JP3668368B2 - 筒状フィルタの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は流体中の固形物を濾過することのできる筒状フィルタ、好適には液体中の固形物を濾過することのできる筒状フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
筒状フィルタとして、メルトブロー法やジェット紡糸法などにより製造した微細な繊維からなる不織布を、不織布構成繊維を融着させることなく多孔筒の周囲に巻回したものが知られている。この筒状フィルタは優れた濾過性能を有するものの、保形性が悪く、流体中の固形物を濾過する際に圧力が極端に高くなると変形しやすく、耐圧性に劣る場合があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、濾過性能及び耐圧性の優れる筒状フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の筒状フィルタの製造方法は、濾過材の一部又は全部を巻回した後に、濾過材と加熱固体媒体とを接触させない融着手段により濾過材を溶融させて、樹脂塊による凹凸を形成する方法である。
【0005】
本発明の筒状フィルタの製造方法は、濾過材を巻回しながら、濾過材と加熱固体媒体とを接触させない融着手段により濾過材を溶融させて、樹脂塊による凹凸を形成する方法である。そのため、濾過材に異物を付着させることなく、耐圧性及び濾過性能の優れる筒状フィルタを容易に製造することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の筒状フィルタは濾過材が複数層巻回されたものである。そのため、流体中の固形物を濾過材の表面及び内部で濾過することができ、濾過性能が優れている。なお、濾過材は何層巻回されていても良いが、例えば筒状フィルタの直径が65mm程度の場合には、濾過性能に優れるように20層以上巻回されているのが好ましい。また、濾過材はどのように巻回されていても良く、例えば、平巻き状に巻回することもできるし、螺旋状に巻回することもできる。
【0007】
なお、濾過材は多孔筒の周囲に巻回されていても良いし、巻回されていなくても良い。後者の場合には、例えば、芯材の周囲に濾過材構成繊維の融着成分が融着可能な状態で複数層巻回し、冷却した後にこの芯材を抜き取れば、この融着した領域が多孔筒と同様の働きをする。なお、多孔筒を使用する場合、多孔筒の材質、穴の形状、大きさ、穴の比率などは特に限定されない。
【0008】
本発明で使用する濾過材としては、例えば織物、編物、不織布、或いはこれらの複合体などを使用できる。これらの中でも濾過性能に優れる不織布を好適に使用できる。
【0009】
以下、この好適である不織布をもとに説明すると、本発明においては樹脂塊による凹凸を形成できるように、溶融可能な繊維を含んでいる必要があり、溶融可能な繊維のみからなるのが好ましい。この溶融可能な繊維を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどがあり、これら樹脂成分1種類からなる単一繊維、或いはこれら樹脂成分2種類以上からなる複合繊維を使用することができる。これらの中でも、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を含む繊維は耐薬品性に優れ、汎用性にも優れているため好適に使用できる。
【0010】
このような繊維からなる不織布(濾過材)は、例えば、カード法、エアレイ法、メルトブロー法、スパンボンド法などの乾式法や、湿式法により繊維ウエブを形成した後、ニードルや流体流による絡合処理、繊維ウエブを構成する繊維を融着する融着処理、バインダーによる接着処理、或いはステッチ処理などの結合処理を実施することにより製造することができる。なお、メルトブロー法やスパンボンド法により繊維ウエブを形成した場合には、その繊維ウエブを不織布(濾過材)として使用することができる。
【0011】
上記の繊維ウエブの製造方法の中でも、繊維油剤などの余分なものが付着していない、メルトブロー法やスパンボンド法が好適である。また、上記の結合方法の中でも、ニードルや流体流による絡合処理、繊維ウエブを構成する繊維を融着する融着処理、或いはステッチ処理などの結合処理は、筒状フィルタの使用中に余分なものが脱落しない不織布(濾過材)を製造できるため好適であり、フィルム化することなく緻密かつ均一な構造の不織布を製造でき、しかも繊維ウエブに余分なもの(例えば油剤)が付着していたとしても洗い流すことのできる、流体流による絡合処理が特に好適である。
【0012】
このようにして製造される濾過材の厚さは0.1〜1.5mmであるのが好ましい。厚さが0.1mm未満であると、流体中の固形物を内部濾過することが困難になる傾向があり、1.5mmを越えると、濾過材の層数が減少し、濾過寿命が短くなる場合があるためで、0.2〜1.2mmであるのがより好ましい。なお、厚さは1cm2あたり20g荷重時(圧力1.96kPa)の値をいう。
【0013】
また、濾過材の面密度は10〜120g/m2であるのが好ましい。面密度が10g/m2未満であると、厚さが0.1mm以上の濾過材を形成しにくく、120g/m2を越えると、濾過材の厚さが1.5mmを越えやすくなるためで、15〜100g/m2であるのがより好ましい。
【0014】
更に、濾過材の見掛密度は0.05〜0.5g/cm3であるのが好ましい。見掛密度が0.05g/cm3未満であると、濾過精度が著しく低下する場合があり、0.5g/cm3を越えると、濾過材が目詰まりしやすいため使用寿命が短くなる傾向があるためで、0.06〜0.3g/cm3であるのがより好ましい。
【0015】
濾過材を構成する繊維の平均繊維径は特に限定するものではないが、濾過性能及び使用寿命に優れるように、0.5〜85μmであるのが好ましく、0.5〜70μmであるのがより好ましい。なお、本発明における平均繊維径とは、濾過材から無作為に選んだ100点(又は100本)において測定した繊維径の平均値をいい、繊維が異形断面形状を有する場合には、その断面積と同じ面積を有する円の直径を繊維径とみなす。
【0016】
また、濾過材の最多孔径は特に限定するものではないが、濾過精度及び使用寿命に優れるように、1〜80μmであるのが好ましく、1〜65μmであるのがより好ましい。なお、本発明における最多孔径は孔径分布測定機(COULTER社製、COULTER POROMETER)を用いて孔径を測定した結果、孔径分布の最も多い孔径値をいう。
【0017】
本発明の筒状フィルタは上述のような濾過材を1種類以上、複数層巻回したものである。好適には、平均繊維径、平均最多孔径、厚さ、面密度、製造方法、構成繊維、或いは繊維組織構造(例えば織物と不織布)などの1つ以上の点において相違する、種類の異なる濾過材を2種類以上巻回するのが好ましい。この平均繊維径及び最多孔径の点において差のある濾過材を2種類以上使用する場合、隣接する濾過材において、平均繊維径の差が0.3〜35μm、最多孔径の差が3〜30μmとなるように濾過材を組合わせるのが好ましい。
【0018】
例えば、平均繊維径及び/又は最多孔径の点において異なる濾過材を2種類使用し、処理流体の通過方向が筒状フィルタの外側から内側である場合には、平均繊維径及び/又は最多孔径のより小さい濾過材が内側となるように巻回するのが好ましく、逆に、処理流体の通過方向が筒状フィルタの内側から外側である場合には、平均繊維径及び/又は最多孔径のより大きい濾過材が内側となるように巻回するのが好ましい。このようにすることにより、大きい固形物から順に段階的に濾過することができるため、濾過寿命の長い筒状フィルタとすることができる。この処理流体の通過方向がフィルタの外側から内側である場合の平均繊維径及び/又は最多孔径のより小さい濾過材が内側となるように巻回した状態としては、(1)平均繊維径及び/又は最多孔径のより小さい濾過材のみが複数層巻回された領域と、平均繊維径及び/又は最多孔径のより大きい濾過材のみが複数層巻回された領域とを有する場合と、(2)平均繊維径及び/又は最多孔径のより小さい濾過材と、平均繊維径及び/又は最多孔径のより大きい濾過材が交互に巻回された領域を有する場合がある。逆に、処理流体の通過方向が筒状フィルタの内側から外側である場合には、各領域の配置が上記とは逆になる。なお、濾過材が3種類以上からなる場合には、上述と同様の関係が成り立つように巻回するのが好ましい。
【0019】
なお、濾過材の物性(例えば繊維径や平均最多孔径)が、濾過材の長さ方向において、連続的又は不連続的に変化する場合には、1種類の濾過材を使用するだけで十分な場合もある。例えば、処理流体の通過方向が筒状フィルタの外側から内側である場合には、濾過性能のより優れる領域(例えば、繊維径や平均最多孔径のより小さい領域)が内側となるように濾過材を巻回するのが好ましく、処理流体の通過方向が筒状フィルタの内側から外側である場合には、濾過性能のより優れる領域(例えば、繊維径や平均最多孔径のより小さい領域)が外側となるように濾過材を巻回するのが好ましい。
【0020】
本発明の筒状フィルタは樹脂塊による凹凸を有する領域を有するため剛性があり、その結果として耐圧性が優れている。また、凹凸であることによって濾過性能の低下を抑制、場合によっては濾過性能を向上させることができる。この凹凸とは、濾過材を構成する繊維が実質的に繊維形状を留めておらず、溶融して凝集した樹脂塊からなる凸部と、この樹脂塊が存在しない凹部とを有する状態をいう。このような状態は目視或いは顕微鏡などによって容易に確認することができる。なお、このような凹凸は均一に分布していても不均一に分布していても良いが、濾過性能が向上するように、不均一に分布しているのがより好ましい。
【0021】
この樹脂塊による凹凸は耐圧性が向上するように、濾過材の濾過領域の一部又は全部に存在する。この「濾過領域」とは流体中の固形物を濾過する領域をいい、より具体的には濾過材の両端部以外の流体が通過する領域を指す。
【0022】
この凹凸領域は複数層巻回された濾過材のどこに存在していても良いが、一般的に凹凸領域は濾過精度に寄与するというよりはむしろ、処理流体の拡散や粗い固形物を濾過する層として作用するため、処理流体の通過方向における最上流層を構成する濾過材が凹凸領域に含まれているのが好ましい。例えば、処理流体の通過方向が筒状フィルタの外側から内側である場合には、最外層を構成する濾過材が樹脂塊による凹凸を有するのが好ましい。
【0023】
なお、この凹凸領域は濾過材一層のみから構成されていても良いし、二層以上の濾過材から構成されていても良い。
【0024】
また、2種類以上の濾過材を巻回した場合、平均繊維径及び最多孔径の最も小さい濾過材は微細な固形物を濾過するために使用するのが好ましいため、この平均繊維径及び最多孔径の最も小さい濾過材以外の濾過材が凹凸領域を構成しているのが好ましい。
【0025】
本発明の筒状フィルタにおいては、隣接する濾過材同士は全層にわたって融着していても、層の一部において融着していても、全く融着していなくても良い。しかしながら、濾過性能に優れるように、多孔筒を使用する場合には、凹凸領域以外には隣接する濾過材同士が融着していないのが好ましく、また、多孔筒を使用しない場合には、筒状フィルタの最内層を構成する濾過材と隣接する濾過材とを含む隣接する濾過材同士が融着している領域、又は筒状フィルタの最外層を構成する濾過材と隣接する濾過材とを含む隣接する濾過材同士が融着している領域と、凹凸領域以外には隣接する濾過材同士が融着していないのが好ましい。
【0026】
なお、本発明の好適である、多孔筒の周囲に濾過材が複数層巻回され、処理流体の通過方向における最上流層を構成する濾過材が凹凸領域に含まれている場合、濾過材の厚さが0.1〜1.5mmであり、しかも筒状フィルタの耐圧強度が0.55〜0.75MPaであるのが好ましい。つまり、厚さが0.1mm未満の濾過材を多孔筒の周囲に巻回すれば濾過材の全長が長くなるために、耐圧性の優れた筒状フィルタを製造することができるが、本発明においては、濾過材の内部でも濾過を実施することができるように、厚さが0.1〜1.5mmの濾過材を使用すると、単に多孔筒の周囲に濾過材を巻回しただけでは耐圧強度が0.4MPa以下程度の筒状フィルタしか得られない。しかしながら、上述のような凹凸領域を形成することにより、上記のような範囲の耐圧強度の筒状フィルタ、つまり濾過性能、耐圧性のいずれにも優れる筒状フィルタを得ることができた。より好ましい耐圧強度は0.6〜0.75MPaである。
【0027】
なお、この耐圧強度は次の方法により得られる値をいう。つまり、JIS8種の塵埃を水に分散した濃度100ppmの試験液を均一に撹拌しながら、筒状フィルタに流量25L/minで通水させる。そして、筒状フィルタが変形した時における負荷圧力を耐圧強度とする。
【0028】
本発明の筒状フィルタの製造方法としては、多孔筒の周囲に濾過材を巻回する場合、濾過材の一部又は全部を多孔筒の周囲に巻回した後に、或いは濾過材を巻回しながら、濾過材と加熱固体媒体とを接触させない融着手段により濾過材を溶融させて、樹脂塊による凹凸を形成する。そのため、濾過材に異物を付着させることなく、上述のような筒状フィルタを容易に製造することができる。
【0029】
また、濾過材と加熱固体媒体とを接触させない融着手段とは、例えば、熱風吹き付け、レーザー照射、遠赤外線照射などがある。なお、これらの手段を併用しても良い。このように、濾過材と加熱固体媒体とを接触させないため凹凸領域を形成しやすく、しかも濾過材がフィルム化しないため目詰まりが生じにくいため、濾過寿命の長い筒状フィルタを製造することができる。また、加熱固体媒体と接触しないため、異物が付着することもない。
【0030】
上記の融着手段の中でも、熱風吹き付け手段は不均一な凹凸領域を形成しやすいため好適である。なお、レーザー照射、遠赤外線照射と同時に気体(好ましくは温風又は熱風)を吹き付けても同様の効果が得られる。
【0031】
この熱風吹き付け条件について説明すると、濾過材表面に吹き付ける熱風の温度は濾過材を完全に溶融させて樹脂塊を形成できるように、濾過材を構成する繊維の融点よりも30℃以上高い温度であるのが好ましく、50℃以上高い温度であるのがより好ましい。なお、濾過材を構成する繊維が2種類以上の樹脂を含んでいる場合には、最も融点の高い樹脂の融点よりも30℃以上、好ましくは50℃以上高い温度の熱風を濾過材表面に吹き付けるのが好ましい。また、風量は不均一な凹凸領域を形成できるように、0.3Nm3/min以上であるのが好ましく、0.5Nm3/min以上であるのがより好ましい。更に、熱風を吹き付ける時間は濾過材が完全に溶融するように、0.1秒以上であるのが好ましく、0.5秒以上であるのがより好ましい。
【0032】
より具体的な筒状フィルタの製造方法は多孔筒を使用する場合、まず、多孔筒及び所要長の濾過材を用意する。次いで、多孔筒の周囲に濾過材の全部を巻回した後、上述のような融着手段により凹凸領域を形成するか、多孔筒の周囲に濾過材の一部を巻回した後、上述のような融着手段により凹凸領域を形成するか、或いは多孔筒の周囲に濾過材を巻回しながら凹凸領域を形成する。なお、必要であれば、凹凸領域を形成した後に更に濾過材を巻回する。
【0033】
なお、処理流体の通過方向が筒状フィルタの外側から内側であり、平均繊維径及び/又は最多孔径の異なる2種類の濾過材を巻回する場合、(1)多孔筒の周囲に平均繊維径及び/又は最多孔径のより小さい濾過材、平均繊維径及び/又は最多孔径のより大きい濾過材の順に巻回しながら、一部を巻回した後、或いは全部を巻回した後、上述のような融着手段により凹凸領域を形成したり、(2)平均繊維径及び/又は最多孔径のより大きい濾過材の上に平均繊維径及び/又は最多孔径のより小さい濾過材を積層した後、この積層濾過材の平均繊維径及び/又は最多孔径のより小さい濾過材が多孔筒側となるように多孔筒の周囲に巻回しながら、一部を巻回した後、全部を巻回した後に、上述のような融着手段により凹凸領域を形成する。前者の場合には、平均繊維径及び/又は最多孔径のより小さい濾過材のみが複数層巻回された領域と、平均繊維径及び/又は最多孔径のより大きい濾過材のみが複数層巻回された領域とを有する筒状フィルタを製造することができ、後者の場合には、平均繊維径及び/又は最多孔径のより小さい濾過材と平均繊維径及び/又は最多孔径のより大きい濾過材が交互に巻回された領域を有する筒状フィルタを製造することができる。なお、3種類以上の濾過材からなる場合にも同様に製造することができる。また、処理流体の通過方向が逆の場合には、濾過材の配置が逆になるように巻回すれば良い。
【0034】
なお、濾過材を多孔筒に巻き付ける際の荷重は一定であっても、巻き始めから巻き終わりまで連続的に、又は不連続的に可変であっても良いが、一定荷重であると、品質のより安定した筒状フィルタを製造できる。この荷重が一定であっても、巻き始めの濾過材の方がより大きな力が加わり、多孔筒に近い濾過材程、緻密な構造となるため、処理流体が筒状フィルタの外側から内側へ通過する場合に好適である。
【0035】
他方、多孔筒を使用しない筒状フィルタは、多孔筒の代りに芯材の周囲に濾過材が融着可能な状態で必要な分だけ巻回し、冷却した後にこの芯材を抜き取って、多孔筒に相当するものを形成した後、多孔筒を使用する場合と全く同様にして製造することができる。したがって、詳細な説明は割愛する。
【0036】
本発明の筒状フィルタは濾過性能及び耐圧性に優れているため、各種流体(例えば液体、気体)中に含まれる固形物を濾過するために使用することができる。例えば、食品・飲料、電子、医薬、化学、水処理、写真、塗料、メッキ、染色、機械・鉄鋼など各製造プロセスにおいて使用する、或いは使用した液体などの濾過に使用することができる。
【0037】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
濾過材Aとして、スパンボンド法により製造した繊維ウエブをニードルにより絡合した、面密度100g/m2、厚さ1mm、見掛密度0.1g/cm3、平均繊維径35μm、最多孔径30μmのポリプロピレン製不織布(幅25cm、長さ320cm)を用意した。
【0039】
また、濾過材Bとして、メルトブロー法により製造した(特に結合処理なし)、面密度80g/m2、厚さ1mm、見掛密度0.08g/cm3、平均繊維径6μm、最多孔径25μmのポリプロピレン製不織布(幅25cm、長さ40cm)を用意した。
【0040】
更に、円形状の穴(穴の比率:表面積全体に対して6%)を有し、内径が2.8cmで肉厚が2.6mmのポリプロピレン製多孔筒(長さ25cm、)を用意した。
【0041】
次いで、濾過材Aの上に濾過材Bの一端が一致するように積層し、次いでこの積層濾過材を多孔筒の周囲に、多孔筒と濾過材Bとが接触するように、一定荷重(0.39MPa)で平巻き状に巻き付け、内径2.8cm、外径6.3cm、長さ25cmの筒状フィルタ前駆体を製造した。この筒状フィルタ前駆体は不織布Aと不織布Bとが交互に巻回された領域を有していた。
【0042】
次いで、筒状フィルタ前駆体の最外層を構成する濾過材Aに対して、温度285℃、風量0.5Nm3/minの熱風を2秒間吹き付けることにより、最外層を含む約2層の濾過材Aのみからなる不均一な凹凸領域を有する筒状フィルタを製造した。
【0043】
(比較例1)
実施例1の筒状フィルタ前駆体を筒状フィルタとした。
【0044】
(実施例2)
濾過材Aとして、水流絡合法により製造した、面密度60g/m2、厚さ0.7mm、見掛密度0.086g/cm3、平均繊維径40μm、最多孔径32μmのポリプロピレン製不織布(幅25cm、長さ340cm)を使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして、内径2.8cm、外径6.3cm、長さ25cmの筒状フィルタ前駆体を製造した。この筒状フィルタ前駆体は不織布Aと不織布Bとが交互に巻回された領域を有していた。
【0045】
次いで、筒状フィルタ前駆体の最外層を構成する濾過材Aに対して、温度330℃、風量0.8Nm3/minの熱風を2秒間吹き付けることにより、最外層を含む約2層の濾過材Aのみからなる不均一な凹凸領域を有する筒状フィルタを製造した。
【0046】
(比較例2)
実施例2の筒状フィルタ前駆体を筒状フィルタとした。
【0047】
(実施例3)
実施例1と同じ濾過材Aと濾過材B以外に、濾過材Cとして、スパンボンド法により製造した繊維ウエブを熱エンボス加工処理した、面密度15g/m2、厚さ0.2mm、見掛密度0.075g/cm3、平均繊維径50μm、最多孔径50μmのポリプロピレン製不織布(幅25cm、長さ320cm)を用意した。
【0048】
次いで、濾過材Cと濾過材Aとが完全に一致するように積層した後、更に濾過材Aの一端と濾過材Bの一端とが一致するように濾過材Aの上に積層した。次いでこの積層濾過材を、実施例1と同じ多孔筒の周囲に、多孔筒と濾過材Bとが接触するように、一定荷重(0.39MPa)で平巻き状に巻き付け、内径2.8cm、外径6.3cm、長さ25cmの筒状フィルタ前駆体を製造した。この筒状フィルタ前駆体は不織布A、不織布B、及び不織布Cとが交互に巻回された領域を有していた。
【0049】
次いで、筒状フィルタ前駆体の最外層を構成する濾過材Cに対して、温度290℃、風量0.5Nm3/minの熱風を2秒間吹き付けることにより、最外層を含む約3層の濾過材A及び濾過材Cからなる不均一な凹凸領域を有する筒状フィルタを製造した。
【0050】
(比較例3)
実施例3の筒状フィルタ前駆体を筒状フィルタとした。
【0051】
(通水抵抗)
実施例1〜3及び比較例1〜3の筒状フィルタに対して、流量25L/minでそれぞれ通水した際の初期圧力損失を測定し、この値を通水抵抗とした。この結果は表1に示す通り、実施例1〜3の筒状フィルタは凹凸領域の存在によって通水抵抗が上昇することはない。
【0052】
【表1】
【0053】
(濾過精度)
JIS8種の塵埃を水に分散させた濃度10ppmの試験液に含まれる粒子数を、粒度分布測定機(COULTER社製、COULTER MultisizerII)により各粒径別に計測した。次いで、この試験液を均一に撹拌しながら、実施例1〜3及び比較例1〜3の筒状フィルタのそれぞれに、流量25L/minで1分間通水した後の濾液を採取して、この1分後の濾液に含まれる粒子数を、上記と同じ粒度分布測定機により各粒径別に計測した。次いで、それぞれの粒径における捕集効率を下記の式から算出し、100%の捕集効率が得られる粒径を、その筒状フィルタの濾過精度とした。この結果も表1に示す通り、実施例1〜3の筒状フィルタは凹凸領域の存在によっても、濾過精度は低下せず、同等以上のものが得られることがわかる。
捕集効率[%]={(A−B)/A}×100
A:濾過前の粒子数、B:濾過後の粒子数
【0054】
(濾過寿命)
JIS8種の塵埃を水に分散させた濃度100ppmの試験液を均一に撹拌しながら、実施例1〜3及び比較例1〜3の筒状フィルタのそれぞれに流量25L/minで通水させた。そして、筒状フィルタが変形するまでに処理された総通水量を濾過寿命とした。この結果も表1に示す通り、実施例1〜3の筒状フィルタは凹凸領域の存在によって濾過寿命が著しく伸びることがわかる。
【0055】
(耐圧強度の測定)
上記の濾過寿命時における負荷圧力を耐圧強度とした。この結果も表1に示す通り、実施例1〜3の筒状フィルタは凹凸領域の存在によって、耐圧強度が著しく向上することがわかる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の筒状フィルタの製造方法は、濾過材を巻回しながら、濾過材と加熱固体媒体とを接触させない融着手段により濾過材を溶融させて、樹脂塊による凹凸を形成する方法である。そのため、濾過材に異物を付着させることなく、耐圧性及び濾過性能の優れる筒状フィルタを容易に製造することができる。
【0057】
本発明の筒状フィルタの製造方法は、濾過材を巻回しながら、濾過材と加熱固体媒体とを接触させない融着手段により濾過材を溶融させて、樹脂塊による凹凸を形成する方法である。そのため、濾過材に異物を付着させることなく、耐圧性及び濾過性能の優れる筒状フィルタを容易に製造することができる。
Claims (3)
- 濾過材の一部又は全部を巻回した後に、濾過材と加熱固体媒体とを接触させない融着手段により濾過材を溶融させて、樹脂塊による凹凸を形成することを特徴とする、筒状フィルタの製造方法。
- 濾過材を巻回しながら、濾過材と加熱固体媒体とを接触させない融着手段により濾過材を溶融させて、樹脂塊による凹凸を形成することを特徴とする、筒状フィルタの製造方法。
- 濾過材と加熱固体媒体とを接触させない融着手段が、熱風吹き付け、レーザー照射、遠赤外線照射の中から選ばれる少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の筒状フィルタの製造方法。
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