JP3675529B2 - 加湿ユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は加湿ユニットに係わり、加湿を必要とする空調分野に広く利用できるが、特にビル、工場環境、家庭あるいは車両類などの空調用加湿器として使用するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、透湿膜を利用して加湿する方式は公知である。例えば、特開昭60─171337号公報に、防水透湿膜の中空構造体を折り畳みあるいは巻き上げて構成し、その中空部に水を供給し、かつ中空構造体に外部から送風して空気を加湿する加湿器が開示されている。しかし、このような袋状加湿膜を用いた加湿ユニットでは、1か所でもピンホールや閉塞が発生するとユニット全体が使用不能になったり加湿性能が低下し、また折り曲げられまたは巻き上げられて構造化されている中空構造体の一部が所定のクリアランス以上に脹らんで空気抵抗を増すとともに水量の部分増加による蒸発不良も発生するという問題がある。
【0003】
そこで、防水透湿膜で形成した流路を部分的に内接接合した流路を用いることが特開昭61─72949号公報に提案されている。具体的には、厚さ数mmの薄葉状の防水透湿膜の中空構造体を多層に並べて水の表面積を増大させるために、2枚のシート状の防水透湿膜を重ね合わせて袋状に熱融着し、かつ上下端部を残して10mm間隔で複数の平行直線を熱融着し、上下端部に給水パイプ及び排水パイプを差し込み、そしてこれを単位として多層に吊り下げた加湿ユニットが開示されている。
【0004】
また、特開平5−22136号公報にほぼ同一高さの中空有底円筒を相互に平行に突出させ、その開口部を順次接続して一体成形した高分子材料の疎水性多孔質膜によって水部と空気部を隔絶する構造が開示され、実公昭56−50341号公報にも撥水性を有する2枚の多孔シートを微小間隔を置いて相対応させて重合して、その周囲を密閉して薄く拡がる密閉室を形成し、その密閉室内に所定の圧力で加湿用の水を送る構造が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開昭61−72949号公報の加湿ユニットは、シート状の各中空構造体にいちいち給水パイプ及び排水パイプを差し込まなくてはならず、マニホールドなど構造が複雑になっていた。
【0006】
また、特開平5−22136号公報及び実公昭56−50341号公報の提案では、加湿膜が内部の水の自重によって膨らむことに対する対策、及び空気流通路の確保に対する対策がなされていないため実用化には問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するために、各々独立した薄葉状の加湿板を複数積層した構造を有し、各加湿板は薄板を中抜きした形状の枠体の両主面に防水透湿膜を固定して成り、加湿板はその一端から枠体内の防水透湿膜間の加湿部に給水でき、枠体の厚みは給水部を規定する部分において加湿部を規定する部分より厚く、且つ加湿板は給水部どうしが重なるように積層されて各加湿板に共通の給水部が形成され、かつ加湿板間に給水部と加湿部の枠体の厚みの差にもとづいて空間が形成され、更に各加湿板の間の空間を空気流路として確保する手段を構じたことを特徴とする加湿ユニットを提供する。
【0008】
好ましくは、枠体の厚みは加湿板の一端をなす排水部を規定する部分においても加湿部を規定する部分より厚く給水部を規定する部分と同じ厚みであり、かつ加湿板は排水部どうしが重なるように積層されて各加湿板に共通の排水部を構成する。
【0009】
【作用】
本発明の加湿ユニットは、独立の加湿板を積層して構成したことにより、部分的なピンホールや閉塞が発生してもその加湿板のみを交換することができる。また、枠構造と後述する加湿板間空間を確保する手段を採用したので、防水透湿膜間の間隔を一定に保つことができ空気流通空間を一定に保つことができる。さらに、枠体と防水透湿膜を張り合わた加湿板は、積層組み立てるだけでよく、加湿ユニットの各加湿板への給水部は(さらには排水部も)加湿板の積層構造によって共通の給水部(排水部)として形成され、構造及び製造が簡単である。
【0010】
【実施例】
図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は給水部のみを共有させた加湿ユニットの例を示す斜視図、図2は加湿ユニットを構成する加湿板、図3は加湿板を形成する枠体を示す斜視図である。この加湿ユニット1はハウジング2中に積層構造にした多数の加湿板3が挿入されている。4は加湿板間空間を確保する一手段としてのスペーサである。ハウジング2の前後は空気5の入口(図では手前側)と出口(図の裏側)のために開放され、また上方は給水6のために開口がある。ただし、ハウジング2の上方は給水できればよく、図のように天井の全面が開放されている必要はない。また、ハウジング2の前後も空気が流通できればよいので、適当な流通口を有する化粧板や網板などで覆われていてもよい。
【0011】
図2に示すように、加湿板3は枠体7の両面に加湿膜(防水透湿膜)8,9を固定したもので、給水部3─1、加湿部3─2を有する。枠体7は、図3に示すように、薄板を中抜きした形状であるが、左右(縦部材)の枠部分7─a,7─bにおいて上方の給水部7─1は他の部分(加湿部7─2)より厚く、また左右枠部分7─a,7−bを結合する枠部分7─cと比べても厚く形成されている。こうすることにより、枠体7の左右枠部分7─a,7─bの両主面にそれぞれ加湿膜8,9を接着すると、各加湿板3において給水部3─1から枠体7内の加湿膜8,9間即ち3−2の部分に水を供給することができる。図4に、加湿板3を重ねたときの断面を示す。このような加湿板3どうしを図1の如く積層構造でハウジング2内に詰め込むと、加湿部3─2の領域で1つの加湿板3の前面の加湿膜8と隣の加湿板3の裏面の加湿膜9の間に、枠体の厚さの差に対応したスペースが形成され、空気流通空間が形成される。また、枠体7の給水部7─1どうしが重ねて積層されることにより、図1及び図4の如く、各加湿板3の給水部3─1は共通の給水部(図4のA部)になる。なお、この加湿板3に供給された水は加湿膜を通って空気中へ蒸散するだけで、加湿板3に排水部は存在しない。
【0012】
枠体7の材質はプラスチックスや金属(アルミなど)など剛性を有する適当な材質でよい。
防水透湿膜は、防水透湿機能を持つものであれば特に限定されない。このような機能を持つ膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン/ヘキサフロロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の疎水性多孔質膜が挙げられるが、耐熱性,耐薬品性等の観点から延伸された多孔質ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。このようなポリテトラフルオロエチレン多孔質体としては、厚さ1〜1000μm 、空孔率5〜95%、孔径0.01〜15μm の範囲のものが挙げられるが、水蒸気透過性、耐水性、強度とのかねあいで厚さ20〜200μm 、空孔率60〜90%のものが好ましい。このような防水透湿機能を持つ疎水性多孔質膜は公知であり、延伸多孔化、溶剤抽出、キャスティングなどにより製造されることができる。また、その他親水性多孔質膜の表面をフッ素系の処理剤で撥水性にした膜も利用できる。さらに、表面に透湿性の高分子(例えば、ポリウレタン等の親水性高分子やシリコーンなどの疎水性高分子)をコーティングしてもよく、必要に応じて不織布やニットなどの補強層をラミネート(接着、融着)することも可能である。
【0013】
枠体に防水透湿膜を固定する方法は、防水透湿膜が多孔質であるので接着剤を用いアンカー効果によって枠体に固定する方法や、防水透湿膜自体が熱可塑性である場合には加熱によって融着する方法など公知の技術が利用できる。ただし、給水部については防水透湿膜8が隣接する加湿板3の防水透湿膜9に直線あるいは補強部材を介して水密的に一体化する必要がある。
【0014】
このような加湿板3を積層する場合、上記の如く、給水部の枠体の厚みに対して加湿部の厚みは相対的に薄いので、隣接する加湿板の間にその厚さの差にもとづく空間10が形成される。本発明では、この空間10にスペーサ4を介在させてもよい(図6(A))。このスペーサ4は少なくとも枠体の両サイド7─a,7─bと接することが望ましく、よって加湿板どうしの間隔を一定に保つと共に、防水透湿膜8,9が水圧で膨らむことを防止するので、均一な空気流通空間が確保される効果がある。
【0015】
スペーサは、例えば、図5に示す如く、断面形状が連続する波形や三角形のプラスチック,金属などの薄板でよい。図6(A)に枠体の側面から見たスペーサ、図6(B)に枠体の正面から見たスペーサを示す。
図7(A)(B)に図2の枠体の変形例を示す。これらの枠体7′は給水部7′−1と加湿部7′−2を有し、加湿部7′−2の中抜き部分に加湿部の枠部分7′−a,7′−bと同じ厚さの細いリブ7′−e,7′−fが設けられている。この追加したリブ7′−e,7′−fに加湿膜8,9を貼付けることで注水時に加湿膜8,9が袋状に膨らむことを防止することができる。これによって、空気流路を確保するための波板スペーサが不要となり、空気圧損の低下を最小限に抑えることができ、しかも波板スペーサのコストを節約することができる。このとき、リブの幅は有効加湿面積を減少させない為に可能な限り狭くするのが好ましい。一方で、リブの本数は極端に少なくすると、加湿膜が袋状に膨らみ、加湿板間空間を減少させるので加湿膜の伸びの特性に応じ調整することが望ましい。加湿ユニットを組み立てるに当たっては、隣接する加湿板の枠体に貼った防水透湿膜を直接または補強部材を介して、例えば、接着または熱融着して固定すればよい。これにより、上記の如く、隣接する加湿板は共通する給水部を有することになる。加湿板の交換に際しては、接合部を剥離させ、新たな加湿板を同様の方法で再度固定する。また、これらにより、組立単位である加湿板の数を増減するだけで加湿量を容易にコントロールできる。
なお、図示しないが、加湿ユニットの端部に当たる枠体では、一方の端部は、枠部分7′−cが給水部7′−1の頂部まで延在したものを用いると共に、他方の端部では、加湿膜8を枠体に固定後に、枠部分7′−bの枠部分7′−cと反対側の表面に給水部7′−1の頂部まで届く追加の板を取り付けたものを用いて、給水部7′−1を好ましく構成することができる。
図8、図9は、枠体7の給水部7−1の変形例を示す。この例では、給水部7−1の枠部分(クロスメンバー)7−cを1枚ではなく、2枚7−c−1,7−c−2にして、その間を通して給水Aする。図8は枠体7の斜視図、図9(A)は枠体を組み立てた場合の部分側断面図、図9(B)は部分縦断面図である。この変形例では、枠体7の両面に枠部分(7−c−1,7−c−2)があるので、給水部7−1への加湿膜8,9の貼付が容易になる。図2の枠体の場合には、例えば、給水部に表面を離型紙で覆ったスペーサを挿入して加湿膜8,9を接着し、また枠体同士を組立接着し、接着剤の硬化後にスペーサを取り去るなどの工夫が必要である。図8、図9の変形例ではこのような不都合はない。しかし、給水部Aにおける枠部分7−c−1,7−c−2の占める面積が増えると給水部の開口面積が減少するので、枠部分(クロスメンバー)7−c−1,7−c−2を薄くすると、その中央部で撓みが発生して押し付け圧力不足とそれに由来する接着不良をきたすおそれがある。従って、必要に応じて、図8の如く、枠部分(クロスメンバー)7−c−1,7−c−2の中央にリブ7−c−3を設けることが好ましい。
図10(A)(B)(C)は図8〜9の枠体7のさらなる変形例である。この枠体は図8〜9の枠体を2つに分割した枠体要素7″−1,7″−2を一体化して構成するものである。図10(A)(B)は一体化前の枠体要素7″−1,7″−2をそれぞれ示し、図10(C)は枠体要素7″−1,7″−2を一体化後の枠体の側面を示す。この枠体要素7″−1,7″−2は同一形状であるので、同一金型でよく量産性に優れているが、枠体要素7″−1,7″−2は枠材を接着または融着で固定する。その後、各々の加湿板どうしは同じく接着または融着するか、あるいはハッキング材を介して固定すればよいが、この際、枠体要素の給水部部分に固定・締め付け用の穴7″−hを貫通させておき、ボルトなどで強固に組み立てるようにすることができる。また、枠体要素の給水部部分の中央にはリブ7″−iを設けることができ、このリブ7″−iは固定・締め付け用の穴を兼用することができる。加湿膜8′は枠体要素に接着、融着等の既存の方法で固定するが、枠体要素を射出成形機で製造する際に予め金型面に加湿膜を挿入しておき、インサート一体化することができる。この手法によれば、枠体成形と加湿膜の固定が同一工程で行われるので、工程の単純化を達成できる効果がある。この点、枠体の両面に加湿膜を固定する方法では、一度に射出成形で両面ともに加湿膜を固定するのは困難であるので、片面のみに射出成形で加湿膜を固定した枠体に全く別の工程で残りの面に加湿膜を固定する必要がある。従って、この図10の態様では、片面に加湿膜を固定する単一のインサート射出成形の繰り返しであるので、加湿膜の表裏の固定品質にバラツキがなく、安定的に製造できる利点もある。
なお、この変形例では給水部のみを共有する加湿ユニットにつき述べたが、同様の構造で排水部を共有した加湿ユニットを作ることも容易である。
【0016】
図1ではハウジング2を用いたが、例えば、方形のエアダクトの天板部分を切り欠き、加湿板積層構造を挿入するだけでも、加湿機能を付与することができる。
図11は、別の実施例で、この加湿ユニット20は給水部31のみならず排水部32も共有にし、かつ給水部31と排水部32を上下ではなく左右に配置した構造である。
【0017】
図12に加湿板23の枠体27の斜視図、図13及び図10に加湿板23の積層構造の側断面図及び側面図を示す。
枠体27の給水部27─1と排水部27─3は厚みが同じであり、加湿部27─2より厚く形成されている。従って、この加湿板を積層構造にしたとき、加湿板23間の加湿部23─2に空間30(ここに空間を確保する手段として例えばスペーサ24を挿入する)が形成され、かつ、図1の加湿ユニットと異なり、給水部Aのみならず排水部Bも共有される。従って、図11の如く、ハウジング22の給水部31及び排水部32を密閉構造にして、給水部と排水部を左右に配置した構造が可能になる。33は給水管、34は排水管である。
【0018】
勿論、この加湿ユニットは縦型にして、給水部31を上に配置することも可能である。また、充分な給水の圧力供給が可能ならば給水部31を下に配置してもよい。
図11の加湿ユニットのその他の構成は図1の加湿ユニットのそれと基本的に同様である。
【0019】
【発明の効果】
本発明の加湿ユニットは、防水透湿膜を利用した加湿方法において、薄葉状の加湿板を加湿板間の空間を確保する手段を構じた上で、積層した構造にすることにより、加湿面を大面積に形成すると共に、加湿板の間の空気流通空間を一定に保持することができ、また加湿板を単位として取り替えることができるので、防水透湿膜にピンホールが発生したり、水の流路が閉塞した場合にも加湿ユニットは補修して利用を続けることができる。そして、構造及び組立が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例の加湿ユニットの斜視図である。
【図2】第1の実施例の加湿板の斜視図である。
【図3】第1の実施例の加湿板の枠体の斜視図である。
【図4】第1の実施例の加湿板の積層構造の側断面図である。
【図5】(A),(B)はそれぞれスペーサを示す。
【図6】(A)は第1の実施例の加湿板をスペーサを介して積層した構造の側面図、(B)は第1の実施例の加湿板にスペーサを挿入した様子を示す正面図である。
【図7】(A)(B)は加湿板の枠体の変形例を示す。
【図8】加湿板の枠体のさらに別の変形例を示す。
【図9】(A)(B)は図8の加湿板の枠体の側断面図および縦断面図である。
【図10】(A)(B)(C)は加湿板の枠体のさらに別の変形例を示す。
【図11】第2の実施例の加湿ユニットの斜視図である。
【図12】第2の実施例の加湿板の斜視図である。
【図13】第2の実施例の加湿板を積層した構造の側断面図である。
【図14】第2の実施例の加湿板をスペーサを介して積層した構造の側面図である。
【符号の説明】
1,20…加湿ユニット
2,22…ハウジング
3,23…加湿板
3─1…吸水部
3─2…加湿部
4,24…スペーサ
5…空気
6…水
7,27…枠体
8,9,28,29…防水透湿膜
10,30…空気流通空間
Claims (2)
- 各々独立した薄葉状の加湿板を複数積層した構造を有し、各加湿板は薄板を中抜きした形状の枠体の両主面に防水透湿膜を固定して成り、該加湿板はその一端から枠体内の防水透湿膜間の加湿部に給水でき、該枠体の厚みは該給水部を規定する部分において該加湿部を規定する部分より厚く、該加湿板は該給水部どうしが重なるように積層されて各加湿板に共通の給水部が形成され、且つ該加湿板間に給水部と加湿部の枠体の厚みの差にもとづいて空間が形成されることを特徴とする加湿ユニット。
- 前記枠体の厚みは前記加湿板の一端をなす排水部を規定する部分においても前記加湿部を規定する部分より厚くかつ前記給水部を規定する部分と同じ厚みであり、且つ前記加湿板は該排水部どうしが重なるように積層されて各加湿板に共通の排水部が構成されている請求項1記載の加湿ユニット。
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