JP3679176B2 - 深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法 - Google Patents

深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に美麗な鉄の青色酸化被膜を形成した深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
深絞り用ブルーイング冷延鋼帯は、優れた深絞り性と美麗な表面外観と良好な耐食性とを併せ持つ材料であり、調理用器物などに用いられている。従来、前記冷延鋼帯の製造は、次のような工程ルートで行われている。
【0003】
▲1▼熱間圧延−酸洗−冷間圧延−電解清浄−軟化焼なまし(タイトコイル)−調質圧延−巻なおし(オープンコイル化)−ブルーイングのための熱処理(オープンコイル)−巻なおし(タイトコイル化)−調質圧延
▲2▼熱間圧延−酸洗−冷間圧延−連続焼鈍(電解清浄−軟化焼なまし−調質圧延)−巻なおし(オープンコイル化)−ブルーイングのための熱処理(オープンコイル)−巻なおし(タイトコイル化)−調質圧延
ここで、オープンコイルとは板がコイル半径方向に間隔をあけて巻かれているコイルであり、タイトコイルとは板がコイル半径方向に密着して巻かれているコイルである。
【0004】
前記▲1▼の工程ルートは、冷間圧延後の鋼帯をタイトコイル用焼鈍設備においてタイトコイルの状態で軟化焼なましを行い、その後、オープンコイル用焼鈍設備においてオープンコイルの状態でブルーイングのための熱処理を行う工程ルートである。この工程ルートにおける出発材料としては、熱間圧延時に低温、たとえば500℃で巻取られた低炭素アルミニウムキルド鋼の熱延鋼帯が用いられている。なお以後、前記▲1▼の工程ルートを、TCAルートと略称する。
【0005】
前記軟化焼なまし工程は、冷間圧延によって加工硬化した鋼帯を再結晶させ、かつ再結晶した結晶粒を成長させることによって軟質化させるための工程であり、さらに鋼帯の鋼種および焼なまし条件を適正に選択することによって、鋼帯の深絞り性を向上させることができる。前記軟化焼なまし時におけるタイトコイルの状態の鋼帯は、半径方向の熱伝達率が非常に小さいので、昇温速度が非常に遅い。冷間圧延後の低炭素アルミニウムキルド鋼鋼帯を徐加熱すると、低炭素アルミニウムキルド鋼に含有されているアルミニウム(Al)と、窒素(N)とが再結晶前に窒化アルミニウム(AlN)として析出し、深絞り性の優れた結晶方位を有する再結晶組織が形成される。前述のように、低炭素アルミニウムキルド鋼鋼帯が低温で巻取られているのは、熱間圧延工程におけるAlNの析出をできるだけ防止し、冷間圧延後の軟化焼なまし時の再結晶前にAlNを析出させるためである。したがって、熱間圧延工程において低温巻取りした低炭素アルミニウムキルド鋼鋼帯を、冷間圧延後にタイトコイルの状態で軟化焼なましを行うことによって、優れた深絞り性を有する冷延鋼帯を製造することができる。
【0006】
前記ブルーイングのための熱処理工程は、鋼帯表面に青色の酸化被膜を形成させる工程であり、青色の酸化被膜は、露点の高い酸化性雰囲気ガス中で熱処理を行うことによって形成される。オープンコイルの状態の鋼帯は、鋼帯表面全域に亘って雰囲気ガスを直接接触せることができる。このため、鋼帯をオープンコイルの状態でオープンコイル用焼鈍炉に装入し、露点の高い酸化性雰囲気中でブルーイング熱処理を行うことによって、鋼帯表面に青色の酸化被膜を均一に形成することができる。このように、前記TCAルートでは、普通鋼の中では最も一般的な鋼種である低炭素アルミニウムキルド鋼を用いて、比較的容易にかつ確実に、深絞り性の優れたブルーイング冷延鋼帯を製造することができる。
【0007】
前記▲2▼の工程ルートは、冷間圧延後の鋼帯を連続焼鈍設備において軟化焼なましを行い、その後、オープンコイル用焼鈍設備においてオープンコイルの状態でブルーイングのための熱処理を行う工程ルートである。この工程ルートにおける出発材料としては、熱間圧延時、高温たとえば650℃で巻取られた極低炭素チタン含有鋼の熱延鋼帯が用いられている。前記連続焼鈍設備は、電解清浄工程、軟化焼なまし工程、調質圧延工程を同一ライン内で連続的に実施することのできる設備である。なお以後、前記▲2▼の工程ルートを、CAPLルートと略称する。連続焼鈍設備においては、鋼帯は巻戻されて板状の状態で処理されるので、焼なまし温度が高くなっても、タイトコイルの状態の鋼帯のように板同士の焼付きが発生しない。
【0008】
極低炭素チタン含有鋼は、再結晶温度の高い材料であり、軟質化させるためには熱間圧延時、高温で巻取り、かつ軟化焼なまし時高温、たとえば850℃で焼なましを行う必要がある。しかしながら、この材料は前記高温巻取りおよび高温焼なましを行うことによって昇温速度が非常に速く、かつ軟化焼なまし温度での保持時間が短い条件下でも極めて優れた深絞り性を示す。したがって、冷間圧延後の極低炭素チタン含有鋼鋼帯を連続焼鈍設備において、高温で短時間の軟化焼なましを行うことによって、優れた深絞り性を有する冷延鋼帯を製造することができる。なお、ブルーイングのための熱処理は、前記TCAルートの場合と同様にして行われ、鋼帯表面には均一に青色の酸化被膜が形成される。このように、前記CAPLルートでは、極低炭素チタン含有鋼を用いて、少ない工程数で効率的に深絞り性の優れたブルーイング冷延鋼帯を製造することができる。
【0009】
深絞り性の優れた冷延鋼帯を製造するための他の方法として、オープンコイルの状態の鋼帯に対して、軟化焼なましを行う方法が考えられる。しかしながら、従来からこの方法では、次のような問題によって深絞り性の優れた冷延鋼帯の製造に成功するに至っていない。すなわち、前記鋼帯の鋼種が低炭素アルミニウムキルド鋼の場合には、鋼帯がオープンコイルの状態であるので、軟化焼なまし時の昇温速度が速く、前記AlNの析出前に再結晶が生じ、深絞り性の優れた結晶方位を有する再結晶組織を形成することができないからであり、前記鋼帯の鋼種が極低炭素チタン含有鋼の場合には、前述のように高温での軟化焼なましが必要であるので、熱負荷が大きくなり、オープンコイル用焼鈍設備の耐久性が著しく低下するからである。さらにまた、オープンコイルの状態の鋼帯に対して軟化焼なましを行う場合には、カーボン汚れと呼ばれる黒色の表面汚れが発生することがあり、表面外観を著しく損なうという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造は、従来から前記TCAルートおよびCAPLルートによって行われており、軟化焼なましとブルーイングのための熱処理とが別々の設備で行われていた。このため、製造工程数が多く、製造所要日数が長くなるという問題があった。さらに、各ルートにはそれぞれ次のような問題がある。
【0011】
前記TCAルートでは、軟化焼なまし工程における板幅端部の酸化膜形成部および調質圧延工程における調質圧延油のボタ落ち部が、ブルーイングのための熱処理時に着色むらを形成し、均一な青色の酸化被膜を形成することができないという問題がある。
【0012】
図7は、タイトコイルの状態の鋼帯板幅端部における板の積層状態を示す断面図である。鋼帯の板幅方向の板厚分布には、板幅端部において板厚が急激に減少するエッジドロップ領域Eが存在するので、板が密着して巻かれているタイトコイルにおいても、コイル板幅端部では板間に隙間Gが生ずる。隙間Gには、雰囲気ガスが自由に出入りすることができるので、雰囲気ガスが鋼帯中の鉄に対して非酸化性であっても、鋼中の易酸化性元素に対しては酸化性となる場合があり、隙間Gを形成する鋼帯の板幅端部の表面には非常に薄い酸化膜が形成される。前記酸化膜形成部は、非酸化膜形成部に比べてブルーイングのための熱処理工程における酸化被膜形成時に、酸化被膜が厚く形成されるので、鋼帯表面には着色むらが形成される。
【0013】
また、前記調質圧延油のボタ落ちに起因する着色むらを解消する方法として、電解清浄によって調質圧延油を除去する方法が考えられる。しかしながらこの方法では、溶接などの電解清浄ライン停止時に、水酸化物が汚れとして付着するという新たな問題が発生する。さらにまた、前記TCAルートでは、通過工程ルートの工程数が多いので、生産所要日数が長くなり、納期が長くなるという問題もある。
【0014】
前記CAPLルートでは、前記連続焼鈍設備において、油が鋼帯表面に付着することがあり、油付着部がブルーイングのための熱処理時に着色むらを形成し、製品の表面外観を著しく低下させるという問題がある。本来、連続焼鈍設備は最終出荷設備であり、通板される大半の鋼帯には防錆油が塗油される。これに対して、深絞り用ブルーイング冷延鋼帯を通板する場合のように、連続焼鈍工程を中間工程として用いる場合には、塗油装置を用いないで、無塗油で通板される。しかしながら、塗油通板から無塗油通板への切換えを完璧に行うことは困難であり、特に切換え直後には無塗油通板にも拘わらず油が鋼帯表面に付着することがあり、前記着色むらの問題が発生する。また、連続焼鈍工程の調質圧延時には、前記TCAルートの場合と同様に、調質圧延油のボタ落ちが生ずることがあり、ボタ落ちに起因する前記着色むらの問題が発生する。
【0015】
本発明の目的は、前記問題を解決し、深絞り性が良好で、かつ表面外観が美麗で、着色むらのない深絞り用ブルーイング冷延鋼帯を短納期で効率的に製造することのできる深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、冷間圧延後の鋼帯を、板がコイル半径方向に間隔をあけて巻かれているオープンコイルの状態で焼鈍設備に装入して、軟化焼なましおよびブルーイングのための熱処理をこの順序で連続して行い、その後、調質圧延を行うことを特徴とする深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法である。
本発明に従えば、鋼帯を軟質化させ、かつ深絞り性を向上させるための軟化焼なましと、鋼帯の表面に青色の酸化被膜を形成するための熱処理とが同一の焼鈍設備において連続して行われるので、前記熱処理が別々の設備で行われていた従来の製造方法に比べて、製造工程数を大幅に減少することができる。
【0017】
また本発明は、前記軟化焼なまし時に、
雰囲気ガスとして水素および窒素から成る混合ガスを用い、
鋼帯温度が380〜420℃の範囲内の予め定める設定温度に達するまで、雰囲気ガスの露点を8〜12℃の範囲の値になるように制御し、
鋼帯温度が設定温度を超えると、それ以降の雰囲気ガスの露点を低下して非酸化性雰囲気中で、前記鋼帯の軟化焼なましを行うことを特徴とする。
本発明に従えば、前記軟化焼なまし時に、鋼帯表面の酸化が殆ど生じない適正上限温度に温度が達するまで、雰囲気ガスの露点が脱脂を行うための適正範囲の値に制御されているので、鋼帯表面の油脂分と水蒸気とを反応させ、鋼帯表面を酸化させることなく鋼帯表面の油脂分を除去することができる。
【0018】
また本発明の前記鋼帯は、低炭素アルミニウムキルド鋼であり、
前記軟化焼なまし時に、
雰囲気ガス温度が450〜550℃の範囲内の予め定める保持温度に達すると、その保持温度で保持する処理を行い、雰囲気ガス温度が650〜720℃の範囲内の予め定める軟化焼なまし温度に達すると、その温度で軟化焼なましを行うことを特徴とする。
本発明に従えば、前記鋼帯の鋼種が低炭素アルミニウムキルド鋼であり、前記軟化焼なまし時に前記保持温度で保持するステップ処理と呼ばれる処理が行われるので、オープンコイルの状態である鋼帯の昇温速度が速くても、前記ステップ処理によって再結晶前にAlNの析出が生じ、深絞り性の優れた結晶方位を有する再結晶組織が形成される。このため、従来深絞り性を向上させることが困難であったオープンコイルの状態における軟化焼なましにおいても、鋼帯の深絞り性を大幅に向上させることができる。
【0019】
また本発明の前記鋼帯は、極低炭素チタン含有鋼であり、
前記軟化焼なまし時に、
雰囲気ガス温度が800〜850℃の範囲内の予め定める軟化焼なまし温度に達すると、その軟化焼なまし温度で軟化焼なましを行うことを特徴とする。
本発明に従えば、前記鋼帯の鋼種が極低炭素チタン含有鋼であり、前記軟化焼なまし時に高温度で軟化焼なましが行われるので、鋼帯の鋼種が再結晶温度の高い極低炭素チタン含有鋼であっても、深絞り性を大幅に向上させることができる。
【0020】
また本発明は、前記軟化焼なまし時の雰囲気ガスとして、水素約75%,残部窒素から成る混合ガスを用いることを特徴とする。
本発明に従えば、前記軟化焼なまし時の雰囲気ガスとして、高水素濃度の水素窒素混合ガスが用いられるので、鋼帯表面のカーボン汚れと水素ガスとが反応して鋼帯表面のカーボン汚れを除去することができる。
【0021】
また本発明は、前記ブルーイングのための熱処理時に、
雰囲気ガスとして水素5〜15%,残部窒素から成る混合ガスを用い、
雰囲気ガスの露点を40〜60℃の範囲の値になるように制御し、
雰囲気ガス温度を380〜480℃の範囲の値になるように制御してブルーイングのための熱処理を行うことを特徴とする。
本発明に従えば、前記ブルーイングのための熱処理が適正な酸化性雰囲気中で、かつ適正温度で行われるので、鋼帯表面に美麗な青色の酸化被膜を形成することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係わるオープンコイル用焼鈍設備の簡略化された構成を示す系統図であり、図2は図1に示すベース近辺の拡大図である。オープンコイル焼鈍設備1は、前記オープンコイルの状態である鋼帯3を熱処理するための設備であり、前記鋼帯3が上面に載置されるベース4と、ベース4と鋼帯3とを覆い、内部空間に雰囲気ガスが導入される内カバー5と、内カバー5を覆う外カバー6と、外カバー6の周方向に間隔をあけて設けられ、内カバー5を加熱する加熱手段7と、ベース4に設けられ、内カバー5の内部空間の雰囲気ガスを循環させるベースファン17と、鋼帯温度および鋼帯温度に対応する温度を検出する温度検出手段8と、雰囲気ガスの露点を検出する露点検出手段9と、内カバー5の内部空間に供給される雰囲気ガスの種類を選択する選別手段10と、内カバー5の内部空間に第1雰囲気ガスを供給する第1雰囲気ガス供給手段11と、内カバー5の内部空間に第2雰囲気ガスを供給する第2雰囲気ガス供給手段12と、内カバー5の内部空間に水蒸気を供給する水蒸気供給手段13と、熱処理条件を予め定める設定値に設定する設定手段14と、設定手段14によって定められた設定値を満たすようにプログラム制御を行う制御手段15とを含んで構成される。
【0024】
オープンコイルの状態の鋼帯3は、その軸線を鉛直方向に向けてベース4上に載置されており、その上端部には鋼製のスペーサ29が板間の間隙を保持するために巻込まれている。スペーサ29は、複数の線材を撚り合わせて形成されているので、鋼帯3の板間に巻込まれていても雰囲気ガスを通過させることができる。
【0025】
ベース4は、鋼帯3の下端面と当接し、鋼帯3の板間の間隙を通過した雰囲気ガスをベースファン17に導くプレナムチャンバ18と、プレナムチャンバ18の下方に設けられ、ベースファン17から送り出される雰囲気ガスを鋼帯3の外周面外方の空間に導くディフューザ19と、ディフューザ19の下方に設けられるベースフレーム20とを含む。ベースフレーム20には、雰囲気ガスを密封するために2重のシール槽21が周方向に延びて形成されており、半径方向内方側の槽内には油が貯留されており、半径方向外方側の槽内には水が貯留されている。さらにまた、ベースフレーム20には、雰囲気ガスを内カバー5の内部空間へ導く供給管路25と、雰囲気ガスを外部に排出する排気管路24とが設けられている。
【0026】
ベース4の材質としては、耐熱鋼または炭素鋼が用いられることが好ましい。ベース4が耐熱鋼製である場合には、炭素鋼製の場合よりも高温で熱処理することができるので、オープンコイル用焼鈍設備1の適用温度範囲を大幅に拡大することができる。また、耐熱鋼は熱負荷による劣化が小さいので、オープンコイル用焼鈍設備1の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0027】
内カバー5は耐熱鋼製の有底円筒容器であり、開放端部を下方にしてベースフレーム20上に載置されている。内カバー5の下端部は、2重構造になっており、前記2重のシール槽21の対応する各槽内にそれぞれ浸漬されている。外カバー6は、内カバー5と大略的に同一形状を有しており、鉄皮と鉄皮の内側に形成されている耐火物層とを含んで構成される。加熱手段7は、たとえばガスバーナによって実現され、燃料である天然ガスの供給量を調整して温度制御を行うことができる。加熱手段であるガスバーナ7の本数は、たとえば12本である。ベースファン17は、羽根車17aと、モータ17bとを含んで構成され、羽根車17aは前記ディフューザ19内に設けられている。
【0028】
供給管路25から内カバー5内の空間に導入された雰囲気ガスは、ベースファン17によって、ディフューザ19を介して送り出され、内カバー5に接触する。内カバー5は、ガスバーナ7の燃焼熱によって加熱されているので、ディフューザ19から出た雰囲気ガスは内カバー5によって加熱される。加熱された雰囲気ガスは、矢符26方向に進んだ後、オープンコイルの板間の間隙を上部から下部へ進み、プレナムチャンバ18を経由してベースファン17に戻る。ベースファン17に戻った雰囲気ガスは、同様の経路で繰返して循環される。前記加熱された雰囲気ガスは、オープンコイルの板間の間隙を通過中に鋼帯表面の全域と直接接触することができる。このため、雰囲気ガスから鋼帯3への熱伝達面積が非常に大きくなり、前記加熱された雰囲気ガスは、鋼帯3を急速にかつ均一に加熱することができる。また、内カバー5内から雰囲気ガスが排気管路24を介して排出される。雰囲気ガスの排出量は、前記導入量に見合う量であり、排気雰囲気ガスは排気管路24からシールポット28を経て大気中に排出される。
【0029】
前記温度検出手段8は、たとえば熱電対によって実現され、外カバー6の上部に設けられている炉頂温度測定用熱電対8aと、鋼帯3の内径中心孔内に設けられている雰囲気ガス温度測定用熱電対8bと、鋼帯3の下端面に当接して設けられている鋼帯温度測定用熱電対8cとから構成される。前記露点検出手段である露点計9は、たとえば雰囲気ガス中の水分をセンサ素子に吸着させ、そのときのインピーダンス変化を検出して露点を測定するセンサである。露点計9は、前記排気管路24に設けられており、排出される雰囲気ガス中の露点を検出することができる。
【0030】
前記第1雰囲気ガス供給手段11は、第1雰囲気ガス、たとえば水素5〜15%,残部窒素から成る混合ガス(以後、「HNガス」と略称する)を内カバー5の内部空間に前記供給管路25を介して供給する手段であり、HNガス発生源11aと、HNガス供給管路11bと、HNガス用電磁弁11cとを含んで構成される。HNガス供給管路11bは、前記供給管路25に接続されており、電磁弁11cはその開閉によってHNガスの供給および遮断を随時行うことができる。前記第2雰囲気ガス供給手段12は、第2雰囲気ガス、たとえば水素約75%,残部窒素から成る混合ガス(以後、「AXガス」と略称する)を内カバー5の内部空間に前記供給管路25を介して供給する手段であり、AXガス発生源12aと、AXガス供給管路12bと、AXガス用電磁弁12cとを含んで構成される。AXガス供給管路12bは、前記供給管路25に接続されており、AXガス用電磁弁12cは、その開閉によってAXガスの供給および遮断を随時行うことができる。
【0031】
前記選別手段10は、前記HNガス用電磁弁11cおよびAXガス用電磁弁12cを開閉する手段であり、制御手段15の指令に基づいて、HNガスまたはAXガスを選択して内カバー5の内部空間に供給することができる。前記水蒸気供給手段13は、水蒸気を内カバー5の内部空間に前記供給管路25を介して供給する手段であり、水蒸気発生源13aと、水蒸気供給管路13bと、水蒸気調整弁13cとを含んで構成される。水蒸気供給管路13bは、前記供給管路25に接続されており、水蒸気調整弁13cはその弁開度によって水蒸気の供給量を調整し、雰囲気ガス中の露点を制御することができる。
【0032】
前記設定手段14は、予め定める設定値をキーボードなどから設定する手段であり、熱処理の均熱温度、保持時間、雰囲気ガスの露点および雰囲気ガスの種類を予め定める設定値に目標パターンに基づいて設定することができる。前記制御手段15は、マイクロコンピュータなどによって実現され、前記温度検出手段8および露点計9の出力に応答し、検出温度、および検出露点が設定手段14によって予め定められている設定値と合致するようにガスバーナ7および水蒸気供給手段13を制御し、かつ雰囲気ガスの種類が設定手段14によって予め定められている雰囲気ガスの種類を満たすように選別手段10を制御してプログラム制御を行うことができる。
【0033】
図3は、本発明の第1の実施の形態である深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法を表す工程図である。本実施の形態における熱延鋼帯の鋼種は、低炭素アルミニウムキルド鋼であり、熱延鋼帯は熱間圧延時にAlNの析出を抑制するために低温、たとえば500℃で巻取られている。
【0034】
本実施の形態で注目すべきは、冷間圧延後の鋼帯3をオープンコイルの状態で前記オープンコイル用焼鈍設備1に装入して、軟化焼なましおよびブルーイングのための熱処理を連続して行い、その後、調質圧延を行うことによって深絞り用ブルーイング冷延鋼帯が製造される点である。このように、鋼帯3を軟質化させ、かつ深絞り性を向上させるための軟化焼なましと、鋼帯3の表面に青色の酸化被膜を形成するための熱処理とが同一の前記オープンコイル用焼鈍設備1において連続して行われるので、前記熱処理が別々の設備で行われていた従来の製造方法に比べて製造工程数を大幅に減少することができる。このため、製品の製造所要日数が短縮され、納期短縮を実現することができる。なお、前記熱処理が同一の設備で実施可能になった理由については、後述するとおりである。
【0035】
図4は、図3に示す軟化焼なましおよびブルーイングのための熱処理工程における熱処理方法を説明するためのタイミングチャートである。図4中の推移線C1は、前記炉頂温度測定用熱電対8aで測定された炉頂温度T1の時間的推移を示す曲線であり、推移線C2は前記雰囲気ガス温度測定用熱電対8bで測定された雰囲気ガス温度T2の時間的推移を示す曲線であり、推移線C3は前記鋼帯温度測定用熱電対8cで測定された鋼帯温度T3の時間的推移を示す曲線である。前記炉頂温度T1は、内カバー5の外周面と外カバー6の内周面との間の空間における炉頂部付近の温度を示す。図4に示す熱処理における被熱処理鋼帯の鋼種は、低炭素アルミニウムキルド鋼であり、その化学成分は、たとえばC:0.03%,Mn:0.25%,Al:0.04%,N:0.0050%,残部鉄および不可避的不純物である。
【0036】
前記オープンコイル用焼鈍設備1を用いてオープンコイルの状態の鋼帯3を熱処理する際には、第1ステップとして鋼帯3がベース4のプレナムチャンバ18上に載置される。鋼帯3の載置は、通常、1段積みまたは2段積みで行われる。鋼帯3の載置後、内カバー5が鋼帯3およびベース4にかぶせられ、内カバー5の2重構造の下端部は対応する前記2重のシール槽21に浸漬され、油と水とによる2重シールが行われる。時刻t0では、雰囲気ガスたとえば前記AXガスが内カバー5の内部空間に送り込まれ、空気のパージが行われる。また、外カバー6が内カバー5の上からかぶせられ、加熱が可能な状態となる。
【0037】
時刻t1では、ガスバーナ7に点火して軟化焼なましが開始される。時刻t1における露点は、8〜12℃の範囲の値、たとえば10℃になるように制御されることが好ましい。また、この露点の水準は、鋼帯温度T3が380〜420℃の範囲内の予め定める設定温度、たとえば400℃に達するまでほぼ一定に保持されることが好ましい。このように露点が比較的高い値に保持されるのは、鋼帯表面の油脂分と水蒸気とを反応させ、鋼帯表面の油脂分を除去するためである。また、露点の範囲が限定されているのは、上限値を超える露点では、鋼帯表面が酸化する恐れがあるからであり、下限値未満の露点では脱脂が充分に行われない恐れがあるからである。さらにまた、鋼帯の到達温度範囲が限定されているのは、上限値を超える鋼帯温度では酸化反応速度が速くなるので、鋼帯表面が酸化する恐れがあるからであり、下限値未満の鋼帯温度では脱脂反応速度が遅くなるので、脱脂が充分に行われない恐れがあるからである。前記露点および鋼帯温度T3の制御によって、軟化焼なまし初期に鋼帯表面を酸化させることなく、鋼帯表面の油脂分を除去することができる。このため、従来法で行われている脱脂のための電解清浄工程を省略することができる。時刻t2では、前記鋼帯温度T3が前記予め定める設定温度に到達し、それに応じて露点を低下させる操作が開始される。露点低下操作は、前記水蒸気調整弁13cを絞り、水蒸気供給量を減少させることによって行われる。
【0038】
時刻t3では、前記雰囲気ガス温度T2が予め定める保持温度、たとえば500℃に到達し、その温度で保持される。この保持温度で保持されるいわゆるステップ処理は、鋼帯の再結晶が始まる前に低炭素アルミニウムキルド鋼中に含まれるAlと、NとをAlNとして析出させるために行われる。前述のように、熱間圧延時に鋼帯が低温で巻取られ、熱間圧延時におけるAlNの析出ができるだけ防止されていたのは、この理由によるものである。前記保持温度は、450〜550℃の範囲の値に選ばれることが好ましい。これは、上限温度を超えるステップ温度では、鋼帯の再結晶がAlNの析出前に生じ、AlNを鋼帯の再結晶前に析出させることができなくなるからであり、下限温度未満のステップ温度では、AlNの析出が充分に生じないからである。このように、保持温度を適正な温度範囲の値に選ぶことによって、再結晶前にAlNを析出させることが可能となり、再結晶時に深絞り性の優れた結晶方位を有する再結晶組織を形成することができる。なお、前記保持温度における保持時間は、たとえば2hrである。
【0039】
前述のように、従来、オープンコイルの状態の鋼帯は昇温速度が速く、AlNを再結晶前に析出させることが困難であったので、深絞り性の優れた再結晶組織を形成することができなかった。しかしながら、前記ステップ処理を施すことによって、オープンコイルの状態の鋼帯に対しても、AlNを再結晶前に析出させることが可能となり、深絞り性の優れた再結晶組織を形成することができるようになった。ステップ処理中の露点は、鋼帯3の表面が酸化しない水準、たとえば−35℃に保持される。この露点水準は、軟化焼なまし中そのまま維持される。時刻t4では、ステップ処理が終了し、再度昇温が開始される。
【0040】
時刻t5では、前記雰囲気ガス温度T2が予め定める軟化焼なまし温度、たとえば700℃に到達し、その温度で保持される。前記軟化焼なまし温度は、650〜720℃の範囲内の値に選ばれることが好ましい。これは、上限温度を超える軟化焼なまし温度では、A1変態点を超えるので、炭化物の粗大化が生じて深絞り性の低下を招くからであり、下限温度未満の軟化焼なまし温度では、結晶粒の成長が充分生じないので、機械的性質が硬質になり、かつ深絞り性の向上が不充分になるからである。なお、軟化焼なまし温度における保持時間は、たとえば1hrである。
【0041】
時刻t6では、軟化焼なましの加熱過程が終了し、冷却過程が開始される。軟化焼なましの加熱過程中(時刻t1〜時刻t6)の雰囲気ガスとしては、前記AXガスを用いることが好ましい。これは、高水素濃度のAXガスの使用によって、カーボン汚れと呼ばれる黒色の表面汚れの発生を防止することができるからである。前述のように、カーボン汚れは、オープンコイルの状態の鋼帯に対して軟化焼なましを行う場合に発生しやすい表面欠陥であり、黒鉛が鋼帯表面へ析出することによって発生する。前記AXガス中の水素濃度は非常に高濃度であるので、黒鉛は水素と反応して鋼帯表面から除去され、カーボン汚れの発生が防止される。時刻t6における冷却は、外カバー6を一旦除去することによって行われ、冷却開始と同時に雰囲気ガスの種類が、AXガスからHNガスに切換えられる。雰囲気ガスの切換えは、前記選別手段10によって前記AXガス用電磁弁12cを閉とし、HXガス用電磁弁11cを開とすることによって行われる。
【0042】
時刻t7では、再度、外カバー6が内カバー5にかぶせられ、ガスバーナ7が点火され、ブルーイングのための熱処理が開始される。ブルーイングのための熱処理中は、雰囲気ガスとして前記HNガスを用いることが好ましく、かつ露点は40〜60℃の範囲の値、たとえば45℃に選ばれることが好ましい。雰囲気ガスとして、低水素濃度であるHNガスを用いることが好ましいのは、露点との組合せによって適正な酸化性雰囲気ガスを形成することができるからである。また、露点の範囲が限定されるのは、上限値を超える露点では、鋼帯表面に生成する酸化皮膜の膜厚が過大となるからであり、下限値未満の露点では前記酸化皮膜の膜厚が過小となるからである。酸化皮膜の膜厚が過大または過小である場合には、鋼帯表面に美麗な青色酸化皮膜を形成することが困難である。
【0043】
時刻t8では、前記雰囲気ガス温度T2が予め定める処理温度、たとえば450℃に到達し、その温度で保持される。前記処理温度は、380〜480℃の範囲の値に選ばれることが好ましい。これは、上限温度を超える処理温度では、酸化皮膜の膜厚が過大となるからであり、下限温度未満の処理温度では、酸化皮膜の膜厚が過小となるからである。なお、前記処理温度における保持時間は、たとえば2hrである。時刻t9では、ガスバーナ7の燃焼が停止され、外カバー6をかぶせたままで、冷却が開始される。時刻t9以降の冷却速度は、外カバー6が除去されていないので、非常に遅い。このため、冷却中も酸化皮膜が形成される。時刻t10では、外カバー6が除去され、露点を低下させる操作が開始される。外カバー6の除去によって冷却速度が増大し、露点低下と相俟って酸化皮膜が形成されなくなる。なお、時刻t9〜時刻t10間の時間は、たとえば17hrである。時刻t11では、雰囲気ガスであるHNガスの供給が停止され、内カバー5が除去され、前記軟化焼なましおよびブルーイングのための熱処理が終了する。
【0044】
前述のように、前記ステップ処理、軟化焼なましおよびブルーイングのための熱処理においては、雰囲気ガス温度T2によって熱処理温度が制御されている。これは雰囲気ガス温度T2の方が鋼帯温度T3よりも応答性がよいので、制御するための温度として好適であるからである。しかしながら、雰囲気ガス温度T2の代わりに雰囲気ガスに接触している鋼帯の鋼帯温度T3または炉頂温度T1などのように雰囲気ガスに対応する温度を制御温度として用いてもよい。
【0045】
このように本実施の形態では、脱脂処理と、深絞り性を向上させるためのステップ処理とを含む軟化焼なまし、ならびにブルーイングのための熱処理が適正な値に選ばれた温度および露点、ならびに適正な雰囲気ガスの種類のもとで連続して行われるので、深絞り性が良好で、かつ表面外観が美麗で着色むらのない深絞り用ブルーイング冷延鋼帯を、製造工程数を大幅に短縮して効率的に製造することができる。
【0046】
図5は、図1に示すオープンコイル用焼鈍設備の電気的構成を示すブロック図である。処理回路である制御手段15には、設定手段14から予め定める値に設定された熱処理条件が入力される。前記熱処理条件には、鋼帯の鋼種毎に予め定められている熱処理温度、露点および雰囲気ガスの種類などが含まれている。制御手段15は、温度検出手段8、露点検出手段9の出力に応答して、加熱手段7、水蒸気供給手段13および選別手段10を作動させ、熱処理温度、露点および雰囲気ガスの種類が設定手段14によって設定された目標熱処理条件を満たすようにプログラム制御を行う。
【0047】
図6は、図5に示す処理回路の制御動作を説明するためのフローチャートである。前記オープンコイル用焼鈍設備1で図4に示す熱処理を行う場合には、上位コンピュータから被熱処理鋼帯の鋼帯番号、鋼種、寸法、重量、装入本数および熱処理条件などが作業者に送られて来る。作業者はそれらに基づいて、たとえば低炭素アルミニウムキルド鋼の鋼帯を1コイル、ベース4上に載置し、内カバー5および外カバー6をかぶせて熱処理を開始する。ステップs1では、熱処理条件の設定が行われる。熱処理条件は、設定手段14によって設定され、制御手段15に送られて記憶される。ステップs2では、内カバー5の内部空間に存在する空気をパージするための制御動作が行われる。空気のパージは、たとえば前記選別手段10を作動させて、前記AXガス供給手段12から、前記AXガスを内カバー5の内部空間に送り込むことによって行われる。ステップs3では、鋼帯表面の油脂分を脱脂するための制御動作が行われる。脱脂処理は、前記図4の時刻t1から時刻t2間に示す露点条件を満たすように、前記水蒸気供給手段13を作動させることによって行われる。
【0048】
ステップs4では、前記ステップ処理を実施するための制御動作が行われる。ステップ処理は、前記図4の時刻t3から時刻t4間に示す温度および露点条件を満たすように、前記加熱手段7および水蒸気供給手段13を作動させることによって行われる。ステップs5では、軟化焼なましを実施するための制御動作が行われる。軟化焼なましは、前記図4の時刻t5から時刻t6間に示す温度条件を満たすように、前記加熱手段7を制御することによって行われる。ステップs6では、ブルーイングのための熱処理を実施するための制御動作が行われる。ブルーイングのための熱処理は、前記図4の時刻t7から時刻t10間に示す処理温度、露点および雰囲気ガス条件を満たすように、前記加熱手段7、水蒸気供給手段13および選別手段10を作動させることによって行われる。
【0049】
本発明の第2の実施の形態として、鋼帯の鋼種として前記低炭素アルミニウムキルド鋼に代わって極低炭素チタン含有鋼を用い、オープンコイル用焼鈍設備1のベース4として耐熱鋼製ベースを用い、前記軟化焼なまし時に、ステップ処理を行わないで、温度が800〜850℃の範囲内の予め定める軟化焼なまし温度に達すると、その温度で軟化焼なましを行い、引続いて前記ブルーイングのための熱処理を行って、深絞り用ブルーイング冷延鋼帯を製造してもよい。
【0050】
極低炭素チタン含有鋼は、鋼中の炭素(C)およびNをチタン(Ti)によってTiCおよびTiNとして安定化した鋼であり、鋼中にはフリーC,Nが全く存在しない。極低炭素チタン含有鋼の化学成分は、たとえばC:0.0020%,Mn:0.15%,Ti:0.06%,Al:0.02%,N:0.0030%,その他鉄および不可避的不純物である。
【0051】
一般に、鋼中のフリーCおよびNは、含有量が増大するほど鋼帯を硬質化させ、かつ深絞り性を大幅に低下させるので、鋼中にフリーC,Nを全く含まない極低炭素チタン含有鋼は、本質的に軟質で深絞り性に優れた材料である。しかしながら、極低炭素チタン含有鋼においては、鋼中に前記TiCおよびTiNが微細に析出しているので、冷間圧延後の軟化焼なまし時の再結晶温度が高く、かつ結晶粒の成長性が悪いという問題がある。したがって、極低炭素チタン含有鋼が、本来、内包している軟質で深絞り性に優れた特性を発揮させるためには、熱間圧延時に鋼帯を高温、たとえば650℃で巻取り、かつ冷間圧延後の軟化焼なまし時に鋼帯を高温で焼なましを行い、結晶粒を適正な粒径に成長させる必要がある。本実施の形態において、軟化焼なまし時に前記高温焼なましが行われるのは、この理由によるものである。
【0052】
またステップ処理を行わなくてもよいのは、深絞り性向上機構がAlNの析出を利用する低炭素アルミニウムキルド鋼の場合と異なることによるものである。さらにまた、耐熱鋼製のベース4が用いられるのは、高温軟化焼なましによってオープンコイル用焼鈍設備1の耐久性が低下することを防止するためである。さらにまた、軟化焼なまし温度の範囲が限定されているのは、上限値を超える温度では、前記耐熱鋼製のベース4を用いてもオープンコイル用焼鈍設備1の耐久性の低下が避けられなくなるからであり、下限値未満の温度では鋼帯の結晶粒の成長が充分生じないので、軟質で深絞り性の優れた特性を得ることができないからである。なお、本実施の形態の製造工程ルートは、前記第1の実施の形態と同一であり、その他の構成も前記第1の実施の形態と全く同一である。
【0053】
【実施例】
低炭素アルミニウムキルド鋼の鋼帯を用いて、本発明法および従来法によって深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造を行った。本発明法の実施例は、前記本発明の第1の実施の形態に示す工程ルートによって製造が行われ、その工程ルート中の軟化焼なましおよびブルーイングのための熱処理工程は、図1に示すオープンコイル用焼鈍設備1を用いて、表1に示す熱処理条件で行われた。冷間圧延後の鋼帯の寸法は、板厚1.17mm,板幅1070mmであり、鋼帯の重量は12970kgであった。従来法の比較例は、前記TCAルートに示す工程ルートによって製造が行われ、その工程ルート中の軟化焼なまし工程は、前記タイトコイル用焼鈍設備を用いて表1に示す熱処理条件で行われ、その工程ルート中のブルーイングのための熱処理工程は、前記オープンコイル用焼鈍設備1を用いて表1に示す熱処理条件で行われた。冷間圧延後の鋼帯の寸法は、板厚1.17mm,板幅1070mmであり、鋼帯の重量は14480kgであった。
【0054】
表1には、深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の材質特性の測定結果および表面外観の観察結果が併せて示されている。表1の材質特性の欄に示すrm 値は、r値の平均値を表しており、r値は板状引張試験片の幅方向対数ひずみεw と、厚さ方向対数ひずみεtとの比で表される塑性ひずみ比である。r値およびrm 値は、次式(1)式、(2)式で求められる。
【0055】
r = εw / εt …(1)
m = (rL +2r45+rC )/ 4 …(2)
ここで、rL:冷間圧延方向に採取した引張試験片のr値,r45:冷間圧延方向に対して45°の方向に採取した引張試験片のr値,rC:冷間圧延方向に対して直角方向に採取した引張試験片のr値
m 値は、薄鋼板の深絞り性に関連する特性値として用いられており、その値が大きくなるほど深絞り性が良好である。
【0056】
表1から、実施例の表面外観は美麗であり、着色むらが認められないこと、比較例の表面外観には着色むらが鋼帯表面全長に亘って発生していること、材質特性は実施例および比較例ともほぼ同等であること、材質特性は軟質であり、かつ深絞り性が非常に優れていることなどが判る。すなわち、実施例の深絞り用ブルーイング冷延鋼帯は、深絞り性が良好であり、かつ着色むらのない美麗な表面性状を有することが判る。
【0057】
【表1】
Figure 0003679176
【0058】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、鋼帯の軟化焼なましとブルーイングのための熱処理とが同一の焼鈍設備において連続して行われるので、深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造工程数を大幅に減少することができる。このため、製造所要日数を短縮することが可能となり、納期短縮を実現することができる。
【0059】
また本発明によれば、軟化焼なまし時に鋼帯表面を酸化させることなく、鋼帯表面の油脂分を除去することができるので、従来法で行われている電解清浄工程を省略することができる。
【0060】
また本発明によれば、前記鋼帯の鋼種が低炭素アルミニウムキルド鋼である場合、前記軟化焼なまし時に前記ステップ処理を含む軟化焼なましを行うことによって、従来法では困難であったオープンコイル状態の鋼帯の深絞り性を大幅に向上させることができるので、オープンコイル用焼鈍設備において軟化焼なましとブルーイングのための熱処理とを連続して行うことができる。
【0061】
また本発明によれば、前記鋼帯の鋼種が極低炭素チタン含有鋼である場合、前記軟化焼なまし時に、従来法では困難であった高温度で軟化焼なましを行うことによって、鋼帯の深絞り性を大幅に向上させることができるので、オープンコイル用焼鈍設備において、軟化焼なましとブルーイングのための熱処理とを連続して行うことができる。
【0062】
また本発明によれば、軟化焼なまし時の雰囲気ガスとして高水素濃度の水素窒素混合ガスが用いられるので、鋼帯表面のカーボン汚れを除去することができる。このため、製品の表面品質および歩留りが大幅に向上する。
【0063】
また本発明によれば、適正条件下でブルーイングのための熱処理が行われるので、鋼帯表面に美麗な、かつ着色むらのない青色の酸化皮膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるオープンコイル用焼鈍設備の簡略化された構成を示す系統図である。
【図2】図1に示すベース近辺の拡大図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態である深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法を表す工程図である。
【図4】図3に示す軟化焼なましおよびブルーイングのための熱処理工程における熱処理方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】図1に示すオープンコイル用焼鈍設備の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示す処理回路の制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】タイトコイルの状態の鋼帯板幅端部における板の積層状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 オープンコイル用焼鈍設備
4 ベース
5 内カバー
6 外カバー
7 加熱手段
8 温度検出手段
9 露点検出手段
10 選別手段
11 第1雰囲気ガス供給手段
12 第2雰囲気ガス供給手段
13 水蒸気供給手段
14 設定手段
15 制御手段

Claims (6)

  1. 冷間圧延後の鋼帯を、板がコイル半径方向に間隔をあけて巻かれているオープンコイルの状態で焼鈍設備に装入して、軟化焼なましおよびブルーイングのための熱処理をこの順序で連続して行い、その後、調質圧延を行うことを特徴とする深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法。
  2. 前記軟化焼なまし時に、
    雰囲気ガスとして水素および窒素から成る混合ガスを用い、
    鋼帯温度が380〜420℃の範囲内の予め定める設定温度に達するまで、雰囲気ガスの露点を8〜12℃の範囲の値になるように制御し、
    鋼帯温度が設定温度を超えると、それ以降の雰囲気ガスの露点を低下して非酸化性雰囲気中で、前記鋼帯の軟化焼なましを行うことを特徴とする請求項1記載の深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法。
  3. 前記鋼帯は低炭素アルミニウムキルド鋼であり、
    前記軟化焼なまし時に、
    雰囲気ガス温度が450〜550℃の範囲内の予め定める保持温度に達すると、その保持温度で保持する処理を行い、雰囲気ガス温度が650〜720℃の範囲内の予め定める軟化焼なまし温度に達すると、その温度で軟化焼なましを行うことを特徴とする請求項1または2記載の深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法。
  4. 前記鋼帯は極低炭素チタン含有鋼であり、
    前記軟化焼なまし時に、
    雰囲気ガス温度が800〜850℃の範囲内の予め定める軟化焼なまし温度に達すると、その軟化焼なまし温度で軟化焼なましを行うことを特徴とする請求項1または2記載の深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法。
  5. 前記軟化焼なまし時の雰囲気ガスとして、水素約75%,残部窒素から成る混合ガスを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法。
  6. 前記ブルーイングのための熱処理時に、
    雰囲気ガスとして水素5〜15%,残部窒素から成る混合ガスを用い、
    雰囲気ガスの露点を40〜60℃の範囲の値になるように制御し、
    雰囲気ガス温度を380〜480℃の範囲の値になるように制御してブルーイングのための熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の深絞り用ブルーイング冷延鋼帯の製造方法。
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