JP3677496B2 - 体液吸収性物品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面シートから体液を迅速に吸収して表面シートのドライ感を向上するために、表面シートと吸収体との間に嵩高な不織布からなるセカンドシートを介在させた体液吸収性物品の改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の体液吸収性物品では、表面シートから体液を迅速に吸収するために表面シートと吸収体との間に嵩高な不織布からなるセカンドシートを介在させることが広く行われている(例えば特許文献1参照)。かかるセカンドシートとしては、表面シートよりも体液透過性を高めるために嵩高な不織布が使用される。
【0003】
他方、吸収体の周囲においては表面シートと防漏シートとを接合する必要があり、通常は、表面シートと防漏シートとを熱圧着やホットメルト接着剤により接合することが行われている。
【特許文献1】
特開平8−269859公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように嵩高な不織布からなるセカンドシートを設ける場合、吸収体部分の厚みが増すため、セカンドシートを少なくとも製品前端部から後端部まで延在させて、製品の肌接触面における段差(長手方向における厚さの差)を少なくするのが好ましい。この場合、吸収体の周囲の接合に際し、製品前端部及び後端部において表面シートと防漏シートとの間にセカンドシートを挟み固定することになる。
【0005】
しかしながら、このセカンドシートの固定は一見すると容易に思えるかもしれないが、セカンドシートの嵩が高い場合、従来と同様に表面シート、セカンドシートおよび防漏シートを一度に熱圧着すると、セカンドシートの熱伝導性の悪さに起因して熱圧着が不十分となり、接合強度が不足するという問題点がある。このため、熱圧着条件をセカンドシートに合わせて、高温にしたりすると、防漏シートが溶けてボロボロになってしまう。また低強度での接合では、製品前後端部が使用に際して剥離し、装着感の悪化をもたらすほか、見栄えも悪くなる。
【0006】
他方、嵩が高いセカンドシートはホットメルト接着では接着強度を出しにくく、さらに十分な接着を行うとすれば通気性や通液性を制限することになるため好ましくない。
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、熱圧着を用いながらも、表面シートと防漏シートとの間に嵩高不織布シートを容易かつ強固に挟み一体化しうる技術を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
体液透過性表面シートと、
体液不透過性の防漏シートと、
これらの間に介在された、体液を吸収し保持する吸収体と、
前記表面シートと前記吸収体との間に介在され、かつ少なくとも製品前端部から後端部まで延在された、嵩高不織布からなる体液透過性セカンドシートとを備え、
前記セカンドシートの製品前後端部が、前記表面シートおよび防漏シート間に挟まれ且つ熱圧着により一体化されている体液吸収性物品であって、
前記セカンドシートは、少なくとも前記一体化されている部分が、前記セカンドシート、表面シートおよび防漏シートの全てを一体化する前に圧密化され、熱伝導性が高められている、
ことを特徴とする体液吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
嵩高不織布からなるセカンドシートは前述のように熱伝導性が悪い。しかるに本請求項1記載の発明のように、表面シート、セカンドシートおよび防漏シートの全てを一体化する前にセカンドシートの一体化部を予め圧密化すると、当該部分の熱伝導性が高まる結果、少なくとも最終的な熱圧着の一体化に際してはセカンドシートの熱伝導性が高くなり、良好な熱圧着が可能となる。これにより、表面シートとセカンドシートとの剥離強度およびセカンドシートと防漏シートとの剥離強度をともに高めることができる。
【0010】
<請求項2記載の発明>
前記表面シートと前記セカンドシートとを重ねて少なくとも製品前後端部を熱圧着し、かつそれによってセカンドシートを圧密化し、嵩の低減により熱伝導性を高めた後に、この一体化シートを前記防漏シートと重ねて少なくとも製品前後端部を熱圧着してなる請求項1記載の体液吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
本発明では、例えば、単体のセカンドシートの所定部位を予め圧密化し、これを表面シートおよび防漏シート間に挟み、これらを一度に熱圧着することもできる。ただし、セカンドシートの圧密化を図ったとしても、3種以上のシートを一度に熱圧着する場合、各シート間における好ましい熱圧着条件(主に温度)が異なり、強度向上を図るには素材選定・条件設定が厳しくなる。
【0012】
しかるに、本請求項2記載のように、表面シートとセカンドシートとの熱圧着を行い、かつこの熱圧着によってセカンドシートの圧密化を図っておき、しかる後、この一体化シートと防漏シートとを熱圧着すれば、各シート間における熱圧着条件の相違の影響を受け難くなり、強固な熱圧着が可能となる。
【0013】
なお、これと同じ観点から、セカンドシートと防漏シートとを熱圧着及び圧密化した後、これに表面シートを一体化させることも本発明に含まれる。しかしこの場合、表面シートとセカンドシートとを全体的に一体化するのが困難となることを考慮する必要がある。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記表面シートはその全体又はその少なくとも一層が前記熱圧着により実質的に溶融しない高融点要素のみからなり、前記セカンドシートは前記熱圧着により実質的に溶融する低融点要素と実質的に溶融しない高融点要素とからなり、前記防漏シートはその全体又はその少なくとも一層が前記熱圧着時に実質的に溶融する低融点要素のみからなり、
前記表面シートとセカンドシートとの熱圧着及び圧密化が、前記セカンドシートの低融点要素の溶融によりなされ、
前記セカンドシートと防漏シートとの熱圧着が、前記セカンドシートの低融点要素および前記防漏シートの低融点要素の溶融によりなされている、
請求項2記載の体液吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
このように融点の異なる素材を組み合わせることにより、表面シートとセカンドシートとの熱圧着、およびこれらの一体化シートと防漏シートとの熱圧着を容易かつ強固に行うことができる。なお、表面シートは製品表面を構成するものであるから、熱圧着により溶融する要素のみからなると、製品表面の肌触りが損なわれる等の問題を生ずるため、本請求項3では、少なくとも一層が熱圧着により実質的に溶融しない高融点要素としたものである。
【0016】
<請求項4記載の発明>
前記熱圧着が加圧加熱ロール間に対象シートを挟み通すことによりなされており、
前記表面シートとセカンドシートとの熱圧着が、これらの融点よりも低いロール温度、圧力10〜500kgf/mm、およびシートのロール通過速度50〜300m/minの熱圧着条件でなされており、
前記一体化シートと前記防漏シートとの熱圧着が、これらの融点よりも低いロール温度、圧力10〜500kgf/mm、およびシートのロール通過速度50〜300m/minの熱圧着条件でなされている、請求項2または3記載の体液吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
請求項2記載のように段階的に熱圧着を行う場合、それぞれ本請求項4記載の条件で熱圧着を行うことにより良好な熱圧着が可能である。なお、熱圧着のためのロール温度を融点よりも低い温度としたのは、シートの劣化、破損、ロールへの融着を防止するためである。圧力が10kgf/mm未満であると熱圧着温度を融点より高くしても各々のシートが単独で溶融してしまい十分な剥離強度が得られない。圧力が500kgf/mmを超えると装置の運転が困難になる。シート通過速度が50m/min未満であると、各々のシートが単独で溶融してしまい十分な剥離強度が得られない。シート通過速度が300m/minを超えると十分な圧力および熱を加えられず、その結果十分な剥離強度が得られない。
【0018】
<請求項5記載の発明>
前記セカンドシートは、太さが1.0〜6.0デニールの繊維からなり、圧密化されていない状態の厚さが1.8mm以上でかつ嵩密度が0.0015g/cm3以下であり、かつ圧密化された後の厚さが1.5mm以下でかつ嵩密度が0.0020g/cm3以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
セカンドシートとしては、かかる嵩高なシートを好適に用いることができ、その場合、他のシートと繊維が物理的に絡み合うのでより大きい剥離強度が得られる。
【0020】
<請求項6記載の発明>
前記表面シートと前記セカンドシートとの剥離強度および前記セカンドシートと前記防漏シートとの剥離強度が、それぞれ1.5N/25mm以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
各シート間の剥離強度が不十分であると、製品使用時にシート相互が剥離し、吸収した体液が製品外部に漏れて下着や衣服を汚してしまうおそれがある。これに対して、各シート間の剥離強度が上記範囲内にあると、製品使用時において各シート間の剥離が生じにくく、吸収した体液が漏れて下着等を汚すといった事態が生じにくくなる。
【0022】
<請求項7記載の発明>
体液透過性表面シートと、体液不透過性の防漏シートと、これらの間に介在された、体液を吸収し保持する吸収体と、前記表面シートと前記吸収体との間に介在され、かつ少なくとも製品前端部から後端部まで延在された、嵩高不織布からなる体液透過性セカンドシートとを備え、前記セカンドシートの製品前後端部が、前記表面シートおよび防漏シート間に挟まれ且つ熱圧着により一体化されている体液吸収性物品の製造方法であって、
前記表面シートと前記セカンドシートとを重ねて製品前後端部を熱圧着し、かつそれによってセカンドシートを圧密化し、嵩の低減により熱伝導性を高め、
しかる後に、この表面シートおよびセカンドシートからなる一体化シートを、前記防漏シートと重ねて製品前後端部を熱圧着するようにする、
ことを特徴とする体液吸収性物品の製造方法。
【0023】
(作用効果)
かかる二段階の熱圧着を行う製造方法により、製品前後端部において、表面シート、セカンドシートおよび防漏シートを容易かつ強固に接合できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について夜用の生理用ナプキンへの適用例を引いて詳述するが、本発明はパンツ型若しくはテープ式紙おむつへの適用も可能である。また生理用ナプキンとしては、実質的に前後対称形状の昼用のものであるか、臀部側に延在し、その臀部側が大きく張り出した形状をした夜用のもの、側部に張り出すウイングを有するいわゆるウイングタイプのものであるか、ウイングを有さない非ウイングタイプの生理用ナプキンであるかは問わず適用できることはもちろんである。昼用のものやウイングタイプの生理用ナプキンのものは、周知であるのため構造説明は省略する。
【0025】
<基本構造>
図1〜図3は、本発明に係る生理用ナプキンの一例1を示したものである。この生理用ナプキンの例1は、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる体液不透過性の防漏シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる不織布からなる体液透過性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された吸収体4と、表面シート3と吸収体4との間に介在され、かつ少なくとも製品前端部から後端部まで延在された、嵩高不織布からなる体液透過性セカンドシートとから構成されている。
【0026】
防漏シート2としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が好適に用いられる。この場合、防漏シート2の全体が熱圧着時に実質的に溶融する低融点要素のみからなるものとなる。
【0027】
他の防漏シート2としては、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した不織布シートなどを用いることができる。この場合には、防水フィルムと不織布とで防漏シートを構成する。また、最小限の構成で、外面(外装)の質感を高品位にするべく、製品外面側に不織布が位置し、製品内面側にポリエチレンシートを位置する二層の積層形態が採られる。後述の好適な表面シート素材やセカンドシート素材は、特にこの形態との組み合わせを想定している。
【0028】
さらに、近年はムレ防止の観点から透湿性を有する防漏シート2が用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートがある。
【0029】
本発明の表面シート3としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシート(メッシュシート含む)のみからなるシンプルなものから、これらを組み合わせた積層構造を有するもの、例えば少なくともセカンドシート5に接する面がセカンドシート5より高融点の繊維(セカンドシート5が後述のバイコンポ繊維の場合にはポリプロピレン繊維)からなる不織布層を有するラミネートシート等まで好適に用いることができる。特に後者のラミネートシートは熱圧着の際に、セカンドシートに対して融着しにくいことから、本発明はかかるラミネートシートを用いる場合に特に好適である。
【0030】
表面シート3に用いる不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0031】
表面シート3に用いる不織布としては、太さが6.0デニール以下、好ましくは1.0〜3.0デニールの繊維からなるものが好ましい。素材としては、上記のように、少なくともセカンドシート側面がセカンドシートよりも高融点の要素、例えばポリプロピレン繊維からなる不織布層の場合に本発明の効果が顕著となる。
【0032】
本実施形態の表面シート3は、後述するサイド不織布6を介して防漏シート2に対して一体化されているが、サイド不織布6を設けない場合には吸収体4の周囲部分において防漏シート2に直接接合することもできる。
【0033】
セカンドシート5は、嵩高(特に、表面シートよりも嵩高なものが好適)な不織布からなるものであり、繊維素材としては表面シート同様のものを用いることができ、特に熱融着性の観点からスパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布が好適である。具体的には、太さが1.0〜6.0デニール、好ましくは1.0〜3.0デニールの繊維からなり、圧密化されていない状態での厚さが1.8mm以上、好ましくは2.0mm以上のものであり、嵩密度が0.0015g/cm3以下、好ましくは0.001g/cm3以下であり、かつ圧密化された後の厚さが1.5mm以下、好ましくは1.0mm以下であり、かつ嵩密度が0.0020g/cm3以上、好ましくは0.004g/cm3以上である不織布が好適に使用される。また素材としては、熱圧着後も嵩高さを保つために、前記熱圧着により実質的に溶融する低融点要素と実質的に溶融しない高融点要素との両要素を含むのが好ましく、例えばポリプロピレンを芯材としてこれにポリエチレンを被覆してなるバイコンポ繊維を好適に使用できる。
【0034】
セカンドシート5は、少なくともその幅方向の一部、好ましくは全体が製品前後端部まで延在され、製品の肌接触面における段差(長手方向における厚さの差)が少なくされる。そして、セカンドシート5の製品前後端部、換言すれば吸収体の前後部分において、表面シート3および防漏シート2間に挟まれ、両シートに一体化される。
【0035】
吸収体4は、主にフラッフパルプと高吸収性ポリマーとにより形成できる。高吸収性ポリマーは吸収体4を構成するパルプ中に例えば粉粒体として混入できるほか、吸収体4の表面に保持させることもできる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。吸収体4は、平坦に形成されていても良いし、フィット性向上のために前後方向及び幅方向中央が周囲に対して膨出する中高に形成されていても良い。また必要に応じて、吸収体4はパルプからなるコアの略全体をクレープ紙により包んだものとしても良いし、包まないものとしても良い。
【0036】
他方、本実施形態においては、生理用ナプキン1の表面がわ両側部にそれぞれ、長手方向に沿って、かつ吸収性物品のほぼ全長に亘ってサイド不織布6,6が設けられているとともに、このサイド不織布6,6の一部6Bが側方に延在されるとともに、防漏シート2の一部が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布6部分と防漏シート2部分とがホットメルト接着剤等により接合されている。
【0037】
サイド不織布6としては、重要視する機能に応じてそれぞれ撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用い、経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにする。サイド不織布6として親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布6としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくは目付け量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。
【0038】
サイド不織布6,6の内側部分6Cは、吸収コア4の側縁より内方に延在し、二重シート状態で透液性トップシート3上にホットメルト接着剤に接着され、その接着側縁より外方に折り返され、その折り返し部分に糸ゴムなどの弾性伸縮部材6A,6Aが伸張状態でホットメルト接着剤により接着されている。サイド不織布6の折り返し部分の長手方向前後端部は、重ね合わせ状態で相互がホットメルト接着剤に接着されているが、中間部分は接着されていない。したがって、使用状態においては、弾性伸縮部材6A,6Aの収縮力により折り返し部分が起立し、経血の横漏れ防止バリヤー(所謂バリヤーカフス)として機能する。
【0039】
他方、図示していないが、体液の拡散を制御する目的で、少なくとも吸収体4上に表面シート3およびセカンドシート4を重ね合わせた後の段階で、表面シート3から吸収体4までの部分を変形させるようにエンボスを付与することができる。かかるエンボスは、製品長手方向及び/又は幅方向にそって線状に設けることができる。
【0040】
(本発明のポイント)
本発明では、セカンドシート5の少なくとも製品前後端部F,Bが表面シート3および防漏シート2間に挟まれ且つ熱圧着により一体化される。この熱圧着は、少なくともセカンドシートの幅方向の一部に、若しくは断続的に複数箇所に、又は好適には幅方向の一端から他端まで連続するように行う。セカンドシート3の他の部分は、他の接触する部材、例えば表面シート3や吸収体4に対して固定しても良いし、固定しなくても良い。より好適な形態では、セカンドシート5は、表面シート3と同じ前後方向長さを有し、かつ一方のバリヤーカフスの起立端Zと重なる位置から他方のバリヤーカフスの起立端まで製品幅方向に延在し、表面シート3よりも若干幅が狭い形状とされ、その面の略全体において表面シート3に一体化される(図示の形態である)。
【0041】
本発明における熱圧着は、加圧加熱ロール間に対象シートを挟み通すことにより行うことができる。この場合、対象シート相互を平坦に圧接しながら加熱することでも可能であり、この意味でヒートシール接着剤の併用も可能であるが、特に製品前後端は熱圧着後に切断することや、当該熱圧着部分は通常は製品表裏面に露出する部分になるため、美観、肌触り、体液の吸収性制御を行うのが望ましいことを考慮すると、いわゆる加熱エンボス加工を採用するのが好ましい。エンボスパターンについては公知のものを適用できるが、後述する二段階の熱圧着を行う場合には、図示のように、一段階目のエンボスパターン(表面シート3とセカンドシート5との熱圧着部分S)と二段階目のエンボスパターンを異ならしめることにより、同じ位置にパターンを付すことに起因する熱圧着性の低下・熱圧着部分の硬化による肌触りの悪化を回避できる。エンボスパターンの統一性を重視する場合には、反対に一段階目と二段階目で同じエンボスパターンを付与することもできる。
【0042】
また、本発明において特徴的には、セカンドシート5の少なくとも熱圧着一体化部分が、セカンドシート5、表面シート3および防漏シート2の全てを一体化する前に圧密化され、熱伝導性が高められる。この圧密化は、主に熱伝導性の観点から、後に熱圧着されるシートの好ましい熱圧着条件に近い熱圧着条件となる程度で、換言すれば製品として支障のない熱圧着が可能な程度で行われる。
【0043】
具体的に、かかるセカンドシート5の圧密化を可能とする熱圧着手順としては、次の三通りの手法を提案する。
先ず第1の手法は、図4に示すように、表面シート3とセカンドシート5とを熱圧着(図示す例では略全面Sをヒートエンボスしている)し、かつこの熱圧着によってセカンドシート3の当該熱圧着部分の圧密化を図っておき、しかる後、この一体化シートを、吸収体4が配置された防漏シート2上に載せ、これらの製品前後端部(図4では前端部Fのみ図示しているが、図1の後端部Bも同様である)を熱圧着するものである。なお、図4の上図は1段階目の圧着後の状態を示し、下図は二段階目の圧着後の状態を示している。かかる二段階の熱圧着手法によれば、熱圧着条件の選定に際して基本的に二枚のシート間のみ考慮すれば足り、強固な熱圧着が可能となるだけでなく、素材の選択の幅も広がるという利点がもたらされる。
【0044】
第2の手法は、図示しないが、単体のセカンドシート5の全部または製品前後端部F,Bのみを予め圧密化し、これを表面シート3および防漏シート2間に挟み、これらを一度に熱圧着するものである。この場合、熱圧着条件の選定に際して三枚のシートの全てに適した条件を探す必要があり、素材の選択の幅が狭くなる問題がある。ただし、統一的なエンボスを行い、美観および肌触り感を向上させるという点では有効な手法である。
【0045】
また第3の手法は、第1の手法とは反対に、吸収体4が配置された防漏シート2上にセカンドシート5を配置して製品前後端部を熱圧着し、かつこの熱圧着によってセカンドシート3の圧密化を図っておき、しかる後、その上に表面シート3を重ねて製品前後端部を熱圧着するものである。かかる第1の手法とは反対の二段階熱圧着手法では、熱圧着条件の選定に際して基本的に二枚のシート間のみ考慮すれば足り、強固な熱圧着が可能となる点では第1の手法と同様であるが、防漏シート2の素材によっては二回の圧着により防漏性や美観が損なわれるおそれがある。
【0046】
他方、熱圧着条件については、各シートの素材に応じて適宜定めることができる。ただし、一般的な体液吸収性物品の表面シート素材、セカンドシート素材および防漏シート素材の融点の他、熱圧着装置の操業性等を考慮すると、表面シート3とセカンドシート5との熱圧着条件は、ロール温度90〜130℃、圧力10〜500kgf/mm(好適には30〜500kgf/mm)、およびシートのロール通過速度50〜300m/min(好適には100〜250m/min)であるのが好ましい。また、一体化シートと防漏シート2との熱圧着条件はロール温度90〜130℃、圧力10〜500kgf/mm(好適には30〜500kgf/mm)、およびシートのロール通過速度50〜300m/min(好適には100〜250m/min)であるのが好ましい。前者と後者の熱圧着条件は操作・制御の簡素化の観点から同じ条件とすることもできるし、上記範囲内で対象シートに応じて異なる条件にすることもできる。
【0047】
(その他)
上述した表面シート3、セカンドシート5および防漏シート2の熱圧着方法は、上述のような製品前後端部における接合のみならず、他の部位における熱圧着にも適用可能である。
【0048】
【実施例】
(本発明例)
図1に示すように、表面シート3とセカンドシート5とを、その全体にわたる熱圧着エンボスSにより一体化した後、これを防漏シート2と重ね合わせ、製品前後端から長手方向に6mmまでの部分に二段回目の熱圧着エンボスF,Bを付与したサンプルの生理用ナプキンを製造した。
【0049】
表面シート3は、太さが2.0デニールのポリプロピレン繊維からなる不織布層がセカンドシート5側に設けられたラミネート不織布を用いた。また、セカンドシート5としては、ポリプロピレンにポリエチレンを被覆してなるバイコンポ繊維のみからなり、太さが1.0デニール、嵩密度が0.001g/cm3であり、かつ圧密化されていない状態での厚さが2.0mmのサーマルボンド不織布を用いた。また、防漏シート2としては、内面側がポリエチレンシートからなり、外面側が不織布からなる二層構造のシートを用いた。
【0050】
熱圧着条件については、表面シート3とセカンドシート5との熱圧着条件を、ロール温度120℃、圧力30kgf/mm、シート通過速度120m/minとし、一体化シート3,5と防漏シート4との熱圧着条件をロール温度120℃、圧力30kgf/mm、シート通過速度120m/minとした。また、一段階目の熱圧着におけるエンボスパターンと、二段階目におけるそれとを異なるものとした。
【0051】
そして、かくして製造したサンプルの熱圧着部分を、図1に領域A,Bとして示すように、製品幅方向に25mmの幅wで、製品前後の各端部から製品中央側に非熱圧着部分までの長さL部分を切り出し、表面シート3及びセカンドシート5の各非熱圧着部分を開いて引張試験機の上下チャックにそれぞれ固定して引張り試験を行い、熱圧着部分F,Bが完全に剥離した時の張力を剥離強度とした。また、セカンドシート5と防漏シート2との剥離強度についても同様に測定した。また、剥離強度の測定は、表面シート・セカンドシート間については3回(同一サンプルから3箇所切り出して使用)行い、セカンドシート・防漏シート間については2回(同一サンプルから2箇所切り出して使用)行い、各々平均値を求めた。
【0052】
なお、シートの厚さは、カトーテック社製のKES−G5試験機を用い、下記の設定で、0.5gf/cm2の荷重を加えたときの厚さ(初期厚みT0)とした。
・SENS : 2.0
・力計の種類 : 1kg
・スピードレンジ : 0.1cm/second
・DEF感度 : 20mm/10V
・加圧面積 : 2cm2
・とり込み間隔 : 0.1second
・ストロークセット : 5.0(上限荷重50gf/cm2)
・初期厚みT0 : 0.5gf/cm2の荷重が試料に加わったときの厚み
【0053】
また、嵩密度は、既知の値であるシートの目付け(g/m2)を上記方法により測定した厚さで除して算出した。
【0054】
(比較例)
表面シート3、セカンドシート5及び防漏シート2を、防漏シート2の溶融度合いが製品として満足しうる範囲を考慮し、ロール温度120℃、圧力30kgf/mm、シート通過速度120m/minの熱圧着条件下で一度に熱圧着した以外は、上記本発明例と同じ構成としたサンプルを製造した。この比較例についても、上記と同様に表面シート・セカンドシート間の剥離強度、ならびにセカンドシート・防漏シート間の剥離強度をそれぞれ測定した。
【0055】
試験結果を表1に示す。同表からも明らかなように、本発明例では、表面シート・セカンドシート間では概ね1.7倍程度の剥離強度が得られ、セカンドシート・防漏シート間では比較例と同等以上の剥離強度が得られることが判明した。なお、セカンドシート・防漏シート間の剥離強度に差異が殆どないように見えるが、これは比較例の熱圧着条件を防漏シートに合わせたことに起因するものと考えられる。よって、両剥離強度ともに優れる本発明例の効果は顕著である。ちなみに、製品としては1.5N/25mm以上、特に1.8N/25mm以上の剥離強度を有するのが望ましい。
【0056】
【表1】
【0057】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、熱圧着を用いながらも、表面シートと防漏シートとの間に嵩高不織布シートを容易かつ強固に挟み一体化できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る生理用ナプキンの展開状態の表面シート側を示す平面図である。
【図2】 図1のII−II線部分の断面図である。
【図3】 図1のIII−III線部分の断面図である。
【図4】 本発明の熱圧着手順を説明するための要部断面模式図である。
【符号の説明】
1・・・生理用ナプキン、2・・・防漏シート、3・・・透液性トップシート、4・・・吸収体、5・・・セカンドシート、F・・・製品前端部の熱圧着部分、B・・・製品後端部の熱圧着部分、S・・・トップシートとセカンドシートとの熱圧着部分。
Claims (7)
- 体液透過性表面シートと、
体液不透過性の防漏シートと、
これらの間に介在された、体液を吸収し保持する吸収体と、
前記表面シートと前記吸収体との間に介在され、かつ少なくとも製品前端部から後端部まで延在された、嵩高不織布からなる体液透過性セカンドシートとを備え、
前記セカンドシートの製品前後端部が、前記表面シートおよび防漏シート間に挟まれ且つ熱圧着により一体化されている体液吸収性物品であって、
前記セカンドシートは、少なくとも前記一体化されている部分が、前記セカンドシート、表面シートおよび防漏シートの全てを一体化する前に圧密化され、熱伝導性が高められている、
ことを特徴とする体液吸収性物品。 - 前記表面シートと前記セカンドシートとを重ねて少なくとも製品前後端部を熱圧着し、かつそれによってセカンドシートを圧密化し、嵩の低減により熱伝導性を高めた後に、この一体化シートを前記防漏シートと重ねて少なくとも製品前後端部を熱圧着してなる請求項1記載の体液吸収性物品。
- 前記表面シートはその全体又はその少なくとも一層が前記熱圧着により実質的に溶融しない高融点要素のみからなり、前記セカンドシートは前記熱圧着により実質的に溶融する低融点要素と実質的に溶融しない高融点要素とからなり、前記防漏シートはその全体又はその少なくとも一層が前記熱圧着時に実質的に溶融する低融点要素のみからなり、
前記表面シートとセカンドシートとの熱圧着及び圧密化が、前記セカンドシートの低融点要素の溶融によりなされ、
前記セカンドシートと防漏シートとの熱圧着が、前記セカンドシートの低融点要素および前記防漏シートの低融点要素の溶融によりなされている、
請求項2記載の体液吸収性物品。 - 前記熱圧着が加圧加熱ロール間に対象シートを挟み通すことによりなされており、
前記表面シートとセカンドシートとの熱圧着が、これらの融点よりも低いロール温度、圧力10〜500kgf/mm、およびシートのロール通過速度50〜300m/minの熱圧着条件でなされており、
前記一体化シートと前記防漏シートとの熱圧着が、これらの融点よりも低いロール温度、圧力10〜500kgf/mm、およびシートのロール通過速度50〜300m/minの熱圧着条件でなされている、請求項2または3記載の体液吸収性物品。 - 前記セカンドシートは、太さが1.0〜6.0デニールの繊維からなり、圧密化されていない状態の厚さが1.8mm以上でかつ嵩密度が0.0015g/cm3以下であり、かつ圧密化された後の厚さが1.5mm以下でかつ嵩密度が0.0020g/cm3以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
- 前記表面シートと前記セカンドシートとの剥離強度および前記セカンドシートと前記防漏シートとの剥離強度が、それぞれ1.5N/25mm以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
- 体液透過性表面シートと、体液不透過性の防漏シートと、これらの間に介在された、体液を吸収し保持する吸収体と、前記表面シートと前記吸収体との間に介在され、かつ少なくとも製品前端部から後端部まで延在された、嵩高不織布からなる体液透過性セカンドシートとを備え、前記セカンドシートの製品前後端部が、前記表面シートおよび防漏シート間に挟まれ且つ熱圧着により一体化されている体液吸収性物品の製造方法であって、
前記表面シートと前記セカンドシートとを重ねて製品前後端部を熱圧着し、かつそれによってセカンドシートを圧密化し、嵩の低減により熱伝導性を高め、
しかる後に、この表面シートおよびセカンドシートからなる一体化シートを、前記防漏シートと重ねて製品前後端部を熱圧着するようにする、
ことを特徴とする体液吸収性物品の製造方法。
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