JP3663621B2 - レーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、シリンダヘッドのバルブシート部に施されるレーザクラッド加工において、加工点に供給される粉体の量が正常か否かを判定するのに用いられるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザクラッド加工により形成されるビードの品質は、加工点に供給される粉体の量とレーザ出力との相対的なバランスによって支配されているが、粉体の量およびレーザ出力の各々の時間経過に伴う変化をモニタリングすることにより、粉体の量およびレーザ出力がそれぞれ正常か否かを判定することができ、とくに、上記判定を正確に行うためには、粉体の供給量の精度の高いモニタリング方法が要求されている。
【0003】
従来において、レーザクラッド加工の加工点に対する粉体の供給には、超音波モータ式粉体供給フィーダ(図1参照)が広く用いられており、この超音波モータ式粉体供給フィーダ(1)では、ホッパ(2)内の粉体残り重量をロードセル(4)で測定し、その時間経過に伴う変化を出力してこれをモニタリングすることで粉体の供給量が正常か否かを判定するようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した従来のレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、図2に示すように、超音波モータ式粉体供給フィーダの超音波モータ始動時における振動や反応遅れtdやノイズカット処理などの影響を受けて、ロードセル出力波形woが実流値と大きく異なってしまい、供給制御波形wcと比較することができないことがある、すなわち、粉体供給量の正否を判定することができないことがあるという問題を有していた。
【0005】
また、図2の拡大円内に示すように、ロードセル出力波形woの振動が大きいため、サンプリングポイント毎で正否の判定を行おうとすると、上方管理限界線LUおよび下方管理限界線LLを越えてしまうものが多発して、品質上問題がないものであっても、正常ではないと誤判定してしまう可能性がないとはいえないという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、加工点に粉体が正常な量だけ供給されているか否かを確実に判定することができるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法は、加工点にフィーダにより粉体を供給してレーザクラッド加工を行うに際して、フィーダのホッパ内の粉体残り重量をロードセルで測定し、その時間経過に伴う変化を示すロードセル出力波形のうちの供給制御波形の加工開始端部における粉体供給スロープ制御区間に相当する区間を積分して、これで得られた面積に基づいて粉体の供給量が正常か否かを判定する構成としており、このレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
本発明の請求項2に係わる発明は、フィーダ始動時における応答遅れ分の以降においてロードセル出力波形のうちの供給制御波形の加工開始端部における粉体供給スロープ制御区間に相当する区間を積分する構成とし、本発明の請求項3に係わる発明は、積分により得られた面積が、実験により求めた粉体供給量が不足となる下方限界値以上でかつ粉体供給量が過多となる上方限界値以下のときに正常であると判定する構成としている。
【0009】
【発明の作用】
本発明の請求項1に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、上記した構成としていることから、加工点にフィーダにより粉体を供給してレーザクラッド加工を行うに際して、ロードセル出力波形のうちの供給制御波形の加工開始端部における粉体供給スロープ制御区間に相当する区間を積分して得られた面積が大きすぎると、粉体供給量の過多による入熱不足状態となって溶着不良が生じ、一方、面積が小さすぎると、粉体供給量の不足による入熱過多状態となって母材希釈による脆化不良が発生することから、すなわち、面積の大小とレーザクラッド加工により形成されるビードの品質との間に相関関係が成り立つことから、面積に基づいて粉体の供給量が正常か否かを判定し得ることとなる。
【0010】
本発明の請求項2に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、上記した構成としているので、実際には粉体の供給がなされていないフィーダ始動時の振動波形がカットされることとなり、面積の大小とビードの品質との間により密接した相関関係が成り立つことから、面積に基づく粉体供給量の正否の判定精度が向上することとなる。
【0011】
本発明の請求項3に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、上記した構成としたから、粉体供給量の正否が誤判定される可能性がほとんどなくなり、その結果、判定精度が格段に向上することとなる。
【0012】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、上記した構成としたから、粉体の供給量の正否を確実に判定することが可能になるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0013】
本発明の請求項2に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、上記した構成としているので、粉体供給量の正否の判定精度を向上させることができ、本発明の請求項3に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、上記した構成としたため、判定精度のより一層の向上を実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法の一実施例を説明する図である。
【0016】
図1(a)に示すように、加工点に粉体を供給する超音波モータ式粉体供給フィーダ1は、ホッパ2と、このホッパ2に振動を与えてホッパ2内の粉体を加工点に移動させる超音波モータ3と、ホッパ2内の粉体残り重量を測定するロードセル4を備えている。
【0017】
シリンダヘッドのバルブシート部にレーザクラッド加工を行う場合において、超音波モータ式粉体供給フィーダ1による加工点に対する粉体の供給量が正常であるか否かを判定するに際しては、まず、超音波モータ式粉体供給フィーダ1のホッパ2内の粉体残り重量をロードセル4で測定する。
【0018】
次いで、図1(b)に示すように、超音波モータ3の始動時における応答遅れTd分の以降において、時間経過に伴う粉体残り重量の変化を示すロードセル出力波形Woのうちの供給制御波形Wcの加工開始端部における粉体供給スロープ制御区間T1に相当する区間を積分する。
【0019】
そして、上記積分により得られた面積Sが、図1(c)に示すように、
S1≦S≦S2 を満足する場合に、粉体供給量が正常であると判定する。
【0020】
この場合、S1は実験により求めた下方限界値であり、面積Sがこの下方限界値S1を下回ると、粉体供給量の不足による入熱過多状態となって母材希釈による脆化不良が発生する。
【0021】
一方、S2はS1と同じく実験により求めた上方限界値であり、面積Sがこの上方限界値S2を上回ると、粉体供給量の過多による入熱不足状態となって溶着不良が生じる。
【0022】
つまり、面積Sが下方限界値S1から上方限界値S2までの間に収まって、粉体供給量が正常であると判定される範囲が、レーザ加工条件に起因する不具合が生じない良品範囲ということになる。
【0023】
したがって、上記したレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、面積Sの大小とレーザクラッド加工によりバルブシート部に形成されるビードの品質との間に相関関係が成り立つことから、面積Sに基づいて粉体の供給量が正常か否かを判定し得ることとなる。
【0024】
また、上記したレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、超音波モータ3の始動時における応答遅れTd分の以降において、ロードセル出力波形Woのうちの供給制御波形Wcの加工開始端部における粉体供給スロープ制御区間T1に相当する区間を積分するようにしているので、実際には粉体の供給がなされていない超音波モータ3始動時の振動波形がカットされることとなり、面積Sの大小とビードの品質との間により密接した相関関係が成り立つことから、面積Sに基づく粉体供給量の正否の判定精度が向上することとなる。
【0025】
さらに、上記したレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法では、面積Sが S1≦S≦S2 を満足する場合に、粉体供給量が正常であると判定するようにしているので、粉体供給量の正否が誤判定される可能性がほとんど皆無となり、その結果、判定精度が格段に向上することとなる。
【0026】
本発明に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法の詳細な構成は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば、フィーダは超音波モータ式粉体供給フィーダ1に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法の一実施例を示す超音波モータ式粉体供給フィーダの正面方向からの概略説明図(a),供給制御波形とロードセル出力波形とを比較するグラフ(b)およびロードセル出力波形面積と不良発生率との相関関係を表すグラフ(c)である。
【図2】従来におけるレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法を示す供給制御波形とロードセル出力波形とを比較するグラフである。
【符号の説明】
1 超音波モータ式粉体供給フィーダ
2 ホッパ
4 ロードセル
S ロードセル出力波形を積分して得られる面積
T1 粉体供給スロープ制御区間
Wc 供給制御波形
Wo ロードセル出力波形
Claims (3)
- 加工点にフィーダにより粉体を供給してレーザクラッド加工を行うに際して、フィーダのホッパ内の粉体残り重量をロードセルで測定し、その時間経過に伴う変化を示すロードセル出力波形のうちの供給制御波形の加工開始端部における粉体供給スロープ制御区間に相当する区間を積分して、これで得られた面積に基づいて粉体の供給量が正常か否かを判定することを特徴とするレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法。
- フィーダの始動時における応答遅れ分の以降においてロードセル出力波形のうちの供給制御波形の加工開始端部における粉体供給スロープ制御区間に相当する区間を積分する請求項1に記載のレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法。
- 積分により得られた面積が、実験により求めた粉体供給量が不足となる下方限界値以上でかつ粉体供給量が過多となる上方限界値以下のときに正常であると判定する請求項1または2に記載のレーザクラッド加工における粉体供給量の正否判定方法。
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