JP3679276B2 - 光通信用光吸収膜を用いた光固定減衰器および光終端器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は光通信用の光吸収膜およびこれを用いた光固定減衰器および光終端器に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルチメディア社会の実現に向けて光通信システムの高度化・経済化の検討がなされている。例えば発信者から最終目的地まで電子信号への変換を伴わずに光によって信号を伝達する光通信網が研究されている。柔軟で効率的なネットワーク構造を持つ光通信網を構築するためには光ファイバ、受光・発光素子等に加えて、光分岐、光スイッチ、光波長多重等の機能を持つ光回路部品が必要不可欠である。そのような光部品には小型、多機能、経済的であることが望まれている。
【0003】
それを実現する手法として、基板上に作製された光導波路によって信号を処理することが検討されている。光導波路としては石英系光導波路やプラスチック系光導波路、半導体光導波路等が検討されており、その中でもシリコン基板上に形成した石英系光導波路による光導波回路は光損失が非常に小さく、最も実用的な導波型光デバイスとして期待されている。
【0004】
また、これら導波型光デバイスを更に小型化、機能化、経済化するための一つの方法として、光導波路に幅が数十μmの溝を形成し、その溝に特定の機能を持つ小型部品を挿入・固定することが検討されている。詳しくは加藤他、「波長多重通信用PLCハイブリッド集積光デバイス(NTT技術ジャーナル 1998年11月号)」、特願平5−130127号(光波長板とその製造方法及びこれを用いた導波型光デバイス)等に記載されている。図6、7はその例である。
図6に示すオプティカルネットワーク(ONU:Cptical Network Unit)用光モジュールでは、シリコン基板61の上に石英系光導波路62が作製されており、そのシリコン基板61のシリコンテラス63上に光半導体素子である半導体レーザや導波型受光素子などの光部品64(図中、641は受信用PD、642は送信用LD、643はモニタPD)が高さを調節されて実装されている。そして、光導波路に形成された溝65には膜厚15μmのフィルム状の波長フィルタ(誘電体多層膜フィルタ)66が挿入固定されている。このフィルタ66はポリイミドフィルム基板上に、特定の波長の光を反射させ、更に別の波長の光を透過するように設計された光学薄膜が形成されている。なお、67は電気配線である。この波長フィルタの機能も石英系光導波路による導波型光デバイスで実現することが出来るが、波長フィルタを用いることによって小型で経済的に実現できる利点がある。
【0005】
図7は偏波無依存アレイ導波路格子であり、複数の導波路から構成される入力導波路群71、出力導波路群72と二つの扇形スラブ導波路73から構成されている。そして、スラブ導波路73に挟まれた導波路の中間に、溝74が設けられており、厚さ15μm程度の1/2波長板75が挿入されている。なお76はシリコン基板である。この1/2波長板(光学主軸の方向と基板との角度は45°)は剛直なフッ素化ポリイミドを一軸延伸することによってポリイミド分子を配向させ、膜表面に対して平行な屈折率の異方性(複屈折)を調節し、入射された光の偏波面を90度回転するように配置されている。この1/2波長板と同様の機能を持つ導波型光デバイスも設計可能であるが、回路が複雑になり大型化する問題があった。水晶やポリカーボネート等の材料でも1/2波長板を作製可能であるが、ポリイミドを用いることによって15μmという極めて薄い厚さで実現可能となる。
【0006】
また、ポリイミド波長板上に直接反射膜を形成した反射型波長板を用いれば、導波路への溝加工が難しかった脆い材料においても本技術が適用可能となる。Sawada et al., 「Ultrathin(5μm)flexible reflective waveplate of fluorinated polyimide and elimination of polarization sensitivity in titanium−diffused lithium niobate waveguide circuits」(Jpn.J.Appl.Phys.37,6408(1998))によれば、材料が脆いために導波路の加工が難しかったニオブ酸リチウム光変調器にポリイミド反射型波長板を用いることによって、従来の1/2の面積において動作電圧が約1/2となる光変調器を偏波無依存で実現している。
【0007】
これらの導波路に形成した溝に小型部品を挿入する方法で最も重要なことは、挿入によって生じる過剰損失を低くすることである。光導波路は周囲と比較して屈折率を大きくした構造を持っており、光は屈折率の大きな部分に閉じこめられて伝搬する。溝の形成によってこの光の閉じこめ構造が無くなるため、溝部分に到達した光は放射状に拡がり、そして導波路に到達する。このとき、放射状に拡がった光が損失となる。この損失は溝の幅が広いほど大きくなる。Inoue et al., 「Elimination of polarizationSensitivity in Silica−Based Wavelength Division Multiplexer Using a Polyimide Half Waveplate」(Jornal of Lightwave Technology,Vol.15,1947(1997))によれば、溝幅が約40μm、30μmでそれぞれ1dB、0.5dBと見積もられている。そして、溝幅18μmの溝に厚さ14.5μmのポリイミド1/2波長板を挿入した場合の過剰損失は0.26dBである。これは従来の水晶1/2波長板が6dB(1/2波長板の厚さは98μm)であることと比較すると極めて低損失である。
【0008】
この様に導波型光デバイスの小型化、機能化、経済化に寄与している波長フィルタや1/2波長板はフッ素化ポリイミドを使用している。フッ素化ポリイミドは既存の光学材料に光部品で求められる光透過性、耐熱性、耐湿性等が不足しているとの観点から開発された材料であり、佐々木他「光通信用ポリイミド」(NTTR&D,47,937(1998))に詳しく記載されている。フッ素化した酸二無水物とジアミンから合成される各種のフッ素化ポリイミドは300℃以上の耐熱性と0.7%以下の低い吸水率をもち、しかも透過性に優れる。また、2種類のフッ素化ポリイミドの共重合体の共重合比を変化させることにより屈折率も制御することが可能であり、このポリイミドをコアとクラッドに用いれば光導波路が実現可能である。そして、フッ素化ポリイミドに含まれる炭素/水素の結合を全て炭素/フッ素にすることにより、光通信波長域(波長1.0〜1.7μm)全域で光の吸収ピークを持たずに、従来のフッ素化ポリイミドと同等の耐熱性と耐湿性をもつ全フッ素化ポリイミドが実現可能である。
【0009】
光通信システムの高度化にともない導波型光デバイスの構成も前述したように複雑化している。図6から図7の例では1つのデバイスは複数の部品から構成され、光導波路が2本或いはそれ以上の導波型光デバイスも報告されている。この様な多チャンネルで構成される導波型光デバイスにおいては製造プロセスの作製誤差によって導波路毎に伝搬損失が異なることが知られている。また、伝搬損失が異なる導波路に更に光部品を一体化させる場合、光部品の種類によって伝搬損失が異なるとともに、一体化する個数が異なれば更に伝搬損失の差が大きくなる。多チャンネル構成にすることによって導波路毎に伝搬損失の差が発生し、更に光部品を接続することによって伝搬損失の差が大きくなるのである。複数の光部品を一体集積する場合、導波路や部品毎に伝搬損失が異なるので、同じ光を入射しても出射する光の振幅が導波路毎に異なり、次に接続される光回路で誤動作を引き起こす可能性がある。したがって、複数の導波路から構成される導波型光デバイスでは各チャンネルの伝搬損失が等しいことが望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
光導波型光デバイスにおいて、導波路毎に異なる伝搬損失の差を解消する何らかの方法があれば、多チャンネル導波型光デバイスの出射光を一定値に揃えることが可能になり、光回路を多段に接続した場合の誤動作を回避することが可能である。
【0011】
一般に、導波型光デバイスにおいて伝搬光の振幅を調節可能な部品としては光半導体増幅器SOA(SOA:Semiconducter Optical Amplifier)がある。しかし、SOAを動作するには電力供給が必要になるので装置構成が複雑になり、高価になるなどの問題がある。また、電力供給することなく伝搬光の振幅を調節可能な部品としては光ファイバ型光固定減衰器がある。本部品を導波型光デバイスヘ用いるには、まず光導波路と光ファイバを接続して光を固定減衰器へ通過させる。その後、振幅を調節した後に、再度光導波路とファイバを接続して光導波路へ光を戻す必要があり、装置構成が複雑になるとともに、製造プロセスも複雑になる等の問題がある。以上のように、伝搬損失を等しくするためには、装置構成が複雑になり大型化すること、製造プロセスも複雑になること等のため、小型で経済的に伝搬損失を等しくする方法が望まれていた。
【0012】
前述した光導波路に幅が数十μmの溝を形成し、その溝に特定の機能を持つ小型部品を挿入固定する方法を用いて伝搬損失の差を解消させるには、数十μmの膜厚において数dBから十数dBの損失を制御可能な光吸収膜が必要となる。光吸収膜を用いれば、SOAや光ファイバ型固定減衰器を用いるよりも構成が簡単になり、小型化が可能であり、結果として経済化を達成できる。
【0013】
吸収体としては、着色ガラスや光ファイバ固定減衰器に代表される遷移金属イオンの光吸収、ガラス上に作製された金属薄膜の光吸収等が一般的に知られている。遷移金属イオンの光吸収は波長依存性が大きく、波長多重通信の実現が期待される現在では光通信波長帯の広い領域で一定の損失を得ることが困難である。金属はその大きな吸収係数により数十nmから数百nmの膜厚で大きな損失を得ることが可能であるが、膜厚を調節することによって損失を制御するには、数十nmの精度で膜厚を調節しなくてはならず現状では極めて困難である。このように従来の光吸収方法では問題がある。
【0014】
本発明は、以上に述べた状況を鑑み、導波型光デバイスの導波路毎に異なる伝搬損失の差を小型で取り扱い安く経済的に解消可能な光通信用光吸収膜を提供することを課題とする。またこの光通信用光吸収膜を使用して経済的な光部品を提供することを次の課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明を概説すれば、本発明による光固定減衰器は、複数の導波路から構成される導波路型光デバイスの前記導波路に溝を形成し、カーボンブラックが分散された厚さが60μm以下のフッ素化ポリイミド高分子膜を有する光通信用光吸収膜を前記溝に挿入固定することによって光導波路の損失が一定の値に調節されていることを特徴とする。本発明による第2の態様の光固定減衰器によれば、前記高分子膜は別の高分子膜、特に透明膜上にあることを特徴とする。本発明の第3の光固定減衰器は、前記高分子膜の膜厚を変化させて、光吸収量に面内分布を持たせたことを特徴とする。また、本発明による光終端器は複数の導波路から構成される導波路型光デバイスの前記導波路に溝を形成し、カーボンブラックが分散された厚さが60μm以下のフッ素化ポリイミド高分子膜を有する光通信用光吸収膜を前記溝に挿入固定することによって導波路の出射光が遮断されていることを特徴とする。本発明による第2の態様の光終端器によれば、前記高分子膜は別の高分子膜、特に透明膜上にあることを特徴とする。本発明の第3の光終端器は、前記高分子膜の膜厚を変化させて、光吸収量に面内分布を持たせたことを特徴とする。
【0016】
光導波路に形成した溝に薄膜部品を挿入して伝搬損失の差を解消させる薄膜部品としては、挿入作業中に破損がなく、数10μmの厚さで数dBから数十dBの損失を制御可能なことが必要である。より好ましくはハンダ工程に耐える300℃以上の耐熱性と長期的安定性を確保するための耐湿性を持つことである。無機材料はその厚みが数十μmになると割れやすくなることから取扱性に問題がある。一方、プラスチック材料は数十μmの厚さでも柔軟性を有するが、光通信波長領域(波長:800〜1600nm)では光透過性に優れるために数十μmの厚さでは数dBから数十dBの損失を得ることはできない。
【0017】
そこで、本発明者らはプラスチック材料を用いて要求条件を満足する光吸収膜について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0018】
【作用】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明者らは、光吸収体となりうる多くの材料について鋭意検討した結果、本発明の光吸収膜の光吸収体としてカーボンブラックが最適であることを見いだした。カーボンブラックは、広い波長範囲の光を吸収するため光損失の波長依存性が小さく、広い波長範囲で一定の損失を得ることが可能である。また耐熱性も1000℃以上と高く、長期信頼性にも優れている。
【0020】
【発明の実施の態様】
本発明には、種々のカーボンブラックが利用できるが、導波型光デバイスヘの応用では、波長が1μm程度の光を用いるので、光の異常散乱を防ぎ、膜表面のいずれの場所においても均一な損失を得るためにはカーボンブラックの微粒子の大きさは1μm未満であることが好ましい。そして、高分子膜、たとえばポリイミド中へ均一に分散させることによって厚さ数十μmで数dBから数十dBの損失が制御可能になる。損失を制御するためには、カーボンブラックの配合量を変化させれば良い。例えば、ポリイミド中にカーボンブラックを0.5重量%分散して作製した厚さ20μmの光吸収膜の損失は約2.5dBである。また配合量を4重量%にすると損失は約17dBとなる。カーボンブラックの配合量としては光吸収膜の仕様によって異なるが、0.1重量%〜10重量%が好ましい。前記高分子材料としては耐熱性および耐湿性の観点から、フッ素化ポリイミドが用いられる。特に繰り返し単位化学式1からなるフッ素化ポリイミドは波長フィルタや波長板で光導波型デバイスヘの適用実績があり、非常に好ましい。
【0021】
【化1】
【0022】
また光吸収膜の厚さは、適用する光デバイスの仕様によって個々設定されるが、基本的には薄いのが好ましい。例えば光導波路に形成した溝に光吸収膜を挿入して使用する場合は、従来技術の説明のところで述べたように挿入によって生じる過剰損失を低くすることが重要である。光導波路は周囲と比較して屈折率を大きくした構造を持っており、光は屈折率の大きな部分に閉じこめられて伝搬する。溝の形成によってこの光の閉じこめ構造が無くなるため、溝部分に到達した光は放射状に拡がり、そして導波路に到達する。このとき、放射状に拡がった光が損失となる。この損失は溝の幅が広いほど大きくなる。Inoue et al.,「Elimination of polarization Sensitivity in Silica−Based Wavelength Division Multiplexer Using a PolyimideHalf Waveplate」(Jornal of LightwaveTechnology,Vol.15,1947(1997))によれば、溝幅が約40μm、30μmでそれぞれ1dB、0.5dBと見積もられている。光デバイスの仕様として1dB以下という要求が強いが、仮に1dBを要求条件とすると前述の論文から溝幅は40μmとなる。しかしながら光導波路にはコアとクラッドで種々の屈折率差(Δn)をもったものがある。石英導波路のΔnを変化させた場合の溝幅と過剰損失の関係を計算から調べてみるとΔnが0.3%の時、過剰損失が1dBとなる溝幅は40μmであるが、Δnが0.75%の時、過剰損失が1dBとなる溝幅は60μmである。より大きいΔnの導波路を用いる場合もあるが、通常Δnは0.75%以下と考えても良い。となると光吸収膜の厚さの一つの基準は60μmとなる。
【0023】
次に高分子材料としてポリイミドを用いた場合の光吸収膜の製造方法について述べる。所定量のポリアミド酸溶液に所定量のカーボンブラック粒子を容器に入れ、均一に分散させる。次いで、適当な基板上にカーボンブラック粒子分散ポリアミド酸溶液をスピンコート等で基板上に塗布し、それを空気中又は、窒素雰囲気中あるいは真空中で300〜400℃において加熱イミド化する。次に基板から剥離して光吸収膜を得る。
【0024】
一本の導波路からなる導波型光デバイスの場合、上記のように作製した光吸収膜を用いればよいが、本発明のように2本以上の導波路からなる場合は、導波路によって伝搬損失が異なるため、導波路の伝搬損失に合わせて光吸収膜の損失も調節しなくてはならない。光損失を調整した光吸収膜を切り出し、光導波路の溝に挿入することにより導波路の損失の調整ができる。
【0025】
具体的には次のようにして光導波路の伝搬損失の差を解消させる。本発明のように光吸収膜を使用する導波型光デバイスが2本以上の導波路からなる場合は、前記のように損失を調節した光吸収膜を必要な枚数用いることにより複数の導波路の損失を等化にすることが可能となり、前述したSOAや光ファイバ型光固定減衰器を用いるよりも遥かに部品点数が少なく小型になる。
【0026】
導波型光デバイスが2本以上の導波路からなる場合は、損失を調節した光吸収膜を必要な枚数用いることにより複数の導波路の損失を等化にすることが可能となるが、導波路の本数だけ光吸収膜が必要になる。これを改善するためには光吸収膜は一つだけとし、導波路の損失に合わせて光吸収膜の厚さを制御することにより導波路の損失を等化にすることができる。すなわち膜厚が不連続な光吸収膜を作製すれば良い。この膜厚が不連続な光吸収膜においてどの厚さを基準にするかが問題になるが、等化にする損失値を最も小さくすることが部品設計上好ましい。すなわち複数の導波路の中で損失が一番大きい導波路は光吸収膜による損失付加はゼロにすることが望まれる。そうするとこれまで述べてきた光吸収膜では、損失が一番大きい導波路は光吸収膜がなく、その部分に穴があくことになってしまう。またその他の部分も非常に薄くなり、取り扱いが困難になる。これを解決するためには、高分子材料とカーボンブラックからなる光吸収膜が、高分子材料からなる透明膜上に形成された構成の光吸収膜を作製すれば良い。そしてこの二層構造の光吸収膜を複数の導波路の損失に合わせて膜厚を制御することにより、損失等化が可能になる。
【0027】
この光吸収膜を用いることにより、種々の光部品が作製可能である。光導波路に溝を形成し、その溝に本発明の光吸収膜を挿入し、光学接着剤等で固定することにより、光固定減衰器が作製できる。従来の光固定減衰器に比較して損失の波長分散が少ないという特徴がある。また同様の構成で損失が極めて大きい光吸収膜を用いることにより光終端器が作製できる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明に関わる実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。断りがない限り、膜厚の測定はピーコック社製のデジタルメータで、損失の測定は、日立社製UV−3410で行った。また、伝搬損失の測定は波長1.55μmで行った。
【0029】
【実施例1】
化学式2の化学構造式のポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を作製した。
【0030】
【化2】
【0031】
次いで、カーボンブラック微粒子(公称粒100nm以下、フタル酸ジブチルフタレート(DBP)給油量が50〜200ml/100g)をN,N−ジメチルアセトアミド溶液に重量濃度が0.1〜10wt%になるように混ぜ込み、市販の超音波洗浄器中に浸した状態で放置する。
【0032】
次いで、このカーボンブラックのジメチルアセトアミド溶液をポリアミド酸溶液ヘカーボンブラック微粒子の重量濃度が0.1から4wt%になるように滴下し、攪拌脱泡器により均一攪拌した。その後、超音波洗浄器中に数分から数時間放置してカーボンブラックを更に均一分散させ、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を作製した。
【0033】
このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、直径4インチのシリコンウエハにスピンコート法により熱イミド化後の膜厚が20μmとなるように回転数を調節して塗布し、この塗膜を窒素雰囲気中のイナートオーブン(窒素流量:5リットル/分)を用いて、まず、70℃、1時間の処理を行った後に連続的に380℃、一時間の熱イミド化を行った。基板から剥離し、厚さ10μmのポリイミド光吸収膜を得た。図1は、混ぜ込むカーボンブラックの濃度と光吸収膜の損失の関係である。図から明らかなようにカーボンブラックの濃度によって損失が2dBから20dBの間で制御可能である。
【0034】
またこの小片を300℃で1時間放置した後に冷却して損失を測定したところ、損失の変化は熱処理前後で±0.5%以内であった。
【0035】
さらにこの小片について高温高湿環境(85℃、85%相対湿度)における損失安定性を調べた結果、損失は5000時間経過後も平均値±0.1%であり、極めて安定であり、光通信用途として十分な安定性を有していた。
【0036】
【実施例2】
直径4インチのシリコンウエハに実施例1で使用したポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液をスピンコート法により熱イミド化後の膜厚が10μmとなるように回転数を調節して塗布し、この塗膜を窒素雰囲気中のイナートオーブン(窒素流量:5リットル/分)を用いて、まず、70℃、1時間の処理を行った後に連続的に380℃、一時間の熱イミド化を行って膜厚10μmの透明膜を得た。
【0037】
次いで、実施例1と同様にして作製したカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、上記の透明層上に、前記と同様の方法で所定の損失になるように膜厚を調節して塗布、熱イミド化を行い、基板から剥離した後に合計膜厚30μmのポリイミド光吸収膜を得た。このポリイミド光吸収膜はカーボンブラック濃度が1.6wt%で損失は約8dBであった。
【0038】
次に1cm角に切り出した小片について曲率半径が1mmになるように曲げ応力を加えることを10回以上繰り返したが、層間剥離は見られず接着性は良好であった。
【0039】
【実施例3】
実施例2により作製した透明膜10μm、吸収膜20μm、損失8dBのポリイミド光吸収膜をダイシングソーによりストライプ状に削った。ストライプの幅は40μm、間隔は250μmである。削る膜厚は1μmから1μmおきに20μmまで削り、合計20本のストライプを作製した。図2は石英直線導波路に幅40μmの溝を掘り、そこにストライプを形成したポリイミド損失等化膜を挿入して測定した損失である。予め測定した導波路の損失は取り除いた値である。ダイシングソーによって膜厚をることにより損失が制御可能である。
【0040】
【実施例4】
図3は本発明の光固定減衰器を示す模式図であり、光導波路31に溝32を形成し、その溝32に光吸収膜33を挿入した構成の光固定減衰器である。光導波路の方向に対して垂直もしくは所定の角度になるようにダイシングソーによって幅40μmの溝が形成されており、そこに実施例1で作製したポリイミド光吸収膜を挿入し、光学接着剤で固定している。
【0041】
予め測定した溝付き光導波路の損失は0.3dBであった。例えば、光固定減衰器の損失を10dBにしたい場合、光吸収膜は10−0.3=9.7dBの損失にすればよい。そこで、損失9.7dBの光吸収膜を作製し、光固定減衰器を組み上げた。図4に本発明と従来の金属イオンドープタイプ光固定減衰器の損失の波長分散を示した。図中、(a)は本発明による光固定減衰器の波長分布、(b)は光固定減衰器の波長分布を示す。本発明の光固定減衰器は、従来のものに比較して損失の波長分散が非常に小さいことがわかる。
【0042】
図3は、光導波路が一つの場合を示したが、複数の光導波路が整列した場合でも同様にポリイミド光吸収膜を溝に挿入する形態を容易に類推できる。
【0043】
【実施例5】
図5は本発明の光終端器を示す模式図であり、光導波路51に溝52を形成し、その溝に光吸収膜53を挿入した構成の光終端器である。構成は光固定減衰器と同様である。
【0044】
光吸収膜の損失が40dBになるようにカーボンブラック微粒子を混ぜ込む量を増やし、光吸収膜を作製した。実際に作製した光吸収膜の損失は41dBであった。光導波路の方向に対して垂直もしくは所定の角度になるようにダイシングソーによって幅40μmの溝を形成し、そこへ損失41dBの光吸収膜を挿入し、エポキシ系接着剤において固定した。固定後に損失を測定したところ、損失は44dBであり、この導波型デバイスに光を入射させた場合、出射端における光の振幅が約1/10000に著しく低減しており、光を遮断することが可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上、実施例と共に説明したように、本発明の光固定減衰器あるいは光終端器に用いる光通信用光吸収膜は20〜40μm程度の膜厚で、数dBから数十dBの光損失を制御可能であり、損失は300℃以上の耐熱性を持ち、高温高湿試験においても5000時間の耐久性を示す。主に、導波型光デバイスの導波路毎に異なる伝搬損失の差を小型で取り扱い易く、経済的に解消することに寄与できる。また、実施例に示したように、光吸収膜を用いることにより損失の波長分散の小さい光固定減衰器が作製可能であり、また光終端器が簡易に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーボンブラック微粒子の濃度と光吸収膜の損失の関係を示す図。
【図2】光吸収膜の膜厚と損失の関係を示す図。
【図3】本発明の光固定減衰器を示す模式図。
【図4】本発明と従来の金属イオンドープタイプ光固定減衰器の損失の波長分散を示す図。
【図5】本発明の光終端器を示す模式図。
【図6】オプティカルネットワーク用光モジュールの斜視図。
【図7】アレイ導波路格子の斜視図。
【符号の説明】
31 光導波路
32 溝
33 光吸収膜
51 光導波路
52 溝
53 光吸収膜
61 シリコン基板
62 光導波路
63 シリコンテラス
64 光部品
65 溝
66 誘電体多層膜フィルタ
67 電気配線
71 入力導波路
72 出力導波路
73 スラブ導波路
74 溝
75 ポリイミド1/2波長板
Claims (6)
- 複数の導波路から構成される導波路型光デバイスの前記導波路に溝を形成し、カーボンブラックが分散された厚さが60μm以下のフッ素化ポリイミド高分子膜を有する光通信用光吸収膜を前記溝に挿入固定することによって光導波路の損失が一定の値に調節されていることを特徴とする光固定減衰器。
- 複数の導波路から構成される導波路型光デバイスの前記導波路に溝を形成し、カーボンブラックが分散された厚さが60μm以下のフッ素化ポリイミド高分子膜を有する光通信用光吸収膜を前記溝に挿入固定することによって導波路の出射光が遮断されていることを特徴とする光終端器。
- 前記高分子膜は別の透明な高分子膜上にあることを特徴とする請求項1記載の光固定減衰器。
- 前記高分子膜は別の透明な高分子膜上にあることを特徴とする請求項2記載の光終端器。
- 前記高分子膜の膜厚を変化させて、光吸収量に面内分布を持たせたことを特徴とする請求項1または3記載の光固定減衰器。
- 前記高分子膜の膜厚を変化させて、光吸収量に面内分布を持たせたことを特徴とする請求項2または4記載の光終端器。
Priority Applications (1)
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