JP3664822B2 - 微粒子性運搬体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はドラッグ・デリバリー・システム(Drug Delivery System:DDS)における薬物運搬体として有用なグラフトコポリマー及びこれを用いた医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
DDS分野において薬物運搬体とは、薬物を標的臓器や細胞に運ぶためのキャリヤーを意味し、その形態が粒子状であるものを粒子性運搬体という。特に、微粒子性運搬体という場合は、キャリヤーである粒子がミリメートル以下の細かい大きさであることを意味し、その大きさ、形態及び機能などからマイクロカプセル、マイクロスフェアー及びナノパーティクル等に分けることができる。また、微粒子性運搬体の材料としては、脂質や高分子などが用いられる。
【0003】
マイクロカプセルとマイクロスフェアーは、通常、粒子径数μm程度のものを言う。一般的には、マイクロカプセルが広義の概念で用いられるが、最近では粒子内部まで高分子で構成されたものをマイクロスフェアーと区別して呼ぶことが多い。
【0004】
ナノパーティクルとは、乳化重合法により調製された高分子ラテックスの分散相の大きさが数100nmであることから、従来これらのコロイドを表すときに用いられていた言葉である。しかし、最近では、その他の製法で調製されたものであっても、天然あるいは合成高分子をその構成成分とし、粒子径がナノメーターサイズであればナノパーティクルと総称されている。
【0005】
微粒子性運搬体としてのナノパーティクルは、抗癌剤などのターゲティング用キャリヤーとして研究されはじめ、主に注射剤が対象とされていた(L.Grislain et al.International Journal ofPharmaceutics,15,335(1984))。しかし、1980年代中頃から、ナノパーティクルを経口投与剤として利用しようとする研究が、報告されるようになってきた。
【0006】
薬物をナノパーティクル化し、経口投与剤として利用する場合、主な目的としては難吸収性薬物の吸収改善(P.Maincent et al.Journal of Pharmaceutical Sciences,75,955(1986);C.Damge et al. InternationalJournal of Pharmaceutics,36,121(1987))、インシュリンなどのペプチド性医薬品の経口化(C.Damge etal.Diabetes,37,246(1988);P.Couvreurand F.Puisieux,Advanced Drug Delivery Reviews,10,141(1993))、経口ワクチン(J.H.Eldridge et al.Journal of ControlledRelease,11,205(1990);P.U.Jani et al.International Journal of Pharmaceutics,86,239(1992))又は薬物の放出制御(B.Hubert et al. Pharmaceutical Research,8,734(1991))などが挙げられている。
【0007】
また、マイクロカプセルと同様、薬物の消化管内での安定性確保(M.Rogues et al.Diabetes,41,451(1992))又は刺激性の強い薬物の消化管への刺激性の低減(N.Ammoury et al.Pharmaceutical Research,8,101(1991))などの目的で利用される場合もある。
【0008】
医薬用ナノパーティクルの製造方法としては、主に以下の2種類の方法が用いられている。一つは、代表的なマイクロカプセル化法である相分離法あるいは液中乾燥法を用いてナノパーティクルを調製する方法である。
【0009】
この場合、ポリ乳酸(A.M.Ray et al.Journal ofPharmaceutical Sciences,83,845(1994))、セルロース誘導体(H.Ibrahim et al.International Journal of Pharmaceutics,87,239(1992))又はポリアクリル酸エステル誘導体(E.Allemannet al.International Journal of Pharmaceutics,87,247(1992))など、医薬品の添加剤として既に使用されている疎水性の高分子が繁用されている。
【0010】
他の方法は、乳化重合法を用いてナノパーティクルを調製する方法である(L.Vansnick et al.Pharmaceutical Research,1,36(1985);N.Al Khouri Fallouh et al.International Journal of Pharmaceutics,28,125(1986))。この場合、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの疎水性のビニル化合物がナノパーティクルの材料となりうると考えられる。中でも、シアノアクリル酸エステル、特に外科手術用の接着剤であるシアノアクリル酸イソブチルを用いた例が多い。
【0011】
これらのナノパーティクルに薬物を保持させて製剤とするが、対象となる薬物は脂溶性化合物が多い。これは、ナノパーティクルの製法が水溶性化合物に不向きなのが原因である。また、水溶性化合物をナノパーティクル化した例も報告されているが、あるpHで水に溶解しないような性質を有する化合物(例えばペプチド)に限定(川島 嘉明、日本薬学会第114年会講演要旨集4、9頁、1994年、東京)されているのが現状である。
【0012】
このようにして調製されたナノパーティクルと薬物のコンプレックスを用いた難吸収性薬物の吸収改善、ペプチド性医薬品の経口化、薬物の放出制御などを目的とした報告としては以下の様なものがある。
【0013】
例えば、P.Maincentらは、難吸収性薬物として降圧剤ビンカミンを用い、シアノアクリル酸ヘキシルでナノパーティクル化した製剤の吸収促進効果を検討していた。しかし、ビンカミンの吸収率はナノパーティクル化により1.6倍増加した程度である(Journal of Pharmaceutical Sciences,75,955(1986))。
【0014】
また、C.Damgeは、インシュリンをシアノアクリル酸イソブチルによりナノパーティクル化した製剤を用いてペプチドの経口化を検討しているが、糖尿病を惹起させたラットに絶食下、かなり多量のインシュリンを含むナノパーティクルを投与した時だけ血中グルコース濃度がやや低下する程度であった(Diabetes,37,246(1988))。
【0015】
更に、薬物の放出制御についてもB.Hubertらが降圧剤ダロジピンを用いて検討しているが、ナノパーティクル化により初期の薬物放出が抑えられたのみで血中濃度を持続させたという報告は未だなされていない(Pharmaceutical Research,8,734(1991))。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、従来微粒子性運搬体を利用した薬物のDDSは未だその吸収促進効果が充分でない。従って、本発明の目的は、薬物の吸収促進効果に優れた微粒子運搬体として利用できる新たな高分子、及びこれを用いた医薬組成物を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は、グラフトコポリマーに着目してその薬物運搬性能、特に経口吸収促進能について種々検討してきたところ、ポリN−アルキルアクリルアミドやポリN−アルキルメタクリルアミド鎖等をグラフト鎖とするグラフトコポリマーに優れた経口吸収促進作用があることを見出し、先に特許出願した(特願平7−69008号、同7−243022号、同8−33200号及び同8−126137号)。そして更に研究を続けたところ、意外にも後記式で示されるような2種以上のグラフト鎖を有するコポリマーが、1種のグラフト鎖を有するコポリマーに比べて極めて優れた経口吸収促進効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は下記の式(1)で表される構造単位と、
【0019】
【化11】
【0020】
〔式(1)中、Q1 は水素原子、メチル基又はシアノ基を示し、
Q2 は水素原子、
【0021】
【化12】
【0022】
(R1 は水素原子又はハロゲノメチル基を示し、R2 は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R3 は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R4 は炭素数1〜10のアルキル基を示す(ただしR3 及びR4 の総炭素数は3〜20である))を示す〕
【0023】
下記式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される構造単位よりなる群から選ばれる任意の2種以上のグラフト鎖構造単位とを有するグラフトコポリマーを提供するものである。
【0024】
【化13】
【0025】
〔式(2)中、Q3 は水素原子又はメチル基を示し、
Q4 は
【0026】
【化14】
【0027】
(A1 は炭素数1〜10のアルキレン基を示す)を示し、
Q5 は酸素原子又は-NH-を示し、
Q6 は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、
Q7 は酸素原子又は硫黄原子を示し、
X1 は酸素原子又は2個の水素原子を示し、
R4 は水素原子又はメチル基を示し、
R5 は炭素数1〜10のアルキル基を示し、
lは1〜100の数を示す〕
【0028】
【化15】
【0029】
〔式(3)中、Q8 は水素原子又はメチル基を示し、
Q9 は
【0030】
【化16】
【0031】
(A2 は炭素数1〜10のアルキレン基を示す)を示し、
Q10は酸素原子又は-NH-を示し、
Q11は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、
Q12は酸素原子又は硫黄原子を示し、
X2 は酸素原子又は2個の水素原子を示し、
R6 は水素原子又はメチル基を示し、
R7 は炭素数1〜10のアルキル基を示し、
R8 及びR9 は水素原子又はメチル基を示し、
mは1〜100の数を示し、
n及びpはそれぞれ0〜100であってn+pが1以上となる数を示す〕
【0032】
【化17】
【0033】
〔式(4)中、Q13は水素原子又はメチル基を示し、
Q14は
【0034】
【化18】
【0035】
(A3 は炭素数1〜10のアルキレン基を示す)を示し、
Q15は酸素原子又は-NH-を示し、
Q16は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、
Q17は酸素原子又は硫黄原子を示し、
X3 は酸素原子又は2個の水素原子を示し、
R10及びR11は水素原子又はメチル基を示し、
R12は炭素数1〜10のアルキル基を示し、
q及びrはそれぞれ0〜100であってq+rが1以上となる数を示す〕
【0036】
【化19】
【0037】
〔式(5)中、Q18は水素原子又はメチル基を示し、
Q19は
【0038】
【化20】
【0039】
(A4 は炭素数1〜10のアルキレン基を示す)を示し、
Q20は酸素原子又は-NH-を示し、
Q21は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、
Q22は酸素原子又は硫黄原子を示し、
X4 は酸素原子又は2個の水素原子を示し、
R13及びR14は水素原子又はメチル基を示し、
R15は水素原子又は炭素数2〜11のアルカノイル基を示し、
s及びtはそれぞれ0〜100であってs+tが1以上となる数を示す〕
【0040】
とを有するグラフトコポリマーを含有する微粒子性運搬体を提供するものである。
【0042】
【発明の実施の形態】
本発明のグラフトコポリマーは、上記式(1)で表される構造単位と、式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される構造単位よりなる群から選ばれる任意の2種以上の構造単位を有することを特徴とするものであり、当該2種以上の構造単位は、式(2)、(3)、(4)及び(5)の群から2種以上を選んでもよいし、式(2)で表される構造単位群から2種以上、式(3)で表される構造単位群から2種以上、式(4)で表される構造単位群から2種以上、又は式(5)で表される構造単位から2種以上を選んでもよい。より好ましい組合せは、式(1)で表される構造単位と、式(2)、(3)、(4)及び(5)の群から選ばれる2種以上の構造単位との組合せである。更に好ましい組合せは、式(1)で表される構造単位と、式(2)及び(3)から選ばれる1種以上の構造単位と、式(4)及び(5)から選ばれる1種以上の構造単位との組合せである。特に好ましい組合せは、式(1)で表される構造単位と、式(2)及び(3)から選ばれる1種の構造単位と、式(4)及び(5)から選ばれる1種の構造単位との組合せである。
【0043】
また、本発明のグラフトコポリマーにおけるグラフト鎖の比率は特に制限されないが、薬物吸収促進効果の観点から、式(1)で表される構造単位(a)と、式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される構造単位よりなる群から選ばれる任意の2種以上の構造単位の和(b)とのモル分率((a)/(b))が、0.001〜1の範囲であるグラフトコポリマーが好ましい。
【0044】
本発明のグラフトコポリマーを構成する構造単位を示す式(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)中における各記号について説明する。
【0045】
まず、式(1)中、R1 で示されるハロゲノメチル基としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基等を挙げることができる。R2 、R3 及びR4 で示される炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖又は分枝状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。このうち、R2 としては炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基が特に好ましい。またR3 及びR4 はいずれか一方が水素原子で他方がアルキル基の場合、及び両者がアルキル基の場合があるが、両者の総炭素数が3〜20である。例えばR3 が水素原子の場合、R4 は炭素数3〜10のアルキル基であり、R3 及びR4 がアルキル基の場合にはR3 及びR4 のアルキル基の炭素数が3〜20となる組合せである。
【0046】
式(1)の構造単位中、次の式(1a)
【0047】
【化21】
【0048】
(式中、Q1 及びR1 は前記と同じ)
【0049】
である構造単位がより好ましく、次の式(1b)
【0050】
【化22】
【0051】
(式中、R1 は前記と同じ)
で表される構造単位が特に好ましい。
【0052】
式(2)、(3)、(4)及び(5)中、A1 、A2 、A3 、A4 、Q6 、Q11、Q16及びQ21で示される炭素数1〜10のアルキレン基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキレン基が挙げられ、具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、(エチル)エチレン基、(ジメチル)エチレン基等が挙げられる。このうち、炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキレン基がより好ましい。
【0053】
R5 、R7 及びR12で示される炭素数1〜10のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。このうち、R5 及びR7 としては炭素数3〜10の分枝状のアルキル基がより好ましく、イソプロピル基が特に好ましい。また、R12としては炭素数1〜8の直鎖又は分枝状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基等が特に好ましい。
【0054】
R15で示される炭素数2〜11のアルカノイル基としては、直鎖又は分枝状のものが挙げられるが、炭素数2〜6のアルカノイル基がより好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が特に好ましい。
【0055】
式(2)の構造単位中、次の式(2a)
【0056】
【化23】
【0057】
(式中、Q5 、Q6 、Q7 、X1 、R4 、R5 及びlは前記と同じ)
で表される構造単位がより好ましく、式(2b)
【0058】
【化24】
【0059】
(式中、R5 及びlは前記と同じ)
で表される構造単位が特に好ましい。
【0060】
式(3)の構造単位は、n及びpがそれぞれ0となる場合があるので、次の式(3a)、(3b)及び(3c)の構造となる場合がある。
【0061】
【化25】
【0062】
(式中、Q8 、Q9 、Q10、Q11、Q12、X2 、R6 、R7 、R8 、R9 、m、n及びpは前記と同じ)
【0063】
式(3)の構造単位のうち、次の式(3d)
【0064】
【化26】
【0065】
(式中、Q10、Q11、Q12、X2 、R6 、R7 、R8 、R9 、m、n及びpは前記と同じ)
で表される構造単位がより好ましく、次の式(3e)
【0066】
【化27】
【0067】
(式中、R7 、m、n及びpは前記と同じ)
で表される構造単位が特に好ましい。
【0068】
式(4)の構造単位は、q及びrがそれぞれ0となる場合があるので、次の式(4a)、(4b)及び(4c)の構造となる場合がある。
【0069】
【化28】
【0070】
(式中、Q13、Q14、Q15、Q16、Q17、X3 、R10、R11、R12、q及びrは前記と同じ)
【0071】
式(4)の構造単位のうち、次の式(4d)
【0072】
【化29】
【0073】
(式中、Q15、Q16、Q17、X3 、R10、R11、R12、q及びrは前記と同じ)で表される構造単位がより好ましく、次の式(4e)
【0074】
【化30】
【0075】
(式中、R12、q及びrは前記と同じ)
で表される構造単位が特に好ましい。
【0076】
式(5)の構造単位は、s及びtがぞれぞれ0となる場合があるので、次の式(5a)、(5b)及び(5c)の構造となる場合がある。
【0077】
【化31】
【0078】
(式中、Q18、Q19、Q20、Q21、Q22、X4 、R13、R14、R15、s及びtは前記と同じ)
【0079】
式(5)の構造単位のうち、次の式(5d)
【0080】
【化32】
【0081】
(式中、Q20、Q21、Q22、X4 、R13、R14、R15、s及びtは前記と同じ)
【0082】
で表される構造単位がより好ましく、次の式(5e)
【0083】
【化33】
【0084】
(式中、R15、s及びtは前記と同じ)
で表される構造単位が特に好ましい。
【0085】
本発明のグラフトコポリマーにおいて、グラフト鎖中の繰り返し単位(N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、ビニルアミン、N−アルカノイルビニルアミン等)は、ランダム型及びブロック型のいずれでもよい。また、式(1)の構造単位と式(2)、(3)、(4)及び(5)から選ばれる2種以上の構造単位との結合形式もランダム型でも、ブロック型でもよい。
【0086】
本発明のグラフトコポリマーは、例えば式(2)、(3)、(4)及び(5)の構造単位に相当するマクロモノマーを合成し、次いで得られたマクロモノマーの任意の2種以上と、式(1)に相当するビニルモノマーとを共重合させることにより製造することができる。
【0087】
以下にその製造方法を詳しく説明する。
【0088】
式(2)、(3)、(4)及び(5)の構造単位に相当するマクロモノマーは、アルキルアクリルアミド誘導体、アルキルメタクリルアミド誘導体等の式(2)〜(5)の構造のうちの繰り返し単位に相当するモノマーの1種又は2種以上をアミノ基、水酸基又はカルボキシル基を分子内に有する連鎖移動剤の存在下、ラジカル重合させ、末端にアミノ基、水酸基又はカルボキシル基を持つ、アルキルアクリルアミド誘導体、アルキルメタクリルアミド誘導体等の1種又は2種以上の重合体又は共重合体を合成した後、ビニルベンジルハライド、メタクリル酸アルキルエステルジオキシド等のビニルモノマーと反応させることにより容易に製造できる。
【0089】
アルキルアクリルアミド誘導体、アルキルメタクリルアミド誘導体等の1種又は2種以上のモノマーの重合は、連鎖移動剤、ラジカル重合開始剤の存在下で行うが、その際、溶媒は存在してもしなくてもよい。反応の制御、操作面から、溶媒が存在した方が好ましい。溶媒としては、水、アルコール類、ジメチルホルムアミド、ベンゼン等が使用可能であるが、溶媒の種類に特に限定はない。また、連鎖移動剤としてはメルカプトアルキルアミン類、メルカプトアルカノール類、ω−メルカプトカルボン酸類、アルキレングリコール類等が使用できるが、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム等が使用できるが、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイルが好ましい。
【0090】
末端にアミノ基、水酸基あるいはカルボキシル基の入ったアルキルアクリルアミド誘導体又はアルキルメタクリルアミド誘導体の1種又は2種以上の重合体又は共重合体とビニルモノマーの反応は、一般の酸アミド反応、エーテル化反応あるいはエステル化反応などにより容易に達成しうる。ビニルモノマーとしては、クロロメチルスチレンやメタアクリル酸プロピレンジオキシドが好ましい。
【0091】
例えば、末端に水酸基を有する、アルキルアクリルアミド誘導体又はアルキルメタクリルアミド誘導体とアクリルアミド又はメタクリルアミドからなるランダム共重合体とクロロメチルスチレンとの反応は、ジメチルホルムアミド等の溶媒中、50%水酸化カリウム水溶液及び必要であれば相間移動触媒の存在下、0〜100℃の反応温度で行なわれる。
【0092】
上記の如くして得られた式(2)、(3)、(4)及び(5)の構造単位に相当するマクロモノマーの任意の2種以上を、単独重合およびラジカル重合可能なビニル化合物と共重合することにより、本発明のグラフトコポリマーを製造することができる。
【0093】
共重合し得るビニル化合物としては、スチレン、ハロメチルスチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、イソブチルシアノアクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル等を挙げることができる。スチレン、ハロメチルスチレン、メチルアクリレート及びメチルメタクリレートが好ましい。
【0094】
また、本発明のグラフトコポリマーのうち、前記式(3a)、(3b)、(3c)、(4a)、(4b)、(5a)又は(5b)のように、グラフト鎖中に酸アミド基、カルボキシル基又は1級アミノ基を有するグラフトコポリマーは、式(2)、式(4c)及び/又は式(5c)の構造単位を有するマクロモノマーを単独重合及びラジカル重合可能なビニル化合物と共重合し、次いで公知の方法により加水分解することによっても製造することができる。
【0095】
重合度を変えることにより、水、アルコール、クロロホルムおよびジメチルスルホキシドなどに可溶な両親媒性を有するものを作ることができる。
【0096】
本発明のグラフトコポリマーを材料とする微粒子は、式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される構造単位に相当する水溶性マクロモノマー2種以上と疎水性モノマーとを分散重合し、必要に応じて加水分解することにより得られ、表面に水溶性マクロモノマーが局在し、内部が疎水性ポリマーからなる微粒子となる。
【0097】
この微粒子は表面が水溶性であるため、水溶性薬物を効率良く保持することができる。一方、脂溶性薬物については内部の疎水性ポリマー部分との疎水的相互作用により保持できると考えられる。また、表面の両親媒性を利用することにより、微粒子表面に脂溶性薬物を保持することも可能である。言い換えると、本微粒子は特に薬物の物性に依存することなく、薬物を効率良く保持できると考えられることから、微粒子性運搬体として有用である。また、本発明グラフトコポリマーは、水溶性マクロモノマーに由来するグラフト鎖を2種以上有することから、薬物の保持性能、保護性能及び腸管における吸収促進効果が向上するものと考えられる。
【0098】
本発明のグラフトコポリマーを、微粒子性運搬体として利用するには、該グラフトコポリマーを、マイクロカプセル化、マイクロスフェアー化又はナノパーティクル化すればよい。
【0099】
マイクロカプセル化及びマイクロスフェアー化は常法により行うことができる。また、ナノパーティクル化等は、明石らが開発したマクロモノマー法を利用し(Die Angewandte Macromolekulare Chemie,132,81(1985); Polymer Journal,24,959(1992);ケミカル・エンジニヤリング、505頁、1994年)、分散重合により表面に水溶性マクロモノマーが局在し、内部が疎水性ポリマーからなるナノパーティクルを調製することで達成できる。
【0100】
なお、ナノパーティクルの粒子径はマクロモノマーの分子量、マクロモノマー作成時の反応条件等に依存して変化する。更に、適当な設定条件を選ぶことにより、粒子径がμmオーダーとなるマイクロスフェアーの調製も可能である。
【0101】
本発明のグラフトコポリマーは上記の如く薬物の運搬体として有用であることから、当該グラフトコポリマーと薬物を配合すれば、経口吸収性の良好な医薬組成物となる。該グラフトコポリマーは前記の如く薬物の保持能力に優れていることから、該グラフトコポリマーと薬物とを配合した組成物においては、グラフトコポリマーと薬物とは何らかの作用で複合体(以下、コンプレックスという)を形成しているものと考えられる。当該コンプレックス形成の作用としては、静電的相互作用、水素結合(表面に存在する水溶性官能基との相互作用)、疎水的相互作用(微粒子内部への取り込み)などが考えられる。
【0102】
本発明の医薬組成物に用いることのできる薬物は、特に制限がなく、水溶性薬物でも脂溶性薬物でもよい。このような薬物としては徐放性を期待する薬物及び吸収促進性薬物のいずれも挙げることができる。
【0103】
徐放性を期待する薬物としては、1)血中濃度半減期の短い薬物、2)血中
濃度の最適治療域の狭い薬物が挙げられ、吸収促進を期待する薬物(難吸収性薬物)としては、3)水溶性が高いために膜親和性が低い薬物、4)消化管内での分解、低吸収性等により薬効発現が妨げられている薬物や5)ワクチンなどが挙げられる。
【0104】
1)血中濃度半減期の短い薬物としては、イソソルビド、パパベリン、ニトログリセリン、ケトプロフェン、ジルチアゼム、プロプラノロール、イソプレテレノール、イソチペンジル、アスピリン、ピンドロール、ニフェジピン、アセタゾラミド、セファレキシン、セファクロル、キニジン及びプロカインアミド等が挙げられる。
【0105】
2)血中濃度の最適治療域の狭い薬物としては、ピロカルピン、テオフィリン、スコポラミン、メチルスコポラミン、クロルフェニラミン、フェニレフリン、トリヘキシフェニジル、カルベタペンテン、ペルフェナジン、ノスカピン、チオリダジン、ジメチンデン、ピリドスチグミン及びトリプロリジン等が挙げられる。
【0106】
3)水溶性が高いために膜親和性が低い薬物としては、フェノールスルフォンフタレイン、サリチル酸及びその誘導体、バルビツール酸及びその誘導体、ツボクラリン、スキサメトニウムなどの4級アミン類、スルファニル酸、スルファニルアセトアミド、スルファグアニジンなどのサルファ剤、キニン、エフェドリン、トラゾリン、プロカインアミド、アテノロール及びクロロチアジド等が挙げられる。
【0107】
4)消化管内での分解、低吸収性等により薬効発現を妨げている薬物としては、ペプチド性薬物が挙げられる。具体的には、インターフェロン、インターロイキン、エリスロポエチン、インシュリン、ネオカルチノスタチン、パラトルモン、オピオイドペプチド及びカルシトニン等のポリペプチドが挙げられる。
【0108】
5)ワクチンとしては、経口で供されることが有用と考えられるワクチンなどが挙げられる。具体的には、インフルエンザHAワクチン、B型肝炎ワクチン及びポリオワクチンなどが挙げられる。
【0109】
ワクチンの抗原としては、インフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型、インフルエンザウイルスC型、ロタウイルス、サイトメガロウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、エイズウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス(1型及び2型)、成人型T細胞白血病ウイルス(ATLV)、コクサッキーウイルス、エンテロウイルス、突発性発疹ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス(おたふく風邪ウイルス)、ポリオウイルス、日本脳炎ウイルス及び狂犬病ウイルスなどのウイルス類、虫歯連鎖球菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌、百日ぜき菌、ジフテリア菌及び破傷風菌などの菌類、クラミジアなどのリッケチア類、マラリヤ原虫などの微生物の蛋白質が挙げられる。更に、これらウイルス類、菌類、リッケチア類及び原虫類そのものの病原性を弱めたものも抗原となり得る。
【0110】
従って、本発明においては上記の薬物のうち、吸収促進を期待する薬物(難吸収性薬物)を用いるのが好ましく、ペプチド性薬物がより好ましく、カルシトニンが特に好ましい。
【0111】
上記のコンプレックスを経口投与した場合、粒子が微小であるため、大部分の薬物をコンプレックスのまま、消化管の微絨毛の近くにまで送達させることができると考えられる。(J.Kreuter et al.International Journal of Pharmaceutics,55,39(1989))。また、本発明のグラフトコポリマーは表面に水溶性の官能基が存在するため、消化管膜への親和性も高い。
【0112】
つまり、本発明のグラフトコポリマーの微粒子性運搬体、特にナノパーティクルと薬物のコンプレックスは、膜近傍に高濃度で薬物を蓄積させることができると考えられる。その結果、難吸収性薬物の吸収性を改善することができる。
【0113】
更に、ペプチドのように消化管内において消化酵素により分解されやすい薬物については、微粒子化することにより、消化酵素からの攻撃を防ぐことができる。
【0114】
また、この微粒子と薬物のコンプレックスは、膜への高親和性ゆえに、薬物の消化管内移動速度を遅延させることができると考えられる。その結果、薬物が長時間に渡って吸収部位である消化管に滞留するため、薬物の徐放効果も期待される。
【0115】
本発明医薬組成物におけるグラフトコポリマーと薬物との配合比は、適宜薬物に応じて調整すればよい。
【0116】
実際の投与剤形としては、前記グラフトコポリマーと薬物の混合物又はコンプレックスを、公知の方法により、製剤化して経口投与すればよい。また、軟カプセル等に前記グラフトコポリマーと薬物の混合物又はコンプレックスを入れる方法もある。
当該製剤としては特に制限されず、錠剤、顆粒剤、細粒剤、エリキシル剤、カプセル剤等が挙げられる。これらの製剤を調製するにあたり、通常の添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等を配合することができることは言うまでもない。
【0117】
【実施例】
以下に、参考例、実施例および試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
参考例1 t−ブチルメタクリレート(t−BMA)オリゴマーの合成
t−BMAモノマー25.0g(175.8mmol)をテトラヒドロフラン60mlに溶解させ、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール0.256g(3.28mmol)、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.289g(0.176mmol)を加え、窒素気流下60℃で6時間反応させ、t−BMAオリゴマーを合成した。反応終了後、水/メタノール(1/1)混合溶媒に対し、再沈殿を数回行い、精製を行った。得られたt−BMAポリマーの分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、Mn=2860であった。
【0119】
参考例2 t−BMAマクロモノマーの合成
参考例1で得たt−BMAオリゴマー10.0g(3.50mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlに溶解させ、水素化ナトリウム0.250g(10.5mmol)、相間移動触媒としてテトラブチルホスホニウムブロマイド(TBPB)1.19g(3.50mmol)とp−クロロメチルスチレン(p−CMSt)5.38g(35.0mmol)を加え、30℃で48時間反応させた。得られた生成物を水/メタノール(1/1)混合溶媒に対し、再沈殿を数回行い、精製を行った。1H−NMRの測定により、オリゴマー末端へビニルベンジル基が導入されていることを確認した。GPCによる分子量測定の結果、Mn=3120であった。
【0120】
参考例3 メチルアクリリックアシッド(MAA)マクロモノマーの合成
参考例2で得たt−BMAマクロモノマー3.80g(1.22mmol)をエタノール/濃塩酸(6/1)混合溶媒に加え、ヒドロキノン存在下、75℃で24時間反応させることでt−BMA側鎖の加水分解を行い、MAAマクロモノマーに誘導した。得られた生成物は透析することで精製した。1H−NMRにより加水分解率を計算した結果、98.0%であった。
【0121】
参考例4 N−ビニルアセトアミド(NVA)オリゴマーの合成
NVAモノマー12.0g(141mmol)をエタノール100mlに溶解させ、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール1.37g(17.58mmol)、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.231g(1.41mmol)を加え、窒素気流下60℃で6時間反応させ、NVAオリゴマーを合成した。反応終了後、エーテルに再沈殿することで精製を行った。得られた生成物の分子量をGPCを用いて測定した結果、Mn=4920であった。
【0122】
参考例5 NVAマクロモノマーの合成
参考例4で得たNVAオリゴマー6.25g(1.27mmol)をDMF50mlに溶解させ、50%水酸化カリウム水溶液(KOHaq)1.43g(12.7mmol)、相間移動触媒としてTBPB 0.215g(0.635mmol)とp−CMSt 1.95g(12.7mmol)を加え、30℃で48時間反応を行った。反応終了後、エーテルに対し再沈殿を数回行い、精製を行った。1H−NMRの測定により、NVAオリゴマー末端へのビニルベンジル基の導入率を計算した結果、ほぼ定量的に導入されていることを確認した。GPCによる分子量測定の結果、Mn=5160であった。
【0123】
参考例6 N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)オリゴマーの合成NIPAAmモノマー20.0g(177mmol)をエタノール80mlに溶解させ、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール0.20g(2.56mmol)、重合開始剤としてAIBN 0.60g(3.66mmol)を加え、窒素気流下60℃で7時間重合を行った。反応終了後、溶媒除去し水に溶解させた後、50℃以上に加温し、遠心分離することで、精製を行った。GPCを用いて測定した結果、オリゴマーの分子量はMn=3400であった。
【0124】
参考例7 NIPAAmマクロモノマーの合成
参考例6で得たNIPAAmオリゴマー10.0g(2.94mmol)をDMF50mlに溶解させ、50%KOHaq 1.65g(14.7mmol)、相間移動触媒としてTBPB 0.499g(1.47mmol)とp−CMSt 4.58g(29.8mmol)を加え、30℃で72時間反応を行った。反応終了後、透析により精製を行った。オリゴマー末端へのビニルベンジル基の導入率を1H−NMRにより計算した結果、76%であった。マクロモノマーの分子量をGPCで測定した結果、Mn=3500であった。
【0125】
製造例1 NVAマクロモノマー、NIPAAmマクロモノマーとスチレンの共重合(グラフトコポリマーの作成;ナノパーティクル化(PNIPAAm−PNVAナノパーティクル))
NVAマクロモノマー0.317g(0.072mmol)、NIPAAmマクロモノマー0.254g(0.072mmol)とスチレン0.60g(5.67mmol)をエタノール5mlに溶解させ、重合開始剤としてAIBN 9.69mg(0.0590mmol)を加え、脱気封管後、60℃で48時間共重合を行った。反応終了後、透析により精製を行った。光散乱法による測定の結果、平均粒径(重量平均)は20℃で436nm、40℃で373nmであった。
【0126】
【化34】
【0127】
製造例2 PNIPAAm−(PNVA−co−VAm)ナノパーティクル
製造例1で合成したPNIPAAm−PNVAナノパーティクルを2N−HCl中に分散させ、96℃で12時間加水分解を行い、3時間毎に分取した。分取した分散液はNaOHで中和し、透析により精製、凍結乾燥することで生成物を得た。光散乱法による粒径測定の結果、加水分解による大きな粒径の変化は見られなかった。また、IR測定の結果、アルキル部に由来する吸収ピーク(2900〜3100cm-1)に変化がなかったことと、カルボキシル基に由来する吸収ピーク(1700cm-1)付近がみられなかったこと、及びξ電位測定の結果からグラフト鎖であるPNIPAAm鎖は加水分解されておらず、同じくグラフト鎖であるPNVA鎖が経時的に加水分解されていると考えられる。
従って、下記のグラフトコポリマーが得られたと考えられる。
【0128】
【化35】
【0129】
製造例3
t−BMAマクロモノマー、NIPAAmマクロモノマーとスチレンの共重合(グラフトコポリマーの作成;ナノパーティクル化(PNIPAAm−Pt−BMAナノパーティクル))
t−BMAマクロモノマー0.245g(0.072mmol)、NIPAAmマクロモノマー0.364g(0.072mmol)とスチレン0.60g(5.76mmol)をエタノール5mlに溶解させ、重合開始剤としてAIBN 9.69mg(0.059mmol)を加え、脱気封管後、60℃で48時間共重合を行った。反応終了後、透析により精製を行い、メタノール中に分散させた。光散乱法による測定の結果、平均粒径は20℃で543nmであった。
【0130】
【化36】
【0131】
製造例4
MAAマクロモノマー、NIPAAmマクロモノマーとスチレンの共重合(グラフトコポリマーの作成;ナノパーティクル化)
MAAマクロモノマー0.135g(0.0813mmol)、NIPAAmマクロモノマー0.358g(0.0813mmol)とスチレン0.508g(4.87mmol)をエタノール/水(4/1)混合溶媒5mlに溶解させ、重合開始剤としてAIBN 8.27mg(0.0504mmol)を加え、脱気封管後、60℃で48時間共重合を行った。反応終了後、透析により精製を行った。光散乱法による測定の結果、平均粒径は20℃で805nmであった。
【0132】
【化37】
【0133】
実施例1
1−1 サーモンカルシトニン(sCT)を保持した微粒子(ナノパーティクル)の調製 以下の製剤を調製した。製剤(1)はネガティブコントロール、製剤(2)〜(4)はポジティブコントロールとした。また、製剤(5)及び(6)は本発明品であり、これに含まれるナノパーティクルはあらかじめ調製したPNIPAAm−PNVAナノパーティクルを加水分解したものであり、それぞれの加水分解時間は9及び12時間とした(加水分解時間が長いものほどVAmの比率が高くなる、また、PNIPAAm基は加水分解されない、製造例2参照)。なお、製剤(2)〜(6)はsCT水溶液とそれぞれのナノパーティクル分散液を混合して調製した。
【0134】
(1)0.1mg/mlサーモンカルシトニン(sCT)水溶液
(2)0.1mg/ml sCT,10mg/ml PNIPAAmナノパーティクル分散液
(3)0.1mg/ml sCT,10mg/ml PNVA ナノパーティクル分散液
(4)0.1mg/ml sCT,10mg/ml PNVA−co−VAmナノパーティクル分散液
(5)0.1mg/ml sCT,10mg/ml PNIPAAm−(PNVA−co−VAm)ナノパーティクル(9hr)分散液
(6)0.1mg/ml sCT,10mg/ml PNIPAAm−(PNVA−co−VAm)ナノパーティクル(12hr)分散液
【0135】
製剤(2)〜(4)で使用したナノパーティクルは下記の如くして合成した。
【0136】
(1)PNIPAAmナノパーティクルの調製
(1)−1 N−イソプロピルアクリルアミドの重合
N−イソプロピルアクリルアミド(興人株式会社製)20g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.6g及び2−メルカプトエタノール0.20gをエタノール80mlに溶かし、窒素気流下、60℃、7時間で重合を行った。重合後、反応液中に含まれる溶媒をエバポレーターにより除去した。更に、プレポリマーを蒸留水に再溶解させ、加熱し、60℃以上で遠心分離して精製した後、凍結乾燥した。ポリマーの収率は83%であった。ポリマーの数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めると、3400であった。
【0137】
(1)−2 マクロモノマーの合成
(1)−1で得られたポリN−イソプロピルアクリルアミド8gをジメチルホルムアミド(DMF)50mlに溶かし、50%水酸化カリウム3.3gを加え、30℃で30分間攪拌した。次に、臭化テトラブチルリン酸500mgを加えた後、クロロメチルスチレン4.65gを加えて、30℃で72時間反応させた。反応後の沈澱物を濾過により除去した後、反応液を透析し、凍結乾燥した。マクロモノマーの収率は82%であった。マクロモノマーの数平均分子量をGPCにより求めると、3500であった。このマクロモノマーは水とエタノールに可溶であった。
【0138】
(1)−3 PNIPAAmナノパーティクルの合成
数平均分子量3500のマクロモノマー635mg、スチレン520mg及びAIBN8.5mgをエタノール5mlに溶かし、60℃で24時間反応させた。重合終了後、未反応物と溶媒を透析により除去し、ついで凍結乾燥した。このポリマーはクロロホルム、DMSOに可溶であった。このグラフトポリマー(PNIPAAmナノパーティクル)の粒子径を動的光散乱法により測定した結果、直径は430nmであった。
【0139】
(2)PNVAナノパーティクルの調製
(2)−1 N−ビニルアセトアミド オリゴマーの合成
N−ビニルアセトアミド(NVA)モノマー10g(117.6mmol)をエタノール50mlに溶解し、連鎖移動剤2−メルカプトエタノール2.3g(29.44mmol)と開始剤にアゾビスイソブチロニトリル0.197g(1.2mmol)を加え、窒素気流下60℃、6時間、重合を行い、NVAオリゴマーを合成した。反応終了後、ジエチルエーテルを用いて再沈殿を数回行い精製した。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、Mn=2500であった。
【0140】
(2)−2 NVAマクロモノマーの合成
NVAオリゴマー1.875g(0.75mmol)をジメチルホルムアミド50mlに溶解し、50%水酸化カリウム水溶液0.84g(7.5mmol)、テトラブチルホスホニウムブロマイド0.127g(0.374mmol)(相間移動触媒)を加え30分間攪拌し、クロルメチルスチレン1.152g(7.5mmol)を加え30℃、48時間、反応し、NVAマクロモノマーを得た。反応終了後、ジエチルエーテルを用いて数回再沈殿を行って精製し、1H−NMRによりビニルベンジル基の導入率を計算し、ほぼ定量的に導入されていることを確認した。GCPによる分子量測定の結果、Mn=2600であった。
【0141】
(2)−3 PNVAナノパーティクルの合成
NVAマクロモノマー0.25g(0.096mmol)とスチレン0.23ml(1.99mmol)をエタノール5mlに溶解し、開始剤にアゾビスイソブチロニトリル3.34mg(0.02mmol)を用い、脱気封入管中で、60℃、48時間、共重合反応を行った。反応終了後、透析処理を行い未反応物質を除去した。光散乱法による測定の結果、グラフトポリマー(PNVAナノパーティクル)の粒径は257nmであった。
【0142】
(3)PNVA−co−VAmナノパーティクルの調製
上記(2)−3で得られたナノパーティクルを、2N−塩酸中に分散し、100℃、12時間、マクロモノマー鎖のアミド結合部分を加水分解した。得られたナノパーティクルは、反応終了後、透析処理で精製した。光散乱法による測定の結果PNVA−co−VAmナノパーティクルの粒径は273nmであった。
【0143】
1−2 動物実験
SD系雄性ラット(7週令、約200g)を24時間絶食した後、上記製剤をそれぞれ0.5mlずつ経口投与した(n=5)。投与後、40分、80分、2、3、4、6及び8時間に尾静脈より血液約60μl採血した。この血液中に含まれるカルシウムイオン濃度を634Ca++/pHアナライザー(チバコーニング社製)にて測定した。
【0144】
1−3 解析
0時点のカルシウムイオン濃度と各時点との温度の差を計算し、時間に対してプロットした。血中カルシウムイオン濃度の低下量と時間との間に含まれる面積を台形法により計算し、時間−血中カルシウムイオン濃度曲線上面積とした。それぞれのナノパーティクル製剤について、sCT水溶液(ネガティブコントロール)との面積の比を計算し、その値から吸収促進効果の強さを推測した(この比が大きいものほど吸収促進効果が強いことを意味する)。
【0145】
1−4 結果
表1に示すように、本発明のナノパーティクル(製剤(5)及び(6))は優れたsCTの吸収促進効果を示した。すなわち、製剤(5)及び(6)に含まれるナノパーティクルは、ポジティブコントロールとして用いた二元グラフトコポリマーのナノパーティクル(製剤(2)〜(4))に比べて、その吸収促進効果は顕著に増大していた。このことから、PNIPAAm基とPNVA−co−VAm基あるいはPVAm基をナノパーティクル表面に同時に結合させることにより、その吸収促進効果は相乗的に強くなることが証明された。
【0146】
【表1】
【0147】
実施例2
2−1 製剤の調製
以下の製剤を調製した(製剤(3)に含まれるナノパーティクルの調製方法は製造例3参照)。製剤(1)はネガティブコントロール、製剤(2)はポジティブコントロールとした。なお、製剤(2)及び(3)はsCT水溶液とそれぞれのナノパーティクル分散液を混合して調製した。
(1)0.1mg/ml サーモンカルシトニン(sCT)水溶液
(2)0.1mg/ml sCT,1mg/ml PNIPAAmナノパーティクル(実施例1の製剤(2)で使用したものと同じ)分散液
(3)0.1mg/ml sCT,1mg/ml PNIPAAm−Pt−BMAナノパーティクル分散液
【0148】
2−2 動物実験
試験例1に同じ
【0149】
2−3 解析
試験例1に同じ
【0150】
2−4 結果
表2に示すように、本発明のナノパーティクル(製剤(3))は、ポジティブコントロールとして用いた二元グラフトコポリマーのナノパーティクル(製剤(2))に比べて、その吸収促進効果は顕著に増大していた。このことから、PNIPAAm基とPtBMA基をナノパーティクル表面に同時に結合させることにより、その吸収促進効果は相乗的に強くなることが証明された。
【0151】
【表2】
【0152】
【発明の効果】
本発明のグラフトコポリマーを用いれば、腸管からの薬物の吸収が顕著に促進されることから、当該コポリマーと薬物とを配合した医薬組成物はDDSとして有用である。
Claims (2)
- 下記の式(1)で表される構造単位と、
Q2 は水素原子、
下記式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される構造単位よりなる群から選ばれる任意の2種以上のグラフト鎖構造単位
Q4 は
Q5 は酸素原子又は-NH-を示し、
Q6 は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、
Q7 は酸素原子又は硫黄原子を示し、
X1 は酸素原子又は2個の水素原子を示し、
R4 は水素原子又はメチル基を示し、
R5 は炭素数1〜10のアルキル基を示し、
lは1〜100の数を示す〕
Q9 は
Q10は酸素原子又は-NH-を示し、
Q11は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、
Q12は酸素原子又は硫黄原子を示し、
X2 は酸素原子又は2個の水素原子を示し、
R6 は水素原子又はメチル基を示し、
R7 は炭素数1〜10のアルキル基を示し、
R8 及びR9 は水素原子又はメチル基を示し、
mは1〜100の数を示し、
n及びpはそれぞれ0〜100であってn+pが1以上となる数を示す〕
Q14は
Q15は酸素原子又は-NH-を示し、
Q16は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、
Q17は酸素原子又は硫黄原子を示し、
X3 は酸素原子又は2個の水素原子を示し、
R10及びR11は水素原子又はメチル基を示し、
R12は炭素数1〜10のアルキル基を示し、
q及びrはそれぞれ0〜100であってq+rが1以上となる数を示す〕
Q19は
Q20は酸素原子又は-NH-を示し、
Q21は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、
Q22は酸素原子又は硫黄原子を示し、
X4 は酸素原子又は2個の水素原子を示し、
R13及びR14は水素原子又はメチル基を示し、
R15は水素原子又は炭素数2〜11のアルカノイル基を示し、
s及びtはそれぞれ0〜100であってs+tが1以上となる数を示す〕
とを有するグラフトコポリマーを含有する微粒子性運搬体。 - グラフトコポリマーが、式(1)で表される構造単位(a)と、式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される構造単位よりなる群から選ばれる任意の2種以上のグラフト鎖構造単位の和(b)とのモル分率((a)/(b))が、0.001〜1の範囲である請求項1記載の微粒子性運搬体。
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