JP3663761B2 - パルス変成回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルス変成回路に係り、特に、パルス幅を圧縮しパルス電圧を逓昇するための、可飽和リアクトルとパルス変圧器を組み合わせて構成したパルス変成回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
以下、図面を参照して従来の技術を説明する。
【0003】
図5はコンデンサと可飽和リアクトルとパルス変成器を組み合わせて構成したパルス変成回路の基本的回路を示す回路図である。図5において、可飽和リアクトル1の巻線3の一端とパルス変圧器5の一次巻線6の一端は直列に接続され、可飽和リアクトル1の巻線3の他端とパルス変圧器5の一次巻線6の他端はコンデンサ14を介して接続されている。パルス変圧器5の二次巻線7の両端は負荷15に接続されている。
【0004】
コンデンサ14に充電されるパルス電圧は、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5の一次巻線6を通り放電される。可飽和リアクトル1は、そこにかかるパルス電圧が一定値に達するまでは高いインダクタンスを有し、放電を阻止する。パルス電圧が上昇して可飽和リアクトル1の磁束が飽和領域に入ると、可飽和リアクトル1のインダクタンスがゼロに近づき放電が始まる。
【0005】
このようにコンデンサー14にかかるパルス電圧の放電を可飽和リアクトル1により遅延させるので、結果として、パルス変圧器5の一次にかかる電圧のパルス幅は、コンデンサー14にかかるパルス幅より短くなり、パルス幅の圧縮が行われる。パルス変圧器5の二次電圧はステップアップされ、高電圧でごく短い波長の、例えば、レーザー電源などに適したパルスが得られるのである。
【0006】
図6は従来のパルス変成回路の構成を概念的に示す平面図、図7は同じくその断面図で、可飽和リアクトル1の巻線3の必要巻回数がNLターン、パルス変圧器5の一次巻線6の必要巻回数がN1ターン、二次巻線7の必要巻回数がN2ターンの場合を示している。
【0007】
図6および図7において、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5はそれぞれ独立して製作される。可飽和リアクトル1の鉄心2には巻線3としてNLターンが巻回されてその巻き始めは端子4に、巻き終わりは端子16にそれぞれ接続されている。また、パルス変圧器5の鉄心13には一次巻線6としてN1タターン巻回されて、その巻き始めは端子17に、巻き終わりは端子18にそれぞれ接続されるとともに、二次巻線7としてN2ターン巻回されてその巻き始めは端子8に、巻き終わりは端子9にそれぞれ接続されている。可飽和リアクトル1とパルス変圧器5の一次巻線6が直列になるように、可飽和リアクトル1の端子16とパルス変圧器5の端子17が接続線19により結ばれている。なお、パルス変成回路の入力端子は、パルス変圧器5の一次巻線6の端子18に接続された端子10と前記可飽和リアクトル1の巻線3の端子4である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術で述べたパルス変成回路の構成は、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5が独立してそれぞれ端子を持っているので、リード線の引き出しや端子を設けるため、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5の間の寸法を一定値以上となる必要があり、パルスを変成するとき、パルス幅が短くなるほど回路の漏れインダクタンスの影響を大きく受けるので、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5の間の幾何学的距離は最短であることが要求されるが、従来の構成では上記の理由により制約を受けるという問題点を有していた。
【0009】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたもので、可飽和リアクトルとパルス変圧器のを組み合わせたパルス変成回路において、構造的には外径寸法が小さくて作業性が高く、かつ、電気的には漏れインダクタンスが小さく、ごく短い波長のパルス変成に対し高性能で、絶縁信頼性の高いパルス変成回路を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明において、上記の課題を解決するための手段は、パルス変成器の一次巻線にコンデンサと可飽和リアクトルの巻線を接続し、コンデンサに充電される電圧をこの一次巻線と可飽和リアクトルの巻線を通して放電させてパルス変成器の二次巻線からパルス電圧を得るようにしたパルス変成回路において、前記可飽和リアクトルの巻線を必要巻回数より1ターン少なく巻回し、パルス変圧器の一次巻線を巻回した巻き終わり側を可飽和リアクトルの鉄心の内側を貫通させて不足分の1ターンを加え、可飽和リアクトルの巻線を必要巻回数として、可飽和リアクトルとパルス変成器の幾何学的距離を短縮し、回路の漏れインダクタンスの影響を受け難くしたものである。
【0011】
そして、第1の実施の形態では、可飽和リアクトルの巻線とパルス変圧器の一次巻線の導体を継目のない1本の導体とし、この導体の巻き始め側は可飽和リアクトルの巻線の必要巻回数より1ターン少なく巻回してパルス変圧器の一次側に渡り、パルス変圧器の一次巻線を巻回し、その巻き終わりの導体を可飽和リアクトルの鉄心の内側を貫通させて必要巻回数として可飽和リアクトルの巻線を形成するものである。
【0012】
また、第2の実施の形態では、可飽和リアクトルの巻線の導体は始めに可飽和リアクトルの巻線の必要巻回数より1ターン少なく巻回してその巻き終わりを一旦切断して固定しておくとともに、パルス変圧器の一次巻線の導体はその巻き始めを中継接続点に接続できる長さにしておいて、パルス変圧器の一次巻線を巻回しその巻き終わりの導体の長さを可飽和リアクトルの鉄心の内側を貫通する長さとしておき、可飽和リアクトルとパルス変圧器を組み合わせた後、前記可飽和リアクトルの巻線の巻き終わりの導体と前記パルス変圧器の一次巻線の巻き始めの導体を前記中継接続点で接続し、前記パルス変圧器の一次巻線の巻き終わりの導体を可飽和リアクトルの鉄心の内側を貫通させて必要巻回数として可飽和リアクトルの巻線を形成するものである。
【0013】
第3の実施の形態では、パルス変圧器の一次巻線の巻き始めと巻き終わりに中継接続点を設けて、巻き始めの中継接続点は、可飽和リアクトルの巻線の巻き終わりに、巻き終わりの中継接続点は、可飽和リアクトルの鉄心の内側を貫通する導体に接続するものである。
【0014】
第4の実施の形態では、可飽和リアクトルとパルス変圧器の鉄心として矩形状巻鉄心を用いたものである。
【0015】
このように構成することにより、可飽和リアクトルとパルス変圧器の接続リードの引き回しが無くなり、単純化するので、両者間の寸法が詰まり、リードの長さも詰まるので、漏れインダクタンスが小さくなり、漏れインダクタンスが小さくなることにより、ごく短い波長のパルス変成に対し、より性能を上げることができ、リード線の引き回しが単純化するので、高圧リード線が他にクロスすることが少なくなり、絶縁的にも信頼性を高めることができるようにしたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は本発明のパルス変成回路の第1の実施の形態を示す断面図で、図1に示すように、可飽和リアクトル1の鉄心2には巻線3をあらかじめ必要巻回数NL より1ターン少ない巻回数、すなわち(NL−1)のターンが巻回され、巻き終わりの導体はパルス変圧器5の一次巻線6となるだけの長さを持っている状態とし、また、パルス変圧器5の二次巻線7は、あらかじめ巻線を完了(巻回数がN2ターン)させ、巻き始めと巻き終わりをそれぞれ端子8と9に接続した状態で、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5を最も接近させて固定する。この状態で可飽和リアクトル1の終わりからの導体をパルス変圧器5の一次巻線6としてN1ターンを巻き、巻き終わりを可飽和リアクトル1の鉄心2の内側を貫通させて残りの1ターンを形成し、端子10に接続して引き出したものである。なお、図中13はパルス変圧器鉄心で、リング状巻鉄心から成る。
【0018】
つまり、可飽和リアクトル1の巻線3とパルス変圧器5の一次巻線6は1本のつなぎ目のない導体で構成され、可飽和リアクトル1は最初、必要巻回数NLより1ターン少なく巻き、最後にパルス変圧器5の一次巻線6の巻き終わりの導体を可飽和リアクトル1の鉄心2の内側を貫通させて1ターンを形成し、可飽和リアクトル1の巻回数を合計NLターンとして構成したものである。ごく短い波長のパルスでは、パルス変圧器5の一次巻線6の必要巻回数N1は通常は1ターンないし数ターンであり、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5を最も接近させたままで容易に巻回することができる。
【0019】
図2は本発明のパルス変成回路の第2の実施の形態を示す断面図で、図2に示すように、可飽和リアクトル1の巻線3の巻回数を必要回数NLより1ターン少ない(NL−1)ターンを巻回して、巻き始めを可飽和リアクトル1の端子(パルス変成回路の入力端子)4に接続し、巻き終わりで導体を一旦切断して固定しておく。パルス変圧器5の一次巻線6の巻き始めを、中継端子11に接続できる長さにしてパルス変圧器5の一次巻線6を巻回し、その巻き終わりの導体の長さを可飽和リアクトル1の鉄心2の内側を貫通する長さとした状態で、また、パルス変圧器5の二次巻線7はあらかじめ巻線を完了(巻回数がN2ターン)させ、巻き始めと巻き終わりをそれぞれ端子8と9に接続した状態で、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5を組み合わせた後、この導体を可飽和リアクトル1の鉄心2の内側を貫通させ、可飽和リアクトル1の端子(パルス変成回路の入力端子)10に接続し、パルス変圧器5の一次巻線6の巻き始めおよび前記可飽和リアクトル1の巻線3の巻き終わりを中継端子11に接続したものである。
【0020】
すなわち、この第2の実施の形態では、パルス変圧器5の一次巻線6はあらかじめ可飽和リアクトル1と組み合わせることなく単独で巻いておき、巻き終わりの導体を可飽和リアクトル1の鉄心2の内側を貫通できる長さにしておく。そして、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5を組み合わせた後、パルス変圧器5の一次巻線6の巻き終わりの導体を可飽和リアクトル1の鉄心2の内側を貫通させて1ターンをプラスして必要巻回数とし、入力端子10に接続したものである。
【0021】
この場合は、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5の間に中継端子11が1箇所できるが、パルス変圧器5は単独で一次巻線6を巻くことができるので、パルス変圧器5の一次巻線6が2ターン以上ある場合には作業性が良くなる。
【0022】
図3は本発明のパルス変成回路の第3の実施の形態を示す断面図で、図3に示すように、可飽和リアクトル1の巻線3の巻回数を必要数NLより1ターン少ない(NL−1)ターンを巻回して、巻き始めを可飽和リアクトル1の端子(パルス変成回路の入力端子)4に接続し、巻き終わりを中継端子11に接続しておく。
【0023】
パルス変圧器5の一次巻線6は巻き始めの導体を前記中継端子11に接続できる長さにしてパルス変圧器5の一次巻線6を巻回し、その巻き終わりの導体は中継端子12に接続しておく。パルス変圧器5の二次巻線6はあらかじめ巻線が完了(巻回数がN2)し、巻き始めと巻き終わりをそれぞれ端子8と9に接続した状態で、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5を組み合わせた後、パルス変圧器5の一次巻線6の巻き始めの導体を前記中継端子11に接続する。また、一端を前記中継端子12に接続した導体を、パルス変圧器5の鉄心13の内側を貫通させ、さらに可飽和リアクトル1の鉄心2の内側を貫通させて可飽和リアクトル1の端子(パルス変成回路の入力端子)10に接続し、パルス変圧器5の一次巻線6の巻き始めおよび前記の可飽和リアクトル1の巻線3の巻き終わりを中継端子11に接続した構造である。
【0024】
すなわち、パルス変圧器の5の一次巻線6の巻き始めと巻き終わり側の2箇所にそれぞれ中継端子12と11を設けたものである。接続点が増すものの、作業性が良くなる。
【0025】
図4は本発明のパルス回路の第4の実施の形態における説明図で、(A)は正断面図、(B)は鉄心の側面図で、前記第1ないし第3の実施の形態では可飽和リアクトル1の鉄心2およびパルス変圧器5の鉄心13はリング状巻鉄心を用いたものについて説明したが、第4の実施の形態では図4に示すように、鉄心として矩形状巻鉄心を用いたものである。このパルス変圧器および可飽和リアクトルの鉄心の形状は、いずれか一方がリング状巻鉄心で他方が矩形状巻鉄心でもよい。なお、パルス変圧器5の二次巻線7は図示を省略してある。可飽和リアクトル1の鉄心2には巻線3をあらかじめ必要巻回数NLより1ターン少ない巻回数、すなわち(NL−1)ターンが巻回され、巻き終わりの導体はパルス変圧器5の一次巻線6となるだけの長さをもっている状態とし、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5を最も接近させて固定する。この状態で可飽和リアクトル1の終わりからの導体をパルス変圧器5の一次巻線6としてN1ターンを巻き、巻き終わりを可飽和リアクトル1の鉄心2の内側を貫通させて可飽和リアクトル1の巻線3を形成し、端子10として引き出したものである。
【0026】
つまり、可飽和リアクトル1の巻線3とパルス変圧器5の一次巻線6は1本のつなぎ目のない導体で構成され、可飽和リアクトル1は最初、必要巻回数NLより1ターン少なく巻き、最後に、パルス変圧器5の一次巻線6の巻き終わりの導体を可飽和リアクトル1の鉄心2の内側を貫通させて1ターンを形成し、可飽和リアクトル1の巻回数を合計NLターンとして構成したものである。ごく短い波長のパルスでは、パルス変圧器5の一次巻線6の所要巻回数N1は通常は1ターンないし数ターンであり、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5を最も接近させたままでも容易に巻回することができる。
【0027】
【発明の効果】
本発明のパルス変成回路は、可飽和リアクトル1とパルス変圧器5を最も接近させ、可飽和リアクトル1の巻線3とパルス変圧器2の一次巻線6の導体を同一の導体を使用して、連続に巻回し、または、1ないし2箇所の中継接続点で両者の巻線の導体接続して構成されているので、次に記載する効果を奏する。
【0028】
(1)可飽和リアクトル1とパルス変圧器5の接続リードの引き回しが無くなり、単純化するので、両者間の寸法が詰まり、リードの長さも詰まるので、漏れインダクタンスが小さくなる。
【0029】
(2)漏れインダクタンスが小さくなることにより、ごく短い波長のパルス変成に対し、より性能を上げることができる。
【0030】
(3)リード線の引き回しが単純化するので、高圧リード線が他にクロスすることが少なくなり、絶縁的にも信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパルス回路の第1の実施の形態における断面図。
【図2】本発明のパルス回路の第2の実施の形態における断面図。
【図3】本発明のパルス回路の第3の実施の形態における断面図。
【図4】本発明のパルス回路の第4の実施の形態における説明図。
【図5】パルス変成回路の基本的な回路を示す回路図。
【図6】従来のパルス変成回路の構成を概念的に示す平面図。
【図7】従来のパルス変成回路の構成を概念的に示す断面図。
【符号の説明】
1…可飽和リアクトル
2…可飽和リアクトルの鉄心
3…可飽和リアクトルの巻線
4…可飽和リアクトルの端子(パルス変成回路の入力端子)
5…パルス変圧器
6…パルス変圧器の一次巻線
7…パルス変圧器の二次巻線
8…パルス変圧器の二次巻線端子(パルス変成回路の出力端子)
9…パルス変圧の二次巻線端子(パルス変成回路の出力端子)
10…可飽和リアクトルの端子(パルス変成回路の入力端子)
11…中継接続点(中継端子)
12…中継接続点(中継端子)
13…パルス変圧器の鉄心
14…コンデンサー
15…負荷
Claims (5)
- パルス変成器の一次巻線にコンデンサと可飽和リアクトルの巻線を接続し、コンデンサに充電される電圧をこの一次巻線と可飽和リアクトルの巻線を通して放電させてパルス変成器の二次巻線からパルス電圧を得るようにしたパルス変成回路において、前記可飽和リアクトルの巻線を必要巻回数より1ターン少なく巻回し、パルス変圧器の一次巻線を巻回した巻き終わり側を可飽和リアクトルの鉄心の内側を貫通させて不足分の1ターンを加え、可飽和リアクトルの巻線を必要巻回数としたことを特徴とするパルス変成回路。
- 可飽和リアクトルの巻線とパルス変成器の一次巻線の導体を継目のない1本の導体とし、この導体の巻き始め側は可飽和リアクトルの巻線の必要巻回数より1ターン少なく巻回してパルス変成器の一次側に渡り、パルス変成器の一次巻線を巻回し、その巻き終わりの導体を可飽和リアクトルの鉄心の内側を貫通させたことを特徴とする請求項1記載のパルス変成回路。
- 可飽和リアクトルの巻線を必要巻回数より1ターン少なく巻回してその巻き終わりとパルス変成器の一次巻線の巻き始めとを中継接続するとともに、パルス変成器の一次巻線の巻き終わりの導体を可飽和リアクトルの鉄心の内側を貫通させたことを特徴とする請求項1記載のパルス変成回路。
- パルス変成器の一次巻線の巻き始めと巻き終わりに中継接続端子を設け、巻き始めの中継接続端子は可飽和リアクトルの巻き終わりと接続し、巻き終わりの中継接続端子は、可飽和リアクトルの鉄心の内側を貫通する導体に接続するようにしたことを特徴とする請求項1記載のパルス変成回路。
- 可飽和リアクトルおよび/又はパルス変成器の鉄心をリング状巻鉄心、又は矩形状巻鉄心で構成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のパルス変成回路。
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