JP3668498B2 - X線イメージ管、およびこれに使用するx線イメージ管用アルミニウム合金材の製造方法 - Google Patents

X線イメージ管、およびこれに使用するx線イメージ管用アルミニウム合金材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、低エネルギーX線の撮影に好適なX線イメージ管、およびこのX線イメージ管に使用するアルミニウム合金材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線イメージ管は、X線診断装置などにおいて被写体のX線透過像を得るために使用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
X線イメージ管の入力窓を構成する材質としては、当然のことながらX線をよく透過すること、および、X線の散乱の少ないことが要求される。
【0004】
また、X線イメージ管は内部が真空のため、入力窓もそれに耐える強度が要求される。更にコスト的にも、X線イメージ管を構成する他の部品とのバランスが求められる。
【0005】
このような条件を満たす入力窓の材質としては、これまでアルミニウムやチタニウムが用いられている。
【0006】
ところでX線イメージ管は、現在、医療診断や工業用(例えば非破壊検査)などの分野で広く利用されている。X線イメージ管は動きのあるX線の像をリアルタイムで可視光の像に変換できること、被曝線量がフイルムを使用したシステムと比較して低減できることなど優れた特徴があり、その応用範囲も広範になっている。
【0007】
また医療診断の分野では、近年、乳ガンの診断にX線イメージ管を使用することが検討されている。乳ガンの診断は軟組織の検査であるため、比較的低いエネルギーのX線、例えば約20KVから40KVのX線管電圧によって発生したX線が使用される。
【0008】
工業用(例えば非破壊検査)の分野でも、紙や樹脂でできた製品の検査にやはり低いエネルギーのX線の使用が検討されている。
【0009】
低いエネルギーのX線を使用するとき、X線イメージ管を構成する入力窓のX線に対する透過率が問題となる。
【0010】
X線に対する透過率は、入力窓の材質や厚さ、そしてX線のエネルギーによって決定される。X線のエネルギーが高いほど透過率は高くなり、窓の厚さが小さいほど透過率は高い。また一般に原子番号の小さい元素ほど透過率は高くなる。ところで、X線イメージ管の入力窓として使用されているアルミニウムやチタニウムのX線の透過率は、図8に示すような値である。図8において、縦軸はX線透過率(単位は%)、横軸はX線エネルギー(単位はKV)をそれぞれ示し、点線aがアルミニウム(厚さ1mm)、実線bがチタニウム(厚さ250μm)の場合を示している。
【0011】
入力窓の材料としてチタニウムを使用する場合、実用上十分なX線の透過率を得るためには、厚さは250μm程度に抑える必要がある。この程度の薄い材料は、管内が真空であるため大気圧との差により、完成後のX線イメージ管の入力窓部は凹形の外観構造を有している。また、チタニウム製の入力窓をX線イメージ管に組み込む際は、入力窓とステンレス製のリングとをスポット溶接などで接合する。このステンレス製のリングは、さらにFe−Ni−Co合金製リングと溶接され、Fe−Ni−Co合金製リングは、外囲器の一部であるガラス容器と接合される。
【0012】
一方、入力窓の材料としてアルミニウムを使用する場合、入力窓はステンレス製のリングと、一定の温度、一定の圧力の下で溶接される。しかし、アルミニウムは機械的な強度がチタニウムより弱いため、厚さは約1mmに、また大気圧に耐えるように入力窓の外面は凸形の構造にしている。
【0013】
図8に示すように、20KeV〜40KeV程度の低いエネルギーのX線に対してはアルミニウムの方が透過率は高い。したがって、X線のエネルギーが低い場合は、入力窓の材料としてはチタニウムよりアルミニウムの方が適している。
【0014】
ところで、アルミニウム材料には、そこに含まれる不純物の種類や量、さらにその処理条件によって、いろいろな種類があり、また機械的、熱的特性も異なっている。
【0015】
アルミハンドブックなどの文献によるとアルミニウムの材料は次のように分類される。なお型名A.A.は、The Aluminium Association,Inc.にて制定されたものを指している。
【0016】
A.A.1000番系:純アルミ。純度が99%以上のアルミ。
【0017】
加工性、耐蝕性、溶接性に優れているが、強度が低い。
【0018】
A.A.2000番系:Al- Cu系合金。ジュラルミン。
【0019】
強度は高いが耐蝕性に劣る。
【0020】
A.A.3000番系:Al- Mn系合金。
【0021】
1000番系に対しMnを添加し強度を少し増加させた。
【0022】
A.A.4000番系:Al- Si系合金。
【0023】
Siの添加によって耐磨耗性、耐熱性を向上させた。
A.A.5000番系:Al- Mg系合金。
【0024】
強度が高い。
【0025】
A.A.6000番系:Al- Mg- Si系合金。
【0026】
強度、耐蝕性とも良好。
【0027】
A.A.7000番系:Al- Zn- Mg系合金。
【0028】
アルミ合金ではもっとも強度が高いが、加工性に劣る。
【0029】
ここで、X線イメージ管の入力窓を構成する材質に必要な条件として、以下のものが挙げられる。
【0030】
(a)大気圧に耐える強度を有すること。
【0031】
(b)大気圧に耐える強度は室温だけでなく、X線イメージ管の製造工程の一つである排気工程におけるベーキング温度(200℃〜400℃)でも大気圧に耐える強度を有すること。
【0032】
(c)十分な耐蝕性を有すること。
【0033】
(d)入力窓を凸形にするため加工性がよいこと。
【0034】
このような条件を満たすアルミニウム材料は、A.A.5000番系か6000番系であり、これらの材料が実際に使用されている。
【0035】
入力窓は、前述したようにX線イメージ管の製造工程の中でステンレス製のリングと接合される。
【0036】
この場合、入力窓を構成するアルミニウム材とステンレス製のリングとを400℃以上の温度で、圧力をかけて接合する。この接合は、高い温度と圧力のもとで、アルミニウム材とステンレスの分子が相互に相手の中に拡散することによって行われる。このとき、アルミニウム材の温度が高いため、アルミニウム材の内部で変化が生じる。例えばA.A.6000番系のアルミニウム材の場合、接合する際の高温状態から温度が下降する過程、そして、250℃付近でのベーキング過程でMgSi系の析出物が生じる。
【0037】
この状態を図9(a)、(b)を参照して説明する。
【0038】
アルミニウムを高温に保持すると、通常、図9(a)に示すようにAl結晶粒が粗大化して粗粒21となり、高温からの冷却途中において(特にA.A.6000番系では)、図9(b)に示すように、結晶粒界にMgSi相22が析出する。このMgSi相22の析出物はX線の透過率がアルミニウムと異なる。析出物とアルミニウムとのX線の透過率の相違は、X線のエネルギーが50KV以上の場合は、その差が小さく問題にならない。
【0039】
しかし、両者のX線の透過率の差は、X線のエネルギーが30KV以下になると大きくなる。その結果、均一なX線が入力窓に入射しても析出物のあるところとないところでX線を透過する量が異なる。
【0040】
したがって、析出物が生じたアルミニウム材を加工して入力窓にすると、析出物の存在が原因となって、X線イメージ管で生成する可視光の像に析出物の分布に応じた斑(むら)が発生する。
【0041】
また、A.A.5000番系のアルミニウム材においては、高温状態でアルミニウムの再結晶が起こり、アルミニウム材の内部でアルミニウムの粗大結晶粒が生じる。アルミニウムの粗大結晶粒はその周辺のアルミニウムと結晶の方位が異なる。
【0042】
したがって、X線の入射方向によってX線の回折条件が相違し、X線の透過率に差が生じる。この場合もX線のエネルギーが小さくなると、粗大結晶粒がある部分とない部分とで、6000番系のアルミニウム材の場合と同様にX線の透過率に大きな差が生じる。
【0043】
ここでアルミニウムの厚さをtとすると、X線の透過率Tは、
=exp(ーμt
で表わせる。
【0044】
またアルミの厚さをtとすると、X線の透過率Tは、
=exp(ーμt
となる。
【0045】
したがって両者の透過率の比は、T/T=exp[μ(tーt)]となる。
【0046】
ここでμは、X線のエネルギーに対応した透過係数である。
【0047】
なおt>tとすると、μ(tーt)は正となり、T/T>1となる。またμはX線のエネルギーが小さいと大きくなるので、T/TはX線のエネルギーが小さくなると大きくなる。即ち、X線のエネルギーが小さいほど透過率の差が大きくなり、このことがX線イメージ管で生成される可視光の像に斑(むら)を発生するものと考えられる。
【0048】
近年は画像処理装置が広く使用され、その際、わずかなX線の透過率の差も強調されたものになる。
【0049】
そのため、上述のように析出物や粗大結晶粒に起因すると考えられる生成画像の斑(むら)は、今後、より大きな障害となる可能性が高い。
【0050】
本発明の目的は、低いエネルギーのX線を用いても、斑(むら)のない良好な画像を得ることができるX線イメージ管、およびこれに使用するアルミニウム合金材とその製造方法を提供することにある。
【0051】
【課題を解決するための手段】
本発明のX線イメージ管は、アルミニウム基合金からなる入力窓を有する外囲器と、この外囲器内に入力窓に対向して配置され、基板、およびこの基板上に形成された入力蛍光体層、この入力蛍光体層上に形成された光電面からなる入力蛍光面とを具備し、前記アルミニウム基合金は、3〜6重量%のMg、および0.01〜0.5重量%のZrを含んでいる。
【0052】
また、前記アルミニウム基合金は、4〜5重量%のMgおよび0.05〜0.2重量%のZrを含んでいる。
【0053】
また、前記アルミニウム基合金は、0.1〜1重量%のMn、および0.01〜0.5重量%のCr、0.01〜0.5重量%のSc、0.01〜0.05重量%のTiからなる群から選ばれた金属元素の少なくとも1種を更に含んでいる。
【0054】
また、前記アルミニウム基合金は、平均直径0.01〜0.05μmの金属間化合物を5個/μm以上含んでいる。
【0055】
また、本発明のX線イメージ管は、アルミニウム基合金からなる入力窓を有する外囲器と、この外囲器内に入力窓に対向して配置され、基板、およびこの基板上に形成された入力蛍光体層、この入力蛍光体層上に形成された光電面からなる入力蛍光面とを具備し、前記アルミニウム基合金は、3〜6重量%のMg、および、0.01〜0.5重量%のZr、0.1〜0.4重量%のFe、0.05〜0.2重量%のSi、0.1〜1重量%のMnを含んでいる。
【0056】
また、本発明のX線イメージ管に使用されるアルミニウム合金材は、3〜6重量%のMgおよび0.01〜0.5重量%のZrを含み、残部は不純物からなり、不純物のFeとSiが、Fe≦0.4重量%、Si≦0.2重量%で、X線透過量が実質的に均一である。
【0057】
また、前記アルミニウム合金材は、0.1〜1重量%のMn、および、0.01〜0.5重量%のCr、0.01〜0.5重量%のSc、0.01〜0.05重量%のTiからなる群から選ばれた少なくとも1種を含んでいる。
【0058】
また、前記アルミニウム合金材は、平均直径が0.01〜0.05μmの金属間化合物を、5個/μm以上含んでいる。
【0059】
また、前記アルミニウム合金材の製造方法は、3〜6重量%のMgおよび0.01〜0.5重量%のZrを含み、あるいは、更に0.1〜1重量%のMn、および0.01〜0.5重量%のCr、0.01〜0.5重量%のSc、0.01〜0.05重量%のTiからなる群から選ばれた金属元素の少なくとも1種を含み、残部はAlと不純物とからなり、不純物のFeとSiが、Fe≦0.4重量%、Si≦0.2重量%であるアルミニウム合金鋳塊を、400〜530℃で1〜20時間の均質化処理を施し、常法で熱間圧延を行い、その後、冷間圧延を行いまたは行わずに、再結晶をさせるための熱処理をし、加工度10%以上の最終冷間圧延を行うことを特徴としている。
【0060】
【作用】
本発明のX線イメージ管では、入力窓の材質として、3〜6重量%、好ましくは4〜5重量%のMg、および0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%のZrを含むアルミニウム基合金を使用する。
【0061】
Mgは、本発明に使用されるアルミニウム基合金の最も基本的な添加元素で、強度の増加に寄与する役割を果たす。Mgの添加量が3重量%未満では、250℃における材料強度が120MPa以下となり、入力窓の厚みを0.8mm以下とするために必要な強度が得られない。Mgの添加量が6重量%を越えると、熱間圧延時にアルミニウム基合金が割れやすくなり、工業化が困難である。
【0062】
Zrは、アルミニウム基合金の均質化処理時に、AlZr相として均一かつ微細に析出し、拡散接合時の高温保持中に結晶粒が粗大化することを抑制する役割を果たす。Zrの添加量が0.01重量%未満では、このような役割を果たすことができない。Zrの添加量が0.5重量%を越えると、AlZr相の粗大化合物を形成しやすくなり、X線イメージ管に使用した場合に、得られる可視光線に濃淡むらが生じる。この濃淡むらは、被写体の欠陥と見誤る恐れがある。
【0063】
本発明に使用されるアルミニウム基合金は、添加成分として、更にMn、Cr、Sc、Tiの1種または2種以上を含有してもよい。
【0064】
Mnは、Mgと同様に強度の増加に寄与する。また、Zrと同様に、拡散接合時の高温状態で結晶粒が粗大化することを抑制する効果も有する。MnをZrと併用することにより、Zrだけの場合よりも、一層、結晶粒の粗大化を抑制できる。Mnの添加量は、0.1〜1.0重量%、好ましくは0.3〜0.6重量%である。0.1重量%未満では、その効果を発揮することができず、1.0重量%を越えると、熱間圧延時にアルミニウム基合金が割れやすくなり、工業化が困難である。また、1.0重量%を越えると、造塊時に不純物であるFeと結合して、Al−Fe−Mn系の粗大化合物が形成されやすくなり、X線イメージ管に使用した際に、得られる可視光像に濃淡むらが生じる。この濃淡むらは、被写体の欠陥と見誤る恐れがある。
【0065】
Crは、Zrと同様、アルミニウム基合金の均質化処理時に、AlCr相として均一かつ微細に析出し、拡散接合時の高温状態で結晶粒の粗大化を抑制する効果を有する。ただし、AlCr相はAlZr相よりも粗大化しやすい。Crの添加量は、0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%である。0.01重量%未満では、その効果を発揮することができず、0.5重量%を越えると、AlCr相の粗大化合物を形成しやすくなる。したがって、X線イメージ管に使用すると、得られる可視光像に濃淡むらが生じ、この濃淡むらを、被写体の欠陥と見誤る恐れがある。
【0066】
Scは、Zr、Crと同様、アルミニウム基合金の均質化処理時に、AlSc相として均一かつ微細に析出し、拡散接合時の高温状態で結晶粒の粗大化を抑制する。Scの添加量は、0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%である。0.01重量%未満では、その効果を発揮することができず、0.5重量%を越えると、AlSc相の粗大化合物を形成しやすくなり、X線イメージ管に使用した場合、得られる可視光像に濃淡むらが生じる。この濃淡むらは、被写体の欠陥と見誤る恐れがある。また、Scは高価なため、0.5重量%を越えると製造コストが高くなる。
【0067】
Tiは、鋳塊組織における結晶粒を微細にする効果がある。また、熱間圧延時に結晶粒径を均一にする効果もある。Tiの添加量は、0.01〜0.05重量%、好ましくは0.01〜0.03重量%である。0.01重量%未満では、その効果を発揮することができず、0.05重量%を越えると、AlTi相の粗大化合物を形成しやすくなり、X線イメージ管に使用した場合、得られる可視光像に濃淡むらが生じる。この濃淡むらは、被写体の欠陥と見誤る恐れがある。
【0068】
本発明に使用されるアルミニウム基合金は、0.1〜0.4重量%のFe、0.05〜0.2重量%のSiを含有してもよい。これらFe、Siは、通常、アルミニウム地金中に含まれる不純物である。Feが0.4重量%を越えると、Al−Fe−Mn系の粗大化合物が形成されやすくなり、好ましくない。Feの量は少ない方がよいが、そのためにはAl地金の純度を上げなければならず、製造コストが上昇する。したがって0.1重量%が下限である。
【0069】
Siが0.2重量%を越えると、MgSi相が不均一に析出しやすくなり、X線イメージ管に使用したとき、得られる可視光像に濃淡むらが生じる。Feの場合と同様、Siの量は少ない方がよいが、そのためにはAl地金の純度を上げなければならず、製造コストが上昇する。したがって0.1重量%が下限である。
【0070】
本発明のX線イメージ管の入力窓を構成するアルミニウム基合金は、通常、均質化処理が施される。均質化処理は、遷移元素系金属間化合物(AlZr、AlCr、AlSc)の分散状態を制御するために行われる。
【0071】
均質化処理の温度は、400〜530℃が好ましい。400℃未満では、上記金属間化合物の析出速度が遅くなり、目標とする分散状態に達するまでに長時間を要し、工業的に不利である。530℃を越えると、上記金属間化合物が粗大化しやすくなり、Al結晶粒の粗大化を抑制する効果が低下し、また、Mg濃度が高い場合は、均質化処理の際に共晶融解が発生し、熱間圧延時に割れやすくなり、好ましくない。
【0072】
均質化処理の温度が400〜530℃の範囲である場合は、保持時間は1〜20時間が好ましい。保持時間が1時間未満では、遷移元素系金属間化合物の分散状態を所望の状態にすることができず、拡散接合時に、Al結晶粒の粗大化の抑制が困難となる。保持時間が20時間を越えると、工業的に不利であるだけでなく、上記金属間化合物の粗大化を招き、好ましくない。
【0073】
遷移元素系金属間化合物の分散状態は、均質化処理の条件によって制御される。拡散接合時(530℃以下で1時間以内の熱処理)に、Al結晶粒の粗大化を抑制するには、0.01〜0.05μmのサイズの化合物が1μm当たり5個以上あればよい。5個未満の場合には、拡散接合時にAlの結晶粒径が100μm以上となってしまい、X線イメージ管に使用した場合に、得られる可視光像に濃淡むらが生じやすい。
【0074】
本発明に使用されるアルミニウム基合金の結晶粒径は、100μmを越えると、可視光像に濃淡むらが生じやすくなり、好ましくない。結晶粒径が30μm以下であれば、このような問題は全く生じない。
【0075】
【実施例】
以下、図1を参照して、本発明のX線イメージ管を使用するX線診断装置について説明する。
【0076】
図1において、X線管1から放射されるX線2は被写体3を透過する。被写体3を透過したX線2は、X線イメージ管を構成する外囲器の入力窓4を通して入力基板5に入射する。なおX線イメージ管の入力窓4は金属製であり、また、入力基板5の上には、X線を光に変換する入力蛍光体層6と、光を電子に変換する光電面7とが構成されている。
【0077】
光電面7から放射された電子は、電極8により形成される電子レンズによって加速、集束され、出力蛍光体層9に達する。そして、出力蛍光体層9において可視光に変換される。この可視光をフイルムやTVカメラなどで撮影し、X線診断が行われる。
【0078】
図2は、X線イメージ管の入力窓の部分を抜き出して示したもので、参照符号10はX線イメージ管の入力窓を示し、ステンレス製のリング11に接合されている。
【0079】
ここで入力窓10の材料として、A.A.5000番のグループのAl- Mg系合金中に重量比で0.15重量%のCr、および0.15%のZrを添加したアルミニウム基合金を用いている。このアルミニウム基合金からなるアルミニウム材は、予め20%程度引き伸ばした平板なものが用いられ、図のように凸形に加工される。
【0080】
アルミニウム材が、0.15重量%のCr、および0.15重量%のZrを含むため、これら含有物による析出物が材料の中に分散する。これら含有物による析出物は、アルミニウム材の入力窓がステンレス製のリングと接合されるときに、400〜500℃の高温状態にさらされるが、そのとき、アルミニウム材の内部に発生するアルミニウム結晶の粗大粒化を抑えるように作用する。したがって、このアルミニウム材を入力窓に使用しても、アルミニウムの粗大結晶粒の成長が抑えられ、X線の透過率に不均一さが生じない。
【0081】
この状態を図9(b)を参照して説明する。Al−Mg系合金にZr等を添加すると、高温状態でも、AlZrの微細析出物23によってAl結晶粒21の粗大化が抑制される。このため、斑(むら)が生じにくくなる。
【0082】
この理由を図3を参照して説明する。
【0083】
図3は、縦軸(左)をAl結晶粒の粗大化、縦軸(右)を金属間化合物の粗大化とした場合の相関を示すグラフである。
【0084】
このグラフから明らかなように、Al結晶粒の粗大化しやすさ(実線)は、Zr添加量(重量%)が0.01%未満で大きくなり、溶接時などAl結晶粒が粗大化しやすくなる。
【0085】
一方、アルミニウム材中のZr添加量(重量%)が0.5%を越えると、AlZr相などの金属間化合物の粗大化が大きくなり好ましくない。
【0086】
また、アルミ材をX線イメージ管の入力窓として加工する工程で、大気圧に耐える構造となるように、アルミニウム材を凸形にプレス加工、あるいは絞り加工している。この加工の際に、アルミニウム材は約20%引き伸ばされる。ところで、アルミニウム材はその引き伸ばされる度合いによって、高温状態での粗大結晶粒の発生のしやすさが相違する。
【0087】
アルミニウム材を引き伸ばすと、その材料中に内部歪みが蓄積する。この内部歪みが蓄積する密度は、引き伸ばされる度合いが大きいほど高くなる。
【0088】
歪み量が十分小さいときは、アルミニウムの内部における粗大結晶粒の発生にそれほど影響はない。しかし歪み量が高くなると、良く知られているように粗大結晶粒の発生が促進される。粗大結晶粒の発生は、引き伸ばされる度合いが20〜30%で最大となり、それ以上になると低下する。
【0089】
したがって、X線イメージ管の入力窓にアルミニウム材を使用する場合、アルミニウム材を凸形の面に加工すると、その際、約20%の引き伸ばしを受け、粗大結晶粒の発生がちょうど促進される状態になる。
【0090】
そこで、本実施例では、予め20%程度引き伸ばしてあるアルミニウム材を用い、このアルミニウム材を凸形の面に加工している。したがってアルミニウム材は加工前の引き伸ばし分と加工による引き伸ばし分とで約40%の引き伸ばしとなり、粗大結晶粒化が抑えられる。
【0091】
ところで、図4に示すように、Mg、Zr、Mn、Crをいくつか組み合わせた複数種類の組成のアルミニウム基合金の鋳塊に対し、480℃で5時間の均質化処理を施し、さらに300〜480℃の温度域で熱間圧延を行い、厚さ2mmの板にした。次に、板の厚さが0.75mmとなるまで冷間圧延を施し、さらに350℃で4時間の中間熱処理を施し、次いで、最終冷間圧延を施して厚さが0.6mmの板にした。その後、板の延性(張り出し性)を向上させるために、150℃で4時間の熱処理を行い、最終の板にした。
【0092】
最終の板について、透過型電子顕微鏡による観察を行い、0.01〜0.05μmのサイズの遷移元素系金属間化合物の分散状態を画像解析した。また、最終の板について、250℃での引っ張り強度を調べた。さらに、拡散接合後の結晶粒径についても調べた。また、この板材を入力窓に使用してX線イメージ管を構成し、そのとき、X線イメージ管から得られる可視光像の画質についても評価した。なお、これらの観察結果を図4に示している。
【0093】
また、画質の評価には、図5に示す装置を用いた。X線管31から出たX線を、X線イメージ管32で可視光像に変換する。そして、可視光像を、タンデム光学系33を通してTVカメラ34で撮像する。また、TVカメラ34から出力される画像信号をデジタル画像処理装置35で処理し、TVモニター36で再生した。なお、デジタル画像処理には様々な種類があるが、ここでは次の2つの処理を行った。
【0094】
(1)平均化
複数の画像を連続して取り込み、画素ごとに平均化する。静止画像のTV信号を平均化すると、信号に乗っているランダムノイズが打ち消し合い、ノイズの減少した画像になる。
【0095】
(2)画像強調
画像の階調部分を引き伸してTVモニタ上に表示し、微小な階調の変化を視認する。
【0096】
上記の画像処理を行うことにより、ノイズに埋もれない微小な階調の変化が検知できる。
【0097】
上記した装置を用いて画質評価を行うと、従来のX線イメージ管の場合、X線エネルギーが50KeVと高いときは、画像処理を行っても「むら」は観察されなかった。しかし、X線エネルギーが20KeVと低くなると、画像処理によってX線の透過率の差が強調され「むら」が観察された。TVモニタ上に現れた「むら」を図6に示す。また、TVモニタの中央部を通る走査線上の輝度をグラフにすると、図7のように凹凸が見られる。図7は、縦軸が輝度、そして横軸が走査線上の位置を示している。なお、複数種類の組成のアルミニウム基合金に対する観察結果が、図4に示されているが、本発明に係る試料、No.1〜4は、拡散接合後の結晶粒径が30μm以下で、可視光像も良好である。また、250℃での材料強度も120MPa以上で、薄肉化が可能である。
【0098】
一方、本発明と比較する試料、例えばNo.5は、Zrを添加しない例で、拡散接合後の結晶粒径が粗大化し、また、良質な画像が得られない。また、試料No.6は、Zrの添加量が少ない例で、No.5と同様の問題がある。試料No.7は、Mgの添加量が少ない例で、250℃での材料強度が小さく、X線イメージ管の入力窓に使用すると、真空脱気の際に変形した。また、試料No.8は、Zrの添加量が多すぎる例で、100μmを越えるサイズのAlZr化合物が形成され、X線イメージ管の入力窓に使用すると可視光像に濃淡むらが発生した。
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、低いエネルギーのX線でも斑(むら)のない良好な画像を得ることのできるX線イメージ管が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を説明する図で、X線診断装置を示す図である。
【図2】本発明のX線イメージ管の入力窓を示す図である。
【図3】Zrの含有率と、Al粗大結晶粒のでき易さおよび金属間化合物の粗大粒のでき易さとの関係を示す図である。
【図4】複数種類の組成のアルミニウム基合金に対する観察結果を示す図である。
【図5】画質の評価に用いた装置を示す図である。
【図6】
TVモニタ上に現れた「むら」を示す図である。
【図7】TVモニタの中央部を通る走査線上の輝度を示す図である。
【図8】アルミニウムおよびチタニウムのX線の透過率を示す図である。
【図9】(a)はAl結晶粒の粗大化を示す図で、(b)は、図(a)の一部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
1…X線管
2…X線
3…被写体
4…入力窓
5…入力基板
6…入力蛍光体層
7…光電面
8…電極
9…出力蛍光体層

Claims (6)

  1. アルミニウム基合金からなる入力窓を有する外囲器と、この外囲器内に入力窓に対向して配置され、基板、および、この基板上に形成された入力蛍光体層、この入力蛍光体層上に形成された光電面からなる入力蛍光面とを具備し、前記アルミニウム基合金は、3〜6重量%のMg、および0.01〜0.5重量%のZrを含むことを特徴とするX線イメージ管。
  2. アルミニウム基合金からなる入力窓を有する外囲器と、この外囲器内に入力窓に対向して配置され、基板、および、この基板上に形成された入力蛍光体層、この入力蛍光体層上に形成された光電面からなる入力蛍光面とを具備し、前記アルミニウム基合金は、4〜5重量%のMg、および0.05〜0.2重量%のZrを含むことを特徴とするX線イメージ管。
  3. 前記アルミニウム基合金は、0.1〜1重量%のMn、および、0.01〜0.5重量%のCr、0.01〜0.5重量%のSc、0.01〜0.05重量%のTiからなる群から選ばれた金属元素の少なくとも1種を、さらに含む請求項1記載のX線イメージ管。
  4. 前記アルミニウム基合金は、平均直径0.01〜0.05μmの金属間化合物を5個/μm3 以上含む請求項1記載のX線イメージ管。
  5. アルミニウム基合金からなる入力窓を有する外囲器と、この外囲器内に入力窓に対向して配置され、基板、および、この基板上に形成された入力蛍光体層、この入力蛍光体層上に形成された光電面からなる入力蛍光面とを具備し、前記アルミニウム基合金は、3〜6重量%のMg、および、0.01〜0.5重量%のZr、0.1〜0.4重量%のFe、0.05〜0.2重量%のSi、0.1〜1重量%のMnを含むことを特徴とするX線イメージ管。
  6. 3〜6重量%のMg、および0.05〜0.5重量%のZrを含み、あるいは、更に0.1〜1重量%のMn、および0.01〜0.5重量%のCr、0.01〜0.5重量%のSc、0.01〜0.05重量%のTiからなる群から選ばれた金属元素の少なくとも1種を含み、残部はAlと不純物とからなり、不純物のFeとSiが、Fe≦0.4重量%、Si≦0.2重量%であるアルミニウム合金鋳塊を、400〜530℃で1〜20時間の均質化処理を施し、常法で熱間圧延を行い、その後冷間圧延を行いまたは行わずに、再結晶をさせるための熱処理をし、加工度10%以上の最終冷間圧延を行うことを特徴とするX線透過量が実質的に均一であるX線イメージ管用アルミニウム合金材の製造方法
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