JP3688126B2 - 架空線自走車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧送電経路の架空地線に沿って走行する自走車両に関し、特に、測定機器を吊り下げた状態で、一定の速度で走行可能な装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
高圧送電経路の架空送電線は、所定の間隔で配置している高い鉄塔に支持されており、2つの鉄塔間でのケーブルは、カテナリ曲線を描いている。前記架空送電線においては、最初に敷設した状態では、下部の樹木との間隔を十分に確保しているものであるが、年月が経つ間に樹木が成長するという自然に発生する問題がある。つまり、ケーブルの敷設後に樹木が成長するために、敷設時には十分に間隔を維持できるように鉄塔の高さを設定し、ケーブルを張り巡らしたのであっても、そのケーブルの下部に位置する樹木の先端がケーブルに接近するという問題が発生する。
【0003】
そこで、その状態を観測するために、従来は航空測量を実施して現地の状況を把握する手段が用いられている。また、特に、5年以内に樹木と接近することが予想される地点では、トランジット測量等の手法を用いて定期的に測定を行い、データを収集し、その後で予想される事態に対する対策を講じている。ところが、前記トランジットを用いて三角測量を行う場合には、電力線と樹木の両方を見通すことができる測量基点が必要となるが、樹林地帯ではその基点を得ることが困難であり、1か所の測定に1日を要する等、非常に能率の悪い作業を強いられることがある。
【0004】
前述したような問題を解消するために、架空地線を走行する自走車両にレーザ測距機を搭載して、樹木の頂部と電力線との間隔とを自動的に測定することが提案されている。ところが、前記レーザ測距機により測定する場合には、架空地線支持物からの正確な距離を計測することが可能となり、測定装置により得られた樹木の高さの情報を、地上において支持物からの距離を図ることにより、正確に知るために、自走車両の走行速度を水平方向に対して一定に設定することが必要であるが、高い鉄塔間に架設されたケーブルにおいては、カテナリ曲線を描いているために、車両の走行速度を水平方向に対して一定に維持させることが困難である。つまり、ケーブルの中間部では略水平な経路に沿って走行可能であるとしても、鉄塔の近辺では急な傾斜角度に沿って走行する必要があり、傾斜の急な箇所では車両が下降する場合には、その自重が作用するために速度が速くなり、急な角度で上昇する際には、速度が低下することは避けられない。また、前記自走車両に垂下させて保持させるレーザ測距機においては、車両の走行角度が変化しても垂直状態を維持する必要がある。前述したように、架空地線に沿わせて自走車両を走行させようとする場合には、そのような測定装置の走行速度を水平方向に対して一定に維持することと、レーザ測距機の姿勢を正確に維持するために、多くの解決を要する問題が出現している。
【0005】
本発明は、前述したような自走車両にレーザ測距機を支持させた樹木離隔測定装置を作成する際に、問題となる事項を解消するもので、架空地線に沿わせて一定の速度で自走させながら樹木離隔測定装置を作動させ得る装置を提供することを目的としている。
【0006】
本発明は、鉄塔間に架設される架空地線に沿って、測定装置を垂直に垂下・支持して走行する自走車両に関する。本発明の請求項1の発明は、架空地線に対して車両の本体フレームを支持し走行させるために、少なくとも2つの走行ローラおよび下部ローラを設け、前記走行ローラのうちの少なくとも1つのローラに駆動装置を接続し、前記駆動装置をモータと、前記モータに対して駆動制御を行うための制御手段とを組み合わせて構成し、前記制御手段には、自走車両の水平方向に対する角度検知手段と走行速度検知手段の情報を入力して、前記自走車両の水平方向に対する走行速度を一定の値に設定することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記走行ローラは、V字状の凹部の中央部に架空地線を収容可能な凹溝を設け、前記凹部と凹溝の表面には弾性体を被覆して構成することを特徴とする。
請求項3の発明は、前記自走車両は、駆動装置のモータと制御手段に給電するための電池を装備し、前記制御手段においては、無線による遠隔制御情報を受信して、メモリにあらかじめ設定している制御情報を随時変更可能な制御を行うことを特徴とする。
【0008】
前述したように構成したことにより、本発明の自走車両は、鉄塔間に架設されたケーブルを上下からローラにより挟む状態で自走することができ、走行を安定した状態で行わせることが可能である。また、自走車両を水平方向に一定の速度で走行させることができ、支持している測定装置等を水平方向に対して一定の速度で移動させることによって、架空地線支持物からの正確な垂直距離を計測することが可能となり、測定装置により得られた樹木の高さの情報を、地上において支持物からの距離を測ることにより、正確に知ることができる。さらに、車両の走行路の傾斜角度や走行速度の測定値を用いて、水平方向に対して一定の速度で移動させるための制御手段を設けていることにより、上り、下りの傾斜路のいずれでも、水平方向に対して一定の速度を維持でき、走行ローラがケーブルに対して滑りを生じないようにすることによって、正確な走行を可能にしている。
【0009】
【発明の実施の形態】
図示される例にしたがって、本発明の架空線自走車両を説明する。図1〜3に示す例は、本発明の自走車両10の構成を示しているもので、自走車両10は架空地線1に懸架されて走行する自走車両として構成される。前記自走車両10は走行ローラ20、21を設けた本体フレーム11に対し、走行装置の電源や制御装置等の搭載荷重15を支持する側フレーム12と、レーザ測距機のような測定装置17を支持軸部材16を介して支持する下部フレーム14とを設けている。また、前記本体フレーム11の上部には、フック等の吊り下げ支持部材(図示を省略)の他に、自走車両を取り扱うためのハンドル18を配置しており、自走車両を架空地線1に対して装着する際と、架空地線から外して別の測定部に向けて移動させる際等に、前記ハンドルを用いることができるようにする。
【0010】
前記自走車両10の本体フレームの所定の位置にはダンパー装置40を設けており、前記ダンパー装置40には本体フレーム11の前後部にダンパー支持部45、46を配置し、前記ダンパー支持部を介してダンパー41、42を設けている。また、前記ダンパー41、42をタイロッド43を用いて接続し、その所定の位置にレバー44を配置して、ダンパーを作動位置と非作動位置とに切り換え可能に設けている。前記ダンパー装置40は、自走車両を架空地線に沿って移動させる際に、障害物の検知とその障害物にあたったことの信号を用いて、自走車両の走行の制御を行うために用いることができる。
【0011】
前記自走車両10において、側フレーム12に支持される搭載荷重15の着脱やその他の目的に対応させて、図3に示されるように、フレームの一方に係合部13を配置しており、前記係合部の着脱により、搭載物15の取扱いに対処させる。また、下部フレーム14に設けるジョイント16は、測定装置17を水平に支持させるために、ユニバーサルジョイント状のものとして構成することができるもので、一般のユニバーサルジョイントと同様に、水平方向で直交するように設けた2つの軸を介して、測定装置17のフレームの上部を支持させるようにする。前記自走車両10において、架空地線1に走行ローラ20、21を支持させて走行するために、自走車両の重心は走行ローラの中央部に設けた凹溝と支持軸部材16とを結ぶ線上に設定され、測定装置17を架空地線1の下部に吊り下げて支持させるように構成する。
【0012】
前記自走車両を架空地線1に沿わせて走行させるために、走行ローラ20に対して駆動装置を配置しており、前記走行ローラ20は図4に示されるように構成される。前記走行ローラ20はローラ本体22の表面に所定の厚さで摩擦係数の大きな弾性体を設けており、前記弾性体としてウレタンゴムのようなものを用い、ローラ本体22の表面に弾性体23を接着して設けている。また、走行ローラの巾方向の中央部には、V字状の凹部を形成して、その凹部の中心には凹溝24を設けて、前記凹溝24を架空地線1の径に合わせて構成し、走行ローラが架空地線1から外れにくいものとして構成している。さらに、架空地線1に対して、上部から乗る状態の2つの走行ローラ20、21の中間部には、前記架空地線の下部に押圧される下部ローラ25を配置し、前記下部ローラ25を付勢手段を備えたリンク26により支持して、架空地線に対する本体フレームの支持と走行の案内を行わせている。
【0013】
前記自走車両の走行装置として、駆動モータ30と伝導部31を設け、走行ローラ20の駆動軸37に対する駆動力の伝達を行うようにしている。前記駆動伝導機構は、図5に詳細に示されるように構成することができるもので、駆動モータ30に設けた遊星ギヤ装置32を介して、その出力軸にプーリ33を設け、ベルト34を介してウォームギヤ装置35の入力軸に設けたプーリ33aに駆動力を伝達する。前記ウォームギヤ装置35は変速比が大きな変速部材として構成されているもので、ウォームギヤ装置の出力軸から、走行ローラの駆動軸37との間に伝導ギヤ装置36を設けている。前記駆動伝導機構においては、駆動モータ30としてサーボモータを使用しており、例えば、遊星ギヤ装置32では、1:14の変速比で設定し、ウォームギヤ装置35においては1:20の変速比とし、伝導ギヤ装置36では60:70の変速比で設定する。
【0014】
したがって、前述したように構成したことにより、駆動モータ30と走行ローラ20の間での変速比は1:327に設定され、自走車両を非常に低速で走行させる装置を構成できる。なお、前記自走車両において、2つの走行ローラ20、21を連動させて走行機構を構成する場合には、前記2つの走行ローラの駆動軸の間に別体のプーリを取付けて、前記プーリにタイミングベルト等の伝導手段を設けて、前記伝導手段を介して連動させることもできる。
【0015】
前記自走車両10を架空地線1に沿わせて走行させる際には、無線制御装置を用いて、任意の位置に居るオペレータが制御の動作を行うが、前記自走車両にも走行の制御プログラムを設定した制御装置50を設けている。前記制御装置50においては、メモリに制御プログラムを設定している制御回路51を配置し、前記制御回路51には速度検出用エンコーダ52と傾き検出用センサ53、およびオペレータからの信号を受信する無線モデム55を接続し、それ等の信号にもとづいてモータ駆動回路55から駆動モータ30に向けて走行速度の制御を行うようにしている。なお、前記制御装置50の制御回路51に入力される信号としては、速度検出用エンコーダ52からは自走車両の走行速度の情報が、傾き検出用センサ53からは自走車両の傾きの情報が、無線モデム55からは自走車両の走行速度を設定する指令信号等がそれぞれ入力される。そして、前記信号にもとづいて、制御回路51からはモータ駆動回路54に対する制御電圧のコントロール信号を出力して、駆動モータ30の回転数の制御を行い、自走車両を一定の速度で走行させるようにする。
【0016】
前述したように、走行装置と制御装置とを配置することは、図7、8に示すように、鉄塔2、3の間に架設された架空地線1がカテナリ曲線を描いていることに対して、その水平部分と急な傾斜部分とのいずれの部分でも、一定の速度で走行させ得るようにするためである。前記図7に示されるように、自走車両10が略水平部分を走行する状態では、駆動装置の本体フレームは水平に近い状態を維持しながら走行する。また、符号10aで示すように、自走車両が架空地線1の傾斜角度が小さい部分を通る際には、本体フレームの傾斜角度も小さいが、符号10bで示すように、鉄塔の近傍を走行する状態では、本体フレームは非常に大きい角度で傾斜する。前述したように、自走車両の傾斜角度が変化しても、自走車両に支持される測定装置17は、図8のように支持軸部材16を介して吊り下げられているために、前記自走車両の傾斜角度が変化しても、支持軸部材により測定装置の水平状態に影響を与えるこなしに、安定した支持状態を維持することができる。
【0017】
本実施例においては、前記架空地線1に沿わせて、自走車両を一定の速度(例えば、5.5m/分)で走行させながら、測定装置を用いて樹木の頂部と下部の電力線との間隔を測定するものである。そして、そのような測定作業を行うためには、水平面に対する測定装置の移動速度を常に一定の値に維持させることが要求される。そこで、本実施例においては、架空地線の傾斜に対応する自走車両の本体フレームの傾斜角度の情報と、実際の走行速度の情報をそれぞれの検知手段から得て、駆動モータに対する制御電圧を出力させ、架空地線の傾き等の影響によって生じる誤差を補正させる。そして、無線モデムを介して送信される速度制御情報にもとづいて、実際の自走車両の走行速度を制御し、測定装置による測定作業に対応させることができるようにする。
【0018】
前記制御装置において、傾き検出用センサ53から得られる情報にもとづいて、自走車両の傾斜角度を算出し、指令されている水平速度に対応させて、架空地線に沿わせて走行させる速度を設定する。また、速度検出用エンコーダ52からの情報では、エンコーダの平均パルス巾から自走車両の実速度を算出するが、前記実速度は走行ローラの一周の長さと、走行ローラを1回転させるために要した時間の情報から算出できる。そして、前記速度情報から速度補正値を算出し、自走車両に要求された実速度に速度補正値を加えた制御電圧を、モータ駆動回路からサーボモータに向けて出力させることにより、自走車両を一定の速度で走行させる制御を行う。前記自走車両を構成して、実際に鉄塔間に架設した架空地線に沿わせて自走車両を走行させた結果、表1に示すような走行性能を発揮させることができた。
【0019】
【表1】
前記表1に見られるような試験結果を得ることができたが、実際の測定装置による測定時には、例えば、自走車両の等速時の走行速度つまり、鉄塔間の地表面の傾斜を考慮しない純粋な水平方向の速度を、毎分5.5mに近似する値に維持することが要求されることがある。また、走行路の下り傾斜部分では、特に、マイナス25度の角度では、目標に対して10%程度高速になるという傾向が見られた。そこで、前記自走車両に設ける制御装置の制御手段に対して、制御信号の演算サイクルを早めることにより、下り方向の等速度制御に対処させること、および、駆動モータの性能を向上させること等の改良を加えた。さらに、自走車両の自重による下り方向の荷重の影響を排除して、外乱の影響をなくするために、ウォームギヤ装置による減速と駆動伝達の方式を良好なものとする等の改良を施すことができる。そして、前述したような改良を行ったことによって、架空地線のいずれの角度の部分を走行する場合でも、自走車両の走行時の速度を5.5m/分に設定して、測定装置の水平方向(地球の水平線方向)に対する走行速度を、一定の速度に維持できるようにしている。
【0020】
なお、前記本実施例に示す自走車両において、自走車両と吊り下げて支持する測定装置の重量に応じて、装置を駆動する駆動モータの性能と、給電のためのバッテリの容量等を設定することができる。また、自走車両が走行中に停止した場合には、同一の架空地線を走行する救援ロボットとしての自走車両を準備しておき、前記救援ロボットにより自走車両のフレームの一部を係止して、回収位置まで移動させることができる。さらに、走行ローラの構成において、ケーブルに係合する凹溝の断面形状や、V字状の形状等は、特に図示された形状のものに限定されることはない。そして、ケーブルに沿って安定した走行性能を有するものであれば、ゴムライニングの厚さや、使用する弾性体の種類等を任意に選択して用いることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の自走車両は、前述したような構成を有するものであるから、鉄塔間に架設されたケーブルを上下からローラにより挟む状態で自走することができ、走行を安定した状態で行わせることが可能である。また、自走車両を水平方向に一定の速度で走行させることができ、支持している測定装置等を一定の速度で移動させることによって、測定装置での正確な測定値を得ることができる。さらに、車両の走行路の傾斜角度や走行速度の測定値を用いて、一定の速度で移動させるための制御手段を設けていることにより、上り、下りの傾斜路のいずれでも、一定の速度を維持でき、走行ローラがケーブルに対して滑りを生じないようにすることによって、正確な走行を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の自走車両の側面図である。
【図2】 自走車両の平面図である。
【図3】 自走車両の正面図である。
【図4】 自走車両の走行と駆動機構の構成を示す説明図である。
【図5】 図4の駆動装置の詳細な説明図である。
【図6】 本発明の制御装置の構成の説明図である。
【図7】 自走車両の走行状態の説明図である。
【図8】 自走車両と測定装置の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 架空地線、 2・3 鉄塔、 10 自走車両、
11 本体フレーム、 12・14 フレーム、 15 荷重、
16 支持軸部材、 17 測定装置、 20・21 走行ローラ、
23 弾性体、 24 凹溝、 25 下部ローラ、
26 リンク、 30 駆動モータ、 31 伝導部、
32 遊星ギヤ装置、 34 ベルト、 35 ウォームギヤ装置、
36 伝導ギヤ装置、 40 ダンパー装置、 41・42 ダンパ、
50 制御装置、 51 制御回路、 52 速度検出用エンコーダ、
53 傾き検出用センサ、 54 モータ駆動回路、
55 無線モデム。
Claims (3)
- 鉄塔間に架設される架空地線に沿って、測定装置を垂直に垂下・支持して走行する自走車両であって、
架空地線に対して車両の本体フレームを支持し走行させるために、少なくとも2つの走行ローラおよび下部ローラを設け、
前記走行ローラのうちの少なくとも1つのローラに駆動装置を接続し、
前記駆動装置をモータと、前記モータに対して駆動制御を行うための制御手段とを組み合わせて構成し、
前記制御手段には、自走車両の水平方向に対する角度検知手段と走行速度検知手段の情報を入力して、
前記自走車両の水平方向に対する走行速度を一定の値に設定することを特徴とする架空線自走車両。 - 前記走行ローラは、V字状の凹部の中央部に架空地線を収容可能な凹溝を設け、前記凹部と凹溝の表面には弾性体を被覆して構成することを特徴とする請求項1に記載の架空線自走車両。
- 前記自走車両は、駆動装置のモータと制御手段に給電するための電池を装備し、
前記制御手段においては、無線による遠隔制御情報を受信して、メモリにあらかじめ設定している制御情報を随時変更可能な制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の架空線自走車両。
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