JP3676274B2 - 断熱部材、冷蔵庫及び冷蔵庫の扉体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、断熱ウレタン材が発泡充填される断熱部材、冷蔵庫、冷蔵庫の扉体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷蔵庫の本体側は、金属製の鉄鋼板からなる外箱と合成樹脂製の内箱とを組み合わせ、この中にウレタン材を発泡充填している。冷蔵庫の扉体も同様であり、金属製の鉄鋼板からなる扉材と内側に配置される合成樹脂製の扉パネルとを組み合わせ、この中にウレタン材を発泡充填している。この本体側及び扉側の内側に発泡充填されたウレタン材が密着する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鋼板にステンレス材を採用した場合、この密着性能が劣化し、場所によっては、ステンレス鋼板とウレタン材との間に空間が存在し、結露及び剛性などの問題が生じることが判明した。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたものであり、鋼板とウレタン材との密着性能を向上させた断熱部材、冷蔵庫、冷蔵庫の扉体を提供することを目的とする。
【0005】
特に、本発明は、ステンレス材を採用した鋼板とウレタン材との密着性能を向上させた断熱部材、冷蔵庫、冷蔵庫の扉体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため第1の発明は、鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される断熱部材において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、同断熱部材において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合することを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、同断熱部材において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合し、且つこの塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、同断熱部材における前記鋼板は、鉄鋼板であることを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、同断熱部材における前記鋼板は、ステンレス鋼板であることを特徴とする。
【0011】
また第6の発明は、鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される冷蔵庫において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする。
【0012】
第7の発明は、同冷蔵庫において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合することを特徴とする。
【0013】
第8の発明は、同冷蔵庫において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合し、且つこの塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする。
【0014】
第9の発明は、同冷蔵庫における前記鋼板は、鉄鋼板であることを特徴とする。
【0015】
第10の発明は、同冷蔵庫における前記鋼板は、ステンレス鋼板であることを特徴とする。
【0016】
更に第11の発明は、冷蔵庫本体内に形成された食品貯蔵室の前面開口を開閉するものであって、鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される冷蔵庫の扉体において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする。
【0017】
第12の発明は、同冷蔵庫の扉体において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合することを特徴とする。
【0018】
第13の発明は、同冷蔵庫の扉体において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合し、且つこの塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする。
【0019】
第14の発明は、同冷蔵庫の扉体における前記鋼板は、鉄鋼板であることを特徴とする。
【0020】
第15の発明は、同冷蔵庫の扉体における前記鋼板は、ステンレス鋼板であることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図に基づき説明する。図1において、1はそれぞれ前面扉が設けられた複数の食品保存室から成る冷蔵庫本体で、鋼板製の外箱と内箱及び両箱間に充填された発泡ウレタン等の断熱材により構成されている。この冷蔵庫本体1の内部は断熱作用のある仕切壁により仕切られ、上部より冷蔵室2、野菜室3、製氷室4、温度切換室5、冷凍室6を備えている。
【0022】
そして、前記冷蔵室2前面開口は把手7により開閉可能な回動式の冷蔵室扉8により閉塞可能であり、冷蔵室2の下の野菜室3、製氷室4及び温度切換室5、冷凍室6は引出し式の野菜室扉9、製氷室扉10、温度切換室扉11、冷凍室扉12により夫々閉塞されている。
【0023】
前述した各扉は、夫々ステンレス鋼板から成る扉外箱である扉材13と硬質樹脂材料から成る扉内箱である扉パネル14との間に発泡ウレタン断熱材15を充填して構成され、以下冷蔵室扉8を例として、図2及び図3に基づき詳述する。尚、前記ステンレス鋼板は、表面側にも化粧用の塗装がなされ、後述する内側の塗膜と同時に炉内で硬化されるが、このステンレス鋼板以外の鉄鋼板で前記扉材13を構成してもよい。
【0024】
図2は扉材13及び扉パネル14とを発泡治具内に収容した状態を示す横断平面図であり、図3は発泡充填後の冷蔵室扉8の横断平面図である。前記扉材13は、磁性体であるフェライト系SUS430で表面仕上げがNO.4(JIS規格)のステンレス鋼板16の裏面側に、例えば膜厚1μm〜2μmの塗膜17が付されて形成される。
【0025】
この塗膜17は、官能基を備えるポリエステル樹脂に、官能基を有する硬化樹脂(エポキシ樹脂)を混合した塗料を塗布・硬化させて形成する。この塗料はステンレス鋼板16の裏面側に塗布される。そして、炉内において、180℃〜220℃の範囲で5〜10分間程度焼き付け硬化させる。この硬化により、ポリエステル樹脂の官能基と、硬化樹脂の官能基とが結合するが、全ての官能基が結合するものとは限らない。
【0026】
この実施態様では、この塗膜17が、未反応の官能基(−OH)を備え、ガラス転移点が32℃になるように、塗料が予め配合調整されている。
【0027】
そして、以上のように作製された扉材13と、該扉材13の裏面側に取り付けられるガスケットホルダ18を有する硬質樹脂材料から成る扉パネル14と、前記ホルダ18に取り付けられるマグネット19を有するガスケット20とから発泡充填前の冷蔵室扉8の外形を構成する。
【0028】
ここで、現場発泡方式にて発泡ウレタン断熱材15を充填するに際しては、図2に示すように、前記冷蔵室扉8の外形を発泡圧を受けるための発泡治具21及び22内に収容し、前記扉パネル14の注入口(図示せず)から前記外形内に発泡液を注入する。そして、この発泡液が発泡し、硬化することにより、発泡ウレタン断熱材15が形成されることとなる。この硬化後、発泡治具22を開き、冷蔵室扉8を発泡治具21内から取り出す。
【0029】
尚、前記発泡液は、ポリオール成分と、硬化剤であるイソシアネート成分の二液を混合したものであり、これを前記外形内に注入して、発泡させ、60℃程度で20分間程度加熱し、硬化させることにより、図3に示すように、発泡ウレタン断熱材15を形成するものである。
【0030】
すなわち、この充填、発泡及び硬化のときに、ステンレス鋼板16の内側に形成された塗膜17の未反応の官能基(−OH)と発泡ウレタン断熱材15中の未反応の官能基(−NCO)とが結合し、扉材13と発泡ウレタン断熱材15との密着性が向上する。
【0031】
また、塗膜17のガラス転移点を32℃に設定しているので、ウレタン発泡・硬化時においては、塗膜17の表面は、ウレタン断熱材15の密着面の凹凸に合わせて、変形可能である。そして、この冷蔵庫の使用時においては、硬化して、先ほどのウレタンの表面の凹凸にくい込む(いわゆるアンカー効果が生じる)ので、1μm〜2μmの薄い膜厚であっても、扉材13と発泡ウレタン断熱材15との密着性が向上するものである。
【0032】
なお、この実施形態では、塗膜のガラス転移点を32℃に設定しているが、これは、37℃でもよい。
【0033】
つまり、発泡充填・硬化時の温度より低く、冷蔵庫の通常使用時の温度より高ければ良い。この範囲の温度であれば、アンカー効果を得られる。通常、発泡充填・硬化時の鋼板付近の温度は、40℃以上〜60℃の近辺と推測され、冷蔵庫の通常使用時の温度帯は、日本では、0℃〜30℃と考えられるので、理論的にはガラス転移点が30℃以上で且つ発泡硬化時の最高温度以下になるように、予め塗料を配合調整すればよい。実際には、30℃〜40℃の範囲内になるように、あらかじめ塗料を配合調整する。
【0034】
なお、以上の実施態様は、冷蔵室扉8の扉材13と発泡ウレタン断熱材15とを密着させる態様であるが、密着性についての問題がない冷蔵庫本体の鋼板製の外箱と発泡ウレタン断熱材との密着に適用することも可能である。
【0035】
以上本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明は、鋼板とウレタン材との密着性能を向上させた断熱部材、冷蔵庫、冷蔵庫の扉体を提供することができると共に、ステンレス材を採用した鋼板とウレタン材との密着性能を向上させた断熱部材、冷蔵庫、冷蔵庫の扉体を提供することができる。また、塗膜のガラス転移点を充填発泡時の温度以下としたことにより、塗膜の充填後の発泡ウレタン断熱材への、いわゆるアンカー効果も生まれ、数μmの薄い膜厚であっても、密着性能を向上させた断熱部材、冷蔵庫、冷蔵庫の扉体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷蔵庫の正面図である。
【図2】扉材及び扉パネルとを発泡治具内に収容した状態を示す横断平面図である。
【図3】発泡充填後の冷蔵室扉の横断平面図である。
【符号の説明】
8 冷蔵室扉
13 扉材
14 扉パネル
15 発泡ウレタン断熱材
16 ステンレス鋼板
17 塗膜
21、22 発泡治具
Claims (15)
- 鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される断熱部材において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする断熱部材。
- 鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される断熱部材において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合することを特徴とする断熱部材。
- 鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される断熱部材において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合し、且つこの塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする断熱部材。
- 前記鋼板は、鉄鋼板であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の断熱部材。
- 前記鋼板は、ステンレス鋼板であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の断熱部材。
- 鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される冷蔵庫において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする冷蔵庫。
- 鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される冷蔵庫において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合することを特徴とする冷蔵庫。
- 鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される冷蔵庫において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合し、且つこの塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする冷蔵庫。
- 前記鋼板は、鉄鋼板であることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記鋼板は、ステンレス鋼板であることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の冷蔵庫。
- 冷蔵庫本体内に形成された食品貯蔵室の前面開口を開閉するものであって、鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される冷蔵庫の扉体において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする冷蔵庫の扉体。
- 冷蔵庫本体内に形成された食品貯蔵室の前面開口を開閉するものであって、鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される冷蔵庫の扉体において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合することを特徴とする冷蔵庫の扉体。
- 冷蔵庫本体内に形成された食品貯蔵室の前面開口を開閉するものであって、鋼板の内部にウレタン材が充填発泡される冷蔵庫の扉体において、この鋼板の内側に前記充填発泡前に塗膜を形成するとともに、この塗膜が未反応の官能基を備え、前記充填発泡時に前記塗膜の前記官能基が前記ウレタン材の官能基と結合し、且つこの塗膜のガラス転移点を前記充填発泡時の温度以下としたことを特徴とする冷蔵庫の扉体。
- 前記鋼板は、鉄鋼板であることを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれかに記載の冷蔵庫の扉体。
- 前記鋼板は、ステンレス鋼板であることを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれかに記載の冷蔵庫の扉体。
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