JP3678604B2 - 排ガス処理方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排ガス処理方法及び装置に関し、特に、吸着装置と脱離装置の間で炭素質吸着剤を循環させ、排ガス中の汚染物質を炭素質吸着剤に吸着させて処理する排ガス処理方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
排ガス中の硫黄酸化物を除去する排ガス処理装置として、排ガスを活性炭等の炭素質吸着剤と接触させることにより、硫黄酸化物を炭素質吸着剤に吸着させて除去する脱硫装置が知られている。この脱硫装置においては、吸着後の炭素質吸着剤は、加熱処理することで吸着物を脱離させて再生された後、再使用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この炭素質吸着剤の吸着性能は、吸着・脱離を繰り返すことで変化することが知られている。そして、炭素質吸着剤は、一部が吸着・脱離のサイクル中で粉状や灰化することは避けられず、サイクルを繰り返すたびにその量は減少してしまうため、減少分だけ新規の炭素質吸着剤を追加する必要がある。吸着後の炭素質吸着剤を下側から取り出し、再生した炭素質吸着剤を上側へと戻すことで、炭素質吸着剤を所定時間装置内に滞留させる広く用いられているタイプの吸着装置においては、この結果、サイクル数の異なる炭素質吸着剤が内部に混在してしまうが、吸着性能の評価が困難であるため、吸着性能の変化に拘らず同一条件で運転を行っていた。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みて、吸着装置内部の炭素質吸着剤の吸着性能を推定し、吸着性能に応じて運転状態を変化させることが可能な排ガス処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の排ガス処理方法は、吸着装置と脱離装置間で炭素質吸着剤を循環させ、吸着装置で炭素質吸着剤に吸着させた排ガス中の汚染物質を、脱離装置で炭素質吸着剤を加熱することで脱離して除去する排ガス処理方法において、(1)吸着装置からの炭素質吸着剤の取出量と、吸着装置への炭素質吸着剤の戻し量を計測あるいは判定して、その差を基にして炭素質吸着剤の追加の補給量を決定する工程と、(2)決定した補給量に基づいて吸着装置へ炭素質吸着剤を追加して補給する工程と、(3)取出量、戻し量、補給量に基づいて吸着装置内部に充填されている炭素質吸着剤の吸着・脱離サイクル数分布を推定する工程と、(4)推定した吸着・脱離サイクル数分布を基にして吸着装置内部に充填されている炭素質吸着剤の吸着性能を推定する工程と、(5)推定した吸着性能に応じて各装置の運転状態を制御する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0006】
一方、本発明の排ガス処理装置は、(1)充填した炭素質吸着剤中に排ガスを通過させて排ガス中の汚染物質を炭素質吸着剤に吸着させる吸着装置と、(2)吸着装置から所定量の炭素質吸着剤を取り出す吸着剤取出手段と、(3)取り出した炭素質吸着剤を加熱して、吸着させた汚染物質を脱離させることで炭素質吸着剤を再生する脱離装置と、(4)脱離装置で再生された炭素質吸着剤中の不要物を除去する分離装置と、(5)吸着装置への炭素質吸着剤の戻し量を判定する戻し量判定手段と、(6)新規の炭素質吸着剤を吸着装置へと補給する補給手段と、(7)これらの取出量と戻し量を基にして、補給手段で補給する炭素質吸着剤の補給量を制御するとともに、取出量、戻し量、補給量を基にして吸着装置の内部に充填されている炭素質吸着剤の吸着・脱離サイクル数分布、さらにその吸着性能を推定し、推定した吸着性能に応じてシステム全体の運転状態を制御する制御装置と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
吸着剤の取出量、戻し量、補給量を監視することにより、吸着装置内部に充填されている吸着剤の吸着・脱離サイクル数別の内訳、つまりサイクル数分布を推定することができる。吸着・脱離サイクル数に対する吸着剤の吸着性能変化を求めておけば、この推定吸着・脱離サイクル数分布から現在の吸着装置の吸着性能が求まる。この吸着性能に応じて吸着装置を含むシステム全体の運転状態を制御することで、効率の良い運転が可能となる。
【0008】
ここで、運転状態制御には、取出量を調整して炭素質吸着剤の吸着装置内での滞留時間の所定範囲内への制御を含んでもよい。このようにすると、炭素質吸着剤がまだ吸着可能な状態であるにも拘らず脱離装置に移送されたり、逆に、すで0に吸着困難な状態であるにも拘らず吸着装置に留まっていたりすることがなくなり、各吸着サイクルにおいて、効率良く汚染物質を吸着することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1に本発明に係る排ガス処理装置の全体構成図を示す。この装置は、主として排ガス中に含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置であり、炭素質吸着剤として活性炭が充填され、通過させる排ガス中の汚染物質を吸着して除去する吸着装置1と、吸着後の活性炭を加熱して吸着した汚染物質を脱離させ、活性炭の再生を行う脱離装置2を備えている。そして、吸着装置1と脱離装置2とは、ラインL3で接続され、このラインL3上には、吸着装置1からの活性炭の取出量を調整する流量調整バルブ6が配置されている。
【0011】
脱離装置2の吸着剤出口には、ラインL5を介して吸着剤と粉化した活性炭を篩い分けする分離装置3が接続されている。このラインL5には、流量調整バルブ7が配置されている。分離装置3は、ラインL6により吸着装置1に接続され、吸着装置1→脱離装置2→分離装置3→吸着装置1という活性炭の循環経路を構成する。吸着装置1には、さらに、ラインL8を介して活性炭補給装置4が接続されており、ラインL8には、流量調整バルブ8が配置されている。そして、分離装置のダスト排出ラインL7には、質量流量計9が配置されている。さらに、各流量調整バルブ6〜8と質量流量計9の入出力は、制御装置5に接続されている。
【0012】
続いて、この装置の動作、すなわち、本発明に係る排ガス処理方法について説明する。
【0013】
ラインL1から供給された排ガスは、吸着装置1内に充填されている活性炭と接触することで、排ガス中に含まれる汚染物質、例えば、硫黄酸化物が活性炭に吸着されて除去される。処理済排ガスは、ラインL2を介して排出される。
【0014】
吸着後の活性炭は、吸着装置1から取り出され、ラインL3を介して脱離装置2へと供給される。吸着装置1からの取出量は、制御装置5が流量調整バルブ6を制御することにより調整される。この取出量を調整することで、吸着装置1内における活性炭の滞留時間を調整することができる。そして、この活性炭の滞留時間は、後述する手法により得られた吸着装置1内の活性炭の脱硫性能推定値を基にして、最適な滞留時間となるよう調整されている。
【0015】
脱離装置2内部では、活性炭を加熱することにより吸着した硫黄酸化物等を脱離させて活性炭の再生を行う。脱離ガスはラインL4を介して図示していない回収装置等の処理装置へと送られる。一方、再生された活性炭は、ラインL5を介して分離装置3へと送られる。分離装置3では、吸着・脱離サイクルを経て粉化した活性炭が篩い分けされ、ラインL7を介して取り除かれて処理される。粉化した活性炭が取り除かれた再生活性炭は、ラインL6を介して吸着装置1へと戻される。制御装置5は、除去された粉化した分の量を質量流量計9でモニターし、相当する量の活性炭を新たに活性炭補給装置4からラインL8を介して吸着装置1へと供給する。この供給量の調整は、流量調整バルブ8を制御することで行われる。つまり、ラインL6から吸着装置1へと供給される活性炭の戻し量とラインL8から吸着装置1へと供給される活性炭の補給量の和がラインL3により吸着装置1から取り出される活性炭の取出量に一致するように制御される。
【0016】
続いて、吸着装置1内の活性炭の脱硫性能の推定について詳細に説明する。図2は、吸着・脱離を1サイクルとして、サイクル数に対する脱硫性能の変化を新品、つまり、1度も吸着を行っていないサイクル数0の活性炭の脱硫性能を1として基準化した値βの変化として表したグラフである。図に示されるように、脱硫性能は、サイクル数が増すほど高くなる。サイクル数の異なる活性炭が混在している場合には、これらの活性炭中のサイクル数の分布がわかれば、サイクル数ごとに活性炭の脱硫性能を評価し、最終的に全体の脱硫性能を評価することが可能となる。
【0017】
図3は、吸着装置1→脱離装置2→分離装置3→吸着装置1で形成される循環経路内における活性炭のサイクル数分布の循環サイクルによる変化を模式的に表した図である。以下、循環サイクルの1サイクルとは、活性炭が循環経路を一巡する期間を指すものとする。ここで、A(n)をn回目の循環サイクルにおける循環経路内の活性炭の総量(以下、総流通量と呼ぶ)[m3]、an(i)をこの循環サイクルにおけるサイクル数がiの活性炭の量[m3]、mをn回目の循環サイクルにおいて残存する活性炭のうち最大のサイクル数、P(n)をn回目の循環サイクルにおける補給活性炭量[m3]とする。すると、それぞれの循環サイクルで、
【0018】
【数1】
Figure 0003678604
【0019】
が成立する。
【0020】
ここで、n−1回目の循環サイクルにおける活性炭のサイクル数分布が既知であるとき、n回目の循環サイクルにおける活性炭のサイクル数分布は、以下のようにして求められる。
【0021】
まず、n−1回目の循環サイクルの開始から終了までの間の流量調整バルブ8による補給活性炭量を積算することで、P(n)を求める。このn−1回目の循環サイクルの終了は、流量調整バルブ6による吸着装置1からの活性炭の取出量をサイクル開始から積算してA(n−1)と一致した時点とすることで、判定可能である。
【0022】
つぎに、n−1回目の循環サイクルにおいて、サイクル数が多いものから粉化し、分離装置3で分離されたものとみて、補給分P(n)に達するまでan-1(i)から除去していき、n回目の循環サイクルの各サイクル数の活性炭量を求める。
【0023】
具体的には、n−1回目の循環サイクルにおける活性炭の最大サイクル数をm’とし、kを次式によって定義する。
【0024】
【数2】
Figure 0003678604
【0025】
n回目の循環サイクルの活性炭量an(i)は次式によって表せる。
【0026】
【数3】
Figure 0003678604
【0027】
こうしてn回目の循環サイクルにおける活性炭のサイクル数分布が求まる。活性炭の脱硫性能J(n)は、予め求めておいたサイクル数iにおける活性炭の脱硫性能特性β(i)を用いて次式によって求めることができる。
【0028】
【数4】
Figure 0003678604
【0029】
図4は、こうして得られた脱硫性能J(n)を0回目の循環サイクル、つまり、新品の活性炭の脱硫性能と比較して示したグラフの一例である。横軸のプロット間隔がまばらなのは、脱硫性能に応じて活性炭の滞留時間を変化させたためである。
【0030】
本発明の炭素質吸着剤としては、石炭などを酸化処理、熱処理あるいは水蒸気などで賦活して得られる活性炭、活性コークス、活性チャーなどが一般的に使用されるが、これらにバナジウム、鉄、マンガンなどの金属化合物を坦持させたものも使用可能である。
【0031】
上記の実施形態では、脱硫性能を評価する例を説明したが、本発明は脱硫以外にも脱硝など各種の吸着性能を評価して性能に応じた運転制御に適用することが可能である。評価する性能は1つでなく、複数を組み合わせて評価してもよい。運転制御としては、排ガス負荷量の調整などを用いてもよい。また、サイクル数分布の推定アルゴリズムは上記のものに限られるものではない。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、吸着装置内の炭素質吸着剤のサイクル数分布を推定して、これを基にして炭素質吸着剤の吸着性能を評価して、評価した吸着性能に応じて装置の運転条件を制御しているので、炭素質吸着剤を効率良く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排ガス処理装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】活性炭の脱硫性能の吸着・脱離サイクルによる変化を示す図である。
【図3】循環経路内における活性炭のサイクル数分布の循環サイクルによる変化を模式的に表した図である。
【図4】吸着装置内の活性炭の脱硫性能の循環サイクルによる変化例を示すグラフである。
【符号の説明】
1…吸着装置、2…脱離装置、3…分離装置、4…活性炭補給装置、5…制御装置、6〜8…流量調整バルブ、9…質量流量計、L1〜L8…ライン。

Claims (4)

  1. 吸着装置と脱離装置との間で炭素質吸着剤を循環させ、前記吸着装置で前記炭素質吸着剤に吸着させた排ガス中の汚染物質を、前記脱離装置で前記炭素質吸着剤を加熱することで脱離して除去する排ガス処理方法において、
    前記吸着装置からの炭素質吸着剤の取出量と、前記吸着装置への炭素質吸着剤の戻し量を計測あるいは判定して、その差を基にして炭素質吸着剤の追加の補給量を決定する工程と、
    決定した前記補給量に基づいて前記吸着装置へ炭素質吸着剤を追加して補給する工程と、
    前記取出量、戻し量、補給量に基づいて前記吸着装置内部に充填されている炭素質吸着剤の吸着・脱離サイクル数分布を推定する工程と、
    推定した吸着・脱離サイクル数分布を基にして前記吸着装置内部に充填されている炭素質吸着剤の吸着性能を推定する工程と、
    推定した吸着性能に応じて前記排ガス処理装置の運転状態を制御する工程と、
    を備えていることを特徴とする排ガス処理方法。
  2. 前記運転状態を制御する工程は、前記取出量を調整することで、前記炭素質吸着剤の前記吸着装置内での滞留時間を所定範囲内に制御する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理方法。
  3. 充填した炭素質吸着剤中に排ガスを通過させて排ガス中の汚染物質を前記炭素質吸着剤に吸着させる吸着装置と、
    前記吸着装置から所定の取出量の炭素質吸着剤を取り出す吸着剤取出手段と、取り出した炭素質吸着剤を加熱して、吸着させた汚染物質を脱離させることで前記炭素質吸着剤を再生する脱離装置と、
    前記脱離装置で再生された炭素質吸着剤中の不要物を除去する分離装置と、
    前記吸着装置への炭素質吸着剤の戻し量を判定する戻し量判定手段と、
    新規の炭素質吸着剤を前記吸着装置へと補給する補給手段と、
    前記取出量と戻し量を基にして、前記補給手段で補給する炭素質吸着剤の補給量を制御するとともに、前記取出量、戻し量、補給量を基にして前記吸着装置の内部に充填されている炭素質吸着剤の吸着・脱離サイクル数分布、さらにその吸着性能を推定し、推定した吸着性能に応じてシステム全体の運転状態を制御する制御装置と、
    を備えている排ガス処理装置。
  4. 前記制御装置の運転状態制御は、前記吸着剤取出手段を制御して前記取出量を調整することで、前記炭素質吸着剤の前記吸着装置内での滞留時間の所定範囲内への制御を含むことを特徴とする請求項3記載の排ガス処理装置。
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