JP3664610B2 - 蛍光体塗布用ノズル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍光ランプ等のガラス管内壁への蛍光体塗布用ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3に従来の蛍光ランプ等のガラス管内壁への蛍光体塗布用ノズルの概略構成を示す。
【0003】
図3(a)に示すように、従来の蛍光体塗布用ノズル13は、金属もしくはプラスチック製の中空円筒体14の下側先端部に、複数の蛍光体懸濁液噴出用の切り欠き開口部15aを有する支持部材15を介して被覆キャップ16が接続されて構成される。円筒体14の下端部と被覆キャップ16との間には、蛍光体懸濁液が噴出するために所定間隔のスリット25が設けられている。被覆キャップ16は支持部材15の端部に加工されたねじ17に固定されている。
【0004】
蛍光体塗布用ノズル13はガラス管18の上側開口部19付近の内側であって、円筒体14がガラス管18の内壁と所定の間隔を保つように配置される。
【0005】
蛍光体懸濁液の塗布時には、図3(b)に示すように、前記蛍光体塗布用ノズル13のスリット25から蛍光体懸濁液24を噴出させて、ガラス管18の内壁に塗布し、蛍光体塗布膜12を形成する。
【0006】
なお、蛍光体懸濁液24は、貯蔵タンク(図示せず)から円筒体14の上側開口部20に流入後、切り欠き開口部15aを経た後、前記蛍光体塗布用ノズル13の底面21、側面22、さらに上方壁23に順に衝突した後、最終的にスリット25から外側に噴出してガラス管18の内壁に塗布される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の蛍光体塗布用ノズル13において、蛍光体懸濁液は、円筒体14から切り欠き開口部15a及びスリット25を通過してガラス管18の内壁に塗布されるまでの間に、進行方向前方の段差や壁に何度も衝突し方向転換を繰り返し、渦を巻いて流動する。従って、蛍光体懸濁液の壁への複数回の衝突や渦の発生は蛍光体懸濁液中に泡を発生させ、ガラス管内壁面に形成される蛍光体塗布膜に泡による不良を発生させる原因となっていた。
【0008】
なお、泡発生を抑制するために蛍光体懸濁液の粘度を上げることが提案されているが、粘度を上げると、蛍光体塗布膜中に蛍光体懸濁液が塗布されなかった部分が生じる欠点(未塗布不良)が増加するという問題があり、実用的ではない。
【0009】
以上のように、従来の蛍光体塗布用ノズルでは品質面と生産性の面での課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の欠点を解決するものであり、蛍光体塗布用ノズル内での蛍光体懸濁液の泡発生を抑制することによって、蛍光体懸濁液の粘度を変えることなくガラス管内壁面の蛍光体塗布膜の泡不良発生率を減少させ、生産性の向上をはかることが可能な蛍光体塗布用ノズルを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の蛍光体塗布用ノズルは、中空円筒体と、最大径が前記中空円筒体の下側開口部の外径と略同等の略円錐形状を有する分散部材とを有し、前記分散部材は前記中空円筒体の下側開口部に、前記略円錐形状の錘面と前記中空円筒体の下側開口部との間にスリットを設けて固定されており、前記スリットの幅が0.5〜3.0mmの範囲にあり、前記略円錐形状の錘面がラッパ状曲面を有し、前記ラッパ状曲面の曲率半径r(mm)をx軸、前記分散部材の周縁と蛍光体が塗布されるガラス管内壁との間隔d(mm)をy軸とする2次元座標系(x,y)において、前記曲率半径r及び前記間隔dが、点A(10,6)、B(10,2)、C(30,5)、D(30,0)によって囲まれる範囲内にあるようにガラス管内に設置して使用されることを特徴とする。かかる構成により、蛍光体塗布用ノズル内での蛍光体懸濁液の泡発生を抑制することができるので、ガラス管内壁面の蛍光体塗布膜に発生する泡不良の問題を蛍光体懸濁液の粘度を変えることなく解決できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の蛍光体塗布用ノズルの一例を示す側断面図である。
【0014】
図1(a)に示すように、本実施の形態の蛍光体塗布用ノズル1は、中空状の円筒体2と、円筒体2の下側開口部3に設置された分散部材(キャップ)4とからなる。分散部材4は略円錐形状部分を有している。より好ましくは、分散部材4の錘面は、図示したように、分散部材4の中心線を含む面との交点で形成される曲線(錘体の母線)が下に凸の曲線(2次曲線の一部、円弧など)となる傾斜曲面(いわゆるラッパ状曲面)5である。分散部材4の最大径(略円錐形状の底面の径、すなわち周縁10の外径)は円筒体2の下側開口部3の外径と略同等である。分散部材4は、その略円錐状部分の中心線が、円筒体2の中心線と略一致するように設置される。また、分散部材4は、そのラッパ状曲面5と円筒体2の下側開口部3の端部との間に、蛍光体懸濁液が噴出するために所定間隔の隙間(スリット6)が全周にわたって確保されるように設置される。分散部材4の支持アーム4aは、円筒体2の内部に横断して設けられた梁7にねじ止め等の手段により固定される。
【0015】
蛍光体塗布用ノズル1は、ガラス管8の上側開口部9付近の内側であって、分散部材4の周縁10がガラス管8の内壁と所定の間隔dを保つように配置される。
【0016】
蛍光体の塗布に際しては、図1(b)に示すように、蛍光体懸濁液24を貯蔵タンク(図示せず)から円筒体2の上側開口部11に流入し落下させる。本実施の形態では、蛍光体懸濁液は、従来のような蛍光体塗布用ノズルの内部での障壁による影響を受けることなく、すなわち段差や壁による方向転換や衝突をほとんど受けることなく、スムーズに分散部材4のラッパ状曲面5上を流動し、スリット6を通過して噴出して、ガラス管8の内壁に塗布され、蛍光体塗布膜12を形成する。
【0017】
従って、本発明の蛍光体塗布用ノズルは、蛍光体塗布用ノズル内での蛍光体懸濁液の流れが極めてスムーズであるので、蛍光体懸濁液内の泡発生を抑制して消泡効果が改善される。よって、ガラス管内壁面の蛍光体塗布膜中の泡による不良の発生を抑えることができる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例について述べる。
【0019】
(実施例1)
蛍光体懸濁液が蛍光体塗布用ノズルの中で複数回障壁に衝突しようとする状況を防ぎ、かつ蛍光体懸濁液の流れをスムーズにするために、ステンレスで製作された図1のようなラッパ状曲面の傾斜を有する分散部材を持った蛍光体塗布用ノズルを用いて、内径25mm、管長1270mmの32W用の直管状蛍光灯用のガラス管の内壁に蛍光体を塗布した。蛍光体懸濁液としては、通常の三波長域発光形蛍光灯用蛍光体と、水、バインダー、及び結着剤から構成された蛍光体懸濁液を用いた。
【0020】
分散部材4の中心線を含む断面とラッパ状曲面5との交点により形成される曲線(錘体の母線)の曲率半径r(ラッパ状曲面の曲率半径r)が20mm、最大径(周縁10の外径)が15mmの略円錐状の分散部材4を円筒体2の下側開口部3に取り付けた。分散部材4のラッパ状曲面5と円筒体2の下側開口部3との間のスリット6の間隔は2mmとした。このような構成の蛍光体塗布用ノズルを、周縁10とガラス管内壁との間隔dが全周にわたって5mmとなるように上記ガラス管に設置して、塗布実験を行なった。
【0021】
一方、比較例として、図3の構成を有する、円筒体14の外径が16mmのステンレスで製作された蛍光体塗布用ノズルを用いて本実施例と同様の方法で塗布実験を行なった。
【0022】
その結果、図1のような蛍光体塗布用ノズルを用いた本発明の実施例では、ガラス管内壁面の蛍光体塗布膜に泡不良が発生しなかった。しかしながら、図3のような蛍光体塗布用ノズルを用いた比較例では、泡不良が多数発生した。
【0023】
(実施例2)
蛍光体塗布用ノズルの分散部材4として、ラッパ状曲面5の曲率半径rが20mmで、最大径(周縁10の外径)が15mm(すなわち蛍光体塗布用ノズルの周縁10とガラス管内壁との間隔dが5mm)である分散部材と、ラッパ状曲面5の曲率半径rが25mmで、最大径(周縁10の外径)が19mm(すなわち蛍光体塗布用ノズルの周縁10とガラス管内壁との間隔dが3mm)である分散部材とを作成した。これら2種類の分散部材を円筒体2の下側開口部3に、スリット6の間隔を0.3、0.5、1.0、2.0、3.0、3.5mmの6水準に変えて取り付けて蛍光体塗布用ノズルを作成した。これらのノズルを用いて、実施例1と同じガラス管に同じ塗布液を用いて塗布実験を行ない、泡不良、未塗布不良の発生の有無を調べた。
【0024】
その結果、いずれの分散部材の場合であっても、ラッパ状曲面5と円筒体の下側開口部3との間のスリット6の間隔が0.5〜3.0mmの範囲においてはガラス管内壁面の蛍光体塗布膜に泡不良も未塗布不良も発生しなかった。
【0025】
しかしながら、いずれの分散部材の場合であっても、ラッパ状曲面5と円筒体の下側開口部3との間のスリット6の間隔が0.3mmの場合には液量が足りないため未塗布不良が発生し、スリット6の間隔が3.5mmの場合には液量が多すぎるためガラス管内壁に塗布する際に泡不良が発生し、いずれも実用上不適であった。
【0026】
以上の結果より、ラッパ状曲面5と円筒体の下側開口部3との間のスリット6の間隔は、ラッパ状曲面5の曲率半径rや分散部材の周縁10とガラス管内壁との間隔dとは相関せず、0.5〜3.0mmの範囲とした場合にガラス管内壁面の蛍光体塗布膜の泡不良発生率を減少できることが確認できた。
【0027】
(実施例3)
ラッパ状曲面5と円筒体の下側開口部3との間のスリット6の間隔を2.0mmにして、ラッパ状曲面5の曲率半径rを5、10、20、30、35mmの5水準に変え、また、周縁10とガラス管内壁との間隔dを1mm、2mm、5mm、6mm、7mmの5水準に変えた蛍光体塗布用ノズルを用いて、実施例1と同様に塗布実験を行ない、ガラス管内壁面の蛍光体塗布膜の泡不良、未塗布不良の発生の有無を調べた。
【0028】
その結果、泡不良、未塗布不良がともに未発生の範囲は、図2に示すように、ラッパ状曲面の曲率半径r(mm)を横軸x、分散部材の周縁10とガラス管内壁との間隔d(mm)を縦軸yとしたとき、(x,y)が点A(10,6)、B(10,2)、C(30,5)、D(30,0)によって囲まれる範囲で得られ、この範囲内においてガラス管内壁面の蛍光体塗布膜の泡不良と未塗布不良の発生率を減少できることが確認できた。
【0029】
しかしながら、曲率半径rが小さすぎると、蛍光体懸濁液の流動方向が急激に変化させられるので方向変化の際に、またその流出する方向がガラス管に対して直角方向に近づくためガラス管に塗布する際に、泡不良が発生する。また、曲率半径rが大きすぎると、蛍光体懸濁液の流出する方向がガラス管に対して平行方向に近づくため未塗布不良が発生する傾向が見られた。また、周縁とガラス管内壁との間隔dが小さすぎると、蛍光体懸濁液の流出位置がガラス管内壁に対して近いためにガラス管内壁に塗布される際に泡不良が発生し、周縁とガラス管内壁との間隔dが大きすぎると、蛍光体懸濁液がガラス管内壁に届かず未塗布不良が発生する傾向が見られた。
【0030】
以上のように、本発明の蛍光体塗布用ノズルは、従来に比べ蛍光体懸濁液中の泡の発生を抑制できるともに、ガラス管内壁面の蛍光体塗布膜中の泡不良の発生をなくすことができる。
【0031】
なお、本発明において、蛍光体塗布用ノズルの構造、材料、ガラス管のサイズ、蛍光体懸濁液等は上記の図や実施例に示したものに限定されず、これら以外のものにも変更することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の蛍光体塗布用ノズルは、従来に比べ蛍光体懸濁液中の泡発生が抑制され消泡効果が向上し、ガラス管内壁面の蛍光体塗布膜中の泡不良の発生を抑えることができる。この結果、蛍光体塗布膜の品質面での安定性が増し、かつ生産性も向上するなど実用上の大きな改良効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蛍光体塗布用ノズルの一例を示した図であり、(a)はその概略構成を示した側面断面図、(b)は蛍光体懸濁液の流れを示す断面図である。
【図2】分散部材のラッパ状曲面の曲率半径r、及び分散部材の周縁とガラス管内壁との間隔dに対する、蛍光体塗布膜中の泡不良及び未塗布不良の発生状況を示した図
【図3】従来の蛍光体塗布用ノズルを示した図であり、(a)はその概略構成を示した側面断面図、(b)は蛍光体懸濁液の流れを示す断面図である。
【符号の説明】
1 蛍光体塗布用ノズル
2 円筒体
3 円筒体下側開口部
4 分散部材
4a 支持アーム
5 ラッパ状曲面
6 スリット
7 梁
8 ガラス管
9 ガラス管上側開口部
10 周縁
11 円筒体上側開口部
12 蛍光体塗布膜
13 蛍光体塗布用ノズル
14 円筒体
15 支持部材
15a 円筒体切り欠き開口部
16 被覆キャップ
17 ねじ
18 ガラス管
19 ガラス管上側開口部
20 円筒体上側開口部
21 蛍光体塗布用ノズル底面
22 蛍光体塗布用ノズル側面
23 蛍光体塗布用ノズル上壁面
24 蛍光体懸濁液
25 スリット

Claims (4)

  1. 中空円筒体と、最大径が前記中空円筒体の下側開口部の外径と略同等の略円錐形状を有する分散部材とを有し、前記分散部材は前記中空円筒体の下側開口部に、前記略円錐形状の錘面と前記中空円筒体の下側開口部との間にスリットを設けて固定されており、前記スリットの幅が0.5〜3.0mmの範囲にあり、前記略円錐形状の錘面がラッパ状曲面を有し、前記ラッパ状曲面の曲率半径r(mm)をx軸、前記分散部材の周縁と蛍光体が塗布されるガラス管内壁との間隔d(mm)をy軸とする2次元座標系(x,y)において、前記曲率半径r及び前記間隔dが、点A(10,6)、B(10,2)、C(30,5)、D(30,0)によって囲まれる範囲内にあるようにガラス管内に設置して使用されることを特徴とする蛍光体塗布用ノズル。
  2. 前記ラッパ状曲面の曲率半径rが10〜30mmの範囲にある請求項に記載の蛍光体塗布用ノズル。
  3. 前記分散部材の周縁と蛍光体が塗布されるガラス管内壁との間隔が6mm以下となるようにガラス管内に設置して使用される請求項1又は2に記載の蛍光体塗布用ノズル。
  4. 蛍光体、水、バインダー、及び結着剤を含む蛍光体懸濁液を塗布するために使用される請求項1〜のいずれかに記載の蛍光体塗布用ノズル。
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