JP3688390B2 - 長尺絶縁基材用リール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルムキャリア等の製造過程で使用する長尺絶縁基材を巻き取るための長尺絶縁基材用リールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フィルムキャリアは、電子機器の小型化・薄型化に対応できいるため、電子部品を搭載する回路基板として広い分野で利用されている。フィルムキャリアの製造方法として、リールに巻き取られた長尺絶縁基材(エポキシガラステープ等)を他のリールに巻き取りながらその長尺絶縁基材に対し連続的に所定の加工処理を施していく、いわゆるリール・トゥ・リール方式の製造方法が知られている。
【0003】
図7はリール・トゥ・リール方式による製造工程の一つで、長尺絶縁基材に銅箔テープを貼り付ける工程を示す。リール51に巻き取られた長尺絶縁基材Aを他方のリール52に巻き取りながら、その接着剤面に銅箔テープBを連続的に貼り合わせていき、貼り合わせた長尺絶縁基材Aと銅箔テープBを一対のローラ54で熱圧着して密着させる。こうして銅箔テープBを貼り付けた状態の長尺絶縁基材Aが巻き取られたリール52は、オーブン炉の中で接着剤を硬化させるため所定加熱温度で保持される。
【0004】
従来、リール51(52)は図8のような構造を有していた。すなわち、リール51はテープ状の長尺絶縁基材Aを巻き取るための円筒状の芯部55と、芯部55の周面に巻き取られた長尺絶縁基材Aを幅方向にガイドするため所定間隔を隔して軸部56により連結固定された一対の円板状の鍔部57とから構成される。軸部56にはリール51を支柱58(図7に示す)に挿通支持するための挿通穴56aが形成されており、リール51は挿通穴56aを介して支柱58に一体回転可能に取付けられる。通常、長尺絶縁基材Aはその巻き取り始端を、図8に示すようにセロハンテープ等の固定手段59を用いて芯部55の周面に固定し、芯部55に巻き取っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、図9に示すように、長尺絶縁基材Aの巻き取り始端固定位置にはその厚みによる段差dができる。巻き取るだけであれば段差dはさほど問題にはならない。しかし、接着剤を硬化させる加熱処理時に、接着剤の硬化収縮により収縮した長尺絶縁基材Aが芯部55の周面に強く締めつけられるため、段差dに対応する部位に数層に亘って段差dに起因する傷(跡)が入っていた。傷が入った部分は不良となるためそれだけ生産性の低下をもたらすという問題があった。また、その傷により不良箇所が増えると、それだけ検査を慎重に行わなければならず、検査時間や検査回数を増やすなどの対処が必要となり、このことも生産性の低下の原因となる。
【0006】
この対策として、接着剤の硬化のための加熱処理を施す前に長尺絶縁基材Aをリールを使わず緩く巻き取るだけ(ルーズ巻き)とし、このルーズ巻きの長尺絶縁基材Aに加熱処理を施すようにしていた。この方法によると、加熱処理時に収縮してもルーズ巻きであるため締めつけられることがないので、長尺絶縁基材Aに傷が付くすることはない。しかし、長尺絶縁基材Aを緩く巻き取る作業が人手によらなければないうえ、巻き取り時に長尺絶縁基材Aが擦れ合って傷が付くという別の問題を引き起こしていた。従って、この方法を採用しても、歩留りの向上を図ることは困難であった。
【0007】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、長尺絶縁基材をリールに巻き取ったまま施される処理時に、長尺絶縁基材が収縮しても、リールに巻き取られた長尺絶縁基材にその巻き取り始端の段差に起因する傷が付くことを防止することができる長尺絶縁基材用リールを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため請求項1に記載の発明では、銅箔テープが接着剤を介して貼り付けられた長尺絶縁基材を重ねて巻き取るための略円筒状の芯部と、該芯部に巻き取られた前記長尺絶縁基材を幅方向にガイドするための一対の鍔部とを備えた長尺絶縁基材用リールであって、前記芯部は前記長尺絶縁基材が巻き取られる周面の径が変更可能に設けられて、同芯部に巻き取られた前記長尺絶縁基材に対して接着剤を硬化させる加熱処理が施される前に、前記芯部の径を小さくし、加熱処理後に前記芯部の径を大きくするようにした。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の長尺絶縁基材用リールにおいて、前記芯部は、前記長尺絶縁基材を巻取可能な周面を形成するように円環状をなして前記鍔部に取付けられる帯体であって、前記鍔部に対する該帯体の両端固定位置の少なくとも一方がその周面の径を変更可能に位置変更可能に設けられている。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の長尺絶縁基材用リールにおいて、前記一対の鍔部の間には該鍔部を所定間隔に保持させる補強部材が前記帯体の内側に設けられており、該補強部材は前記鍔部の軸心に対して前記帯体の両端固定部位と反対側に偏心して配置されている。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の長尺絶縁基材用リールにおいて、前記芯部は、前記長尺絶縁基材が巻き取られる周方向に複数分割された小部材群と、該小部材群を半径方向に個々に移動可能に案内する案内部材と、該小部材群を少なくとも径が大きくなる位置で前記案内部材に対して位置規制する規制手段とを備えている。
【0012】
従って、請求項1に記載の発明によれば、銅箔テープが接着剤を介して貼り付けられた長尺絶縁基材は、径を大きくした芯部の周面に対し、幅方向に一対の鍔部にガイドされた状態で重ねて巻き取られる。この巻き取った長尺絶縁基材に対して接着剤を硬化させ収縮を伴うような加熱処理をリールごと施す場合には、芯部の径を小さく変更して長尺絶縁基材が芯部の周面に緩く巻き取られた状態とされてから、その処理は施される。この処理中、長尺絶縁基材は収縮しようとするが、長尺絶縁基材は芯部に緩く巻き取られた状態にあるため、長尺絶縁基材は収縮しても芯部の周面に強く締めつけられることがない。従って、長尺絶縁基材にその巻き取り始端の段差に起因する不良となる傷(跡)が形成されることが回避される。また、この処理終了後、芯部の径を大きくすることにより、長尺絶縁基材の緩みは取り除かれる。そのため、その後の加工工程でリールに巻き取られたまま回転されても、長尺絶縁基材に擦れ傷が発生することはない。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、帯体が長尺絶縁基材を巻取可能な周面を形成するように円環状をなし、周面の径を変更可能にその両端が鍔部に対して位置変更可能に固定されることにより芯部が形成される。そのため、鍔部に対する帯体の両端のうち少なくとも一端の固定位置を変更することにより、長尺絶縁基材が巻き取られる大径と、長尺絶縁基材の処理時にそれを緩く巻き取った状態とする小径とに帯体の周面の径を変更することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、一対の鍔部の間に該鍔部を所定間隔に保持するため前記帯体の内側に設けられた補強部材は、鍔部に対して帯体の両端固定部位と反対側に偏心して配置される。そのため、帯体の鍔部に対して固定されない側、すなわち帯体の周面の径の変更時に半径方向に変位する部位が補強部材に当接して所定量以上のずれが規制されることにより、帯体が鍔部に対してその軸心と直交する面方向に例えば変形などのために大きくずれることが抑えられる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、長尺絶縁基材が巻き取られる周方向に分割された芯部を構成する小部材群は、規制手段により径が大きくなる状態に保持され、この状態で長尺絶縁基材の巻き取りが行われる。規制手段が解除されると、小部材群が案内部材に案内されて半径方向中心側に移動可能となり、長尺絶縁基材が緩く巻かれた状態となるように、芯部の径が小さくなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0017】
図1〜図3に示すように、長尺絶縁基材用リールとしてのリール1は、芯部及び帯体としての金属リング2と、2枚の円板状のアルミニウム製の鍔部3a,3bと、鍔部3a,3bを両者の軸心が一致するように固定する軸部材4と、鍔部3a,3bを所定間隔に保持するため介装される円筒状の補強部材5とから構成される。
【0018】
図1,図3に示すように、軸部材4は、各鍔部3a,3bにそれぞれ固定された2つの略円筒状のブロック4a,4bから構成されており、その先端が嵌合状態で固定されることにより、鍔部3a,3bは一体的に固定されている。図1〜図3に示すように、軸部材4にはリール1を支持するための支柱(図示せず)を通すための挿通穴6が形成されており、挿通穴6の回りには支柱に対してリール1を一体回転可能に固定する係止ピン(図示せず)を差し込むための複数個の穴4c(図2,図3に示す)が形成されている。複数個の穴4cのうちいずれか1つに係止ピンが挿通される。
【0019】
金属リング2は、帯状のアルミプレート7と、アルミプレート7の両端部に固定された2本の支持ロッド8,9とからなる。図1,図4に示すように、アルミプレート7はその第1端部側に形成された開口7aに、第1端部側の幅よりも細く形成された第2端部側の延出部7bを挿通させることにより円環状をなしており、延出部7bはその先端に固定された支持ロッド9により開口7aから抜け止めされている。金属リング2は、鍔部3aに対して支持ロッド8をビス10により締結固定するとともに、鍔部3bに形成された長穴11を介して外側から位置決めネジ12が支持ロッド9に締結固定されることで、両鍔部3a,3bに対して固定されている。つまり、金属リング2は2本の支持ロッド8,9がぞれぞれ鍔部3a,3bに対してビス10,ネジ12により2箇所で固定されることにより鍔部3a,3bに取付けられている。
【0020】
位置決めネジ12による支持ロッド8の固定位置を長穴11に沿って変更することにより、金属リング2の径が変更可能となっている。すなわち、支持ロッド9を支持ロッド8に近づけた図4(a)に示す状態で位置決めネジ12を固定することにより、金属リング2の径が大きく調節され、支持ロッド9を支持ロッド8から離間させた図4(b)に示す状態で位置決めネジ12を固定することにより、金属リング2の径が小さく調節されるようになっている。
【0021】
本実施形態では、図4(a)に示すように金属リング2の径を大きくした状態で長尺絶縁基材Aを巻き取り、接着剤硬化のための加熱処理は、金属リング2の径を小さくした図4(b)に示した状態で行われるようになっている。長尺絶縁基材Aの巻き取り始端は、支持ロッド8が固定された金属リング2の第1端部側周面上にカプトンテープ等により接着固定されるようになっており、位置決めネジ12を図4(a)の状態から図4(b)の状態にその固定位置を移動させて金属リング2の径を小さく調節したときに、金属リング2と長尺絶縁基材Aとの間に隙間ができるようにしている。
【0022】
補強部材5は、金属リング2と同程度の幅を有した円筒状の部材であり、金属リング2だけでは強度的に鍔部3a,3bを所定間隔に保持し切れない恐れがあるため、補強のため図1〜図3に示すように金属リング2の内側において長穴11側と反対側に偏心した状態で鍔部3a,3b間に介装されるように鍔部3aに対して複数のビス13(図3に示す)により固定されている。
【0023】
金属リング2はその両端の2箇所で鍔部3a,3bに対して固定されているだけであり、金属リング2の変形などのためその反対側部位が鍔部3a,3bの面方向にずれる恐れがあるため、金属リング2の軸心が鍔部3a,3bの軸心に対してずれないようにガイドする意味から補強部材5を偏心させている。そのため、補強部材5は、金属リング2を長穴11の範囲内で最小径にしたときに金属リング2の長穴11と反対側部位に軽く接する程度の位置に配置されている。
【0024】
また、補強部材5を長穴11に対して反対側に偏心させることでリール1の重心をずらせることにより、空(送出先)のリール1を支柱に挿通支持したとき、長尺絶縁基材Aの巻き取り始端の固定箇所である金属リング2の両端交差部側(長穴11側)が上側にくるようにリール1が回転して止まるようにしている。なお、金属リング2はリール1の許容巻取重量の長尺絶縁基材Aの巻き取りに耐えるだけの強度を有している。また、本実施形態では位置決めネジ12の調節位置により金属リング2の直径がリール1の直径に対して約2%程度(例えば金属リング径約300mmに対して5mm程度の割合)変更可能となっている。
【0025】
次に、上記のように構成されたリール1の作用を説明する。
通常の巻き取り使用目的でリール1を使用するときには、図4(a)に示すように位置決めネジ12を長穴11の左端に位置させた状態で支持ロッド9を鍔部3bに固定し、金属リング2の径を大きくした状態で使用する。金属リング2は、巻き取られた長尺絶縁基材Aの重量等のため変形してその固定端と反対側となる部位が鍔部3a,3bの面方向に変位しても、鍔部3a,3bに対して偏心する補強部材5の外周面に当接してそれ以上ずれないようにガイドされるため、鍔部3a,3bの面方向において金属リング2が大きくずれることが防止される。
【0026】
リール・トゥ・リール方式により長尺絶縁基材Aに銅箔テープBを貼り付ける工程を施す場合、送出元のリール1に巻き取られた長尺絶縁基材Aの巻き取り始端を、送出先の空リール1の大径とされた金属リング2の周面上にカプトン(ポリイミド)テープ等で固定する。
【0027】
このとき、支柱に挿通支持された送出先の空リール1は、偏心した補強部材5による偏心した重心のため金属リング2の両端交差部側(長穴11側)が上側にくる状態で回転して停止する。そのため、長尺絶縁基材Aの巻き取り始端を空リール1に固定する箇所が上側にくるので、その巻き取り始端を金属リング2の外周面に固定する固定作業がし易くなる。長尺絶縁基材Aの巻き取り始端はポリイミドテープ等により金属リング2の第1端部側に固定される。
【0028】
こうして送出元のリール1から送出先のリール1に長尺絶縁基材Aを巻き直すリール・トゥ・リール方式の工程により、長尺絶縁基材Aに対する銅箔テープBの貼り付けが行われる。そして、銅箔テープBが接着剤を介して貼り付けられた長尺絶縁基材Aの送出先リール1への巻き取りが終わると、そのリール1をオーブン炉中に入れて接着剤を硬化させる加熱処理が施される。
【0029】
オーブン炉に入れる前に、リール1の金属リング2の径を小さくする。すなわち、図4(a)に示す位置にある位置決めネジ12を緩めるとともに長穴11に沿って同図左方向へ位置決めネジ12を移動させ、支持ロッド9を支持ロッド8から離間する方向に移動させることにより金属リング2の径を小さくする。そして、図4(b)に示す位置で位置決めネジ12を締結し、金属リング2を小径に保持する。その結果、金属リング2に巻き取られた長尺絶縁基材Aと金属リング2との間に隙間ができ、長尺絶縁基材Aが金属リング2に対して緩く巻き取られた状態となる。この状態でリール1はオーブン炉の中に入れられる。
【0030】
この加熱処理中において、長尺絶縁基材Aは接着剤の硬化収縮により収縮して巻き締まる。しかし、長尺絶縁基材Aは金属リング2に対して緩く巻き取られた状態にあるため、長尺絶縁基材Aは収縮しても金属リング2の外周面に強く締めつけられることはない。従って、長尺絶縁基材Aにその巻き取り始端の段差に起因する傷(跡)が付くことはない。よって、フィルムキャリアの生産に使用できない不良部分が少なくなり、生産性の向上に寄与する。
【0031】
こうして加熱処理(接着剤硬化処理)が終わると、位置決めネジ12を長穴11に沿って図4の右方向に戻して金属リング2の径を大きくし、長尺絶縁基材Aが金属リング2に対して緩みなく巻き取られた状態とし、次の工程に運ばれる。なお、加熱処理後に大径に戻された金属リング2の径は、加熱処理による長尺絶縁基材Aの収縮分だけは初期の径より若干小径となっている。
【0032】
これ以降の工程で同じようにリール・トゥ・リール方式による工程が実施されても、リール1に巻き取られた長尺絶縁基材Aに緩みがないので、緩んだときにできる回転擦れによる擦れ傷がつくこともない。
【0033】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下に示す効果を得る。
(a)長尺絶縁基材Aが巻き取られる金属リング2を、帯状のアルミプレート7を円環状をなすとともに、鍔部3a,3bに固定したその両端部のうち一方の支持ロッド9の位置決めネジ12による固定位置を長穴11に沿って変更することにより、金属リング2の径を変更可能とした。そのため、金属リング2の径を大径とした状態で長尺絶縁基材Aを巻き取ったリール1を、金属リング2を小径にした状態で加熱処理をすれば、加熱処理中の接着剤の硬化収縮のために長尺絶縁基材Aが収縮しても、長尺絶縁基材Aが金属リング2の外周面に強く締めつかずに済むため、巻き取り始端の段差に起因する傷ができることを防止できる。また、加熱処理後に位置決めネジ12の位置を調節して金属リング2を大径に戻せば、長尺絶縁基材Aが緩み無く巻き取られた状態となるため、その後のリール・トゥ・リール方式による工程において、緩く巻き取られたことに起因してできる擦れ傷も確実に防止できる。
【0034】
(b)長穴11に沿って位置決めネジ12の固定位置を決めることにより、金属リング2の径を長穴11の範囲で連続的に変更可能としたので、収縮後の長尺絶縁基材Aに無理な力が加わらない程度に緩み無しの状態に金属リング2の径を大径に戻すことができる。
【0035】
(c)補強部材5を金属リング2の両端固定箇所(長穴11側)と反対側に偏心させ、金属リング2に巻き取られた長尺絶縁基材Aの重量等のため金属リング2が変形し、その固定端部と反対側部位が鍔部3a,3bの面方向に変位しても補強部材5に当接してそれ以上ずれないようにガイドされるようにしたので、金属リング2が鍔部3a,3bに対してその面方向に大きく位置ずれすることを防止することができる。
【0036】
(d)補強部材5を長尺絶縁基材Aの巻き取り始端の固定箇所(金属リング2の第1端部側)と反対側に偏心させ、支柱に挿通支持させたリール1を金属リング2の第1端部側が上方にくるように回転して停止するようにリール1の重心を偏心させたので、長尺絶縁基材Aの巻き取り始端を送出先のリール1の金属リング2の周面に固定する作業をし易くすることができる。
【0037】
(e)帯状のアルミプレート7の第1端部側に開口7aを形成し、その開口7aに第2端部側の延出部7bを差し込んで円環状をなすようにしたので、アルミプレート7を円環状としたときにその両端の交差部(重なり部)にできる段差を極力小さくすることができる。アルミプレート7の両端交差部の段差によっては金属リング2の周面上に巻き取られた長尺絶縁基材Aに傷が付くことはないものの、段差を小さくすることにより段差の当たり部位において長尺絶縁基材Aに与える悪影響を極力小さくすることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図5,図6に基づいて説明する。
図5に示すように、長尺絶縁基材用リールとしてのリール21は、案内部材としての円環状のガイド部材22に対して半径方向(図5における矢印方向)に移動可能にその外周縁部にて係合されて設けられた小部材群を構成する4個1組で略円環をなす略扇形状を有する扇状部材23を備えている。図5,図6に示すように扇状部材23は、それぞれ一対の鍔部23aと、長尺絶縁基材Aが巻き取られる周面を形成する芯部としての底部23bとから構成されている。
【0039】
各扇状部材23の底部23bの裏面は、規制手段としての台錐形状を有する嵌入部材24が嵌入可能にテーパ状に形成されている。また、扇状部材23とガイド部材22との係合部には図示しない弾性部材(例えばバネやゴム)が介装されており、扇状部材23はガイド部材22に対して弾性部材により半径方向内側に付勢されている。そのため、嵌入部材24を4個の扇状部材23の各裏面で形成されるテーパ状の挿入部25(図5に示す)に弾性部材の付勢力に抗して嵌入することにより、長尺絶縁基材Aが巻き取られる周面(各扇状部材23の底部23bの外周面にて形成される周面)の径が大きくなる。そして、嵌入部材24を挿入部25から抜き取ることにより、各扇状部材21が弾性部材の付勢力により半径方向内側に変位し、長尺絶縁基材Aが巻き取られる周面の径が小さくなるようになっている。
【0040】
従って、通常の巻き取り使用目的の場合は、嵌入部材24を各扇状部材23の底部23b裏面で形成された挿通部25に嵌入し、各扇状部材23を弾性部材の付勢力に抗して半径方向外側に変位させることにより、長尺絶縁基材Aが巻き取られる周面の径を大きくする。
【0041】
銅箔テープBの貼り付け後の長尺絶縁基材Aは径が大きくされたリール21の周面に対して巻き取られ、接着剤を硬化させるための加熱処理の前にリール21から嵌入部材24が抜き取られる。嵌入部材24を抜き取ると、各扇状部材23は弾性部材の付勢力により半径方向内側へスライドし、長尺絶縁基材Aが巻き取られた周面の径が小さくなり、長尺絶縁基材Aがリール21に緩く巻き取られた状態となる。
【0042】
従って、加熱処理において接着剤の硬化収縮により長尺絶縁基材Aが収縮しても、長尺絶縁基材Aが各扇状部材23の底部23bの外周面で形成される周面に強く締めつけられることがないため、その巻き取り始端の段差に起因する傷が発生することが防止される。そして、加熱処理を終えると、嵌入部材24を再び各扇部材23の裏面により形成される挿入部25に嵌入する。嵌入部材24が嵌入されると弾性部材の付勢力に抗して各扇状部材23が半径方向外側へスライドし、長尺絶縁基材Aが各扇状部材23の底部23bにより形成された周面に緩み無く巻き取られた状態とされる。なお、通常の巻き取り時には、各扇状部材23の隙間(図5では誇張して広く描いている)ができるが、通常の巻き取り時の締めつけ力程度ではその隙間部によって長尺絶縁基材Aに傷つくことはない。
【0043】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下に示す効果を得る。
(a)4個1組の扇状部材23を半径方向に移動可能にガイド部材22に係合して設けるとともに、各扇状部材23の裏面で形成された挿入部25に嵌入部材24を嵌入して各扇状部材23を半径方向外側へスライドさせることにより長尺絶縁基材Aを巻き取る周面の径が大きくなるようにした。そのため、嵌入部材24を挿入部25に嵌入したリール21の大径状態で長尺絶縁基材Aを巻き取った後に、嵌入部材24を抜き取ってリール21を小径状態とし、長尺絶縁基材Aを緩く巻き取った状態としてから加熱処理をすれば、加熱処理(接着剤硬化処理)時に長尺絶縁基材Aが収縮しても、その巻き取り始端の段差に起因する不良の発生を防止することができる。また、加熱処理後に嵌入部材24を再び挿入部25に嵌入させることにより、長尺絶縁基材Aが緩み無く巻き取られた状態となるので、その後のリール・トゥ・リール方式の工程において、緩く巻き取られたときの回転擦れでできる傷の発生も確実に防止できる。
【0044】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で例えば次のように変更することができる。
(1)第1実施形態において、補強部材5がなくても強度的に問題なければ、補強部材を無くした構造を採用してもよい。
【0045】
(2)第1実施形態では補強部材5を偏心させたが、補強部材5を偏心させない構造としてもよい。
(3)第1実施形態では金属リング2の両端を交差させたが、その両端を円環をなすまでに交差させずに、その両端間に隙間が形成された状態で鍔部3a,3bに対して少なくとも一方が移動可能に固定させた構成としてもよい。この構成によれば、帯体としての金属リング2の両端を半径方向に同じ距離に位置させることができる。
【0046】
(4)長尺絶縁基材Aの巻き取り始端の金属リング2に対する固定箇所はその第1端部側(支持ロッド8側)に限定されない。支持ロッド9側に長尺絶縁基材Aの始端を固定すると、金属リング2の径を小さくすべく支持ロッド9を変位させたときに長尺絶縁基材Aの始端も一緒に変位されてしまい、長尺絶縁基材Aと金属リング2との間に隙間ができ難く、長尺絶縁基材Aを緩く巻かれた状態にすることが困難となる。しかし、それ以外の箇所であれば、長尺絶縁基材Aの巻き取りを緩くするうえで、何ら問題はない。例えば金属リング2の両端固定部位と反対側部位に長尺絶縁基材Aの始端を固定すれば、金属リング2の小径化に伴い長尺絶縁基材Aの始端が半径方向内側に変位することになるため、長尺絶縁基材Aの巻き取りを緩くできる。
【0047】
(5)第1実施形態では金属リング2をアルミニウム製としたが、その材質は特に金属には限定されない。例えば芯部及び帯体としてのリングを必要な強度と耐熱性を確保した樹脂製としてもよい。
【0048】
(6)第2実施形態の構成に代えて、例えば円板状の鍔部に対して芯部を構成する扇状の部材群(小部材群)を半径方向にスライド可能に係合して設け、芯部の構成部材を鍔部に対してスライドさせることにより芯部の径を変更可能とした構造としてもよい。この構成によれば、第2実施形態におけるガイド部材22が不要となり、部品点数を少なくできる。なお、この構成の場合、芯部の構成部材の位置決めは、前記第2実施形態と同様に嵌入部材の嵌入により行ってもよいし、鍔部に対する芯部の各構成部材の位置決めをする位置決めネジの締結によってもよい。また、前記第2実施形態のように、芯部の構成部材を鍔部に対して半径方向内側に付勢する弾性部材(バネやゴム等)を各構成部材と鍔部との係合部に介装してもよい。
【0049】
(7)第2実施形態の扇状部材23や前記(6)の芯部の構成部材の分割数は、3個以上の適宜な数を採用できる。例えば分割数を3個あるいは5個としてもよい。
【0050】
(8)第2実施形態における規制手段は前記嵌入部材24に限定されない。例えば、扇状部材の挿入部に規制部材としての回動部材を嵌着させるとともに、回動部材と各扇状部材の内周面との各係合面を、例えば周方向に径が連続的に変化する面形状とし、回動部材を回動させることにより芯部を構成する各扇状部材(さらには(6)で述べた構成部材も)が各係合面を介して半径方向にスライドして芯部の径を変更可能とした構造としてもよい。この構成によれば、回動部材を回動させる回動操作だけで芯部の径を変更でき、しかも径の変更量を回動部材の回動量により適宜調整することができる。また、回動部材は係止ピンなどを用いて所定回動位置に係止すればよい。
【0051】
(9)第2実施形態や前記(6)において、扇状部材23を半径方向内側へ付勢する弾性部材をなくした構造としてもよい。扇状部材23等の小部材群は大径に保持する規制が解除されさえすれば、長尺絶縁基材Aがその収縮時に芯部の周面に締めつけられることを回避できる。
【0052】
(10)リールの芯部の径を変更する使用目的は、長尺絶縁基材Aに銅箔テープBを貼り付けた接着剤の硬化処理時の長尺絶縁基材Aの収縮による締付け防止に限定されない。その他の用途で芯部の径を変更して使用してもよい。
【0053】
前記実施形態から把握され、特許請求の範囲に記載されていない発明を、その効果とともに以下に記載する。
(イ)請求項3において、前記補強部材は、前記長尺絶縁基材の巻き取り始端を固定する前記帯体の部位と反対側に偏心して配置されている。この構成によれば、補強部材が偏心して配置されたことによりリールの重心が偏心し、リールを回転可能に支持したとき、リールは長尺絶縁基材の巻き取り始端を帯体の固定する側が上方にくるように回転して停止する。そのため、長尺絶縁基材の巻き取り始端を帯体に固定する作業がし易くなる。
【0054】
(ロ)請求項2、請求項3及び前記(イ)において、前記帯体の両端部は、共に該帯体が円環状をなして形成する周面の内方に位置するように交差している。この構成によれば、帯体の両端部が円環内方に位置するため、帯体の両端を円環をなすように重ねても、その重なり部にできる段差を極力小さくでき、長尺絶縁基材が巻き取られる外周面をほぼ円弧面とすることができ、通常の巻き取り時において長尺絶縁基材に傷をつけるまでではないが良くない影響を与える心配を極力低減することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、銅箔テープが接着剤を介して貼り付けられた長尺絶縁基材が重ねて巻き取られる芯部の周面の径を変更可能としたので、巻き取った長尺絶縁基材に対して接着剤を硬化させ収縮を伴うような加熱処理を施す場合には、芯部の径を小さくしてからその処理を施すことにより、その処理時に収縮した長尺絶縁基材が芯部の周面に強く締めつけられることが回避され、長尺絶縁基材の巻き取り始端の段差に起因する傷の発生を防止することができる。
【0056】
請求項2に記載の発明によれば、芯部は、長尺絶縁基材を巻取可能な周面を形成するように円環状をなすとともに、鍔部に対する帯体の両端固定位置の少なくとも一方がその周面の径を変更可能に位置変更可能に設けられているので、帯体の少なくとも一方の端部の鍔部に対する固定位置を変更することにより、長尺絶縁基材が巻き取られた帯体の周面の径を小さくすることができる。
【0057】
請求項3に記載の発明によれば、一対の鍔部を所定間隔に保持させる補強部材を、鍔部の軸心に対して帯体の両端固定部位と反対側に偏心させて配置したので、帯体の鍔部に対して固定されない部位を補強部材によりガイドすることで、鍔部に対してその軸心と直交する面方向への帯体のずれを極力小さく抑えることができる。
【0058】
請求項4に記載の発明によれば、芯部は、長尺絶縁基材が巻き取られる周方向に複数分割された小部材群と、小部材群を半径方向に個々に移動可能に案内する案内部材と、少なくとも径が大きくなる位置で小部材群を位置規制する規制手段とを備えるので、規制手段を解除することにより、小部材群が案内手段に案内されて半径方向に移動可能することにより、芯部の径を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のリールの分解斜視図。
【図2】リールの側面図。
【図3】リールの正断線図。
【図4】(a)はリールの大径状態、(b)はリールの小径状態を示す部分平面図。
【図5】第2実施形態のリールの側面図。
【図6】扇状部材と嵌入部材を示す斜視図。
【図7】リール・トゥ・リール方式による製造工程を示す模式側面図。
【図8】従来技術のリールの斜視図。
【図9】同じくリールの部分側断面図。
【符号の説明】
1…長尺絶縁基材用リールとしてのリール、2…芯部及び帯体としての金属リング、3a,3b…鍔部、5…補強部材、21…長尺絶縁基材用リールとしてのリール、22…案内部材としてのガイド部材、23…小部材群を構成する扇状部材、23a…鍔部、23b…芯部としての底部、24…規制手段としての嵌入部材、A…長尺絶縁基材。
Claims (4)
- 銅箔テープが接着剤を介して貼り付けられた長尺絶縁基材を重ねて巻き取るための略円筒状の芯部と、該芯部に巻き取られた前記長尺絶縁基材を幅方向にガイドするための一対の鍔部とを備えた長尺絶縁基材用リールであって、
前記芯部は前記長尺絶縁基材が巻き取られる周面の径が変更可能に設けられて、同芯部に巻き取られた前記長尺絶縁基材に対して接着剤を硬化させる加熱処理が施される前に、前記芯部の径を小さくし、加熱処理後に前記芯部の径を大きくするようにした長尺絶縁基材用リール。 - 前記芯部は、前記長尺絶縁基材を巻取可能な周面を形成するように円環状をなして前記鍔部に取付けられる帯体であって、前記鍔部に対する該帯体の両端固定位置の少なくとも一方がその周面の径を変更可能に位置変更可能に設けられている請求項1に記載の長尺絶縁基材用リール。
- 前記一対の鍔部の間には該鍔部を所定間隔に保持させる補強部材が前記帯体の内側に設けられており、該補強部材は前記鍔部の軸心に対して前記帯体の両端固定部位と反対側に偏心して配置されている請求項2に記載の長尺絶縁基材用リール。
- 前記芯部は、前記長尺絶縁基材が巻き取られる周方向に複数分割された小部材群と、該小部材群を半径方向に個々に移動可能に案内する案内部材と、該小部材群を少なくとも径が大きくなる位置で前記案内部材に対して位置規制する規制手段とを備えている請求項1に記載の長尺絶縁基材用リール。
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