JP3689103B2 - 新規プロモーター - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、新規なプロモーターに関する。
背景技術
ADAMTS(A Disintegrin and Metalloprotease with Thrombospondin motif)は、ディスインテグリン様ドメイン、金属プロテアーゼ様ドメイン、及びトロンボスポンジンI型繰り返し配列(以下、TSP-1繰り返し配列と称する)を含む分子群である。
前記ヒトADAMTS分子の中で、ADAMTS4(アグリカナーゼ−1)及びADAMTS11(アグリカナーゼ−2)では、細胞外基質アグリカンを選択的に切断する活性が示され、関節炎や変形性関節症における軟骨細胞外基質アグリカンの分解の本体の酵素である可能性が示唆されていた(Tortorella M.D.ら,Science,284,1664-1666,1999;及びAbbaszade I.ら,J.Biol.Chem.,274,23443-23450,1999)。また、ADAMTS2(プロコラーゲンI N−プロテイナーゼ)は、I型コラーゲンプロ体のN末部の切断除去酵素として、I型コラーゲンのプロ体から成熟型への転換に関与し、コラーゲン線維の形成に重要な役割を果たしており、その遺伝子の異常とVIIC型エーラース・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群との関連性が示されている(Colige A.ら,Am.J.Hum.Genet.,65,308-317,1999)。
すなわち、ADAMTS分子は、アグリカンやコラーゲン等の細胞外マトリクスの分解及び成熟といった代謝に関与することが示されている。
一方、慢性腎不全は、糸球体硬化及び腎間質線維化を特徴とする疾患であり、細胞外マトリクス成分の質的変化及び/又は量的増加が主要な発病及び進行機序とされている。トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、多種多様の生理機能を示す分化及び成長因子であることが知られており、細胞外マトリクス成分の質的変化及び量的増加に係わる作用を持つことも知られている(Border,W.Aら,N.Engl.J.Med.,331,1286-1292,1996;Rberts,A.B.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,83,4167-4171,1986;Fukabori,Yら,Int.J.Urol.,4,597-602,1997;Lohr,Mら,Cancer Res.,61,550-555,2001)。腎不全疾患モデルを用いた実験において、TGF-βの特異的な作用抑制タンパク質であるデコリンの遺伝子導入(Isaka Y.ら,Nature Med.,2,418-423,1996)や抗TGF-β投与(Ziyadeh F.N.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97,8015-8020,2000;Sharma K.ら,Diabetes,45,522-530,1996;及びBorder W.A.ら,Nature,346,371-374,1990)が有効性を示したことにより、TGF-βの生理機能を抑制又は阻害することが慢性腎不全の治療に繋がると考えられている。
しかし、満足のいく慢性腎不全治療薬がない現状のもと、期待されているにもかかわらず、現在までにTGF-β阻害剤は上市されていない。
また、間質の炎症、ひいては繊維化を生じる機序に関しては様々な検討がなされている。腎臓では糸球体で産生・放出されたIL-1βなどの炎症性サイトカインにより尿細管上皮細胞が活性化され、MCP-1などのケモカイン、インテグリン、オステオボンチンなどの細胞接着分子や細胞外基質を生産して細胞浸潤を促進し、浸潤してきた単球やTリンパ球は更に新たなサイトカインを分泌することで尿管上皮細胞や浸潤細胞に作用して炎症巣が生じ、細胞外マトリクス成分の分解を伴う組織破壊が起こる。破壊された組織の修復の過程での過修復、線維芽細胞や筋繊維芽細胞(myofibroblast)の関与により、細胞外マトリクス成分の質的変化及び量的増加が起こることも繊維化の機序として考えられている(岡田浩一,別冊・医学のあゆみ 糸球体腎炎の発症と治療,120-123,2001)。
NCBIデータベースにおいてAC010269として、187084bpのヒト染色体5クローンCTC-485I21の配列が開示されている(非特許文献1参照)。公知配列との相同性分析に基づきADAMTSファミリーに属すると推定される、卵巣での高発現、性周期による発現変動、及び腫瘍細胞における存在低下が知られているタンパク質をコードするcDNA及びその推定アミノ酸配列が知られている(特許文献1参照)。また、ADAMファミリーと推定される配列を含む、ゲノムデータベースを利用し、プロテアーゼをコードすると推定される多数の塩基配列、及び、それがコードする推定アミノ酸配列が知られている(特許文献2参照)。
非特許文献1
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=nucleotide&list_uids=15281193&dopt=GenBank AC010269
特許文献1 国際公開第WO02/31163号パンフレット
特許文献2 国際公開第WO01/83782号パンフレット
発明の開示
TGF-βは、多種多様の生理機能を示す分化及び成長因子であるため、TGF-βの生理機能全てを阻害することは、長期投与が想定される慢性腎不全の治療においては問題が生じるおそれがある。TGF-βの生理作用のうち、細胞外マトリクス成分の質的変化及び量的増加に係わる部分だけを抑制又は阻害することが望ましい。
本発明の課題は、慢性腎不全治療及び/又は予防剤のスクリーニングツールとして有用な、TGF-βにより誘導され、細胞外マトリクスの代謝に関与する新規プロテアーゼのプロモーターを提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、配列番号2で表される配列における第1番〜第1224番の配列からなる新規プロテアーゼMDTS9をコードするポリヌクレオチドを取得し、続いてヒトゲノムDNAよりMDTS9のプロモーターを取得した。また、前記プロテアーゼは、(1)ADAMTSプロテアーゼに分類されることにより、細胞外マトリックスの代謝に関与するプロテアーゼであると考えられること、(2)実際に、ヒトの腎臓での発現が認められること、(3)腎不全モデル動物において、その遺伝子発現量が増加していることを見出し、更に(4)TGF-βによりプロモーター活性が亢進(すなわちプロテアーゼ発現誘導)されることを確認した。これらにより、MDTS9は、腎不全の原因となるポリペプチドであり、本ポリペプチドのプロモーターを用いて、MDTS9の発現を抑制する物質をスクリーニングすることにより、TGF-βの生理作用のうち、細胞外マトリクス成分の質的変化及び量的増加に関わる部分だけを抑制又は阻害する慢性腎不全治療及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングできることを明らかにした。また、マトリクス・メタロ・プロテアーゼ(MMP)などの細胞外マトリクス分解酵素の発現を誘導する炎症性サイトカインの一つであるIL-1では本発明のプロモーターの活性が減弱する(すなわちプロテアーゼ発現が抑制される)こと、すなわち、本プロテアーゼの発現誘導が炎症時ではなく、組織の修復や細胞外マトリクス成分の質的変化及び量的増加を特徴とする腎繊維化の過程に特異的であることを見出し、本発明のプロモーター阻害剤が慢性腎不全治療及び/又は予防剤として有用であることをさらに明らかにし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)配列番号17の3253番目から5023番目で表される塩基配列、あるいは、配列番号17の3253番目から5023番目で表される塩基配列の中において、1〜10個の塩基が置換、欠失、及び/又は挿入されている塩基配列を含み、配列番号2記載のポリペプチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、
(2)配列番号17で表される塩基配列、あるいは、配列番号17記載の塩基配列の中において、1〜10個の塩基が置換、欠失、及び/又は挿入されている塩基配列を含む、(1)記載のポリヌクレオチド、
(3)配列番号17の3253番目から5023番目で表される塩基配列、又は、配列番号17で表される塩基配列を含む、(1)記載のポリヌクレオチド、
(4)(1)乃至(3)記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、
(5)(4)記載の発現ベクターでトランスフェクションされた細胞、
(6)(1)記載のポリヌクレオチド、又は、(5)記載の細胞からなる慢性腎不全治療及び/又は予防用物質スクリーニングツール、
(7)(1)記載のポリヌクレオチド、又は、(5)記載の細胞の慢性腎不全治療及び/又は予防用物質スクリーニングのための使用、
(8)▲1▼(5)記載の細胞と、試験化合物とを接触させる工程、及び、▲2▼プロモーター活性を検出する工程を含む、試験化合物が(1)乃至(3)記載のポリヌクレオチドのプロモーター活性を阻害するか否かを分析する方法、
(9)(8)記載の方法による分析工程、及びプロモーター活性を阻害する物質を選択する工程を含む、配列番号2記載のポリペプチドの発現を抑制する物質をスクリーニングする方法、
(10)(9)記載の方法により、慢性腎不全治療及び/又は予防用物質をスクリーニングする方法、及び
(11)(8)記載の方法による分析工程、及び製剤化工程を含む、慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の製造方法、
に関する。
なお、AC010269には、187084bpの一部分として配列番号17記載の塩基配列を含む配列を開示しているが、187084bpからなる配列をMDTS9コーディング配列の上流につなげても、MDTS9プロモーター活性を示すとは考えがたく、MDTS9のプロモーター活性があることや、慢性腎不全治療及び/又は予防剤のスクリーニングに関しては何ら開示されていない。WO02/31163には、配列番号2記載のアミノ酸配列と1アミノ酸違う配列が記載され、該配列を有するポリペプチドは、卵巣の細胞外マトリックスの分解及び再構築に関与することを示唆している。また、WO01/83782には、配列番号2記載のアミノ酸配列と2アミノ酸違う配列が記載されているが、該配列を有するポリペプチドを取得したこと、及び活性や機能を確認したことは記載されていない。そして、前記2件の公報に記載された配列を有するポリペプチドが慢性腎不全の原因であること、MDTS9のプロモーター、及び、MDTS9のプロモーターを用いた慢性腎不全治療及び/又は予防剤のスクリーニングに関しては開示も示唆もない。
【図面の簡単な説明】
図1は、pGV-B2-MDTS9pro5kを導入した細胞において、TGF-β添加によりルシフェラーゼ活性が上昇することを示す図である。
図中、縦軸は、ルシフェラーゼ活性測定値を同時導入したβ-gal発現プラスミドより発現したβ-galの活性値で補正し、TGF-β非処理のpGV-B2(空ベクター)導入細胞の補正値を1として示した相対値、横軸は、TGF-βの濃度である。
図2は、pGV-B2-MDTS9pro5kを導入した細胞において、IL-1添加によりルシフェラーゼ活性が減弱することを示す図である。
図中、縦軸は、ルシフェラーゼ活性測定値を同時導入したβ-gal発現プラスミドより発現したβ-galの活性値で補正し、IL-1非処理のpGV-B2(空ベクター)導入細胞の補正値を1として示した相対値、横軸は、IL-1の濃度である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)本発明のプロモーターであるポリヌクレオチド、発現ベクター、細胞
本発明者らは、細胞外マトリックスの代謝に関与するプロテアーゼであり、ヒトの腎臓での発現が認められ、腎不全モデル動物において、その遺伝子発現量が増加しているMDTS9(Metalloprotease and Disintegrin with Thrombospondin type-1 repeats 9)をコードするポリヌクレオチド及びそのプロモーターを得、塩基配列を決定した(配列番号17)。取得したプロモーターの全長及び部分断片(配列番号17の3253番目から5023番目)を適当なプラスミド、具体的には、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドpGV-B2内にサブクローニングした。この融合プラスミドのレポーター遺伝子の発現、すなわち、活性によりルシフェラーゼの発現を検出することにより、得られたポリヌクレオチドがプロモーター活性を有していることを確認した。また、本発明者らは、配列番号17記載のポリヌクレオチドが、TGF-βによりプロモーター活性が上昇し、IL-1によりプロモーター活性が減弱することを見出した。
前述のとおり、MDTS9の発現を抑制(プロモーター阻害)する物質が慢性腎不全治療及び/又は予防剤として有用であるので、本発明のプロモーターは、阻害剤をスクリーニングするためには、有用である。MDTS9プロモーター阻害剤をスクリーニングするためには、配列番号17中のTGF-β応答領域を含む配列を必ずしも用いる必要はなく、例えば、配列番号17の3253番目から5023番目を用いて、実施例7記載の方法でスクリーニングすることも可能である。したがって、本発明のプロモーターは、配列番号17の3253番目から5023番目の塩基配列を含み、MDTS9プロモーター活性を有していれば、5'領域のいかなる塩基配列をさらに含んでいても良い。より好ましくは、配列番号17の塩基配列を含み、MDTS9プロモーター活性を有しているポリヌクレオチドであり、更に好ましくは、配列番号17の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。また、配列番号17の3253番目から5023番目の塩基配列の中のいずれかの1〜10個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個)の部位において、1乃至複数個(好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個)の塩基が置換、欠失、及び/又は挿入されている塩基配列を含み、MDTS9プロモーター活性を有するポリヌクレオチドも、より好ましくは、配列番号17記載の塩基配列の中のいずれかの1〜10個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個)の部位において、1乃至複数個(好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個)の塩基が置換、欠失、及び/又は挿入されている塩基配列を含み、MDTS9プロモーター活性を有するポリヌクレオチドも、本発明のプロモーターに含まれる。「プロモーター活性」とはDNA鎖の情報をRNA鎖に転写するための開始部位として働く活性を意味し、「MDTS9プロモーター活性を有する」とは、実施例2記載の方法でプロモーター活性を確認できることであり、より好ましくは、実施例3記載の方法でTGF-βによりプロモーター活性が亢進することを意味する。
本発明のポリヌクレオチドは、実施例記載の方法で製造する以外に、下記の方法で製造することもできる。
▲1▼ PCR法を用いた製造
実施例1記載のように、プライマーとヒトゲノムDNAを用いてPCRを行い、配列番号17の塩基配列を含むDNAを製造することができる。一般に、アレル変異体の存在は良く知られている。本方法でDNAを製造した場合に、配列番号17の塩基配列の中のいずれかの部において、塩基が置換、欠失、及び/又は挿入されている塩基配列を含み、MDTS9プロモーター活性を有するDNAが得られる場合もあるが、これも本発明のプロモーターに含まれる。
▲2▼ DNA合成を用いた製造
配列番号17記載の配列及びその相補鎖を、何本かに分割して化学合成法によって製造し、これらのDNA断片を結合することによっても製造できる。各DNA断片は、DNA合成機(例えば、Oligo 1000M DNA Synthesizer(Beckman社)、あるいは、394 DNA/RNA Synthesizer(Applied Biosystems社)など)を用いて合成することができる。
製造したポリヌクレオチドがMDTS9プロモーター活性を有するか否かは、例えば、実施例2又は実施例3記載の方法で確認することができる。
当業者であれば、天然型に存在するプロモーター配列の塩基配列の一部を他の塩基への置換や塩基の欠失、及び/又は付加などの改変により、天然型のプロモーターポリヌクレオチドと同等のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを調製することが可能である。このように天然型の塩基配列において塩基が置換、欠失、及び/又は付加した塩基配列を有し、天然型のプロモーターポリヌクレオチドと同等のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドもまた本発明のポリヌクレオチドに含まれる。塩基の改変は、例えば、制限酵素あるいはDNAエキソヌクレアーゼによる欠失導入、部位特異的変異誘発法による変異導入(Nucleic Acid Res. 10, 6487(1982))、変異プライマーを用いたPCR法によるプロモーター配列の改変、合成変異DNAの直接導入などの方法により行うことができる(Maniatis, T. et al.(1989):“Molecular Cloning−A Laboratory Manual 2nd Edt.”Cold Spring Harbor Laboratory, NY)。
本発明のMDTS9プロモーターであるポリヌクレオチドは、生体内における変異に由来したMDTS9蛋白質の欠損又は発現異常症の治療や予防に利用することも可能である。例えば、本発明のMDTS9プロモーターとMDTS9コーディング領域を含むMDTS9遺伝子を、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のベクターに挿入し、又はリポソームなどに封入して体細胞に導入することにより、正常な転写制御下にMDTS9蛋白質を発現させることができ、これによりMDTS9蛋白質の欠損又は発現異常症などに対する改善を図ることが可能となる。
配列番号17記載のDNAの少なくとも一部分を含むDNAは、プロモーター活性を有するか否かを問わず、本発明のMDTS9プロモーターとこれに結合しうる蛋白質(例えば、転写因子)との結合を拮抗阻害しうる。このため該DNAが、本発明のプロモーターの活性を阻害する蛋白質の結合部位に相当する場合には、このDNAを投与することによりプロモーター活性を促進することができ、逆にプロモーター活性を促進する蛋白質の結合部位に相当する場合には、このDNAを投与することによりプロモーター活性を阻害することができる。拮抗阻害に用いるDNAは、通常少なくとも6塩基以上、好ましくは10塩基以上の鎖長を有する。
本発明の組換えベクターは、目的に応じ適宜選択したベクターに、本発明のポリヌクレオチドを組み込むことにより製造できる。例えば、MDTS9プロモーター活性を調節する物質のスクリーニング系構築を目的とする場合は、実施例に記載したように、ルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を組み込んだベクターに本発明のポリヌクレオチドを組み込んで製造することが好ましい。また、MDTS9蛋白質の欠損又は発現異常症の遺伝子治療を目的とする場合は、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のベクターに、本発明のプロモーターとMDTS9コーディング領域のDNAを組み込むことにより製造できる。
本発明の形質転換体は、目的に応じ適宜選択した宿主細胞に、本発明のポリヌクレオチドを組み込むことにより製造できる。例えば、MDTS9プロモーター活性を調節する物質のスクリーニング系構築を目的とする場合は、ヒトあるいはマウス、ラットなどの哺乳動物由来で、腎臓組織由来の細胞を用いることが好ましい。
(2)本発明の分析方法及びスクリーニング方法
本発明のプロモーターを用いることにより、試験化合物が、MDTS9のプロモーター活性を阻害するか否かを分析することができる。また、この本発明の分析方法を用いると、MDTS9プロモーター活性を阻害する物質をスクリーニングすることができる。MDTS9はその配列よりADANTSプロテアーゼであると考えられることから、細胞外マトリクスの代謝に関与するプロテアーゼであると考えられ、後述の参考例5及び参考例7に示すように、ヒトの腎臓で発現しているタンパク質であり、参考例6で示すように腎不全モデル動物において、その遺伝子発現量が増加しているおり、しかも、後述の実施例3に示すように、TGF-βにより誘導され、IL-1により発現が抑制されるADAMTSプロテアーゼである。従って、本発明のプロモーターの活性を阻害する物質は、TGF-βの生理作用のうち、細胞外マトリクス成分の質的変化及び量的増加に係わる部分だけを抑制又は阻害する可能性が高く、長期投与が想定される慢性腎不全治療剤の有効成分として有用であり、本発明のプロモーターを発現する細胞を、本発明のプロモーターの活性を阻害する物質、あるいは、慢性腎不全治療及び/又は予防用物質のスクリーニングツールとして使用することができる。
本発明の分析方法又はスクリーニング方法にかけることのできる試験化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrett,N.K.ら,Tetrahedron,51,8135-8137,1995)又は通常の合成技術によって得られた化合物群、あるいは、ファージ・ディスプレイ法(Felici,F.ら,J.Mol.Biol.,222,301-310,1991)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。前記公知化合物には、例えば、プロモーター阻害活性を有することが知られているが、本発明のプロモーターの活性を阻害するか否かが不明な化合物(ペプチドを含む)が含まれる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験化合物として用いることができる。更には、本発明のスクリーニング方法により選択された化合物(ペプチドを含む)を、化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
本発明の分析方法は、
▲1▼本発明のプロモーターを含む発現ベクターでトランスフェクションされた細胞と、試験化合物とを接触させる工程、及び、▲2▼プロモーター活性を検出する工程を含む、試験化合物が本発明のプロモーターの活性を阻害するか否かを分析する方法を含む。
プロモーター活性を検出する方法としては、特に限定されないが、実施例2又は実施例3に記載したような配列番号17記載の配列を含むレポーター遺伝子プラスミドを用いる方法が簡便である。レポーター遺伝子とは通常の手段(例えば、酵素活性の測定等、当業者に既知の定量法)によって定量することができる蛋白をコードする遺伝子を指し、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ遺伝子がよく用いられているがこれらに限定されない。レポーター遺伝子プラスミドを構築する基となるベクターに関しては制限はなく、市販のプラスミドベクター、例えば、pGV-B2(東洋インキ社製)やpSEAP2-Basic(Clontech社製)などを用いることができる。これらのベクターのレポーター遺伝子の上流に当該配列を順方向に挿入したレポーター遺伝子プラスミドを構築し、このプラスミドで形質転換した細胞において発現されるレポーター蛋白の量をそれぞれに適した方法で測定することにより当該配列のプロモーター活性の有無、強度を知ることができ、また、上記形質転換細胞の培養液に試験化合物を添加することにより、試験化合物の当該プロモーター活性に及ぼす作用を分析することができる。
また、本発明には、▲1▼上記分析工程、及び、▲2▼プロモーター活性を阻害する物質を選択する工程を含む、配列番号2記載のポリペプチド(MDTS9)の発現を抑制する物質をスクリーニングする方法、又は慢性腎不全治療及び/又は予防用物質をスクリーニングする方法も含まれる。
上記スクリーニング法で選択するプロモーター活性を阻害する物質としては、後述の実施例3に記載の方法で、TGF-β処理のみの場合のプロモーター活性の90%以下になる物が好ましく、TGF-β未処理と同等かそれ以下になる物がさらに好ましい。
(3)本発明の慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の製造方法
本発明には、(2)記載の本発明の分析方法による分析工程、及び、製剤化工程を含む、慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の製造方法も含まれる。本発明の慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の製造方法には、慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の品質規格の確認試験において、本発明の分析方法により、本発明のプロテアーゼの活性を阻害するか否かを分析する工程、及び製剤化工程を含む、慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の製造方法も含まれる。
また、本発明には、本発明のスクリーニング方法により選択される、本発明のプロテアーゼの活性を阻害する物質を有効成分とする慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物、並びに、本発明のプロテアーゼの活性を阻害する物質を投与することからなる慢性腎不全治療及び/又は予防方法が包含される。そして、
(2)記載の本発明の分析工程を含む本発明のスクリーニング方法で得られた物質を製剤化することからなる、慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の製造方法も本発明の慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の製造方法に含まれる。
本発明のプロテアーゼの活性を阻害する物質を有効成分とする製剤は、前記有効成分のタイプに応じて、それらの製剤化に通常用いられる担体、賦形剤、及び/又はその他の添加剤を用いて調製することができる。
投与としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、又は経口用液剤などによる経口投与、あるいは、静注若しくは筋注などの注射剤、坐剤、経皮投与剤、又は経粘膜投与剤などによる非経口投与を挙げることができる。特に胃で消化されるペプチドにあっては、静注等の非経口投与又は消化を受けない製剤化手段、例えば、WO95/28963号パンフレットに記載の製剤化手段を適用するのが好ましい。
経口投与のための固体組成物においては、1又はそれ以上の活性物質と、少なくとも一つの不活性な希釈剤、例えば、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどと混合することができる。前記組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば、滑沢剤、崩壊剤、安定化剤、又は溶解若しくは溶解補助剤などを含有することができる。錠剤又は丸剤は、必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質などのフィルムで被覆することができる。
経口のための液体組成物は、例えば、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はエリキシル剤を含むことができ、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば、精製水又はエタノールを含むことができる。前記組成物は、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、芳香剤、又は防腐剤を含有することができる。
非経口のための注射剤としては、無菌の水性若しくは非水性の溶液剤、懸濁剤、又は乳濁剤を含むことができる。水溶性の溶液剤又は懸濁剤には、希釈剤として、例えば、注射用蒸留水又は生理用食塩水などを含むことができる。非水溶性の溶液剤又は懸濁剤の希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、アルコール類(例えば、エタノール)、又はポリソルベート80等を含むことができる。前記組成物は、更に湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解若しくは溶解補助剤、又は防腐剤などを含むことができる。前記組成物は、例えば、バクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、又は照射によって無菌化することができる。また、無菌の固体組成物を製造し、使用の際に、無菌水又はその他の無菌用注射用媒体に溶解し、使用することもできる。
投与量は、前記スクリーニング法により選択された有効成分の活性の強さ、症状、投与対象の年齢、又は性別等を考慮して適宜決定することができる。
例えば、経口投与の場合、その投与量は、通常、成人(体重69kgとして)において、1日につき約0.01〜1000mg、好ましくは0.01〜100mgである。また、非経口投与の場合、注射剤の形では、1日につき0.01〜1000mg、好ましくは0.01〜100mgである。
実施例
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、特に断らない限り、公知の方法(例えば、Sambrook,J.ら,”Molecular Cloning-A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,NY,1989)に従って実施した。
参考例1:C末FLAG付加型発現ベクターの作製
プラスミドpCEP4(インビトロジェン社製)を、制限酵素ClaI及びNsiIで切断し、平滑末端化した後、自己連結反応を行なうことにより、エプスタイン・バーウイルス由来のEBNA1発現ユニットを除去した発現ベクターpCEP4dを作製した。得られた発現ベクターpCEP4dを、制限酵素NheI及びBamHIで切断した後、アガロースゲル抽出することにより得られた約7.7kbpのDNA断片に、配列番号3で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号4で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとをアニールさせて得られた二重鎖オリゴヌクレオチドを挿入することにより、発現ベクターpCEP4d-FLAGを作成した。なお、得られた発現ベクターが目的の配列を有することは、塩基配列により確認した。
得られた発現ベクターpCEP4d-FLAGを鋳型とし、配列番号5で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号6で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとの組み合わせをプライマーとして、パイロベスト(PyroBestTM)DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いてPCRを行なった。前記PCRでは、最初に94℃(2分間)で熱変性を行なった後、94℃(30秒間)と55℃(30秒間)と72℃(30秒間)とからなるサイクルを15回繰り返し、最後に72℃(7分間)の伸長反応を行なった。前記PCRにより生じた約0.4kbpのDNA断片を制限酵素SpeIで切断した後、このDNA断片を、制限酵素XbaIで切断したpCEP4d-FLAG(約7.7kbp)に挿入することにより、発現ベクターpCEPdE2-FLAGを作成した。得られた発現ベクターpCEPdE2-FLAGにおいては、プロモーターから下流に向かって、クローニングサイトであるXbaI認識配列、NheI認識配列、NotI認識配列、及びBamHI認識配列、並びにFLAGタグがこの順に配列されている。
参考例2:新規プロテアーゼ遺伝子MDTS9の全長ORF遺伝子のクローニング
配列番号7で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(5’側にSpeI認識配列及びKozak配列が付加してある)と配列番号8で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(5’側にNotI認識配列が付加してある)との組み合わせをプライマーとし、ヒト胎児腎臓cDNA(Marathon-ReadyTM cDNA;クロンテック社製)を鋳型として、DNAポリメラーゼ(TaKaRa LA TaqTM;宝酒造社製)を用いてPCRを行なった。前記PCRでは、最初に94℃(2分間)で熱変性を行なった後、98℃(10秒間)と68℃(2分30秒間)とからなるサイクルを40回繰り返し、最後に68℃(7分間)の伸長反応を行なった。前記PCRにより生成した約2.2kbpのDNA断片(5’側にSpeI認識配列及びKozak配列が付加され、3’側にNotI認識配列が付加されている)を、プラスミドPCR2.1(インビトロジェン社製)にサブクローンすることにより、クローンpMDTS9Cys1を得た。
得られたプラスミドpDMTS9Cys1を制限酵素SpeI及びNotIで切断して生成した約2.2kbpのDNA断片を、前記参考例1で構築したpCEPdE2-FLAGのXbaI部位及びNotI部位に挿入することにより、プラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys1-FLAGを構築した。
配列番号9で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(5’側にSpeI認識配列及びkozak配列が付加してある)と配列番号10で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとの組み合わせをプライマーとし、ヒト胎児腎臓cDNA(Marathon-ReadyTM cDNA;クロンテック社製)を鋳型として、DNAポリメラーゼ(TaKaRa LA TagTM;宝酒造社製)を用いてPCRを行なった。前記PCRでは、最初に94℃(2分間)で熱変性を行なった後、98℃(10秒間)と68℃(30秒間)とからなるサイクルを45回繰り返し、最後に68℃(7分間)の伸長反応を行なった。前記PCRにより生成した約0.2kbpのDNA断片(5’側にSpeI認識配列及びKozak配列が付加されている)を、プラスミドPCR2.1(インビトロジェン社製)にサブクローンすることにより、クローンpMDTS9(5S2-12)を得た。挿入断片は、配列番号1で表される塩基配列からなるDNAであり、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第1番〜第1224番のアミノ酸からなる配列をコードする。
得られたプラスミドpMDTS9(5S2-12)を制限酵素SpeI及びNcoIで切断して生成した約0.2kbpのSpeI-NcoI DNA断片Aと、先に得られたプラスミドpMDTS9Cys1を制限酵素NcoI及びNotIで切断して生成した約2.0kbpのNcoI-NotI DNA断片Bとを、前記参考例1で構築したpCEPdE2-FLAGのXbaI部位及びNotI部位に挿入することにより、プラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2-FLAGを構築した。同様に、前記DNA断片Aと前記DNA断片Bとを、プラスミドpZEr0-2(インビトロジェン社製)のSpeI及びNotI部位に挿入することにより、プラスミドpZEr0-MDTS9Cys2を構築した。
プラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2-FLAGは、新規プロテアーゼ遺伝子MDTS9の配列番号1で表される塩基配列における第1番〜第2250番の塩基からなる遺伝子を含有し、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第1番〜第750番のアミノ酸からなる配列のC末端に、配列番号11で表されるアミノ酸配列が付加したポリペプチドを、動物細胞を宿主として、発現することができる。なお、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、ADAMSTプロテアーゼであると考えられる。
参考例3:MDTS9短長タンパク質(MDTS9Cys2)の発現
参考例2で作製したプラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2-FLAG又は対照として、参考例1で作製したプラスミドpCEPdE2-FLAGを、市販のトランスフェクション試薬(FuGENETM6 Transfection Reageent;ベーリンガー・マンハイム社製)を用いて、添付指示書に従い、血清培地[DMEM(GIBCO-BRL社)、10%牛胎児血清、100μg/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、及び250μg/mL-G418(ナカライテスク社製)]で培養していたHEK293-EBNA(インビトロジェン社製)に導入した。
プラスミド導入後、そのまま48時間培養する(以下、血清培養と称する)か、あるいは、前記プラスミド導入後、そのまま16時間培養し、PBSで2回洗浄した後に、無血清培地[DMEM(GIBCO-BRL社)、100μg/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、250μg/mL-G418(ナカライテスク社製)]にて32時間培養した(以下、無血清培養と称する)。
前記血清培養又は無血清培養で得られた各培養液を、遠心分離器(8800型;久保田製作所社製)により遠心分離(3000rpm,10分間)することにより、培養上清を得た。また、前記培養液を除去した後に残った各細胞を、抽出液[20mmol/L-HEPES(pH7.4)、1%トリトンX-100、1%グリセロール、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)]にて15分間処理した後、ピペッティングにより細胞を培養プレートより剥離し、得られた細胞懸濁液を遠心分離器(8800型;久保田製作所社製)により遠心分離(3000rpm,10分間)することにより、細胞膜結合画分(上清)と細胞画分(沈澱)とに分画した。
得られた各画分(すなわち、培養上清、細胞膜結合画分、及び細胞画分)における目的タンパク質の発現は、C末端に付加したFLAGタグに対する抗体(マウス抗FLAGモノクローナル抗体M2;シグマ社製)を用いたウエスタンブロッティングで確認した。すなわち、前記の各画分を、2-MEを用いた還元条件下、SDS-10%〜20%アクリルアミドゲル(第一化学薬品社製)を用いて電気泳動した後、ブロッティング装置を用いてポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に転写した。転写後のPVDF膜に、ブロッキング剤(ブロックエース;大日本製薬社製)を添加してブロッキングした後、前記マウス抗FLAGモノクローナル抗体M2と、西洋わさびパーオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(ザイメッド社製又はタゴ社製)とを、順次反応させた。あるいは、前記ブロッキングに続いて、ビオチン化M2抗体(シグマ社製)と、西洋わさびパーオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(アマシャムファルマシアバイオテク社製)とを、順次反応させた。反応後、市販のウエスタンブロッティング検出システム(ECLウエスタンブロッティング検出システム;アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて、目的タンパク質の発現を確認した。
プラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2-FLAGを導入した細胞を無血清培養することにより得られた各画分において検出されたタンパク質(すなわち、MDTS9短長タンパク質)のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)における見かけ上の分子質量は、培養上清において約55〜65KDaであり、細胞膜結合画分において約55〜65KDaであり、細胞画分において80〜95KDaであった。
参考例4:MDTS9短長タンパク質のプロテアーゼ活性の確認
(1)プラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2E/Q-FLAGの構築
クィックチェンジ・サイトダイレクテド・ミュータジェネシス・キット(QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit;ストラタジーン社製)を用い、添付の指示書に従って、活性中心と考えられるHis-Glu-Ser-Gly-His(配列番号12)のGlu(グルタミン酸)をGln(グルタミン)に置換した遺伝子MDTS9Cys2E/Qを含有するプラスミドpZErO-MDTS9Cys2E/Qを作製した。なお、鋳型としては、参考例2で作製したプラスミドpZErO-MDTS9Cys2を用い、プライマーセットとしては、配列番号13で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号14で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
得られたプラスミドpZErO-MDTS9Cys2E/Qを制限酵素SpeI及びNotIで切断して生成した約2.3kbpのDNA断片を、前記参考例1で構築したプラスミドpCEPdE2-FLAGのXbaI及びNotI部位に挿入することにより、プラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2E/Q-FLAGを得た。
(2)α2−マクログロブリンとの複合体形成を指標としたプロテアーゼ活性の確認
参考例2で作製したプラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2-FLAG、参考例4(1)で作製したプラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2E/Q-FLAG又は、対照として、参考例1で作製したプラスミドpCEPdE2-FLAGでトランスフェクションした各細胞の血清培養の培養上清を、参考例3で示した手順と同様にして、2-MEを用いた還元条件下、SDS-PAGEし、PVDF膜に転写した。転写後のPVDF膜に、ブロッキング剤(ブロックエース;大日本製薬社製)を添加してブロッキングした後、ヤギ抗α2−マクログロブリン抗体[セダーレーン(CEDARLANE)社製]と、西洋わさびパーオキシダーゼ標識ウサギ抗ヤギIgGプロクローナル抗体[ザイメッド(Zymed Laboratories)社製]とを、順次反応させた。反応後、市販のウエスタンブロッティング検出システム(ECLウエスタンブロッティング検出システム;アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて、目的タンパク質の発現を確認した。
プラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2-FLAGでトランスフェクションした細胞由来の血清培養の培養上清では、プラスミドpCEPdE2-MDTS9Cys2E/Q-FLAG又はプラスミドpCEPdE2-FLAGでトランスフェクションした細胞由来の各血清培養の培養上清で検出されない約250KDaのバンドが検出された。この結果は、MDTS9短長タンパク質(MDTS9Cys2)が、α2−マクログロブリンと複合体を形成したことを示しており、従って、MDTS9短長タンパク質(MDTS9Cys2)にプロテアーゼ活性があることが確認された。
参考例5:MDTS9遺伝子の組織発現分布の確認
市販のcDNAパネル[Clontech社製のMultiple Tissue cDNA(MTCTM)Panelの内、Human MTC Panel I(カタログ番号:K1420-1)、Human MTC Panel II(カタログ番号:K1421-1)、Human Fetal MTC Panel(カタログ番号:K1425-1)、及びHuman Tumor MTC Panel(カタログ番号:K1422-1)]を用いて、MDTS9遺伝子の組織発現分布を以下の手順で解析した。
すなわち、配列番号15で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号16で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとの組み合わせをプライマーとし、前記cDNAパネルを鋳型として、DNAポリメラーゼ(TaKaRa LA TaqTM;宝酒造社製)を用いてPCRを行なった。前記PCRでは、最初に94℃(2分間)で熱変性を行なった後、98℃(10秒間)と68℃(1分30秒間)とからなるサイクルを44回繰り返した。続いて、反応液のアガロースゲル電気泳動を行ない、MDTS9遺伝子のmRNAに由来する約1.1kbpのDNA断片を検出した。その結果、MDTS9遺伝子のmRNAは、腎臓に発現していることが判明した。
参考例6:腎不全モデルにおけるMDTS9遺伝子の発現変動
(1)鋳型cDNAの調製
cDNAの調製は、ラット5/6腎摘モデル(木村健二郎,「腎と透析」1991臨時増刊号,431-439)の腎臓より調製した。5/6腎摘終了後、1週、2週、3週、4週、6週、8週、及び10週に、5/6腎摘ラット及び偽手術ラットを各々5匹ずつ解剖し、腎臓を摘出し、その後直ちに-80℃にて凍結保存した。これら各群の腎臓を液体窒素凍結下、細胞破砕機(クライオプレスCP-100;マイクロテック・ニチオン社製)を用いて破砕後、総RNA精製試薬(ISOGEN;日本ジーン社製)を用いて総RNAを調製した。抽出した総RNAをDNアーゼ(ニッポンジーン社製)を用い、37℃で90分間反応させた。DNアーゼ処理した総RNA0.25μgをスーパースクリプトIIファーストストランドシステム(RT-PCR用;GIBCO-BRL社製)にてcDNAに変換した。
(2)ラット腎不全モデルにおけるMDTS9遺伝子の発現変動
ラット腎不全モデルにおける腎臓での発現変動解析は、参考例6(1)で調製したcDNAを鋳型にして、シークエンスディテクター(Prism7700 Sequence Detector;アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行なった。配列番号30で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、配列番号31で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとを、プライマーセットとして用いた。PCRは、市販のPCR試薬[サイバーグリーンPCRコアリエージェント(SYBR Green PCR core reagent);アプライドバイオシステムズ社製]を用い、95℃(10分間)の初期変性反応を実施した後、94℃(15秒間)と60℃(30秒間)と72℃(60秒間)とからなるサイクル反応を45回繰り返すことにより実施した。
また、内部標準としてヒトグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(G3PDH)の遺伝子発現量を算出するため、前記cDNAを鋳型として、配列番号32で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、配列番号33で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとを、プライマーセットとして同条件のPCRを行なった。更に、mRNA発現量算出に用いる標準曲線を得るために、ラットゲノムDNA(クロンテック社製)を鋳型として、前記プライマーセットを用いて同条件のPCRを行なった。各群における一定量の総RNA当たりのラットMDTS9遺伝子のmRNAの発現量を比較するため、各条件でのラットMDTS9遺伝子のmRNAの発現量は、各条件でのG3PDH遺伝子発現量に対する割合で示した。その結果、ラットMDTS9遺伝子のmRNAは、5/6腎摘モデルにおいて、偽手術ラットに比べ、術後1週で約5倍の遺伝子が発現しており、尿タンパク質量が顕著に増加する術後3週、正常腎重量と比べ著明に腎重量が増加し始める術後6週、更に病態が悪化する術後8週で、それぞれ、約2倍の遺伝子が発現していることが判明した。
(3)マウス5/6腎摘モデルにおけるMDTS9遺伝子の発現変動
マウス5/6腎摘モデルにおいても、参考例6(1)と同様に鋳型cDNAを作成し、参考例6(2)と同様にラットMDTS9カウンターパートのmRNAの定量を行った。蛋白尿及び病理組織切片の観察から、重症例と判断されるマウスに関して約4倍の遺伝子発現(発現量の増加)が認められた。
本参考例により、腎不全モデルでは、MDTS9の遺伝子が発現誘導されることが明らかとなった。
参考例7:ヒト腎臓組織切片の免疫組織染色
(1)抗ヒトMDTS9抗体の作製
まず、実験解説書(岡田雅人及び宮崎香編,「改訂タンパク質実験ノート」上,羊土社,p.162-179)に準じて、プラスミドpGEX-6P-1(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を発現ベクターとして用い、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第280番〜第410番のアミノ酸からなるペプチドと、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質(GST-MDTS9A)を、大腸菌を用いて封入体画分に生産した。続いて、封入体画分について、調製用SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を実施し、ゲルから拡散法によって目的のGST-MDTS9Aタンパク質を抽出した(岡田雅人及び宮崎香編,「改定タンパク質実験ノート」下,羊土社,p.48-51)。
得られたGST-MDTS9Aタンパク質を、ウサギ(日本白色種)に10〜14日間隔で計5回免疫した後、抗血清を調製した。この抗血清より、まずIgG画分をプロテインGセファロースFFカラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)でアフィニティー精製し、続いて、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第280番〜第410番のアミノ酸からなるペプチドと、マンノース結合タンパク質(MBP)との融合タンパク質(MBP-MDTS9A)を固定したカラム(MBP-MDTS9Aカラム)でアフィニティー精製を行ない、抗ヒトMDTS9抗体とした。プロテインGセファロースFFカラムでのアフィニティー精製、並びにCNBr活性化セファロースFFカラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)へのMBP-MDTS9Aの固定及びMBP-MDTS9Aカラムでのアフィニティー精製は、添付説明書に従った。また、MBP-MDTS9Aの大腸菌での生産及び精製は、pMAL-c2E(ニュー・イングランド・バイオラボ社製)を発現ベクターとして用い、同社の「pMAL蛋白融合及び精製システム」の指示書に従った。
(2)ヒト腎臓でのMDTS9タンパク質の検出
スライドガラス上にホルマリン固定及びパラフィン包埋した組織切片に、参考例7(1)で調製した抗ヒトMDTS9抗体を反応させた後、市販の染色キット(ベクターステインABC-APキット,カタログ番号AK-5000;ベクター社製)を用いて、添付説明書に従い、染色した。その際、二次抗体としてビオチン標識抗ウサギ抗体(カタログ番号BA-1000;ベクター社製)、発色基質としてアルカリフォスファターゼ基質キットI(カタログ番号SK-5100;ベクター社製)を用いた。その結果、健常人及び糖尿病性腎症(初期又は後期)患者の腎臓において、上皮細胞、中でも特に糸球体上皮細胞(producytes)での染色が認められた。
本参考例から、MDTS9タンパク質がヒト腎臓で発現していることが明らかである。
実施例1:MDTS9遺伝子5'上流域遺伝子のクローニング
ヒトゲノムDNA(Genomic DNA;クロンテック社)を鋳型にし、配列番号18と配列番号19で示されるオリゴDNAをプライマー、PyroBestTM DNA polymerase(宝酒造社)をDNAポリメラーゼとして、97℃3分の後、96.5℃30秒、72℃2分のサイクルを5回、続いて96.5℃30秒、70℃2分のサイクルを5回、続いて96.5℃30秒、68℃2分のサイクルを5回、続いて96.5℃30秒、63℃25秒、72℃2分のサイクルを25回、続いて72℃7分の条件でPCRを行い、生成した約2kbp断片をpZErOTM-2.1(インビトロジェン社)のEcoRV認識部位にサブクローニングした。ここで得られたサブクローンの塩基配列を確認した結果、MTDS9遺伝子5′上流域の配列であることが確認でき、配列番号17の3253番目から5023番目で示される遺伝子であった。このサブクローンを鋳型、配列番号20と配列番号21で示されるオリゴDNAをプライマーとし、PyroBestTM DNA polymerase(宝酒造社)を用いて、95℃3分の後、97℃20秒、59℃30秒、72℃2分のサイクルを35回、続いて72℃3分の条件でPCRを行い、5'側に制限酵素SacI認識配列、3'側に制限酵素HindIII認識配列を導入した約1.8kbp断片を生成した。このDNA断片を制限酵素SacI、HindIII処理し、ルシフェラーゼアッセイシステム用ベクター(PicaGene Vector 2ベーシックベクター;東洋インキ社)のSacI、HindIII部位に挿入し、pGV-B2-MDTS9pro2kを得た。
また、5'側にMluI認識配列を付加した配列番号22で示されるオリゴDNAと配列番号23で示されたオリゴDNAのセットと、配列番号24と25で示されるオリゴDNAのセットをプライマー、ヒトゲノムDNA(Genomic DNA;クロンテック社)を鋳型とし、PyroBestTM DNA polymerase(宝酒造社)を用い、96℃2分の後、97℃20秒、60℃30秒、72℃1分のサイクルを40回、続いて72℃7分の条件でPCRを行なった。こうして生成した約600bp、1kbpの断片をpCR4Blunt-TOPO(インビトロジェン社)にサブクローニングし、サブクローンpCR4Blunt-TOPO5k-1、pCR4Blunt-TOPO5k-3を得た。また、配列番号26と27で示されるオリゴDNAのセット、配列番号28と29で示されるオリゴDNAのセットをプライマーとし、ヒトゲノムDNA(Genomic DNA;クロンテック社)を鋳型、PyroBestTM DNA polymerase(宝酒造社)を用い、96℃2分の後、97℃20秒、60℃30秒、72℃2分のサイクルを40回、続いて72℃7分の条件でPCRを行なった。こうして生成した約1.6kb、1.9kbの断片をpCR4Blunt-TOPO(インビトロジェン社)にサブクローニングし、サブクローンpCR4Blunt-TOPO5k-2、pCR4Blunt-TOPO5k-4を得た。pCR4Blunt-TOPO5k-3をKpnI、SmaI処理して生成した約0.5kbpの断片とpCR4Blunt-TOPO5k-4をSmaI、EcoRI処理して生成した約1.5kbpの断片を連結し、pCR4Blunt-TOPO(インビトロジェン社)のKpnI、EcoRI部位に挿入してpCR4Blunt-TOPO5k-5を得た。pCR4Blunt-TOPO5k-1をMluI、SphI処理して得られる約0.4kbpの断片、pCR4Blunt-TOPO5k-2をSphI、KpnI処理して得られる約1.5kbpの断片、pCR4Blunt-TOPO5k-5をKpnI、EcoRI処理して得られる約2.1kbpの断片を連結し、pGV-B2-MDTS9pro2kのMluI、EcoRI部位に挿入し、pGV-B2-MDTS9pro5kを得た。ここで得られたサブクローンの塩基配列を確認した結果、配列番号17で示される遺伝子であった。
実施例2:MDTS9プロモーター領域DNA配列の解析
実施例1で得られたプラスミドpGV-B2-MDTS9pro2k又はpGV-B2-MDTS9pro5kを参考例3に示す方法でHEK293-EBNA細胞に導入し、そのまま、DMEM(GIBCO-BRL社)、10%牛胎児血清、100μg/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、250μg/ml G418(ナカライテスク社製)で、48時間培養を継続した後、PicaGene発色キット(東洋インキ社)を用い、ルシフェラーゼ活性を測定した。この際、測定値は同時導入したβ-gal発現プラスミド(pCH110;アマシャムファルマシアバイオテック社)より発現したβ-galの活性値で補正した。β-gal活性の測定はGalacto-Light Plusキット(TROPIX社)を用いた。その結果、pGV-B2-MDTS9pro2kでは約27倍の、及びpGV-B2-MDTS9pro5kでは約27〜40倍の、もとのプラスミドであるpGV-B2では認められないルシフェラーゼ活性の明らかな上昇が観察された。このことは上記DNA断片中にプロモーター活性が存在することを示している。
実施例3:MDTS9プロモーター領域DNA配列のTGF-β、IL-1応答性
実施例1で得られたプラスミドpGV-B2-MDTS9pro5kを参考例3に示す方法でHEK293-EBNA細胞に導入し、そのまま16時間培養した後、PBSで2回洗浄し、DMEM(GIBCO-BRL社)、100μg/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、250μg/ml G418(ナカライテスク社)に置換し、6時間培養した(以下、無血清培養)。続いて、TGF-β(シグマ社製)又はIL-1(シグマ社製)を添加し、24時間培養後のルシフェラーゼ活性を測定した。測定値は、実施例2同様、β-galの活性値で補正した。その結果、TGF-β(1ng/ml)添加により約1.7倍のルシフェラーゼ活性上昇が、IL-1(1ng/ml)添加により約0.7倍以下までルシフェラーゼ活性の減弱が観察された(図1、図2)。このことは上記DNA断片中にTGF-β応答領域、IL-1応答領域が存在することを示している。一方、pGV-B2-MDTS9pro2kを導入した細胞について、同様に、TGF-βを添加してルシフェラーゼ活性を測定したところ、ルシフェラーゼ活性はコントロールと同等であった。
産業上の利用可能性
本発明のプロモーターは、腎不全モデル動物において遺伝子発現量が増加しており、TGF-βにより誘導され、IL-1により阻害され、細胞外マトリクスの代謝に関与する、ヒトの腎臓に発現しているプロテアーゼMDTS9のプロモーターであるので、本発明のプロモーターの活性を阻害する物質は、TGF-βの生理作用のうち、細胞外マトリクス成分の質的変化及び量的増加に関わる部分だけを抑制又は阻害し、長期投与が想定される慢性腎不全治療及び/又は予防剤として有用である。したがって、本発明のプロモーターであるポリヌクレオチド、発現ベクター、細胞は、慢性腎不全治療及び/又は予防剤のスクリーニングツールとして有用であり、本発明のプロモーターであるポリヌクレオチド、発現ベクター、細胞を用い、慢性腎不全治療及び/又は予防剤のスクリーニングが可能である。また、慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の品質規格の確認試験における本発明のプロテアーゼの活性を阻害するか否かを分析する工程、及び製剤化工程を含む、慢性腎不全治療及び/又は予防用医薬組成物の製造も可能とした。
配列表フリーテキスト
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号3及び4の配列で表される各塩基配列は、人工的に合成したリンカー配列である。また、配列表の配列番号5〜9、13及び14、及び20〜22の配列で表される各塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である。更に、配列表の配列番号11の配列で表されるアミノ酸配列は、制限酵素NotI認識ヌクレオチド配列及びFLAGタグアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNAの発現により得られるアミノ酸配列である。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【配列表】
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Claims (8)

  1. 配列番号17の3253番目から5023番目で表される塩基配列、又は、配列番号17で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
  2. 下記(1)乃至(3)から選択されるいずれかの塩基配列を含み、配列番号2記載のポリペプチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
    (1)配列番号17の3253番目から5023番目で表される塩基配列、あるいは、配列番号17の3253番目から5023番目で表される塩基配列の中において、1〜10個の塩基が置換、欠失、及び/又は挿入されている塩基配列、
    (2)配列番号17で表される塩基配列、あるいは、配列番号17記載の塩基配列の中において、1〜10個の塩基が置換、欠失、及び/又は挿入されている塩基配列、並びに、
    (3)配列番号17の3253番目から5023番目で表される塩基配列、又は、配列番号17で表される塩基配列。
  3. 請求項2記載の発現ベクターでトランスフェクションされた細胞。
  4. 請求項1記載のポリヌクレオチド、又は、請求項3記載の細胞からなる慢性腎不全治療及び/又は予防用物質スクリーニングツール。
  5. 請求項1記載のポリヌクレオチド、又は、請求項3記載の細胞の慢性腎不全治療及び/又は予防用物質スクリーニングのための使用。
  6. (1)請求項3記載の細胞と、試験化合物とを接触させる工程、及び(2)プロモーター活性を検出する工程を含む、試験化合物が請求項1乃至請求項2記載のポリヌクレオチドのプロモーター活性を阻害するか否かを分析する方法。
  7. 請求項6記載の方法による分析工程、及びプロモーター活性を阻害する物質を選択する工程を含む、配列番号2記載のポリペプチドの発現を抑制する物質をスクリーニングする方法。
  8. 請求項7記載の方法により、慢性腎不全治療及び/又は予防用物質をスクリーニングする方法。
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