにすれば、より効率的に地盤Ga内に地下水流を発生させることが可能であり、これにより、工期の短縮化を図ることが可能である。
【0038】
また、この他にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、他の構成を採用するようにしてもよく、また、上述したような参考例および変形例を選択的に組み合わせるようにしても構わない。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る地盤改良工法においては、互いに間隔をおいて設けられた注水井戸と揚水井戸との間の地盤に地下水流を発生させるとともに、この地下水流により微細物質を地盤中に輸送して地盤を充填するようにすることによって、従来に比較して広い範囲にわたって容易に地盤改良を行うことが可能であり、また、広範囲の地盤改良を行う際のコストを従来に比較して低減化することが可能である。
また、水を曝気して溶存酸素水として注水井戸に供給し、この溶存酸素水により地盤中の溶存物質を析出させて微細物質を形成する構成としたために、地下水中の溶存物質を利用して経済的に地盤の改良を行うことができる。
【0040】
請求項2に係る地盤改良工法においては、注水井戸に水を供給するにあたって、同時に微細物質を投入する構成としたために、微細物質の量を適量に調整して、地盤の改良が良好に行われるようにすることができる。
【0041】
請求項3に係る地盤改良工法においては、注水井戸に溶存酸素水を供給するとともに、この溶存酸素水により地盤中の溶存物質を析出させて微細物質を形成する構成としたために、地下水中の溶存物質を利用して経済的に地盤の改良を行うことができる。
【0042】
請求項3に係る地盤改良工法においては、揚水井戸から汲み上げた水を曝気して溶存酸素水とし、再び注水井戸から地盤内に供給する構成としたために、新たに溶存酸素水を供給する必要がなく、容易かつ経済的に地盤内に地下水流を発生させることが可能である。
【0044】
請求項4に係る地盤改良工法においては、注水井戸と揚水井戸とを既存構造物を挟んで互いに対向する位置に配置するとともに、既存構造物の下方の地盤において地下水流を発生させる構成としたために、従来の方法では困難であった構造物下方の地盤の改良が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の参考例を模式的に示す地盤改良施設の立断面図である。
【図2】 図1に示した地盤改良施設により地下構造物の下方の地盤を改良する際の状況を示す立断面図である。
【図3】 図2に示した状況から一定時間経過後の状況を示す立断面図である。
【図4】 地下構造物の下方の地盤改良が終了した際の状況を示す立断面図である。
【図5】 本発明の実施の形態を示す地盤改良施設の立断面図である。
【図6】 本発明の別の実施の形態を示す地盤改良施設の立断面図である。
【図7】 本発明のさらに別の実施の形態を示す地盤改良施設の立断面図である。
【図8】 発明の従来の技術を示す図であって、地盤改良施設により地下構造物の近傍において地盤改良を行った際の状況を示す斜視断面図である。
【図9】 図8に示した地盤改良施設により改良された地盤の状況を示す平断面図である。
【符号の説明】
2 地下構造物
11 地盤改良施設
13 注水井戸
14 揚水井戸
17 注水パイプ(水供給手段)
18 揚水パイプ(揚水手段)
20 分岐パイプ(物質供給手段)
22 スクリーン
G,Ga 地盤
A 曝気手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物の安定性の向上等の目的で、地盤の性状を改善するために用いられる地盤改良工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の地盤改良工法および地盤改良施設としては、例えば、図8に示すようなものが知られている。
図8に示す地盤改良施設1は、既存の地下構造物2の浮き上がりを防止する目的で設置されたものであり、地下構造物2を囲むように設けられた複数のボーリング孔4,4,…を備えた構成とされている。
地下構造物2は、地盤G中に設置されるとともに、その底面2aが地盤G中の表層6の下方の帯水層7内に位置する構成とされている。このような地下構造物2においては、帯水層7における地下水の水位が上昇した場合、底面2aに作用する浮力が増大することにより、浮き上がりが生じる恐れがある。そこで、地盤改良施設1におけるボーリング孔4,4,…から地盤Gに向けて、水ガラス、ベントナイト、あるいは超微粒子セメント等の薬剤を高圧で注入し、これにより地盤G中の間隙を充填することによって、地盤G中の透水性を低下させて、帯水層7における地下水位の上昇を防ぐようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような地盤改良工法においては、ボーリング孔4から薬剤等を注入することによって地盤改良を行う構成としたために、図8,9に示すように、ボーリング孔4,4,…の周囲の限られた領域Rにおいてしか、地盤改良を行い得なかった。一方、地下構造物2においては、その底面2a全体に浮力が作用することとなるために、上述のように一部分しか地盤改良を行い得ないのでは、十分な浮き上がり防止効果を得ることは困難であった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、構造物の下方等、従来地盤改良が困難であった箇所において広範囲な改良を行うことができ、これにより、構造物の安定性を良好に確保することが可能であるような地盤改良工法を提供することをその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の地盤改良工法は、地盤中に、注水井戸と揚水井戸とを互いに離間させて設置し、
水を曝気して溶存酸素水として前記注水井戸に供給するとともに、前記揚水井戸から水を汲み上げることによって、前記注水井戸および前記揚水井戸間に動水勾配を生じさせて地下水流を発生させ、
溶存酸素水により、前記地盤中の地下水中の溶存物質を析出させて微細物質を形成するとともに、地下水流により、前記注水井戸と前記揚水井戸との間に位置する地盤中に微細物質を充填させることを特徴とする。
【0006】
上記のような構成とされるために、この地盤改良工法においては、注水井戸と揚水井戸との間の広い範囲の地盤を、微細物質を充填することによって改良することができる。
また、この地盤改良工法においては、地盤中に間隙に対する充填物として地下水中の物質を利用することができる。
【0007】
請求項2記載の地盤改良工法は、請求項1記載の地盤改良工法であって、
前記注水井戸に溶存酸素水を供給するにあたっては、該溶存酸素水とともに前記微細物質を前記注水井戸内に供給することを特徴とする。
【0008】
上記のような構成とされるために、この地盤改良工法においては、微細物質の量を適量に調整することができる。
【0011】
請求項3記載の地盤改良工法は、請求項1または2記載の地盤改良工法であって、
前記揚水井戸から汲み上げた水を曝気して溶存酸素水とし、再び前記注水井戸に供給することを特徴とする。
【0012】
上記のような構成とされるために、この地盤改良工法においては、外部から水を補給する必要がない。
【0015】
請求項4記載の地盤改良工法は、請求項1から3のいずれかに記載の地盤改良工法であって、
前記注水井戸と前記揚水井戸とを既存構造物を挟んで互いに対向する位置にそれぞれ設置しておき、
前記既存構造物の下方に位置する地盤中に前記地下水流を発生させることを特徴とする。
【0016】
上記のような構成とされるために、この地盤改良工法においては、既存の構造物の下方の地盤をも改良することが可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するための参考例を、図1から4を参照して説明する。
なお、この参考例において、図8および図9に示した従来の技術と共通する構成については、同符号を付し、その説明を省略することとする。
【0020】
図1に示す地盤改良施設11は、既存の地下構造物2の浮き上がりを防止する目的で設置されたものであり、注水井戸13と、揚水井戸14と、水循環手段15とから概略構成されている。
注水井戸13と揚水井戸14とは、地盤G内において、地下構造物2を隔てて互いに対向する位置に設置されている。また一方、水循環手段15は、注水井戸13内に水を供給するための注水パイプ(水供給手段)17と、揚水井戸14から水を汲み上げるための揚水パイプ(揚水手段)18と、注水パイプ17と揚水パイプ18とを接続する接続パイプ19とを備えた構成とされている。接続パイプ19と揚水パイプ18との間には、ポンプPが設けられ、また、接続パイプ19の中間には、接続パイプ19から分岐する分岐パイプ(物質供給手段)20が設けられている。
ポンプPは、揚水パイプ18を通じて揚水井戸14内部に滞留する地下水を揚水するとともに、汲み上げた地下水を接続パイプ19および注水パイプ17を通じて注水井戸13に供給することが可能な構成とされている。
また、注水井戸13および揚水井戸14は、その少なくとも下端部13aおよび14aが、地下構造物2の底面2aよりも下方に位置するように形成されており、これら下端部13aおよび14aには、地盤Gとこれら注水井戸13および揚水井戸14内との間の水の透過を可能とするスクリーン22,22がそれぞれ設けられている。
【0021】
以上が地盤改良施設11における主要な構成であるが、次に、地盤改良施設11を用いた地盤Gの改良方法について説明する。
まず、図1に示したように、地下構造物2に隣接させて注水井戸13および揚水井戸14を設置するとともに、これら注水井戸13および揚水井戸14に対して、水循環手段15を設けておく。
【0022】
そして、次にポンプPの運転を開始するとともに、分岐パイプ20側から接続パイプ19側に対して、例えば、酸化鉄などの微細物質を投入する。
【0023】
ポンプPの運転が開始されることにより、帯水層7中の地下水は、揚水井戸14から揚水パイプ18、接続パイプ19、および注水パイプ17を通じて注水井戸13内に供給されることとなる。これにより、注水井戸13においては、水位の上昇が、揚水井戸14内においては水位の低下が発生し、地盤G内の地下水のポテンシャルUは、例えば、図2中に示したようになる。
【0024】
このように、注水井戸13と揚水井戸14との間において地下水のポテンシャルレベルの不均衡が生じることにより、地下構造物2の下方の注水井戸13と揚水井戸14との間に位置する地盤Gaにおいては、動水勾配が生じ、これにより、図2中に矢印で示したように、地下水流が発生する。
【0025】
一方、注水パイプ17から注水井戸13内に供給される水には、微細物質が投入されているために、この微細物質が水により輸送されて注水井戸13を通じて地盤Gaに到達することとなり、これにより地盤Ga中の間隙が微細物質により充填されて、地盤Gaが改良されることとなる。
【0026】
また、ポンプPの運転および分岐パイプ20からの微細物質の投入を継続することにより、地盤Gaの改良範囲Rは、時間の経過とともに、図2中に示したような範囲から図3に示すように注水井戸13と揚水井戸14との間の全ての範囲に渡って広がっていくこととなる。
【0027】
そして、図3に示したように地盤Gaが改良されたら、ポンプPの運転および微細物質の投入を停止し、さらに、水循環手段15を撤去することによって、図4に示すように地下構造物2の下方の地盤Gaの改良が完了することとなる。
【0028】
上述の地盤改良工法においては、注水井戸13と揚水井戸14との間に地下水流を発生させるとともに、この地下水流により微細物質を地盤Ga中に輸送して地盤Ga中を充填するようにすることによって、従来に比較して広い範囲にわたって容易に地盤改良を行うことが可能であり、これにより、広範囲の地盤改良を行う際のコストを従来に比較して低減化することが可能である。
【0029】
また、上述の地盤改良工法においては、微細物質を分岐パイプ20から投入して揚水井戸14から汲み上げた地下水とともに注水井戸13に対して供給する構成としたために、分岐パイプ20から投入する微細物質の量を適量に調整して、地盤Gaの改良が良好に行われるようにすることができる。
【0030】
さらに、上述の地盤改良工法においては、揚水井戸14から汲み上げた水を再び注水井戸13から地盤G内に供給する構成としたために、新たに水を供給する必要がなく、容易かつ経済的に地盤Ga内に地下水流を発生させることが可能である。
【0031】
また、上述の地盤改良工法においては、注水井戸13と揚水井戸14とを既存の地下構造物2を挟んで互いに対向する位置に配置するとともに、地下構造物2の下方の地盤Gaにおいて地下水流を発生させる構成としたために、従来の方法では困難であった地下構造物2の下方の地盤を改良することができる。
【0032】
さらに、上述の地盤改良施設11においては、揚水井戸14に揚水パイプ18が、注水井戸13に注水パイプ17が設けられるとともに、注水パイプ17と連通する分岐パイプ20から微細物質を供給することが可能な構成とされ、さらに、揚水井戸14と注水井戸13との双方に水の透過が可能なスクリーン22,22が設けられた構成とされている。このような簡易な構成とされるために、地盤改良施設11は、従来の地盤改良施設1と異なり、多数のボーリング孔や薬液注入のための機械等が必要でなく、従来の施設に比較して、建設や運用等に係るコストを低減化することができる。
【0033】
以上において本発明の実施の形態を説明するための参考例を説明したが、本発明の実施の形態としては、図5に示すように、接続パイプ19に貯水タンクTと曝気手段Aとを介装することによって、揚水井戸14から汲み上げた水を曝気して溶存酸素水として注水井戸13に供給する構成からなる地盤改良工法である。これにより、溶存酸素水によって地盤中の地下水中の溶存物質が析出されて微細物質が形成され、この微細物質を地盤中に間隙に対する充填物として利用し、注水井戸と揚水井戸との間の広い範囲の地盤を、微細物質を充填することによって改良することができる。
また、揚水井戸14から汲み上げた水を曝気して溶存酸素水として利用するため、溶存酸素水を別途用意することが必要とならず、安定的かつ経済的に注水井戸13に対して溶存酸素水を供給することが可能となる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、必要に応じて他の構成を採用することも可能である。
【0034】
例えば、上記の地盤改良工法において、分岐パイプ20から微細物質を投入する代わりに、溶存酸素水を投入するようにしてもよい。このようにすることによって、地下水中の溶存物質(溶存鉄分等)が析出され、微細物質として地盤Ga内に供給されることとなる。これにより、地下水中の溶存物質を利用して経済的に地盤の改良を行うことができる。
【0036】
また、溶存物質を多く含んだ水を外部から供給することができる場合には、図6に示すように、注水パイプ17に対して貯水タンクTおよび曝気手段Aを介して外部から水を供給するとともに、揚水パイプ18から汲み上げた水を外部へ排出するようにしてもよい。
【0037】
また、これらとは別に、図7に示すように、注水井戸13と揚水井戸14とに沿って、これら注水井戸13と揚水井戸14に対して地下構造物2と反対側に位置するように止水壁24,24を設けるようにすれば、より効率的に地盤Ga内に地下水流を発生させることが可能であり、これにより、工期の短縮化を図ることが可能である。
【0038】
また、この他にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、他の構成を採用するようにしてもよく、また、上述したような参考例および変形例を選択的に組み合わせるようにしても構わない。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る地盤改良工法においては、互いに間隔をおいて設けられた注水井戸と揚水井戸との間の地盤に地下水流を発生させるとともに、この地下水流により微細物質を地盤中に輸送して地盤を充填するようにすることによって、従来に比較して広い範囲にわたって容易に地盤改良を行うことが可能であり、また、広範囲の地盤改良を行う際のコストを従来に比較して低減化することが可能である。
また、水を曝気して溶存酸素水として注水井戸に供給し、この溶存酸素水により地盤中の溶存物質を析出させて微細物質を形成する構成としたために、地下水中の溶存物質を利用して経済的に地盤の改良を行うことができる。
【0040】
請求項2に係る地盤改良工法においては、注水井戸に水を供給するにあたって、同時に微細物質を投入する構成としたために、微細物質の量を適量に調整して、地盤の改良が良好に行われるようにすることができる。
【0041】
請求項3に係る地盤改良工法においては、注水井戸に溶存酸素水を供給するとともに、この溶存酸素水により地盤中の溶存物質を析出させて微細物質を形成する構成としたために、地下水中の溶存物質を利用して経済的に地盤の改良を行うことができる。
【0042】
請求項3に係る地盤改良工法においては、揚水井戸から汲み上げた水を曝気して溶存酸素水とし、再び注水井戸から地盤内に供給する構成としたために、新たに溶存酸素水を供給する必要がなく、容易かつ経済的に地盤内に地下水流を発生させることが可能である。
【0044】
請求項4に係る地盤改良工法においては、注水井戸と揚水井戸とを既存構造物を挟んで互いに対向する位置に配置するとともに、既存構造物の下方の地盤において地下水流を発生させる構成としたために、従来の方法では困難であった構造物下方の地盤の改良が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の参考例を模式的に示す地盤改良施設の立断面図である。
【図2】 図1に示した地盤改良施設により地下構造物の下方の地盤を改良する際の状況を示す立断面図である。
【図3】 図2に示した状況から一定時間経過後の状況を示す立断面図である。
【図4】 地下構造物の下方の地盤改良が終了した際の状況を示す立断面図である。
【図5】 本発明の実施の形態を示す地盤改良施設の立断面図である。
【図6】 本発明の別の実施の形態を示す地盤改良施設の立断面図である。
【図7】 本発明のさらに別の実施の形態を示す地盤改良施設の立断面図である。
【図8】 発明の従来の技術を示す図であって、地盤改良施設により地下構造物の近傍において地盤改良を行った際の状況を示す斜視断面図である。
【図9】 図8に示した地盤改良施設により改良された地盤の状況を示す平断面図である。
【符号の説明】
2 地下構造物
11 地盤改良施設
13 注水井戸
14 揚水井戸
17 注水パイプ(水供給手段)
18 揚水パイプ(揚水手段)
20 分岐パイプ(物質供給手段)
22 スクリーン
G,Ga 地盤
A 曝気手段
Claims (4)
- 地盤中に、注水井戸と揚水井戸とを互いに離間させて設置し、
水を曝気して溶存酸素水として前記注水井戸に供給するとともに、前記揚水井戸から水を汲み上げることによって、前記注水井戸および前記揚水井戸間に動水勾配を生じさせて地下水流を発生させ、
溶存酸素水により、前記地盤中の地下水中の溶存物質を析出させて微細物質を形成するとともに、地下水流により、前記注水井戸と前記揚水井戸との間に位置する地盤中に前記微細物質を充填させることを特徴とする地盤改良工法。 - 請求項1記載の地盤改良工法であって、
前記注水井戸に溶存酸素水を供給するにあたっては、該溶存酸素水とともに前記微細物質を前記注水井戸内に供給することを特徴とする地盤改良工法。 - 請求項1または2記載の地盤改良工法であって、
前記揚水井戸から汲み上げた水を曝気して溶存酸素水とし、再び前記注水井戸に供給することを特徴とする地盤改良工法。 - 請求項1から3のいずれかに記載の地盤改良工法であって、
前記注水井戸と前記揚水井戸とを既存構造物を挟んで互いに対向する位置にそれぞれ設置しておき、
前記既存構造物の下方に位置する地盤中に前記地下水流を発生させることを特徴とする地盤改良工法。
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