JP3680165B2 - 誘電体多層膜フィルタおよびこれを有する誘電体多層膜フィルタモジュール - Google Patents

誘電体多層膜フィルタおよびこれを有する誘電体多層膜フィルタモジュール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、誘電体多層膜フィルタおよびこれを有する誘電体多層膜フィルタモジュールに関し、特に、光ファイバを案内保持する案内保持板を有する誘電体多層膜フィルタおよびこれを有する誘電体多層膜フィルタモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来例を図を参照して説明する。
図4を参照して誘電体多層膜フィルタの従来例を説明するに、この誘電体多層膜フィルタ1はガラス薄板11の表面に誘電体多層膜12を成膜形成したものより成る。この誘電体多層膜フィルタ1は、厚み100μm程度の大面積のガラス薄板に誘電体多層膜フィルタを成膜形成し、これをダイシング加工を施して数ミリ角の大きさに切り出したものである。
【0003】
図5を参照して誘電体多層膜フィルタを組み込んだ誘電体多層膜フィルタモジュールの従来例を説明するに、誘電体多層膜フィルタ1は断面V溝形成基板3の表面に形成されるスリット32に挿入されている。誘電体多層膜フィルタ1は断面V溝形成基板3のスリット32に挿入後、スリット32に透明接着剤33を充填して断面V溝形成基板3に固定される。ここで、入力光ファイバ21および送受信光ファイバ23を、断面V溝形成基板3に形成される断面V溝31に位置決めし、誘電体多層膜フィルタ1を介在させてファイバ端面を対向軸合わせさせた状態で、断面V溝形成基板3に接合固定する。
【0004】
図6を参照して誘電体多層膜フィルタを組み込んだ誘電体多層膜フィルタモジュールの他の従来例を説明するに、これは誘電体多層膜フィルタ1がガラス薄板11を有しない誘電体多層膜12のみにより構成される従来例である。誘電体多層膜12のみにより構成される誘電体多層膜フィルタ1は、ガラス基板の表面に蒸着成膜されたクロム被膜の表面に誘電体多層膜を成膜形成し、次いで、必要な大きさに切断し、クロム被膜をエッチングにより除去して誘電体多層膜12を形成することができる(詳細は、特開平4−101106号公報 参照)。
【0005】
図7を参照するに、以上の誘電体多層膜フィルタモジュールは、光ファイバを介して伝送される波長を異にする複数の光から特定の波長を透過し、或いは反射することができる。即ち、送受信光ファイバ23を介して伝送された波長1. 55μmの光は誘電体多層膜フィルタ1を透過し入力光ファイバ21を介してフォトダイオード8に送り込まれ、入力光ファイバ21を介して伝送された波長1. 31μmの光は誘電体多層膜フィルタ1を透過せず反射し送受信光ファイバ23を介して外部に送り出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、断面V溝形成基板3にスリット32を形成し、このスリット32に厚みの極く薄い誘電体多層膜フィルタ1を挿入する従来例は種々の問題を内包している。即ち、誘電体多層膜フィルタ1を断面V溝形成基板3に形成されるスリット32に挿入する工程は容易ではない。スリット32に対する誘電体多層膜フィルタ1の挿入位置決めは、誘電体多層膜フィルタモジュールの光伝送特性に大きく影響する。誘電体多層膜フィルタ1の厚さは15μm程度の極く薄いものであり、これをスリット32に挿入するには、当然、スリット32の幅が誘電体多層膜フィルタ1の厚さより大でなくてはならず、スリット32の幅は20μm程度に形成される。従って、誘電体多層膜フィルタ1はスリット32内で遊びがあり、その位置は設計位置に厳密には決められない。位置決め精度を向上するにはスリット32の幅を狭く設計形成しなければならないが、幅を狭くする程誘電体誘電体多層膜フィルタ1の挿入は困難になり、取り扱いは容易ではない。
【0007】
ガラス薄板11の表面に誘電体多層膜12を成膜形成したものより成る誘電体多層膜フィルタ1の場合は、全体の厚さは100μm程度にも及び、ガラス薄板11による光の損失を抑える必要上極力厚みを薄く構成している。その結果、厚みを薄く構成した誘電体多層膜フィルタ1は、ダイシング加工時およびモジュール組み込み時に破損が発生し易く、取り扱い難い欠点を有する。
この発明は、シリコン基板を原材料とし、これに異方性エッチングを施して角錐状貫通孔を形成したフィルタ基板に誘電体多層膜を成膜することにより上述の問題を解消した誘電体多層膜フィルタおよびこれを有する誘電体多層膜フィルタモジュールを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1:テーパ状案内部411と貫通孔412より成る錐状貫通孔41を形成するフィルタ基板4を具備し、フィルタ基板4の表面に貫通孔412領域を除いて金属薄膜42を成膜し、金属薄膜42表面に貫通孔412領域を含めて誘電体多層膜12を成膜した誘電体多層膜フィルタを構成した。
そして、請求項2:請求項1に記載される誘電体多層膜フィルタにおいて、フィルタ基板4はシリコン基板により構成され、錐状貫通孔41はテーパ状案内部411を角錐状案内部とし、貫通孔41を角孔とした角錐状貫通孔である誘電体多層膜フィルタを構成した。
【0009】
また、請求項3:1対の光ファイバ21、23が嵌合固定される案内溝31および案内溝31に交差して誘電体多層膜フィルタ1が嵌合固定されるスリット32が表面に形成される案内溝形成基板4を具備し、誘電体多層膜フィルタ1は、テーパ状案内部411と貫通孔412より成る錐状貫通孔41を形成するフィルタ基板4を具備し、フィルタ基板4の表面に貫通孔412領域を除いて金属薄膜42を成膜し、金属薄膜42表面に貫通孔412領域を含めて誘電体多層膜12を成膜したものより成り、ファイバ端面を誘電体多層膜12を介して対向軸合わせさせた状態で1対の光ファイバ21、23を案内溝形成基板3の案内溝31に位置決め固定した誘電体多層膜フィルタモジュールを構成した。
【0010】
更に、請求項4:請求項3に記載される誘電体多層膜フィルタモジュールにおいて、フィルタ基板4はシリコン基板により構成され、錐状貫通孔41はテーパ状案内部411を角錐状案内部とし、貫通孔41を角孔とした角錐状貫通孔である誘電体多層膜フィルタモジュールを構成した。
ここで、請求項5:シリコン薄板より成るフィルタ基板4の表裏両面にシリコン薄板エッチャント耐性の金属薄膜42を成膜する(工程1)、角錐状貫通孔41の幅が広い側の形状寸法の4角形パターン5を裏面の金属薄膜42に形成し、金属薄膜42をエッチング除去する(工程2)、シリコン薄板より成るフィルタ基板4を異方性エッチングして角錐状貫通孔41を形成する(工程3)、表面の金属薄膜42に誘電体多層膜12を成膜形成する(工程4)、裏面に残存する金属薄膜42をエッチング除去する(工程5)、ダイシング加工を施して所定の寸法に切り出す(工程6)より成る誘電体多層膜フィルタの製造方法を構成した。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図1の実施例を参照して説明する。
図1は誘電体多層膜フィルタの実施例を説明する図である。1は誘電体多層膜フィルタ、4はフィルタ基板である。このフィルタ基板4の厚さはおよそ500μm程度に設計される。フィルタ基板4の中央部には錐状貫通孔である角錐状貫通孔41が貫通形成されている。この角錐状貫通孔41はテーパ状案内部411と貫通孔である角孔412より成る。42はフィルタ基板4の表面に成膜形成された金属薄膜であり、角孔412に対応する領域は貫通除去されている。12は金属薄膜42の表面に成膜形成された誘電体多層膜である。金属薄膜42はフィルタ基板4と誘電体多層膜12の間に介在して金属薄膜42の固定を確実にする膜である。フィルタ基板4の表面に金属薄膜42を成膜し、角孔412に対応する領域を除去した後、角孔412領域を含めて金属薄膜42表面に誘電体多層膜12を成膜する。
【0012】
図2は誘電体多層膜フィルタモジュールの実施例を説明する図である。図2(a)は誘電体多層膜フィルタモジュールを上から視たところを示す図、図2(b)は図1(a)における線A−Aに沿った断面を示す図である。
3は案内溝形成基板である断面V溝形成基板を示す。断面V溝形成基板3には誘電体多層膜フィルタ1を嵌合固定するスリット32が横断形成されている。誘電体多層膜フィルタ1は、スリット32に透明接着剤33を適用してから嵌合固定せしめられる。断面V溝形成基板3には、更に、断面V溝31がスリット32に適正な角度で交差する方向に形成されている。この断面V溝31は、その誘電体多層膜フィルタ1の角錐状貫通孔41側に入力光ファイバ21が嵌合固定されると共に誘電体多層膜12側に送受信光ファイバ23が嵌合固定されている。断面V溝形成基板3の誘電体多層膜12側には、必要に応じて、出力光ファイバ22を図7に示される如く透明接着剤33に対して適正な角度で具備せしめる。
【0013】
図3を参照してフィルタ基板を有する誘電体多層膜フィルタを製造する工程を説明する。
(工程1) シリコン薄板より成るフィルタ基板4の表裏両面にシリコン薄板エッチャントに耐性の金属薄膜42を成膜する。金属薄膜42の材料としては、クロム、或いは金/クロムが採用される。この金/クロムはフィルタ基板4のシリコンに対する付着力を増強するクロムを介在させる2層膜である。
(工程2) フォトリソグラフィ技術により角錐状貫通孔41の幅が広い側の形状寸法の4角形パターン5を裏面の金属薄膜42に形成し、金属薄膜42をエッチング除去する。金属薄膜42のエッチャントは、クロムに対して塩酸を使用し、金/クロムに対して王水を使用する。
【0014】
(工程3) シリコン薄板より成るフィルタ基板4を異方性エッチングし、角錐状貫通孔41を形成する。シリコン薄板のエッチャントは水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)が使用される。
(工程4) 表面の金属薄膜42に誘電体多層膜12を成膜形成する。
(工程5) 裏面に残存する金属薄膜42をエッチングにより除去する。
(工程6) ダイシング加工を施して数ミリ角の大きさに切り出す。
【0015】
【発明の効果】
以上の通りであって、この発明によれば、シリコン基板を原材料とし、これに異方性エッチングを施して角錐状貫通孔41を形成したフィルタ基板4に誘電体多層膜12を成膜した誘電体多層膜フィルタ1を構成した。これにより、誘電体多層膜12の保持体であるフィルタ基板4の厚さは従来例と比較して厚くされたので、これのみにより誘電体多層膜12を充分に保持することができ、光路上に誘電体多層膜12のみが存在する光の伝送損失の極く小さい誘電体多層膜フィルタ1を得ることができる。そして、フィルタ基板4自体の厚さを従来例のガラス薄板を含めて100μm程度と比較して500μm程度に厚く設計することができるので、これを数mm角にダイシング切断加工する時およびモジュール組み込み時の破損の発生を少なくすることができる。
【0016】
また、フィルタ基板4にテーパ状案内部411と貫通する角孔412より成る角錐状貫通孔41を貫通形成したことにより、誘電体多層膜フィルタ1を断面V溝形成基板3に組み込み誘電体多層膜フィルタモジュールを構成するに際し、誘電体多層膜12を介して対向軸合わせする光ファイバ端面同志の位置合わせを正確に実施することができる。即ち、図2において、送受信光ファイバ23をその端面を断面V溝形成基板3のスリット32の側壁に整列して断面V溝31に嵌合固定し、次いで、誘電体多層膜フィルタ1の角孔412に対応する誘電体多層膜12の一方の面を送受信光ファイバ23の端面に整列して当該多層膜フィルタをスリット32に接合固定する。ここで、入力光ファイバ21を断面V溝形成基板3の断面V溝31に嵌合し、この光ファイバの先端部を角錐状貫通孔41のテーパ状案内部411に係合して案内させながら入力光ファイバ21を押し込み、入力光ファイバ21の端面を角孔412を通過して誘電体多層膜12の他方の面に位置決めした状態で、入力光ファイバ21を断面V溝31に接合固定する。この場合、断面V溝形成基板3に対して先に位置決め固定されたフィルタ基板4の角錐状貫通孔41の角孔412と入力光ファイバ21の断面V溝31の間に何らかの不整合が存在しても、入力光ファイバ21の端面はテーパ状案内部411に案内されて確実に角孔412にたどり着くことができ、入力光ファイバ21の端面と送受信光ファイバ23の端面は誘電体多層膜12を介して対向軸合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】誘電体多層膜フィルタの実施例を説明する図。
【図2】誘電体多層膜フィルタモジュールの実施例を説明する図。
【図3】誘電体多層膜フィルタの製造工程を説明する図。
【図4】誘電体多層膜フィルタの従来例を説明する図。
【図5】誘電体多層膜フィルタモジュールの従来例を説明する図。
【図6】誘電体多層膜フィルタモジュールの他の従来例を説明する図。
【図7】伝送される光の出入りを説明する図。
【符号の説明】
1 誘電体多層膜フィルタ
11 ガラス薄板
12 誘電体多層膜
21 入力光ファイバ
22 出力光ファイバ
23 送受信光ファイバ
3 断面V溝形成基板
31 断面V溝
32 スリット
33 透明接着剤
4 フィルタ基板
41 角錐状貫通孔
411 テーパ状案内部
412 角孔
42 金属薄膜
5 4角形パターン

Claims (5)

  1. テーパ状案内部と貫通孔より成る錐状貫通孔を形成するフィルタ基板を具備し、
    フィルタ基板の表面に貫通孔領域を除いて金属薄膜を成膜し、
    金属薄膜表面に貫通孔領域を含めて誘電体多層膜を成膜したことを特徴とする誘電体多層膜フィルタ。
  2. 請求項1に記載される誘電体多層膜フィルタにおいて、
    フィルタ基板はシリコン基板により構成され、
    錐状貫通孔はテーパ状案内部を角錐状案内部とし、貫通孔を角孔とした角錐状貫通孔であることを特徴とする誘電体多層膜フィルタ。
  3. 1対の光ファイバが嵌合固定される案内溝および案内溝に交差して誘電体多層膜フィルタが嵌合固定されるスリットが表面に形成される案内溝形成基板を具備し、
    誘電体多層膜フィルタは、テーパ状案内部と貫通孔より成る錐状貫通孔を形成するフィルタ基板を具備し、フィルタ基板の表面に貫通孔領域を除いて金属薄膜を成膜し、金属薄膜表面に貫通孔領域を含めて誘電体多層膜を成膜したものより成り、
    ファイバ端面を誘電体多層膜を介して対向軸合わせさせた状態で1対の光ファイバを案内溝形成基板の案内溝に位置決め固定したことを特徴とする誘電体多層膜フィルタモジュール。
  4. 請求項3に記載される誘電体多層膜フィルタモジュールにおいて、
    フィルタ基板はシリコン基板により構成され、
    錐状貫通孔はテーパ状案内部を角錐状案内部とし、貫通孔を角孔とした角錐状貫通孔であることを特徴とする誘電体多層膜フィルタモジュール。
  5. シリコン薄板より成るフィルタ基板の表裏両面にシリコン薄板エッチャントに耐性の金属薄膜を成膜する(工程1)、
    角錐状貫通孔の幅が広い側の形状寸法の4角形パターンを裏面の金属薄膜に形成し、金属薄膜をエッチング除去する(工程2)、
    シリコン薄板より成るフィルタ基板を異方性エッチングして角錐状貫通孔を形成する(工程3)、
    表面の金属薄膜に誘電体多層膜を成膜形成する(工程4)、
    裏面に残存する金属薄膜をエッチング除去する(工程5)、
    ダイシング加工を施して所定の寸法に切り出す(工程6)より成ることを特徴とする誘電体多層膜フィルタの製造方法。
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