以下、図面を参照して、本発明の第1実施例に係る採尿装置を有する便器について説明する。第1図はこの採尿装置を有する便器の斜視図、第2図は該採尿装置を有する便器の便座部分の斜視図である。
本実施例の便器1の便鉢2の上縁部に、採尿機能を有する便座ボックス3が載置されている。該便器1には、トイレルームの壁面から延出された洗浄水供給パイプ4が接続されている。該洗浄水供給パイプ4の途中部分には、フラッシュバルブ5が設けられている。
該便座ボックス3は、前記便鉢2の上縁部に沿って載置されるフロントケース3Aと、便器1の後方の上面に載置されるリアケース3Bとが、一体に成型されている。該リアケース3Bはフロントケース3Aよりも背が高く、従って、フロントケース3Aと該リアケース3Bとの連結部には段差が形成されている。
このフロントケース3Aの上面には便座8が設置されている。この便座8の後部はリアケース3Bに枢着されている。この便座8は、該便座8がフロントケース3A上に倒された時に、前記リアケース3Bの上面と該便座8の上面とが面一となるような厚みを有している。
この便座ボックス3は平面視略D字形状となっており、フロントケース3Aの両側腕部10は互いに平行な内面3Cを有している。該内面3Cにはスリット11が設けられている。該スリット11は、フロントケース3Aの前部からリアケースケース3Bの後部にかけて、該便座ボックス3の底面に平行に延在している。
この便座ボックス3の内側領域に容量が400cc以上の、受尿器12が設けられている。該受尿器12は、平面視長円形状の椀状の容器であって、該長円の長径は便器1の幅方向を指向している。
この受尿器12から側方に2本のアーム部材13が延出されている。該アーム部材13は、前記スリット11に挿嵌されている。
この便座ボックス3のリアケース3Bの下部には、該受尿器12によって採尿された尿を一時的に貯留するタンク15が設けられている。
第3図はこの採尿装置を有する便器の縦断面図である。また、第4図は第3図のIV-IV 線に沿う便座部分の横断面図、第5図は第4図のV-V
線に添う便座部分及び便器の縦断面図、第6図は受尿器12の前後進機構図である。
この便鉢2は、後方に広く延在するように設けられており、前述のタンク15が便鉢2内の後部に配置されている。符号14は、このタンク15を便座ボックス3から吊り下げるブラケットである。
なお、便鉢2の底部のトラップ部16は、排水管17に接続されている。
該便器1の後部には、洗浄水室19が設けられており、上方から前記洗浄水供給パイプ4が接続されている。該洗浄水室19内部は、その上方において、前記便鉢2の上縁部に設けられたリム通水路20と、便鉢2底部に設けられたゼット水室21とに連通されており、洗浄水が供給可能となっている。
該洗浄水室19の天板部には開口が設けられており、該開口から該洗浄水室19の内部に、揚水ポンプ22付きの配管23が挿入されている。該開口はパッキン26で水密的に封じられている。
配管23は、前記便座ボックス3のリアケース3B内において、受尿器洗浄ノズル24とタンク洗浄ノズル25とに接続されている。該受尿器洗浄ノズル24は、該リアケース3Bの後面壁に沿って設置され、洗浄水を前方に噴出可能とされている。タンク洗浄ノズル25は、タンク15の内部に向けて洗浄水を噴出可能とされている。
該タンク15の底部には排出口が設けられている。該排出口には、電動開閉弁27が設けられている。また、該タンク15内には、貯留される尿の量を計るセンサ28A、重量を計るセンサ28B及び成分を分析するセンサ28Cが組み込まれている。尿量センサ28Aはタンク15の内壁に上下方向に取り付けられており、尿成分センサ28Cは該尿量センサ28A下部のタンク15A内壁に取り付けられている。尿重量センサ28Bは歪みゲージからなるものであり、該タンク15の取り付けブラケット14に取り付けられている。
便器1の前記洗浄水室19の下部空間には、この採尿装置等の作動を制御する制御装置30が設けられている。この制御装置30は、前記受尿器12の駆動制御、採取された尿の成分分析、及び該受尿器12とタンク15の洗浄等を制御する。この制御装置30の構成については、第11図を参照して後に詳述する。
便座ボックス3の両側腕部10のスリット11の裏側面には、防水パッキン31が張設されている。該防水パッキン31は、長尺のテープ状部材であって、該スリット11に添うように、該防水パッキン31の幅方向の中間部に開裂が設けられている。前記受尿器12のアーム部材13は、該防水パッキン31の開裂部に挿通されている。
該防水パッキン31のさらに内側には、レール部材32が延設されている。該レール部材32は、前記スリット11の前側の開始部から、前記便鉢2の後縁部まで設けられている。レール部材32の上面には、長手方向に沿って凹溝32Aが設けられている。
この溝部32Aは、該レール部材32の前側開始部からタンク15の開口部の前縁近傍まで設けられており、このタンク15の開口部の前縁近傍から前記便鉢2の後縁部までの該凹溝32Aの途絶部では、前記防水パッキン31に面するレールのみが、前記便鉢2の後縁部方向に延出している。
前記アーム部材13には、摺動部材33が固設されている。該摺動部材33は、前記レール部材32の凹溝32Aに係合している。この摺動部材33の底面は平坦面となっている。該摺動部材33が該凹溝32Aに係合し、且つ該摺動部材33の底面が凹溝32Aの溝底面に面当りすることにより、前記受尿器12の上縁部が水平になるように構成されている。また、該凹溝32Aは、前記アーム部材13が前記レール部材32の上縁部に接する深さを有している。該凹溝32Aの前端には、摺動部材33の移動を阻止するストッパ37が設けられている。このレール部材32と摺動部材33との構成は、後に第7図を参照して詳述される。
該レール部材32は、便鉢2を挟んで平行に配設されている。従って、該レール部材32間の距離は一定となっている。また、該レール部材32の凹溝32Aの底面と摺動部材33の下面とは、摺動方向に対して前後に長く当接している。従って、該摺動部材33の摺動中も、前記受尿器12の上縁部は安定して水平となるように保持される。
アーム部材13の、摺動部材33よりもさらに外側には、ピニオンギヤ35が固設されている。また、前記レール部材32の後部に、該ピニオンギヤ35が噛合するラック36が設けられている。該ラック36の後端部には、該ピニオンギヤ35の移動を阻止するストッパ38が設けられている。
アーム部材13の、前記ピニオンギヤ35よりもさらに外側の先端部には、第6図に示されるように、前記受尿器12駆動用の糸40、41が結び付けられている。これらの糸40、41は、便座ボックス3の内部に軸支された大プーリ42、43及び小プーリ45、46と、糸ガイド47とに張架されている。
該大プーリ42、43は、前記便座ボックス3の後部の隅角部付近に軸支されている。大プーリ42は、ギヤ48、49(第6図)を介してモータ50によって駆動される。また、小プーリ45、46は、該便座ボックス3の側腕部10の前部側方に軸支されている。糸ガイド47は、上下に2段の溝部を有しており、該便座ボックス3のフロントケース3Aの前部湾曲部内に設けられている。
糸40は、受尿器12の一側(第6図の下側)のアーム部材13に固着されており、小プーリ45を経て、大プーリ42、43にそれぞれ約270度ずつ巻回されている。また、糸41は、受尿器12の他側のアーム部材13に固着されており、小プーリ46を経て、大プーリ42、43にそれぞれ約90度ずつ巻回されている。
従って、第6図の符号Mに示されるようにモータ50が回転すると、前記受尿器12の両アーム部材13、13の先端が、等量ずつ糸40、41に牽かれ、該受尿器12が移動することとなる。該モータ50が逆回転すると、該受尿器12も逆方向に移動する。
このように前後移動される受尿器12の作動の詳細について、第7図(斜視図)及び第8〜10図(要部側面図)を参照して説明する。
第7図において、アーム部材13の摺動部材33がレール部材32の凹溝32Aに係合したままの状態で、該アーム部材13が糸40、41によって牽かれ、受尿器12が矢印Aの如く、図面の左手方向に移動される。
前述の如く、該レール部材32の後部(図面の左手側)からは、摺動部材33の一方の側面のみをガイドするレール32Bが後方へ延出されている。このレール32Bの上面は、レール部材32の上面と面一となっている。このレール32Bに沿って前記ラック36が設置されている。また、第8図に示される如く、該レール部材32の凹溝32Aの底面に対し摺動部材33の底面が摺接し、レール部材32の上面にアーム部材13が摺接している。
従って、この受尿器12が、該レール部材32後端部まで移動されると、該アーム部材13に固着されたピニオンギヤ35がラック36に噛合して、該受尿器12が第9図の如く転回する。この時、該受尿器12は、該レール32Bの上縁に当接するアーム部材13によって支えられており、該アーム部材13は、該受尿器12と同様に該レール32B上で転回する。
該受尿器12は、第10図に示される如く、前記ピニオンギヤ35が、ラック36の後端部に設けられたストッパ38に当接するまで転回する。また、この時、前記摺動部材33は、その側縁部が、該レール32Bの側面に接しながら、回転するようになっている。
第9,10図の如く受尿器12が約90°以上回転することにより、該受尿器12内の尿が前記タンク15に注ぎ込まれる。
第11図に、本実施例に係る採尿装置を有する便器の制御装置の構成を示す。この制御装置30では、入力装置52が、記憶装置53と演算装置54とに接続されている。該入力装置52は、キーボード及びIDカードリーダ等の入力手段と、入力信号を赤外線等にて発信するための発信器を備えたリモコン式のものであり、第1図の如く、トイレルームの壁面に取り付けられている。該入力装置52には、便器の利用者(着座者もしくは使用者ということもある。)のIDカードから情報が入力される。該IDカードには、利用者を特定する情報等の他に、該利用者の通常の放尿位置等の情報が入力されている。
この制御装置30は、受尿器駆動装置56、尿分析装置57、尿分取装置58、洗浄装置59及び出力装置60に接続されている。該制御装置30は、上記の利用者のID情報を記憶し、また、上記各装置56〜59から伝達される情報を処理し、この採尿装置を有する便器の作動制御を行っている。
前記受尿器駆動装置56は、受尿器12駆動用の前記モータ50と該受尿器12の位置を検出する位置検出装置62とから構成されている。該位置検出装置62は、第12図に示す如く、受尿器12、アーム部材13、レール部材32、リニアポテンショ63及び抵抗測定器65とからなっている。
該受尿器12及びアーム部材13は、金属材質からなっており、また、該アーム部材13と接触するレール部材32の上面が、リニアポテンショ63となっている。抵抗測定器65の測定端子は、リニアポテンショ63、63の端部に接続されており、前記受尿器12の停止位置での該リニアポテンショ63、63の両端間の抵抗値を検出する。該抵抗値は受尿器12の停止位置に比例して増減するので、該抵抗値を前記制御装置30にて演算し、前記受尿器12の停止位置が特定される。なお、受尿器12が後退限まで後退されたときの検出抵抗値をO点とすることにより、アーム部材13とリニアポテンショ63との接触抵抗をキャンセルするようにこの演算が行なわれる。
前記モータ50は、この位置検出装置62の検出信号を元に、制御装置30によって制御され、当該便器利用者の通常放尿位置に、前記受尿器12を移動させる。該受尿器12は、入力装置52のキーボードを操作することによって、直接移動させることもできる。
尿分析装置57は、前述の如く、タンク15内に貯留される尿の量を計るセンサ28A、重量を計るセンサ28B及び成分を分析するセンサ28Cとを備えている。
尿分取装置58は、前記タンク15内から尿を分取し、且つ利用者毎に分取された尿を保管するための装置であって、当該便器近傍に設置される。この尿分取装置58は、第13図の摸式的な透視図に示される如く、分取ポンプ67、ターンテーブル68及び排水ポンプ69等から構成される。
便器1の便鉢2内に収容されたタンク15の底部から、ターンテーブル68上までチューブ71が延出されている。該チューブ71の途中部分には、分取ポンプ67が設けられている。該チューブ71の端部は、前記ターンテーブル68上に載置された尿サンプル採取瓶72の、口高さ位置に固定されている。該ターンテーブル68上には、該尿サンプル採取瓶72が複数本載置される。
該ターンテーブル68上には、前記サンプル採取瓶72と同様寸法の廃棄管73が設けられている。該廃棄管73の底部には、チューブ75が接続されている。該チューブ75は、前記ターンテーブル68の下面から、前記便器1の便鉢2内まで延出されている。このチューブ75の途中部分に、排水ポンプ69が設けられている。
ターンテーブル68の下部中央には、駆動装置77が設けられている。該駆動装置77は、該ターンテーブル68の回転角度を検出しながら回転する。前記分取ポンプ67、排水ポンプ69及び該駆動装置77は、前記制御装置30に接続されている。
洗浄装置59は前記揚水ポンプ22及びタンク排出口の開閉弁27とからなる。
出力装置60は、モニタ78とプリンタ79とからなっている。該モニタ78は入力装置52と並設されており、プリンタ79は便器近傍に取り付けられる。
以上のように構成された、第1実施例に係る採尿装置を有する便器の作動を次に説明する。
本発明の便器にあっては、尿の全量採取を目的とするものであるから、利用者は、当該便器1の便座8上に着座した状態で放尿することが前提とされる。
この便器1の利用待機時にあっては、受尿器12は、便器1の後方部(第3図の左手側)であって、この便座ボックス3のリアケース3Bの下部に位置しており、タンク15の上部において第10図の如く、後方に転回した姿勢をとっている。
利用者が、便座8上に着座し、入力装置52にIDカードを差し込むと、便座ボックス3内のモータ50が作動し、前記受尿器12が前方に転回しながら移動し、該利用者に応じた通常放尿位置(年齢、身長、性別等に応じた位置。もしくは、予め登録された位置)において受尿器12の上縁を水平にして停止する。(該利用者が、この便器1を初めて使うのであれば、前記受尿器12は、入力装置52のキーボードを操作することによって、最適位置に移動される。)
そこで、利用者は受尿器12内へ放尿する。この受尿器12の容量は400cc以上と十分に大きく、放尿の全量を受容することができる。
また、IDカードからの情報が入力されると、尿分取装置58が作動し、ターンテーブル68が回転して該ID情報に応じたサンプル採取瓶72が選定され、尿抽出用チューブ71の下部に移動される。該サンプル採取瓶72は、ターンテーブル68上のどの位置にどのIDのサンプル採取瓶が載置されるかが、前記制御装置30に予め入力されている。IDに応じたサンプル採取瓶が該ターンテーブル68上に無い場合には、尿分取は行われない。
該利用者が放尿を終了し、前記入力装置52によって放尿終了を入力すると、受尿器12は便器1の後方へ移動される。そして、タンク15の開口部上において、第9,10図の如く、後方に転回されて全量の尿を該タンク15内に注ぎ込む。
タンク15内に移載された尿は、尿分析装置57によってその全放出体積、全重量及び成分が分析される。また、全体積及び全重量の計測が終了すると、設定量が尿分取装置58によって分取され、サンプル採取瓶72内に貯留される。
これらの計測及び尿成分の分析が終了すると、該タンク15の排出口部分に配設された電磁開閉弁27が開弁され、該タンク15内の尿が便鉢2内に排出される。該タンク15内が空になると該電磁開閉弁27が開弁されたままで、洗浄装置59が作動される。また、尿分取装置58においても、ターンテーブル68が回転し、前記抽出チューブ71の下部に廃棄管73が配置される。
次いで、該洗浄装置59の揚水ポンプ22が作動され、該ポンプ22に接続されたノズル24、25から洗浄水が噴出される。
受尿器洗浄ノズル24は、第3図の符号12’で示される如く該ノズル24に相対している受尿器12の内面に洗浄水を噴出する。タンク洗浄ノズル25は、タンク15内に洗浄水を噴出する。噴出された洗浄水は、各部を洗浄した後、該タンク15底部の排出口から、便鉢2内に排出される。
このようにして洗浄が行われた後に、電磁開閉弁27が閉弁される。そして、さらに所定時間ポンプ22が作動され、タンク15内に所定量の清水を貯留させる。次いで、前記尿分取装置58の分取ポンプ67と排水ポンプ69とが作動される。従って、タンク15内に貯留する洗浄水は、尿分取装置58のチューブ71及び前記分取ポンプ67を洗浄しながら、ターンテーブル68に送水され、前記廃棄管73内に廃棄された後、チューブ75及び排水ポンプ69を経由して前記便鉢2内に還流される。
この尿分取装置58のチューブ71及び分取ポンプ67の洗浄が一定時間行われると、電磁開閉弁27が開弁し、タンク15内の残余の洗浄水を便鉢2内に排出する。然る後、前記尿分取装置58の分取ポンプ67及び排水ポンプ69が、その作動を停止する。該分取ポンプ67は、このように最後まで作動されるので、チューブ71内には洗浄水が残存することがない。
なお、尿の分析結果等は、制御装置30内の演算装置54で演算された後に、出力装置60から出力される。また、必要な情報は、記憶装置53に記憶される。この記憶装置53に記憶された情報は、必要に応じて該出力装置60から出力することができる。
以上の如くして、分析及び分取が行われた尿は、全て便鉢2内に排出される。従って、その後、使用者がフラッシュバルブ5を操作することによって、尿が便鉢2から排水管17へ排出される。なお、受尿器12は第10図の後方転回姿勢をとったまま待機される。また、タンク15底部の排出口に設けられた電磁開閉弁27も、開弁したまま待機される。従って、受尿器12及びタンク15を乾燥させることができる。
第1〜13図に示されるこの第1実施例においては、第12図の通り、レール部材32上にリニアポテンショ63を配した、受尿器12の位置検出手段が図示されているが、本発明では該レール部材32上に磁性体を規則的に配列させ、受尿器12に取り付けた感磁素子を該磁性体の列に沿って移動させ、該感磁素子から発生される電気パルス信号をカウントして、該受尿器12の位置を検出するようにしても良い。
次に、第14〜19図を参照して、本発明の第2実施例に係る採尿装置を有する便器について説明する。
第14図はこの採尿装置を有する便器の縦断面図である。また、第15図は第14図のXV-XV線に沿う便座部分の横断面図、第16図は第15図のXVI-XVI線に添う便座部分及び便器の縦断面図である。
便座ボックス3の両側腕部10の内面3Cに開設されたスリット81に、受尿器82のアーム部材83が挿通されている。該アーム部材83は、受尿器82から側方に延出されたメインアーム83Aと、該メインアーム83Aの先端部から下方に垂設されたサブアーム83Bとからなる。
該メインアーム83Aには、キャスタ85が回動可能に設けられており、該キャスタ85の外方にサブアーム83Bが設けられている。該サブアーム83Bの先端に、キャスタ86が回動可能に設けられている。
前記側腕部10の内側には、レール部材87、88が延設されている。該レール部材87は、前記スリット81の便器前方側の始端部から前記便鉢2の後縁部まで、該スリット81に隣接して便座ボックス3の底面に平行に設けられている。レール部材87の上面には、長手方向に沿って凹溝87Aが設けられている。この凹溝87Aにキャスタ85が係合している。
レール部材88は、縦断面がコ字形状となっており、キャスタ86はこのレール部材88の上片部と下片部との間に配置されている。該レール部材88は、前記スリット81の便器前方部の始端部からリアケース3Bの前側部まで、前記レール部材87よりも下側に、かつ前記便座ボックス3の底面に平行に設けられている。このレール部材88は、第18〜19図の通り、前記リアケース3Bの前側部で便器後方に向って上り勾配となるように屈曲され、前記レール部材87よりも上方まで延設されている。なお、88aはこのレール部材88の上り勾配部を示す。
アーム部材83のメインアーム83Aの先端に、該受尿器82駆動用の糸40、41が結び付けられる。レール部材87の前端には、キャスタ85の移動を阻止するストッパ89が設けられている。
本実施例のその他の構成は前記第1実施例と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
このように構成された採尿装置付き便器の作動について次に説明する。
まず、受尿器82の作動を、第17〜19図を参照して説明する。
第17図において、受尿器82のアーム部材83に回動自在に設けられたキャスタ85、86が、レール部材87、88に係合したままの状態で、糸40、41によって牽かれ、受尿器82が、後方(図面の左手方向)に移動される。
キャスタ86が上り勾配部88aにさしかかるまでは、キャスタ85,86はいずれも水平なレール面上を同じ速度で移動する。そして、受尿器82は水平姿勢を保ったまま移動する。
キャスタ86が上り勾配部88aにさしかかると、キャスタ86の水平移動速度が小さくなる。
一方、キャスタ85は、ひきつづき水平なレール部材87上を移動すると共に、前記糸40、41は、キャスタ85が取り付けられているメインアーム83Aの先端に結び付けられているので、キャスタ85はそれまでと同じ速度で移動する。
この結果、キャスタ86が上り勾配部88aにさしかかると、キャスタ86はキャスタ85よりも遅れるようになり、第18図の如く受尿器82が後傾される。さらに、前記キャスタ85が後方に移動されると、キャスタ86は該キャスタ85の上方に移動し、該受尿器82が第19図の如く転回する。
以上のように傾転される受尿器を備えた採尿装置を有する便器の作動を次に説明する。
利用者が、便座8上に着座し、入力装置52を操作し、ID情報が入力されると、便座ボックス3内のモータ50が作動し、それまで第19図の状態にあった受尿器82が前方に転回しながら移動し、該利用者に応じた通常放尿位置において受尿器82の上縁を水平にして停止する。
該利用者が放尿を終了し、前記入力装置52によって放尿終了が入力されると、受尿器82は便器1の後方へ移動される。そして、タンク15の開口部上において、第19図の如く、後方に転回されて全量の尿を該タンク15内に投入し、そのまま後方転回姿勢をとる。タンク15内に移載された尿は、分析および分取され、分析結果が出力される。
この分析、分取、分析結果の出力及び洗浄の各作動は前記第1実施例と同一である。
このように、この第2実施例においても、第1〜13図に示される第1実施例の便器と同様に、尿の全量採取が行われ、該尿は自動的に分析及び分取される。また、採取後の尿は全て便鉢2内に排出され、採尿装置及び便器1は自動的に洗浄される。
次に、第20〜29図を参照して、本発明の第3実施例に係る採尿装置を有する便器について説明する。
第20図はこの採尿装置を有する便器の縦断面図である。また、第21図は第20図のXXI-XXI線に沿う便座部分の横断面図、第22図(a)は第21図のXXII-XXII線に添う便座部分及び便器の縦断面図、第22図(b)は受尿器及びアーム部材の斜視図である。
便座ボックス3の両側腕部10の内面3Cに開設されたスリット91に、受尿器92のアーム部材93が挿通されている。該アーム部材93は、受尿器92から側方に延出された、略L字形状のメインアーム93Aと、該メインアーム93Aの先端部から下方に垂設されたサブアーム93Bとからなる。
該メインアーム93Aの下端と受尿器92の側面とは、ピン94により枢着されており、該受尿器92はアーム部材93に対し揺動自在になっている。
メインアーム93Aには、キャスタ95が回動可能に設けられており、該キャスタ95の外方にサブアーム93Bが設けられている。該サブアーム93Bの先端に、キャスタ96が回動可能に設けられている。
前記側腕部10の内側には、レール部材97、98が延設されている。該レール部材97は、前記スリット91の便器前方側の始端部から前記便鉢2の後縁部まで、該スリット91に隣接して便座ボックス3の底面に平行に設けられている。レール部材97の上面には、長手方向に沿って凹溝97Aが設けられている。この凹溝97Aにキャスタ95が係合している。
レール部材98は、縦断面がコ字形状となっており、キャスタ96はこのレール部材98の上片部と下片部との間に配置されている。該レール部材98は、前記スリット91の便器前方部の始端部から、便座8の開口部長さの前方から1/3付近に設けられた上り勾配部99まで、前記レール部材97よりも下側に、かつ前記便座ボックス3の底面に平行に設けられている。このレール部材98は、第24〜26図の通り、前記上り勾配部99で便器後方に向って上り勾配となるように屈曲され、前記レール部材97と同じ高さ位置において、該レール部材97と平行に前記便鉢2の後縁部まで延設されている。
アーム部材93のメインアーム93Aの先端に、該受尿器92駆動用の糸40、41が結び付けられる。レール部材97の前端には、キャスタ95の移動を阻止するストッパ90が設けられている。
レバー部材100が、便座ボックス3の右側腕部10の後方の、スリット91の下側に穿設される開口部に係止されている。該レバー部材100は、該側腕部10の内側に配される垂直片101と、該側腕部10の外側に配される水平片102とから構成されている。該右側腕部10内のレール部材97の便鉢2開口部側の面には、該レバー部材100の垂直片101に係合して、該垂直片101を垂直に保持するストッパ105が突設されている。
第23図に、このレバー部材100の斜視図を示す。該レバー部材100は、前記垂直片101と水平片102とが、お互いの長手方向の軸心を直交させるように組み合わせられ、ビス103で一体に組み付けられている。該垂直片101と水平片102の接続部は円形断面の軸部106となっており、前記便座ボックス3の右側腕部10後方の開口部に係止される。
水平片102の先端部の上部から、レバー107が側方に突設されている。該レバー部材100は、前記軸部106が便座ボックス3の右側腕部10の開口部に係合した状態で、該軸部106を回動中心として、前記レバー107が円弧を描くように回動される。該レバー107は、受尿器92の右側前方の上縁部に設けられたレバー係合部108に係合し、該受尿器92を後傾させる。
本実施例のその他の構成は前記第1実施例と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
このように構成された採尿装置付き便器の作動について次に説明する。
まず、受尿器92の作動を、第24〜29図を参照して説明する。第24〜26図は、該受尿器92の、前記レール部材98の上り勾配部における作動を示す。
第24図において、受尿器92のアーム部材93に回動自在に設けられたキャスタ95、96が、レール部材97、98に係合したままの状態で、糸40、41によって牽かれ、受尿器92が、後方(図面の左手方向)に移動される。
キャスタ96が上り勾配部99にさしかかるまでは、キャスタ95,96はいずれも水平なレール面上を同じ速度で移動する。そして、受尿器92は水平姿勢を保ったまま移動する。
キャスタ96が上り勾配部99にさしかかると、キャスタ96の水平移動速度が小さくなる。
一方、キャスタ95は、ひきつづき水平なレール部材97上を移動すると共に、前記糸40、41は、キャスタ95が取り付けられているメインアーム93Aの先端に結び付けられているので、キャスタ95はそれまでと同じ速度で移動する。
この結果、キャスタ96が上り勾配部99にさしかかると、キャスタ96はキャスタ95よりも遅れるようになり、第25図の如く、アーム部材93が後傾される。受尿器92は、ピン94によって該アーム部材93に揺動自在に枢着されているので、前記アーム部材93が後傾されると共に、該受尿器92が上方に持ち上げられる。
さらに、前記キャスタ95が後方に移動されると、前記アーム部材93がさらに後傾され、キャスタ96は該キャスタ95と同じ高さ位置まで上昇し、該受尿器92が第26図の如く、上昇する。
第27〜29図は、該受尿器92の便座ボックス3後部での作動を示している。第27図において、受尿器92が後方に移動され、キャスタ95を軸支するアーム部材93のメインアーム93Aが、レバー部材100の垂直片101の側部に当接される。該アーム部材93は、さらに後方に牽かれて移動し、前記レバー部材100の垂直片101を後方に押す。
該レバー部材100は、軸部106が便座ボックス3に枢着されている。従って、前記垂直片101は後方に押し倒され、水平片102が上方に回動される。上方に回動される該水平片102のレバー107は、受尿器92のレバ−係合部108に係合し、第28図の如く、該受尿器92をピン94を回動中心として後方に転回させる。該アーム部材93がレール部材97の端部まで移動されると、後傾されるレバー部材100によって、第29図に示される如く、受尿器92は完全に後方に転回される。
以上のように傾転される受尿器を備えた採尿装置を有する便器の作動を次に説明する。
利用者が、便座8上に着座し、入力装置52を操作し、ID情報が入力されると、便座ボックス3内のモータ50が作動し、それまで第29図の状態にあった受尿器92が前方に転回しながら移動し、該利用者に応じた通常放尿位置において受尿器92の上縁を水平にして停止する。
該利用者が放尿を終了し、前記入力装置52によって放尿終了が入力されると、受尿器92は便器1の後方へ移動される。そして、タンク15の開口部上において、第29図の如く、後方に転回されて全量の尿を該タンク15内に投入し、そのまま後方転回姿勢をとる。タンク15内に移載された尿は、分析および分取され、分析結果が出力される。
この分析、分取、分析結果の出力及び洗浄の各作動は前記第1実施例と同一である。
このように、この第3実施例においても、第1〜13図に示される第1実施例の便器及び第14〜19図に示される第2実施例の便器と同様に、尿の全量採取が行われ、該尿は自動的に分析及び分取される。また、採取後の尿は全て便鉢2内に排出され、採尿装置及び便器1は自動的に洗浄される。
さらに、この第3実施例においては、受尿器92はその停止位置に応じてその高さ位置が変更される。即ち、便鉢2の内側領域において該受尿器92は、前方においてはその高さ位置が低く設けられ、後方においてはその高さ位置が高く設けられる。従って、利用者の性差による、放尿位置及び放尿角度の違いを許容し、放出される尿を溢さずに全量回収することができる。
上述の第1〜3実施例の採尿装置を有する便器にあっては、第30図に示される如く、尿分析装置をタンク15の外部に設置し、尿分取装置と組み合わせたものとしても良い。
即ち、この第30図においては、タンク15の排水口近傍に、チューブ110を介して量水管111が接続されている。該チューブ110には、電磁開閉弁112が設けられている。また、該量水管111は、チューブ113を介して尿分析装置57に接続されている。該チューブ113には、電磁開閉弁114が設けられている。
前記量水管111は、断面積がタンク15の胴部の断面積の1/nの面積となっているもので、垂直に立設されている。前記チューブ110、113は、該量水管111の同高さ位置に接続されている。該量水管111の下端は、サンプル採取瓶72に差入れられている。また、該量水管111の下端と前記チューブ110、113の接続箇所との間には、電磁開閉弁115が設けられている。
このように構成された尿分析装置及び尿分取装置において、タンク15内に尿が貯留されてから、該タンク15と量水管111とを繋ぐチューブ110に設けられた電磁開閉弁112を開弁し、尿を該量水管111内に導入する。導入された尿の量を計量し、計量値を(n+1)倍することによって、前記タンク15に貯留された尿の量を求めることができる。
次いで、該量水管111と尿分析装置57とを接続するチューブ113上に設けられた電磁開閉弁114を開弁し、尿を該尿分析装置57に導入する。分析に必要な量の尿が導入された後に、前記電磁開閉弁114を閉弁し分析を開始する。然る後、前記電磁開閉弁112を閉弁し、電磁開閉弁115を開弁して、量水管111内の尿をサンプル採取瓶72内に採取する。
サンプル採取瓶72は、測定毎に差し替えられる。尿分析装置57内で分析される尿の残余分は、該尿分析装置57の廃棄管116から廃棄される。この尿分析装置及び尿分取装置の洗浄は、タンク15内に一時的に貯留される洗浄水を用いて行われる。
上記で説明された全ての実施例においては、便座8が、便座ボックス3上に設けられて回動可能となっているものであるが、本発明にあっては、該便座が便座ボックスと一体とされて、利用者が直接便座ボックスの上面に着座する構成としても良い。
また、上記の全ての実施例においては、受尿器は、2本のアーム部材によって前記便座ボックスに安定して支持される。該アーム部材は、該受尿器の側面から側方に延出されるので、大便が付着することが防止される。しかしながら、本発明の受尿器では、アーム部材の本数は2本に限定されるものではなく、該受尿器を片持ち支持としても良い。
上記の全ての実施例においては、この採尿装置は、尿の全量を採取し、全量と全重量を計測できる。また、サンプル採取瓶等の容器に、サンプルを採取することができる。さらに、採尿装置は使用後に自動的に洗浄され、受尿器、尿分析装置、尿分取装置、及びチューブ内に洗浄水が残留しないので、次回の採尿も正確に行うことができる。
上記の全ての実施例においては、採尿装置の自動洗浄後に手動にてフラッシュバルブが操作され、便鉢内の洗浄が行われる構成となっているが、本発明においては、採尿装置の制御装置に電動リモコン式のフラッシュバルブを接続し、該採尿装置の自動洗浄と便鉢の自動洗浄とを自動的に連動させる構成としても良い。