JP3666195B2 - 液晶素子の駆動方法及び液晶表示装置及び電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶素子の駆動方法と液晶表示装置、そしてこれを用いた電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶素子は特に表示表示装置として、低消費電力で軽量なディスプレイデバイスとして、テレビ、電子手帳、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器に広く利用されている。そして、MIM素子、バック・ツウー・バック・ダイオード素子、ダイオード・リング素子、バリスタ素子等の非線形抵抗素子をスイッチ素子として用いたいわゆる2端子型アクティブ・マトリクス液晶素子は、薄膜トランジスタをスイッチ素子として用いるいわゆる3端子型アクティブ・マトリクス液晶素子と同等の表示コントラストを得、かつ3端子型アクティブ・マトリクス液晶素子よりその構造が容易な簡単な為に安い製造コストで製品を提供出来る。
【0003】
ここで、表示装置として必要な機能として、階調表示機能があり、2端子型アクティブ・マトリクス液晶素子(以下、液晶パネルと言う。)では、大別して電圧変調方式によるものとパルス幅変調方式によるものの2つの方式の何れかの方式で信号電極を駆動するのが一般的である。ここで、この2方式の概略と特徴について説明するが、その前に、液晶パネルの構成と走査電極の駆動波形について説明しておく。
【0004】
液晶パネルは走査電極とこれに交差する信号電極及びこの交差部分にスイッチ素子及び画素が形成されている。そして、ここでは説明の便宜上、画素電圧が高くなると表示が暗くなるノーマリホワイト・モードとする。
【0005】
そして、走査電極の電圧波形の与え方には種々あるが、走査電極を順次選択し、ある基準電位に対して正または負の選択電圧を印加していく方法(以下、充電駆動法と呼ぶ。)が一般的である。
【0006】
この駆動の変形として、正または負の選択電圧を印加するのに先立って負または正のリセット電圧を印加する駆動方法(以下、リセット付き充電駆動法と呼ぶ。)も良く知られている。
【0007】
この駆動方法は、表示コントラストを向上する目的でなされたものである。
【0008】
この他、選択時に第1の選択電圧を走査電極に与える第1のモードと、選択に先立って第1のプリチャージ電圧を与えた後に第2の選択電圧を走査電極に与える第2のモードとを混在させて液晶素子を駆動する新方式の駆動法(以下、充放電駆動法と呼ぶ。)が脚光を浴びつつある。この充放電駆動法については、例えば特開平2-125225号等に開示されている。更に、同、特開平2-125225号の実施例中、第1の選択電圧と逆極性の第3の選択電圧を選択した走査電極に与える第3のモードと、第1のプリチャージ電圧と逆極性のプリチャージ電圧を選択に先立って与えた後に第2の選択電圧と逆極性の第4の選択電圧を走査電極に与える第4のモードとを、先の第1、第2のモードに加えて混在させて駆動する方法が開示されている。(以下、第1、第2のモードだけを混在させて駆動する方法を片極性充放電駆動法、これに第3、第4のモードを付け加えて、混在させて駆動する方法を両極性充放電駆動法と呼ぶ。)
この駆動方法は、画素毎に設けてあるスイッチ素子の電気特性のばらつきに起因する表示パターンによらない表示むらを解消する目的でなされたものである。
【0009】
以上、走査電極の駆動方法について3種類を例に挙げて説明したが、いずれの方法においても走査電極を順次選択し、それに選択電圧を印加していくことにかわりはなく、選択電圧を印加する前にリセット電圧やプリチャージ電圧といった電圧が印加するかどうかが異なるだけである。
【0010】
ここで、階調方式について説明する。
【0011】
まず、電圧変調方式の場合には、ある信号電極と選択されている走査電極が交差した部分の画素の表示すべき階調に応じた電圧を印加する。即ち、選択電圧が正の場合にはより負側の電圧を印加すると画素は暗くなり、より正側の電圧を印加すると明るくなる。そして選択電圧が負の場合にはこの逆となる。
【0012】
但し、充放電駆動法における第2、第4のモードでは、この関係は逆になる。
【0013】
即ち、第2、4の選択電圧の極性と逆側になるほど明るくなる。
【0014】
一方、パルス幅変調方式の場合には、正負2値の電圧からなるパルス信号の幅を画素の表示すべき階調に応じて増減する。即ち、選択電圧が正の場合に、2値の電圧の負側の電圧をより長く印加すると画素は暗くなり、より短く印加すると明るくなる。逆に選択電圧が負の場合には、2値の電圧の正側の電圧をより長く印加すると画素は暗くなり、より短く印加すると明るくなる。
【0015】
なお、このパルス信号を構成する正負2値の電圧の内、選択電圧と同じ極性の電圧をオフ電圧、逆極性の電圧をオン電圧と定義する。
【0016】
但し、充放電駆動法における第2、第4のモードでは、この関係は逆になる。
【0017】
即ち、オン電圧となる時間が長くなるほど明るくなる。
【0018】
以上のように、電圧変調方式の場合には、少なくとも表示する階調数分の電圧値を与える必要があり、一般的にはデジタル化した表示階調データを電圧値に変換する、いわゆるD/A回路を信号電極数だけ設ける必要があり回路構成が複雑になり、消費電力も大きくなるといった欠点があり、特に電池駆動の携帯機器での使用はあまり適していない。
【0019】
一方、パルス幅変調方式の場合には、オン電圧とオフ電圧の2値の電圧からなるパルス信号のオン電圧とオフ電圧の時間幅の割合(一方が0の場合も含む。)を増減するだけの回路構成で済むので、回路構成が簡素なものとなり、消費電力も小さくなるといった利点があり、特に電池で駆動する携帯機器での使用には最適である。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このパルス幅変調方式の場合には、表示パターンによっては走査電極方向に表示むら(以後、クロストークと言う。)が発生するといった欠点
【0021】
がある。これについては、公開特許明細書(【公開番号】 H08160392 )に発生原因とその対策について開示されている。これによると、信号電極に印加する信号電圧波形、即ち、パルス信号の電圧変化により走査電極上にノイズ電圧を発生させることがクロストークの原因であって、クロストークの大きさは同じタイミングで電圧変化する信号電極の数に依存することが示されている。そして、各選択期間で各表示階調の画素の数をそれぞれ計数し、これによってオン電圧の印加する時間に補正を加えることによってクロストークを軽減する方法が示されている。
【0022】
このクロストーク対策では、表示する階調数分の計数回路及びこれに基づいて時間を補正する回路等が必要であり、構成要素及び消費電力が増大するといった欠点があった。
【0023】
そこで、本発明は、上のような課題に鑑みてなされたものであり、構成要素及び消費電力の増大を最小限に抑えてクロストークを軽減させる駆動方法、および液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0024】
また、本発明はこれを含む高品位でかつ小型・軽量でしかも安価である電子機器、および電力消費を抑えた主に電池で動作する携帯機器等の電子機器を提供すことを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、複数の走査電極及び複数の信号電極の交差位置に設けられた液晶素子を、各走査電極に対して選択期間に選択電圧を印加することに同期して各信号電極にオン電圧またはオフ電圧の信号電圧を印加することにより駆動する2端子型アクティブマトリクス液晶液晶素子の駆動方法であって、前記選択期間の開始からオフ電圧を印加するとともに当該選択期間の途中から終了までの所定期間においてオン電圧を印加する第1のパルス幅変調方式と、前記選択期間の開始から所定期間においてオン電圧を印加するとともに当該選択期間の残りの期間においてオフ電圧を印加する第2のパルス幅変調方式と、前記選択期間の途中の所定期間においてオン電圧又はオフ電圧を印加するとともに前記選択期間の開始から当該所定期間までの期間及び当該所定期間の終了から前記選択期間の終了までの期間においてオフ電圧又はオン電圧を印加する第3のパルス幅変調方式と、のうち少なくとも二つのパルス幅変調方式を混在させて実行し、各々の前記選択期間で前記各信号電極に与える総てのオン電圧又はオフ電圧の信号電圧は、前記パルス幅変調方式のうちのいずれか同じパルス幅変調方式を実行し、当該実行するパルス幅変調方式の種類を周期的に切り替えることを特徴とする。
【0026】
上記の駆動方法によれば、各パルス幅変調方式が前記画素電極と前記走査電極又は信号電極と対向する部分(以下、画素と略称する。)の電気的あるいは光学的特性に与える影響がほぼ相殺されクロストークが軽減する。
【0028】
上記の駆動方法によれば、各パルス幅変調方式毎に発生するクロストークが平均化されクロストークが軽減する。
【0029】
また、本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、上記の液晶素子の駆動方法において、前記走査電極の総てを一巡して選択する期間をフレーム期間とし、各々の前記走査電極が選択される時に、該走査電極に正の選択電圧が与えられる場合と負の選択電圧が与えられる場合とで、前記複数のパルス幅変調方式の内の各々のパルス変調方式を用いる頻度を連続する複数フレーム期間で同じにしてあることを特徴とする。
【0030】
上記の駆動方法によれば、各パルス幅変調方式毎に発生するクロストークが平均化されクロストークが軽減すると共に各画素に直流電圧成分が発生せず液晶の劣化が防止できる。
【0031】
また、本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、上記の液晶素子の駆動方法において、前記複数のパルス幅変調方式の内の各パルス幅変調方式を周期的に用いる頻度を該各パルス幅変調方式毎に用いる頻度を異ならせることを特徴とする。
【0032】
上記の駆動方法によれば、更に良くクロストークが軽減することができる。
【0033】
また、本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、上記の液晶素子の駆動方法において、各々の前記選択期間で、前記複数のパルス幅変調方式の内の少なくとも2種類以上の変調方式によるいずれかの信号電圧波形が前記信号電極にそれぞれ与えることを特徴とする。
【0034】
上記の駆動方法によれば、クロストークが軽減することができると共にフリッカも防止できる。
【0035】
また、本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、上記の液晶素子の駆動方法において、信号電極毎に異なるステップを実行することを特徴とする。
また、本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、上記の液晶素子の駆動方法において、各々の前記信号電極に与える信号電圧波形は、前記複数のパルス幅変調方式の内のいずれかの変調方式を周期的に切り替えた変調方式によるものであることを特徴とする。
【0036】
上記の駆動方法によれば、クロストークが軽減すると共にフリッカも防止できる。また、各画素毎に発生する表示むらが解消する。
【0037】
また、本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、上記の液晶素子の駆動方法において、各々の前記走査電極が選択される時に、該走査電極に正の選択電圧が与えられる場合と負の選択電圧が与えられる場合とで、前記複数のパルス幅変調方式の内の各々のパルス変調方式を用いる頻度を連続する複数フレーム期間で同じにしてあることを特徴とする。
【0038】
上記の駆動方法によれば、クロストークが軽減すると共にフリッカも防止でき、更に画素に直流電圧成分が発生しなくなり液晶の劣化を防止できる。
【0039】
また、本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、上記の液晶素子の駆動方法において、前記複数のパルス幅変調方式の内の、周期的に用いる複数のパルス幅変調方式の各々のパルス幅変調方式毎に用いる頻度を異ならせることによるものであることを特徴とする。
【0040】
上記の駆動方法によれば、より良くクロストークを軽減できる。
【0041】
また、本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、上記の液晶素子の駆動方法において、前記各選択期毎に周期的に用いる前記複数のパルス幅変調方式の内の、周期的に用いる複数のパルス幅変調方式の各々のパルス幅変調方式毎に用いる頻度を異ならせ方を、前記複数のパルス幅変調方式の内の各パルス幅変調方式の前記オン電圧あるいはオフ電圧の時間割合に応じてあることを特徴とする。
【0042】
上記の駆動方法によれば、更により良くクロストークを軽減できる。
【0043】
また、本発明に記載の液晶素子の駆動方法は、上記の液晶素子の駆動方法において、画素の電気的あるいは光学的特性の複数の状態に対応した前記複数のパルス幅変調方式の内の各パルス幅変調方式の前記オン電圧あるいはオフ電圧の時間割合の設定が、前記電気的あるいは光学的特性の複数の状態の内、少なくとも一部の状態に対応した前記複数のパルス幅変調方式の各パルス幅変調方式の前記オン電圧あるいはオフ電圧の時間割合がお互いに異なった設定であることを特徴とする。
【0044】
上記の駆動方法によれば、クロストークを軽減出来ると共に画素を適正な電気的あるいは光学的特性状態にできる。
【0045】
また、本発明に記載の液晶表示装置は、上記の液晶素子の駆動方法を実施する駆動手段を具備することを特徴とする。
【0046】
上記の液晶表示装置は、消費電力でかつクロストークの少ない高品質な画質を有する。
【0047】
また、本発明に記載の電子機器は、上記の液晶表示装置を具備したことを特徴とする。
【0048】
上記の電子機器は、消費電力でかつクロストークの少ない表示部材を有することになり、電子機器の品質を向上させる。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0051】
図1は本実施例の駆動方法による駆動波形を示す図、図2は液晶パネルの構成を示す図、図3は液晶パネルの表示内容を示す図である。
【0052】
まず、図2の説明をする。
【0053】
図2で、破線で囲んだ10が2端子型アクティブ液晶素子(液晶パネル)で、1、2は液晶層(図示せず。)を挟む一対の基板である。Y1〜Y5は基板1上に設けられた複数の走査電極、X1〜X5は基板2上に設けられた信号電極である。
【0054】
Sは非線形抵抗素子で、図では1箇所のみ代表して記号を付してあるが、基板1上に、走査電極Y1〜Y5と信号電極X1〜X5の交差部分毎に設けられている。非線形抵抗素子Sとして、本実施例では金属間に薄い絶縁膜を形成したMIM素子を用いているが、双方向性ダイオード特性を持ついかなる素子でも構わない。Pは画素電極で、図では1箇所のみ代表して記号を付してあるが、非線形抵抗素子Sに各々接続して設けられている。
【0055】
非線形抵抗素子Sとそれに接続されている画素電極P及び、この画素電極Pと信号電極の対向している部分とで、1つの画素を形成し、図2では代表して査電極Y1、Y2と信号電極X2のそれぞれの交差部に構成されている画素を画素1、画素2の記号を付してある。
【0056】
そして、説明の便宜上、画素に印加する電圧が高くなるとこの部分の透過率が小さくなって暗くなる、ノーマリ・ホワイト・モードになっているものとする。
【0057】
なお、走査電極及び信号電極の数が5本づつと少ないが、これは説明を簡略化する為で、実際の液晶パネルでは、一般的に各々数百本程度となっている。
【0058】
また、走査電極Y1〜Y5と信号電極X1〜X5を入れ替えて用いても良い。
【0059】
次に、図3の説明をする。図は、図2の液晶パネル10が表示する表示内容の一例を示し、ハッチングで示した走査電極Y1と信号電極X1、X3〜5で作る画素が黒表示で、他の画素はやや暗い表示となっている。
【0060】
ここで、図1を用いて駆動波形について説明をするが、図2の液晶パネル10で図3に示した表示内容を表示する場合の駆動電圧波形を示す。ここで、走査電極Y1〜Y5にはいわゆる充電駆動法による電圧波形が与えられているものとし、0Vを中心電圧として±Vs1の電圧のいずれかの2値の電圧を選択電圧として与え、信号電極X1〜X5に印加する電圧波形は、0Vを中心電圧として±Vsigの電圧のいずれかの2値の電圧でパルス幅変調しているものとする。
【0061】
図1(a)〜(e)は、各々走査電極Y1〜Y5の電圧波形を示し、同図(f)は信号電極X2の電圧波形、同図(g)は信号電極X1、X3〜X5の電圧波形を示す。
【0062】
図1で、横軸に時間、縦軸に電圧を示してあり、t1〜t5、T1〜T5は、それぞれ走査電極Y1〜Y5の内の同じ番号の付いた走査電極が順次選択される選択期間を示し、総ての走査電極Y1〜Y5が一巡選択される期間をフレームと呼ぶ。図1では、t1からt5までの期間を第1のフレーム、T1からT5までの期間を第2のフレームと呼ぶことにし、図中に示してある。
【0063】
走査電極Y1〜Y5に印加する電圧波形は、第1のフレームと第2のフレームの電圧波形のくり返しとなる。
【0064】
図1(a)〜(e)に示すように、選択電圧は走査電極Y1からY5に順次印加されていくが、選択電圧の極性は1選択期間毎に反転し、第1フレームでは奇数番の走査電極には正の選択電圧、偶数番の走査電極には負の選択電圧が印加し、第2フレームでは逆になる。そして、選択後に印加する電圧を保持電圧と呼ぶが、正の選択電圧が印加した後には0Vを基準に正の保持電圧を、負の選択電圧が印加した後には0Vを基準に負の保持電圧を印加する。この保持電圧の値については本実施例に直接関係しないので、ここでは電圧±Vsigを正負の保持電圧としてある。
【0065】
なお、本実施例では選択する走査電極の順番を上から下へ順にしてあるが、これに限るものではなく、例えばまず奇数番の走査電極だけを上から下へ選択し、その後、偶数番走査電極だけを上から下へ選択しても良い。また、選択電圧の極性の反転も1選択期間毎に限定するものではなく、2選択期間毎、あるいはnを3以上の数とし、n選択期間毎、あるいは更にフレーム期間毎にしても良い。
【0066】
走査電極Y1〜Y5にこのような電圧波形を印加し、これと同期して同図(f)、(g)に示す電圧波形を各信号電極X1〜X5に印加する。
【0067】
即ち、各信号電極X1〜X5に印加する電圧波形は、第1フレーム期間の奇数番の選択期間(t1、t3、t5)では、選択された走査電極に正の選択電圧が印加するが、この選択電圧と同極性の電圧+Vsigが前半、逆極性の電圧−Vsigが後半となるパルス電圧波形となり、第1フレーム期間の偶数番の選択期間(t2、t4)では、選択された走査電極に負の選択電圧が印加するが、この選択電圧と逆極性の電圧+Vsigが前半、同極性の電圧−Vsigが後半となるパルス電圧波形となり、更に、第2フレーム期間の奇数番の選択期間では、選択された走査電極に負の選択電圧が印加するが、この選択電圧と逆極性の電圧+Vsigが前半、同極性の電圧−Vsigが後半となるパルス電圧波形となり、第2フレーム期間の偶数番の選択期間では、選択された走査電極に正の選択電圧が印加するが、この選択電圧と同極性の電圧+Vsigが前半に逆極性の電圧−Vsigが後半となるパルス電圧波形となる。
【0068】
ここで、電圧±Vsigの内、ある選択期間に当該走査電極に与えられている選択電圧の極性と同じ極性の電圧をオフ電圧、逆極性の電圧をオン電圧とすると、正の選択電圧については、電圧+Vsigがオフ電圧、電圧−Vsigがオン電圧、負の選択電圧については、電圧−Vsigがオフ電圧、電圧+Vsigがオン電圧となる。
【0069】
すると、各信号電極X1〜X5に印加する電圧波形は、第1フレーム期間の奇数番の選択期間と第2フレーム期間の偶数番の選択期間では、前半がオフ電圧、後半がオン電圧となるパルス電圧波形(以後、右寄せ変調と言う。)となり、第1フレーム期間の偶数番の選択期間と第2フレーム期間の奇数番の選択期間では、前半がオン電圧、後半がオフ電圧となるパルス電圧波形(以後、左寄せ変調と言う。)となる。
【0070】
そして、各画素の表示階調に応じて、オン電圧となる時間を増減する。即ち、オン電圧となる時間を長くするほど暗くなるので、オン電圧となる時間を無い状態から選択期間一杯(オフ電圧となる時間が無い状態)までの間に設定する。
【0071】
よって、黒表示のない信号電極X2にかかる電圧波形は、図1(f)に示すように、オン電圧となる時間は各選択期間の一部である。一方、黒表示のある信号電極X1、X3〜X5にかかる電圧波形は、図1(g)に示すように、期間t1、T1の時ではオン電圧となる時間は各選択期間一杯となっていて、他の期間では図1(f)と同じになっている。
【0072】
以上の駆動波形となっており、第1フレーム期間の奇数番の走査電極上の画素と第2フレーム期間の偶数番の走査電極上の画素は右寄せ変調され、第1フレーム期間の偶数番の走査電極上の画素と第2フレーム期間の奇数番の走査電極上の画素は左寄せ変調される。言い換えれば、各画素は右寄せ変調と左寄せ変調が交互に繰り返されることになる。これを表にまとめると表1のようになる。
【0073】
【表1】
【0074】
次に、この駆動の動作の説明を行う。図4は図2の液晶パネル10の電気等価回路を示す図である。図4の電気等価回路でRYは走査電極Y1〜Y5の各々の画素間の抵抗、RXは信号電極X1〜X5の各々の画素間の抵抗、Cpixは画素電極Pと信号電極X1〜X5の各々とで形成される液晶層を誘電体とするコンデンサ、Sはスイッチ素子とで構成され、走査電極に選択電圧が印加した時のみに導通状態となる。なお、各符号は代表して1箇所だけ示してある。
【0075】
図5は、図4の電気等価回路の一部を簡略した電気等価回路を示す図である。
【0076】
図5は、走査電極Y1に選択電圧が印加された場合、即ちスイッチ素子が導通状態にある場合を示し、更に走査電極Y1の画素間抵抗を1つにまとめ、RYallとし、そして、信号電極X1〜X5の抵抗を無視したものである。このように簡略化すると信号電極X1〜X5を入力とする微分回路が形成されていることが解る。従って、信号電極X1〜X5の電圧変化によって、走査電極上に微分波形状のノイズ電圧が発生することになる。そして、同時に同方向に電圧変化する信号電極の数が多くなるほどこのノイズ電圧の大きさが大きくなる。
【0077】
次にこのノイズ電圧の影響について説明する。図6は、図1の液晶パネル10の画素1と画素2についての右寄せ変調時の各電圧を示す図である。図6で、601、602はそれぞれ走査電極Y1、Y2の液晶パネル10内部での電圧波形。603は信号電極X2の電圧波形、604は信号電極X1、X3〜X5の電圧波形、605は信号電極X2の電圧を基準とした走査電極Y1の電圧波形、606は信号電極X1、X3〜X5の電圧を基準とした走査電極Y2の電圧波形、607、608はそれぞれ画素1、2に印加する画素電圧を示す。
【0078】
ここでまず、画素1について説明する。選択期間t1で走査電極Y1に選択電圧が印加するが、走査電極Y1上の画素は画素1以外は黒表示となっており、図6の電圧波形604に示すように信号電極X1、X3〜X5の電圧は選択期間中変化しない。従って、図6の電圧波形603に示すように信号電極X2の電圧だけ選択期間の途中で変化する。従って、図6の電圧波形601に示すように走査電極Y1上に選択電圧を小さくする向きに小さな微分波形状のノイズ電圧が発生する。すると、走査電極Y1と信号電極X2の間の電圧は図6の電圧波形605に示すように小さななまりのある波形となり、よって、画素1の画素電圧は図の電圧波形607に示すようになる。
【0079】
次に、画素2について説明する。選択期間T2で走査電極Y2に選択電圧が印加するが、走査電極Y2上の画素は総てやや暗いとなっており、図6の電圧波形604と電圧波形603に示すように総ての信号電極X1〜X5の電圧は選択期間の途中で同時に変化する。従って、図6の電圧波形602に示すように走査電極Y2上に選択電圧を小さくする向きに大きな微分波形状のノイズ電圧が発生する。すると、走査電極Y2と信号電極X2の間の電圧は図6の電圧波形606に示すように大きななまりのある波形となり、よって、画素2の画素電圧は図6の電圧波形608に示すようになる。
【0080】
ここで、図6の電圧波形607と608を比べると、電圧波形608は電圧波形606に大きななまりがあるので、オン電圧が印加する期間での画素への充電が不足し、図中のΔV1で示しただけ小さくなる。即ち、画素2の画素電圧は画素1の画素電圧よりも小さくなる。
【0081】
よって、右寄せ変調の場合には、一般的に言うと、信号電極X1〜X5の電圧変化により走査電極上の生じさせるノイズ電圧は画素電圧を小さくする方向に作用する。
【0082】
図7は、図1の液晶パネル10の画素1と画素2についての左寄せ変調時の各電圧を示す図である。図7で、701、702はそれぞれ走査電極Y1、Y2の液晶パネル10内部での電圧波形。703は信号電極X2の電圧波形、704は信号電極X1、X3〜X5の電圧波形、705は信号電極X2の電圧を基準とした走査電極Y1の電圧波形、706は信号電極X1、X3〜X5の電圧を基準とした走査電極Y2の電圧波形、707、708はそれぞれ画素1、2に印加する画素電圧を示す。なお、図6との対比を容易にする為に、縦軸の各電圧は上が負、下が正になるように描いてある。
【0083】
ここでまず、画素1について説明する。選択期間T1で走査電極Y1に選択電圧が印加するが、走査電極Y1上の画素は画素1以外は黒表示となっており、図7の電圧波形704に示すように信号電極X1、X3〜X5の電圧は選択期間中変化しない。従って、図7の電圧波形703に示すように信号電極X2の電圧だけが選択期間の途中で変化する。従って、図7の電圧波形701に示すように走査電極Y1上に選択電圧を大きくする向きに小さな微分波形状のノイズ電圧が発生する。すると、走査電極Y1と信号電極X2の間の電圧は図7の電圧波形705に示すように小さななまりのある波形となり、よって、画素1の画素電圧は図7の電圧波形707に示すようになる。
【0084】
次に、画素2について説明する。選択期間t2で走査電極Y2に選択電圧が印加するが、走査電極Y2上の画素は総てやや暗いとなっており、図7の電圧波形704と電圧波形703に示すように総ての信号電極X1〜X5の電圧は選択期間の途中で同時に変化する。従って、図7の電圧波形702に示すように走査電極Y2上に選択電圧を大きくする向きに大きな微分波形状のノイズ電圧が発生する。すると、走査電極Y2と信号電極X2の間の電圧は図7の電圧波形706に示すように大きななまりのある波形となり、よって、画素2の画素電圧は図7の電圧波形708に示すようになる。
【0085】
ここで、図7の電圧波形707と708を比べると、電圧波形708は電圧波形706に大きななまりがあるので、オフ電圧が印加する期間での画素への充電がより多くなされ、図中のΔV2で示しただけ大きくなる。即ち、画素2の画素電圧は画素1の画素電圧よりも大きくなる。
【0086】
よって、左寄せ変調の場合には、一般的に言うと、信号電極X1〜X5の電圧変化により走査電極上の生じさせるノイズ電圧は画素電圧を大きくする方向に作用する。
【0087】
ここで、本実施例では、各画素は右寄せ変調と左寄せ変調を交互に行なっているので、例えば画素2のように右寄せ変調時に画素電圧が不足しても左寄せ変調時に過剰となるので、2フレーム期間ではほぼ平均化され、画素1とほぼ同じ明るさの表示となり、クロストークが軽減される。
【0088】
図8は、実際の液晶パネルで本実施例の駆動方法を行なった結果を示す図である。図8は、実際の液晶パネルの中央部に、ある階調(ここではやや暗い表示、透過率で10%程度)で塗りつぶした、小さな四角形を表示させ、背景部分の明るさを変化させた時の、この四角形部分の明るさ(透過率)の変化を調べたものである。図8で、801は変調方式を右寄せ変調のみとした場合、802は左寄せ変調のみとした場合、803は本実施例の右寄せ変調と左寄せ変調を交互に行なった場合を示す。
【0089】
図8の801の変化線で示すように、右寄せ変調のみの場合には背景部が黒に近い場合に比べ、背景部が四角形と同じ階調に近づくと明るくなる。一方、802の変化線で示すように、左寄せ変調のみの場合には背景部が黒に近い場合に比べ、背景部が四角形と同じ階調に近づくと暗くなる。そして、803の変化線で示すように、本実施例の右寄せ変調と左寄せ変調を交互に行なった場合には、右寄せ変調時と左寄せ変調時の影響が相殺され、背景部の明るさの変化に対する四角形部分の明るさの変動が小さく抑えられる。
【0090】
以上述べたように、右寄せ変調時と左寄せ変調時とで、各信号電極X1〜X5の電圧変化によって走査電極Y1〜Y5に発生させるノイズ電圧の各選択期間での影響がほぼ逆であることに着目し、右寄せ変調時と左寄せ変調とを併用することによってクロストークを軽減することが出来る。
【0091】
なお、本実施例では第1フレームの奇数番の走査電極Y1、3、5と第2フレームの偶数番の走査電極Y2、Y4を選択する時には、正の選択電圧を用いかつ右寄せ変調法が用いており、第1フレームの偶数番の走査電極Y2、4と第2フレームの奇数番の走査電極Y1、Y3、Y5を選択する時には負の選択電圧を用いかつ左せ変調法を用いている。即ち、総ての画素は、正に充電される時は右寄せ変調、負に充電される時は左寄せ変調となり、各画素に直流電圧成分が発生し、液晶の諸特性を劣化させる場合が考えられる。
【0092】
これを回避するには、走査電極Y1〜Y5を選択する際の選択電圧の正負両極性に対して右寄せ変調と左寄せ変調とを均等に用いれば良い。
【0093】
これを行う方法として種々の方法があるが、ここでは、1つの具体的な方法を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
表2に示すように、第2フレーム期間に続くフレーム期間を第3フレーム期間、更に第3フレーム期間に続くフレーム期間を第4フレーム期間とし、第4フレーム期間の後は第1フレーム期間が繰り返される。そして、第1、3フレームの奇数番の走査電極と第2、4フレームの偶数番の走査電極の選択期間に印加する選択電圧を正の選択電圧とし、第1、3フレームの偶数番の走査電極と第2、4フレームの奇数番の走査電極の選択期間に印加する選択電圧を負の選択電圧とする。この時、第1、4フレームでは奇数番の走査電極の選択期間と第2、3フレームの偶数番の走査電極が選択期間では右寄せ変調を行い、残る期間では左寄せ変調を行う。
【0096】
これによって、走査電極Y1〜Y5を選択する際の選択電圧の正負両極性に対して右寄せ変調と左寄せ変調とが均等に用いられることになり、液晶の劣化を防止出来る。
【0097】
また、右寄せ変調と左寄せ変調方式を混在させる場合を例にして説明したがこれに限定するものではない。
【0098】
例えば、変調方式として、右寄せ変調と左寄せ変調方式の他にも色々考えられる。図9は他の変調方式を示す図である。
【0099】
図9で901は、各選択期間のほぼ中央にオン電圧を割り振った変調方式(以後、中央寄せ変調と言う。)での信号電極に与える電圧波形を示し、選択期間の長さをtH、オン電圧となる長さをtONとした時、各選択期間の開始時刻を0として、オン電圧が時刻(tH/2−tON/2)から時刻(tH/2+tON/2)までとなっている。
【0100】
図9で902は、同様に各選択期間のほぼ中央にオフ電圧を割り振った変調方式(以後、左右分散変調と言う。)での信号電極に与える電圧波形を示し、オン電圧が時刻0からtH/2と時刻(tH−tON/2)から時刻tHまでと2つに分散した形になっている。更にこの他に一般的化して、各選択期間でオフ電圧あるいはオン電圧となる開始時間を所定の時間としたその他のパルス幅変調方式が考えられる。
【0101】
そして、これらの変調方式及び右寄せ変調方式と左寄せ変調方式の内の2つ以上の変調方式を混在させても良い。この際、各変調方式毎に、図8に示したように、実際のパネルの中央部に四角形を表示させ背景部の明るさを変えた場合の四角形の明るさの変化をプロットし、各変調方式のプロットの変化が出来るだけ相補的なものを選び組み合わせるのがより好ましい。
【0102】
更に、本実施例では走査電極を駆動する方法として、最も一般的な充電駆動法を例に挙げたが、走査電極を駆動する方法を限定するものではなく、例えばリセット付き充電駆動法、充放電駆動法等であっても無論良く、一般化して各走査電極を順次選択し、選択された走査電極に選択電圧を印加するいかなる走査電極の駆動方法についても適用可能である。
【0103】
〔実施例2〕
実施例1では、各画素に対し、右寄せ変調方式と左寄せ変調方式を平均して1対1の割合で用いていた。しかしながら、必ずしも1対1の割合である必要はなく、必要ならば任意の割合で用いても良い。例えば、右寄せ変調方式を1とした時、左寄せ変調方式を3の割合で用いても良い。
【0104】
具体的な一例を挙げると表3のようになる。なお、走査電極の駆動方法は実施例1と同じものとする。
【0105】
【表3】
【0106】
このような駆動方法で実際の液晶パネルを駆動した結果を示す。
【0107】
図10は、実際の液晶パネルで本実施例の駆動方法を行なった結果を示す図である。即ち、図8と同様に実際の液晶パネルの中央部に、ある階調(ここではやや暗い表示、透過率で10%程度)で塗りつぶした、小さな四角形を表示させ、背景部分の明るさを変化させた時の、この四角形部分の明るさ(透過率)の変化を示す図である。
【0108】
図10で、801は変調方式を右寄せ変調のみとした場合、802は左寄せ変調のみとした場合、803は実施例1の右寄せ変調と左寄せ変調を1対1の割合で混在した場合、1001は右寄せ変調と左寄せ変調を1対3の割合で混在した場合を示す。図10で、背景部の明るさを変化させた時の四角形部の明るさの変化は、実施例1の右寄せ変調と左寄せ変調を1対1の割合で混在した場合のプロット803より、本実施例の右寄せ変調と左寄せ変調を1対3の割合で混在した場合のプロット1001の方が変化が少なくなっている。即ち、右寄せ変調の影響の度合が、左寄せ変調の影響の度合より大きいので、右寄せ変調を使用する割合を左寄せ変調より少なくすることにより、クロストークをより軽減することが出来る。
【0109】
無論、これについても実施例1と同様に、右寄せ変調と左寄せ変調のみの組み合わせだけでなく、中央寄せ変調、左右分散変調、その他の変調方式との組み合わせの場合でも適用でき、走査電極の駆動方法についても充電駆動法に限定するものではない。
【0110】
〔実施例3〕
実施例1と2で説明した駆動方法では、ある選択期間に用いる変調方式は、総ての信号電極について同一の変調方式であった。この方法は、1フレーム期間の長さが短い場合、即ち、走査電極数が割と少ない場合には良いが、走査電極数が多くなってフレーム期間の長さが長くなると、各変調方式によるクロストークがフリッカとなって見える場合がある。このような場合には、各選択期間で、信号電極毎に変調方式を異ならせても良い。例えば、図2の液晶パネル10を駆動する際に、表4のようにすれば良い。
【0111】
【表4】
【0112】
即ち、第1フレームでは、
奇数番の走査電極Y1、Y3、Y5を選択する時、
奇数番の信号電極X1、X3、X5を左寄せ変調し、
偶数番の信号電極X2、X4を右寄せ変調し、
偶数番の走査電極Y2、Y4を選択する時、
奇数番の信号電極X1、X3、X5を右寄せ変調し、
偶数番の信号電極X2、X4を左寄せ変調し、
第2フレームでは、
奇数番の走査電極Y1、Y3、Y5を選択する時、
奇数番の信号電極X1、X3、X5を右寄せ変調し、
偶数番の信号電極X2、X4を左寄せ変調し、
偶数番の走査電極Y2、Y4を選択する時、
奇数番の信号電極X1、X3、X5を左寄せ変調し、
偶数番の信号電極X2、X4を右寄せ変調する。
【0113】
ここで、走査電極Y1〜Y5にはそれぞれ図1(a)〜(e)の電圧波形を印加するものとし、そして図3で示した表示内容を図2の液晶パネル10が表示する場合を考える。
【0114】
図11は、図2の液晶パネル10の画素1と画素2についての選択期間t1とT2での各電圧を示す図である。
【0115】
図11で、1101、1102はそれぞれ走査電極Y1、Y2の液晶パネル10内部での電圧波形。1103は期間t1での信号電極X2の電圧波形、1104は期間T2での信号電極X2、X4の電圧波形、1105は期間t1での信号電極X1、X3〜X5の電圧波形、1106は期間T2での信号電極X1、X3、X5の電圧波形、1107は信号電極X2の電圧を基準とした走査電極Y1の電圧波形、1108は信号電極X1、X3〜X5の電圧を基準とした走査電極Y2の電圧波形、1109、1110はそれぞれ画素1、2に印加する画素電圧を示す。
【0116】
ここでまず、画素1について説明する。選択期間t1で走査電極Y1に選択電圧が印加するが、走査電極Y1上の画素は画素1以外は黒表示となっており、図11の電圧波形1105に示すように信号電極X1、X3〜X5の電圧は選択期間中変化しない。従って、図11の電圧波形1103に示すように信号電極X2の電圧だけ選択期間の途中で変化する。従って、図11の電圧波形1101に示すように走査電極Y1上に選択電圧を小さくする向きに小さな微分波形状のノイズ電圧が発生する。すると、走査電極Y1と信号電極X2の間の電圧は図11の電圧波形1107に示すように小さななまりのある波形となり、よって、画素1の画素電圧は図11の電圧波形1109に示すようになる。
【0117】
次に、画素2について説明する。選択期間T2で走査電極Y2に選択電圧が印加するが、走査電極Y2上の画素は総てやや暗い表示である。よって、図11の電圧波形1106に示すように左寄せ変調された奇数番の信号電極X1、3、5の電圧が同時に変化し、図11の電圧波形1102に示すように走査電極Y2上に選択電圧を大きくする向きにやや大きな微分波形状のノイズ電圧が発生する。そして、図11の電圧波形1104に示すように右寄せ変調された偶数番の信号電極X2、4の電圧が同時に変化し、図11の電圧波形1102に示すように走査電極Y2上に選択電圧を小さくする向きにやや大きな微分波形状のノイズ電圧が発生する。
【0118】
従って、図11の電圧波形1102に示すように走査電極Y2上に選択電圧を大きくする向きと小さくする向きのやや大きな微分波形状の2つのノイズ電圧が発生する。すると、走査電極Y2と信号電極X2の間の電圧は図11の電圧波形1108に示すようになり、よって、画素2の画素電圧は図11の電圧波形1110に示すようになる。
【0119】
ここで、図11の電圧波形1109と1110を比べると、電圧波形1110は電圧波形1108にやや大きな上に凸のノイズ電圧と波形のなまりの両方があるので、凸のノイズ電圧がある分だけ画素への充電が多めになされ、右寄せ変調によるノイズ電圧が発生する直前では図中ΔV3だけ画素2の電圧が高くなるが、その後のなまりの分だけ画素2への充電は少なめになされる。
【0120】
よって、選択期間が終わる時には、ノイズ電圧の殆どない電圧波形1107で充電される画素1の電圧との差は図中のΔV4で示したように殆どないかあっても僅かなものとなる。以上のように、左寄せ変調による信号電圧波形が与えられた信号電極が走査電極に生じさせる画素電圧を過剰にするノイズ電圧と、右寄せ変調よる信号電圧波形が与えられた信号電極が走査電極に生じさせる画素電圧を不足させるノイズ電圧の影響がほぼ相殺することになるので、画素1とほぼ同じ明るさの表示となり、クロストークが軽減される。
【0121】
ここでは、右寄せ変調による信号電圧波形の与えられた信号電極上の画素について述べたが、左寄せ変調による信号電圧波形の与えられた信号電極上の画素についても同様に左寄せ変調による信号電圧波形の与えられた信号電極が走査電極に生じさせる画素電圧を過剰にするノイズ電圧と、右寄せ変調による信号電圧波形の与えられた信号電極が走査電極に生じさせる画素電圧を不足させるノイズ電圧の影響がほぼ相殺し、クロストークが軽減される。
【0122】
以上述べたように、実施例1と同様の効果が得られる。
【0123】
更に、同時に同じ向きに電圧変化する信号電極の数は、多くても総ての信号電極の半分にすぎず、これらが走査電極に生じさせるノイズ電圧も大きさも総ての信号電極が同時に同じ向きに電圧変化する場合と比べて、約半分になる。
【0124】
よって、もともと各変調方式で生じさせるノイズ電圧、言い換えればクロストークが小さくなっており、よりクロストークを軽減できる。
【0125】
ここで、本実施例では、1選択期間毎に奇数番の信号電極と偶数番の信号電極の変調方式を右寄せ変調方式と左寄せ変調方式に互いに交互に切り替えているが、この切替え周期はこれに限定するものではなく、例えば、複数選択期間毎、1ないし複数フレーム期間毎であっても良い。あるいは、奇数番の信号電極は左寄せ変調、偶数番の信号電極は右寄せ変調方式と全く切り替えなくとも良いが、こうすると特定の信号電極上の画素は特定の変調方式で階調表示することになり、各変調方式で同じ階調を表示した際に、例えば一方の階調方式でのオン電圧の時間の設定が少しでも誤った設定になると、特定の信号電極上の画素毎に異なった明るさとなり、これが縦筋のむらに見える場合がある。従って、好ましくは本実施例で示したように交互に切り替えた方が良い。
【0126】
更に、走査電極Y1〜Y5のそれぞれが正の選択電圧と負の選択電圧で選択される時に、各々の信号電極X1〜X5について、右寄せ変調方式と左寄せ変調方式による信号電圧が与える頻度が複数フレーム期間で均等になるように設定することが好ましい。これによって、液晶パネル10の総ての画素に直流電圧成分がのるのを防止でき、液晶の劣化を防止できる。
【0127】
更に、本実施例では、同じ選択期間に同じ変調方式をとる信号電極の組を奇数番の信号電極と偶数番の信号電極としたが、これについてもこれに限定するものではなく、例えば、kを任意の正整数とし、信号電極に並び順に番号を付し、ある番号iについて、iの2×kの剰余がk未満の信号電極とk以上の信号電極で組分けしても良い。更に、1ないし複数選択期間毎、1ないし複数フレーム期間毎に同じ変調方式をとる信号電極の組を組み替えても良い。例えば、jを1ないし複数選択期間毎、1ないし複数フレーム期間毎に変化する整数とし、(i+j)の2×kの剰余がk未満の信号電極とk以上の信号電極で逐次組分けしても良い。
【0128】
また更に実施例1と同様に、各選択期間で同時に用いる変調方式の組み合わせは右寄せ変調と左寄せ変調の組み合わせに限定するものではなく、これらの変調方式と中央寄せ変調、左右分散変調をはじめとするその他のパルス幅変調方式の内の少なくとも2つ以上の組み合わせでも良く、走査電極を駆動する方法も本実施例で例として用いた充電駆動法に限定されるものではなく、他の駆動方法でも構わない。
【0129】
〔実施例4〕
実施例3では、各選択期間に用いられる変調方式は、右寄せ変調方式と左寄せ変調方式を約1対1の割合で用いていた。しかしながら、必ずしも1対1の割合である必要はなく、必要ならば任意の割合で用いても良い。例えば、右寄せ変調方式が各走査電極に生じさせるノイズ電圧の影響が左寄せ変調方式による影響よりも大きい場合には、同じ選択期間で、右寄せ変調方式を1とした時、左寄せ変調方式を3の割合で用いても良い。
【0130】
具体的な一例として、表5のように各選択期間で各信号電極のとる変調方式を設定すれば良い。
【0131】
【表5】
【0132】
このようにすることによって、実施例2と同様に、よりクロストークを軽減することが出来る。無論、実施例1と同様に、各選択期間で同時に用いる変調方式の組み合わせは右寄せ変調と左寄せ変調の組み合わせに限定するものではなく、これらの変調方式と中央寄せ変調、左右分散変調をはじめとするその他のパルス幅変調方式の内の少なくとも2つ以上の組み合わせでも良く、走査電極を駆動する方法も本実施例で例として用いた充電駆動法に限定されるものではなく、他の駆動方法でも構わない。
【0133】
〔実施例5〕
実施例4では、各選択期間に用いる変調方式の、右寄せ変調方式と左寄せ変調方式の用いる割合を、各表示階調によらず一定の1対3の割合で用いていた。しかしながら、必ずしも一定の割合である必要はなく、必要ならば各階調毎に別の割合で用いても良い。例えば、暗めの表示では明るめの表示の時より右寄せ変調方式が各走査電極に生じさせるノイズ電圧の影響が左寄せ変調方式による影響よりも大きい場合には、暗めの表示に対応した変調として右寄せ変調方式を1、左寄せ変調方式を3の割合とし、明るめの表示に対応した変調として右寄せ変調方式を1、左寄せ変調方式を1の割合としで用いても良い。これは、前者については実施例4で示した方法、後者については実施例3で示した方法を行なえば良い。
【0134】
また更に実施例1と同様に、各選択期間で同時に用いる変調方式の組み合わせは右寄せ変調と左寄せ変調の組み合わせに限定するものではなく、これらの変調方式と中央寄せ変調、左右分散変調をはじめとするその他のパルス幅変調方式の内の少なくとも2つ以上の組み合わせでも良く、走査電極を駆動する方法も本実施例で例として用いた充電駆動法に限定されるものではなく、他の駆動方法でも構わない。
【0135】
〔実施例6〕
実施例1から5では、各選択期間に用いる各変調方式でのオン電圧の長さについて、特に言及していなかったが、少なくともある表示階調に対応したオン電圧の長さを、混在して用いる変調方式毎に異ならせる必要がある。これは同じ長さのオン電圧が選択期間に印加しても、選択期間のオン電圧が印加する時間的な位置によって、画素を充電する量が異なるからである。図12は、実際の液晶パネルで、左寄せ変調方式と右寄せ変調方式でのオン電圧の時間と透過率との関係を示す図である。ここで、横軸は選択期間を1とした時のオン電圧の長さを示し、縦軸は透過率を表示階調数で示してある。即ち、人の目は、おおおそ透過率の対数を表示階調と認識するので、ここでは階調数を0〜15の16階調とし、オン電圧の長さが選択時間と同じ時の透過率をT(黒)とし、オン電圧の長さが0の時の透過率をT(白)とし、オン時間がtONの時の透過率をT(tON)とし、a0×Log(T(tON)/T(黒))として、オン電圧の時間と透過率(階調数)の関係を示してある。但し、Log(X)はXの常用対数、a0はa0×Log(T(白)/T(黒))=15を満たす定数である。
【0136】
そして、1201は左寄せ変調方式だけでのオン電圧の時間の長さと透過率の関係を示す線、1202は右寄せ変調方式だけでのオン電圧の時間の長さと透過率の関係を示す線である。
【0137】
線1201と線1202を比べてわかるように同じ透過率(階調)にするのに必要なオン電圧の長さは大きく異なる。例えば、オン電圧の時間を選択電圧の半分した場合に、左寄せ変調ではほぼ真ん中の階調となり、右寄せ変調では最も暗い階調にほぼなってしまう。よって仮に、混在して用いる変調方式の総ての変調方式に、少なくともある階調において、同じオン電圧の時間を与えるとその階調では適正な階調表示が出来なくなる。
【0138】
以上述べたように、変調方式毎に、表示階調に対応するオン電圧の時間の長さを設定する必要がある。この設定は、例えば、混在して用いる変調方式について、それぞれ個別の変調方式で駆動し、オン電圧の時間と透過率との関係を実験的に測定することによって求め、所望する階調(透過率)に対応したオン電圧の時間をその変調方式でのオン電圧の時間とすれば良い。即ち例えば、図12から求めた各階調に対応する左寄せと右寄せ変調方式でのオン電圧の時間は表6のようになる。
【0139】
【表6】
【0140】
無論、これは筆者等が用いた液晶パネルでの結果であって、液晶パネルを構成するスイッチ素子の電気特性、液晶の電気光学特性や走査電極の駆動方法によっても異なるので、実際に使用する液晶パネルでの最適値を用いる必要がある。
【0141】
以上のように、混在して用いる変調方式の各々の変調方式毎に各表示階調に対応したオン電圧の時間を設定することによって適正な階調表示を行うことが出来る。
【0142】
〔実施例7〕
実施例1から6で述べた駆動方法を用いる液晶表示装置の具体的な一例を説明する。
【0143】
本実施例では実施例1で述べた駆動方法、即ち、図2に示した液晶パネル10の走査電極Y1〜Y5を充電駆動法で上から下へ順に選択する駆動をし、第1フレームの奇数番の走査電極が選択された時と第2フレームの偶数番の走査電極が選択された時に、信号電極X1〜X5を右寄せ駆動し、第1フレームの偶数番の走査電極が選択された時と第2フレームの奇数番の走査電極が選択された時に、信号電極X1〜X5を左寄せ駆動する駆動方法をものとする。
【0144】
図13は本実施例の液晶表示装置の一構成例を示す図である。 図13で、10は実施例1の図2で説明した液晶パネル10、131は液晶パネル10の信号電極X1〜X5に駆動電圧波形を供給する回路(以後、Xドライバと言う。)、132は液晶パネル10の走査電極Y1〜Y5に駆動電圧波形を供給する回路(以後、Yドライバと言う。)、133は信号電極X1〜X5に供給する駆動電圧波形と走査電極Y1〜Y5に供給する駆動電圧波形の各電圧を発生する電源回路で、134は外部から供給される数本の同期信号群、135は外部から供給される液晶パネル10の表示内容を指定する数本の表示データ、136はXドライバ131、Yドライバ132の動作を制御する制御回路である。
【0145】
そして、1331は電源133がXドライバ131に供給する複数の電圧からなる電源群、1332は電源133がYドライバ132に供給する複数の電圧からなる電源群である。
【0146】
更に、1361は制御回路136がXドライバ131に供給する複数の信号からなる制御信号群、1362は制御回路136がYドライバ132に供給する複数の信号からなる制御信号群で、同期信号群134の信号に同期して出力される。
【0147】
なお、制御信号群1361には、表示データ135を適当に加工したものが含まれる。以上の構成となっている。
【0148】
ここで、制御回路136以外の構成は従来の液晶表示装置と全く同じ構成で、制御回路136が、Xドライバ131を制御する為の信号群1361の一部の信号が異なるだけである。
【0149】
次に本実施例の液晶表示装置の動作について説明する。まず、電源回路133は、正負2つの電圧±Vsigを電源群1331として、Xドライバ131に供給し、正負2つの選択電圧±Vs1と正負2つの保持電圧±Vsigを電源群1332として、Yドライバ132に供給する。電源回路133の構成は従来技術の液晶表示装置と同じであり詳細な構成の説明は省略する。
【0150】
次に、Yドライバ132は制御信号群1362の信号で制御されて、走査電極Y1〜Y5に充電駆動法による電圧波形を供給する。これについても従来技術の液晶表示装置のYドライバと同じであり、Yドライバ132と制御信号群1362についての詳細な説明は省略するが、図1(a)〜(e)の電圧波形をそれぞれ走査電極Y1〜Y5に供給するものとする。
【0151】
そして、Xドライバ131は制御信号群1361の信号で制御されて、信号電極X1〜X5にパルス幅変調による電圧波形を供給する。これについても従来技術の液晶表示装置のXドライバと同じであるが、本実施例の説明に必要なので、その詳細な説明を行う。
【0152】
図14はXドライバ131の一構成例を示し、図15は制御信号群1361の各信号とXドライバ131内部の信号のタイミングを示す図である。
【0153】
図14で、破線で囲んだ131及び楕円で囲んだ1361、1331は、図13のXドライバ131及び制御信号群1361、電圧線群1331である。
【0154】
図14で、141はシフトレジスタ回路、142はデータ保持回路、143は計数回路、144は大小比較回路、145は排他的論理和回路、146はスイッチ回路である。そして、電圧群1331は+Vsig、−Vsigの2つの電圧から構成されていて、制御信号群1361は信号XSCL、LP、RES、GCP、POL、DATAから構成されている。なお、信号DATAは図13の表示データ135を加工したものであり、これについては後で説明する。
【0155】
図15(a)は、図1(a)の走査電極Y1の電圧波形で、同図(b)は、図14の信号DATA、図15(c)は図14の信号XSCL、図15(d)〜(h)は、それぞれ図14のシフトレジスタ回路141の右から1番目〜5番目の内容、図15(i)は図14の信号LP、図15(j)〜(n)は、それぞれ図14のデータ保持回路142の左から1番目〜5番目の内容、図15(o)は、図14の信号RES、図15(p)は図14の信号GCP、図15(q)は図14の計数回路143の内容、図15(r)は図14の信号POLである。
【0156】
ここで、図14のシフトレジスタ回路141は、階調表示数に対応したビット数と信号電極数の段数を持ち、ここでは階調数を16、信号電極数を5とし、これに対応した4ビット×5段のシフトレジスタである。そして、信号XSCLに同期して、表示データである信号DATAを取り込み、右から左へと信号DATAの内容を取り込み、シフトして行く。
【0157】
ここで、y番目の走査電極Yyとx番目の信号電極Xxの位置の画素に対応する信号DATAの内容をDyxと表すと、図15(a)、(b)、(c)、(d)〜(h)に示すように、y番目の走査電極が選択される期間の1選択期間前に、信号DATAの内容Dy1〜Dy5をシフトレジスタ回路141に取り込み、シフトする。
【0158】
データ保持回路142は、シフトレジスタ回路141のビット数と段数に対応した数のラッチ回路からなり、図15(c)〜(n)に示すように、信号XSCLが信号電極数のクロックを出力する毎にクロック信号を発生する信号LPに同期し、シフトレジスタ回路141の内容を取り込む。
【0159】
計数回路143は、図15(o)、(p)、(q)に示すように、クロック信号である信号GCPに同期して1づつ加算計数し、信号RESによって0になる。なお、ここでは信号GCPは1選択期間にクロックを14発、発生する。即ち、計数回路143は0から14の値をとり、それを大小比較回路144に出力する。またここでは、信号RESは、信号LPと全く同じものである。
【0160】
大小比較回路144も信号電極数と同じ数からなり、各大小比較回路144は計数回路143が出力する計数値とデータ保持回路142の各4ビットのラッチ回路で表される数値との大小比較をそれぞれ行い、その結果を出力する。例えば、データ保持回路142の各4ビットのラッチ回路で表される数値が計数回路143が出力する計数値以上になった場合に"1"の信号を出力し、それ以外では、"0"の信号を出力する。
【0161】
排他的論理和回路145は、大小比較回路144の出力結果と信号POLとの排他的論理和を出力する。例えば、大小比較回路144の出力が”1”でかつ信号POLが”0”の場合と大小比較回路144の出力が”0”でかつ信号POLが”1”の場合に”1”を出力し、その他の場合には”0”を出力する。
【0162】
スイッチ回路145も信号電極数と同じ数からなり、排他的論理和回路145の出力結果に応じてそれぞれ電圧+Vsigか電圧−Vsigの何れかの電圧を選択して、図13の液晶パネル10の信号電極X1〜X5に出力する。例えば、排他的論理和回路145の出力が”0”の場合には、電圧+Vsigを、”1”の場合に−Vsigを選択し、出力する。
【0163】
図16は、データ保持回路142の各4ビットのラッチ回路で表される数値と出力電圧波形の関係を示す図である。
【0164】
図で、(a)は信号RES、同図(b)は信号GCP、同図(c)は計数回路143の内容を示し、同図(d)〜(s)は、それぞれデータ保持回路142の各4ビットのラッチ回路で表される数値が0〜15の場合の出力波形を示す。なお、この図では信号POLが”1”の場合を示し、信号POLが”0”の場合には、出力電圧+Vsigと−Vsigを入れ替えた電圧が出力される。Xドライバ131は以上の構成となっている。
【0165】
よって、ある走査電極を選択する時にその選択期間の1選択期間前に、信号DATA(4ビット)として、図13の表示データ135をシフトレジスタ回路141に入力しシフトしておき、これを、その選択期間の開始時に信号LPに同期して、データ保持回路142に取り込み、そしてこの選択期間で、当該走査電極に負の選択電圧が印加する場合には、信号POLを”1”とし、正の選択電圧が印加する場合には、信号POLを”0”とすれば、選択期間の後半に発生する右寄せ変調が出来る。この時、データ保持回路142の各4ビットで表される数値が大きくなる程、オン電圧の時間が短くなる。そして、右寄せ変調時用に信号GCPの各クロック間隔を適当に選ぶことによって、各階調毎に対応したオン電圧の時間を設定出来る。
【0166】
また、図14のシフトレジスタ回路141に、ある選択期間の1選択期間前に入力する信号DATA(4ビット)として、図13の表示データ135の各ビットの”1”と”0”を入れ替えたデータ(以後、補数表示データと言う。)をシフトレジスタ回路141に入力しシフトしておき、これを、その選択期間の開始時に信号LPに同期して、データ保持回路142に取り込み、そしてこの選択期間で、当該走査電極に負の選択電圧が印加する場合には、信号POLを”0”とし、正の選択電圧が印加する場合には、信号POLを”1”とすれば、オン電圧が各選択期間の前半に発生する左寄せ変調が出来る。この時、データ保持回路142の各4ビットで表される数値が小さくなると、言い換えるとこれに対応する表示データ135の値が大きくなるとオン電圧の時間が短くなる。そして、左寄せ変調時用に信号GCPの各クロック間隔を適当に選ぶことによって、各階調毎に対応したオン電圧の時間を設定出来る。
【0167】
逆に言うと、図13の制御回路136は、ある選択期間の1選択期間前にXドライバ131に供給する信号DATAを、その選択期間が右寄せ変調の場合に表示データ135をそのまま使い(以後、非補数表示データと言う。)、左寄せ変調の場合に補数表示データを使う制御と、右寄せ変調、左寄せ変調のいずれかとその選択期間に用いられる選択電圧の極性に応じた信号POLの制御、右寄せ変調、左寄せ変調のいずれかに応じた信号GCPの制御を行う。そして、このように制御された信号を制御信号群1361としてXドライバ131に供給する。
【0168】
具体的には、表7のように設定すれば良い。但し、表の表示データ値はXドライバ131のデータ保持回路142内の値を示し、1選択期間前に信号DATAとして、表示データ135を非補数表示データまたは補数表示データとして、Xドライバ131に供給する。
【0169】
【表7】
【0170】
本実施例に液晶表示装置は以上述べた動作をする。よって、実施例1で述べた駆動法により駆動出来る液晶表示装置が具現出来、よって実施例1で述べた効果が得られる。
【0171】
ここで、制御回路136の回路構成以外は従来の液晶表示装置の構成と全く同じで、制御回路136についても、この回路が出力する信号POLとGCPの制御方法の若干の変更と表示データ135を補数化するしないの制御の付加をするだけで良い。従って、制御回路136の回路は、一般的には集積回路で作られていているので、この程度の変更、付加によるコスト及び消費電力の増加は殆ど無い。
【0172】
又、本実施例で説明したXドライバ131の構成は、これに限るものでは無論なく、同様の信号電圧波形を出力出来ればいかなる構成でも構わない。
【0173】
更に、本実施例ではXドライバ131に右寄せ、左寄せ変調の動作をさせたが、例えば中央寄せ変調、左右分散変調やその他の変調方法の動作をさせることも容易に可能である。即ち、本実施例では信号RESを信号LPと同じにしてあるが、信号RESを信号LPと同じに選択期間の始めに立ち上げ、更に選択期間の中央でもう1度立ち上げる信号とし、これに同期させて信号POLを選択期間の前半と後半でその状態が逆になる信号にすれば良い。そして信号GCPを、信号RESの立上がりから次の立上がりまでの間に14発、クロックを出力する信号にする。こうすれば、例えば、選択期間の前半の信号POLが”1”の時に、始めが電圧−Vsig、後が電圧+Vsigとなる信号電圧波形が選択期間の前半に出力され、選択期間の後半で信号POLが”0”と反転することによって始めが電圧+Vsig、後が電圧−Vsigとなる信号電圧波形が選択期間の後半に出力されることになって、結局、選択期間の中央部分が電圧+Vsigとなる信号電圧波形を作ることが出来る。よって、信号POLの与え方と選択期間の前半と後半の信号GCPのクロック間隔を適当に選べば色々な変調方法を行うことが可能である。
【0174】
〔実施例8〕
実施例7では実施例1の駆動法を行う液晶表示装置について説明したが、実施例2〜6で述べた他の駆動方法を行う液晶表示装置も具現できる。本実施例では実施例3で述べた駆動方法をする液晶表示装置の具体的な例を説明する。図17は本実施例の液晶表示装置の一構成例を示す図である。図中、171、176、1761以外の構成と動作は図13の液晶表示装置と同じで、同じ番号を付して説明を省略する。171はXドライバ、176は制御回路、1761は制御回路176が出力する、Xドライバ171を制御する制御信号である。
【0175】
ここで、Xドライバ171の構成と動作について説明する。図18はXドライバ171の構成を示す図である。図18で、制御信号1761を構成する信号POL1、POL2と信号GCP1、GCP2がそれぞれ、図13の制御信号1361の信号POLと信号GCPの替わりに設けられ、図18でXドライバ171の構成要素として計数回路1431と1432が図14の計数回路143の替わりに設けられいる以外は図13のXドライバ131と同じ構成となっている。同じ構成部分には同じ番号、記号を付して説明を省略する。
【0176】
2つの信号POL1、POL2はそれぞれ排他的論理和回路145の一方の入力に交互に接続されている。そして、1431、1432はそれぞれ図14の計数回路143と同じ構成と動作をする計数回路である。即ち、図18で計数回路1431、1432は2つの信号GCP1、GCP2のクロック信号でそれぞれ+1づつ加算計数され、信号RESで0になる。そしてこれらの出力はそれぞれ大小比較回路144の一方の入力に交互に接続されている。
【0177】
よって、ある選択期間の1選択期間前に信号DATAとして、例えばDy1、3、5を補数表示データ、Dy2、4を非補数表示データとしてシフトレジスタ141に取り込みシフトし、その選択期間に用いられる選択電圧が正の場合に信号POL1を”0”、信号POL2を”1”とし、選択電圧が負の場合に信号POL1を”1”、信号POL2を”0”とすれば、奇数番の信号電極では左寄せ変調、偶数番の信号電極でが右寄せ変調となる。無論、Dy1、3、5を非補数表示データ、Dy2、4を補数表示データとしてシフトレジスタ141に取り込みシフトしておき、その選択期間に用いられる選択電圧が正の場合に信号POL1を”1”、信号POL2を”0”とし、選択電圧が負の場合に信号POL1を"0"、信号POL2を”1”とすれば、奇数番の信号電極では右せ変調、偶数番の信号電極でが左寄せ変調となる。Xドライバ171は以上の構成と動作をする。
【0178】
次に、図17の制御回路176は、Xドライバ171へ供給する制御信号1761を作るが、制御信号1761に含まれる信号DATA、POL1、2以外は図13の制御信号1361と同じである。
【0179】
ここで、信号DATAは、Xドライバ171の保持回路内のデータが下表のようなるように、各選択期間の1選択期間前に、表示データを補数化するかしないかの制御がなされ、そして信号POL1、2を各選択期間で表8に示した状態に制御する。ここで、奇数番の信号電極についてのオン電圧の時間は信号GCP1で設定され、偶数番の信号電極についてのオン電圧の時間は信号GCP2で設定されることは言うまでもない。
【0180】
【表8】
【0181】
本発明の液晶表示装置は、以上のような動作をする。
【0182】
よって、実施例3で述べた駆動法により駆動出来る液晶表示装置が具現でき、よって実施例3で述べた効果が得られる。
【0183】
ここで、制御回路176ついては、この回路が出力する信号POL1、2とGCP1、2の制御方法の若干の変更と表示データを補数化をするしないの制御の付加をするだけで良く、この回路は、一般的には集積回路で作られていて、これらの変更、付加によるコスト及び消費電力の増加は殆ど無い。また、Xドライバ171についても信号線POLの替わりに信号線POL1、2を用い、信号GCPの替わりに信号GCP1、2を用い、信号線が1本が増え、計数回路も2系統になる。これも一般的には集積回路で作られており、集積回路1個当たりの液晶パネルへの出力線数は実際には数十から数百であることから、計数回路が1系統増えることによる影響、例えば集積回路の大きさの増加、は殆どなく、よってこれらの変更、付加によるコスト及び消費電力の増加は殆ど無い。
【0184】
〔実施例9〕
実施例1から6で述べた駆動方法を用いる液晶表示装置の具体的な例を説明する。実施例3の駆動をする液晶表示装置の構成は実施例8で述べた構成以外でも具現できる。図19は本実施例の液晶表示装置の一構成例の一部を示す図である。
【0185】
図19で、190は液晶パネルで、図2に示した液晶パネル10の信号電極X1〜X5の内、奇数番の信号電極の外部との接続端子を上側に配し、偶数番の信号電極の外部との接続端子を下側に配したものである。図19の132は図13のYドライバである。図19の191U、191LはXドライバで、図13のXドライバ131と出力本数が異なる以外は全く同じ構成と動作をする。そして、図を簡単にする為に図には省略してあるが、本実施例の液晶表示装置においても電源回路、制御回路がある。
【0186】
以上の構成となっており、Xドライバ191Uと191Lはそれぞれ独立に左寄せ変調と右寄せ変調のいずれかの信号電圧波形を液晶パネル190の各信号電極X1〜X5に供給することが出来る。よって、ある選択期間で、Xドライバ191Uが右寄せ変調での信号電圧波形を奇数番の信号電極X1、3、5に与え、Xドライバ191Lが左寄せ変調での信号電圧波形を偶数番の信号電極X2、4に与え、また他の選択期間で、Xドライバ191Uが左寄せ変調での信号電圧波形を奇数番の信号電極X1、3、5に与え、Xドライバ191Lが右寄せ変調での信号電圧波形を偶数番の信号電極X2、4に与えることによって実施例3の駆動が出来る。なお、Xドライバ191U、Lに供給する制御信号等の与え方については実施例7、8の説明で容易に類推出来るので省略する。
【0187】
〔実施例10〕
本実施例では実施例1、3で述べた駆動方法をする液晶表示装置の具体的な例を説明する。図20は本実施例の液晶表示装置の一構成例を示す図である。図中、201、206、2061以外の構成と動作は図13の液晶表示装置と同じで、同じ番号を付して説明を省略する。201はXドライバ、206は制御回路、2061は制御回路が出力する、Xドライバ201を制御する制御信号である。
【0188】
ここで、Xドライバ201の構成と動作について説明する。図21はXドライバ201の構成を示す図である。図21で、211と212と213以外は図18のXドライバと同じ構成で、同じ動作をし、同じ番号を付して説明を省略する。211はシフトレジスタ回路で、図20の液晶パネル10の信号電極の数と同じ段数を持つ。図21の212はデータ保持回路で、シフトレジスタ回路211と同じ数のラッチ回路からなる。213はデータ選択回路でシフトレジスタ回路211と同じ数からなる。データ選択回路213はそれぞれ対応するデータ保持回路212のラッチ回路の出力によって制御され(図では、図が見づらくなるのを防ぐ為に一番右の部分だけ配線を記してある。)、計数回路1431と1432のいずれかの出力値を選択し、それぞれ対応する大小比較回路144の一方の入力に出力する。
【0189】
制御信号2061では、図13の制御信号1361を構成する信号POLの代わりに信号DPOLが設けられ、信号DPOLは信号XSCLに同期してシフトレジスタ回路211に取り込まれ、シフトする。そして、信号LPに同期してシフトレジスタ回路211の内容がデータ保持回路212に取り込まれる。データ保持回路212の各出力は各大小比較回路145の一方の入力される。
【0190】
図20のXドライバ201は以上の構成となっているので、信号DATA及び信号DPOLを適当に与えることによって、各々信号電極に、右寄せ変調による信号電圧波形と左寄せ変調による信号電圧波形のいずれかを任意に与えることが出来る。よって、本実施例では実施例1から5の総ての駆動方法を具現できる。
【0191】
なお、Xドライバ201に供給する制御信号等の与え方については実施例7、8の説明で容易に類推でき具現できるので省略する。
【0192】
以上の動作を行うので、例えば同じ選択期間で左寄せ変調と右寄せ変調の割合も任意に設定でき、より良くクロストークを軽減することができる。
【0193】
〔実施例11〕
実施例7から10で述べた液晶装置は、コストや消費電力の増加が殆どない方法でクロストークを改善して、均一な表示が可能としてある。
【0194】
よって、高品質でかつ小型・軽量でしかも安価である電子機器の表示部材として適しており、その例として、小型・軽量で細かい情報を誤認しないで読み取る必要のある、カーナビゲーション、携帯情報機器、液晶テレビ、グラフィック表示機能等の多機能電卓、携帯電話、ラップトップ型を始めとした様々なパーソナルコンピュータ等があり、その中で特に消費電力が気になる、主に電池で駆動される携帯情報機器、携帯電話等に適している。
【0195】
【発明の効果】
本発明によれば、各パルス幅変調方式が、画素の電気的あるいは光学的特性に与える影響がほぼ相殺されクロストークが軽減する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の駆動方法による駆動波形を示す図。
(a)は、走査電極Y1の電圧波形。
(b)は、走査電極Y2の電圧波形。
(c)は、走査電極Y3の電圧波形。
(d)は、走査電極Y4の電圧波形。
(e)は、走査電極Y5の電圧波形。
(f)は、信号電極X2の電圧波形。
(g)は、信号電極X1、X3〜X5の電圧波形。
【図2】液晶パネル10の構成を示す図。
【図3】液晶パネル10の表示内容を示す図。
【図4】液晶パネル10の電気等価回路を示す図。
【図5】図4の電気等価回路の一部を簡略した電気等価回路を示す図
【図6】液晶パネル10の画素1と画素2についての右寄せ変調時の各電圧を示す図。
【図7】液晶パネル10の画素1と画素2についての左寄せ変調時の各電圧を示す図。
【図8】実際の液晶パネルで実施例1の駆動方法を行なった結果を示す図。
【図9】他の変調方式を示す図。
【図10】実際の液晶パネルで実施例2の駆動方法を行なった結果を示す図。
【図11】液晶パネル10の画素1と画素2についての選択期間t1とT2での各電圧を示す図。
【図12】実際の液晶パネルで、左寄せ変調方式と右寄せ変調方式でのオン電圧の時間と透過率との関係を示す図。
【図13】実施例7の液晶表示装置の一構成例を示す図。
【図14】Xドライバ131の一構成例を示す図。
【図15】制御信号群1361の各信号とXドライバ131内部の信号のタイミングを示す図。
【図16】ラッチ回路142の各4ビットで表される数値と出力電圧波形の関係を示す図。
【図17】実施例8の液晶表示装置の一構成例を示す図。
【図18】Xドライバ171の構成を示す図。
【図19】実施例9の液晶表示装置の一構成例の一部を示す図。
【図20】実施例10の液晶表示装置の一構成例を示す図。
【図21】Xドライバ201の構成を示す図。
【符号の説明】
+Vs1 正の選択電圧
−Vs2 負の選択電圧
+Vsig 正の保持電圧、オン電圧またはオフ電圧
−Vsig 負の保持電圧、オフ電圧またはオン電圧
Claims (4)
- 複数の走査電極及び複数の信号電極の交差位置に設けられた液晶素子を、各走査電極に対して選択期間に選択電圧を印加することに同期して各信号電極にオン電圧またはオフ電圧の信号電圧を印加することにより駆動する2端子型アクティブマトリクス液晶液晶素子の駆動方法であって、
前記選択期間の開始からオフ電圧を印加するとともに当該選択期間の途中から終了までの所定期間においてオン電圧を印加する第1のパルス幅変調方式と、
前記選択期間の開始から所定期間においてオン電圧を印加するとともに当該選択期間の残りの期間においてオフ電圧を印加する第2のパルス幅変調方式と、
前記選択期間の途中の所定期間においてオン電圧又はオフ電圧を印加するとともに前記選択期間の開始から当該所定期間までの期間及び当該所定期間の終了から前記選択期間の終了までの期間においてオフ電圧又はオン電圧を印加する第3のパルス幅変調方式と、のうち少なくとも二つのパルス幅変調方式を混在させて実行し、
各々の前記選択期間で前記各信号電極に与える総てのオン電圧又はオフ電圧の信号電圧は、前記パルス幅変調方式のうちのいずれか同じパルス幅変調方式を実行し、当該実行するパルス幅変調方式の種類を周期的に切り替えることを特徴とする液晶素子の駆動方法。 - 信号電極毎に異なる前記パルス幅変調方式を実行することを特徴とする請求項1記載の液晶素子の駆動方法。
- 請求項1または2に記載の液晶素子の駆動方法を実施する駆動手段を有することを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項3に記載の液晶表示装置を具備したことを特徴とする電子機器。
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