JP3679602B2 - 光ファイバアレイ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光導波路チップと光ファイバとを接続するための光ファイバアレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
光導波路チップと光ファイバとを接続するために光ファイバアレイが一般的に用いられている。この光導波路チップには、GaAs系、InP系の半導体導波路チップ、Si上に酸化膜を形成したり、ガラス基板を用いる誘電体(ガラス)導波路チップ、LiNbO3 やLiTaO3 結晶で構成した強誘電体結晶導波路チップ等、多数の種類がある。その応用として、例えば、光ファイバジャイロ等のセンサ・計測関係、高速変調器等の光ファイバ通信関係、A/D変換器等の光情報処理関係、レーザダイオードアレイ等の光源・光変換関係での多岐にわたる用途が検討されている。
【0003】
前記のような光ファイバジャイロを製造する場合、長尺の光ファイバを円筒の物体に巻き付けて作成したファイバコイルから導出された光ファイバの2本の端部と位相変調器が組み込まれた光導波路チップとを、偏波面を一定の方向に保持して接続するために、偏波面保存光ファイバアレイが用いられている。
【0004】
前記偏波面保存光ファイバアレイは、例えば、2枚の基板からなり、そのうちの1枚には溝部が形成され、該溝部に光ファイバを偏波面を一定の方向に保持するように埋設した後2枚の基板を重ね合わせ、該溝部と光ファイバとの隙間にエポキシ等の室温硬化型、若しくは熱硬化型樹脂、または、アクリル系等の紫外線硬化型樹脂を充填して硬化することにより樹脂層を形成し、光ファイバをアレイの溝部に固定することによって形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の光ファイバアレイにおいて、樹脂の充填量のばらつきや樹脂層各部での硬化の進行度のばらつき等によって、樹脂層に空洞部が生じることがある。このような空洞部があると、光ファイバを取り扱う際の曲げやねじれによる応力が発生し易く、これによって光ファイバが断線するおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、光ファイバの断線を生じることがなく、また、光導波路の偏光クロストークの劣化の小さい光ファイバアレイを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光ファイバアレイは、光導波路チップと光ファイバとを接続するための光ファイバアレイにおいて、前記光ファイバを配設するためのアレイ本体を有し、前記アレイ本体に前記光ファイバが樹脂層により固着され、前記樹脂層には、直径の総和が10μm〜500μmの範囲内にある1または2以上の空洞部を有することを特徴とする。なお、アレイ本体としては、前記光ファイバを挟持して配設するための2枚の基板を有し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚には前記光ファイバを保持して固定するための溝部が形成されていてもよい。
【0008】
これにより、光ファイバの断線を生じることがなく、また、光導波路の偏光クロストークの劣化の小さい光ファイバアレイを得ることができる。ここで、空洞部の直径の総和が10μm未満では、樹脂層の残留応力によって光導波路の偏光クロストークの劣化が大きくなり、一方、空洞部の直径の総和が500μmを超えると、光ファイバの断線を生じることが多くなる。なお、空洞部の直径の総和は、100μm〜450μmの範囲内にあると一層好適である。したがって、本発明に係る光ファイバアレイは、光導波路チップと光ファイバとを偏波面を一定の方向に保持して接続するための偏波面保存光ファイバアレイであって、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚には前記光ファイバの偏波面を一定の方向に保持して固定するための溝部が形成されていると一層好適である。
【0009】
また、本発明に係る光ファイバアレイにおいて、前記溝部はV字状の所定長に形成されるとともに、該溝部に延在して溝部より幅広の座繰り部が形成され、前記光ファイバが樹脂層により前記溝部に固着されることを特徴とする。ここで、座繰り部は、ファイバ被覆コート部を逃がすための逃げ溝をいう。
【0010】
ファイバ芯線部を固定することにより、ファイバの偏波面を固定することができる。
【0011】
またさらに、本発明に係る光ファイバアレイにおいて、前記光ファイバは、楕円コアファイバ、パンダファイバ、楕円ジャケットファイバ、棒帯ファイバのうちのいずれか1つであることを特徴とする。
【0012】
これにより、前記した本発明の効果を好適に発揮することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光ファイバアレイを、例えば、光導波路チップと光ファイバとを偏波面を一定の方向に保持して接続するための偏波面保存光ファイバアレイに適用した実施の形態例を図1〜図4を参照しながら以下に説明する。
【0014】
本実施の形態に係る光ファイバアレイは、図1に示すように、光ファイバ10、12と光導波路チップ14とが接合方向を規制するように固着される第1および第2のアレイ16、18から構成される。この光導波路チップ14は、例えばLiNbO3 基板20に所定形状の光導波路(例えば、Y字光導波路)22が形成されて構成され、該光導波路22上には位相変調器24と偏光子26とが配設されている。
【0015】
図2に示すように、光ファイバ10の2つの端部(例えば、光ファイバジャイロのファイバコイルに接続される始端部10aと終端部10b)は、光導波路チップ14との接合方向を規制する第1のアレイ16に固着され、また、図3に示すように、光ファイバ12の1つの端部(例えば、光源に接続される光ファイバ12の端部12a)は、光導波路チップ14との接合方向を規制する第2のアレイ18に固着され、これら第1及び第2のアレイ16、18を通じて上記各光ファイバ10、12のそれぞれの端部10a、10b及び12aが光導波路チップ14と光学的に結合されるようになっている。
【0016】
具体的には、上記第1のアレイ16は、図2に示すように、一主面に一方の端面に向かって延びる2本のV字状の溝30a、30bと他方の端面に向かって延びる幅広の座繰り部(接着用の逃げ溝)32が連続して形成された基板16Aと、該基板16Aの各溝30a、30b、32を塞ぐための蓋基板16Bとで構成されている。上記2本のV字状の溝30a、30bは、その間隔が図1に示す光導波路22における2本の分岐路の光軸に合致する間隔と同じとされている。
【0017】
そして、第1のアレイ16を組み立てる場合は、まず、図2に示すように、上記基板16AのV字状の溝30a、30bに光ファイバ10の2本の端部10a及び10bを這わせた後、光ファイバ10の偏波保存面を光導波路22を伝搬する光の偏波面の方向に合わせる。その後、上方から蓋基板16Bを被せてエポキシ樹脂をV字状の溝30a、30bと光ファイバ10との隙間に充填し、60℃の温度で加熱して両者を接着・固定し、上記第1のアレイ16の端面中、光ファイバ10の自由端側端面16aを研磨することによって光ファイバ10への第1のアレイ16の固着作業が終了することとなる。
【0018】
第2のアレイ18は、図3に示すように、一主面の一方の端面に向かって延びる1本のV字状の溝34と他方の端面に向かって延びる幅広の座繰り部(接着用の逃げ溝)36が連続して形成された基板18Aと、該基板18Aの各溝34、36を塞ぐための蓋基板18Bとで構成されている。
【0019】
そして、この第2のアレイ18を組み立てる場合は、まず、上記基板18AのV字状の溝34に光ファイバ12の1本の端部12aを這わせた後、光ファイバ12の偏波保存面を光導波路22を伝搬する光の偏波面の方向に合わせる。その後、その上方から蓋基板18Bを被せて接着剤にて接着し第2のアレイ18の端面中、光ファイバ12の自由端側端面18aを研磨することによって光ファイバ12への第2のアレイ18の固着作業が終了する。
【0020】
上記した光ファイバ10、12を第1および第2のアレイ16、18に樹脂を用いて固着する際、樹脂としてエポキシ樹脂(セメダイン社製 商品名EP001)を使用し、固化して形成した樹脂層に下記の所定条件の空洞部が形成されるように、ディスペンサの吐出速度として0.0016g/sec以下の速度で樹脂を吐出し、光ファイバ10、12の偏波面を調整してアレイ16、18で固定し、室温で1時間放置した後60℃の温度で樹脂を加熱、硬化させた。
【0021】
前記した所定条件の空洞部とは、直径の総和が10μm〜500μmの範囲内にある1または2以上の空洞部であり、この空洞部の作用効果については以下の実験により見出した。
【0022】
すなわち、光ファイバをアレイに樹脂を用いて固着する際のディスペンサの吐出速度あるいは室温での放置時間を変化させて、固化した樹脂層に種々のサイズの空洞部が形成されたアレイを作製した。アレイは、樹脂層の空洞部のサイズが同一のものについてそれぞれ10個ずつ作製した。作製したアレイの座繰り部を透過顕微鏡で観察することにより、個々の空洞(部)の円相当直径を計測し、空洞部の直径の総和を求めた。
【0023】
これら種々のサイズの空洞部が形成された樹脂層によってアレイに接合された光ファイバについて、光ファイバの断線率と偏光クロストークとを求めた。その結果を図4に示す。ここで、断線率(単位%)は、温度が−40℃と80℃の熱衝撃試験機内へ交互に60分間毎にアレイ16、18を投入し、このサイクルを100回繰り返した後、樹脂の熱応力により断線した試料数の同一条件の全試料数に対する比率である。なお、図4中、断線率が0%のものではサイクルを1300回繰り返しても断線を生じなかった。また、偏光クロストーク(単位dB)は、後述する光軸調整と同様の方法により、光軸に対して横方向の偏波(Px)と縦方向の偏波(Py)とを測定し、−10×log(Py/Px)で表したものである。
【0024】
図4に示すように、断線率は、空洞部の直径の総和が450μmまでは0%であり、500μmを超えると断線が発生するとともにその後急激に断線率が増加し、空洞部の直径の総和が1000μmのものでは断線率が40%に達した。一方、偏光のクロストークは、空洞部の直径の総和が100μm以上であれば約25dB程度が確保されるが、空洞部の直径の総和が100μmより小さくなると急激に劣化して10μmで約20dB程度となり、空洞部の直径の総和が10μmより小さくなると空洞部のないものを含めて偏光のクロストークは15dBまで劣化した。したがって、断線率と偏光クロストークのバランスを考慮して、空洞部の直径の総和が10μm〜500μmの範囲内に収まるように、前記した条件で光ファイバ10、12を第1および第2のアレイ16、18に樹脂を用いて固着した。
【0025】
一方、光導波路チップ14は、以下のようにして作製する。まず、例えば3inchウェーハ(例えば、LiNbO3 基板)の一主面(機能面)に、例えば真空蒸着等によって所定形状の光導波路22を形成すると同時に、該光導波路22上に偏光子26及び位相変調器24を形成して1枚のウェーハ上に多数の光ICパターンを形成する(図示せず)。次いで、数個の光ICパターンを一組として、ウェーハから組単位に光ICパターンを例えばダイヤモンドカッターを有するダイシング装置を用いて切り出した後、各組の端面、特に上記第1及び第2のアレイ16、18が接合される面を研磨処理する。その後各組から各々光ICパターンを同じくダイシング装置を用いて切断して多数の光導波路チップに分離した後、個々に分離された1つの光導波路チップ14が得られる(図1参照)。
【0026】
そして、1つの光導波路チップ14に対して、すでに光ファイバ10、12が固着された第1及び第2のアレイ16、18がそれぞれ接合される。光導波路チップ14の両端面のうち、偏光子26近傍の端面に第2のアレイ18が、位相変調器24近傍の端面に第1のアレイ16が光軸を合わせてそれぞれ接合される。
【0027】
各アレイ16、18の接合においては、光出力が最も強くなるように光軸調整がとられながら接着剤による接着が行われる。
【0028】
具体的には、まず、光導波路チップ14における一方の端面に第2のアレイ18が例えば接着剤にて接着される。このとき、光ファイバ12の開放端側に光源を設け、一方、光導波路22の他の端面側に光検出器を配置し(図示せず)、該光導波路22の2本の分岐路を通じて出力される光源からの光を上記光検出器にて計測しながら光ファイバ12の偏波保存面が光導波路22の偏波方向と一致するように、図1中、XYZの直交3軸方向についての光軸調整を行う。該光軸調整が済んだ段階で、これら第2のアレイ18と光導波路チップ14とが接着剤により接合される。
【0029】
上記第2のアレイ18と光導波路チップ14との接合が終了すると、今度は、光導波路チップ14の他方の端面に第1のアレイ16が例えば接着剤にて接着される。このとき、光導波路22を通じて伝搬される光源からの光を光検出器(図示せず)にて計測しながら光ファイバ10の偏波保存面が光導波路22の偏波方向と一致するように、図1中、XYZの直交3軸方向と光ファイバ10の2芯(始端部10aと終端部10b)の回転方向についての光軸調整を行う。該光軸調整が済んだ段階で、これら第1のアレイ16と光導波路チップ14とが接着剤により接合される。これにより、本実施の形態に係る光ファイバアレイ16、18および該光ファイバアレイ16、18によって接合された光導波路チップ14および光ファイバ10、12が完成する。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る光ファイバアレイは、光導波路チップと光ファイバとを接続するための光ファイバアレイにおいて、前記光ファイバを挟持して配設するための2枚の基板を有し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚には前記光ファイバを保持して固定するための溝部が形成され、前記溝部に前記光ファイバが樹脂層により固着され、前記樹脂層は、直径の総和が10μm〜500μmの範囲内にある1または2以上の空洞部を有する。
【0031】
このため、光ファイバの断線を生じることがなく、また、光導波路の偏光クロストークの劣化の小さい光ファイバアレイを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る光ファイバアレイにより接続された光ファイバと光導波路チップの斜視図である。
【図2】端部が分岐した光ファイバが光ファイバアレイに固着された状態を示す分解斜視説明図である。
【図3】端部が1本である光ファイバが光ファイバアレイに固着された状態を示す分解斜視説明図である。
【図4】光ファイバアレイの樹脂層の空洞部の直径の総和と、光ファイバの断線率および偏光のクロストークとの関係を示す図である。
【符号の説明】
10、12…光ファイバ 14…光導波路チップ
16、18…アレイ 20…LiNbO3 基板
22…光導波路 24…位相変調器
26…偏光子 30a、30b、34…V字状の溝
32、36…座繰り部
Claims (5)
- 光導波路チップと光ファイバとを接続するための光ファイバアレイにおいて、
前記光ファイバを配設するためのアレイ本体を有し、
前記アレイ本体に前記光ファイバが樹脂層により固着され、
前記樹脂層には、直径の総和が10μm〜500μmの範囲内にある1または2以上の空洞部を有することを特徴とする光ファイバアレイ。 - 請求項1記載の光ファイバアレイにおいて、
前記アレイ本体は、前記光ファイバを挟持して配設するための2枚の基板を有し、
前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚には前記光ファイバを保持して固定するための溝部が形成されていることを特徴とする光ファイバアレイ。 - 請求項2記載の光ファイバアレイにおいて、
前記光ファイバアレイは、前記光導波路チップと前記光ファイバとを偏波面を一定の方向に保持して接続するための偏波面保存光ファイバアレイであり、
前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚には前記光ファイバの偏波面を一定の方向に保持して固定するための溝部が形成されていることを特徴とする光ファイバアレイ。 - 請求項2又は3記載の光ファイバアレイにおいて、
前記溝部はV字状の所定長に形成されるとともに、該溝部に延在して溝部より幅広の座繰り部が形成され、
前記光ファイバが前記樹脂層により前記溝部に固着されることを特徴とする光ファイバアレイ。 - 請求項4記載の光ファイバアレイにおいて、
前記光ファイバは、楕円コアファイバ、パンダファイバ、楕円ジャケットファイバ、棒帯ファイバのうちのいずれか1つであることを特徴とする光ファイバアレイ。
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