JP3667141B2 - 固体電解質型燃料電池セル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状の固体電解質型燃料電池セルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の代表的な円筒状の固体電解質型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell で、以下、SO燃料電池という)Fを図2に示す(特開平8−162140号公報参照)。同図はSO燃料電池Fの断面図であり、1は全体を納めたケース、2はセラミック等から成り円筒状のSO燃料電池Fセル(以下、セルと略す)であり、一端が開放され他端が閉じた構造となっている。また、セル2の断面は多層円筒状をしており、空気極、固体電解質、燃料極等が積層された構成である。
【0003】
また、3は断熱材から成りセル2の上端側を保持し固定する仕切り部材、5は燃焼室であり、ケース1の下端の供給口13から供給された燃料ガス(H2 ,CO,CH4 等)の排気ガスが、仕切り部材3に形成された通気孔等(図示せず)を通して燃焼室5内で空気の排気と混合され、セル2内で反応しなかった酸素と水素ガスが燃焼室5内で燃焼する。6はセル2内に空気を通すための空気管であり、空気供給口12から一旦空気分配器14に送られた空気は、空気管6を通じてセル2の底部に達し、発電反応に寄与した後、セル2内を上方に向かい上端側の開口から燃焼室5に至る。
【0004】
7は燃焼室5からの排気ガスが排出される排気口、8はセル2集合体の最外側面に設けられた集電板、9は電力を外部へ取り出す集電棒、10はNiフェルト、11はセル2を電気的に接続するためのインターコネクタである。同図の場合、所望の電力を得るために複数のセル2が直列に接続され、所謂スタック化されている。
【0005】
ここで、上記発電反応は以下のようにして生じる。セル2の各層は厚さ数μm〜2.5mm程度であり、それぞれ導電性,通気性,固体電解質,電気化学触媒性等の機能を有する。約1000℃の温度に保持されたセル2の内側に酸化剤としての空気等を流し、外側には水素ガスを流すと、セル2内ではO2-イオンが移動して電気化学反応が起こり、空気極と燃料極との間に電位差が生じ発電が可能となる。
【0006】
近年、このようなSO燃料電池Fは、小型であることに加えてセル2での動作温度が1000〜1050℃と高温であるため、発電効率が高く、第3世代の発電システムとして期待されている。
【0007】
一般に、SO燃料電池F用のセルには、円筒状のセル2と平板型セルの2種類が知られている。平板型セルは、単位体積当たりの出力密度が高いという特長があるが、実用化においてはガスシールの不完全性や平板型セル内の温度分布の不均一性の問題がある。一方、円筒状のセル2は出力密度は低いもののその形状により機械的強度が高く、また内部の温度分布を均一に維持できるという特長がある。
【0008】
また、セル2は上記の通りセラミックスから成り、開気通気孔率が30%程度のCaO安定化ZrO2 等を支持管とし、その外側にCa,Srを固溶させたLaMnO3 系材料等からなる多通気孔性の空気極層、Y2 O3 安定化ZrO2 等からなる固体電解質層、多通気孔性のNi−ZrO2 等のサーメットからなる燃料極層が順次設けられている。そして、空気極層と固体電解質層の一部にCa,Sr,Mgを固溶させたLaCrO3 系材料等からなる集電体層(インターコネクタ層)を設けている。
【0009】
近年、このようなセル2において、その製造工程を簡略化するために、空気極層,固体電解質層,燃料極層,集電体層等の構成部材のうち少なくとも2つを同時に焼成するという所謂共焼結法が提案されている。共焼結法は、例えば円筒状の空気極層成形体に固体電解質層成形体及び集電体層成形体をロール状に巻き付けて同時焼成を行い、その後固体電解質層表面に燃料極層を形成する方法である。この共焼結法は、製造工程が少なくなるので製造歩留りが向上し、コスト低減に有効である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記共焼結法により空気極層,固体電解質層,集電体層を共焼結させた後、或いは更に燃料極層を固体電解質層表面に焼結させた後に、セル2に何ら異常がなく状態が良好であっても、燃料極層を還元処理したり発電実施のために燃料ガスとして水素ガスを導入すると、熱膨張率差に起因して集電体層が破壊されるという問題が発生していた。
【0011】
従って、本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、空気中及び動作時の雰囲気ガスである水素ガス中において、熱膨張に起因してセルが破壊されるという問題を解消することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の固体電解質型燃料電池セルは、多層円筒状に積層された空気極層、固体電解質層、燃料極層及び集電体層を有し、前記固体電解質層はZrO 2 系又はCeO 2 系材料からなり、前記集電体層はLaCrO 3 系材料からなり、該集電体層の空気中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα1、前記固体電解質層の空気中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα2、α2とα1の差α2−α1をΔα21とした場合、α1<α2であり、且つΔα21≦0.5×10−6/℃であり、前記集電体層の水素ガス中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα3、前記固体電解質層の水素ガス中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα4、α3とα4の差α3−α4をΔα34とした場合、α3>α4であり、且つΔα34≦0.3×10−6/℃であることを特徴とする。
【0013】
即ち、集電体層は大気中で焼結されるが、発電時には集電体層の一部は還元雰囲気中に晒される。従って、集電体層材料としては、大気中及び還元雰囲気中の両方で熱膨張係数が殆ど変化しないものが好ましいが、現在使用されているLaCrO 3 系材料は空気中よりも還元雰囲気(水素ガス)中での熱膨張係数が大きい特徴がある。このため、各工程でセルに作用する応力を最小にするには、空気中において集電体層の熱膨張係数を固体電解質層の熱膨張係数よりも小さくし、還元雰囲気中では集電体層の熱膨張係数を固体電解質層の熱膨張係数よりも大きくするのが良いことが判った。
【0014】
本発明は上記構成により、空気極層,固体電解質層,集電体層の大気中での共焼結工程、燃料極層の固体電解質層表面への焼結工程、還元雰囲気中での燃料極層の還元工程及び発電実施中において集電体層に生じる熱応力を最小にすることができ、熱膨張に起因する集電体層の破壊を防止することができる。
【0016】
また好ましくは、Δα21>Δα34である。即ち、円筒状のセルでは、集電体層の電気伝導度で示されるように集電体層中のポテンシャル(電位)勾配は空気極層側で大きく減少する。即ち発電中に集電体層の空気極層側で電気伝導度が急激に低下する。これは、発電中に集電体層の大部分が水素ガスの環境下に晒されていることを意味し、固体電解質層の熱膨張係数が雰囲気ガスによらずほぼ一定であるので、発電中の集電体層との熱膨張係数差を小さくすることが良いことになる。故に、Δα21>Δα34とすることによって、製造工程から発電実施までの全工程でセルに作用する熱応力を最小にすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のセルを以下に説明する。図1は本発明の円筒状のセル2の基本構成を示し、21は空気極層、22は空気極層の外表面に被覆焼結された固体電解質層、23は固体電解質層22の外表面に被覆焼結された燃料極層、24は固体電解質層22の一部切り欠き部を通じて空気極層21外表面に一部接する集電体層(インターコネクタ)24である。即ち、集電体層24の内側(セル2中心側)端面は空気極層21に接続され、集電体層24の外側(セル2外表面側)端面はNiフェルト10等の接続部材を介して他のセル2の燃料極層23に接続され、スタック化される(図2参照)。
【0018】
本発明において、セル2の層構成は、上記の如く円筒状の固体電解質層22の内側に空気極層21、外側に燃料極層23が形成された構成、又は固体電解質層22の内側に燃料極層23、外側に空気極層21が形成された構成のいずれであっても良い。固体電解質層22の内側に燃料極層23、外側に空気極層21が形成された構成の場合、集電体層24は固体電解質層22の切り欠き部を通じて燃料極層23の外表面の一部に接続される。
【0019】
本発明のセル2は、集電体層24の空気中での熱膨張係数をα1、固体電解質層22の空気中での熱膨張係数をα2、α2とα1との差をα2−α1=Δα21とした場合、α1<α2であり、且つΔα21≦0.5×10-6/℃である。α1,α2,Δα21を前記の如く規定したことにより、共焼結による製造工程から発電時までの全工程で、熱膨張により破壊されることのないセル2が得られる。特に、Δα21が0.5×10-6/℃を超えると、共焼結後にセル2の破壊が生じる。
【0020】
また、好ましくは、集電体層24の水素ガス中での熱膨張係数をα3、固体電解質層22の水素ガス中での熱膨張係数をα4、α3とα4の差をα3−α4=Δα34とした場合、α3>α4であり、且つΔα34≦0.3×10-6/℃である。α3,α4,Δα34を前記の如く規定したことにより、共焼結による製造工程では勿論のこと、特に発電時において熱膨張で破壊されることのないセル2とすることができる。
【0021】
上記熱膨張係数α1〜α4は、3mm×3mm×10mmの試験片を作製し、熱膨張率測定装置を用いて室温から1000℃までの試験片の伸びから求めている。尚、α1,α2は空気中で、α3,α4はフォーミングガス(水素ガス12.5体積%、窒素ガス87.5体積%)中で測定する。このフォーミングガスは、純粋な水素ガスを使用すると爆発する可能性が高いため、熱膨張係数を測定する場合に水素ガス中で測定するのと実質的に同じ結果が得られるものである。
【0022】
本発明のセル2の各層について以下説明する。空気極層21は、LaをCa,Srで10〜30at(原子)%置換したLaMnO3 系材料あるいはLaCoO3 系材料からなり、固体電解質層22は、3〜15at%のY2 O3 ,Yb2 O3 等を含有した安定化ZrO2 或いは部分安定化ZrO2 、又はY2 O3 ,Yb2 O3 ,Sc2 O3 ,Nd2 O3 ,Sm2 O3 ,CaO等を含有するCeO2 からなる。
【0023】
集電体層24は、金属元素として少なくともLa,Crを含有するペロブスカイト型複合酸化物を主成分とし、La2 O3 を0.5〜3.0wt(重量)%含有し更にMgOを5〜30wt%含有する材料からなる。好ましくは、LaCrO3 系材料のCrを5〜30at%Mgで置換したものが良い。La2 O3 が0.5wt%未満の場合及び3.0wt%を超える場合、焼結性が低下する。焼結性を向上させる上で好ましくは、1.0〜3.0wt%含有させるのが良い。また、MgO含有量を調整することにより集電体層24の熱膨張係数を制御できる。
【0024】
燃料極層23は、Ni,Co,Fe,Ru等を含有した多孔性のZrO2 あるいはCeO2 のサーメットからなる。
【0025】
前記集電体層24の厚みは30〜300μmが好ましく、30μm未満では酸素イオンの燃料極層23側への拡散が大きく発電性能を低下させ、また300μmを超えると集電体層24の電気抵抗が大きくなり発電性能が低下する。より好ましくは50〜150μmである。
【0026】
前記空気極層21、固体電解質層22及び燃料極層23の各厚さは、セルの固体電解質層22全面で発電させるために空気極層21と燃料極層23のシート抵抗をできるだけ近くするのが良く、そのためには空気極層21の厚さは1.5mm〜2.5mm、固体電解質層22の厚さは40〜100μm、燃料極層23の厚さは50〜400μmが好ましい。
【0027】
また、その他の基本構造として、開気通気孔率が30%程度のCaO安定化ZrO2 を支持管とし、その外表面に上記空気極層21、固体電解質層22、燃料極層23、集電体層24を形成したものもある。
【0028】
本発明のセル2の製造方法は下記工程〔A1〕〜〔A5〕によって構成される。
【0029】
〔A1〕空気極層21用の成形体を、押し出し成形法あるいはラバー成形法で作製し、円筒状支持管とする。
【0030】
〔A2〕空気極層21の外表面に、ドクターブレード法によって作製した固体電解質層22のシートを、集電体層24用の切り欠き部を除いて貼り付ける。
【0031】
〔A3〕固体電解質層22の前記切り欠き部に、ドクターブレード法によって作製した集電体層24のシートを貼り付ける。〔A2〕,〔A3〕において、集電体層24用の切り欠き部は、固体電解質層22を空気極層21の外表面に貼り付けた後に、研磨法等により形成しても良い。
【0032】
〔A4〕さらに、固体電解質層22の集電体層24部を除いた外表面に、ドクターブレード法によって作製した燃料極層23のシートを貼り付ける。このとき、燃料極層23はスラリーディップ法によって形成しても良い。
【0033】
〔A5〕1500〜1600℃の温度で2〜10時間大気中で共焼結する。
【0034】
また、集電体層24のシートの製造方法を、以下の工程〔B1〕〜〔B3〕によって説明する。
【0035】
〔B1〕所定量のLa2 (CO3 )3 ,Cr2 O3 ,MgOの混合粉末を1000〜1500℃で仮焼し、ペロブスカイト型複合酸化物を合成した後、ジルコニアボールを用いた周知の回転ミル等の方法により0.1〜5.0μmの大きさに粉砕する。
【0036】
〔B2〕La2 (CO3 )3 をLa2 O3 換算で0.5〜3.0wt%、MgOを5〜30wt%添加し、ジルコニアボールを用いて混合する。
【0037】
〔B3〕得られた粉末に水及びバインダー樹脂を加え、混合後ドクターブレード法により30〜100μmの厚さにシート成形する。
【0038】
本発明のセル2は、図2に示すような一端が開放され一端が閉じた構造、又は両端が開放された構造、又は両端が閉じた構造であり空気を空気管でセル2の中途から供給するもの等、種々の構成を採り得る。
【0039】
かくして、本発明は、空気中及び動作時の雰囲気ガスである水素ガス中において、熱膨張に起因してセルが破壊されるという問題を解消するという作用効果を有する。
【0040】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更は何等差し支えない。
【0041】
【実施例】
本発明の実施例を以下に説明する。
【0042】
(実施例)
図1のセル2を以下の工程〔a1〕〜〔a10〕によって作製した。
【0043】
〔a1〕空気極層21材料として純度99. 9%以上のLa2 O3 ,MnO2 ,CaCO3 の各粉末を用意し、これらをLa0.8 Ca0.2 MnO3 の化学量論組成になるように秤量混合した後、1500℃で3時間仮焼し、粉砕して平均粒径が6μmの固溶体粉末を得た。
【0044】
〔a2〕この固溶体粉末にバインダー樹脂を添加し、押し出し成形法により円筒状の空気極層21の成形体を作製した。
【0045】
〔a3〕空気極層21の成形体を乾燥後、1250℃で10時間仮焼して脱バインダー処理し、仮焼体を作製した。
【0046】
〔a4〕共沈法によって得られたY2 O3 を8mol%の割合で含有する平均粒径1.0μmのZrO2 粉末に、トルエンとバインダー樹脂を添加してスラリーを調製し、ドクターブレード法によって厚さ100μmの固体電解質層22用のシートを得た。
【0047】
〔a5〕純度99.9%以上のLa2 O3 ,Cr2 O3 ,MgOの各粉末を用意し、これらをLaMg0.1 Cr0.9 O3 の化学量論組成になるように秤量混合した後、1500℃で3時間仮焼し、粉砕して平均粒径が2μmの固溶体粉末を得た。更に、La2 O3 を1.0wt%、及びMgOを所定量加え混合した。
【0048】
〔a6〕この固溶体粉末にトルエンとバインダー樹脂を添加してスラリーを調製し、ドクターブレード法により厚さ75μmの集電体層24用のシートを作製した。このとき、MgOの添加量の異なる固溶体粉末や、LaMg0.1 Cr0.9 O3 中のMgの固溶量を種々変化させたシートも作製した。
【0049】
〔a7〕円筒状の空気極層21焼結体に固体電解質層22用のシートをロール状に巻き付け、1100℃で3時間の仮焼を行い、その後集電体層24用のシートの積層箇所に相当する固体電解質層22仮焼体の表面を平面研磨し、空気極層21を一部露出させ集電体層24のシートをその露出部に貼り付けた。
【0050】
〔a8〕円筒状の空気極層21焼結体、固体電解質層22仮焼体、集電体層24のシートを、大気中で1530℃で6時間共焼結した。
【0051】
この共焼結体の水に対する安定性をプレッシャークッカー法により評価した。具体的には、共焼結体を加湿加圧装置に入れ、温度150℃、相対湿度約100%で3日間放置し、集電体層24の化学的安定性を評価した。即ち、集電体層24中に未反応の酸化ランタンが残存すると水で潮解し、集電体層24が壊れるためである。
【0052】
更にセル2内部に空気を加圧注入してその内気圧が外気圧よりも1kgf/cm2 高くなるようにし、その状態のセル2を水没させ気泡の発生の有無により集電体層24の破壊を評価した。
【0053】
〔a9〕燃料極層23用の原料粉末として、平均粒径1.0μmのNiO粉末と、8mol%のY2 O3 を含有する平均粒径1.5μmのZrO2 とを、重量比で8:2になるように混合し、スラリーを調製した。
【0054】
〔a10〕上記共焼結体に燃料極層23用のスラリーを塗布し、大気中で1400℃で2時間焼結し、セル2を作製した。
【0055】
図2に示すように、作製したセル2内に空気、外側に水素ガスを流して1000℃で発電を行った。そして、α1,α3,Δα21,Δα34,共焼結時のセル2の破壊の有無,発電時のセル2の破壊の有無を調査した結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1において、α1〜α4の測定は、集電体層24用の原料粉末を円盤状にプレス成形し、大気中で1500℃で6時間焼結し、得られた焼結体から試料を切り出し、空気中と水素ガス中で室温〜1000℃までの熱膨張係数を測定した。また、固体電解質層22の試料も同様に作製し熱膨張係数を測定した。
【0058】
表1に示すように、MgOの添加により集電体層24の空気中及び水素ガス中での熱膨張係数を調整することができる。MgOを添加していないNO.1とMgOの添加量が少ないNO.2では、空気中の熱膨張係数α1が小さいために固体電解質層22の熱膨張係数α2との差Δα21が大きくなり、共焼結時にセル2の破壊が起きた。MgOの添加量を増やしたNO.3,4では、α1及びα3共に大きくなるが、Δα21とΔα34は小さくなり、共焼結時及び発電時にセル2の破壊は生じなかった。
【0059】
LaCrO3 中のMg固溶成分がないNO.6とMg固溶成分が少ないNO.7であっても、MgOの添加量を増やすことで、α1,α3を制御してΔα21とΔα34を小さくでき、共焼結時及び発電時にセル2の破壊を防止できた。また、Mg固溶成分が多いNO.9では、MgOの添加量を少なくしても、α1が低下してΔα21が大きくなり、共焼結時にセル2の破壊が生じた。Mg固溶成分及びMgO添加量の両方が多いNO.12では、Δα34が大きくなり、発電時にセル2の破壊が発生した。
【0060】
Mg固溶成分及びMgO添加量の両方共ほぼ中間値であるNO.8、及びMg固溶成分は多いがMgO添加量がほぼ中間値であるNO.10,11では、共焼結時及び発電時にセル2の破壊は発生しなかった。
【0061】
このように、Mg固溶量を5〜30at%、MgO添加量を6〜18wt%の範囲内で調整することで、α1,α3,Δα21,Δα34を制御できた。
【0062】
【発明の効果】
本発明は、集電体層の空気中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα1、固体電解質層の空気中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα2、α2とα1の差α2−α1をΔα21とした場合、α1<α2であり、且つΔα21≦0.5×10−6/℃であり、集電体層の水素ガス中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα3、固体電解質層の水素ガス中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα4、α3とα4の差α3−α4をΔα 34 とした場合、α3>α4であり、且つΔα 34 ≦0.3×10 −6 /℃であることにより、空気中及び動作時の雰囲気ガスである水素ガス中において、熱膨張係数差に起因してセルが破壊されるという問題を解消するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のSO燃料電池セルの部分断面の斜視図である。
【図2】SO燃料電池F全体の基本構成の断面図である。
【符号の説明】
1:ケース
2:セル
5:燃焼室
6:空気管
10:Niフェルト
11:インターコネクタ(集電体層)
21:空気極層
22:固体電解質層
23:燃料極層
24:集電体層
Claims (2)
- 多層円筒状に積層された空気極層、固体電解質層、燃料極層及び集電体層を有し、
前記固体電解質層はZrO 2 系又はCeO 2 系材料からなり、前記集電体層はLaCrO 3 系材料からなり、
該集電体層の空気中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα1、前記固体電解質層の空気中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα2、α2とα1の差α2−α1をΔα21とした場合、α1<α2であり、且つΔα21≦0.5×10−6/℃であり、
前記集電体層の水素ガス中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα3、前記固体電解質層の水素ガス中での室温から1000℃までの温度域における熱膨張係数をα4、α3とα4の差α3−α4をΔα34とした場合、α3>α4であり、且つΔα34≦0.3×10−6/℃である固体電解質型燃料電池セル。 - Δα21>Δα34である請求項1記載の固体電解質型燃料電池セル。
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