JP3680764B2 - マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、割れが発生しないマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法に係り、より詳しくは、製管したままの状態の製管にスウェージ等の冷間加工を施した後、応力除去熱処理を施さなくても割れが発生しないマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルテンサイト系ステンレス鋼は、強度、靱性といった機械的特性に加え、耐食性、耐熱性にも優れているため、油井管の材料として使用されることが多い。マルテンサイト系ステンレス鋼の中でも、AISI(全米鉄鋼協会)420鋼に代表されるCr含有量が約13%のマルテンサイト系ステンレス鋼、いわゆる13%Cr鋼は、炭酸ガス、硫化水素、塩素イオンに曝される厳しい環境下でも十分に耐えうる耐食性を有するため、特に油井管の鋼材として多用される。
【0003】
マルテンサイト系ステンレス鋼を油井管、特に小径チュービングとして使用する場合、油井管同士を接合するため、その管端部をスウェージ、エキスパンド等の冷間加工し、特殊なネジ切り加工を施す必要がある。熱処理した油井管にスウェージを施し、最終製品とした場合、管端部には残留応力が発生し、硬度が上昇するため、SSC(硫化物応力割れ)が発生する。SSCの発生は応力除去熱処理により応力を緩和させ、硬度を低下させることで防止することができる。
【0004】
応力除去熱処理を行えば、製造工数が増え、製造コストが上昇する。この応力除去熱処理を省略するには、焼入れ、焼戻しが必要とされる熱処理品であれば、熱処理を施す前に製管したままの状態の油井管にスウェージを施せばよい。しかし、熱処理品以外の製品では、加工後、短時間で応力除去熱処理または焼入れ・焼戻しなどの熱処理を実施しないと硬度の上昇と残留応力に起因する割れが生じる。スウェージ直後に応力除去熱処理と同様の熱処理を行えば、この割れの発生を防止することができるが、この場合も、最終工程として熱処理工程を加えるため、製造工数および製造コストの上昇は避けられない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
油井管を効率よく製造する観点から、応力除去熱処理を行わないでマルテンサイト系ステンレス鋼管の管端部に生じる割れを防止するための発明がされている。特開平9−111345号公報には、鋼管中のH含有量を規制あるいは、さらに加工温度を制限することにより割れの防止を試みた発明が開示されている。
【0006】
上記公報に開示された発明では、鋳造直前におけるH含有量が0.00025重量%以下である鋼材を、パイプ形状に熱間加工してマルテンサイト組織の素管を作製し、冷間加工してマルテンサイト系ステンレス鋼管を製造する。しかし、この発明では、鋼中のH含有量を0.00025重量%と極めて低濃度まで下げなければならず、脱水素のために軟化、徐冷等の特別な処理を行えば、製造工数の増加および製造コストの上昇は避けられない。
【0007】
また、上記公報に開示された別の発明では、鋳造直前におけるH含有量が0.00055重量%以下である鋼材を、パイプ形状に熱間加工してマルテンサイト組織の素管を作製し、この素管を550℃以上の温度領域に再加熱し、熱間加工してマルテンサイト系ステンレス鋼管を製造する。しかし、この発明では、H含有量を極低濃度にする必要はないものの、この場合にも、素管の製造後、550℃以上に再加熱する必要があるので、製造工数の増加および製造コストの上昇は避けられない。
【0008】
【課題を解決するための手段】
マルテンサイト系ステンレス鋼管を、製管したままの状態で冷間加工することにより発生する割れは、遅れ破壊(静的疲れ破壊ともいう)が原因である。遅れ破壊とは、マルテンサイト系ステンレス鋼を引張強さよりも低い負荷状態にした場合、引張応力の集中箇所にHが集中して起こる脆性破壊のことであり、冷間加工によりマルテンサイト系ステンレス鋼に導入される残留応力、硬度上昇および鋼中に残留するHの相乗効果により生じる。冷間加工した直後、応力除去熱処理を行えば、遅れ破壊は防止することができるが、応力除去熱処理によって製造コストの上昇を招くことになる。また、製管し、熱処理した後に冷間加工を行えば、最終製品に加工の影響が残り、性能が低下する。このため、応力除去熱処理が必要となり、製造工数、製造コストの上昇を招く。
【0009】
本発明者は、冷間加工により最終製品の性能を低下させず、かつ応力除去熱処理を行うことなく、遅れ破壊による割れを防止するために、マルテンサイト系ステンレス鋼管の組成と加工方法を規定することによりマルテンサイト系ステンレス鋼管に割れが生じない製造方法を検討した。
【0010】
まず、鋼管中に侵入型に存在するCとNに着目した。CとNは冷間加工により発生した転位を固着し硬度を上昇させる効果を有する。硬度の上昇は割れを誘発するため、CとNの含有量は一定以下であることが必要である。そこで、CとNの含有量を規定することで、割れを防止することができる。
【0011】
また、鋼管を製造する際の加工方法についても着目した。鋼管を製造する場合、通常、ビレットに熱間で穿孔・圧延等を施し鋼管状に形状を整える。その際、最終加工における仕上圧延の圧延温度が低いと再結晶が不十分となり、鋼管の結晶粒は圧延方向に伸長された扁平粒となる。この結晶粒の長短比(圧延方向の結晶粒の長さ/縮径方向の結晶粒の長さ)が大きいと割れが発生しやすくなる傾向があり、長短比は5未満にすれば、割れを防止でき、この長短比は仕上温度と加工度が一定の値を満たせば、長短比は5未満となり、割れが防止できる。
【0012】
本発明は、以上の知見に基づいて完成した発明であって、下記のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法を要旨としている。
【0013】
質量%で、C:0.05%以下、N:0.07%以下、Cr:10.5〜14.0%、H:0.00001〜0.0008%を含有し、C、Nの含有量(%)をそれぞれ[C]、[N]としたとき、2×[C]+[N]<0.11を満足する鋼材をAc3点以上で製管し、下記式を満足する仕上温度で仕上圧延を行い、空冷以上の冷却速度で冷却する。
【0014】
940 < T − 2.7 × Rd < 1210
ただし、T:仕上温度(K)、Rd:外径加工度(%)={(仕上圧延前の外径−仕上圧延後の外径)/仕上圧延前の外径}×100を表す。
【0015】
この際、前記鋼材が、さらに、質量%で、Ni:0.5〜7.0%を含まれていることが好ましい。また、前記鋼材が、質量%で、Si:0.05〜1%、Mn:0.2〜1.5%、Mo:0.05〜3.0%、Al:0.001〜0.05%、Ti:0.0005〜0.3%、Cu:0.005〜3%、V:0.01〜0.08%、Nb:0.0005〜0.028%、Ca:0.0002〜0.005%のうちいずれか1つまたは2以上を含有し、残部は Fe および不純物からなり、不純物として、P:0.020%以下、S:0.01%以下であることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法に関する発明である。ここで、マルテンサイト系ステンレス鋼管とは、13%程度のCrを含有させた鋼、すなわち、いわゆる13%Cr鋼と呼ばれる鋼からなる鋼管のことをいい、マルテンサイト組織を有するため、耐食性とともに耐熱性も有する。以下では、本発明に係るマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法に関し、(1)製管用の鋼材の成分組成と(2)鋼管の製造条件についてそれぞれ詳細に述べる。
【0017】
(1)製管用の鋼材の成分組成
以下では、鋼材の成分組成、および含有することが好ましい成分元素について詳述する。
【0018】
C:0.05%以下
Cは発生した転位を固着させて硬度を大きくする効果を有し、遅れ破壊感受性を高める。C含有量は低いほどよいが、低くするためには、製鋼工程で精錬に必要な時間が長くなるので、C含有量の過剰な低減は製鋼コストの上昇を招く。C含有量は、0.004%以上が好ましい。また、C含有量が0.05%超であると、硬度を大きくなるのに加え、CとCrが結合し、固溶Cr量が低下し、耐食性が悪くなる。
【0019】
N:0.07%以下
NもCと同様に、発生した転位を固着させて硬度を大きくする効果を有し、遅れ破壊感受性を高める。一方で、オーステナイトを安定化させる元素として高価なNiの代わりに含有させることもできる。割れを生じさせないためには、N含有量も低いほどよいが、低くするためには製鋼工程で精錬に必要な時間が長くなるので、N含有量の過剰な低減は製鋼コストの上昇を招く。N含有量は、0.003%以上が好ましい。また、N含有量が0.07%超であると、硬度を大きくなり、割れやすくなる。
【0020】
以上のようにC、Nの含有量を規定したが、マルテンサイト系ステンレス鋼管に割れが生じないようにするには、前記鋼材のC、Nの含有量をそれぞれ[C]、[N]としたとき、2×[C]+[N]<0.11を満足することが必要である。この条件は種々の実験により得られた条件であり、そのメカニズムは明確になっていないが、前述のように、CとNはともに鋼管中に侵入型に存在し、転位を固着させて硬度を大きくする効果を有する。このため、マルテンサイト系ステンレス鋼管中にCとNが同時に存在した場合、その相乗効果によりCとNがその最大含有量に達しなくても十分硬度が大きくなり、割れが生じるため、上記のような[C]、[N]で規定される式を満足する必要がある。
【0021】
Cr:10.5〜14.0%
Crは耐食性を向上させる元素、特に耐CO2腐食特性に優れる元素である。孔食や隙間腐食を防ぐためには、Cr含有量を10.5%以上にすることが必要である。一方、Crはフェライト形成元素であり、Cr含有量が14.0%超では、高温加熱するとδフェライトが生成し、熱間加工性が低下する上に、フェライトの量が多くなり耐応力腐食割れ性を損なわないために焼戻しを行っても所定の強度が得られない。
【0022】
H(水素):0.00001〜0.0008%
Hは遅れ破壊を引き起こす元素である。そのため、H含有量は低いほど好ましい。しかし、H含有量を0.00001%未満にするには、長時間の脱水素処理が必要となり、製鋼コストの上昇を招く。また、0.0008%超であると、CとNの含有量を上記のように規定したとしても、冷間加工により割れが生じる。
【0023】
なお、本発明に用いるようなマルテンサイト系ステンレス鋼では、通常、精錬による脱ガス処理により、H含有量が2.5ppm(0.00025%)まで脱H化できる。これ以上H含有量を低くするには脱H熱処理を行えばよいが、脱H熱処理には、作業コスト、製造コストの増大を招く。本発明では、H含有量が2.5ppm以上でも割れを防止できることから、本発明の工業的な意義は大きい。
【0024】
Ni:0.5〜7.0%
Niはオーステナイトを安定化させる元素であり、本発明のようなC含有量が低いマルテンサイト系ステンレス鋼管では、Niを含有させることで熱間加工性が著しく改善する。そのため、0.5%以上含有させることが好ましい。一方、過剰に添加すると、高温から冷却してマルテンサイト相に変化させようとしても、オーステナイト相が残留し、強度の不安定化および耐食性が低下するため、Ni含有量は7.0%以下とすることが好ましい。
【0025】
なお、Niが0.5〜7.0%含有する、いわゆるスーパー13%Cr鋼からなる鋼材を用いた場合、Niを含有させたことによりAC1変態点が低下するので、強度の調整上、AC1変態点付近で焼戻し処理が必要になる。そして、焼戻しの際に生成した逆変態オーステナイトが空冷の際、再度マルテンサイト組織となるため、この後に行う応力除去熱処理によりVC等の炭化物が析出し、強度が不安定になるといった問題も生じる。しかし、本発明のようにC、N、Hの含有量を調整し、製管、仕上圧延すれば、応力除去熱処理を行わなくてよいので、スーパー13%Cr鋼を使用した際に生じる強度の安定性の問題も解決する。
【0026】
Si:0.05〜1%
Siは製鋼段階で、脱酸剤として必要な元素である。しかし、含有量が多いと、靱性および延性が劣化するので、Siの含有量は0.05〜1%とするのが好ましい。
【0027】
Mn:0.2〜1.5%
MnもSiと同様に脱酸剤として必要な元素である。また、Mnにはオーステナイト安定化元素として熱間加工の際にフェライトの析出を抑制することにより熱間加工性を改善させる効果も有する。熱間加工性を改善させるには0.2%以上含有させることが必要である。しかし、含有量が多いと、靱性および延性が劣化するので、Mnの含有量は0.2〜1.5%とするのが好ましい。
【0028】
Mo:0.05〜3.0%
MoはCrと同様に耐食性を向上させる効果を有する。耐食性を向上させるには0.05%以上含有させることが必要である。しかし、含有量が多いと、熱間加工性が低下するので、Moの含有量は0.05〜3.0%とするのが好ましい。
【0029】
Al:0.001〜0.05%
Alは脱酸剤として有効であり、またNと結合してAlNを形成し、転位の固着の原因となるNを捕らえて硬度の上昇を防ぐとともに、結晶粒の微細化を促進する効果を有する。その効果を得るには、0.001%以上含有させることが必要である。しかし、含有量が多いと、鋼の清浄度を劣化させるとともに、連続鋳造時のノズル詰まりの原因となることから、Alの含有量は0.001〜0.05%とするのが好ましい。
【0030】
Ti:0.0005〜0.3%
Tiは焼戻しの際に固溶しているCと結合してTiCを生成し、CとVが結合して強度が大きくなることを抑制し、V含有量のバラツキに起因する強度のバラツキを低減する。その効果を得るには、0.0005%以上含有させることが必要である。しかし、含有量が多いと、過剰添加となりコスト高となるので、Tiの含有量は0.0005〜0.3%とするのが好ましい。
【0031】
Cu:0.005〜3%
CuはCr、Moと同様に耐食性を向上させる効果を有するとともに、オーステナイト安定化元素として熱間加工性を向上させる。耐食性および熱間加工性を向上させるには0.005%以上含有させることが必要である。しかし、含有量が多いと、低融点元素であることから、著しく熱間加工性が低下するので、Cuの含有量は0.005〜3%とするのが好ましい。
【0032】
V:0.01〜0.08%
Vはオーステナイト結晶粒の微細化による延性改善を促進し、かつ延性を低下させるC、Nを固定するとともに、固溶Crの増加による耐食性を向上させる。延性および耐食性を向上させるには0.01%以上含有させることが必要である。しかし、含有量が多いと、VCが析出し、著しく焼戻し後の硬度が大きくなるので、Vの含有量は0.01〜0.08%とするのが好ましい。
【0033】
Nb:0.0005〜0.028%
NbはNbCを形成し、高強度化が図れ、かつ結晶粒が細粒化することによる高靱性化を達成できる。高強度化および高靱性化を達成するには、0.0005%以上含有させることが必要である。しかし、含有量が多いと、靱性が劣化するため、Nbの含有量は0.0005〜0.028%とするのが好ましい。
【0034】
Ca:0.0002〜0.005%
CaはSによる熱間加工性が劣化することを防止するのに効果がある。この効果を得るには、0.0002%以上含有させることが必要である。しかし、含有量が多いと、粗大な介在物が生じ、靱性、耐食性が劣化し、製管が困難になるため、Caの含有量は0.0002〜0.005%とするのが好ましい。
【0035】
P:Pは、鋼中に含有される不純物元素であるが、鋼中に大量に含まれると製管キズの発生が顕著になり、靱性も著しく低下するので、0.020%以下とすることが好ましい。
【0036】
S:Sは、Pと同様に、鋼中に含有される不純物元素であるが、鋼中に大量に含まれると熱間加工性および靱性が著しく劣化するので、0.01%以下とすることが好ましい。
【0037】
(2)鋼管の製造条件
本発明では、まず、上記(1)のような成分組成を含有する鋼材をAc3点以上に加熱して製管する。通常、製管はビレット状の鋼材を加熱炉にてAc3点以上に加熱し、穿孔機で穿孔し、マンドレルミルにて圧延後、ストレッチレデューサー等で所定の外径、肉厚の鋼管に形状を整えることによって行う。穿孔および圧延時の温度をAc3点以上とすることで、鋼材の組織をオーステナイト化し、空冷以上の冷却速度で冷却することにより、造管後の組織をマルテンサイト組織とする。
【0038】
続いて、下記式を満足する仕上温度Tで仕上圧延を行い、空冷以上の冷却速度で冷却してマルテンサイト系ステンレス鋼管を製造する。ここで、Tは仕上温度(K)、Rdは外径加工度(%)(={(仕上圧延前の外径−仕上圧延後の外径)/仕上圧延前の外径}×100)を表し、仕上圧延前の外径とは、鋼材を穿孔し、マンドレル圧延等を行った後、仕上圧延をする前の外径、仕上圧延後の外径とは、仕上圧延を行った後の鋼管の外径を意味する。また、本発明で、空冷以上の冷却速度で冷却するとは、空冷の他に、噴霧冷却、水冷却等が該当し、冷却速度 0.5℃/min以上を意図する。
【0039】
940 < T − 2.7 × Rd < 1210
図1は、マルテンサイト系ステンレス鋼管にスウェージ加工を施した後の割れ発生率を示したものである。割れの発生を防止するためには、940<T−2.7×Rdを満足する仕上温度で仕上圧延を行うことが必要である。これは、前述したように、製造された鋼管の結晶粒の長短比を適正化できたためであり、940<T−2.7×Rdとなる鋼管の結晶粒の長短比はいずれも5未満である。
【0040】
図2は、鋼管表面に発生したあばた(表面欠陥の一種)の深さを示したものである。940<T−2.7×Rdを満たしても、外径加工度に対して仕上温度が高すぎると結晶粒が粗大化し、靱性が低下し、鋼管表面の表面性状が悪化する。あばた欠陥をなくし、表面性状をよくするためには、T−2.7×Rd<1210を満足する仕上温度で仕上圧延を行うことが必要である。
【0041】
仕上製管の後は、空冷以上の冷却速度で冷却することが必要である。この冷却により、マルテンサイト組織を誘起し、マルテンサイト系ステンレス鋼管とすることができる。
【0042】
【実施例】
本発明の効果を確認するため、さまざまな成分組成を有する鋼材を用いてマルテンサイト系ステンレス鋼管を製造した。
【0043】
表1は、本発明の効果を確認するために使用した鋼材の成分組成を示したものである。これらの鋼材を分塊圧延により、ビレット化し、このビレットをAc3点以上(1200〜1250℃)に加熱し、穿孔およびマンドレルミルにて圧延を施し、鋼管状に形状を整えた。最後に、仕上製管として圧延を施した後、空冷し、最終的に1の成分組成の鋼材につき、外径加工度を40%とした鋼管(外径88.9mm、肉厚6.45mm)と外径加工度を20%とした鋼管(外径114.3mm、肉厚6.88mm)の二種類のマルテンサイト系ステンレス鋼管を得た。そして、この鋼管について、割れの発生の有無を確かめるため、冷間にて約8%のスウェージ加工を施し、72時間後の割れと表面性状を目視で確認した。
【0044】
【表1】
表2は、外径加工度が40%の鋼管、表3は、外径加工度が20%の鋼管の表面性状と割れの発生の有無を示したものである。なお、表2、3では、その備考欄に合わせて本発明の実施に必要な条件について列記し、本発明の実施に必要な条件を満たすものには○、満たさないものには×を付けた。
【0045】
【表2】
【表3】
表2、表3からも明らかなように、本発明の範囲内にある鋼管については、割れの発生もなく、表面性状も問題なかった。一方、本発明の範囲内にない鋼管については、割れが発生する(条件C1〜C10、C12〜C14、D1〜D10、D12〜D14)か、鋼管表面にあばた欠陥が発生(C11、D11)した。
【0046】
【発明の効果】
本発明に係るマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法を用いれば、製管したままの状態の鋼管を冷間加工した後、従来行っていた応力除去熱処理を施すことなく、遅れ破壊による割れを防止でき、表面性状もよいマルテンサイト系ステンレス鋼管を得ることができる。さらに応力除去熱処理を施さないので、製造工数が増加することなく、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、マルテンサイト系ステンレス鋼管にスウェージ加工を施した後の割れ発生率を示したものである。
【図2】図2は、鋼管表面に発生したあばたの深さを示したものである。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.05%以下、N:0.07%以下、Cr:10.5〜14.0%、H:0.00001〜0.0008%を含有し、C、Nの含有量(%)をそれぞれ[C]、[N]としたとき、2×[C]+[N]<0.11を満足する鋼材をAc3点以上の温度で製管し、下記式を満足する仕上温度で仕上圧延を行い、空冷以上の冷却速度で冷却することを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
940 <
T − 2.7 × Rd < 1210
ただし、T:仕上温度(K)
Rd:外径加工度(%)={(仕上圧延前の外径−仕上圧延後の外径)/仕上圧延前の外径}×100 - 前記鋼材が、さらに、質量%で、Ni:0.5〜7.0%を含むことを特徴とする請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
- 前記鋼材が、質量%で、Si:0.05〜1%、Mn:0.2〜1.5%、Mo:0.05〜3.0%、Al:0.001〜0.05%、Ti:0.0005〜0.3%、Cu:0.005〜3%、V:0.01〜0.08%、Nb:0.0005〜0.028%、Ca:0.0002〜0.005%のうちいずれか1つまたは2以上を含有し、残部は Fe および不純物からなり、不純物として、P:0.020%以下、S:0.01%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
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