JP3669273B2 - 歯車、この歯車を備えた動力伝達装置、この動力伝達装置を備えた機器および歯車の製造方法 - Google Patents

歯車、この歯車を備えた動力伝達装置、この動力伝達装置を備えた機器および歯車の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯車、この歯車を備えた動力伝達装置、この動力伝達装置を備えた機器および歯車の製造方法に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、動力伝達装置として、多数の歯車を用いた輪列が多用されている。これらの歯車の歯形は、通常、インボリュート歯形と、サイクロイド歯形およびその変形歯形とが利用されていた。
【0003】
インボリュート歯形は、輪列機構において最も一般的に使用されている歯形であり、特に減速輪列で用いられるものである。
【0004】
サイクロイド歯形は、増速輪列、特に時計用歯車としてスイスで研究されたものであり、EVJ規格やNHS規格としてスイス国内で規格化されている。サイクロイド歯車は、特に、増速比が大きい増速輪列に使用しても近寄りが少なく、噛み合い始めから終わりに渡ってモーメント比率ηMが安定しており、特に時計用の増速輪列として優れたものである。
【0005】
ここで、モーメント比率ηMは、トルクの伝達を示す指標であり、数1で求められる。
【数1】
Figure 0003669273
【0006】
ここで、図15にも示すように、Z1は駆動歯車の歯数であり、Z2は被駆動歯車の歯数である。また、L1’は駆動歯車に加わる力の作用線(ベクトル)101と駆動歯車の中心O1までの距離であり、L2’は被駆動歯車に加わる力の作用線(ベクトル)102と被駆動歯車の中心O2までの距離である。
ここで、各歯に加わる力は、各歯の接触点における歯面の共通垂線方向、つまり作用線101A,102Aの方向に加わるが、実際には各歯面間で摩擦力が働くため、角度θだけ反回転方向にずれて作用線101,102の方向に力が加わることになる。
【0007】
なお、図15は、一対の歯のかみ合い(接触)がピッチ点に一致してから離れ始める遠のき側における遠のき角での状態を示しているが、歯がかみ合い始めてからピッチ点に達するまでの近寄り側においても同様に求められる。但し、近寄り側では、摩擦力が加わる方向が遠のき側と反対になるため、力の作用線101,102は、101A,102Aを挟んだ反対側に振れることになる。
【0008】
ここで、図16,17に示すように、駆動歯車(原歯車)81が大歯車とされ、被駆動歯車(従動歯車)82が小歯車(ピニオン)とされた増速輪列において、被駆動歯車82をインボリュート歯形で構成した場合と、図18〜20に示すように、駆動歯車91および被駆動歯車92からなる増速輪列において、被駆動歯車92をサイクロイド歯形で構成した場合とで求めたモーメント比率曲線を図21に示す。
【0009】
ところで、このモーメント比率ηMは、100%に近いことが理想である。すなわち、モーメント比率ηMが100%を越えると、被駆動側にトルクを大きく伝えすぎることになり、100%に満たない場合には、トルクを伝えきれないことになる。
これは、モーメント比率ηMが100%に近づくということは、図15で示すと、作用線101Aと駆動歯車81,91および被駆動歯車82,92の回転中心O1,O2を結ぶ中心線105との交差角度が垂直(90度)に近づくということである。
【0010】
そして、増速輪列が使用されている機械式時計や、特許第3115479号公報等に記載されている電子制御式機械時計において、歯車のモーメント比率が100%を越えるような場合には、以下のような問題点が発生する。
【0011】
機械式時計の場合には、ぜんまいからのトルクを脱進器に伝達するのにテンプの振り角が大きくなる。この振り角が変化すると、時刻の精度が低下してしまう。さらに、振り当たりが出るほど振り角が大きくなると、精度が極端に悪くなるという問題が発生する。
【0012】
また、電子制御式機械時計の場合には、ぜんまいからのトルクをロータに伝達する際に、トルクが大きすぎると、電子制御式機械時計の制動限界を超えてしまうために進みが発生する。このためには、発電機を大きくして制動力を高めなければならない。その結果、発電機が大きくなって時計が大型化し、かつ持続時間も減ってしまうという問題が発生する。
【0013】
さらに、いずれの時計においても、モーメント比率が100%を越える(高くなる)ところでは、滑りが大きく発生するため、摩耗が多く発生し、寿命が短くなる。
従って、モーメント比率はあまり変動せずに一定に近いことが望ましく、かつできるだけ100%を越えないことが望ましい。
以上のように、モーメント比率の変化が小さく、かつ100%を越えない点で、図に示すように、インボリュート歯形よりもサイクロイド歯形のほうが好ましい。
【0014】
さらに、インボリュート歯形は、特に、時計用歯車のような増速輪列では、歯車同士の近寄りが多く、各歯車同士が突っ張りやすいため、表面粗さの変動や形状誤差の影響を受けやすいという問題もあった。
また、ピッチ誤差が生じた際、つまり製造誤差等で円ピッチの長さが変動した場合に、かみ合い位置の変化などの影響を受けやすいという問題がある。
従って、時計などでは、EVJ規格やNHS規格等のサイクロイド歯形の歯車を利用していた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このサイクロイド歯形の歯車は、図18〜20に示すように、大歯車(ギアホイール)と小歯車(ピニオン)の中心距離が負の方向(近づく方向)にばらついた場合には、歯面の滑りが大きくなり、モーメント比率の変動が大きくなるという問題がある。
【0016】
本発明の目的は、互いにかみ合う各歯車の中心距離が負の方向にばらついた場合でも、モーメント比率の変動を抑えることができて性能を向上できる歯車を提供することにある。
本発明の他の目的は、この歯車を備えることで、動力の伝達性能を向上できる動力伝達装置およびこの動力伝達装置を備えた機器を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、前記歯車を容易に製造できる製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の歯車は、歯車において駆動する際に他の歯車の歯先が当たる当接歯面部を、その歯面の接線が、その接線の接点と歯車の回転中心とを結ぶ基準線よりも歯の内側に傾斜するように形成したことを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、当接歯面部が歯の内側に傾斜されているので、力の作用線と中心線とがより垂直に近づき、従来のサイクロイド歯形に比べてモーメント比率を向上させて100%に近づけることができる。
その上、各歯車の中心距離が負の方向にばらついた(近くなる)場合でも、従来に比べてモーメント比率の変動を小さくすることができ、性能を向上することができる。
【0019】
ここで、前記当接歯面部は、歯形形状が直線状とされ、かつこの当接歯面部は、その直線状の歯面における歯先側の端縁と歯車の回転中心とを結ぶ基準線よりも歯の内側に傾斜されていることが好ましい。
当接歯面部を直線状の歯形形状とすれば、カッター等による歯割りが容易に行うことができ、生産効率を向上できる。
【0020】
また、前記当接歯面部は、歯形形状が円弧状とされ、かつこの当接歯面部の円弧面の接線は、その接線の接点と歯車の回転中心とを結ぶ基準線よりも歯の内側に傾斜されているものでもよい。
当接歯面部を円弧状に形成すれば、歯元の厚みが大きくなるように形成することもでき、これにより歯割り加工時の強度を向上でき、かつ形状の精度も向上できる。
【0021】
この際、前記当接歯面部は、その歯形の接線を歯車の回転中心側に延長した歯形延長線が、歯車のピッチ円と同心円とされかつその直径がピッチ円直径の5〜20%である仮想円に接する角度に形成されていることが好ましい。この際、仮想円の直径は、ピッチ円直径の10〜15%がより好ましく、ピッチ円直径の11〜12%が特に好ましい。
【0022】
当接歯面部の傾斜角度は、その歯形延長線が歯車の回転中心を通る歯車に比べて、前記歯形延長線が接する仮想円の直径が大きくなるに従ってモーメント比率の変動を小さくでき、より100%に近づけることができる。特に、仮想円の直径がピッチ円の直径の約5%以上になるまでは、モーメント比率の改善度は大幅に上昇し、その後もピッチ円直径の11%前後になるまでは増加する。一方、仮想円の直径がピッチ円の直径の約11%以上になると、モーメント比率の値(改善度)も略一定となり、変化しない。
一方、歯形延長線が接する仮想円の直径が大きくなるに従って、特に当接歯面部の歯形形状が直線状の場合には、歯元の幅寸法が小さくなって強度が低下する。この強度を確保する点では、仮想円の直径はピッチ円直径の約20%以下であることが好ましい。
従って、仮想円直径をピッチ円直径の5〜20%の範囲にすれば、モーメント比率を改善でき、かつ歯元の強度も確保することができる。特に、仮想円の直径をピッチ円直径の10〜15%とすれば、モーメント比率の改善度をより向上でき、歯元強度も十分に確保できる点で好ましく、特に、ピッチ円直径の11〜12%が好ましい。
【0023】
また、前記各歯の当接歯面部が形成された歯面とは反対側の歯面の少なくとも一部分には、非当接歯面部が形成され、この非当接歯面部は、歯車の回転中心を通る歯の中心線を基準にした際に、前記当接歯面部と非対称となるように形成されていることが好ましい。
【0024】
歯の両歯面の各当接歯面部および非当接歯面部を非対称とすれば、当接歯面部を歯の内側に傾斜させた場合でも、非当接歯面部を例えば歯の外側に傾斜させることで、歯元の大きさ(幅寸法)を確保でき、歯元強度や歯割り時の曲げに対する強度を確保することができる。
【0025】
この際、前記非当接歯面部の接線は、その接線の接点と歯車の回転中心とを結ぶ第2基準線よりも歯の外側に傾斜されていることが好ましい。
このように構成すれば、当接歯面部を歯の内側に傾斜させた場合に、歯元の大きさ(幅寸法)を十分に確保でき、歯元強度や歯割り時の曲げに対する強度を容易に確保することができる。
【0026】
前記当接歯面部および非当接歯面部は、各歯形の接線を歯車の回転中心側に延長した各歯形延長線が、歯車のピッチ円と同心円とされた仮想円に接する角度にそれぞれ形成されていることが好ましい。
このように構成すれば、当接歯面部の傾斜角度と、非当接歯面部の傾斜角度とのバランスを向上でき、モーメント比率を向上できるとともに、歯元の大きさを確保して歯元強度や歯割り時の曲げに対する強度を確実に確保することができる。
【0027】
ここで、前記歯車は、スイスEVJ規格の歯車を基準に、その当接歯面部の接線を前記基準線よりも歯形の内側に傾斜させて構成されたピニオンであり、かつこの歯車に噛み合う大歯車はスイスEVJ規格の歯車であることが好ましい。
前記歯車を、サイクロイド歯形の一種であるスイスEVJ規格の歯車を基準に構成すれば、この歯車(ピニオン)にかみ合う歯車は、スイスEVJ規格の歯車をそのまま利用することができる。従って、一方の歯車は従来の歯車をそのまま利用でき、新たに製造するのはピニオンのみでよいため、コストを低減できるとともに、輪列の設計も容易に行うことができる。
【0028】
本発明の動力伝達装置は、前記歯車を含む複数の歯車で構成された動力伝達装置であって、前記歯車はピニオンであり、かつ増速輪列の被駆動歯車であることを特徴とするものである。
このような構成の動力伝達装置は、機械時計や電子制御式機械時計等の増速輪列に適用可能であり、互いにかみ合う歯車の中心距離が負にばらついた場合のモーメント比率の変動を従来の歯車を利用した場合に比べて小さくでき、動力の伝達性能を向上することができる。このため、伝達ロスの少ない高効率の動力伝達装置を提供することができる。
【0029】
また、本発明の動力伝達装置は、前記歯車を含む複数の歯車で構成された動力伝達装置であって、前記歯車はピニオンであり、かつ減速輪列の駆動歯車であることを特徴とするものである。
このような構成の動力伝達装置は、モーターなどからトルク伝達を行う減速輪列に適用可能であり、互いにかみ合う歯車の中心距離が負にばらついた場合のモーメント比率の変動を従来の歯車を利用した場合に比べて小さくでき、動力の伝達性能を向上することができる。このため、伝達ロスの少ない高効率の動力伝達装置を提供することができる。
【0030】
本発明の機器は、前記動力伝達装置と、この動力伝達装置に動力を加える駆動源とを備えることを特徴とするものである。
ここで、駆動源としては、複数の歯車からなる動力伝達装置に機械的エネルギーを供給できるものであればよく、例えば、ゼンマイ、ゴム、スプリング、重錘や、圧縮空気等の流体等の各種の機械的エネルギ源や、モーター等の電気的エネルギで作動されるものなどでもよい。要するに、動力源としては、手巻き、回転錘、位置エネルギ、気圧変化、風力、波力、水力、温度差、電力等の各種エネルギーを利用して動力伝達装置に動力を加えることができるものであればよい。
【0031】
このような本発明の機器においては、モーメント比率の変動が小さく、高効率の動力伝達装置を備えているので、機器の作動時の効率を向上でき、省エネルギー化が図れ、長時間作動可能な機器を提供することができる。
【0032】
この際、前記機器は、前記動力伝達装置で駆動される指針を備える計時装置であることが好ましい。
モーメント比率の変動が小さく、高効率の動力伝達装置を備えているので、特に腕時計などの小型の計時装置に適用すれば、省エネルギー化が図れ、長時間作動可能な時計を提供することができる。
【0033】
本発明の歯車の製造方法は、歯車において駆動する際に他の歯車の歯先に当たる当接歯面部が形成されるとともに、前記各歯の当接歯面部が形成された歯面とは反対側の歯面の少なくとも一部分に非当接歯面部が形成され、かつ前記当接歯面部の接線が、その接線の接点と歯車の回転中心とを結ぶ基準線よりも歯の内側に傾斜されている歯車の製造方法であって、前記当接歯面部および非当接歯面部を歯車回転中心側に延長した各歯形延長線の交差角度の2等分線に沿って、前記歯車の歯形を形成するカッターを進退させることで、歯車の歯切りを行うことを特徴とするものである。
【0034】
このような本発明によれば、正確な歯形形状を得ることができると共に、その歯切り作業を容易に行うことができ、生産効率も向上できる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の歯車を適用した電子制御式機械時計の要部を示す平面図である。
【0036】
電子制御式機械時計は、ゼンマイ、香箱歯車、香箱真及び香箱蓋からなる香箱車1を備えている。ゼンマイは、外端が香箱歯車、内端が香箱真に固定されている。香箱真は、地板と輪列受に支持され、角穴車4と一体で回転するように角穴ネジ5により固定されている。
角穴車4は、時計方向には回転するが反時計方向には回転しないように、こはぜ6と噛み合っている。なお、角穴車4を時計方向に回転しゼンマイを巻く方法は、機械時計の自動巻または手巻機構と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
香箱歯車の回転は、二番車107、三番車108、四番車109、五番車110、六番車111からなる増速輪列117を介して増速されて調速機120に伝達される。なお、香箱歯車の回転は7倍に増速され二番車107に伝達され、二番車107から三番車108へは8.0倍増速され、三番車108から四番車109へは7.5倍増速され、四番車109から五番車110へは3倍増速され、五番車110から六番車111へは10倍増速され、六番車111からロータ112へは10倍増速されている。
【0038】
増速輪列117の二番車107には筒かなが、筒かなには分針が、四番車109には秒針がそれぞれ固定されている。つまり、分針、秒針等の指針は、増速輪列117に結合されて輪列117の回転に伴い駆動される。
【0039】
電子制御式機械時計の調速機120は、磁石およびコイルからなる電磁ブレーキ式の調速機であり、具体的にはロータ112、ステータ115、コイルブロック116を備えて構成されている。
【0040】
ロータ112は、ロータ磁石112a、ロータかな112b、ロータ慣性円板112cから構成される。ロータ慣性円板112cは、香箱車1からの駆動トルク変動に対しロータ112の回転数変動を少なくするためのものである。
【0041】
コイルブロック116は、ステータの一部116cが一体とされた磁心116aにコイル116bを巻線したものである。ステータ115は、磁心116aの一部で構成されるステータ116cにロータ112を挟んで対向する側に配置され、ネジ121でコイルブロック116の他端および地板に固定されている。ここで、ステータ115と磁心116a、磁心116aに一体のステータ116cはPCパーマロイ等で構成されている。また、コイル116bは、出力電圧の変動を検出することでロータ112の回転数を検出するように構成されている。
【0042】
図2には、本実施形態の電子制御式機械時計の構成を示すブロック図が示されている。
電子制御式機械時計は、機械的エネルギ源としてのゼンマイ1aと、ゼンマイ1aのトルクを発電機120に伝達する増速輪列117と、増速輪列117に連結されて時刻表示を行う時刻表示装置である指針118とを備えている。
【0043】
発電機120は、増速輪列117を介してゼンマイ1aによって駆動され、誘起電力を発生して電気的エネルギを供給する。この発電機120からの交流出力は、整流回路125を通して昇圧、整流され、コンデンサ(蓄電装置)126に充電供給される。
【0044】
このコンデンサ126から供給される電力によってワンチップICで構成された回転制御装置150が駆動される。この回転制御装置150は、図2に示すように、発振回路151、ロータの回転検出回路152およびブレーキの制御回路153を備えて構成されている。
【0045】
発振回路151は、時間標準源である水晶振動子151Aを用いて発振信号(32768Hz)を出力し、この発振信号を所定の分周回路で分周し、基準信号fsとして制御回路153に出力している。
【0046】
回転検出回路152は、発電機120から出力される発電波形からロータの回転速度を検出し、その回転検出信号FG1を制御回路153へ出力する。
制御回路153は、基準信号fsに対する回転検出信号FG1の位相差等に基づいて発電機(調速機)120にブレーキ信号を入力し、調速している。
【0047】
本第1実施形態では、このような電子制御式機械時計において、各車107〜111およびロータ112のカナに本発明の歯車を適用している。従って、この電子制御式機械時計によって、増速輪列(動力伝達装置)を備えた機器が構成されている。
【0048】
すなわち、第1実施形態では、図18〜20に示すEVJ規格のサイクロイド歯形の歯車92を、本発明の歯形の歯車に変更したものである。
【0049】
第1実施形態の増速輪列117では、図3に示すように、駆動歯車(例えば、二番車107)としてスイスEVJ規格の大歯車10が用いられている。また、被駆動歯車(例えば、三番車108のカナ)としてスイスEVJ規格を改良した本発明に係るサイクロイド歯形の小歯車(ピニオン)20が用いられている。
なお、大歯車10の歯11の数は72枚、小歯車20の歯21の数は9枚、各歯車10,20の中心距離は3.30mmである。このように、大歯車10の歯数が小歯車20の歯数以上であるため、増速輪列となる。
【0050】
小歯車20の歯形形状において、大歯車10に当接する歯面部分には、歯形形状が直線状とされた当接歯面部22が形成されている。一方、当接歯面部22の反対側の歯面には、当接歯面部22と同様に歯形形状が直線状とされた非当接歯面部23が形成されている。
【0051】
当接歯面部22の延長線22Aは、図4に示す従来の小歯車30のように、歯車20の回転中心O2を通過するものでなく、歯面部22の接点でもある歯先側端縁22Bと歯車中心O2とを結ぶ第1基準線25よりも歯形の中心側(内側)に傾斜されている。すなわち、当接歯面部22の延長線22Aは、小歯車20のピッチ円と同心円とされた仮想円26に接する向きに傾斜されている。従って、当接歯面部22の歯元側は、基準線25よりも歯21の中心側(内側)に傾斜されている。
【0052】
なお、本実施形態では、前記仮想円26の直径は、0.08mmであり、ピッチ円の直径(0.73mm)の約11%の大きさである。
また、この直径0.08mmは、中心距離3.30mmに対しては約2.4%となる。さらに、小歯車20のモジュールMは0.08mmであり、前記直径0.08mmはモジュールMの約100%に相当する。
【0053】
また、非当接歯面部23は、その延長線23Aが当接歯面部22の延長線22Aと交差する点27が、前記仮想円26上となるように傾斜されている。
すなわち、非当接歯面部23の延長線23Aは、図4に示す従来の小歯車30のように、歯車30の回転中心O2を通過するものでなく、歯面部23の歯先側端縁23Bと歯車中心O2とを結ぶ第2基準線29よりも歯形の外側に傾斜されている。
【0054】
従って、図4に示す従来の小歯車30では、各歯面部22,23は、各基準線25,29と一致するように形成されるが、本実施形態の小歯車20では、当接歯面部22は第1基準線25よりも歯21の内側に傾斜され、非当接歯面部23は第2基準線29よりも歯21の外側に傾斜されている。
このため、小歯車30では、歯形の中心(歯21の歯先先端)と小歯車20の回転中心O2とを結ぶ中心線24に対し、当接歯面部22と非当接歯面部23とは対称とされているが、小歯車20では非対称とされている。
【0055】
このような本実施形態では、組立誤差等で大歯車10と小歯車20との中心距離が負の方向にばらついた場合に、例えば、かみ合い終わりにおいては、各歯11,21がかみ合う際に各歯11,21に加わる力の作用線101と、中心線105との交差角度α1は、小歯車30の場合の交差角度α2よりも大きくなり、力の作用線101は中心線105に対してより垂直に近い状態になる。この力の作用線101が中心線105に対して垂直に近いことは、モーメント比率が100%に近い状態となることであるから、本実施形態の小歯車20を用いると、小歯車30に比べてモーメント比率が改善されることになる。
【0056】
このかみ合い終わりのモーメント比率を、中心距離が「−0.01mm、−0.02mm、−0.03mm」とそれぞれ負の方向に減った場合の、従来の歯形と、本実施形態の歯形とで求めると、次の表1のようになる。
【0057】
【表1】
Figure 0003669273
【0058】
ここで、改善度は、次の数2で求められる
【数2】
Figure 0003669273
【0059】
また、中心距離が−0.03mm減少した場合の、かみ合い始めからかみ合い終わりまでのモーメント比率を、従来の小歯車30の歯形と本実施形態の小歯車20の歯形とで比較したグラフを図5に示す。このグラフから明らかなように、本発明の歯形の小歯車20を用いれば、従来の歯形の小歯車30に比べて、かみ合い始めからかみ合い終わりまでのモーメント比率の変動が小さく、かつ平均してより100%に近づいていることが分かる。
【0060】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1) 小歯車20の当接歯面部22を、従来の直線部よりも歯形内側に傾斜させたので、作用線101と中心線105とをより垂直に近づけることができ、モーメント比率を100%に近づけることができる。さらに、モーメント比率の変動を抑えることができ、特に、かみ合う各歯車10,20の中心距離が変動した場合でも、モーメント比率の変動を抑えることができ、トルクの伝達性能を高いレベルで維持することができる。
特に、図5や表1に示すように、本実施形態の歯形の小歯車20を用いれば、従来の歯形の小歯車30に比べて50%以上の改善がなされ、つまりモーメント比率の100%(目標値)に対する偏差を、従来の半分以下にすることができ、増速輪列においては、モーメント比率を大幅に改善することができる。
【0061】
(2) 中心距離の変動などが生じてもモーメント比率の変動幅が小さいため、特に各歯車10,20の配置精度を出しにくい、時計などの小型機器内に組み込まれる微小な歯車においてもトルク伝達性能の変動を抑えることができる。
さらに、増速輪列117に適用可能なので、特に、電子制御式機械時計等の腕時計のような小型の機器に組み込んだ場合に、それらの時計の精度を向上できる。
【0062】
(3) 電子制御式機械時計に小歯車20を有する増速輪列117を組み込んだ場合に、制動限界を超えてしまうようなトルクが加わることが無く、指針118の進みが発生することも防止できる。
また、この結果、発電機120を大きくして制動力を高める必要がないため、時計の小型化を実現でき、持続時間も長くすることができる。
【0063】
(4) モーメント比率が改善されるため、必要となるブレーキトルクも小さくすることができる。例えば、ある噛み合い部分でモーメント比率が117%から107%に減少すれば、ブレーキトルクは、107/117=0.9となり、約10%も小さな値で済む。特に、2番車107および三番車108の噛み合い部分のように、歯の噛み合い時間が長い輪列に適用すると、速い周期で噛み合うロータ側の輪列よりも、ブレーキトルクの低減効果が大きくなる点で有効である。
そして、本実施形態の電子制御式機械時計のように、6段の噛み合いがある場合には、すべての噛み合い部分でモーメント比率の高い状態が重なることが無くても、3段ぐらいの重なりは有ってもよいように設計する必要がある。
従って、すべての噛み合い部分で本発明の歯車を採用すれば、モーメント比率が高い状態で重なる3段の各噛み合い部分でのブレーキトルクを各々約10%低減できる。従って、全体としてブレーキトルクが約30%ほど小さい発電機120を採用でき、持続時間を約30%長くできる。現状の電子制御式機械時計では、持続時間は約45時間であるため、本実施形態では持続時間を約60時間に延長することができる。このため、例えば、金曜日の夜に時計を外しても、月曜日の朝にはまだ動いているため、現在の週休2日制のニーズにも十分対応できる。
【0064】
(5) 各歯車10,20の中心距離が変動してもモーメント比率の変動幅が小さく、100%に近い値にコントロールできるので、歯車10,20の滑りの発生、つまり摩耗を少なくでき、寿命を長くすることができる。
【0065】
(6) 歯21の当接歯面部22および非当接歯面部23を中心線24に対して非対称としたので、当接歯面部22を従来よりも歯21の内側に傾斜させていても、歯21の根元の幅寸法をある程度確保できる。歯21の歯元が細くなると、歯元の強度が不十分になり、加工時の曲がりが発生するが、本実施形態では、非当接歯面部23を従来の小歯車30よりも歯21の外側に傾斜させたので、歯元の幅寸法を確保でき、十分な強度が得られるため、加工時の曲がりの発生も防止できる。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態について、図6,7を参照して説明する。
前記第1実施形態では増速輪列に本発明を適用していたが、第2実施形態は、減速輪列に本発明を適用したものである。なお、前記第1実施形態と同一または同様の構成要素には同一符号を付し、説明を省略あるいは簡略する。
【0067】
第2実施形態の減速輪列では、駆動歯車として、前記第1実施形態と同じ歯形形状の小歯車(ピニオン)20が用いられている。また、被駆動歯車としてスイスEVJ規格を改良したサイクロイド歯形の大歯車10が用いられている。
大歯車10の歯数は72枚、小歯車20の歯数は9枚、中心距離は3.30mmであり、前記第1実施形態と同一のものである。
また、被駆動歯車である大歯車10の歯数が、駆動歯車である小歯車20の歯数以上であるため、減速輪列となる。
【0068】
第2実施形態の小歯車20の歯形形状においても、大歯車10に当接する歯面部分には、当接歯面部22が形成されている。一方、当接歯面部22の反対側の歯面には、非当接歯面部23が形成されている。
【0069】
この当接歯面部22の延長線22Aも、前記第1実施形態と同じく、歯車20の回転中心O2を通過するものでなく、前記仮想円26に接するように、第1基準線25よりも歯形の中心側(内側)に傾斜されている。
【0070】
なお、本実施形態においても、前記仮想円26の直径は0.08mmであり、ピッチ円の直径(0.73mm)の約11%である。従って、この直径0.08mmは、中心距離3.30mmに対しては約2.4%となる。さらに、歯車20のモジュールMは0.08mmであり、前記直径0.08mmはモジュールMの約100%に相当する。
【0071】
非当接歯面部23は、その延長線23Aが延長線22Aと交差する点27が前記仮想円26上となるように傾斜されている。このため、当接歯面部22と非当接歯面部23とは、中心線24に対して非対称とされている。
【0072】
このような本実施形態においても、組立誤差等で大歯車10と小歯車20との中心距離が負の方向にばらついた場合に、例えば、かみ合い始めにおいては、各歯11,21がかみ合う際に各歯11,21に加わる力の作用線101と、中心線105との交差角度α3は、図7に示す従来の小歯車30の場合の交差角度α4よりも大きくなり、力の作用線101は中心線105に対してより垂直に近い状態になる。この力の作用線101が中心線105に対して垂直に近いことは、モーメント比率が100%に近い状態となることであるから、減速輪列に小歯車20を用いた場合も、従来の小歯車30を用いた場合に比べてモーメント比率が改善されることになる。
【0073】
このかみ合い始めのモーメント比率を、中心距離が「−0.01mm、−0.02mm、−0.03mm」とそれぞれ負の方向に減った場合の、従来の歯形と、本実施形態の歯形とで求めると、次の表2のようになる。なお、改善度は、前記数2を用いて求められる。
【0074】
【表2】
Figure 0003669273
【0075】
このような本実施形態によれば、前述の表2に示すように、減速輪列において小歯車20、大歯車10の中心距離が負にばらついた場合でも、モーメント比率を改善することができる等、前記第1実施形態の(1)〜(6)と同じ作業効果を奏することができる。
【0076】
次に、本発明の歯車を製造する方法に関し、図8〜10を参照して説明する。前記各実施形態の小歯車20と同様に、当接歯面部22が第1基準線25よりも歯21の内側に傾斜された歯車40を製造するにあたって、歯車40の歯形形状をシングルカッターで歯割りする場合、図9に示すように、従来と同様に、歯21の歯先から0.5ピッチずらした位置から、カッター50を小歯車20の中心に向かって移動すると、カッター50と歯形形状が干渉してしまい、正確な歯形形状を生成することができない。
【0077】
そこで、図10に示すように、カッター50の移動方向が、当接歯面部22(延長線22A)および非当接歯面部23(延長線23A)の二等分線51になるように、偏差量L3分だけオフセットさせ、かつ二等分線51に沿ってカッター50を移動させて歯割りを行うことで、正確な歯形形状を容易に得ることができる。なお、前記実施形態の小歯車20も同じ方法で製造すればよい。
このような製造方法を採用することにより、本発明の歯車20,40の製造効率を向上でき、コストも低減することができる。
なお、本実施形態では、シングルカッターを利用していたが、ホブカッターを利用して歯割りする場合も同様の方法で行えばよい。
【0078】
なお、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は、本発明に含まれるものである。
【0079】
例えば、小歯車20の当接歯面部22の傾斜角度は、前記各実施形態のものに限らない。例えば、前記各実施形態では、当接歯面部22の延長線22Aが直径0.08mm(ピッチ円直径の11%)の仮想円26に接するように傾斜角度を設定していたが、当接歯面部22の接する仮想円26の直径を、例えばピッチ円直径の5〜15%(約0.04〜0.11mm)程度になるように、当接歯面部22の傾斜角度を設定してもよい。
要するに、少なくとも、当接歯面部22の歯先側端縁22Bと小歯車20の中心O2とを結ぶ直線(第1基準線25)よりも、当接歯面部22の歯元側端部が歯21の内側に位置するように傾斜されていればよい。
【0080】
但し、その傾斜角度が第1基準線25に近くなるほど、モーメント比率の改善効果が低下するので、仮想円26の直径をピッチ円の5%以上に設定することが好ましい。
図11,12には、第1,2実施形態において、仮想円26の直径つまり当接歯面部22の傾斜角度を変化させた際のモーメント比率の改善度の変化が示されている。
この図11,12は、各歯車10,20の中心距離が設計値と相違したときのモーメント比率の改善度を示すグラフである。具体的には、各歯車10,20の中心距離が、中心距離の設計値に対して−0.01mmの場合、−0.02mmの場合、−0.03mmの場合、つまり、設計値よりも中心距離が短くなった場合の各々の改善度を示すグラフである。ここで、縦軸は改善度で、数2に基づくものであり、基準線に直線が揃う場合の歯形(図4に示す従来の小歯車)からの改善の度合いを示すものである。横軸は仮想円26の半径である。
【0081】
これらのグラフから分かるように、中心距離のばらつきによって多少相違するが、仮想円26の直径が0.04mm(ピッチ円直径の約5%)ぐらいになると、モーメント比率が大幅に改善され、その後、0.08mm(ピッチ円直径の約11%)になるまで改善度が向上し、0.08mm以上になると改善度が略一定となることが分かる。
従って、歯形延長線22Aが接する仮想円26の直径が大きくなるに従って、歯元の幅寸法が小さくなって強度が低下する点も考慮すると、仮想円26の直径は、ピッチ円直径の5〜20%であることが好ましく、10〜15%であることがより好ましく、11〜12%であることが特に好ましい。
要するに、当接歯面部22の傾斜角度は、モーメント比率の改善度合いと、歯元強度とのバランスを考慮して適宜設定すればよい。
【0082】
また、前記実施形態では、当接歯面部22と非当接歯面部23とを中心線24に対して非対称としていたが、図13に示す歯車60のように、中心線24に対して対称に形成してもよい。
【0083】
このような歯車60によっても、前記実施形態の効果(6)以外の効果を奏することができる。
さらに、各歯面部22,23が対称であれば、カッター50を用いた際に、従来と同様に、歯車60の中心O2に向かってカッター50を移動すればよい点で、製造効率がより一層簡単にできるとともに、歯車60が両方向に回転する場合に、共にモーメント比率を改善できるという利点がある。
【0084】
また、前記実施形態では、当接歯面部22は、歯形形状が直線状とされていたが、図14に示すように、当接歯面部22の歯形形状を、円弧状に形成してもよい。また、円弧状の場合には、図14に示すように、当接歯面部22が歯21の内側に凹むような凹状円弧でもよいし、逆に凸状円弧でもよい。さらには、当接歯面部22が、凹状円弧、凸状円弧、直線を組み合わせた形状で形成されていてもよい。要するに、歯面部22の接線が、その接線の接点22Bと歯車20の回転中心O2とを結ぶ基準線25よりも歯21の内側に傾斜され、これにより、各歯11,21に加わる力の作用線と中心線との交差角度α1,α3,α5が従来の角度α2,α4よりも大きくなるように構成されていればよい。
【0085】
なお、図14に示すように、当接歯面部22が凹状円弧形状とされていれば、噛み合いに関与しない歯元部分の厚み(幅寸法)を大きくできる。このため、歯割り加工時の強度を高めることができ、形状の精度をより向上できる。
【0086】
本発明は、前記各実施形態のような平歯車に適用する場合に限らず、はすば歯車、やまば歯車等のねじれ角を有する歯車などの各種歯車に広く適用することができる。
【0087】
さらに、本発明の歯車の用途としては、電子制御式機械時計の輪列に限らず、機械時計の輪列に適用してもよい。機械時計に適用すれば、前記実施形態と同様の効果が得られる他、従来のように、トルクの伝えすぎによるテンプの振り角変動が無く、振り当たりなどによる時間精度の低下を抑え、指針の遅れも防止することができる。
【0088】
また、本発明の歯車の用途としては、時計用の輪列に限らず、その他の各種の動力伝達装置の歯車として利用可能である。また、この歯車を備えた動力伝達手段を有する機器としても、時計に限らず、オルゴール、玩具等に適宜利用可能である。特に、本発明では、歯車の中心距離が変動しても、モーメント比率の変動を抑えることができるため、特に中心距離の精度を保つことが難しい小型の歯車を用いた動力伝達装置や、この動力伝達装置を用いた機器に適している。また、前記第1、2実施形態のように、本発明の歯車は、増速輪列、減速輪列のいずれでも利用できるが、特に、表1、図11に示すように、改善度を大幅に向上できる点で、増速輪列に用いることがより効果的である。
【0089】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の歯車、この歯車を備えた動力伝達装置、この動力伝達装置を備えた機器によれば、互いにかみ合う各歯車の中心距離が負の方向にばらついた場合でも、モーメント比率の変動を抑えることができて性能を向上できるという効果がある。
【0090】
また、本発明の歯車の製造方法によれば、前記歯車を容易に製造できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における歯車を適用した電子制御式機械時計の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の電子制御式機械時計の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態における歯車を示す図である。
【図4】第1実施形態に対する従来例の歯車を示す図である。
【図5】第1実施形態の歯車と従来例の歯車のモーメント比率の変化を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態における歯車を示す図である。
【図7】第2実施形態に対する従来例の歯車を示す図である。
【図8】本発明の歯車の製造方法によって製造された歯車を示す図である。
【図9】本発明の歯車の製造方法と比較される製造方法を示す図である。
【図10】本発明の歯車の製造方法を示す図である。
【図11】第1実施形態の改善度の変化を示す図である。
【図12】第2実施形態の改善度の変化を示す図である。
【図13】本発明の変形例の歯車を示す図である。
【図14】本発明の他の変形例の歯車を示す図である。
【図15】モーメント比率の説明図である。
【図16】従来のインボリュート歯車のかみ合いを示す図である。
【図17】従来のインボリュート歯車のかみ合いを示す図である。
【図18】従来のサイクロイド歯車のかみ合いを示す図である。
【図19】従来のサイクロイド歯車のかみ合いを示す図である。
【図20】従来のサイクロイド歯車のかみ合いを示す図である。
【図21】従来のインボリュート歯車とサイクロイド歯車のモーメント比率を示す図である。
【符号の説明】
1 香箱車
1a ゼンマイ
10 大歯車
11 歯
20 小歯車
21 歯
22A 延長線
22A 歯形延長線
22B 歯先側端縁
22 当接歯面部
23A 延長線
23B 歯先側端縁
23 非当接歯面部
24 中心線
25 第1基準線
26 仮想円
27 点
29 第2基準線
30 小歯車
40 歯車
50 カッター
51 二等分線
60 歯車
81 駆動歯車
82 被駆動歯車
91 駆動歯車
92 被駆動歯車
101,102 作用線
105 中心線
107 二番車
108 三番車
109 四番車
110 五番車
111 六番車
112 ロータ
117 増速輪列
118 指針
120 発電機
150 回転制御装置
151 発振回路
152 回転検出回路
153 制御回路

Claims (13)

  1. 歯車において駆動する際に他の歯車の歯先が当たる当接歯面部は、その歯面の接線が、その接線の接点と歯車の回転中心とを結ぶ基準線よりも歯の内側に傾斜されるように形成されていることを特徴とする歯車。
  2. 請求項1に記載の歯車において、
    前記当接歯面部は、歯形形状が直線状とされ、かつこの当接歯面部は、その直線状の歯面における歯先側の端縁と歯車の回転中心とを結ぶ基準線よりも歯の内側に傾斜されていることを特徴とする歯車。
  3. 請求項1に記載の歯車において、
    前記当接歯面部は、歯形形状が円弧状とされ、かつこの当接歯面部の円弧面の接線は、その接線の接点と歯車の回転中心とを結ぶ基準線よりも歯の内側に傾斜されていることを特徴とする歯車。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の歯車において、
    前記当接歯面部は、その歯面の接線を歯車の回転中心側に延長した歯形延長線が、歯車のピッチ円と同心円とされかつその直径がピッチ円直径の5〜20%である仮想円に接する角度に形成されていることを特徴とする歯車。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の歯車において、
    前記各歯の当接歯面部が形成された歯面とは反対側の歯面には、非当接歯面部が形成され、
    この非当接歯面部は、歯車の回転中心を通る歯の中心線を基準にした際に、前記当接歯面部と非対称となるように形成されていることを特徴とする歯車。
  6. 請求項5に記載の歯車において、
    前記非当接歯面部の接線は、その接線の接点と歯車の回転中心とを結ぶ第2基準線よりも歯の外側に傾斜されていることを特徴とする歯車。
  7. 請求項6に記載の歯車において、
    前記当接歯面部および非当接歯面部は、各歯形の接線を歯車の回転中心側に延長した各歯形延長線が、歯車のピッチ円と同心円とされた仮想円に接する角度にそれぞれ形成されていることを特徴とする歯車。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の歯車において、
    前記歯車は、スイスEVJ規格の歯車を基準に、その当接歯面部の接線を前記基準線よりも歯形の内側に傾斜させて構成されたピニオンであり、かつこの歯車に噛み合う大歯車はスイスEVJ規格の歯車であることを特徴とする歯車。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の歯車を含む複数の歯車で構成された動力伝達装置であって、
    前記歯車はピニオンであり、かつ増速輪列の被駆動歯車であることを特徴とする動力伝達装置。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の歯車を含む複数の歯車で構成された動力伝達装置であって、
    前記歯車はピニオンであり、かつ減速輪列の駆動歯車であることを特徴とする動力伝達装置。
  11. 請求項9または請求項10に記載の動力伝達装置と、この動力伝達装置に動力を加える駆動源とを備えることを特徴とする機器。
  12. 請求項11に記載の機器は、前記動力伝達装置で駆動される指針を備える計時装置であることを特徴とする機器。
  13. 歯車において駆動する際に他の歯車の歯先に当たる当接歯面部が形成されるとともに、前記各歯の当接歯面部が形成された歯面とは反対側の歯面の少なくとも一部分に非当接歯面部が形成され、かつ前記当接歯面部の歯面の接線が、その接線の接点と歯車の回転中心とを結ぶ基準線よりも歯の内側に傾斜されている歯車の製造方法であって、
    前記当接歯面部および非当接歯面部の各接線を歯車回転中心側に延長した各歯形延長線の交差角度の2等分線に沿って、前記歯車の歯形を形成するカッターを進退させることで、歯車の歯切りを行うことを特徴とする歯車の製造方法。
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