JP3665687B2 - 光情報記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素記録層、金属反射層及び保護層をこの順に有する円盤状透明基板と、該基板と同一の形状を持つ円盤状透明保護板とを記録層側が内側となるように接着剤層を介して貼り合わせてなるレーザ光により情報の記録と読み出しが可能なサンドイッチ型光情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一回限り情報の記録が可能であるが、一旦書き込んだ情報の消去はできないと言う追記型光情報記録媒体(CD−R)が実用化されている。この追記型光情報記録媒体は、数枚から数十枚程度の少量の単位で情報が記録されたCDを、手頃な価格でかつ迅速に提供できるとのニーズに対応したものとして利用されている。この媒体の一般的な構造は、円盤状基板上に色素からなる記録層及び金属からなる反射層をこの順に設け、更に樹脂からなる保護層が塗布により反射層上にこれを覆うように設けられた構造である。なお、基板の表面(基板と記録層との界面)には通常、照射されるレーザ光の走査を案内し、レーザ光が照射予定位置を正確にたどるように予め凹状の案内溝(一般にプレグループと称する)が形成されている。
しかし上記の構造は、充分高い耐久性を有しているとは言えず、また昨今の高い記録容量の要望に対しては充分対応できないと言う問題がある。
【0003】
上記のような要望に対し、大記録容量を持つ光情報記録媒体として最近、追記型DVD(ディジタル・ビデオ・ディスク:DVD−R)の開発が進められている。この追記型光情報記録媒体は、例えば、医療用カルテ、美術館や図書館の電子ライブライリー、公文書などの大量の情報の保存に極めて有用性の高いものと期待されている。DVD−Rの基本構造としては、例えば、図10に示す構造のものが提案されている(「日経ニューメディア」別冊「DVD]、1995年発行)。即ち、DVD−Rは、トラッキングのための案内溝(プレグループ)が形成された円盤状基板101a、該円盤状基板上にスピンコート法で形成した有機色素層(記録層)103a、更にその上に反射層104a及び保護層105aを順に有するディスクを二枚(もう一方のディスクの符号の説明は省略)、接着剤層106により記録層側を内側にして貼り合わせた構造からなっている。上記のDVD−Rへの情報の書き込み(記録)及び読み取り(再生)は、ディスクの基板の両面側から行うことができるために、それだけでも前記CD−Rに比べて単純に二倍の情報の保存が可能となる。また、図10で示されるDVD−Rの別の態様として、上記文献には、一方のディスクを円盤状保護板に代えて、一方の基板のみに記録層及び反射層を順に設けた構成の光情報記録媒体の開示もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記のように二枚の円盤状基板を接着剤層により貼り合わせてなる光情報記録媒体の性能について検討した。それによると、二枚の基板の端部では剥れが生じ易く、また保存安定性(耐久性)も充分でないことが判明した。
そして剥れの問題は、以下の理由により生じることを見出した。即ち、二枚の円盤状基板を貼り合わせてなる光情報記録媒体の一つの態様としては、例えば、図9に示すような構造のものが考えられる。この光情報記録媒体は、記録層93および反射層94がこの順で設けられ、更にこれらの上に反射層94を覆うようにして保護層95が設けられた円盤状基板91と円盤状保護板92とを接着剤層96を介して接合された構造をしている。そしてこの媒体は、一般に下記の工程により製造されている。まず記録層93を円盤状基板91の上に形成する。記録層93は、通常スピンコータを用いて記録層用塗布液を塗布することにより形成されるため、図のように、該円盤状樹脂基板91上にほぼ全面に亙って塗布される。次に、金属からなる反射層94を蒸着、スパッタリングなどの方法で記録層93上に、該記録層の外周端部より反射層の外周端部が内側となるように設ける。次いで、紫外線硬化性樹脂で反射層94を覆うようにして保護層95を設けた後、得られた基板91と該基板と同一形状の保護板(基板)92とを記録層93を内側にして接着剤(接着剤層96)で貼り合わせる。このようにして図9に示す構造のものを得ることができる。
【0005】
一般に上記のようなサンドイッチ型の光情報記録媒体においては、反射層は、金属からなる層であるため、反射層と記録層及び反射層と保護層とのそれぞれの界面では充分な接合力を得ることができない。そのため、二枚の基板の接合力は、反射層の介在しない領域、即ち、基板の孔部周縁部近傍の外側領域及び基板の外周端部近傍の内側領域における各層間のそれぞれの界面での接着力によって主に保持されている。このことは、例えば、媒体が、衝撃や曲げによる変形を受けた時には、そのひずみが基板の端部、特に外周端部に剥れとなって現れることをも意味する。従って二枚の基板で挟まれた端部の構造はより強固に設計されていることが望ましい。しかし、本発明者の更なる検討では、従来、このタイプの基板の外周端部においては、図9に示されているように、保護層は基板と直接接触しておらず、記録層を介して基板と接合した状態にあり、また記録層自体は色素からなる層であるため、充分な層間の接着力を得ることができず、従って基板と記録層あるいは記録層と保護層の界面では剥離が生じ易いことがわかった。
また、保護層が記録層と接した部分においては、経時的に接着強度が低下して、剥れ易くなり、充分な耐久性(保存安定性)が得られないことも判明した。その理由は、明らかではないが、保護層が接する記録層の部分では、保護層中の成分、例えばラジカル成分などの影響を受け易く、また記録層の端面(側面)は露出した状態にあり、酸素などの影響を受け易いため、経時的に記録層が劣化するためと考えられる。
【0006】
本発明の目的は、二枚の基板の特に外側端部での高い接着性を実現することにより、剥れがなく、また良好な耐久性(保存安定性)が付与された光情報記録媒体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者の研究により、基板上に記録層及び反射層を設ける際に、これらの層を基板の外側端部までその基板全面に設けることなく、基板の外側端部に基板表面を露出させた部分を残して記録層及び反射層を設け、かつこの露出面に保護層を接合させることにより(即ち、基板表面と保護層とを直接接合させ、より高い接着性を実現させることにより)、基板の剥れがなく、保存安定性の高い光情報記録媒体が得られることが見出され、本発明を完成させたものである。
【0008】
本発明は、色素記録層、金属反射層及び保護層がこの順に設けられた中央部に孔部を持つ円盤状透明基板と該基板と同一の形状を持つ円盤状透明保護板とを記録層側が内側になるように接着剤層を介して貼り合わされてなるサンドイッチ型光情報記録媒体において、該色素記録層と金属反射層の双方の外周側端部を内側に後退させることにより、基板の周縁部近傍の表面を露出させ、その露出面に上記保護層の外周側端部を接合させたこと、そして該保護層と該接着剤層のいずれをもUV硬化型樹脂を硬化させて形成したことを特徴とする光情報記録媒体にある。
本発明の光情報記録媒体は、下記の工程からなる製造方法により製造することができる。
中央部に孔部を持つ円盤状透明基板の表面に色素記録層を形成する工程;該色素記録層の表面の基板周縁部近傍領域以外の領域に金属反射層を形成する工程;該色素記録層のうち、表面に金属反射層が形成されていない基板周縁部近傍領域の色素を溶解除去して、基板の周縁部近傍領域の表面を露出させる工程;金属反射層の表面及び基板の露出面にUV硬化性樹脂を塗布し、ついで紫外線を照射することによりUV硬化性樹脂を硬化させて保護層を形成する工程;この積層体を備えた基板と、円盤状透明基板と同一形状の円盤状透明保護板を、その間にUV硬化性樹脂層を介在させ、圧力をかけた状態で、該円盤状透明保護板を通して紫外線をUV硬化性樹脂層に照射することにより、該UV硬化性樹脂層を硬化させる工程。
【0009】
本発明は、以下の態様であることが好ましい。
(1)記録層と反射層の双方の内側端部を外側に後退させることにより、孔部周縁部の外側領域の基板表面を露出させ、その露出面に保護層を接合させている。
(2)露出面に保護層と共に接着剤層を接合させている。
(3)接着剤層は、その平均の厚みが、0.1〜100μm(好ましくは、20〜80μm、更に好ましくは、30〜70μm)の範囲となるように設けられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の光情報記録媒体を添付図面に示す各図を用いて説明する。図1は、本発明の光情報記録媒体の好ましい例を模式的に示す断面図である。図1に示される光情報記録媒体1は、記録層13、反射層14及び保護層15がこの順で設けられた中央に孔部10aを持つ円盤状基板11と、該基板と同一の形状を持つ(中央に孔部10bを持つ)円盤状保護板12とを記録層側が内側となるように接着剤層16を介して貼り合わされてなるサンドイッチ型の例である。また図2に示される光情報記録媒体2(本発明の実施例ではなく、参考例である)は、それぞれ記録層23a、23b、反射層24a、24b、及び保護層25a、25bがこの順で設けられた中央に孔部20a、20bを持つ二枚の円盤状基板21a、21bをそれぞれ記録層側が内側となるように接着剤層26を介して貼り合わされてなるサンドイッチ型の例である。そしていずれの態様においても、該記録層と反射層の基板の外側端部には、基板端部表面に露出させた領域(露出面)17、27a、27bを有し、保護層15、25a、25bの端部は、それぞれこの露出面17、27a、27bと密着状態で接合している。なお、本発明においては、図1に示されるように、記録層と反射層の基板の両内側端部(孔部周縁部の外側領域)においても基板表面に露出させた領域(露出面)18を有し、保護層15の端部は、それぞれこの露出面18と密着状態で接合していることが好ましい。
【0011】
本発明の光情報記録媒体は、例えば以下の方法により製造することができる。本発明の光情報記録媒体として図1に示される態様を例にとって、その製造方法を図3〜図6を参照しながら詳述する。
図3は、中央に孔部10aを備えた円盤状基板11上に、記録層13を塗布により設けた状態を模式的に示す部分断面図である。
色素からなる記録層は、中央に孔部を備えた円盤状基板上に記録層形成用塗布液を通常スピンコート法を利用して形成される。スピンコート法を利用することにより、中央孔部の周縁部外側領域の塗布位置(記録層の内側端部)をある程度制御しながら塗布できる。従って中央孔部の周縁部外側には、記録層が形成されない領域を作ることができる。しかし、この記録層が形成されない領域を充分確保するためには、記録層を塗布後、記録層の内側端部の一定の領域を除去することが好ましい。なお、塗布は、スピンコート法以外にロールコート法やディップコート法などの方法を用いても行うことができるが、スピンコート法に比べて、これらの方法では塗布領域を制御することは更に困難である。
【0012】
次に、記録層上に金属からなる反射層を形成する。
図4は、記録層13の上に更に反射層14を形成し、記録層と反射層の外側端部の双方を内側に後退させた状態を模式的に示す部分断面図である。
図4に示すように、記録層13と反射層14とを基板11上に所定の範囲で設けるには、例えば、以下の方法を利用することができる。
1)記録層の外側端部を所定の位置まで適当な溶剤を用いてスピンコート法による洗浄(スピン洗浄)により洗い流し、その領域の記録層を除去する。その後、マスキングにより反射層を形成する。反射層は、蒸着、スパッタリング、あるいはイオンプレーティングなどの方法を利用して形成することができる。
2)上記と同様にして反射層をマスキングにより記録層上に形成した後、反射層からはみ出した部分(記録層の外側端部)の記録層を上記スピン洗浄により洗い流し、そのはみ出した部分の記録層を除去する。
3)上記と同様にして反射層をマスキングにより記録層上に形成した後、次の保護層形成用塗布液を塗布する工程で、この塗布液をスピンコート法で塗布しながら同時に外側端部の記録層を洗い流し、その領域の記録層を除去する。この方法を利用することで、外側端部の記録層の除去と同時に、保護層を形成するための塗布を行うことができる。
【0013】
外側端部の記録層を除去するには、上記のようにスピン洗浄の他に、塗布の後記録層が乾燥する前に、拭き取る方法、あるいはレーザ光により燃焼させる方法なども利用することができる。また中央孔部の周縁部外側領域に、記録層が形成されない領域を作る場合にもこれらの方法を組み合わせて利用することができる。
なお、上記のように外側端部の記録層を除去し、所定の範囲に記録層を形成する方法については、例えば、特開平2−183442号公報及び同2−236833号公報に記載されており、これらの方法を利用することができる。
以上の方法により、記録層13と反射層14の外側端部の双方を内側に後退させることができ、基板端部表面を露出させた領域(露出面)17を形成することができる。
基板端部表面を露出させた領域は、保護層が直接基板表面と接合する領域となるが、この領域は、基板の全円周の外側端部に沿って0.05mm〜10mmの範囲の巾で設けられることが好ましい。更に好ましくは、この領域は、0.2mm〜1.0mmの範囲の幅で設けられることが好ましい。
基板表面が露出した領域(露出面)は、色素が完全に除去されず一部残るところもあるが、保護層の接合には殆ど問題とならない。
【0014】
記録層及び反射層の上に、次いで、保護層を形成する。
図5は、記録層13及び反射層14上から保護層の端部が基板端部表面を露出させた領域(露出面)17に接触するように保護層15を設けた状態を模式的に示す部分断面図である。
保護層は、後述するように、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいはUV(紫外線)硬化性樹脂などからなる樹脂を用いて反射層上から基板端部表面の露出面まで塗布することにより形成することができるが、生産性や得られる媒体の強度などの点から、UV(紫外線)硬化性樹脂の使用が好ましい。UV硬化性樹脂を用いた場合には、この樹脂液をスピンコート法などを利用して塗布した後、UV光を照射させることにより、保護層を形成することができる。
なお、図のように、保護層15は、その内側端部が中央孔部の周縁部外側領域の記録層が形成されない領域(露出面)18に接触するように設けることが好ましい。
【0015】
図3〜図5に示したように、記録層13、反射層14及び保護層15をこの順に設けた基板11を次に、別に用意したこの基板と同一の形状を持つ円盤状保護板(基板)12に記録層を内側にして重ね合わせ、接着剤により貼り合わせる。
二枚の基板の貼り合わせは、一方、あるいは双方の基板上に接着剤を塗布した後、この基板同士の接着面を重ね合わせ、例えば、図6に示す圧着装置30の加圧板31a、31bの間に挟み、加圧処理することにより、行うことができる。接着剤は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいはUV(紫外線)硬化性樹脂などの接着剤から適宜選択して利用できる。但し、図2に示すような構成の光情報記録媒体を作成する場合には、双方の基板上に記録層を有するため、UV硬化性樹脂接着剤の使用は困難になる。このため図2に示されるタイプの場合には、UV硬化性樹脂接着剤以外の接着剤が用いられる。
なお、UV硬化性樹脂用いる場合には、加圧処理しながらUV光を照射するため、加圧板は、透明な材料が用いられる。例えば、白板ガラス、石英ガラス、青板ガラスを好ましいものとして挙げることができる。
また接着剤層は、その端面(側面)が通常両基板の端面(側面)とほぼ同じ面(面一)か、あるいは若干内側となるように形成されるが、この側面形状は、幾分凹状であっても凸状であっても特に問題とならない。
【0016】
本発明の光情報記録媒体は、マスキングの位置を調節することにより、例えば、図7(a)に示すように、記録層13を全面に覆った形状の反射層14とすることもできる。また図7(b)に示すように、記録層13を中間層19を介して二層構成(記録層13A、13B)にすることもできる。更に、図7(c)に示すように、記録層13を中間層19を介して二層構成(記録層13A、13B)にすると共に、上に位置する各層が、下層に位置する層を全体に覆うように構成することもできる。
これらの光情報記録媒体も前述した製造方法を利用することにより、製造することができる。
【0017】
本発明の光情報記録媒体は、図8に示すように、保護層15を基板の露出面の一部分にのみ接触するように設け、残りの部分の露出面には、接着剤層16が接触するように構成することもできる。接着剤層16が接触する領域の露出面の形成は、保護層を塗布後、前述したスピン洗浄などの方法で必要な領域の保護層を溶解させ、基板表面から洗い流すことにより行うことができる。
【0018】
以上の光情報記録媒体の製造方法の説明は、図1に示されるサンドイッチ型の例についてのものであるが、記録層、反射層及び保護層がこの順で設けられた中央に孔部を持つ二枚の円盤状基板をそれぞれ記録層側が内側となるように接着剤層を介して貼り合わされてなるサンドイッチ型の場合(図2)においても同様に製造することができる。
また、図2に示されるサンドイッチ型の光情報記録媒体においても、前述したように、記録層を中間層を介して二層構成にすることもできるし、また反射層を記録層を全面に覆った形状となるように設けることもできる。
【0019】
本発明の光情報記録媒体の製造に際しては、従来から光情報記録媒体に用いられていた材料を選択して用いることができる。以下、簡単にこれらの材料について説明する。
円盤状基板材料としては、例えば、アクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと他のポリマーとの共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;ポリカーボネート樹脂;アモルファスポリオレフィン及びポリエステルを挙げることができる。好ましいものは、ポリカーボネート、ポリオレフィン及びセルキャストポリメチルメタクリレートである。
【0020】
記録層が設けられる側の基板表面には、平面性の改良、接着性の向上、基板の態様の改良及び記録層の変質の防止を目的に、下塗り層を設けても良い。
下塗り層を形成するための材料としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリ酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル、塩化ビニ共重合体、エチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質、及び無機酸化物(SiO2 、Al2 O3 )、無機フッ化物(MgF2 )などの無機物質を挙げることができる。
下塗層は、上記の材料を用いて公知の方法(スピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法、あるいは蒸着、スパッタリング、イオンプレーディングなどの真空製膜法)を利用して形成することができる。
【0021】
基板(又は下塗り層)上には、トラッキング用溝又はアドレス信号等の情報を表す凹凸を形成するために、プレグループ層及び/又はプレピット層が形成されていても良い。プレグループを形成するための材料としては、アクリル酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、及びテトラエステルのうちの少なくとも一種のモノマー(又はオリゴマー)と光重合開始剤との混合物を用いることができる。
プレグループ層は、従来から行われている方法で形成することができる。
【0022】
記録層は、色素からなる層で構成されていることが好ましい。用いられる色素は、特に限定されない。例えば、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、イミダゾキノキサリン系色素、ピリリウム系・チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、スクワリリウム系色素、Ni、Crなどの金属錯塩系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、インドアニリン系色素、トリフェニルメタン系色素、トリアリルメタン系色素、メロシアニン系色素、オキソノール系色素、アルミニウム系・ジインモニウム系色素及びニトロソ化合物を挙げることができる。
これらの色素のうちでは、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、アズレニウム系色素、スクワリリウム系色素、オキソノール系色素及びイミダゾキノキサリン系色素が好ましい。
記録層の形成は、上記の色素、及び必要により結合剤を溶剤に溶解して塗布液を調製し、この塗布液を前述した方法で基板上に塗布し、乾燥することによって行うことができる。
記録層は、一般に10〜550nmの範囲の厚さとなるように設けられる。
なお、図7の(b)及び(c)で示したように、中間層は、前記下塗層を形成するために用いた材料を用いて形成することができる。
中間層は、一般に1〜100μmの範囲の厚さとなるように設けられる。
【0023】
反射層の材料である光反射性物質は、レーザ光に対する反射率が高い物質である。具体的には、反射層は、金属及び半金属からなる層であることが好ましい。これらの例としては、Mg、Se、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn及びBiなどを挙げることができる。これらのうちでは、Au、Ag、Cu、Pt、Al、Cr及びNiであることが好ましく、特にAuであることが好ましい。これらは単独で用いても良いし、あるいは二種以上を組み合わせて用いても良い。
反射層は、一般に10〜300nmの範囲の厚さとなるように設けられる。
【0024】
保護層の形成、あるいは接着剤層の形成に用いられる材料(接着剤)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV(紫外線)硬化性樹脂、あるいはこれらの樹脂からなる接着剤を挙げることができる。これらの中では、特にUV硬化性樹脂の使用が好ましい。UV硬化性樹脂の例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートのオリゴマー類、(メタ)アクリル酸エスエル等のモノマー類等、更に光重合開始剤等の通常UV硬化性樹脂を使用することができる。
保護層は、一般に0.1〜100nmの範囲、好ましくは、1〜15μmの範囲の厚さとなるように設けられる。
接着剤層は、その平均厚みが、一般に0.1μm〜100μmの範囲、好ましくは、20〜80μmの範囲、更に好ましくは、30〜70μmの範囲となるように設けられる。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例を記載する。
[実施例1]
下記の構造式で示される色素
【0026】
【化1】
【0027】
を2,2,3,3−テトラフロロプロパノールに溶解して色素記録層形成用塗布液(色素2.65重量%)を調製した。
トラッキングガイドが設けられた円盤状のポリカーボネート基板(外径:120mm、厚さ:0.6mm、内径15mm、グルーブの幅:0.4μm、深さ:200nm)上に、上記塗布液をスピンコート法により回転数を1000rpmの速度で塗布した。続いて、孔部周縁部近傍の外側の一定の領域を拭き取り、記録層の内側端部を外側に後退させて、基板表面の露出した領域(内側端部の露出面)を形成した。その後、該塗布層を70℃の温度で10分間乾燥して膜厚が、120nmの記録層を形成した(図3参照)。
上記色素記録層上にマスクを用いてAuを蒸着して膜厚が100nmの反射層を形成した。この操作によって、反射層は、その外周端部が記録層の外周端部から内側に位置するように設けられた。
上記反射層が設けられた基板表面に、2,2,3,3−テトラフロロプロパノールの溶剤をスピンコート法にて噴射して、該反射層が設けられた領域以外の領域に塗布されている記録層を除去した。これにより、基板の外側端部に基板表面が露出した領域(外側端部の露出面)を形成した。この露出面は、基板の円周の外側端部に沿って0.5mmの幅で形成された(図4参照)。
上記反射層上に、UV硬化性樹脂液(商品名:3070、(株)スリーボンド製)をスピンコート法により回転数1500rpmの速度で塗布した。そして塗布層の上から高圧水銀灯にて紫外線を照射して硬化させ、層厚が5μmとなるように保護層を形成した(図5参照)。
次に、保護層上に、UV硬化性接着剤(商品名:3070、(株)スリーボンド製)をスピンコート法により回転数1500rpmの速度で塗布した。そして接着剤が塗布された基板と、別に用意した円盤状のポリカーボネート基板(保護板)(外径:120mm、厚さ:0.6mm)とを接着剤が塗布された面を内側にして重ね合わせ、図6に示す圧着装置の加圧板(石英ガラス)の間に挟み、セットした。そして加圧した状態(0.2kg/cm2 )で、保護板と接触した加圧板の上から高圧水銀灯にて紫外線を照射して硬化させ、層厚が8μmとなるように接着剤層を形成した。
このようにして、図1に示す構造を持つ光情報記録媒体を製造した。
【0028】
[比較例1]
実施例1において、反射層を形成後、該反射層が設けられた領域以外の領域に塗布されている記録層の除去を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして光情報記録媒体を製造した。
このようにして、図9に示す構造を持つ光情報記録媒体を製造した。
【0029】
[光情報記録媒体としての評価]
上記のようにして得られた光情報記録媒体について、(1)落下テスト、(2)基板の外側端部のC/Nの測定を行い、評価した。
(1)落下テスト
コンクリート床に10回、1mの高さから落下させ、基板の外側端部の剥れを観察した。評価基準は、下記の通りである。
A:基板外側端部の剥れが殆ど観察されなかった。
B:基板外側端部の剥れがわずかに観察された。
C:基板外側端部の剥れがかなり観察された。
(2)基板の外側端部(グルーブの最外周部分)のC/Nの測定
DDU1000(パルステック社製)を用い、1.2m/秒で11T記録を行った後、再生し、スペクトラムアナライザTR4135(アドバンテスト(株)製)で測定した。
また製造後、80℃、85%RH条件下で240時間保存後の媒体の基板外側端部の剥れの状態、及び基板外側端部のC/Nの測定を行い、同様な基準で評価した。
結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
上記表1の結果から、保護層を基板の露出面と直接接合するように設けた本発明に従う光情報記録媒体(実施例1)は、保護層を記録層を介して基板端部と接合するように設けた比較の光情報記録媒体(比較例1)に比べて、基板端部の剥れが殆どなく、また高い端部C/Nの値を得ることができることがわかる。またこれらの光情報記録媒体を長期間保存(特に、高温高湿下での保存)した場合にも本発明に従う媒体の方が、比較例の媒体に比べてその基板端部の剥れも殆どなく、また同様に高い端部C/N値が維持されている。従って本発明に従う光情報記録媒体は、高い保存安定性を有しているということができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の光情報記録媒体は、基板の外側端部に反射層が設けられていない領域(基板表面を露出させた露出面)を有しており、しかも保護層がこの露出面と直接接合するような状態で設けられているため、基板の外側端部は、高い接着力で保護層と接着している。従って、基板端部での剥れは殆ど生じることがない。また、保護層で記録層及び反射層は完全に覆われた状態になるため、記録層が保護層と接触している領域は、記録層の外周端面(側面)のみであり、またこの面は、直接外気とも遮断されており、高い保存安定性をも確保することができる。従って高い耐久性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の光情報記録媒体の好ましい例を模式的に示す断面図である。
【図2】 図2は、本発明の参考例としての光情報記録媒体を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、円盤状樹脂基板上に、記録層を塗布により設けた状態を模式的に示す部分断面図である。
【図4】図4は、記録層の上に更に反射層を形成し、記録層と反射層の外側端部の双方を内側に後退させた状態を模式的に示す部分断面図である。
【図5】図5は、記録層及び反射層上から保護層の端部が基板端部表面を露出させた領域に接触するように保護層を設けた状態を模式的に示す部分断面図である。
【図6】図6は、圧着装置の加圧板の間に、二枚の基板を挟み、加圧処理する状態を模式的に示す図である。
【図7】図7(a)は、記録層を全面に覆った形状の反射層を持つ光情報記録媒体を模式的に示す部分断面図である。
図7(b)は、記録層を中間層を介して二層構成にした場合の光情報記録媒体を模式的に示す部分断面図である。
図7(c)は、記録層を全面に覆った形状の反射層とし、かつ記録層を中間層を介して二層構成にした場合の光情報記録媒体を模式的に示す部分断面図である。
【図8】図8は、基板端部表面を露出させた領域に接触するように接着剤層を設けた状態を模式的に示す部分断面図である。
【図9】 図9は、記録層が、基板の外側端部まで設けられた光情報記録媒体(比較例)を模式的に示す部分断面図である。
【図10】図10は、従来から提案されていた光情報記録媒体(DVD−R)の基本構造を模式的に示す部分断面図である。
【符号の説明】
1、2 光情報記録媒体
10a、10b、20a、20b 孔部
11、21a、21b、91、101a 円盤状基板
12、92 円盤状保護板
13、13A、13B、23a、23b、93、103a 記録層
14、24a、24b、94、104a 反射層
15、25a、25b、95、105a 保護層
16、26、96、106 接着剤層
17、18、27a、27b、28a、28b 露出面
19 中間層
30 圧着装置
31a、31b 加圧板
Claims (3)
- 色素記録層、金属反射層及び保護層がこの順に設けられた中央部に孔部を持つ円盤状透明基板と該基板と同一の形状を持つ円盤状透明保護板とを記録層側が内側になるように接着剤層を介して貼り合わされてなるサンドイッチ型光情報記録媒体において、該色素記録層と金属反射層の双方の外周側端部を内側に後退させることにより、基板の周縁部近傍の表面を露出させ、その露出面に上記保護層の外周側端部を接合させたこと、そして該保護層と該接着剤層のいずれをもUV硬化型樹脂を硬化させて形成したことを特徴とする光情報記録媒体。
- 更に色素記録層と金属反射層の双方の内周側端部を外側に後退させることにより、孔部周縁部近傍の外側領域の基板表面を露出させ、その露出面にも保護層の内周側端部を接合させた請求項1に記載の光情報記録媒体。
- 下記の工程からなる請求項1に記載の光情報記録媒体の製造方法:
中央部に孔部を持つ円盤状透明基板の表面に色素記録層を形成する工程;該色素記録層の表面の基板周縁部近傍領域以外の領域に金属反射層を形成する工程;該色素記録層のうち、表面に金属反射層が形成されていない基板周縁部近傍領域の色素を溶解除去して、基板の周縁部近傍領域の表面を露出させる工程;金属反射層の表面及び基板の露出面にUV硬化性樹脂を塗布し、ついで紫外線を照射することによりUV硬化性樹脂を硬化させて保護層を形成する工程;この積層体を備えた基板と、円盤状透明基板と同一形状の円盤状透明保護板を、その間にUV硬化性樹脂層を介在させ、圧力をかけた状態で、該円盤状透明保護板を通して紫外線をUV硬化性樹脂層に照射することにより、該UV硬化性樹脂層を硬化させる工程。
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