JP3670753B2 - トンネル掘削機及び掘削方法 - Google Patents

トンネル掘削機及び掘削方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤を掘削してトンネルを構築するトンネルボーリングマシンやシールド掘削機などのトンネル掘削機及びトンネル掘削方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図11に従来のトンネルボーリングマシンの断面概略を示す。
【0003】
従来のトンネルボーリングマシン(以下、TBMと称する。)において、図11に示すように、掘削機本体は円筒形状をなす前胴001と後胴002とから構成されており、この前胴001の前部にはカッタヘッド003が回転自在に装着されており、このカッタヘッド003は前面部に岩盤をせん断破壊するローラカッタ004が多数枢着されると共に、バケット005が取付けられている。このカッタヘッド003の後部には内歯を有するリングギヤ006が一体に固定される一方、前胴001にはカッタ旋回モータ007が固定されており、このカッタ旋回モータ007の駆動ギヤ008がリングギヤ006に噛み合っている。また、前胴001には掘削して発生したずりが内部に浸入しないように、バルクヘッド009が形成されており、カッタヘッド003とこのバルクヘッド009との間にはチャンバ室010が形成されている。そして、このチャンバ室010にはずりを集積するホッパ011が配設され、このホッパ011の下部にはこのホッパ011にて集積したずりを外部に排出するベルトコンベヤ012が取付けられている。
【0004】
従って、カッタ旋回モータ007を駆動して駆動ギヤ008を回転駆動すると、この駆動ギヤ008が噛み合うリングギヤ006が回転し、リングギヤ006と一体のカッタヘッド003を旋回し、ローラカッタ004が岩盤をせん断破壊して掘削することができる。そして、カッタヘッド003の開口部からチャンバ室010に取り込まれたずりはホッパ011内に落下し、このホッパ011内に集積されたずりはベルトコンベヤ012によって外部に排出される。
【0005】
前胴001と後胴002との間には12本のスラストジャッキ013が架設されている。このスラストジャッキ013は油圧の給排によって伸縮作動するものであって、全体としてトラス状に配設されることでパラレルリンク機構014を構成している。従って、このパラレルリンク機構014において、各スラストジャッキ013の各駆動ロッドを伸縮することで、前胴001と後胴002との相対位置を変更することができ、また、各スラストジャッキ013の各作動ストロークを変えることで、後胴002に対してカッタヘッド003を有する前胴001を屈曲し、その掘進方向を変更することができる。
【0006】
また、この前胴001の後端上部には弧状をなす前胴ルーフシールド015が一体に固定される一方、後胴002の前端上部にも弧状をなす後胴ルーフシールド016が一体に固定されている。この前胴ルーフシールド015と後胴ルーフシールド016とは前胴ルーフシールド015が上になるように重なり合っており、既設トンネルの内壁面からの土砂などの落下を防止している。
【0007】
更に、前胴001には複数のフロントグリッパ017が周方向にほぼ均等間隔で装着されており、各フロントグリッパ017は内蔵された図示しない油圧ジャッキによって径方向に張り出すことができる。従って、この油圧ジャッキを駆動して各フロントグリッパ017を径方向に張り出すと、このフロントグリッパ017を前胴001内に収納した位置から、掘削形成されたトンネル内壁面に圧接して前胴001を保持する位置に移動させることができる。一方、後胴002には複数のリヤグリッパ018が周方向にほぼ均等間隔で装着されており、各リヤグリッパ018は内蔵された図示しない油圧ジャッキによってを径方向に張り出すことができる。従って、この油圧ジャッキを駆動して各リヤグリッパ018を径方向に張り出すと、このリヤグリッパ018を後胴002内に収納した位置から、掘削形成されたトンネル内壁面に圧接して後胴002を保持する位置に移動させることができる。
【0008】
従って、リアグリッパ018を掘削形成されたトンネル内壁面に圧接することで、後胴002を移動不能に保持し、この状態で、カッタ旋回モータ007を駆動してカッタヘッド003を回転駆動させながら、パラレルリンク機構014の各スラストジャッキ013を伸長して前胴001と共にカッタヘッド003を前方へ移動させる。すると、旋回するカッタヘッド003のローラカッタ004が岩盤をせん断破壊し、この岩盤を掘削する。そして、各スラストジャッキ013を所定ストローク伸長すると、このスラストジャッキ013 の駆動を停止し、フロントグリッパ017を押し出して掘削形成されたトンネル内壁面に圧接することで、前胴001を移動不能に保持する一方、リアグリッパ018を収納することでこの後胴002を移動自在とする。この状態で、パラレルリンク機構014の各スラストジャッキ013を収縮することで前胴001に対して後胴002を引き寄せる。そして、再び、リアグリッパ018を既設トンネル内壁面に圧接することで後胴002を移動不能に保持する一方、フロントグリッパ017を前胴001内に収納することでこの前胴001を移動自在とする。この状態で、カッタ旋回モータ007によってカッタヘッド003を回転駆動させながら、各スラストジャッキ013を伸長して前胴001と共にカッタヘッド003を前方へ移動させると、旋回するカッタヘッド003のローラカッタ004が岩盤をせん断破壊し、この岩盤を掘削する。
【0009】
この作動の繰り返しによって連続してトンネルを掘削していく。そして、このローラカッタ004の岩盤掘削によって生じたずりはバケット005によってチャンバ室010内に取り込まれてホッパ011内に落下し、ホッパ011内に集積されたずりはベルトコンベヤ012によって外部に排出される。また、岩盤を掘削してトンネルを掘削形成していく過程で、この掘削形成されたトンネルの壁面が安定している場合は支保は不要であるが、若干不安定であり、壁面から岩片が剥がれ落ちないようにリング状に形成したH形綱や木製の板等を支保として用い、トンネルを保護する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のTBMにあっては、掘削形成されたトンネルの内壁面が不安定であるときには、内壁面から岩片が剥がれ落ちないように支保工を用いてトンネルを保護する。この支保工の組付作業は、従来、掘削機本体、即ち、後胴002の後方で行っている。
【0011】
ところが、掘削形成されたトンネルの内壁面が不安定であるものの、崩落の少ない地盤であれば問題ないが、地山が崩落し易い地盤では掘削面(切羽)からなるべく近いところで、且つ、なるべく早い時期に支保工などを用いたトンネル保護作業を行う必要がある。上述した従来のTBMにあっては、支保工の組付作業を後胴002の後方で行っており、トンネルの内壁面の崩落が広範囲にわたってしまうという問題があった。
【0012】
本発明はこのような問題を解決するものであって、トンネルの内壁面の崩落を抑制すると共に掘削作業の安全性の向上を図ったトンネル掘削機及びトンネル掘削方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するための本発明のトンネル掘削機は、筒状をなす一対の前胴及び後胴と、前記前胴の前部に回転自在に装着されたカッタヘッドと、該カッタヘッドを駆動回転するカッタヘッド駆動手段と、前記前胴と後胴との間に架設された推進手段と、前記前胴と後胴との間の上部に介装されたルーフシールドと、該ルーフシールドを前方あるいは後方に移動して上方を開口するルーフシールド移動手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0014】
従って、このトンネル掘削機によって地盤を掘削する場合、カッタヘッド駆動手段によってカッタヘッドを駆動回転させながら、推進手段によって前胴を前進させることでカッタヘッドによって前方の地盤を掘削し、このとき、ルーフシールド移動手段によってルーフシールドを前方あるいは後方に移動することで、前胴と後胴との間の上方を開口することができ、この開口部を用いて既設トンネルの内壁面に対する支保を行う。
【0015】
また、本発明のトンネル掘削方法は、掘削機本体を筒状をなす一対の前胴及び後胴にて構成し、該前胴の前部に装着されたカッタヘッドを駆動回転させながら、前胴を前進させることで前記カッタヘッドによって前方の地盤を掘削し、このとき、前記前胴と後胴との間の上部に介装されたルーフシールドを前方あるいは後方に移動することで上方を開口し、該開口部を用いて既設トンネルの内壁面に対する支保を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
従って、このトンネル掘削方法を用いて地盤を掘削することで、掘削途中で、掘削面から近いところで早い時期に支保を行うことができ、地山の崩落を抑制できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
本発明のトンネル掘削機は、地盤を掘削してトンネルを形成するトンネルボーリングマシンやシールド掘削機に適用されるものである。即ち、掘削機本体は筒状をなす前胴と後胴とで構成され、前胴の前部には回転自在なカッタヘッドが装着されており、このカッタヘッドはカッタヘッド駆動手段としての駆動モータなどによって駆動回転可能となっている。そして、前胴と後胴との間には推進手段としての多数の油圧ジャッキが架設されており、この油圧ジャッキの伸縮によって前胴と後胴とを接近離間させて両者を交互に前進させることができる。また、この前胴と後胴との間の上部にはルーフシールドが位置しており、このルーフシールドをルーフシールド移動手段としての油圧ジャッキによって前方あるいは後方に移動することで、上方を開口することができる。
【0019】
従って、このトンネル掘削機によって地盤を掘削する場合、駆動モータによってカッタヘッドを駆動回転させながら、推進手段としての油圧ジャッキを伸長し、後胴に対して前胴を前進させることで、カッタヘッドが前方の地盤を掘削する。次に、油圧ジャッキを収縮することで、前胴に対して後胴を引き寄せて前進させる。そして、再び、油圧ジャッキを伸長し、前胴を前進させることで、カッタヘッドが前方の地盤を掘削する。この繰り返しによって掘削作業を行う。そして、掘削地盤が不安定であるときは、後胴に対して前胴が前進したときに、ルーフシールド移動手段としての油圧ジャッキによってルーフシールドを前方あるいは後方に移動することで、前胴と後胴の間の上方を開口することができ、この開口部を用いて既設トンネルの内壁面に対して支保を行って地盤の崩落を防止できる。
【0020】
このように本発明のトンネル掘削機にあっては、掘削地盤が不安定であるときは、ルーフシールドを移動して前胴と後胴の間の上方を開口することで、この開口部を用いて既設トンネルの内壁面に対して支保を行って地盤の崩落を防止することができ、掘削面から近いところで、しかも、早い時期に支保を行うことで、地山の崩落を抑制して安全に作業を行うことができる。
【0021】
また、本発明のトンネル掘削方法は、掘削機本体を筒状をなす一対の前胴及び後胴にて構成し、この前胴の前部に装着されたカッタヘッドを駆動回転させながら、前胴を前進させることで、カッタヘッドによって前方の地盤を掘削し、このとき、前胴と後胴との間の上部に介装されたルーフシールドを前方あるいは後方に移動することで上方を開口し、この開口部を用いて既設トンネルの内壁面に対する支保を行うようにしている。従って、このトンネル掘削方法を用いて地盤を掘削することで、掘削途中で、掘削面から近いところで早い時期に支保を行うことができ、地山の崩落を抑制できる。
【0022】
【実施例】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0023】
<第1実施例>
図1に本発明の第1実施例に係るトンネル掘削機としてのトンネルボーリングマシンの断面概略、図2乃至図5は本実施例のトンネルボーリングマシンの要部を表すものであって、図2にトンネルボーリングマシン正面視、図3に図1のIII−III断面、図4に図1のIV−IV断面、図5に図1のV−V断面、そして、図6に推進機構としてのパラレルリンク機構の概略、図7にルーフシールドの概略構成、図8にルーフシールド閉止時の本実施例のトンネルボーリングマシンの側面視、図9にルーフシールド開放時の本実施例のトンネルボーリングマシンの側面視を示す。
【0024】
本実施例のTBMにおいて、図1乃至図5に示すように、掘削機本体は円筒形状をなす前胴11と後胴12とから構成されている。カッタヘッド13は後部にカッタドラム14が固定されており、このカッタドラム14が前胴11の軸受15に支持されることで、カッタヘッド13は前胴11の前部に回転自在に装着されることとなる。そして、このカッタヘッド13は前面部に岩盤をせん断破壊するローラカッタ16が多数枢着されると共に、破壊したずりを取り込むカッタバケット17が固定されている。このカッタヘッド13と一体のカッタドラム14の後部には外歯を有するリングギヤ18が一体に固定される一方、前胴11には電動式あるいは油圧式のカッタ旋回モータ19が固定されており、このカッタ旋回モータ19の駆動ギヤ20がリングギヤ18に噛み合っている。
【0025】
また、前胴11には掘削して発生したずりが内部に浸入しないように、カッタヘッド13側とカッタ旋回モータ19側とを仕切るバルクヘッド21が形成されており、カッタヘッド13とこのバルクヘッド21との間にはチャンバ室22が形成されている。そして、このチャンバ室22にはずりを集積するホッパ23がバルクヘッド21に固定されて配設され、このホッパ23の下部にはこのホッパ23にて集積したずりを外部に排出するベルトコンベヤ24が取付けられ、このベルトコンベヤ24は前胴11及び後胴12内を後方に延設されている。
【0026】
なお、このベルトコンベヤ24によるずりの排出装置としては、ジェットポンプによってずりを外部に排出するものであってもよく、例えば、掘削機本体内に、ジェットポンプに給水する給水管と給水された水及びずりを排出する排出管を配設し、ホッパ23にて集積されたずりをジェットポンプからの噴射水によって排出管に吸引し、この排出管を通って排出するようにしてもよい。
【0027】
従って、カッタ旋回モータ19を駆動して駆動ギヤ20を回転駆動すると、この駆動ギヤ20が噛み合うリングギヤ18が回転し、リングギヤ18と一体のカッタヘッド13を旋回し、ローラカッタ16が岩盤をせん断破壊して掘削することができる。そして、カッタバケット17がずりをチャンバ室22に取り込んでホッパ23内に落とし、このホッパ23内に落下して集積したずりはベルトコンベヤ24によって外部に排出される。
【0028】
また、前胴11と後胴12との間には推進手段としての12本のスラストジャッキ25が架設されている。このスラストジャッキ25は油圧の給排によって伸縮作動するものであって、ジャッキ本体は前胴11に固定された球軸受26によって揺動自在に支持され、ロッド先端部は後胴12に固定された球軸受27によって揺動自在に支持されている。そして、このスラストジャッキ25はそれぞれ隣合って配設された関係が、例えば、互いに隣接する一方のスラストジャッキがカッタヘッド13の周方向一方に傾斜し、他方のスラストジャッキがカッタヘッド13の周方向他方に傾斜して全体としてトラス状に配設されることでパラレルリンク機構28を構成している。
【0029】
このように前胴11と後胴12とをパラレルリンク機構28で連結したことで、各胴を連結するフレーム等が不要となる。なお、本実施例では、このパラレルリンク機構28を12本のスラストジャッキ25で構成したが、これに限定されるものではなく、その本数はトンネルボーリングマシンの大きさなどに合わせて適宜設定すればよいものである。
【0030】
従って、このパラレルリンク機構28の各スラストジャッキ25の各駆動ロッドを伸縮することで、前胴11と後胴12との相対位置を変更することができ、前胴11と後胴12との一方を移動不能とすることで、前胴11と後胴12との他方を前進することができる。また、このパラレルリンク機構28の各スラストジャッキ25の各作動ストロークを変えることで、カッタヘッド13を有する前胴11を後胴12に対して屈曲し、その掘進方向を変更することができる。
【0031】
ここで、前述した複数のスラストジャッキ25から構成されるパラレルリンク機構28の制御システムの構成について説明する。なお、以下では、説明を簡略化するために、パラレルリンク機構28を6本のスラストジャッキ25a〜25fによって構成して説明する。
【0032】
図6に示すように、スラストジャッキ25a〜25fにおいて、例えば、スラストジャッキ25aの図示しないピストンによって仕切られた2つの圧力室には油圧給排管29,30が連結されており、各油圧給排管29,30はそれぞれ非常遮断弁31,32を介してサーボ弁33に連結されている。このサーボ弁33はスラストジャッキ25aの各圧力室への圧油の供給及び排出を操作するものであって、連結管34,35を介して油圧給排源36に連結されている。
【0033】
また、スラストジャッキ25aにはその作動位置を検出する変位センサ37が装着されており、この変位センサ37は制御部38を介してサーボアンプ39に接続されている。そして、前述したサーボ弁33はこのサーボアンプ39に接続されている。なお、この制御部38には複数のジョイスティックを有する操作部40と非常停止ボタン41が接続されている。
【0034】
従って、変位センサ37はスラストジャッキ25aの作動位置を検出しており、その検出信号を制御部38に出力している。制御部38はこの検出信号に基づいてサーボアンプ39に指令信号を出力し、サーボアンプ39はその指令信号に基づいてサーボ弁33を制御し、油圧給排源36とスラストジャッキ25aとの間で油圧の給排を行うようになっている。なお、ここではスラストジャッキ25aについてのみ説明したが、他のスラストジャッキ25b〜25fについても同様の構成となっている。
【0035】
また、前胴11には、図1及び図3に示すように、フロントグリッパ42が装着されている。このフロントグリッパ42の4つのグリッパシュー43は周方向にほぼ均等間隔で前胴11に出没自在に装着されており、内蔵された油圧ジャッキ44によって径方向に駆動することができる。従って、この油圧ジャッキ44を駆動して各グリッパシュー43を径方向に張り出すと、このグリッパシュー43を前胴11内に収納した位置から、掘削形成されたトンネル内壁面に圧接して前胴11を保持する位置に移動させることができる。
【0036】
一方、後胴12には、図1及び図5に示すように、リアグリッパ45が装着されている。このリアグリッパ45の2つのグリッパシュー46は周方向にほぼ均等間隔で後胴12内に出没自在に装着されており、内蔵された油圧ジャッキ47によって径方向に駆動することができる。従って、この油圧ジャッキ47を駆動して各グリッパシュー46を径方向に張り出すと、このグリッパシュー46を後胴12内に収納した位置から、掘削形成されたトンネル内壁面に圧接して後胴12を保持する位置に移動させることができる。
【0037】
本実施例では、図1及び図4、図7に示すように、前胴11に対して後胴12が若干小径となっており、この前胴11と後胴12との間の上部には半円弧状をなす前後一対のルーフシールド51,52が設けられている。即ち、前胴11の後端上部には後方に延設する前胴ルーフシールド51が着脱自在に設けられる一方、後胴12の前端上部には前方に延設する後胴ルーフシールド52が固定されおり、前胴ルーフシールド51の下側に後胴ルーフシールド52が位置するように重なり合っている。この前胴ルーフシールド51は前端にフランジ部51aが一体に形成されて前胴11の後壁11aに密着し、このフランジ部51aには着脱ボルト53が装着されている。一方、前胴11にはナット54を保持したナットランナ55が位置しており、このナットランナ55はブラケット56を介して前胴11に固定されたレール57に対して移動自在に支持されると共に、移動ジャッキ58によって前後に移動可能となっている。また、前胴ルーフシールド51の前端部と後胴12の前端部との間にはルーフシールド移動手段としての複数の開閉ジャッキ59が架設されている。
【0038】
従って、移動ジャッキ58によってナットランナ55を後方に移動し、保持したナット54を正転させることで、このナット54とフランジ部51aの着脱ボルト53とを螺合し、前胴ルーフシールド51を前胴11に連結することができる。一方、ナットランナ55によって保持したナット54を逆転させることで、このナット54とフランジ部51aの着脱ボルト53との螺合を解除し、前胴ルーフシールド51を前胴11から取り外すことができる。そして、前胴11から前胴ルーフシールド51を取り外した状態で、開閉ジャッキ59を収縮状態のまま、パラレルリンク機構28の各スラストジャッキ25を伸長すると、後胴12に対して前胴11のみが前進し、この前胴11と前胴ルーフシールド51との間の上方を開口することができる。
【0039】
ここで、上述した本実施例のトンネルボーリングマシンを用いたトンネル掘削方法について説明する。
【0040】
図1に示すように、フロントグリッパ42の油圧ジャッキ44を収縮して各グリッパシュー43を引き込んで前胴11内に収納することで、この前胴11を移動自在にする一方、リアグリッパ45の油圧ジャッキ47を伸長して各グリッパシュー46を押し出して外周面を掘削形成されたトンネル内壁面に圧接することで、後胴12を移動不能に保持する。この状態で、カッタ旋回モータ19を駆動してカッタヘッド13を回転駆動させながら、パラレルリンク機構28の各スラストジャッキ15を伸長すると、前胴11と共にカッタヘッド13は前方へ移動し、旋回するカッタヘッド13のローラカッタ16が岩盤をせん断破壊し、この岩盤を掘削する。このとき、各スラストジャッキ25の各作動ストロークを変えることで、前胴11は後胴12に対して折れ曲がり、カッタヘッド13の向きを変えてトンネルの掘削方向を変更することができる。
【0041】
また、図6に示すように、制御部38には変位センサ37が検出した各スラストジャッキ25の作動位置の検出信号が入力されており、制御部38は予め設定された掘削条件(掘削するトンネルの計画線形や掘削速度等)及び変位センサ37の検出信号に基づいてサーボアンプ39に指令信号を出力してサーボ弁33を制御し、油圧給排源36と各スラストジャッキ25との間で油圧の給排を行う。従って、各スラストジャッキ25は油圧の給排によって所定量駆動し、X方向、Y方向、Z方向及びψ方向、θ方向、φ方向の制御が行われながら、カッタヘッド13をこのX方向、Y方向、Z方向及びψ方向、θ方向、φ方向の6自由度運動させる。
【0042】
そして、各スラストジャッキ25を所定ストローク伸長すると、このスラストジャッキ25の駆動を停止し、フロントグリッパ42の油圧ジャッキ44を伸長して各グリッパシュー43を押し出して外周面を掘削形成されたトンネル内壁面に圧接することで、前胴11を移動不能に保持する一方、リヤグリッパ45の油圧ジャッキ47を収縮して各グリッパシュー46を引き込んで後胴12内に収納することで、後胴12を移動自在とする。この状態で、パラレルリンク機構28の各スラストジャッキ25を収縮することで前胴11に対して後胴12を引き寄せて前進させ、両者を接近させる。
【0043】
そして、各スラストジャッキ25を所定ストローク収縮すると、このスラストジャッキ25の駆動を停止し、再び、リアグリッパ45の各油圧ジャッキ47を伸長して各グリッパシュー46をトンネル内壁面の圧接することで、後胴12を保持する一方、フロントグリッパ42の各油圧ジャッキ44を収縮して各グリッパシュー43によるトンネル内壁面の圧接を解除する。そして、カッタ旋回モータ19によってカッタヘッド13を回転駆動しながら、パラレルリンク機構28の各スラストジャッキ25を伸長することで、後胴12に対して前胴11及びカッタヘッド13を前進させる。すると、回転駆動するカッタヘッド13が前方の岩盤に押し付けられ、ローラカッタ16が岩盤を破砕する。この作動の繰り返しによってトンネルを掘削していく。
【0044】
そして、この回転駆動するカッタヘッド13のローラカッタ15の岩盤掘削によって生じたずりは、カッタバケット17によってチャンバ室22内に取り込まれ、ホッパ23内に落下する。このホッパ23内に落下して集積されたずりはベルトコンベヤ24によって外部に排出される。
【0045】
このように岩盤を掘削してトンネルを掘削形成していく過程で、この掘削形成されたトンネルの内壁面が安定している場合は支保は不要であるが、若干不安定である場合には、壁面から岩片が剥がれ落ちないようにリング状に形成したH形綱や木製の板等を支保工として用い、トンネルを保護する。
【0046】
このとき、通常は、図8に示すように、前胴ルーフシールド51は前端のフランジ部51aが前胴11の後壁11aに連結固定されており、この前胴ルーフシールド51は前胴11と共に前進して掘削作業を行っている。そのため、作業者は後胴12の後方にて、トンネルの内壁面への支保工Sの組付作業を行う。
【0047】
ところが、掘削地盤が不安定であって、既設トンネルの内壁面での崩落がある場合には、掘削面(切羽)からなるべく近いところで、且つ、なるべく早い時期に支保工などを組み付けて既設トンネルを保護する必要がある。従って、この場合には、図1及び図7に示すように、ナットランナ55によって保持したナット54を逆転させることで、このナット54と前胴ルーフシールド51の着脱ボルト53との螺合を解除し、この前胴ルーフシールド51を前胴11から取り外す。そして、この状態で開閉ジャッキ59を収縮状態のまま、カッタ旋回モータ19によってカッタヘッド13を回転駆動しながら、パラレルリンク機構28の各スラストジャッキ25を伸長する。すると、図9に示すように、後胴12に対して前胴11のみが前進し、旋回するカッタヘッド13によって前方の岩盤が掘削され、前進した前胴11と後胴12と共に停止していた前胴ルーフシールド51との間の上方が開口する。
【0048】
従って、作業者は、前胴11と前胴ルーフシールド51との間の上方を開口した開口部を用いて、既設トンネルの内壁面への支保工Sの組付作業を行うことで、地盤の崩落を早期に抑制できる。なお、前胴11と前胴ルーフシールド51との間の開口部の大きさを調整する場合には、開閉ジャッキ59を伸長することで、前胴ルーフシールド51が前胴11側へ移動し、開口部を小さくすることができる。
【0049】
その後、掘削地盤が安定して、既設トンネルの内壁面での崩落の危険性がなくなった場合には、開閉ジャッキ59を収縮状態として、パラレルリンク機構28の各スラストジャッキ25を収縮すると、前胴11に対して後胴12と共に前胴ルーフシールド51が引き寄せられて前進し、前進した前胴ルーフシールド51の前端部が前胴11の後壁に密着する。この状態で、ナットランナ55によって保持したナット54を正転させることで、このナット54と前胴ルーフシールド51の着脱ボルト53とが螺合し、この前胴ルーフシールド51は前胴11に連結固定する。
【0050】
<第2実施例>
図10に本発明の第2実施例に係るトンネル掘削機としてのトンネルボーリングマシンの断面概略を示す。なお、上述した第1実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0051】
本実施例のTBMにおいて、図10に示すように、前胴11の前部にはカッタヘッド13が回転自在に装着され、このカッタヘッド13にはローラカッタ16及びカッタバケット17が取付けられ、カッタ旋回モータ19によって駆動回転可能となっている。また、前胴11にはバルクヘッド21によってチャンバ室22が形成されており、このチャンバ室22にはホッパ23が配設されると共に、このホッパ23にて集積したずりを排出するベルトコンベヤ24が配設されている。そして、前胴11と後胴12との間には12本のスラストジャッキ25からなるパラレルリンク機構28が架設されており、このパラレルリンク機構28によって前胴11あるいは後胴12を前進することができると共に、その掘進方向を変更することができる。また、前胴11にはフロントグリッパ42が装着される一方、後胴12にはリアグリッパ45が装着されている。
【0052】
本実施例では、前胴11に対して後胴12が若干小径となっており、この前胴11の後部から後胴12との後方にかけてその上部には半円弧状をなすルーフシールド61が設けられている。即ち、このルーフシールド61は後胴を覆うようにその上方に位置し、前端部が前胴11の後壁に密着して着脱ボルト63が装着されている。一方、前胴11にはナット64を保持したナットランナ65が位置しており、このナットランナ65はブラケット66を介して前胴11に固定されたレール67に対して移動自在に支持されると共に、移動ジャッキ68によって前後に移動可能となっている。また、ルーフシールド61の後端部と後胴12の後端部との間にはルーフシールド移動手段としての複数の開閉ジャッキ69が架設されている。
【0053】
従って、移動ジャッキ68によってナットランナ55を後方に移動し、保持したナット64を正転させることで、このナット64とフランジ部61aの着脱ボルト63とを螺合し、ルーフシールド61を前胴61に連結することができる。一方、ナットランナ65によって保持したナット64を逆転させることで、このナット64とフランジ部61aの着脱ボルト63との螺合を解除し、ルーフシールド51を前胴11から取り外すことができる。そして、前胴11からルーフシールド61を取り外した状態で、開閉ジャッキ69を伸長状態のまま、パラレルリンク機構28の各スラストジャッキ25を伸長すると、後胴12に対して前胴11のみが前進し、この前胴11とルーフシールド61との間の上方を開口することができる。
【0054】
ここで、上述した本実施例のトンネルボーリングマシンを用いたトンネル掘削方法について説明する。
【0055】
図10に示すように、フロントグリッパ42によって前胴11を移動自在にする一方、リアグリッパ45によって後胴12を移動不能に保持した状態で、カッタ旋回モータ19を駆動してカッタヘッド13を回転駆動させながら、パラレルリンク機構28の各スラストジャッキ15を伸長すると、前胴11と共にカッタヘッド13は前方へ移動し、ローラカッタ16が岩盤を掘削する。そして、各スラストジャッキ25を所定ストローク伸長すると、このスラストジャッキ25の駆動を停止し、フロントグリッパ42によって前胴11を移動不能に保持する一方、リヤグリッパ45によって後胴12を移動自在とする。この状態でパラレルリンク機構28の各スラストジャッキ25を収縮することで、前胴11に対して後胴12を引き寄せて前進させ、両者を接近させる。
【0056】
各スラストジャッキ25を所定ストローク収縮すると、このスラストジャッキ25の駆動を停止し、再び、リアグリッパ45によって後胴12を保持する一方、フロントグリッパ42によって前胴11を移動可能とし、カッタヘッド13を回転駆動しながら、各スラストジャッキ25を伸長して前胴11前進させ、回転駆動するカッタヘッド13によって前方の岩盤を掘削する。この作動の繰り返しによってトンネルを掘削していく。そして、この回転駆動するカッタヘッド13の岩盤掘削によって生じたずりは、カッタバケット17によってチャンバ室22内に取り込まれ、ホッパ23内に落下する。このホッパ23内に落下して集積されたずりはベルトコンベヤ24によって外部に排出される。
【0057】
このように岩盤を掘削してトンネルを掘削形成していく過程で、掘削地盤が不安定であって、既設トンネルの内壁面での崩落がある場合には、ルーフシールド61を移動することで前胴11と後胴12との間に開口を形成し、この開口を用いて支保工の組み付け作業を行う。即ち、ナットランナ65によってナット64を逆転させて前胴ルーフシールド61の着脱ボルト63との螺合を解除し、前胴ルーフシールド61を前胴11から取り外す。そして、この状態で開閉ジャッキ69を伸長状態のまま、カッタヘッド13を回転駆動しながら、各スラストジャッキ25を伸長すると、後胴12に対して前胴11のみが前進し、旋回するカッタヘッド13によって前方の岩盤が掘削され、前進した前胴11と後胴12と共に停止していたルーフシールド61との間の上方が開口する。
【0058】
従って、作業者は、前胴11とルーフシールド61との間の上方を開口した開口部を用いて、既設トンネルの内壁面への支保工Sの組付作業を行うことで、地盤の崩落を早期に抑制できる。なお、前胴11とルーフシールド61との間の開口部の大きさを調整する場合には、開閉ジャッキ69を収縮することで、ルーフシールド61が前胴11側へ移動し、開口部を小さくすることができる。
【0059】
その後、掘削地盤が安定して、既設トンネルの内壁面での崩落の危険性がなくなった場合には、開閉ジャッキ69を収縮状態として、各スラストジャッキ25を収縮すると、前胴11に対して後胴12と共にルーフシールド61が引き寄せられて前進し、前進したルーフシールド61の前端部が前胴11の後壁に密着する。この状態で、ナットランナ65によってナット64をルーフシールド61の着脱ボルト63とが螺合することで、この前胴ルーフシールド61を前胴11に連結固定する。
【0060】
なお、上述した各実施例にあっては、本発明のトンネル掘削機を、岩盤を破砕してトンネルを掘削するトンネルボーリングマシンを用いて説明したが、本発明はこのタイプの掘削機に限定されるものではなく、軟弱で水分の多い地盤を掘削するシールド掘削機に適用することも可能であり、同然の如く、前述と同様の作用効果を奏することができる。また、推進手段として複数のスラストジャッキがトラス状に配設されたパラレルリンク機構を用いたが、複数のスラストジャッキが略平行に配設された推進機構を用いてもよい。
【0061】
【発明の効果】
以上、実施例を挙げて詳細に説明したように本発明のトンネル掘削機によれば、筒状をなす前胴の前部に回転自在なカッタヘッドを装着してカッタヘッド駆動手段によって駆動回転可能とすると共に、前胴と後胴との間に推進手段を架設して両者を接近離反自在とし、また、この前胴と後胴との間の上部にルーフシールドを介装してこのルーフシールドをルーフシールド移動手段によって前方あるいは後方に移動することで上方を開口可能としたので、既設トンネルの内壁面で崩落がある場合には、ルーフシールド移動手段によってルーフシールドを移動し、前胴と後胴との間の上方を開口することにより、この開口部を用いて既設トンネルの内壁面に対する支保を行うことができる。その結果、トンネルの内壁面の崩落を早期に抑制することができると共に、掘削作業の安全性の向上を図ることができる。
【0062】
また、本発明のトンネル掘削方法によれば、掘削機本体を筒状をなす一対の前胴及び後胴にて構成し、この前胴の前部に装着されたカッタヘッドを駆動回転させながら、前胴を前進させることで前方の地盤を掘削し、このとき、前胴と後胴との間の上部に介装されたルーフシールドを前方あるいは後方に移動することで上方を開口し、この開口部を用いて既設トンネルの内壁面に対する支保を行うようにしたので、掘削途中にて掘削面から近いところで早い時期に支保を行うことができ、地山の崩落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るトンネル掘削機としてのトンネルボーリングマシンの断面概略図である。
【図2】トンネルボーリングマシン正面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1のIV−IV断面図である。
【図5】図1のV−V断面図である。
【図6】推進機構としてのパラレルリンク機構の概略図である。
【図7】ルーフシールドの概略構成図である。
【図8】ルーフシールド閉止時の本実施例のトンネルボーリングマシンの側面図である。
【図9】ルーフシールド開放時の本実施例のトンネルボーリングマシンの側面図である。
【図10】本発明の第2実施例に係るトンネル掘削機としてのトンネルボーリングマシンの断面概略図である。
【図11】従来のトンネルボーリングマシンの断面概略図である。
【符号の説明】
11 前胴
12 後胴
13 カッタヘッド
19 カッタ旋回モータ(カッタヘッド駆動手段)
42 フロントグリッパ
45 リアグリッパ
25 スラストジャッキ
28 パラレルリンク機構(推進手段)
51 前胴ルーフシールド
52 後胴ルーフシールド
59 開閉ジャッキ(ルーフシールド移動手段)

Claims (2)

  1. 筒状をなす一対の前胴及び後胴と、前記前胴の前部に回転自在に装着されたカッタヘッドと、該カッタヘッドを駆動回転するカッタヘッド駆動手段と、前記前胴と後胴との間に架設された推進手段と、前記前胴と後胴との間の上部に介装されたルーフシールドと、該ルーフシールドを前方あるいは後方に移動して上方を開口するルーフシールド移動手段とを具えたことを特徴とするトンネル掘削機。
  2. 掘削機本体を筒状をなす一対の前胴及び後胴にて構成し、該前胴の前部に装着されたカッタヘッドを駆動回転させながら、前胴を前進させることで前記カッタヘッドによって前方の地盤を掘削し、このとき、前記前胴と後胴との間の上部に介装されたルーフシールドを前方あるいは後方に移動することで上方を開口し、該開口部を用いて既設トンネルの内壁面に対する支保を行うようにしたことを特徴とするトンネル掘削方法。
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